説明

車載用タンク、その製造方法、及び、それを搭載した汚泥収集車

【課題】タンク高さ及びタンク重心を低くできるとともに、タンク長さも短くできる車載用タンク、その製造方法、及び、それを搭載した汚泥収集車を提供すること。
【解決手段】本発明の車載用タンクは、家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクであって、筒状に形成される胴部30と、胴部30の両端を閉塞する鏡板40とを備え、胴部30は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部31と、下方に位置する底面胴部32とを有し、天面胴部31を天面曲率Ra、底面胴部32を底面曲率Rbで構成し、天面曲率Raを底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バキュームカーや汚泥濃縮車に用いられる車載用タンク、この車載用タンクを搭載した汚泥収集車、車載用タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般家庭のふん尿等は、バキュームカーで収集されており、その後、浄化槽の普及によって、浄化槽汚泥を濃縮処理して運搬する浄化槽清掃車が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、バキュームカーに用いられる車載用タンクは、断面が楕円形のものが一般的であり、断面が楕円形の車載用タンクは、浄化槽清掃車にも多く利用されてきた。
一方、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクには、断面が円形のものも広く利用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−100221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の断面が楕円形の車載用タンクでは、容積を大きくするためには、タンク長さを長くしなければならず、従来の断面が円形の車載用タンクでは、タンク高さや重心が高くなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、タンク高さ及びタンク重心を低くできるとともに、タンク長さも短くできる車載用タンク、その製造方法、及び、それを搭載した汚泥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の車載用タンクは、家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクであって、筒状に形成される胴部と、前記胴部の両端を閉塞する鏡板とを備え、前記胴部は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部と、下方に位置する底面胴部とを有し、前記天面胴部を天面曲率Ra、前記底面胴部を底面曲率Rbで構成し、前記天面曲率Raを前記底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車載用タンクにおいて、前記天面胴部と前記底面胴部とを一対の側面胴部でつなぎ、前記側面胴部を側面曲率Rcで構成し、前記側面曲率Rcを1つ又は複数の曲率で構成したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の車載用タンクにおいて、前記胴部を、板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、前記板厚Taを前記板厚Tbよりも薄く構成し、前記天面胴部を、前記第1胴部用板によって形成したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の車載用タンクにおいて、前記胴部を、板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、前記板厚Taを前記板厚Tbよりも薄く構成し、前記第2胴部用板を、前記底面胴部に用いたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載の車載用タンクにおいて、2枚の前記第1胴部用板と1枚の前記第2胴部用板とを用い、前記第2胴部用板の両端にそれぞれ前記第1胴部用板を接続し、2枚の前記第1胴部用板の端部同士を接続して筒状に形成し、前記第1胴部用板同士の接続部を車両搭載時において頂部となる位置としたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の車載用タンクにおいて、前記第1胴部用板と前記第2胴部用板との前記接続部における段差が、外周面となるように筒状に形成したