説明

車載機器取付け金具の構造

【課題】カーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器をコンソールに設けた装着穴内に装着する際に車載機器の外周面を包囲するように取り付けられるスリーブケースと、このスリーブケースから車載機器を取り外す際に必要となる専用工具とから成る車載機器取付け金具において、専用工具に係る種々の不具合を一挙に解決する。
【解決手段】車載機器10の外面に当接した状態で車両側に設けた装着穴31内に装着されるスリーブケース2と、該スリーブケースを装着穴内から取外すための取外し専用工具20と、を分離可能な状態で一体化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器をコンソールに設けた装着穴内に装着する際に車載機器の外周面を包囲するように取り付けられる車載機器取付け金具の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器を車室内のコンソールに設けた装着穴に装着する際には、予め前面と背面が開口した矩形筒状のスリーブケース内に車載機器を組み込んだユニットを形成してからこのユニットを装着穴内に装着するか、或いは予め装着穴内にスリーブケース単体を組み付けた後でこのスリーブケース内に車載機器を組み付けている。
また、盗難防止のために、車載機器に設けた係合部材をスリーブケースに設けた係合部に係合させることにより、スリーブケースから車載機器が分離不能となるようにロックするロック機構が設けられている。
特許文献1に開示された従来技術においては、車載機器の左右両側面に上下動自在に支持され且つバネによって上方向へ付勢されたレバー(係合部材)が設けられ、車載機器をスリーブケース内に装着するとスリーブケース側に形成した係合穴(係合部)内にレバーが係合してロックされるようになっている。
図5は従来のスリーブケース100と、スリーブケース100と車載機器とのロックを解除するための取外し専用工具110の構成説明図である。専用工具110はスリーブ内に組み込まれた車載機器を取り外すために必要な工具である。
しかし、スリーブケース100と、取外し専用工具110は、別部品として製造され取り扱われていたため、部品点数が増大してコストがアップするという問題があった。また、取外し専用工具は、紛失したり、保管管理する必要があるため、その取扱性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−257287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、カーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器をコンソールに設けた装着穴内に装着する際に、車載機器の外周面を包囲するように取り付けられるスリーブケースと、スリーブケースから車載機器を取り外す際に必要となる専用工具とが別体構造であることによる不具合を解決する車載機器取付け金具を提供するものである。
即ち、スリーブケースは、単体で、或いは車載機器の外面に当接した状態で車両側に設けた装着穴内に装着されるが、スリーブケースと取外し専用工具とが予め一体化された一つの部品となっているため、部品自体のコストダウンを図れるばかりでなく、作業工程を簡略化することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る車載機器取付け金具の構造は、単体で、或いは車載機器の外面に当接した状態で車両側に設けた装着穴内に装着されるスリーブケースと、該スリーブケースを前記装着穴内から取外すための取外し専用工具と、を分離可能な状態で一体化したことを特徴とする。
車載機器は、スリーブケースを介して車両に設けた装着穴内に装着されるが、装着された車載機器を装着穴から取り出す際には専用の取外し工具が必要である。従来、この工具は別体化されていたため、紛失したり、保管管理が必要であったり、その取扱性に問題であった。また、スリーブケースとは別個に製造する必要があったため、コストアップの原因ともなっていた。本発明ではこのような不具合を一挙に解決できる。
請求項2の発明に係る車載機器取付け金具の構造は、請求項1において、前記スリーブケースは前面と背面が開口し、該背面開口の端縁に凹所を有した筒状の板金体であり、前記凹所の対向した内壁間に夫々前記取外し専用工具を接続片を介して一体成型したことを特徴とする。
スリーブケースの背面側開口に工具を一体的に連設する構造を採用することにより板金製のスリーブケースをプレス成型等によって製造する際に一括した製造が可能となり、製造コストを低減できる。
【0006】
請求項3の発明に係る車載機器取付け金具の構造は、請求項1又は2において、前記各取外し専用工具は、その少なくとも一部が前記スリーブケースから外側に突出して前記装着穴内への前記スリーブケースの装着を阻害するように構成されていることを特徴とする。
