説明

車載用電子装置およびその録画再生方法

【課題】 録画されたコンテンツデータを再生するまでの時間を短縮し、かつ搭載されたハードウエア資源を有効に活用することができる「車載用電子装置及びその録画再生方法」を提供する。
【解決手段】 車載用電子装置2は、コンテンツデータの識別データを解読することで再生用データを抽出するTSデコーダ40と、TSデコーダ40によって抽出された再生用データをデコードするMPEGデコーダ50Aと、コンテンツデータを録画する記録装置80と、録画装置80に録画された複数のコンテンツデータを多重化するTS多重化部110と、多重化コンテンツデータの再生を制御するコントローラ100Aとを有する。コントローラ100Aは、多重化コンテンツデータから各コンテンツデータのAVデータを抽出させ、MPEGデコーダ50Aから選択されたAVデータを出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波ディジタルテレビ放送やその他のメディアから得られるディジタルコンテンツデータを録画し、再生する機能を備えた電子装置に関し、特に、ディジタルコンテンツデータを多重化して録画する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波ディジタル放送では、1つのチャンネルが13のセグメントに分かれた構造となっており、ハイビジョン放送には12セグメント、通常画質の放送には4セグメントが割り当てられている。また、携帯電話など車載用のモバイル端末に対しては、画面が小さく解像度も低いため1セグメントのみを割り当てた低解像度の放送(以下、ワンセグ放送)を行っている。
【0003】
特許文献1は、映像番組を記録する際に、番組のジャンルや放送時間などを含む電子番組情報を合わせて記録し、電子番組情報の内容に応じて録画情報に分類番号(例えば、ドラマの分類番号は1、ニュースの分類番号は2など)を割り当てている。これにより、ユーザは分類番号から録画情報の内容を容易に推測することができる。
【特許文献1】国際公開WO 00/02386
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用電子装置は、ナビゲーション機能に加えて、テレビやラジオ放送を受信したり、マルチメディアデータを再生したり、これらのデータを録画する機能を搭載しつつある。こうした車載用電子装置は、家庭用の固定式録画再生装置と異なり、大容量のハードディスクドライブ(以下、HDDと称す)やブルーレイディスクのような大容量メディアへの録画機能を備えていないため、フルハイビジョン映像の録画をすることは困難である。そのため、車載用電子装置の録画ではワンセグの番組録画が主流となっている。
【0005】
図10は、従来の車載用電子装置の構成を示すブロック図である。車載用電子装置1は、4本のアンテナ10と、4本アンテナで受信された地上波放送を受信する4つのチューナ20と、チューナ20で受信された中間周波数信号IFを復調しディジタル化されたトランスポートストリームTSを生成するOFDM復調器30と、トランスポートストリームTSに含まれるヘッダ部を解読し、AV(オーディオ、ビデオ)データを抽出するTSデコーダ40と、TSデコーダ40によって抽出されたAVデータを受け取り、AVデータを復号化し、ビデオおよびオーディオを再生するMPEGデコーダ50と、MPEGデコーダ50によって復号化されたビデオデータを表示する液晶等のディスプレイ60と、復号化されたオーディオデータを出力するスピーカ70と、TSデコーダ40によって抽出されたコンテンツデータを録画するHDD等の記録装置80と、ユーザからの入力を受け取るユーザ入力90と、各部を制御するコントローラ100とを含んでいる。コントローラ100は、制御信号S1、S2、S3を介してそれぞれ復調器30、TSデコーダ40および記憶装置80を制御している。
【0006】
車載用電子装置における再生および録画は、次のようにして行われる。車載用電子装置10の電源がオンされ、ユーザ入力90から番組(またはコンテンツ)の選択が入力される。コントローラ100は、番組の選択に応じた制御信号S2をTSデコーダ40へ出力し、TSデコーダ40は、制御信号S2に基づきヘッダ部の解析に従いトランスポートストリームTSから対応する番組のAVデータを抽出する。抽出されたAVデータは、MPEGデコーダ50を介して映像および音声出力される。
【0007】
ユーザ入力90から番組録画の指示が入力されると、コントローラ100は、制御信号S2をTSデコーダ40へ出力し、TSデコーダ40は、制御信号S2に基づき録画番組のコンテンツデータを抽出し、記録装置80は、制御信号S3の指示に従い抽出されたコンテンツデータを録画する。録画は、選局したチャンネルからワンセグをパーシャル化して記録装置80に保存している。
