説明

車載用カーペット及びその製造方法

【課題】車室内の下地用カーペット部材がタフテッドカーペットである場合にも、優れた防滑効果を有する車載用カーペット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】裏面側部材15の下地用カーペット部材11との当接面16には、下地用カーペット部材上に載置した場合に、車体の幅方向に沿って配置されうる多数の細畝17が形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内の床面上に載置される車載用カーペットに係り、特にニードルパンチ不織布からなる裏面側部材とを備えた車載用カーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車車室内の床面は、フロアパネル上に、所定の吸音部材が配置され、更に上記吸音部材の上面側にはいわゆるラインマットと称される下地用カーペット部材が敷設されている。
上記下地用カーペット部材の上面側には、車室内の外観品質の向上を目的として、いわゆるオプションマットと称される車載用カーペットが敷設されており、一般的に上記車載用カーペットは、基布上にパイルがタフトされた、いわゆるタフテッドカーペットのカーペット地の裏面に、所定の裏面側部材が接合されて形成されている。
【0003】
自動車の走行中、上記車載用カーペットは、運転者の足等によって頻繁に摩擦を受ける。
この際、上記車載用カーペットが上記下地用カーペット部材上で滑動すると、車室内の外観品質が低下することはもとより、上記車載用カーペットがアクセル/ブレーキペダル等に挟まり、アクセル/ブレーキペダル等の動作を阻害する恐れがあり、安全上の観点からも大きな問題となる。
従って、車室内での滑動を防止するために、車載用カーペットの裏面側部材に防滑用の突起部を設けた車載用カーペットが提案されている(特許文献1)。
図6に示すように、上記特許文献1にかかる車載用カーペット70は、表材71の下面側に熱可塑性エラストマーからなる弾性層72が積層一体化されると共に、上記弾性層72の下面73に多数の防滑用突起74が相互に間隔をあけて縦横に整列状態に配置されて形成されている。
また、上記防滑用突起74は、円盤状にされた台座部75の下方に、垂下状のスパイク状突起76が突設されて形成されている。
上記車載用カーペット70を車室内に敷設した場合は、上記防滑用突起76が上記下地用カーペット部材(図6には図示せず)のパイル内部に侵入して係合し、上記車載用カーペットが上記下地用カーペット部材上で滑動することを防止する。
しかしながら、上記車載用カーペット70の弾性層72は熱可塑性エラストマーからなるため、吸音作用を有しておらず、弾性層72により走行音や社内騒音が反射され、車体に施されている吸音部材の効果を阻害してしまうという不具合を有していた。
【0004】
上記不具合を受け、防滑効果と走行音等の吸音効果を共に有する車載用カーペットが提案されている(特許文献2)。
図7に示すように、上記特許文献2に係る車載用カーペット80は、表面材81と、上記表面材81の一方面に貼設された裏面材82から形成されている。
上記裏面材82は、ニードルパンチ加工により裏面に繊維83を突出させ、上記突出させた繊維83をシャーリングし、更に熱処理によって上記繊維83の経寸法よりも大きな樹脂塊84を形成することで製造されている。
上記車載用カーペット80を車室内の下地カーペット部材(図7には図示せず)に敷設した場合は、上記樹脂塊84が、上記下地用カーペット部材のパイル内部に侵入して係合することで、上記車載用カーペット80が上記下地用カーペット部材上で滑動することを防止するとともに、上記裏面材82がニードルパンチ加工によって製造された不織布であることから、走行音や社内騒音を反射することなく吸収することから、車体に施されている吸音部材の効果を阻害してしまうことがない。
【0005】
しかしながら、上記車載用カーペット80においては、上記下地用カーペット部材が、ニードルパンチカーペットで形成されている場合は、下地用カーペット部材の表面がリング状の繊維で形成されていることから、上記樹脂塊84が係合し易く防滑効果も大きいが、上記下地用カーペット部材がいわゆるタフテッドカーペットで形成されている場合は、上記下地用カーペット部材の表面が線状の繊維で形成されているため、上記樹脂塊84が上記下地用カーペット部材の内部に侵入しても、上記下地用カーペット部材の繊維と係合せず、防滑効果が働かないという不具合を有していた。
【0006】
近年においては、高級乗用車を中心に、より外観品質の高いタフテッドカーペットを下地用カーペット部材に用いるケースが増加している。
