説明

車載用音響制御装置

【課題】車室内において携帯端末機器による通話が開始された場合に、携帯端末機器が移動してもこの移動に応じた音響設定をすることができる車載用音響制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車室内にある携帯端末機器2が通話中であるか否かを判定する受信装置3と、この受信装置3により車室内にある携帯端末機器が通話中であると判定されたとき、この携帯端末機器2の利用者が座る座席を特定し、この特定した座席位置に基づいて車室内の音響を制御する制御装置4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内において音楽が再生されおり、かつ、車室内で携帯端末機器を用いて通話中がされている場合に、車室内の音響の設定を制御する車載用音響制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用音響制御装置としては、あらかじめ、車室内に存在する携帯端末機器を無線通信にて、携帯端末機器の電話番号、および、携帯端末機器の所有者の乗車位置を無線にて車載用音響制御装置へ送信して、この装置のメモリに登録するものがある。
【0003】
携帯端末機器に着信があると、着信通知番号とメモリ内に登録された電話番号情報との比較が行われる。この比較の結果、着信のあった携帯端末機器が特定されると、メモリに登録された情報により携帯端末機器の所有者の乗車位置も検出できる。この検出された乗車位置に基づいて、音響の出力レベルをスピーカ毎に制御するものがある。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−313698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の車載用音響制御装置は、通話開始前にあらかじめ登録された携帯端末機器の所有者の乗車位置に基づいて音響の設定を制御するものであった。しかし、携帯端末機器の所有者は常に一定の位置に存在しておらず、登録された後、携帯端末機器に着信があるまでの間にその位置が移動する場合が考えられる。
【0007】
従来の車載用音響制御装置は、このような場合、登録されている携帯端末機器の位置情報と実際の通話中の携帯端末とが異なってしまうため、乗車位置に合わせた音響設定の制御ができないという問題を有していた。
【0008】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたものであり、携帯端末機器が移動してもこの移動に応じた音響設定をすることができる車載用音響制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の車載用音響制御装置は、通信判定手段により車室内にある携帯端末機器が通話中であると判定されたときこの携帯端末機器の利用者が座る座席を特定し、この特定した座席位置に基づいて車室内の音響を制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動音響制御装置は、車室内にある携帯端末機器が通話中であると判定されたときこの携帯端末機器の利用者が座る座席を特定し、この特定した座席位置に基づいて車室内の音響を制御するので、帯端末機器の利用者が移動してもこの移動後の位置にて音響を制御がされる。これにより、携帯端末機器が移動してもこの移動に応じた音響設定をす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置のブロック図
【図2】本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置の車室内への設置を説明する図
【図3】携帯端末機器から発信される無線信号を説明する図
【図4】本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置の動作を説明する図
【図5】音響制御を行うためのテーブルについて説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置のブロック図である。また、図2は車載用音響制御装置の車室内への設置を説明する図である。また、図3は携帯端末機器から発信される無線信号を説明する図である。
【0014】
図1において、車載用音響制御装置1は、車室内に存在する携帯端末機器2(例えば、携帯電話)が基地局に対して発信する無線信号を受信する受信装置3(通信判定手段に相当する)と、受信装置3により携帯端末機器2が通話中であると判定された場合に、通話者が座っている座席の位置(以下、座席位置)を特定し、その座席位置に応じて、車室内の音響制御する制御装置4(通話者座席特定手段、音響制御手段に相当する)とを備える。
【0015】
ここで、車室内の音響制御とは出力する音響信号(音声、音楽など)の音量の調整、出力する音響信号の周波数特性の変更をすることなどをいう。制御装置4は、通話者にとっては再生中の音楽によって通話を妨げられることなく、かつ、通話者以外の同乗者にとっては、通話開始前と同様に音楽を楽しむことができるような車室内の音響制御を行う。
【0016】
受信装置3は、車室内の座席近傍に配置されたアンテナ5と接続される。このアンテナ5は、図2に示すように、車室内の空間を座席6(6a、6b、6c、6d)に対応させる形で4分割した領域(エリアA、エリアB、エリアC、エリアD)のそれぞれの領域内での携帯端末機器2が送信する無線信号を受信するためのアンテナである。
【0017】
例えば、図2のように車両の各ドア近傍にそれぞれアンテナ5a、5b、5c、5dに示すように配置される。なお、アンテナ5は、車両の大きさや座席の数によりそれぞれの席近傍に1つずつ配置してもよい。
【0018】
受信装置3は、アンテナ5により受信した、携帯端末機器2から発信される無線信号の発信タイミングをそれぞれ検出する。図3は携帯端末機器2から発信される無線信号の様子を示す図である。
