説明

車載用バッテリの充電回路

【課題】この発明は、車載用バッテリへの入力電流のピークを抑え、平準化を図りながら車載用バッテリを充電する充電回路の提供を目的とするものである。
【解決手段】現在時刻を計時する計時部2と、車の利用時刻を入力するための入力部3と、現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリ9の定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を表示する表示部6と、現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリ9の定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を記憶する記憶部7と、車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出するとともに、車載用バッテリ9の定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出し、当該バッテリ充電量を最大充電可能時間で除して最小充電電流値を算出する演算部4と、最小充電電流値で車載用バッテリを充電する制御部5を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭用電源から電気自動車等の車載用バッテリに充電する充電回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの一般的な車載用バッテリの充電方法では、商用電源から供給された電流がAC/DCコンバータを経由して車載用バッテリに充電される。その構成は、図5に示すように、車載用バッテリ9に電力を供給する商用電源8と、商用電源8からの交流電流を直流電流に変換するAC/DC変換部1を有する充電回路Bと、AC/DC変換部1で変換された電力を蓄電する車載用バッテリ9とからなる。そして車載用バッテリ9への充電方法は、定電流-定電圧方式が一般的に採用されている。この定電流-定電圧方式は、充電開始時は、予備電流を流して車載用バッテリ9の電圧を検出し、検出された車載用バッテリ9の電圧に基づいた一定の電流で充電され(=定電流充電モード)、車載用バッテリ9の残量が増え、電圧が充電終了電圧近くまで達してくると、この電圧を上限にして固定し、定電圧で充電される(=定電圧充電モード)。定電流充電モードから定電圧充電モードへは自動的に移行する。そして図4に示すように、充電初期の定電流充電モードにおいては、車載用バッテリ9のバッテリ残量に関係なく、商用電源8から供給される電力が大きく、入力電流が多く流れる。
【特許文献1】特開平9−130982
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、充電初期の定電流充電モードでは、入力電流が多く必要とされるため、他の家電機器の使用制限が必要となる場合がある。他の家電機器の使用制限を避けるため、ブレーカの契約容量を上げることも考えられるが、その場合には、電気料の基本料金が高くなる。また、短時間で充電が行われることから、車載用バッテリの温度上昇が大きく、車載用バッテリの劣化が進む要因ともなる。
【0004】
そこで、この発明は、上記従来技術を考慮したものであって、車載用バッテリへの入力電流のピークを抑え、平準化を図りながら車載用バッテリを充電する充電回路の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、商用電源から供給された電力を用いて車載用バッテリを充電する充電回路において、
現在時刻を計時する計時部と、
車の利用時刻を入力するための入力部と、
現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を表示する表示部と、
現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、前記車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を記憶する記憶部と、
車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出するとともに、前記車載用バッテリから当該車載用バッテリの定格容量及びバッテリ残量を取得して、当該車載用バッテリの定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出し、当該バッテリ充電量を最大充電可能時間で除して最小充電電流値を算出する演算部と、