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項3から請求項6のいずれかに記載の車載用タンクにおいて、前記胴部を前記車両に固定するタンク脚を備え、前記タンク脚を前記第2胴部用板に設けたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明の車載用タンクの製造方法は、家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクの製造方法であって、2枚の第1胴部用板と、前記第1胴部用板よりも板厚が厚い1枚の第2胴部用板とを用い、前記第2胴部用板の両端にそれぞれ前記第1胴部用板を溶接する接続工程と、溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げる胴部形成工程とを有し、前記胴部形成工程では、一方の前記第1胴部用板に、天面曲率Raを施す第1工程と、前記第1工程の後に、一方の前記第1胴部用板に、側面曲率Rcを施す第2工程と、前記第2工程の後に、前記第2胴部用板に、底面曲率Rbを施す第3工程と、前記第3工程の後に、他方の前記第1胴部用板に、前記側面曲率Rcを施す第4工程と、前記第4工程の後に、他方の前記第1胴部用板に、前記天面曲率Raを施す第5工程とを有し、前記天面曲率Raを、前記底面曲率Rbよりも大きな曲率とするとしたことを特徴とする。
請求項9記載の本発明の車載用タンクは、請求項8に記載の車載用タンクの製造方法で製造した車載用タンクであって、前記第2胴部用板にタンク脚を設けたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明の汚泥収集車は、請求項1から請求項7、及び請求項9のいずれかに記載の車載用タンクを搭載した汚泥収集車であって、前記車載用タンクの下方で車両フレームの上方に収納空間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車載用タンクによれば、同一容積の断面楕円形タンクと比較して、タンク長さを短くでき、また同一容積の断面円形タンクと比較して、タンク高さ及びタンク重心を低くすることができるため、車載時に車両の最大安定傾斜角を大きくでき、また車高を低くできるためにタンク上部にホースリールなどの配置が可能となる。
また本発明の車載用タンクの製造方法によれば、特に胴部形成工程を連続して行えることで、容易に行うことができる。
また、本発明の汚泥収集車によれば、車載用タンクの下方には、断面円形のタンクや断面楕円形のタンクと比較して大きなスペースが確保できるため、このスペースを収納空間とすることで、低い位置に各種の部材や備品を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例による汚泥収集車の側面図
【図2】本実施例による汚泥収集車に搭載する車載用タンクの外形を示す正面図及び側面図
【図3】本実施例による車載用タンクの外形と、他の形状によるタンクとの比較を示す図
【図4】本実施例による車載用タンクにタンク脚を設けた状態を示す図
【図5】本実施例による車載用タンクの胴部の構成と製造工程を示す図
【図6】本実施例による車載用タンクを示す六面図
【図7】本発明の他の実施例による車載用タンクを示す六面図
【図8】本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図
【図9】本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図
【図10】本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図
【図11】本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図
【図12】同車載用タンクの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による車載用タンクは、筒状に形成される胴部と、胴部の両端を閉塞する鏡板とを備え、胴部は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部と、下方に位置する底面胴部とを有し、天面胴部を天面曲率Ra、底面胴部を底面曲率Rbで構成し、天面曲率Raを底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成したものである。