【0008】
図11は、車載用電子装置で録画されたコンテンツデータを再生するときの動作フローである。車載用電子装置10の電源がオンされ(ステップS1)、ユーザ入力90から再生する録画番組(またはコンテンツ)の選択が成され(ステップS2)、これに応答してTSでコーダ40には、対応するコンテンツデータが記録装置80から入力される(ステップS3)。TSデコーダ40は、AVデータを抽出し、これらをMPEGデコーダ50へ出力する(ステップS4)。AVデータは、MPEGデコーダによってデコードされ(ステップS5)、録画番組がユーザに提供される(ステップS6)。ユーザ入力90から録画番組またはコンテンツの切替があると(ステップS7)、コントローラ100は、それに応じたコンテンツデータを記録装置80から選択し、選択したコンテンツデータをTSデコーダ40へ出力させ、再生が行われる。
【0009】
このように従来の録画再生方法では、録画されているコンテンツを切替える場合には、その都度、記録装置80からコンテンツデータを読み出して、これをTSデコーダ40で処理しなければならない。TSデコーダ40によるディジタル信号処理には一定の時間がかかるため、切替えられた録画番組を再生するまでには時間がかかってしまう。特に、コンテンツが多い場合には、ザッピングにストレスが増すという課題がある。
【0010】
また、車載用電子装置は、フルセグメントの地上波ディジタル放送に対応するため、TSデコーダ40やMPEGデコーダ50は、固定用受信機向けのハイエンドチップがシュリンクされていることが多く、ワンセグ放送の録画や再生のみの使用では、処理能力にかなりの余裕があり、すなわち、それらの性能が十分にかつ効果的に活用されていない。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決し、録画されたコンテンツデータを再生するまでの時間を短縮し、かつ搭載されたハードウエア資源を有効に活用することができる車載用電子装置およびその録画再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電子装置は、コンテンツデータを再生および録画する機能を備えたものであり、再生用データと当該再生用データを識別する識別データを含む符号化されたコンテンツデータを入力し、前記識別データを解読することで再生用データを抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された再生用データを復号化する復号化手段と、復号化された再生用データを出力する出力手段と、前記抽出手段によって抽出された再生用データとこれに対応する識別データを含むコンテンツデータを録画する録画手段と、前記録画手段に録画された複数のコンテンツデータの中から選択された複数のコンテンツデータを多重化した多重化コンテンツデータを作成し、多重化コンテンツデータを前記録画手段に録画する多重化手段と、前記多重化コンテンツデータの再生を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記抽出手段に前記多重化コンテンツデータから各コンテンツデータの再生用データを抽出させ、かつ前記制御手段は、各再生用データを復号化している前記復号化手段に選択された再生用データを出力させる。
【0013】
好ましくは前記多重化手段は、複数のコンテンツデータの各識別データを多重化する。電子装置はさらに、地上波ディジタル放送を受信する受信手段を含み、前記抽出手段は、前記受信手段から出力されたデータストリームを前記コンテンツデータとして入力することができる。好ましくは録画手段は、前記データストリームに含まれる特定のセグメントのコンテンツデータを録画する。
【0014】
好ましくは前記制御手段は、ユーザ入力に応じて前記復号化手段から出力される再生用データを選択する。好ましくは復号化手段は、各再生用データを連続的に復号化する。好ましくは電子装置はさらに、前記録画手段に録画された多重化コンテンツデータを外部へデータ転送するためのデータ転送手段を含む。
【0015】