最小充電電流値で車載用バッテリを充電する制御部を有する、車載用バッテリの充電回路とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、最大充電可能時間およびバッテリ残量から最小充電電流値を算出し、最小充電電流値で車載用バッテリを充電する構成としたため、車載用バッテリへの入力電流のピークを抑え、平準化を図りながら充電を行うことができる。そのため、充電中の車載用バッテリの温度の上昇を抑制し、車載用バッテリの劣化を低減させることができる。また、ブレーカの契約容量を超えにくくなり、他の家電機器の使用制限を行う必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明は、商用電源から供給された電力を用いて車載用バッテリを充電する充電回路において、現在時刻を計時する計時部と、車の利用時刻を入力するための入力部と、現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を表示する表示部と、現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、前記車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を記憶する記憶部と、車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出するとともに、前記車載用バッテリから当該車載用バッテリの定格容量及びバッテリ残量を取得して、当該車載用バッテリの定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出し、当該バッテリ充電量を最大充電可能時間で除して最小充電電流値を算出する演算部と、最小充電電流値で車載用バッテリを充電する制御部を有する構成とすることによって、車載用バッテリへの入力電流のピークを抑え、平準化を図りながら充電を行うことができる。
【実施例1】
【0008】
図1は、この発明に係る充電回路Aの全体の構成示す概念図である。充電回路Aは、AC/DC変換部1、計時部2、入力部3、演算部4、制御部5、表示部6、記憶部7を有している。AC/DC変換部1は、入力端子(図示省略)を介して商用電源8と接続され、商用電源8から供給された交流電流を直流電流に変換する。計時部2は、時計であり、時刻を計時する。入力部3は、充電回路Aの利用者が車の利用時刻を入力可能な、例えばテンキー、キーボードである。演算部4は、例えば、CPU(=Central Process Unit)により構成することができ、記憶部7に記憶されているアプリケーションプログラム、OSや制御プログラム等を読み込んで実行することにより、充電回路Aの構成各部に指令を送り、又は自ら動作して充電回路Aの有する各種機能を実行・制御する。演算部4は特に、記憶部7から車の利用時刻、現在時刻を呼び出し、車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出する。また車載用バッテリ9の定格容量、バッテリ残量を呼び出し、定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出する。さらにバッテリ充電量を最大充電可能時間で除して、最小充電電流値を算出する。
【0009】
制御部5は、出力端子(図示省略)を介して車載用バッテリ9と接続され、車載用バッテリ9に出力する電圧や電流を制御するための制御回路であり、制御部5は、演算部4で算出された最小充電電流値で、充電を行う。表示部6は、計時された現在時刻、入力された車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリ9のバッテリ充電量、最小充電電流値等、種々の情報や、充電回路Aを制御するコマンドやそれに対する応答出力等を表示する、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、モニタ等である。記憶部7は、例えば、プログラムの実行に必要な情報やファイル等を一時的に格納してCPU等の演算装置と高速通信可能なワークエリア等として機能するRAM(=Random Access Memory)を有している。記憶部7は特に、車載用バッテリ9から取得した当該車載用バッテリ9の定格容量及びバッテリ残量、演算部4で算出されたバッテリ充電量、現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、最小充電電流値等を格納し、また演算部4が演算を行うためのワークエリアとして機能する。なお、記憶部7と車載用バッテリ9は、相互通信可能に接続され、記憶部7は、車載用バッテリ9から当該バッテリの定格容量、バッテリ残量を取得する。
【0010】
商用電源8から入力端子(図示省略)を介して供給された交流電流は、AC/DC変換部1で直流電流に変換され、制御部5は、演算部4で算出された最小充電電流値で、出力端子(図示省略)を介して車載用バッテリ9の充電を行う。一方、AC/DC変換部1で変換された直流電流は、内部電源部(図示省略)にも供給される。内部電源部は、充電回路A内の電源を確保するためのものであり、計時部2、入力部3、演算部4、制御部5、表示部6、記憶部7に接続されている。
【0011】