本実施の形態によれば、天面曲率Raを底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成することで、同一容積の断面楕円形タンクと比較して、タンク長さを短くでき、また同一容積の断面円形タンクと比較して、タンク高さ及びタンク重心を低くすることができるため、車載時に車両の最大安定傾斜角を大きくでき、また車高を低くできるためにタンク上部にホースリールなどの配置が可能となる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による車載用タンクにおいて、前記天面胴部と前記底面胴部とを一対の側面胴部でつなぎ、前記側面胴部を側面曲率Rcで構成し、側面曲率Rcを1つ又は複数の曲率で構成したものである。本実施の形態によれば、更にタンク容量を大きくすることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による車載用タンクにおいて、胴部を、板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された第1胴部用板と第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、板厚Taを板厚Tbよりも薄く構成し、天面胴部を、第1胴部用板によって形成したものである。本実施の形態によれば、天面胴部を底面胴部に対して薄い板厚で構成することで、タンク重心を更に低くすることができるため、車載時に車両の最大安定傾斜角を大きくできる。
本発明の第4の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による車載用タンクにおいて、胴部を、板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された第1胴部用板と第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、板厚Taを板厚Tbよりも薄く構成し、第2胴部用板を、底面胴部に用いたものである。本実施の形態によれば、底面胴部を天面胴部に対して厚い板厚で構成することで、タンク重心を更に低くすることができるとともに、タンク内の経年劣化に対する耐久性を高めることができる。
本発明の第5の実施の形態は、第3又は第4の実施の形態による車載用タンクにおいて、2枚の第1胴部用板と1枚の第2胴部用板とを用い、第2胴部用板の両端にそれぞれ第1胴部用板を接続し、2枚の第1胴部用板の端部同士を接続して筒状に形成し、第1胴部用板同士の接続部を車両搭載時において頂部となる位置としたものである。本実施の形態によれば、異なる板厚の胴部用板を用いることで、軽量化を高めるとともに耐久性を高めることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第3から第5の実施の形態による車載用タンクにおいて、第1胴部用板と第2胴部用板との接続部における段差が、外周面となるように筒状に形成したものである。本実施の形態によれば、タンク内周面に段差が生じないために、単板やタンク内仕切り板を設けやすく、また耐久性も高まる。
本発明の第7の実施の形態は、第3から第6の実施の形態による車載用タンクにおいて、胴部を車両に固定するタンク脚を備え、タンク脚を第2胴部用板に設けたものである。本実施の形態によれば、厚い板厚の第2胴部用板にタンク脚を設けることで、タンク重量を確実に受けることができるとともに、タンクの軽量化を図ることができる。
本発明の第8の実施の形態による車載用タンクの製造方法は、2枚の第1胴部用板と、第1胴部用板よりも板厚が厚い1枚の第2胴部用板とを用い、第2胴部用板の両端にそれぞれ第1胴部用板を溶接する接続工程と、溶接により接続された第1胴部用板と第2胴部用板とを所定の曲率に曲げる胴部形成工程とを有し、胴部形成工程では、一方の第1胴部用板に、天面曲率Raを施す第1工程と、第1工程の後に、一方の第1胴部用板に、側面曲率Rcを施す第2工程と、第2工程の後に、第2胴部用板に、底面曲率Rbを施す第3工程と、第3工程の後に、他方の第1胴部用板に、側面曲率Rcを施す第4工程と、第4工程の後に、他方の第1胴部用板に、天面曲率Raを施す第5工程とを有し、天面曲率Raを、底面曲率Rbよりも大きな曲率としたものである。本実施の形態によれば、同一容積の断面円形タンクと比較して、タンク高さ及びタンク重心を低くできる車載用タンクの製造を、特に胴部形成工程を連続して行えることで、容易に行うことができる。
本発明の第9の実施の形態による車載用タンクは、第8の実施の形態による車載用タンクの製造方法で製造した車載用タンクであって、第2胴部用板にタンク脚を設けたものである。本実施の形態によれば、厚い板厚の第2胴部用板にタンク脚を設けることで、タンク重量を確実に受けることができるとともに、タンクの軽量化を図ることができる。