本発明に係る車載用電子装置におけるコンテンツデータの録画および再生方法は、再生用データと当該再生用データを識別する識別データを含む符号化されたコンテンツデータを入力し、前記識別データを解読することで再生用データを抽出するステップと、前記抽出された再生用データとこれに対応する識別データとを含むコンテンツデータを録画するステップと、録画された複数のコンテンツデータの中から複数のコンテンツデータを選択し、複数のコンテンツデータを多重化した多重化コンテンツデータを作成し、多重化コンテンツデータを録画するステップと、前記多重化コンテンツデータの識別データを解読し、多重化コンテンツデータに含まれる複数のコンテンツデータから複数の再生用データを抽出するステップと、抽出された複数の再生用データを再生するステップと、再生された複数の再生用データから選択された再生用データを出力するステップとを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンテンツデータを多重化して録画し、録画された多重化コンテンツデータを再生するようにしたので、多重化されたコンテンツデータ内のコンテンツの切替であれば、従来と比較して、再生するまでの時間を短縮しすることができ、ザッピングによるストレスを緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、ナビゲーション機能、地上波ディジタル放送の受信機能を搭載した車載用電子装置を例に用いるが、本発明の電子装置は、必ずしもこのような態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る車載用電子装置の構成を示すブロック図であり、従来の説明で用いた図10と同一構成については同一参照番号を付してある。本実施例の車載用電子装置2は、4つのアンテナ10から地上波ディジタル放送を受信する4つのチューナ20、中間周波数の搬送波(IF)を復調して元の符号化されたディジタル信号に復調する直交周波数分割多重方式復調器(以下、OFDM復調器と称す)30、OFDM復調器30から出力されたトランスポートストリーム(以下、TSと称す)を入力し、TSの識別データを含むヘッダ部をデコードするTSデコーダ40、TSデコーダ40で分離または抽出されたAV(オーディオおよびビデオ)データを入力し、AVデータを復号化してビデオデータおよびオーディオデータを再生するMPEGデコーダ50A、ディスプレイ60、スピーカ70、TSデコーダ40からのTSコンテンツデータおよび多重化コンテンツデータを記録する記録装置80、ユーザ入力90、記録装置80に記録されたTSコンテンツデータから多重化された多重化コンテンツデータを作成し、これを記録装置80に記録するTS多重化部110、多重化コンテンツデータを外部機器に転送するデータ出力120、および各部を制御するコントローラ100Aを含んでいる。
【0019】
コントローラ100Aは、従来と同様に、制御信号S1、S2、S3を復調器30、TSデコーダ40、記録装置80に供給するが、加えて、制御信号S4、S5をMPEGデコーダ50A、およびTS多重化部110へ供給する。後述するように、TSデコーダ40が多重化コンテンツデータをデコードするとき、MPEGデコーダ50Aは、多重化コンテンツデータの多重化されたAVデータを同時に再生するが、コントローラ100Aからの制御信号S4に応答して選択されたAVデータを出力する。
【0020】
図2は、TSのデータ構造を説明する図である。多重化信号の1つであるTSは、地上波ディジタル放送の多重化信号として利用されており、映像、音声、データ放送などの個別のストリームをアプリケーションや伝送路の種類によらず共通の信号形式で扱い、1つのストリームとして伝送できることを特徴とする。
【0021】
TS200は、188バイトの固定長で分割したTSパケット210を連続した信号列である。TSパケット210は、ヘッダ部220とデータ部230を含む。ヘッダ部220には、TSパケットを識別するためのID(以下、TS_idと称す)や電子番組表(以下、EPGと称す)などを格納する識別部222、TSパケットに含まれる各PIDやプログラムの格納先をService_idで示すプログラムアソシエーションテーブル(以下、PATと称す)224、TSパケットに含まれる各種エレメンタリーストーム(以下、ESと称す)の格納先であるプログラムマップテーブル(以下、PMTと称す)226を含む。
【0022】
ビデオデータ、オーディオデータ、その他のデータは、それぞれ固有のPIDを持つTSパケットとして伝送され、1つのTSに複数のTSパケットが混在しても、ヘッダ部220の情報により各TSパケットの種類や出力順序を判別することができる。データ部230は、ビデオデータである映像ES232、オーディオデータである音声ES234、それ以外のデータES236を含む。
【0023】
TSデコーダ40は、OFDM復調器30により復調されたTSデータストリーム200からTSパケット210を取り出し、TSパケットをデマルチプレクサ(以下、DMUXと称す)により、TSパケットの属性情報を記憶するヘッダ部220と、映像、音声、データ放送の情報そのものであるデータ部230に分けて出力する。さらに、TSデコーダ40は、ヘッダ部220をデコードし、TSパケットのビデオおよびオーディオのAVデータをMPEGデコーダ50Aに出力する。また、録画時には、デコードしたTSコンテンツデータを記録装置80に出力する。