取外し専用工具を取り外していない状態のスリーブケースが装着穴内に装着されることを防止することができる。
請求項4の発明に係る車載機器取付け金具の構造は、請求項1又は2において、前記各取外し専用工具は、その少なくとも一部が前記スリーブケースの天面板と底板の少なくとも一方から外側に突出して前記装着穴内への前記スリーブケースの装着を阻害するように構成されていることを特徴とする。
取外し専用工具の突出部は、スリーブケースの装着を阻害する位置に突出するのであれば、どのような位置であっても良いが、横長の車載機器の場合には天面板、及び底板の少なくとも一方から突出させることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、カーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器の外面に当接した状態で車両側に設けた装着穴内に装着されるスリーブケースと、該スリーブケースを前記装着穴内から取外すための取外し専用工具と、を分離可能な状態で一体化したので、製造時における手数を少なくして製造コストを低減できる。また、専用工具のみを管理する手数が低減できる。
また、専用工具をスリーブケースから取り外さない限りスリーブケースを装着穴に装着できないため、誤った取扱いを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る車載機器取付け金具の構成を示す斜視図、及び平面図である。
【図2】(a)及び(b)は車載機器を車載機器取付け金具に組み付けたユニットを装着穴に装着する手順を示す図である。
【図3】スリーブケースが装着不能となった状態を示す側面図である。
【図4】本発明の他の構成例を示す平面図である。
【図5】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る車載機器取付け金具の構成を示す斜視図、及び平面図であり、図2(a)及び(b)は車載機器を車載機器取付け金具に組み付けたユニットを装着穴に装着する手順を示す図であり、図3は装着不能となった状態を示す側面図である。
この車載機器取付け金具1は、カーオーディオ、ナビゲータ等の車載機器10の外周面を包囲した状態で車両のコンソール30に設けた装着穴31内に装着されるスリーブケース2と、スリーブケース2を装着穴31内から取外すための取外し専用工具20と、を分離可能な状態で一体化した構成を備えている。
スリーブケース2は前面と背面が開口し、背面開口2aの上下両端縁2b、2cに夫々切欠き状の凹所3を有した矩形筒状の板金体である。スリーブケース2の内部形状は、図2に示したように車載機器10の外周面と密着してこれを保持し得るように構成されている。各凹所3の対向した内壁間には夫々取外し専用工具20が接続片21を介して予め固定一体化されている。接続片21は、薄肉、或いは細幅の板金から構成されているため、人手、或いは工具を用いた作業により取外し専用工具20を凹所3の内壁から分離することができる。取外し専用工具20は、各凹所3の内壁間に予め一体化した状態で製造されるため、部品点数の低減によるコストダウンを図ることができる。
なお、凹所3は必須ではなく、図4に示すようにスリーブケースの背面開口2aの上下両端縁2b、2cから後方へ突出した二本の接続片21により取外し専用工具20を接続するように構成してもよい。
【0010】
このように本発明の車載機器取付け金具1では、従来別部材とされていたスリーブケースと取外し専用工具とを組み付けて一部品としたため、取扱性を高め、コストダウンを図ることができる。即ち、従来二部品であったものを一部品としたため、金型代が低減でき、コストダウンを図ることができる。また、スリーブケースを製造する際に従来切り捨てる筈であった板金部分を利用して取外し専用工具を製作するため、材料費の低減を図ることができる。また、製造手数が低減されるため生産性を高めることができる。しかも、車載機器を装着穴内に装着する際には取外し専用工具は容易に取り外すことができるため、車載機器を装着穴に装着する際の作業性が低下することもない。
また、本発明の他の実施形態では、各取外し専用工具20の少なくとも一部がスリーブケース2の天面板4及び底板5から外側(上方、及び下方)に突出して装着穴31内へのスリーブケースの装着を阻害するように構成されている。即ち、取外し専用工具20は、工具本体22と、工具本体の適所、本例では作業時に手で把持する把持部23を90度屈曲させた突出部24と、を備えており、図1、図2のようにスリーブケース2に取外し専用工具20が固定された状態では、突出部24が装着穴31の上下端縁に干渉してスリーブケースを装着することができなくなるように構成されている。
このため、誤って取外し専用工具20が取り付いたままのスリーブケース2を装着穴31内へ装着しようとしても装着が不可能となる。