上記事情にも関わらず、タフテッドカーペットにおいても優れた防滑効果を有する車載用カーペットは現在に至るまで供給されておらず、自動車業界からの開発要請も非常に大きなものとなっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2002−301980号公報
【特許文献2】特開2002−4163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景を受け、本発明の技術的課題は、車室内の下地用カーペット部材がタフテッドカーペットである場合にも、優れた防滑効果を有する車載用カーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明にあっては、自動車のフロアパネル上に敷設された下地用カーペット部材上に載置され、カーペット地側基布と、上記カーペット地側基布の表面側から植設されたパイルとからなるカーペット地と、上記カーペット地の裏面側に接合された不織布からなる裏面側部材とを備えた車載用カーペットであって、上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面には、上記下地用カーペット部材上に載置下場合に、車体の幅方向に沿って配置されうる多数の細畝が形成されていることを特徴とする。
【0010】
従って、上記車体の幅方向に沿って配置されうる複数の細畝が、上記下地用カーペット部材のパイル内部に侵入し、パイル繊維と係合することによって、上記車載用カーペットは上記下地用カーペット部材上に固定され、車体の前後方向に対する滑動を防止する。
【0011】
また、請求項2に記載した発明にあっては、上記裏面側部材は、上記カーペット地側基布に接合された基布と、上記基布の裏面側に接合され、上記下地用カーペット部材に当接する不織布からなるニードルパンチ加工部とからなり、上記細畝は、複数のニードルパンチ用針を上記不織布に刺突することにより形成され、上記複数のニードルパンチ用針は、不織布の搬送方向に沿って配置された針列が搬送方向に直交する方向に複数設けられ、相互に隣接する針列は、搬送方向に沿った一対の針の間隔寸法の半分の間隔寸法分、搬送方向において互いにずれて設けられていることを特徴とする。
【0012】
従ってニードルパンチ加工部の一方面には、上記ニードルパンチ用針の刺突によって、不織布の搬送方向に対して直交する方向の細畝が形成される。
上記細畝は上記ニードルパンチ加工部を形成する不織布内部からニードルパンチ針の刺突によって掻き出された多数の繊維が密集して形成されている。
従って、上記ニードルパンチ加工部を有する車載用カーペットを、上記畝部を下方に向けて、タフテッドカーペットからなる下地用カーペット部材上に載置した場合、上記下地用カーペット部材のパイル内部に、上記細畝を形成する繊維が侵入し、上記下地用カーペット部材のパイルの線状の繊維と、上記細畝の繊維が互いに絡み合うことに加えて、上記細畝そのものが車体前後方向における滑り止めとなり、滑動を防止することから、上記車載用カーペットの、上記下地用カーペット部材上での車体の前後方向に対する滑動は防止される。
【0013】
また、請求項3に記載下発明にあっては、上記細畝は、密集したリング状の繊維が突出して形成されていることを特徴とする。
従って、上記ニードルパンチ加工部を裏面側部材に有する車載用カーペットを、上記畝部を下方に向けて、タフテッドカーペットからなる下地用カーペット部材上に載置した場合、上記下地用カーペット部材のパイル内部に、上記細畝を形成するリング状繊維が侵入し、上記下地用カーペット部材のパイルの線状繊維の先端部が上記リング状繊維のリングと係合し、いわゆる面ファスナーの原理によって、上記車載用カーペットは上記下地用カーペット部材上に固定され、車体の前後方向に対する滑動を防止する。
【0014】
また、請求項4に記載した発明にあっては、上記細畝は上記不織布の搬送方向に沿った針列における直近の2つのニードルパンチ用針の間隔寸法の半分の間隔寸法をおいて形成されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載した発明にあっては、上記間隔寸法は5mmであることを特徴とする。
従って、5mm間隔毎に多数の細畝が車体幅方向に沿って形成され、車体前後方向における滑動を防止する。
【0015】
また、請求項6に記載した発明にあっては、上記不織布はフェルト材である
ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載した発明にあっては、上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面には、熱可塑性樹脂が含浸されていることを特徴とする。