【0024】
図3は、TS多重化部110の内部構成を示すブロック図である。TS多重化部110は、記録装置80から複数のTSコンテンツデータを選択するTSコンテンツデータ選択部112と、選択された複数のTSコンテンツデータに共通の多重化ヘッダ部を作成し、多重化ヘッダ部により選択されたTSコンテンツデータを多重化する多重化コンテンツデータ作成部114と、多重化コンテンツデータ作成部114で作成された多重化コンテンツデータを多重化コンテンツデータ記録装置80に記録する記録部116とを有している。
【0025】
多重化コンテンツデータ作成部114は、TSコンテンツデータ(パケット)が共有するヘッダ部を作成する。また、ヘッダ部は、後述するように、識別部TS222、PAT224、PMT226のすべてを共有としてもよいし、一部を共有としてもよい。
【0026】
TSコンテンツデータ選択部112は、好ましくはコントローラ100Aの制御信号S5に基づきTSコンテンツデータを選択する。例えば、TSコンテンツデータ選択部112は、ユーザ入力90によりユーザが多重化を希望するTSコンテンツデータを記録装置80から検索し、該当するTSコンテンツデータを選択する。また、TSコンテンツデータ選択部112は、番組名が共通のTSコンテンツデータを選択したり、出演者が共通の番組のTSコンテンツデータを選択したり、一定の期間内に録画されたTSコンテンツデータを選択したり、録画された順序に従ってTSコンテンツデータを選択したりすることができる。好ましくは、TSコンテンツデータ選択部112は、TSデコーダ40の処理能力に応じた数のTSコンテンツデータを多重化する。
【0027】
次に、本実施例により多重化されたコンテンツデータの具体例を図4に示し、従来の記録装置に記録されたコンテンツデータの具体例を図5に示す。ここでは、説明を分かり易くするために、3つのTSコンテンツデータを例に用いる。図5に示すように、TSコンテンツデータA、B、Cは、それぞれ個別のヘッダ部とデータ部とを有する。
【0028】
TSコンテンツデータAのヘッダ部220には、識別部222おいて、「TS_id=01」が記憶され、PAT224には、「Service_id=1001」が記憶され、PMT226には、映像ESのパケット識別子(以下、映像ES_PIDと称す)に「0x0101」、音声ESのパケット識別子(以下、音声ES_PIDと称す)に「0x0201」、データ放送ESのパケット識別子(データES_PIDと称す)に「0x001」、映像ES、音声ES及びデータ放送ESを関連付けを行うPCRのパケット識別子(以下、PCR_PIDと称す)に「0x0401」が記憶される。データ部230には、ヘッダ部のPMTが記憶するPIDに対応する映像ES232、音声ES234、データES236が保管されている。他のTSコンテンツデータB、Cについても同様である。
【0029】
他方、本実施例に係る多重化コンテンツデータMは、図4に示すように、TSコンテンツデータA、B、Cの識別部222が保持するTS_id=01、02、03と関連付けされた共通の識別部300にTS_id=04と作成する。この共通の識別部300により、TSコンテンツデータA、B、Cを識別することができる。言い換えれば、多重化コンテンツデータMは、TSコンテンツデータA、B、Cをグループ化して包含することになる。上記した多重化コンテンツデータ作成部114は、このような共通の識別部を作成することでTSコンテンツデータの多重化を行う。また、識別部以外のヘッダ部およびデータ部の構成は、図5と同様である。
【0030】
次に、本実施例の車載用電子装置における録画されたコンテンツデータの再生動作を図6に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、車載用電子装置10の電源がオンされ(ステップS101)、ユーザ入力90から再生する録画番組(またはコンテンツ)の選択が成される(ステップS102)。ここでは、ユーザがTSコンテンツデータA(図4を参照)の再生を指示したものとする。
【0031】
コントローラ100Aは、制御信号S3を介してTSコンテンツデータAを検索し、TSコンテンツデータAを多重化したコンテンツデータMを記録装置80からTSデコーダ40に出力させる。TSデコーダ40は、多重化コンテンツデータMを入力すると(ステップS103)、多重化コンテンツデータMの共通の識別部300をデコードする。これにより、TSコンテンツデータA、B、Cを識別し、さらにTSコンテンツデータA、B、Cのヘッダ部をデコードすることで、それらのコンテンツデータA、B、Cに含まれるAVデータを分離し、分離したAVデータをMPEGデコーダ50Aへ出力する(ステップS104)。