突出部24を設ける位置は把持部23に限定されない。また、接続片21に突出部24を設けても良い。
【0011】
なお、本発明の車載機器取付け金具1を用いて車載機器10を装着穴31内に組み付ける手順としては、スリーブケース単体を装着穴31内に装着した後で、このスリーブケース2内部に車載機器10を差し込んで図示しないロック機構によってロックするように構成してもよいし、予めスリーブケース2内部に車載機器を差し込んで図示しないロック機構によりロックしてユニット化してから、このユニットを装着穴31内に装着してもよい。
なお、取外し専用工具20は、スリーブケースと装着穴との間をロックするロック機構、或いは車載機器とスリーブケースとの間をロックするロック機構のロック状態を解除する手段である。取外し専用工具20の把持部23を人手により把持してその先端部をロック機構に設けたロック解除部に当接させて押圧する等の操作を行うことにより、ロック状態を解除することができる。ロック機構はスリーブケースの側壁の内面側、或いは車載機器側に配置されるため、ロック状態を解除する際には取外し工具22の先端部をスリーブケースと車載機器との間に形成される図示しないスリット、穴等に差し込んで操作することとなる。
【0012】
従って、図示した取外し専用工具20の形状は一例に過ぎず、取外し専用工具による操作の対象となるロック機構の構造に応じて異なった形状の取外し専用工具の使用が可能となる。
なお、図示した実施形態では、スリーブケースの天面板4及び底板5に夫々取外し専用工具を設けた例を示したが、スリーブケースの対向する2つの側板に夫々取外し専用工具を設けるように構成してもよい。
また、天面板と底板の何れか一方のみに取外し専用工具を設けてもよい。
更に、取外し専用工具をスリーブケースの前面側開口の端縁に配置して突出部を端縁の内側に向けて突出させてもよい。このように構成すれば、突出部が邪魔となって車載機器をスリーブケースの前面側開口から装着することが困難となるため、取外し専用工具の取外しを忘れていることに気づくことができる。
【0013】
以上のように、本発明では、車両に設けた装着穴内に装着された車載機器を取り外すための取外し専用工具をスリーブケースに対して取外し可能に一体化した。このため、工具を紛失したり、その保管管理が不要となる。また、スリーブケースと同時に製造できるため、製造コストを低減できる。
また、スリーブケースの背面側開口に工具を一体的に連設する構造を採用することにより板金製のスリーブケースをプレス成型等によって製造する際に一括した製造が可能となり、製造コストを低減できる。
また、取外し専用工具は、その少なくとも一部がスリーブケースから外側に突出して装着穴内へのスリーブケースの装着を阻害するように構成されている。このため、取外し専用工具を取り外していない状態のスリーブケースが装着穴内に装着されることを防止することができる。
取外し専用工具の突出部は、スリーブケースの装着を阻害する位置に突出するのであれば、どのような位置であっても良いが、横長の車載機器の場合には天面板、及び底板の少なくとも一方から突出させることが好ましい。
【符号の説明】
【0014】
1…車載機器取付け金具、2…スリーブケース、2a…背面開口、2b…上下両端縁、3…凹所、4…天面板、5…底板、10…車載機器、20…取外し専用工具、21…接続片、22…工具本体、23…把持部、24…突出部、30…コンソール、31…装着穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体で、或いは車載機器の外面に当接した状態で車両側に設けた装着穴内に装着されるスリーブケースと、該スリーブケースを前記装着穴内から取外すための取外し専用工具と、を分離可能な状態で一体化したことを特徴とする車載機器取付け金具の構造。
【請求項2】
前記スリーブケースは前面と背面が開口し、該背面開口の端縁に凹所を有した筒状の板金体であり、前記凹所の対向した内壁間に夫々前記取外し専用工具を接続片を介して一体成型したことを特徴とする請求項1に記載の車載機器取付け金具の構造。
【請求項3】
前記各取外し専用工具は、その少なくとも一部が前記スリーブケースから外側に突出して前記装着穴内への前記スリーブケースの装着を阻害するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載機器取付け金具の構造。
【請求項4】
前記各取外し専用工具は、その少なくとも一部が前記スリーブケースの天面板と底板の少なくとも一方から外側に突出して前記装着穴内への前記スリーブケースの装着を阻害するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載機器取付け金具の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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