次に、図2を用いて充電回路Aを用いた充電の流れを具体的に説明する。充電回路Aの利用者は、充電回路Aの入力端子(図示省略)に商用電源8を接続し、充電回路Aの出力端子(省略)に車載用バッテリ9を接続する。まず、演算部4は、車載用バッテリ9から当該バッテリの定格容量、現在のバッテリ残量を取得し、記憶部7に格納する。また、演算部4は計時部2から現在時刻を取得し、記憶部7に格納する。一方、充電回路Aの利用者は、入力部3を用いて車の利用時刻を入力する。入力された車の利用時刻は、記憶部7に格納される。次に、演算部4は、記憶部7から車載用バッテリ9の定格容量、バッテリ残量を呼び出し、車載用バッテリ9の定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出する。また、演算部4は、記憶部7から現在時刻、車の利用時刻を呼び出し、車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出する。そして、バッテリ充電量を最大充電可能時間で除して最小充電電流値を算出する。それから制御部5は、演算部4で算出された最小充電電流値で、充電を開始する。バッテリの残量が増え、電圧が充電終了電圧近くまで達してくると、この電圧を上限にして固定し、定電圧充電モードへ自動的に移行する。
【0012】
このように、最大充電可能時間及びバッテリ充電量に基づいて最小充電電流値を算出し、充電初期の定電流充電モードにおいては、この最小充電電流値で、車載用バッテリ9の充電を行う構成としたため、図3及び図4に示すように、従来方式と比べて、車載用バッテリ9への入力電流のピークを抑え、平準化を図りながら充電を行うことができる。そのため、充電中の車載用バッテリ9の温度の上昇を抑制し、車載用バッテリ9の劣化を低減させることができる。詳しく述べると、図3に示す「t1」は、充電初期の定電流充電モードにおいて、最小充電電流値で充電を開始した充電開始時を示しており、従来方式と比べて、充電回路Aでは入力電流が1/2に抑えられている。また、図4に示すように、従来方式と比べて、充電回路Aでは、バッテリ残量0%の場合は、充電初期電流は1/2に抑えられ、バッテリ残量50%の場合は、充電初期電流は1/4に抑えられている。また図3に示す「t2」は、他の家電機器の使用が開始され、入力電流が上昇した状態を示している。従来方式では、入力電流が契約容量まで上昇しており、他の家電機器の使用制限を行う必要がある。一方、充電回路Aでは、入力電流とブレーカの契約容量との間にマージンが生じており、他の家電機器の使用制限を行う必要がない。なお、図3に示す「t3」は定電圧充電モードへの移行時を示している。
【0013】
また本実施例においては、現在時刻と車の利用時刻に基づいて最大充電可能時間を算出する構成を示したが、充電回路Aの利用者が入力部3を用いて、最大充電可能時間を入力する構成としても良い。このような構成とすれば、より簡易な構成で、最小充電電流値で車載用バッテリ9を充電するという本発明の目的を達成することができ、便宜である。
【0014】
さらに本実施例においては、充電回路Aの利用者が車の利用時刻を入力するために、入力部3を設ける構成としたが、表示部6をタッチパネルにして、入力部3を設けずに、表示部6から車の利用時刻を直接入力する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る充電回路Aの全体の構成を示す概念図である。
【図2】この発明に係る充電回路Aを用いた充電の流れを示す流れ図である。
【図3】従来方式の充電回路の時間-入力電流特性を示すグラフ及びこの発明に係る充電回路Aの時間-入力電流特性を示すグラフである。
【図4】従来方式の充電回路の充電初期電流等の特性を示す表及びこの発明に係る充電回路Aの充電初期電流(=最小充電電流値)等の特性を示す表である。
【図5】従来方式の充電回路Bの全体の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0016】
A:充電回路、B:充電回路、
1:AC/DC変換部、2:計時部、3:入力部、4:演算部、5:制御部、6:表示部、7:記憶部、8:商用電源、9:車載用バッテリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から供給された電力を用いて車載用バッテリを充電する充電回路において、
現在時刻を計時する計時部と、
車の利用時刻を入力するための入力部と、
現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を表示する表示部と、
現在時刻、車の利用時刻、最大充電可能時間、前記車載用バッテリの定格容量、バッテリ残量、バッテリ充電量、最小充電電流値を記憶する記憶部と、
車の利用時刻から現在時刻を減じて最大充電可能時間を算出するとともに、前記車載用バッテリから当該車載用バッテリの定格容量及びバッテリ残量を取得して、当該車載用バッテリの定格容量からバッテリ残量を減じてバッテリ充電量を算出し、当該バッテリ充電量を最大充電可能時間で除して最小充電電流値を算出する演算部と、
最小充電電流値で車載用バッテリを充電する制御部を有する構成としたことを特徴とする、車載用バッテリの充電回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−239540(P2011−239540A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107850(P2010−107850)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【Fターム(参考)】