説明

車載用アンテナ

【課題】 バンパー等の外装体に対して、アンテナ全体としての損失を最小化した車載用アンテナを提供する。
【解決手段】 一組目の条件を満たす車載用アンテナ20の場合、レドーム22は、その電気長が外装体1の電気長と等しくなるように形成され、突き当てピン25によって規定される隙間dが、その電気長とレドーム22の電気長との和がπ/2の奇数倍に等しくなるように設定されて反射損失が最小化されている。また、二組目の条件を満たす車載用アンテナ20の場合、レドーム22は、その電気長と外装体1の電気長との和がπの整数倍に等しくなるように形成され、突き当てピン25によって規定される隙間dが、その電気長がπの整数倍に等しくなるように設定されて反射損失が最小化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ、特に車載レーダ装置のように車のバンパー等の外装体の内側に配置される車載用アンテナにおいて、その外装体による損失を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載レーダとして準ミリ波のUWB(Ultra Wide Band)を使用するものが提案されている。
【0003】
このような車載レーダのアンテナの設置場所としては、電波を通過させることができる非金属製(合成樹脂製あるいはガラス)の外装体のうち、必ず車の進行方向に向いているバンパーの内側が最適であると考えられている。
【0004】
また、一般的に車のバンパーの内側は密閉された空間ではなく、雨、埃などが進入するので、アンテナ本体を保護する目的からレドームを設ける必要がある。
【0005】
したがって、アンテナ本体から放射されたレーダ波は、レドームを通過し、さらにバンパーを通過して探査対象の空間へ放射されることになり、その探査対象の空間からの反射波は、バンパーを通過し、レドームを通過してアンテナ本体に到達することになる。
【0006】
なお、レドーム(保護カバー)を有する車載用アンテナ装置に関しては、次の特許文献1に記載されている。また、レドームに関する技術については次の特許文献2に記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−327010号公報
【特許文献2】特開2003−142917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、電波がバンパーやレドームを通過する際には反射等による損失が発生する。一般的に、パンパーに用いられるポリプロピレン等の合成樹脂材を電波が通過する際の損失は1.5dB程度とされ、レーダ装置のように往復する電波に対しては、合計で6dBの大きな損失となる。
【0009】
特に、UWBのレーダ装置の場合、送信電力は微弱であり、上記のような大きな損失は受信能力を大きく制限することになる。
【0010】
上記損失には、材料の tanδで決まる透過損失と材料表面での反射により生じる反射損失とがあり、その全体損失のうち反射損失が大きな割合を占めている。
【0011】
上記反射損失を低減するためには、レドームの材質検討だけでなく、バンパー等の外装体の材質や厚さの検討が必要であるが、既存車や設計変更できない車等に対しては、アンテナ装置側のみで反射低減の工夫が必要となる。また、レーダ装置メーカ側からの要求に基づき車メーカ側で外装体の新規設計が可能な車については、外装体を含めたアンテナ装置全体で反射低減する必要がある。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、上記2つのケースにおいて、バンパー等の外装体に対して、アンテナ全体としての損失を最小化した車載用アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の車載用アンテナは、
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの外面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長が前記外装体の電気長と等しくなるように形成され、
前記レドームと前記外装体との隙間の電気長と、前記レドームの電気長との和がπ/2の奇数倍に等しくなるように、前記外装体に対して前記レドームの位置を規定する規定手段(25)を有していることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項2の車載用アンテナは、
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの表面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長と前記外装体の電気長との和がπの整数倍に等しくなるように形成され、
前記レドームと前記外装体との隙間の電気長がπの整数倍に等しくなるように、前記外装体に対して前記レドームの位置を規定する規定手段(25)を有していることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項3の車載用アンテナは、