【0032】
MPEGデコーダ50Aは、TSデコーダ40から出力されたAVデータを復号化し、ビデオデータとオーディオデータに分離する(ステップS105)。重要なのは、MPEGデコーダ50がTSコンテンツデータA、B、CのそれぞれのAVデータを同時に再生していることである。コントローラ100Aは、TSコンテンツデータAが選択されていることを制御信号S4によりMEPGデコーダ50Aに知らせ、これにより、MPEGデコーダ50Aは、コンテンツデータAについて再生されたビデオデータおよびオーディオデータを出力し、コンテンツデータB、Cについて再生されたビデオデータおよびオーディオデータは出力しない。
【0033】
ディスプレイ60およびスピーカ70により選択された録画番組がユーザに提供される(ステップS106)。ユーザ入力90から録画番組またはコンテンツの切替があると(ステップS107)、コントローラ100Aは、制御信号S4を介してコンテンツの切替をMPEGデコーダ50Aに知らせ、MPEGデコーダ50Aは、切替えられたコンテンツデータについての再生しているビデオデータおよびオーディオデータを出力する(ステップS108)。例えば、コンテンツデータAからBへの切替のユーザ入力があると、MPEGデコーダ50Aは、コンテンツデータBのビデオデータおよびオーディオデータに出力を切替える。
【0034】
このように本実施例では、多重化されたコンテンツデータをTSデコーダで処理し、それらのAVデータをMPEGデコーダ50Aで処理しているため、録画再生するコンテンツを切替えるとき、MPEGデコーダ50Aの出力を切替えるだけで即座にコンテンツを再生出力することができる。このため、従来の録画再生と比べて、再生するまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0035】
また、TSデコーダ40は、コンテンツデータをデコードすることにより取得された番組名や番組情報を不揮発性メモリに蓄積する必要があったが、本実施例のように、多重化コンテンツデータであれば、そこに含まれるすべてのコンテンツデータを管理し、EPG機能を利用して一括して番組名や番組内容を表示することができるため、不揮発性メモリの容量を減らすことができる。
【0036】
次に、車載用電子装置からの多重化コンテンツデータの移動について説明する。コントローラ100Aは、他の外部機器へ蓄積されたコンテンツデータを移動させることができる。好ましくは、データ出力120は、IEEE1394(iLink)に準拠し、転送モードとして、100Mbps、200Mbps、400Mbpsを有する。記録装置80からTSコンテンツデータを逐次シーケンシャルに転送する場合、400Mbpsの転送モードがあってもそれを十分に活用することができず、結果として、コンテンツデータの移動時間も長くなってしまう。例えば、ハイビジョンのTSコンテンツデータの符号化は、最大で20Mbps程度であり、最大転送モードの400Mbpsよりはるかに小さい。本実施例では、多重化コンテンツデータを移動させることで、一度に多くのコンテンツデータを効率よく短時間で他の外部機器へ移動させることができる。例えば、上記の例のように、コンテンツデータが20Mbpsであれば、おおよそ20個のコンテンツデータを多重化して一度に移動することが可能となる。このようにTSを多重化して伝送することで帯域を有効活用でき、複数のコンテンツを伝送する場合の速度を比較的に向上させることができる。
【0037】
次に、コンテンツデータの他の多重化の例について説明する。図7に示す多重化の例は、識別部300を共通化することに加えて、PATおよびPMTを共通化する。まず、TS多重化部110は、3つのTSコンテンツデータA、BC(TS_id=01、02、03)を選択し、新たに共通の識別部300(TS_id=04)を作成し、さらに、その下層の3つのPATを統合した共通のPAT310(Servise_id=1004)を作成し、さらにその下層の3つのPMTを統合した共通のPMT320を作成する。
【0038】
Service_id=1004は、Service_id=1001、1002、1003に関連付けされ、各Service_id=1001、1002、1003は、それぞれ図4に示した映像ES_PID、音声ES_PID、データES_PIDを有する。つまり、PMT320に、3つのTSコンテンツデータA、B、Cが有する映像ES、音声ES及びデータESのPID情報を書き込み、さらに、これらのESの関連付けを行うPCRプログラム(PCR_PID=0x0404)を作成する。
【0039】
