説明

車載機器用スタンド

【課題】 車載機器をティルト可能に支持でき、またティルト状態でない通常使用姿勢に確実にロックでき、しかもロック解除操作の簡単な車載機器用スタンドを提供する。
【解決手段】 車載機器用スタンド1は、側面形状L字形のスタンドベース2の台座部10の先端に、車載機器4を固定するティルト台3を連結している。ティルト台3の下面には、正面から見て左右対称的にロック受け20L、20Rが設けられる。ティルト台3が台座部10の上に重なると、ロック受け20L、20Rは台座部10の貫通穴21を通じて台座部10の下面に突き出す。台座部10の下面にはロック体30が前後にスライドできるように取り付けられている。ロック体30は圧縮コイルばね37により前方に付勢され、前進位置ではロック突起38をロック受け20L、20Rに係合させてロック受け20L、20Rを拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のダッシュボードにカーナビゲーション装置などの車載機器を設置するのに用いられる車載機器用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車にカーナビゲーション装置やテレビジョンなどの車載機器を後付けで搭載する際、自動車のダッシュボードにスタンドを固定し、このスタンドに車載機器を取り付けるという手法が一般的に採用される。そのようなスタンドの一例を特許文献1に見ることができる。
【特許文献1】特開平8−337144号公報(第2−3頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車載機器用スタンドには、車載機器の操作の便宜のため、車載機器を取り付けた部分がティルト(傾動)可能であることを求められる場合がある。ティルト可能部分を設けた場合、自動車の加速度や振動によって不用意にティルト状態に移行しないよう、ロック機構が必要となる。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、車載機器をティルト可能に支持できるとともに、ティルト状態でない通常使用姿勢に確実にロックでき、しかもロック解除操作の簡単な車載機器用スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するために本発明の車載機器用スタンドは、次の構成を備えることを特徴としている。
(a)水平な台座部と垂直な背もたれ部とからなる側面形状L字形のスタンドベース
(b)前記台座部の先端に水平な支点軸により連結されるとともに、車載機器を固定する固定手段を備えたティルト台
(c)前記ティルト台の下面に、正面から見て左右対称的に設けられ、ティルト台が前記台座部の上に重なったとき、台座部の貫通穴を通じて台座部下面に突き出すロック受け
(d)前記台座部の下面に前後にスライドできるよう取り付けられ、且つばねにより前方に付勢され、前進位置では前記左右のロック受けに係合してこれを拘束し、後退位置ではロック受けの拘束を解除するロック体。
【0006】
この構成によると、ティルト台の下面に左右対称的に設けたロック受けをロック体で拘束してティルト台をロックするものであるから、ティルト台は左右に傾いたりがたついたりすることなく通常使用姿勢にしっかりとロックされる。そしてロック解除はロック体を後退させるだけで事足りるので、片手操作で簡単にロックを解除することができる。
【0007】
(2)また本発明は、上記構成の車載機器用スタンドにおいて、前記ティルト台を前傾姿勢から水平に戻して前記台座部の上に重ねるとき、前記ロック受けは前記ロック体を前記ばねの付勢力に抗して排除しつつ下降し、その後ロック体による拘束を受けることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、ティルト台を前傾姿勢から水平に戻せば自動的にロックがかかることになり、ロック体を操作する手間が省ける。
【0009】
(3)また本発明は、上記構成の車載機器用スタンドにおいて、前記ロック受けとロック体の間には、ロック体を後退させてロック受けの拘束を解除したとき、ロック受けに押し上げ力を作用させる押し上げ部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、ロック体の後退によりロック解除とティルト台の傾動が連続的に遂行されるから、一挙に車載機器を前傾させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ロック受けとロック体によりティルト台を両側でロックし、ティルト台に取り付けた車載機器を通常使用姿勢にしっかりと保持することができる。そしてロック解除はロック体の操作だけで行えるから、片手操作で簡単にロックを解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。図はいずれも車載機器用スタンドを示すものであり、図1は正面図、図2は平面図、図3は側面図、図4はティルト台を前傾させた状態の側面図、図5は底面図、図6は異なる状態の底面図、図7〜図9はそれぞれ異なる状態の部分拡大断面図である。
【0013】
車載機器用スタンド1は、図示しない自動車のダッシュボードに取り付けられるスタンドベース2及びその付属部品と、スタンドベース2に対し傾動可能に連結されたティルト台3及びその付属部品により構成される。
【0014】