また、請求項8に記載した発明にあっては、上記熱可塑性樹脂は、アクリル
系樹脂であることを特徴とする。
従って、上記熱可塑性樹脂が有している粘性によって、上記車載用カーペットは、上記下地用カーペット部材上に密着した状態で載置される。
【0017】
また、請求項9に記載した発明にあっては、上記熱可塑性樹脂はスプレーにより、上記裏面側部材に噴霧されていることを特徴とする。
従って、上記熱可塑性樹脂が、上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面において均一に含浸する。
【0018】
また、請求項10に記載した発明にあっては、自動車のフロアパネル上に敷設された下地用カーペット部材上に載置され、カーペット地側基布と、上記カーペット地側基布の表面側から植設されたパイルとからなるカーペット地と、上記カーペット地の裏面側に接合された不織布からなる裏面側部材とを備え、上記裏面側部材をニードルパンチ加工により作成する車載用カーペットの製造方法であって、不織布の搬送方向に沿って設けられた針列が、搬送方向に直交する方向に沿って複数列設けられ、互いに隣接する列においては、上記針が搬送方向に沿った針間隔寸法の半分の距離寸法分、搬送方向においてずれて配設された多数のニードルパンチ針を備えたニードルパンチ加工装置により、順次、ニードルパンチ針を所定寸法を置いて、搬送される上記不織布に対して刺突する第一刺突工程と、その後、上記不織布を、上記第一刺突工程において刺突した針の、各列における隣接する針の、搬送方向における間隔寸法の半分の距離寸法分搬送させた後、上記ニードルパンチ針を刺突することにより、当該第一刺突工程において刺突されたニードルパンチ部に隣接した新たなニードルパンチ部を形成することにより、搬送方向に対して直交する方向に細畝を形成する第二刺突工程とを有することを特徴とする。
【0019】
従って、上記第一の刺突工程と、上記第二の刺突工程によって形成されたニードルパンチ部が搬送方向に対して直交する方向に沿って並列することによって、上記ニードルパンチ加工部の一方面に、搬送方向と直交する方向の細畝が形成される。
【0020】
また、請求項11に記載の発明にあっては、上記第一刺突工程、及び第二刺突工程によって、上記ニードルパンチ加工部に細畝が形成された後、上記ニードルパンチ加工部の厚さ方向における反細畝側面部に基布の裏面を接合する裏面側部材形成工程と、上記裏面側部材形成工程で形成された裏面側部材の基布の表面に上記カーペット地側基布を接合するカーペット地接合工程とを有することを特徴とする。
従って、請求項10の工程によって形成されたニードルパンチ加工部に、搬送方向と直交する方向の複数の細畝を有する裏面側部材を備えた、車載用カーペットが提供される。
【0021】
また、請求項12に記載の発明にあっては、隣接する針の、搬送方向における間隔寸法の半分の距離寸法は5mmであることを特徴とする。
従って、上記ニードルパンチ加工部に形成される、各細畝の間隔寸法は5mmとなる。
【0022】
また、請求項13に記載の発明にあっては、上記カーペット地接合工程の後に、上記裏面側部材に熱可塑性樹脂をスプレーによって噴霧する熱可塑性樹脂噴霧工程と、噴霧した上記熱可塑性樹脂を乾燥させる乾燥工程とを更に有することを特徴とする。
【0023】
従って、上記熱可塑性樹脂は、上記裏面側部材内部に均一に含浸する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1〜5記載の発明にあっては、上記車載用カーペットの裏面側部材の下地用カーペット部材との当接面に、上記下地用カーペット部材上に載置した場合に、車体の幅方向に沿って配置されうる多数の細畝が形成されていることによって、上記細畝の表面の繊維が下地用カーペット部材のパイル内部に侵入して係合し、下地用カーペット部材がタフテッドカーペットの場合であっても、優れた防滑効果を有する車載用カーペットを提供することができる。
また、上記車載用カーペットに車体の前後方向の力が加わった場合であっても、上記細畝が車体の幅方向に沿って複数配置されていることで、車体の前後方向に対しての、上記車載用カーペットの滑動が効果的に防止される。
特に請求項3の発明にあっては、上記細畝は、密集したリング状の繊維が突出して形成されていることから、下地用カーペット部材がいわゆるタフテッドカーペットの場合であっても、上記リング状繊維の中に、上記下地用カーペット部材のパイルの線状繊維が絡んで係合し、いわゆる面ファスナーの原理によって、上記下地用カーペット部材上における上記車載用カーペットの滑動がより強固に防止される。
【0025】