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの表面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記外装体は、該外装体の厚さと該外装体内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長がπの整数倍に等しくなるように形成され、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長がπの整数倍に等しくなるように形成され、前記外装体に対して任意の隙間の位置に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成することで、外装体による反射損失を最小にすることができ、低損失な車載用アンテナを実現できる。
【0017】
また、外装体の電気長をπの整数倍に等しくできる場合においては、レドームの電気長をπの整数倍に等しくすることにより、系全体の反射損失を理論上ゼロにすることができ、しかも、外装体とレドームとの隙間を規定する必要がなくなり、極めて低損失で、製造や取り付けが容易なアンテナを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
始めに、本発明の原理について説明する。
図1に示すように、車載用アンテナ20は、電波を送受信するための送受信面21aを一面側に有するアンテナ本体21と、そのアンテナ本体21の送受信面21aに平行に対向するように配置され、送受信面21aを覆う合成樹脂製のレドーム22とを有している。ここでレドーム22の各パラメータは、比誘電率ε、管内波長λ、厚さt、波数k(=2π/λ)とする。
【0019】
そして、この車載用アンテナ20は、車のバンパー等の合成樹脂製(例えばポリプロピレン)の外装体1に対して、レドーム22が隙間dを開けて平行となるように配置されているものとする。外装体1の各パラメータは、比誘電率ε、管内波長λ、厚さt、波数k(=2π/λ)とする。
【0020】
また、レドーム22の内面22aおよび外面22bにおける反射係数をΓ、外装体1の内面1aおよび外面1bにおける反射係数をΓとする。なお、厳密に言えば、これらの反射係数Γ、Γは、空気層とレドーム22の樹脂層との境界面、空気層と外装体1の樹脂層との境界面における反射係数であるが、以下の説明では、その境界面をレドーム22および外装体1の表面(外面、内面)とする。
【0021】
ここで、アンテナ本体21から放射された平面波Ei1が、レドーム22に垂直に入射するとき、レドーム22の内面22aで反射する成分Er11は、
r11=Ei1・Γ ……(1)
となる。
【0022】
また、レドーム22内に進入した成分Et11は、
t11=Ei1・(1−|Γ1/2 ……(2)
となる。
【0023】
この成分Et11がレドーム22内を伝搬し、その外面22bで反射して内面22a側に戻ってきたときの成分Er12は、
r12=−Ei1・Γ・(1−|Γ1/2・e−j2P
≒−Ei1・Γ・e−j2P ……(3)
ただし、P(電気長)=k・t
となる。
【0024】
よって、レドーム22による反射の合成成分Er1は、
r1=Er11+Er12=Ei1・Γ・(1−e−j2P) ……(4)
となる。
【0025】
一方、レドーム22の外面22bを通過した成分Et1は、
t1=Et11・(1−|Γ1/2・e−jP
=Et11・(1−|Γ)・e−jP ……(5)
となる。
【0026】
この成分Et1が隙間dを伝搬し、外装体1の内面1aに達したときの成分Ei2は、
i2=Et1・e−jD ……(6)
ただし、D(電気長)=k・d
となる。
【0027】
この入射成分Ei2に対する外装体1の反射合成成分Er2は、前記式(4)と同様に、
r2=Ei2・Γ・(1−e−j2Q) ……(7)
ただし、Q(電気長)=k・t
と表すことができる。
【0028】
そして、外装体1からの反射成分Er2が、隙間dを伝搬し、レドーム22を通過してアンテナ本体21側へ戻ることになるが、その成分Er2′は、
r2′=Er2・e−jD−jP ……(8)
と近似できる。
【0029】
よってアンテナ本体21側に戻ってくる全反射波Eは、
=Er1+Er2
=Ei1[Γ(1−e−j2P
+Γ(1−e−j2Q)e−j2D−j2P] ……(9)
となる。
【0030】
また、上式(9)から、反射率Rは、
R=E/Ei1
=Γ(1−e−j2P
+Γ(1−e−j2Q)e−j2D−j2P ……(9′)
と表すことができる。
【0031】
この反射率Rが最小となるようにすれば、アンテナ全体としての損失を最も少なくできる。
【0032】
上記反射率Rが最小となる条件は3通りある。
一組目の条件は、レドーム22の電気長P(波数と厚さの積)を外装体1の電気長Qに等しくする、即ち、
P=k・t=Q=k・t ……(10)
とし、且つ、隙間dの電気長Dとレドーム22の電気長Pとの和を、π/2の奇数倍に等しくする、即ち、
・d+k・t=D+P=(2n−1)π/2 ……(11)
を満たすように設定することである(nは整数)。
【0033】
上記式(10)、(11)を満たすとき、式(9′)は、