本発明の第10の実施の形態による汚泥収集車は、第1から第7、第9の実施の形態による車載用タンクを搭載した汚泥収集車であって、車載用タンクの下方で車両フレームの上方に収納空間を形成したものである。本実施の形態によれば、車載用タンクの下方には、断面円形のタンクや断面楕円形のタンクと比較して大きなスペースが確保できるため、このスペースを収納空間とすることで、低い位置に各種の部材や備品を収納することができる。
【実施例】
【0010】
以下本発明の一実施例による汚泥収集車について説明する。
図1は本実施例による汚泥収集車の側面図である。
本実施例による汚泥収集車は、車両フレーム10上に、乗車キャビン11と車載用タンク20と汚泥分離機12とを搭載し、車載用タンク20は、乗車キャビン11の後方に配置され、汚泥分離機12は車載用タンク20の後方に配置される。
車載用タンク20は、隔壁21によって、内部が反応室20aと汚泥室20bに区分されている。反応室20aの上部には反応室用マンホール部22が、汚泥室20bの上部には汚泥室用マンホール部23が設置されている。また、車載用タンク20の上部には、ホースリール13が設置されている。
【0011】
一般家庭などの浄化槽内の汚泥は、表面に浮かぶスカムと、大部分が水分である中間汚水と、底部に溜まった沈降汚泥とに分けられ、主として中間汚水が反応室20aに収容され、スカムと沈降汚泥が汚泥室20bに収容される。
反応室20aに収集された中間汚水には、凝集液が添加され、エアー吹き込みによるバブリングで真空攪拌されてフロックが形成される。そして、フロックを有する固液混合の汚泥が汚泥分離機12に移送されて、濃縮汚泥の固形分と水分に分離され、濃縮汚泥は汚泥室20bに給送され、水分(分離水)は浄化槽に張水として給送される。
本実施例で示す車載用タンク20は、家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、又は反応処理するが、汚泥の収容時や反応処理時には、タンク内を負圧にするためタンク内外で圧力差が生じるものである。従って、車載用タンク20は、所定の圧力に耐えうる耐圧構造であることが必要である。
【0012】
図2は本実施例による汚泥収集車に搭載する車載用タンクの外形を示す正面図及び側面図である。
図2(a)は本実施例による車載用タンクの正面図、図2(b)は同車載用タンクの側面図である。
車載用タンク20は、筒状に形成される胴部30と、胴部30の両端を閉塞する鏡板40とから構成される。
胴部30は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部31と、下方に位置する底面胴部32と、天面胴部31と底面胴部32とをつなぐ一対の側面胴部33とから構成される。
【0013】
天面胴部31は天面曲率Ra、底面胴部32は底面曲率Rb、側面胴部33を側面曲率Rcで構成する。
ここで、天面曲率Raは、底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成し、側面曲率Rcよりも大きな曲率で構成する。また、底面曲率Rbは側面曲率Rcよりも大きな曲率で構成する。
なお、本実施例では、側面胴部33を一つの側面曲率Rcとしたが、側面曲率Rcを複数の曲率で構成してもよい。
【0014】
図3は本実施例による車載用タンクの外形と、他の形状によるタンクとの比較を示す図である。
図3(a)は本実施例と比較例による車載用タンクの正面図、図3(b)は同車載用タンクの側面図である。
いずれの車載用タンクについても、反応室の有効容積を2500リットル、汚泥室の有効容積を1500リットルとして比較している。
本実施例による車載用タンクは、タンク高さ1149mm、タンク幅1697mm、タンク長さ2980mmに対して、比較例121による断面が円形の車載用タンクは、タンク高さ1350mm、タンク幅1350mm、タンク長さ3250mmとなり、比較例122による断面が楕円形の車載用タンクは、タンク高さ958.5mm、タンク幅1697mm、タンク長さ3460mmとなる。
【0015】
図示のように、本実施例による車載用タンクは、比較例121による車載用タンクと比較すると、タンク高さ及びタンク重心を低くできるとともに、タンク長さも短くできることがわかる。
また、本実施例による車載用タンクは、比較例122による車載用タンクと比較すると、タンク長さを短くできることがわかる。
図3(a)において、斜線で示した領域が収納空間24である。本実施例による車載用タンクによれば、比較例121による車載用タンクや、比較例122による車載用タンクと比較して収納空間24を広く形成することができる。本実施例による収納空間24は、車載用タンクの下方で車両フレーム10の上方に形成される空間である。
【0016】
図4は本実施例による車載用タンクにタンク脚を設けた状態を示す図であり、図4(a)は本実施例による車載用タンクの正面図、図4(b)は同車載用タンクの側面図、図4(c)は同車載用タンクの底面図、図4(d)は同車載用タンクの要部拡大正面図である。