また、請求項6記載の発明にあっては、裏面側部材の不織布がフェルト材で形成されていることから、走行時の振動等によって発生する騒音が効率的に吸収されるため、請求項1の効果に加え、より高い吸音効果を得ることが可能な車載用カーペットを得ることが可能となる。
【0026】
また、請求項7〜9記載の発明にあっては、上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面には、アクリル系樹脂である、熱可塑性樹脂が含浸されていることから、請求項1の効果に加え、上記熱可塑性樹脂が有する粘性によって、上記車載用カーペットが上記下地用カーペット部材上に、より強固に固定され、上記車載用カーペットの滑動をより効果的に防止可能な車載用カーペットを提供することができる。
特に請求項9に記載した発明にあっては、上記熱可塑性樹脂はスプレーにより、上記裏面側部材に噴霧されていることから、上記熱可塑性樹脂がより均一に含浸され、防滑効果も上記裏面側部材全域で均一となる。
【0027】
また、請求項10〜12の発明にあっては、不織布の搬送方向に沿って設けられた針列が、搬送方向に直交する方向に沿って複数列設けられ、互いに隣接する列においては、上記針が搬送方向に沿った針間隔寸法の半分の距離寸法分、搬送方向においてずれて配設された多数のニードルパンチ針を備えたニードルパンチ加工装置により、順次、ニードルパンチ針を所定寸法を置いて、搬送される上記不織布に対して刺突する第一刺突工程と、その後、上記不織布を、上記第一刺突工程において刺突した針の、各列における隣接する針の、搬送方向における間隔寸法の半分の距離寸法分搬送させた後、上記ニードルパンチ針を刺突することにより、当該第一刺突工程において刺突されたニードルパンチ部に隣接した新たなニードルパンチ部を形成することにより、搬送方向に対して直交する方向に細畝を形成する第二刺突工程とを有することから、一回の刺突に動作間に搬送されるニードルパンチ加工部の寸法を、搬送方向における同一針列において互いに隣接する上記ニードルパンチ針の間隔寸法の半分となるように調整することによって、一般的なニードルパンチ加工装置に改造を加えることなく、上記ニードルパンチ加工部に、搬送方向に対して直交する方向の細畝形状を容易に形成することが可能となる。
また、請求項11に示すように、第二の刺突工程後に、上記ニードルパンチ加工部の厚さ方向における反細畝側面部に基布の裏面を接合する裏面側部材形成工程と、上記裏面側部材形成工程で形成された裏面側部材の基布の表面に上記カーペット地側基布を接合するカーペット地接合工程を有することによって、裏面側部材と下地用カーペット部材との当接面に、車体の幅方向に沿って配置された多数の細畝を有する車載用カーペットを容易に提供することが可能となる。
【0028】
また、請求項13の発明にあっては、上記裏面側部材に噴霧された熱可塑性樹脂の有する粘性によって、上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面が上記下地用カーペット部材に接着固定されるため、上記下地用カーペット上でより滑動しにくい車載用カーペットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、裏面側部材のニードルパンチ加工部がフェルト材で形成されており、且つ、上記裏面側部材に含浸させる熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂である場合を例として本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
(1)車載用カーペット
図1に示すように、本実施の形態に係る車載用カーペット10は、自動車のフロアパネル上に敷設された下地用カーペット部材11上に載置され、カーペット地側基布12と、上記カーペット地側基布12の表面側から植設されたパイル13とからなるカーペット地14と、上記カーペット地14の裏面側に接合された、フェルト材である不織布からなる裏面側部材15とを備えている。
図2に示すように、上記裏面側部材15の上記下地用カーペット部材11との当接面16には、上記下地用カーペット部材11上に載置した場合に、車体の幅方向(即ち、図2における紙面垂直方向)に沿って配置されうる多数の細畝17が形成されている。
上記裏面側部材15は、上記カーペット地側基布12に接合された基布19と、上記基布19の裏面側に接合され、上記下地用カーペット部材11に当接する不織布からなるニードルパンチ加工部20とからなり、上記細畝17は、図3に示すように、複数のニードルパンチ用針21を上記不織布20に刺突することにより形成され、上記複数のニードルパンチ用針21は、上記不織布20の搬送方向に沿って配置された針列22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、22j、22k、22L、22mが搬送方向に直交する方向に沿って設けられ、相互に隣接する針列(例えば22aと22b)は、10mmに形成された搬送方向に沿った一対の針の間隔寸法Pの、半分の5mmに形成された間隔寸法Q分、搬送方向において互いにずれて設けられている。