R=E/Ei1=(1−e−j2P)(Γ−Γ) ……(12)
で最小となる。
【0034】
二組目の条件は、レドーム22の電気長Pと外装体1の電気長Qとの和をπの整数倍に等しくし、且つ、隙間dの電気長Dをπの整数倍に等しくすることである。
【0035】
即ち、式(9′)を展開すると、次式(13)のように書き直すことができる。
【0036】
R=E/Ei1
=Γ−Γ・e−j2Q−j2D−j2P
−e−j2P(Γ−Γ・e−j2D) ……(13)
【0037】
ここで、D=m・π(mは整数)であれば、上式(13)は、
R=E/Ei1
=Γ−Γ・e−j2Q−j2P
−e−j2P(Γ−Γ) ……(14)
となる。
【0038】
さらに、P+Q=u・π(uは整数)であれば、上記式(14)は、反射率Rの最小値を示す前記式(12)と等しくなる。
【0039】
したがって、上記2組のいずれかの条件を満たすように構成することで、任意の外装体1に対して最も少ない損失の車載アンテナ20を実現できる。
【0040】
上記2組の条件は、既存の外装体1に対して反射損失を最小化するためにレドーム22のみを工夫する場合であり、既存車のように外装体1の変更ができない場合に有効であるが、新規設計車等のように、外装体1の材質や厚さをアンテナの損失低減の目的で設定できる場合には、外装体1とレドーム22との隙間を規定することなしに反射損失を最小化できる、より実用的なアンテナ系を実現できる。
【0041】
これを実現するための三組目の条件は、外装体1の電気長Qをπの整数(v)倍に等しくし、且つレドーム22の電気長Pをπの整数(w)倍に等しくすることである。
【0042】
この条件において、前記式(9)の全反射波Eは、
=Er1+Er2
=Ei1[Γ(1−1)+Γ(1−1)e−j2D
=0
となり、隙間dと無関係に、反射損失ゼロの理想的な状態を実現できる。
【0043】
この場合、外装体1とレドーム22との隙間dを任意に設定できるので設計の自由度が大きく、しかも、振動等によって隙間dが変動しても反射損失ゼロの状態が維持されるので、外装体1とレドーム22の機械的設定に高い精度を必要としないという格別な効果を奏する。
【0044】
図2は、上記した一組目の条件で、外装体1として厚さt=3mm、誘電率ε=2.25のポリプロピレンを用い、レドーム22も外装体1と同一材質で同一厚さとしたときの隙間dと反射が最小となる周波数との関係を示す図であり、実線が上記式から得られる理論値であり、四角の点が実測結果を示している。
【0045】
図2から実測値は理論値とよく一致していることがわかり、上記理論にしたがってアンテナを構成することで外装体1による反射が最小のものを実現できる。
【0046】
なお、上記条件で使用周波数帯をUWBの24〜26GHzとすれば、隙間dを4〜5mmに選べばよいことが判る。
【0047】
また、図3は、上記した二組目の条件で、外装体1として厚さt=5mm、誘電率ε=2.25のポリプロピレンを用い、レドーム22も外装体1と同一材質で厚さ(t)を3mmとし、さらに隙間d=6mmに設定したときの周波数と反射率(SパラメータS11)との関係を示す図であり、反射はほぼ25GHzで最小となっている。
【0048】
ここで、25GHzの自由空間波長λは12mmであり、隙間d=6mmはその半波長に一致している。
【0049】
したがって、隙間dの電気長Dは、
D=k・d=6・2π/3=4π
となる(前記整数m=4)。
【0050】
また、このとき、レドーム22の電気長Pと外装体1の電気長Qとの和は、
P+Q=k・t+k・t=3・2π/λ+5・2π/λ
=6π・(ε1/2/λ+10π・(ε1/2/λ
=16π(ε1/2/λ
=16π・1.5/12=2π
となり、前記したようにπの整数倍(u倍)になっている。
【0051】
次に、上記原理に基づく本発明の車載用アンテナ20の実施形態を説明する。
図4、図5は、バンパー取り付け型の車載用アンテナ20の構成例を示している。
この車載用アンテナ20は、ベース30、前記した平面型のアンテナ本体21、レドーム22を有している。
【0052】
ベース30は、矩形平板状の基部31と、その基部31の一面31a側に矩形枠状に突設形成された枠部32とを有している。枠部32内の基部31の一面31aにはアンテナ本体21を固定するための複数のボス33が立設されている。また、基部31の四隅には、この車載用アンテナ20を外装体1(バンパー)の内側に取り付けるためのネジを挿入するための穴34が設けられている。
【0053】
枠部32の前端には、所定深さの溝35が矩形枠状に連続形成されており、その溝35の内側には、レドーム22をネジ止めするための穴36が形成されている。溝35には、防水用の矩形枠状のパッキン37が装着されている。
【0054】
アンテナ本体21は、ベース30の枠部32内でその送受信面21aを開口側に向けた状態で、四隅の穴21bを通過してボス33に締付けられるネジ38によって固定されている。なお、アンテナ本体21の形式やその具体的な構造について任意であり、ここでは詳述しないが、UWBレーダとしては平面型でアンテナ素子がパッチ型やスパイラル型の円偏波アンテナが望ましい。また、対向車の存在を早期に検出して安全走行を支援する遠距離のレーダ用としては、誘電体漏れ波型のアンテナ、導波管漏れ波型の直線偏波型のアンテナ等を用いることができる。