図8は、他の多重化の例を示す図である。この例は、図7に示す例に加えて、データ部の映像ES、音声ESおよびデータESをそれぞれをグループ330、340、350にしている。この例は、マルチビューテレビ(MVTV)のシステムを流用する。MVTVでは、EIT[p/f]の”component_group_descriptor”によりグループ化されたESを、映像切替えに連動して切替えることができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。多重化コンテンツデータを再生するとき、コンテンツによっては再生時間が異なり、コンテンツの切替を行ったとき、何も再生されない事態が発生し得る。例えば、コンテンツAの再生時間が30分、コンテンツBの再生時間が90分、コンテンツCの再生時間が60分とすると、これらの多重化コンテンツデータは、MPEGデコーダによって、図9(a)に示すように再生される。縦軸は、時間軸であり、コンテンツA、B、Cは、同時に再生を開始され、ユーザがコンテンツBを30分視聴したあと、コンテンツAに切替えると、コンテンツAの再生はすでに終了しており、ディスプレイには何も表示されなくなる。同様に、コンテンツBを60分視聴した後では、コンテンツAもBも視聴することができない。
【0041】
そこで第2の実施例では、図9(b)に示すように、コンテンツA、B、Cをループ再生する。ループ再生とは、コンテンツを繰り返しエンドレスに再生することである。これにより、コンテンツBを30分視聴した後、コンテンツAに切替えても、コンテンツAを視聴することができる。また、コンテンツBを60分視聴した後でも、コンテンツAやCを視聴することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係わる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求項の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施例では車載用電子装置を対象にしたが、本発明は、携帯端末やワンセグ専用受信機においても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る車載用電子装置の構成を示すブロック図である。
【図2】TSデータ構造を説明する図である。
【図3】TS多重化部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係る多重化コンテンツデータの例を示す図である。
【図5】従来の録画されるコンテンツデータの例を示す図である。
【図6】本実施例の車載用電子装置における録画再生の動作を示すフローチャートである。
【図7】他の多重化コンテンツデータの例を示す図である。
【図8】他の多重化コンテンツデータの例を示す図である。
【図9】図9(a)は、ループ再生しない多重化コンテンツデータの再生と時間との関係を示し、図9(b)は、第2の実施例により多重化コンテンツデータをループ再生するときの時間軸との関係を示す図である。
【図10】従来の車載用電子装置の構成を示すブロック図である。
【図11】従来の車載用電子装置における録画再生動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1、2:車載用電子装置 10:アンテナ
20:チューナ 30:OFDM復調器
40:TSデコーダ 50、50A:MPEGデコーダ
60:ディスプレイ 70:スピーカ
80:記録装置 90:ユーザ入力
100、100A:コントローラ 110:TS多重化部
112:選択部 114:多重化作成部
116:記録部 200:TSデータ構造
210:TSパケット 220:ヘッダ部
222:識別部 224:PAT
226:PMT 230:データ部
232:映像ES 234:音声ES
236:データES 300:共通の識別部
310:共通のPAT 3200:共通のPMT
330、340、350:コンポーネントグループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツデータを再生および録画する機能を備えた電子装置であって、
再生用データと当該再生用データを識別する識別データを含む符号化されたコンテンツデータを入力し、前記識別データを解読することで再生用データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された再生用データを復号化する復号化手段と、
復号化された再生用データを出力する出力手段と、
前記抽出手段によって抽出された再生用データとこれに対応する識別データを含むコンテンツデータを録画する録画手段と、