また、図2に示すように、上記細畝17は、密集したリング状の繊維23が突出して形成されている。
また、上記細畝17は、図1及び図3に示すように、上記不織布20の搬送方向に沿った針列における直近の2つのニードルパンチ用針21(図2には図示せず)の間隔寸法Pの半分の間隔寸法Qをおいて形成されている。
また、図2に示すように、上記裏面側部材15の上記下地用カーペット部材11との当接面16には、アクリル系樹脂である熱可塑性樹脂24がスプレーによって噴霧されることによって含浸されている。
(2)車載用カーペットの製造方法
本実施の形態に係る車載用カーペット10の製造方法は、図3に示すように、
不織布20の搬送方向Aに沿って設けられた針列22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、22j、22k、22L、22mが、搬送方向Aに直交する方向に沿って設けられ、互いに隣接する列(例えば22aと22b)においては、上記針列(例えば22aと22b)を構成する針21が、10mmに形成された搬送方向Aに沿った針間隔寸法Pの、半分の5mmに形成された距離寸法Q分、搬送方向Aにおいてずれて配設された、多数のニードルパンチ針21を備えたニードルパンチ加工装置25により、図4に示すように順次、ニードルパンチ針21を所定寸法Qを置いて、搬送される上記不織布20に対して刺突する第一刺突工程26と、その後、上記不織布20を、上記第一刺突工程20において刺突した針21の、各列における隣接する針21の、搬送方向Aにおける間隔寸法Pの半分の距離寸法Q分搬送させた後、上記ニードルパンチ針21を刺突することにより、当該第一刺突工程26において刺突されたニードルパンチ部28aに隣接した新たなニードルパンチ部28bを形成することにより、搬送方向Aに対して直交する方向に細畝17を形成する第二刺突工程27とを有している。
また、上記第一刺突工程26、及び第二刺突工程27によって、上記ニードルパンチ加工部20に細畝17が形成された後、図5に示すように上記ニードルパンチ加工部20の厚さ方向における反細畝側面部29に基布19の裏面を接合する裏面側部材形成工程30と、上記裏面側部材形成工程30で形成された裏面側部材15の基布19の表面に上記カーペット地側基布12を接合するカーペット地接合工程31とを有している。
また、図5に示すように、上記カーペット地接合工程31の後に、上記裏面側部材15にアクリル樹脂である熱可塑性樹脂24をスプレー(図示せず)によって噴霧する熱可塑性樹脂噴霧工程32と、噴霧した上記熱可塑性樹脂24を乾燥させる乾燥工程33とを更に有している。
【実施例】
【0030】
上記実施例の構成による車載用カーペットの実施例について図面を用いて詳述する。
図1は、本実施例の構成における車載用カーペット10の断面図である。
上記車載用カーペット10は、カーペット地14と裏面側部材15とが熱溶着等の手段によって圧着接合されて形成されている。
カーペット地14はカーペット地側基布12にパイル13がタフトされて形成された、いわゆるタフテッドカーペットである。
また、裏面側部材15は、フェルト材からなる不織布で形成されたニードルパンチ加工部20の表面部に基布19が圧着接合されて形成されており、上記裏面側部材15と上記カーペット地14とは、接着剤を介して圧着固定され、上記車載用カーペット10を構成している。
また、図2は上記車載用カーペット10を、フロアパネル18上に敷設された、タフテッドカーペットである下地用カーペット部材11上に載置した状態の断面図、及び上記車載用カーペット10の裏面側部材15の細畝17と上記下地用カーペット部材11のパイル36との接合部分の拡大断面図である。
上記下地用カーペット部材は、基布34に線状の繊維35が密集して形成されたパイル36がタフトされて形成されている。
上記車載用カーペット10を上記下地用カーペット部材11上に載置した場合、上記細畝17が矢印Bに示す車体の前後方向に対して直交する方向に配置されていることから、上記細畝17が上記下地用カーペット部材11のパイル36に圧接して、上記パイル36内に侵入することによる摩擦力と、上記下地用カーペット部材11のパイル36を構成する線状繊維35が、上記細畝17を構成する密集したリング状の繊維23に絡みつき、いわゆる面ファスナーの原理によって係合する接着力によって、上記車載用カーペット10は上記下地用カーペット部材11上において強固に固定されるため、上記下地用カーペット部材11が、いわゆるタフテッドカーペットで形成されている場合であっても、上記車載用カーペット10の滑動を効果的に防止することができる。