本実施例による車載用タンクの底面胴部32には、複数のタンク脚25を設けている。それぞれのタンク脚25は、正面視でタンク中心を通る鉛直面26に対して対称に脚部25aと脚部25bが配置されている。
脚部25aと脚部25bとは、脚部25aと脚部25bとの車両側の外側間隔L3が車輌フレーム幅となるように配置され、第2胴部用板32に設けられている。
【0017】
図5は本実施例による車載用タンクの胴部の構成と製造工程を示す図である。
図5(a)は本実施例による車載用タンクの胴部を構成する胴部用板を示す平面図、図5(b)は同胴部用板の側面図、図5(c)は同胴部用板の曲げ形成工程の説明図である。
本実施例による車載用タンクの胴部30は、2枚の第1胴部用板51と1枚の第2胴部用板52とを用い、接続工程では第2胴部用板52の両端にそれぞれ第1胴部用板51の端部を付きあわせて接続する。
天面胴部31及び側面胴部33は第1胴部用板51によって形成され、底面胴部32は第1胴部用板51及び第2胴部用板52によって形成される。従って、第1胴部用板51は天面胴部31、底面胴部32、及び側面胴部33に用いられ、第2胴部用板52は底面胴部32に用いられる。
第1胴部用板51の長さをL1、第2胴部用板52の長さをL2とすると、L2はL1以下とすることが好ましい。また、第2胴部用板52の長さL2は、タンク脚25の車両側の外側間隔L3の1.5倍以上であり3倍以下であることが好ましい。
第2胴部用板52の長さL2を、第1胴部用板51の長さL1以下とすることで、収納物による耐摩耗性を高め、荷重に対する強度を確保し、タンク重量を低減することができる。また、第2胴部用板52の長さL2を、タンク脚25の車両側の外側間隔L3の1.5倍から3倍とすることで車両フレーム10から受ける振動や捻れに対しても十分な強度を持たせることができる。
【0018】
図5(a)(b)は、接続工程後の状態を示している。
第1胴部用板51の板厚Taは、第2胴部用板52の板厚Tbよりも薄く構成している。例えば、第1胴部用板51の板厚Taに対して第2胴部用板52の板厚Tbを1.3倍程度とする。
接続工程の後に、溶接により接続された第1胴部用板51と第2胴部用板52とを所定の曲率に曲げる胴部形成工程を行う。
この胴部形成工程では、図5(c)に示すように、溶接により接続された第1胴部用板51と第2胴部用板52とを一方向に移動させながら、複数のローラー27によって第1胴部用板51及び第2胴部用板52に所定の曲率の曲げ形状を付与する。
【0019】
胴部形成工程では、一方の第1胴部用板51に天面曲率Raを施す第1工程と、第1工程の後に、一方の第1胴部用板51に側面曲率Rcを施す第2工程と、第2工程の後に、第2胴部用板52に底面曲率Rbを施す第3工程と、第3工程の後に、他方の第1胴部用板51に側面曲率Rcを施す第4工程と、第4工程の後に、他方の第1胴部用板51に天面曲率Raを施す第5工程とを有する。なお、第3工程において、第2胴部用板52とともに、一方の第1胴部用板51及び他方の第1胴部用板51に底面曲率Rbを施す。また、胴部形成工程では、第1胴部用板51と第2胴部用板52との接続部53における段差54が、外周面となるように形成する。
胴部形成工程の後に、2枚の第1胴部用板51の端部同士を接続して筒状に形成され、その後に鏡板40が設けられる。第1胴部用板51同士の接続部は、車両搭載時において頂部となる位置に配置される。
【0020】
図6は本実施例による車載用タンクを示す六面図、図7は本発明の他の実施例による車載用タンクを示す六面図、図8は本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図、図9は本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図、図10は本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図、図11は本発明の更に他の実施例による車載用タンクを示す六面図、図12はこれらの車載用タンクを搭載した状態を示すバキュームカーの側面図である。
図6から図11に示す車載用タンクは、胴部を筒状に形成し、胴部の両端に鏡板を接合した状態であり、その後に消費者要望や使用用途に応じて、汚泥などの収容物の量を確認するための開口や汚泥を収容又は排出するための開口が必要に応じて形成され、図1で示すような汚泥収集車以外に、図12で示すようにバキュームカーに搭載されて用いられる。
【0021】