スタンドベース2は鋼板をプレス機械で打ち抜き、折曲して形成されるものであり、水平な台座部10と、垂直な背もたれ部11とを連設した、側面形状L字形の部品(図4参照)である。ティルト台3は同じく鋼板をプレス機械で打ち抜き、折曲して形成されるものであり、台座部10の先端に左右一対の水平な支点軸12により連結される。ティルト台3は支点軸12を回動中心として垂直面内で所定角度範囲の回動(傾動)が可能である。
【0015】
ティルト台3には図3、4に示すように車載機器4が固定される。車載機器4は仮想線でシルエットのみが図示されているが、これはカーナビゲーション装置を想定したものである。車載機器4は正面側がモニター部4a、背面側がディスクプレーヤ部4bとなっている。モニター部4aは液晶表示パネルによる表示画面を備える。ディスクプレーヤ部4bはDVDやCDなどのディスク状情報媒体5をスロットイン方式で取り込むものであり、そのためのスロットが上面に形成されている。ティルト台3にはカメラ用三脚の雲台のように固定用ねじ13が取り付けられており、この固定用ねじ13が車載機器4をティルト台3に固定する固定手段を構成する。
【0016】
スタンドベース2の背もたれ部11の正面には、ティルト台3に固定された車載機器4の背面を受け止めるクッション材14が取り付けられる。クッション材14は合成樹脂発泡体からなる直方体状の部材であって、その長軸を垂直にする形で背もたれ部11のセンターラインの両側に1個ずつ接着されている。左右のクッション材14の間には背もたれ部11のセンターラインに沿って垂直に延びる溝15が形成されている。
【0017】
溝15には固定具16が取り付けられる。固定具16は、背もたれ部11の背面側に配置される合成樹脂製のプラグ体17と、背もたれ部11の正面側に配置される金属製のナット板18と、プラグ体17の背面側からナット板18にねじ込まれるねじ19により構成される。ねじ19を締め付けるとプラグ体17とナット板18が背もたれ部11を挟み付け、固定具16は摩擦力で背もたれ部11に対し固定される。固定具16は溝15の長さの範囲内で自由に位置をずらして固定することができる。
【0018】
図2に見られるように、プラグ体17はT字状の水平断面を有する。このプラグ体17を受け止める図示しないソケット体をダッシュボードの正面に固定しておけば、プラグ体17をソケット体に差し込むことによりスタンドベース2をダッシュボードに取り付けることができる。またプラグ体17をソケット体から抜き取ることによりスタンドベース2をダッシュボードから簡単に取り外すことができる。
【0019】
車載機器4を固定したティルト台3は、通常は図3のように台座部10の上に水平に重ねて使用する。この時は車載機器4の表示画面は垂直になり、また車載機器4の背面はクッション材14にぴったりと押し当てられる。このように車載機器4が直立しているとディスク状情報媒体5を出し入れしにくいので、ディスク状情報媒体5を出し入れする際は図4のようにティルト台3を前傾させる。図4において、ティルト台3は限界まで前傾しており、車載機器4の重心は支点軸12より左側にある。そのため、車載機器4から手を離しても車載機器4は図4の角度を保ったままである。
【0020】
図3のように車載機器4を通常使用姿勢で使用する場合、ティルト台3が拘束されていなければ、自動車の加速度や振動で使用者の意図に反して車載機器4が図4の状態に姿勢変換してしまうという事態が起こり得る。そのような事態を避けるため、ティルト台3の通常使用姿勢を維持するロック機構を設ける。以下、ロック機構の詳細を説明する。
【0021】
ロック機構の主な構成要素は、ティルト台3の下面に固定されたロック受け20L、20Rと、台座部10の下面に配置されたロック体30である。
【0022】
図5、6に見られるように、ロック体30は、台座部10のセンターライン上に配置される押釦部31に、そこから左右対称的に延び出す形で1対の脚部32L、32Rを一体成形したものであり、全体としてY字状をなしている。台座部10の前端部下面には板状の前方ガイド33が固定され、押釦部31はこの前方ガイド33の貫通穴34を通り抜けて正面側に突き出す。台座部10の後端側下面にはブロック状の後方ガイド35が固定される。後方ガイド35は前後に延びる案内溝36を左右両側面に有し、この案内溝36に脚部32L、32Rの先端を受け入れている。このようにしてロック体30は、前部を前方ガイド33に支えられ、後部を後方ガイド35に支えられる形で、台座部10の下面に前後方向にスライド可能に支持される。なおロック受け20L、20R、ロック体30、前方ガイド33及び後方ガイド35はいずれも合成樹脂製である。
【0023】
脚部32L、32Rと案内溝36の後端内壁の間にはロック体30を前方に付勢する圧縮コイルばね37を配置する。圧縮コイルばね37は脚部32L、32Rに形成された盲穴に前端が挿入されており、押釦部31と脚部32L、32Rの間の肩部が前方ガイド33に当たるまでロック体30を前方に付勢する。
【0024】
脚部32L、32Rの外向きの側面には、ロック体30のスライド方向と直角に突き出す形でロック突起38が形成される。ロック突起38は、図7〜9に見られるように、前方が細くなったくさび形の断面形状を有しており、下面は後へ行くほど下がる下向きの斜面となっている。
【0025】
ロック受け20L、20Rはティルト台3の下面に、正面から見て左右対称的に固定される。台座部10にはロック受け20L、20Rの位置に合わせて貫通穴21が形成されており、ティルト台3が台座部10の上に重なると、ロック受け20L、20Rは貫通穴21を通じて台座部10の下面に突き出す。台座部10の下面に突き出したロック受け20L、20Rは、ロック体30を両側から挟む形になる。なお台座部10の上面にはティルト台3を受け止めるクッション材40が固定されている(図7参照)。