また、図1に示すように、上記ニードルパンチ加工部20にはアクリル系樹脂である熱可塑性樹脂24が含浸されていることから、上記熱可塑性樹脂24が有する粘性による接着作用によって、上記車載用カーペット10と上記下地用カーペット部材11とがより強固に接合され、滑動防止効果を更に高めることが可能となる。
【0031】
上記実施例の構成による車載用カーペットの製造方法の実施例について図面を用いて詳述する。
図3は、上記車載用カーペット10の裏面側部材15のニードルパンチ加工部20に細畝17を形成させるためのニードルパンチ加工装置25の側面図及び平面図を概念的に示している。
上記ニードルパンチ加工装置25は所定長を有する長方形板状の台座部37に複数のニードルパンチ用針21が配置されて形成されている。
上記ニードルパンチ用針21は、搬送方向に沿って配置された針列22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、22j、22k、22L、22mを形成し、上記針列22a〜22mは搬送方向に対して直交する方向に配置されている。
上記ニードルパンチ用針21は、同一列において、それぞれ10mm(間隔寸法P)ずつ離間して配置されている。
また、上記ニードルパンチ用針21は隣接する列間において、搬送方向に対して5mm(距離寸法Q)ずれて配置されている。
図4は、上記車載用カーペット10の製造方法における第一刺突工程26と、第二刺突工程27における、上記ニードルパンチ加工装置25の動作説明を示す平面図である。
図4の上段部は、上記第一刺突工程26における上記ニードルパンチ加工装置25の動作、下段は上記第二刺突工程27における上記ニードルパンチ加工装置25の動作をそれぞれ示している。
図4上段に示すように、帯状に形成された不織布からなるニードルパンチ加工部20が上記ニードルパンチ加工装置25上に所定長搬送された時点で、上記第一の刺突工程26において、上記ニードルパンチ針21によって上記ニードルパンチ加工部20が刺突され、針列22b、22d、22f、22h、22j、22Lの搬送方向において同一位置にあるニードルパンチ針21によって、ニードルパンチ部28aが形成される。
その後、図4下段に示すように、上記第二の刺突工程27において、帯状に形成された上記ニードルパンチ加工部20は、搬送方向に沿って距離寸法Q(5mm)搬送され、再度上記ニードルパンチ針21によって上記ニードルパンチ加工部20が刺突される。
この際、針列22a、22c、22e、22g、22i、22k、22mの搬送方向において同一位置にあるニードルパンチ針21によって、ニードルパンチ部28bが、上記第一刺突工程26において形成されたニードルパンチ部28aに隣接して形成される。
上記第一刺突工程26と第二刺突工程27が所定回数繰り返されることによって、上記ニードルパンチ加工部20には、距離寸法Q(5mm)間隔毎に、上記ニードルパンチ部28a、28bによって、搬送方向に直交する方向に細畝17が形成される。
その後、図5に示すように上記裏面側部材形成工程30において、上記第一刺突工程26と第二刺突工程27によって細畝17が形成されたニードルパンチ加工部20の厚さ方向における反細畝側面に基布19が熱圧着手段等によって接合された後、上記カーペット地接合手段31において、接着剤等を介して、上記基布19の表面にカーペット地14が接合される。
その後、熱可塑性樹脂噴霧工程32において、上記裏面側部材15のニードルパンチ加工部20に対して、スプレーによってアクリル系樹脂である熱可塑性樹脂24が噴霧され、乾燥工程33によって、熱可塑性樹脂24を乾燥させることによって、上記車載用カーペット10が完成する。
本方法によれば、一回の刺突動作の間に搬送されるニードルパンチ加工部20の寸法を、同一針列において互い隣接する上記ニードルパンチ針21の間隔寸法Pの半分(距離寸法Q)となるように調整することによって、一般的なニードルパンチ加工装置に改造を加えることなく、上記ニードルパンチ加工部20に、搬送方向に対して直交する方向の細畝17を容易に形成することが可能となる。
【0032】
ところで、上記カーペット地14のパイル13は所定の方向に僅かに傾斜しており、傾斜する方向を順目と称し、その逆方向を逆目と称している。
図5に示す上記カーペット地接合工程31において、カーペット地14を上記裏面側部材15に接合する場合、一般的に、上記カーペット地14のパイル13が搬送法方向に対して順目若しくは逆目となるよう接合する。