以上のように本実施例によれば、筒状に形成される胴部30と、胴部30の両端を閉塞する鏡板40とを備え、胴部30は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部31と、下方に位置する底面胴部32とを有し、天面胴部31を天面曲率Ra、底面胴部32を底面曲率Rbで構成し、天面曲率Raを底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成したことで、同一容積の断面円形タンクと比較して、タンク高さ及びタンク重心を低くすることができるため、車載時に車両の最大安定傾斜角を大きくでき、また車高を低くできるためにタンク上部にホースリール13などの配置が可能となる。
また、本実施例によれば、天面胴部31と底面胴部32とを一対の側面胴部33でつなぎ、側面胴部33を側面曲率Rcで構成し、天面曲率Raを側面曲率Rcよりも大きな曲率で構成しており、側面曲率Rcの側面胴部33を設けることでタンク容量を大きくすることができる。
また、本実施例によれば、側面曲率Rcを複数の曲率で構成したことで、更にタンク容量を大きくすることができる。
また、本実施例によれば、胴部30を、板厚Taの第1胴部用板51の端部と、板厚Tbの第2胴部用板52の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された第1胴部用板51と第2胴部用板52とを所定の曲率に曲げることで構成し、板厚Taを板厚Tbよりも薄く構成し、天面胴部31を、第1胴部用板51によって形成し、天面胴部31を底面胴部32に対して薄い板厚で構成することで、タンク重心を更に低くすることができるため、車載時に車両の最大安定傾斜角を大きくできる。
また、本実施例によれば、胴部30を、板厚Taの第1胴部用板51の端部と、板厚Tbの第2胴部用板52の端部とを付きあわせて溶接し、溶接により接続された第1胴部用板51と第2胴部用板52とを所定の曲率に曲げることで構成し、板厚Taを板厚Tbよりも薄く構成し、第2胴部用板52を、底面胴部32に用い、底面胴部32を天面胴部31に対して厚い板厚で構成することで、タンク重心を更に低くすることができるとともに、タンク内の経年劣化に対する耐久性を高めることができる。
また、本実施例によれば、2枚の第1胴部用板51と1枚の第2胴部用板52とを用い、第2胴部用板52の両端にそれぞれ第1胴部用板51を接続し、2枚の第1胴部用板51の端部同士を接続して筒状に形成し、第1胴部用板51同士の接続部53を車両搭載時において頂部となる位置とし、異なる板厚の第1胴部用板51と第2胴部用板52を用いることで、軽量化を高めるとともに耐久性を高めることができる。
また、本実施例によれば、第1胴部用板51と第2胴部用板52との接続部53における段差54が、外周面となるように筒状に形成したことで、タンク内周面に段差54が生じないために、単板やタンク内仕切り板を設けやすく、また耐久性も高まる。
また、本実施例によれば、胴部30を車両に固定するタンク脚25を備え、厚い板厚の第2胴部用板52にタンク脚25を設けることで、タンク重量を確実に受けることができるとともに、タンクの軽量化を図ることができる。
また、本実施例によれば、2枚の第1胴部用板51と、第1胴部用板51よりも板厚が厚い1枚の第2胴部用板52とを用い、第2胴部用板52の両端にそれぞれ第1胴部用板51を溶接する接続工程と、溶接により接続された第1胴部用板51と第2胴部用板52とを所定の曲率に曲げる胴部形成工程とを有し、胴部形成工程では、一方の第1胴部用板51に、天面曲率Raを施す第1工程と、第1工程の後に、一方の第1胴部用板51に、側面曲率Rcを施す第2工程と、第2工程の後に、第2胴部用板52に、底面曲率Rbを施す第3工程と、第3工程の後に、他方の第1胴部用板51に、側面曲率Rcを施す第4工程と、第4工程の後に、他方の第1胴部用板51に、天面曲率Raを施す第5工程とを有し、天面曲率Raを、底面曲率Rbよりも大きな曲率とするとともに、側面曲率Rcよりも大きな曲率としたことで、同一容積の断面円形タンクと比較して、タンク高さ及びタンク重心を低くできる車載用タンク20の製造を、特に胴部形成工程を一連の動作で行えることで、容易に行うことができる。
また、本実施例によれば、車載用タンク20の下方で車両フレーム10の上方に収納空間24を形成したことで、車載用タンク20の下方には、断面円形のタンクや断面楕円形のタンクと比較して大きなスペースが確保できるため、このスペースを収納空間24とすることで、低い位置に各種の部材や備品を収納することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の車載用タンクは、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクに用いられ、汚泥などの液状物の他、液体や気体を収容する車載用タンクにも利用できる。
【符号の説明】
【0023】
10 車両フレーム
20 車載用タンク
24 収納空間
25 タンク脚
26 鉛直面
30 胴部
31 天面胴部
32 底面胴部