前記録画手段に録画されたコンテンツデータの中から選択された複数のコンテンツデータを多重化した多重化コンテンツデータを作成し、当該多重化コンテンツデータを前記録画手段に録画する多重化手段と、
前記多重化コンテンツデータの再生を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記抽出手段に前記多重化コンテンツデータから各コンテンツデータの再生用データを抽出させ、かつ前記制御手段は、各再生用データを復号化している前記復号化手段に選択された再生用データを出力させる、
を有する電子装置。
【請求項2】
前記多重化手段は、複数のコンテンツデータの各識別データを多重化する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
電子装置はさらに、地上波ディジタル放送を受信する受信手段を含み、前記抽出手段は、前記受信手段から出力されたデータストリームを前記コンテンツデータとして入力する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記録画手段は、前記データストリームに含まれる特定のセグメントのコンテンツデータを録画する、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ユーザ入力に応じて前記復号化手段から出力される再生用データを選択する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記復号化手段は、各再生用データを連続的に復号化する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
電子装置はさらに、前記録画手段に録画された多重化コンテンツデータを外部へデータ転送するためのデータ転送手段を含む、請求項1に記載の電子装置。
【請求項8】
コンテンツデータを再生および録画する機能を備えた車載用電子装置であって、
複数のアンテナと、
複数のアンテナからの受信信号を受け取る複数のチューナと、
復習のチューナからの出力信号を復調してディジタル化されたトランスポートストームを出力する復調器と、
復調器からのトランスポートストリームを入力し、トランスポートストリームに含まれる識別データを解読することで再生用データを抽出するデコード手段と、
前記デコード手段によって抽出された再生用データを再生する再生手段と、
再生されたデータを出力する出力手段と、
前記デコード手段によって抽出された再生用データとこれに対応する識別データとを含むコンテンツデータを録画する録画手段と、
前記録画手段に録画された複数のコンテンツデータの中から複数のコンテンツデータを選択し、選択された複数のコンテンツデータを多重化した多重化コンテンツデータを作成し、多重化コンテンツデータを前記録画手段に録画する多重化手段と、
前記多重化コンテンツデータの再生を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記デコード手段に前記多重化コンテンツデータに含まれるコンテンツデータの再生用データを抽出させ、かつ前記制御手段は、抽出された再生用データを再生している前記再生手段に選択された再生用データを出力させる、車載用電子装置。
【請求項9】
車載用電子装置におけるコンテンツデータの録画再生方法であって、
再生用データと当該再生用データを識別する識別データを含む符号化されたコンテンツデータを入力し、前記識別データを解読することで再生用データを抽出するステップと、
前記抽出された再生用データとこれに対応する識別データとを含むコンテンツデータを録画するステップと、
録画された複数のコンテンツデータの中から複数のコンテンツデータを選択し、複数のコンテンツデータを多重化した多重化コンテンツデータを作成し、多重化コンテンツデータを録画するステップと、
前記多重化コンテンツデータの識別データを解読し、多重化コンテンツデータに含まれる複数のコンテンツデータから複数の再生用データを抽出するステップと、
抽出された複数の再生用データを再生するステップと、
再生された複数の再生用データから選択された再生用データを出力するステップと、
を有するコンテンツデータの録画再生方法。
【請求項10】
前記複数の再生用データは、連続的にループ再生される、請求項9に記載の録画再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−212710(P2009−212710A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52400(P2008−52400)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】