また、完成した車載用カーペット10を車室内に敷設する場合、乗員の視覚による外観品質向上を目的として、一般的には、車体の進行方向に対して上記パイル13が順目、若しくは逆目となるように敷設する。
本製造方法によらずに、一般的なニードルパンチ加工工程によって畝を形成させた場合は、ニードルパンチ加工における搬送方向に沿った形状の畝となる。
従って、形成された畝の幅方向とパイルの目の傾斜方向とは、互いに直交することから、上記畝が車体の幅方向となるように車載用カーペットを敷設した場合には、上記パイルは車体の幅方向一方側に傾斜した状態となり、パイルの順目若しくは逆目方向から視認した場合とパイルの視覚上の色彩が変化し、乗員の視覚による外観品質が低下する。
これに対し、本実施例に示す製造方法によれば、図5に示すように、上記カーペット地接合工程31において、上記パイル13が搬送方向に対して順目若しくは逆目となる状態で、上記裏面側部材15に接合され、且つ上記細畝17が上記十面目、逆目方向に対して略直交するように接合されて、搬送方向に直交する方向に沿って形成された上記細畝17の各列が搬送方向に沿って並列するため、パイル13の目の傾斜方向と、上記細畝17の並列方向が一致する。
従って、カーペット地14を接合した後に、所定寸法に裁断することによって、車体の幅方向に沿って上記細畝17の各列が並列して配置されるように敷設した場合に、パイル13の目は、車体の進行方向に対して、順目若しくは逆目の状態となり、外観品質に優れた車載用カーペット10を、ニードルパンチ加工装置の構成を変更することなく、ニードルパンチ加工時の搬送速度を適宜に調整するのみで容易に製造可能となるという効果をも呈する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は自動車等の車室内に敷設される車載用カーペット及びその製造方法に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車載用カーペットの一実施の形態を示し、実施例の形態におけるカーペットの断面図である。
【図2】本発明に係る車載用カーペットの一実施の形態を示し、実施例の形態における車載用カーペットを下地用カーペット部材上に載置した状態の断面図、及び細畝と下地用カーペット部材の当接部分の拡大断面である。
【図3】本発明に係る車載用カーペットの製造方法の一実施の形態を示し、実施例の形態における、ニードルパンチ針の配列を概念的に示す側面図及び平面図である。
【図4】本発明に係る車載用カーペットの製造方法の一実施の形態を示し、実施例の形態における、第一刺突工程及び第二刺突工程を示すニードルパンチ加工装置の平面図である。
【図5】本発明に係る車載用カーペットの製造方法の一実施の形態を示すフローチャートである。
【図6】従来のカーペットの断面図である。
【図7】他の従来のカーペットの断面図である
【符号の説明】
【0035】
10 車載用カーペット
11 下地用カーペット部材
12 カーペット地側基布
13 パイル
14 カーペット地
15 裏面側部材
16 裏面側部材の下地用カーペット部材との当接面
17 細畝
18 フロアパネル
19 基布
20 ニードルパンチ加工部(不織布)
21 ニードルパンチ針
22a 針列
22b 針列
22c 針列
22d 針列
22e 針列
22f 針列
22g 針列
22h 針列
22i 針列
22j 針列
22k 針列
22L 針列
22m 針列
23 細畝のリング状繊維
24 熱可塑性樹脂
25 ニードルパンチ加工装置
26 第一刺突工程
27 第二刺突工程
28a ニードルパンチ部
28b ニードルパンチ部
29 ニードルパンチ加工部の厚さ方向における反細畝側面部
30 裏面側部材形成工程
31 カーペット地接合工程
32 熱可塑性樹脂噴霧工程
33 乾燥工程
34 下地用カーペット部材の基布
35 下地用カーペット部材のパイルの線状繊維
36 下地用カーペット部材のパイル
37 台座部
70 車載用カーペット
71 素材
72 弾性層
73 弾性層の下面
74 防滑用突起
75 防滑用突起の台座部
76 スパイク状突起
80 車載用カーペット
81 表面材
82 裏面材
83 繊維
84 樹脂塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロアパネル上に敷設された下地用カーペット部材上に載置され、カーペット地側基布と、上記カーペット地側基布の表面側から植設されたパイルとからなるカーペット地と、上記カーペット地の裏面側に接合された不織布からなる裏面側部材とを備えた車載用カーペットであって、