33 側面胴部
40 鏡板
51 第1胴部用板
52 第2胴部用板
53 接続部
54 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクであって、
筒状に形成される胴部と、前記胴部の両端を閉塞する鏡板とを備え、
前記胴部は、車両搭載時において、上方に位置する天面胴部と、下方に位置する底面胴部とを有し、
前記天面胴部を天面曲率Ra、前記底面胴部を底面曲率Rbで構成し、
前記天面曲率Raを前記底面曲率Rbよりも大きな曲率で構成したことを特徴とする車載用タンク。
【請求項2】
前記天面胴部と前記底面胴部とを一対の側面胴部でつなぎ、
前記側面胴部を側面曲率Rcで構成し、前記側面曲率Rcを1つ又は複数の曲率で構成したことを特徴とする請求項1に記載の車載用タンク。
【請求項3】
前記胴部を、
板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、
溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、
前記板厚Taを前記板厚Tbよりも薄く構成し、
前記天面胴部を、前記第1胴部用板によって形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載用タンク。
【請求項4】
前記胴部を、
板厚Taの第1胴部用板の端部と、板厚Tbの第2胴部用板の端部とを付きあわせて溶接し、
溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げることで構成し、
前記板厚Taを前記板厚Tbよりも薄く構成し、
前記第2胴部用板を、前記底面胴部に用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載用タンク。
【請求項5】
2枚の前記第1胴部用板と1枚の前記第2胴部用板とを用い、前記第2胴部用板の両端にそれぞれ前記第1胴部用板を接続し、2枚の前記第1胴部用板の端部同士を接続して筒状に形成し、前記第1胴部用板同士の接続部を車両搭載時において頂部となる位置としたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車載用タンク。
【請求項6】
前記第1胴部用板と前記第2胴部用板との前記接続部における段差が、外周面となるように筒状に形成したことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の車載用タンク。
【請求項7】
前記胴部を前記車両に固定するタンク脚を備え、前記タンク脚を前記第2胴部用板に設けたことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の車載用タンク。
【請求項8】
家庭用汚泥や産業廃棄物汚泥などの液状物を収容し、内外で圧力差が生じることのある車載用タンクの製造方法であって、
2枚の第1胴部用板と、前記第1胴部用板よりも板厚が厚い1枚の第2胴部用板とを用い、
前記第2胴部用板の両端にそれぞれ前記第1胴部用板を溶接する接続工程と、
溶接により接続された前記第1胴部用板と前記第2胴部用板とを所定の曲率に曲げる胴部形成工程と
を有し、
前記胴部形成工程では、
一方の前記第1胴部用板に、天面曲率Raを施す第1工程と、
前記第1工程の後に、一方の前記第1胴部用板に、側面曲率Rcを施す第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第2胴部用板に、底面曲率Rbを施す第3工程と、
前記第3工程の後に、他方の前記第1胴部用板に、前記側面曲率Rcを施す第4工程と、
前記第4工程の後に、他方の前記第1胴部用板に、前記天面曲率Raを施す第5工程と
を有し、
前記天面曲率Raを、前記底面曲率Rbよりも大きな曲率としたことを特徴とする車載用タンクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の車載用タンクの製造方法で製造した車載用タンクであって、前記第2胴部用板にタンク脚を設けたことを特徴とする車載用タンク。
【請求項10】
請求項1から請求項7、及び請求項9のいずれかに記載の車載用タンクを搭載した汚泥収集車であって、前記車載用タンクの下方で車両フレームの上方に収納空間を形成したことを特徴とする汚泥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−144294(P2012−144294A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6327(P2011−6327)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】