【0055】
また、アンテナ本体21にアンテナ素子だけでなく、これに接続された送信部や受信部の高周波部分が実装されていて、中間周波帯の信号を図示しないコネクタを介して授受するように構成してもよい。
【0056】
レドーム22は、枠部32の外形に対応した矩形平板状に形成され、その内面22a側の縁部には、図6に示しているように、枠部32の溝35に係合するリブ23が矩形枠状に突設されている。また、レドーム22の縁部には、枠部32の各穴36に一致する穴24が設けられている。
【0057】
レドーム22は、リブ23をベース30の溝35に挿入させて内部のパッキン37を押圧した状態で、各穴24を通過して枠部32の各穴36にそれぞれネジ止めされることにより、枠部32の前方側の開口を塞ぎ、アンテナ本体21の送受信面21aと平行な状態で固定される。
【0058】
そして、このレドーム22の材質および厚さは、前記した一組目の条件で言えば、使用周波数における電気長P(=k・t)が外装体1の電気長Q(=k・t)と等しくなるように設定されている。ここで、レドーム22として外装体1と同一材質、即ち同一誘電率のものを使用する場合には、外装体1と同一厚さに形成すればよい。
【0059】
ただし、バンパー等の外装体1の厚さは、強度を確保するために比較的大であり、レドーム22としては厚すぎる場合が考えられる。
【0060】
これが問題になる場合には、レドーム22として外装体1より誘電率が大きい材質を採用すればよい。
【0061】
例えばレドーム22として外装体1のw倍の誘電率の材質を用いれば、外装体1に対して波数がw1/2倍となり、1/(w1/2)の厚さで形成することができる。
【0062】
また、前記した二組目の条件、即ち、レドーム22の電気長Pと外装体1の電気長Qとの和がπの整数倍に等しくなるようにしてもよい。
【0063】
レドーム22の外面22b側の縁部には、外装体1の内面1aとレドーム22の外面22bとの隙間dを、前記したいずれかの組の条件で指定される寸法に規定するための規定手段として、複数(図では4本)の突当てピン25が直立状態で立設されている。
【0064】
これらの突当てピン25の長さは外装体1の内面1aとレドーム22の外面22bとの隙間dを規定するものであり、前記した条件のいずれか満たすように設定されている。
【0065】
即ち、前記した一組目の条件を満たす材質と厚さでレドーム22を形成した場合には、 k・d+k・t=(2n−1)π/2
を満たす長さ(隙間d)に設定されている。
【0066】
また、前記した二組目の条件を満たす材質と厚さでレドーム22を形成した場合には、
・d=m・π
を満たす長さ(隙間d)に設定されている。
【0067】
このように構成された車載用アンテナ20は、例えば、図7に示しているように、ベース30の基部31の四隅に設けられた穴34に背面側から挿通されたネジ40の先端側を、外装体(バンパー)1の内面側に予め突設されている各ボス2に締付けることにより取り付けられる。
【0068】
ここで、各ネジ40の頭部側には、車載用アンテナ20を外装体1の内面1aに押し付けるためのコイルバネ41が設けられており、このコイルバネ41の付勢力により、車載用アンテナ20は、各突当てピン25の先端が外装体1の内面1aに常に当接する状態で固定される。これにより、外装体1の内面1aとレドーム22の外面22bとの隙間dが前記したいずれかの組の条件を満たす状態、即ち、外装体1の反射による損失が最も小さい状態に維持される。
【0069】
なお、上記の車載用アンテナ20のように、レドーム22の外面22bに隙間規定用の突当てピン25を突設させる方式にしたことで、間隔の調整をすることなく、レドーム22の交換のみで異なる車に対応できる。即ち、取り付け対象となる車の外装体1の材質と厚さに応じた材質と厚さおよび突当てピンを有するレドーム22を予め用意しておき、実装する車の外装体1に応じたレドーム22を選択してベース30に固定し、前記したように取り付ければよい。
【0070】
また、上記の車載用アンテナ20は、バンパー取り付け型であったが、車のボティ側に車載用アンテナ20を取り付ける場合、例えば図8のように、ベース30の基部31の前面側から挿入したネジ40の先端を、ボディ3に予め設けられているボス4(単にネジ穴でもよい)に締付ける。
【0071】
ここで、ネジ40の先端側にコイルバネ41を取り付けることで、前記同様に、車載用アンテナ20の各突当てピン25の先端が外装体1の内面1aに常に当接した状態となり、これにより、外装体1の内面1aとレドーム22の外面22bとの隙間dが前記した2組のいずれかの組の条件を満たす状態、即ち、外装体1の反射による損失が最も小さい状態に維持される。
【0072】
また、上記例では、隙間dを規定するために突当てピン25を用い、その先端が外装体1の内面に当接するようにコイルバネ41で付勢していたが、隙間規定の方法は、この例に限らない。例えば、突当てピン25とコイルバネ41を省略し、ボス2と基部31との間や、ボス4と基部31の間に、所定長のスペーサを挿入してネジ40を締付けることで、外装体1とレドーム22との隙間dを規定してもよい。