上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面には、上記下地用カーペット部材上に載置した場合に、車体の幅方向に沿って配置されうる多数の細畝が形成されていることを特徴とする車載用カーペット。
【請求項2】
上記裏面側部材は、上記カーペット地側基布に接合された基布と、上記基布の裏面側に接合され、上記下地用カーペット部材に当接する不織布からなるニードルパンチ加工部とからなり、
上記細畝は、複数のニードルパンチ用針を上記不織布に刺突することにより形成され、
上記複数のニードルパンチ用針は、不織布の搬送方向に沿って配置された針列が搬送方向に直交する方向に複数設けられ、
相互に隣接する針列は、搬送方向に沿った一対の針の間隔寸法の半分の間隔寸法分、搬送方向において互いにずれて設けられていることを特徴とする請求項1記載の車載用カーペット
【請求項3】
上記細畝は、密集したリング状の繊維が突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車載用カーペット。
【請求項4】
上記細畝は上記不織布の搬送方向に沿った針列における直近の2つのニードルパンチ用針の間隔寸法の半分の間隔寸法をおいて形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のカーペット。
【請求項5】
上記間隔寸法は5mmであることを特徴とする請求項4記載のカーペット。
【請求項6】
上記不織布はフェルト材であることを特徴とする請求項1記載の車載用カーペット。
【請求項7】
上記裏面側部材の上記下地用カーペット部材との当接面には、熱可塑性樹脂が含浸されていることを特徴とする請求項1記載の車載用カーペット。
【請求項8】
上記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項6記載の車載用カーペット。
【請求項9】
上記熱可塑性樹脂はスプレーにより、上記裏面側部材に噴霧されていることを特徴とする請求項7記載の車載用カーペット。
【請求項10】
自動車のフロアパネル上に敷設された下地用カーペット部材上に載置され、カーペット地側基布と、上記カーペット地側基布の表面側から植設されたパイルとからなるカーペット地と、上記カーペット地の裏面側に接合された不織布からなる裏面側部材とを備え、上記裏面側部材をニードルパンチ加工により作成する車載用カーペットの製造方法であって、
不織布の搬送方向に沿って設けられた針列が、搬送方向に直交する方向に沿って複数列設けられ、互いに隣接する列においては、上記針列を構成する針が搬送方向に沿った針間隔寸法の半分の距離寸法分、搬送方向においてずれて配設された多数のニードルパンチ針を備えたニードルパンチ加工装置により、順次、ニードルパンチ針を所定寸法を置いて、搬送される上記不織布に対して刺突する第一刺突工程と、
その後、上記不織布を、上記第一刺突工程において刺突した針の、各列における隣接する針の、搬送方向における間隔寸法の半分の距離寸法分搬送させた後、上記ニードルパンチ針を刺突することにより、当該第一刺突工程において刺突されたニードルパンチ部に隣接した新たなニードルパンチ部を形成することにより、搬送方向に対して直交する方向に細畝を形成する第二刺突工程とを有することを特徴とする車載用カーペットの製造方法。
【請求項11】
上記第一刺突工程、及び第二刺突工程によって、上記ニードルパンチ加工部に細畝が形成された後、上記ニードルパンチ加工部の厚さ方向における反細畝側面部に基布の裏面を接合する裏面側部材形成工程と、
上記裏面側部材形成工程で形成された裏面側部材の基布の表面に上記カーペット地側基布を接合するカーペット地接合工程とを有することを特徴とする車載用カーペットの製造方法。
【請求項12】
隣接する上記針の、搬送方向における間隔寸法の半分の距離寸法は5mmであることを特徴とする請求項10記載の車載用カーペットの製造方法。
【請求項13】
上記カーペット地接合工程の後に、上記裏面側部材に熱可塑性樹脂をスプレーによって噴霧する熱可塑性樹脂噴霧工程と、噴霧した上記熱可塑性樹脂を乾燥させる乾燥工程とを更に有することを特徴とする請求項10記載の車載用カーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22411(P2010−22411A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183835(P2008−183835)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(595032152)大伸工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】