【0026】
ロック受け20L、20Rの、ロック体30の脚部32L、32Rに面する側面には、ロック突起38を受け入れる溝22が形成されている。溝22は脚部32L、32Rに面する側と下方に面する側が開放しており、その前端側にはロック突起38が係合するフック部23が形成され、後端側の天井部には後へ行くほど下がる下向きの斜面24が形成されている。斜面24はロック突起38と組み合わさって押し上げ部25を構成する。
【0027】
ロック機構の動作は次の通りである。ティルト台3を図4の前傾姿勢から水平に戻して台座部10の上に重ねるとき、図7に見られるように、ロック受け20L、20Rのフック部23へと続く斜面部がロック突起38の前端に当たり、ロック突起38を後方へ押す。これによりロック体30は圧縮コイルばね37の付勢力に抗して後退する。ロック受け20L、20Rはロック体30を排除しつつ下降し、最終的には図8のように、ティルト台3が台座部10上にクッション材40の厚みを隔てて重なる状態で落ち着く。するとロック体30は圧縮コイルばね37の付勢力で前進し、ロック突起38をフック部23に係合させてロック受け20L、20Rを拘束する。ロック突起38の下面は後下がりの斜面となっているので、ロック突起38はフック部38に対し下向きの力を及ぼす。これによりティルト台3はクッション材40に引き寄せられ、また車載機器4の背面はクッション材14に押し付けられる。車載機器4の背面はクッション材14で柔らかく受け止められ、その後自動車が振動したとしても、車載機器4とスタンド1がぶつかり合うことにより生じる騒音は防止される。左右のロック受け20L、20Rがそれぞれロック突起38で拘束されるから、ティルト台3は左右に傾いたりがたついたりすることなく通常使用姿勢にしっかりとロックされる。
【0028】
ロックを解除するときは、図9のように押釦部31を押してロック体30を後方にスライドさせる。するとロック突起38がフック部23から離れ、ロック受け20L、20Rの拘束は解除される。ロック体30をそのまま押し込んで行くと、ロック突起38の後端上部の角が斜面24に当たり、ロック受け20L、20Rに押し上げ力を作用させる。これによりティルト台3は強制的に前傾せしめられ、車載機器4の重心が支点軸12より左側に移動して、図4の状態となる。このように、ロック体30の後退によりロック解除とティルト台3の傾動が連続的に遂行され、一挙動で車載機器4を前傾させることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、車載機器用スタンドに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】車載機器用スタンドの正面図
【図2】車載機器用スタンドの平面図
【図3】車載機器用スタンドの側面図
【図4】車載機器用スタンドの側面図にして、ティルト台を前傾させた状態を示すもの
【図5】車載機器用スタンドの底面図
【図6】車載機器用スタンドの底面図にして、図5と異なる状態を示すもの
【図7】車載機器用スタンドの部分拡大断面図
【図8】車載機器用スタンドの部分拡大断面図にして、図7と異なる状態を示すもの
【図9】車載機器用スタンドの部分拡大断面図にして、図8と異なる状態を示すもの
【符号の説明】
【0032】
1 車載機器用スタンド
2 スタンドベース
3 ティルト台
4 車載機器
10 台座部
11 背もたれ部
12 支点軸
13 固定用ねじ(固定手段)
14 クッション材
20L、20R ロック受け
21 貫通穴
24 斜面
25 押し上げ部
30 ロック体
31 押釦部
32L、32R 脚部
33 前方ガイド
35 後方ガイド
37 圧縮コイルばね
38 ロック突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成を備える車載機器用スタンド:
(a)水平な台座部と垂直な背もたれ部とからなる側面形状L字形のスタンドベース
(b)前記台座部の先端に水平な支点軸により連結されるとともに、車載機器を固定する固定手段を備えたティルト台
(c)前記ティルト台の下面に、正面から見て左右対称的に設けられ、ティルト台が前記台座部の上に重なったとき、台座部の貫通穴を通じて台座部下面に突き出すロック受け
(d)前記台座部の下面に前後にスライドできるよう取り付けられ、且つばねにより前方に付勢され、前進位置では前記左右のロック受けに係合してこれを拘束し、後退位置ではロック受けの拘束を解除するロック体。
【請求項2】
前記ティルト台を前傾姿勢から水平に戻して前記台座部の上に重ねるとき、前記ロック受けは前記ロック体を前記ばねの付勢力に抗して排除しつつ下降し、その後ロック体による拘束を受けることを特徴とする請求項1に記載の車載機器用スタンド。
【請求項3】
前記ロック受けとロック体の間には、ロック体を後退させてロック受けの拘束を解除したとき、ロック受けに押し上げ力を作用させる押し上げ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載機器用スタンド。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−55339(P2007−55339A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240779(P2005−240779)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】