【0073】
上記例は前記一組目と二組目の条件を満たす場合であったが、外装体1の材質や厚さをアンテナの損失低減の目的で設定できる場合には、前記した三組目の条件を満たし反射損失ゼロの車載用アンテナが実現できる。
【0074】
図9は、その車載用アンテナ20′と車体側への取り付け例を示すものであり、間隔dは任意であるので、前記した車載用アンテナ20のレドーム22から隙間規制用の各突当てピン25を省略し、また、コイルバネ41も省略している。
【0075】
この車載用アンテナ20′の場合、前記した三組目の条件にしたがって、外装体1の少なくともレドーム22と対向する部分の電気長Qはπの整数倍w・πに設定され、レドーム22の電気長Pもπの整数倍v・πとなるようにその厚さと材質が設定されているので、隙間dと無関係に、系全体として反射損失ゼロの極めて低損失なアンテナとなっている。
【0076】
図9の例は外装体1のうち電波を通過させる部分、即ち、レドーム22に対向する部分の厚さtを他の部分より薄くした例であるが、前記三組目の条件を満たしていれば両者の厚さは任意である。これは前記実施形態の車載用アンテナ20についても同様である。
【0077】
また、上記した車載用アンテナ20、20′の各部の形状は種々変更可能であり、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、アンテナの全体形状は、前記した矩形だけでなく、円、長円、楕円であってもよく、また、レドーム22の形状についても、前記した矩形平板型だけでなく、枠部32と一体となった箱型であってもよい。
【0078】
また、上記説明は外装体1がバンパーの例を示したが、フェンダーミラーやドアミラーの樹脂製カバー、樹脂製フロントグリル等の合成樹脂製の外装体、フロントガラス、リアガラス等のガラス製の外装体、その他電波を通過させる非金属製の外装体の内側に設置する車載用アンテナについても本発明を同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の原理を説明するための図
【図2】外装体とレドームとの隙間と反射最小周波数との関係を示す図
【図3】周波数と反射率との関係を示す図
【図4】実施形態の構成例を示す斜視図
【図5】実施形態の分解斜視図
【図6】実施形態の要部の斜視図
【図7】実施形態の取り付け状態図
【図8】別の取り付け方法を示す図
【図9】他の実施形態とその取り付け方法を示す図
【符号の説明】
【0080】
1……外装体、2……ボス、3……ボディ、4……ボス、20、20′……車載用アンテナ、21……アンテナ本体、21a……送受信面、21b……穴、22……レドーム、23……リブ、24……穴、25……突当てピン、30……ベース、31……基部、32……枠部、33……ボス、34……穴、35……溝、36……穴、37……パッキン、38……ネジ、40……ネジ、41……コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの外面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長が前記外装体の電気長と等しくなるように形成され、
前記レドームと前記外装体との隙間の電気長と、前記レドームの電気長との和がπ/2の奇数倍に等しくなるように、前記外装体に対して前記レドームの位置を規定する規定手段(25)を有していることを特徴とする車載用アンテナ。
【請求項2】
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの表面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長と前記外装体の電気長との和がπの整数倍に等しくなるように形成され、
前記レドームと前記外装体との隙間の電気長がπの整数倍に等しくなるように、前記外装体に対して前記レドームの位置を規定する規定手段(25)を有していることを特徴とする車載用アンテナ。
【請求項3】
電波を送受信するための送受信面を一面側に有するアンテナ本体(21)と、該アンテナ本体の前記送受信面を覆うレドーム(22)とを有し、車の非金属製の外装体(1)の内面に前記レドームの表面を対向させた状態で配置される車載用アンテナにおいて、
前記外装体は、該外装体の厚さと該外装体内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長がπの整数倍に等しくなるように形成され、
前記レドームは、該レドームの厚さと該レドーム内を厚さ方向に伝搬する電波の波数との積で決まる電気長がπの整数倍に等しくなるように形成され、前記外装体に対して任意の隙間の位置に固定されていることを特徴とする車載用アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−140956(P2006−140956A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331030(P2004−331030)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】