【0019】
携帯端末機器2は、通話中である場合には、携帯端末機器2の周辺にある基地局のうち、最も強い無線信号を発信している基地局と音声情報のやりとりなどの為に無線信号の送受信を行うので、常に無線信号を発信している状態となる(図3のT2〜T3)。
【0020】
これに対して携帯端末機器2が通話を行っていない時、すなわち待受時(図3のT1〜T2および図3のT3〜T4)には携帯端末機器2は基地局に対して無線信号の発信をほとんど行っていない。
【0021】
携帯端末機器2は、待受時(図3のT1〜T2および図3のT3〜T4)においては、基地局と無線信号を間欠的に受信するだけであり通信の頻度は通話時よりも少なくなる。
【0022】
したがって、無線信号の通信の頻度を検出することで通話中か否かを判断することができる。アンテナ5から得られた、携帯端末機器2から発信された無線信号の発信タイミングが連続的であれば、その連続的な無線信号を受信したアンテナ5に対応する通信領域において、携帯端末機器2が通話中であると判定することができる。
【0023】
これに対し、アンテナ5から得られた、携帯端末機器2から発信された無線信号の発信タイミングが連続的でなく、単発的に発信された無線信号であれば、その無線信号を受信したアンテナ5に対応する通信領域において、携帯端末機器2は待受状態であると判定することが出来る。
【0024】
制御装置4は、いずれかの通信領域において携帯端末機器2が通話中であると判断された場合、当該通信領域にある車室内の座席に通話者が座っていることを特定することができる。
【0025】
制御装置4は、上記のようにして特定された通話者の座席に応じて、通話者にとっては再生中の音楽によって通話を妨げられることなく、かつ、通話者以外の同乗者にとっては、通話開始前と同様に音楽を楽しむことができるように車室内の音響を自動で制御する。この音響制御のことを「通話中音響制御」と称する。
【0026】
この通話中音響制御は、制御装置4が記憶装置8に記憶されている設定値である音響制御値を読出すことで実施される。通話者の座席位置に最も近いスピーカに対応する音響制御値を第1の音響制御値と、このスピーカ以外のスピーカに対応する音響制御値を第2の音響制御値と呼ぶ。
【0027】
例えば、記憶装置8に記憶された第1の音響制御値は音量をオフするようにし、第2の音響制御値は所定の音量で出力するように設定することができる。
【0028】
制御装置4は、図2に示すように車両に装備されているスピーカ7(7a、7b、7c、7d)と接続されている。制御装置4は通話者の座席位置に最も近いスピーカの音量をオフし、このスピーカ以外のスピーカから音楽等を出力する。
【0029】
このようにすることにより、携帯端末機器2の通話者は再生されている音楽に通話を妨げられることなく快適に通話を行うことができ、かつ、その他の同乗者も通話が開始される前と同じく、快適に車室内で再生されている音楽を楽しむことができる。
【0030】
また、記憶装置8は、制御装置4による通話中音響制御が実行される場合に、その時点で再生されている音楽の制御開始前の音量やイコライザの設定などの情報を、通話前音響設定として保存しておくことができる。
【0031】
また、シートベルトセンサ9は乗員がシートベルトをつけているか否かを検知するセンサである。また、着座センサ10は乗員が座席に座っているかを検知するセンサである。
【0032】
シートベルトセンサ9および着座センサ10は制御装置4に接続される。制御装置4は後述するようにシートベルトセンサ9および着座センサ10の検出結果に基づき、通話中音響制御を行うか否かを決定することができる。
【0033】
また、マイク11は車室内の音を収集して制御装置4へ出力するものである。
【0034】
以上のように構成された車載用音響制御装置1について、図4〜図5を用いてその処理動作を説明する。図4は本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置の動作を説明する図である。図5は音響制御を行うためのテーブルについて説明する図である。
【0035】
以下、図2のエリアC内に携帯端末機器2が存在する場合について説明する。
【0036】
制御装置4は、通話中音響制御が実行中であるか否かを示す「音響制御フラグ」を保持している。通話中音響制御が実行中である場合を「音響制御フラグ」は1となり、通話中音響制御が実行中でない場合は「音響制御フラグ」は0となる。図3の「スタート」の時点では制御装置4内の音響制御フラグは0である。
【0037】
まず、S01において、制御装置4は、各座席の近傍に設置されたアンテナ5a〜5dが、それぞれが担当する各座席6a〜6dに対応した通信領域エリアA、エリアB、エリアC、エリアD内に限定した範囲で、携帯端末機器2から発信される無線信号を受信しているか否かを判定する。
【0038】
ここで、アンテナ5が携帯端末機器2から発信される無線信号を受信していない場合(S01でNO)、制御装置4は処理をスタートに戻す。
【0039】
一方、S01において、アンテナ5a〜5dのうち少なくとも1つ以上のアンテナが、携帯端末機器2から発信される無線信号を受信している場合(S01でYES)、制御装置4は処理をS02へ進める。
【0040】
次に、S02において、受信装置3は、アンテナ5から得られた携帯端末機器2が発信した無線信号の発信タイミングを、アンテナ5が受信した無線信号それぞれについて、連続的か否かを判定する。この判定結果は制御装置4へ送信される。
【0041】
ここで、アンテナ5a〜5dから得られた、携帯端末機器2から発信された無線信号の発信タイミングがいずれも連続的でない場合(S02でNO)、車室内のどのエリアにも通話中の携帯端末機器2は存在しないと判定され、制御装置4は処理をS07へ進める。
【0042】
一方、S02において、アンテナ5a〜5dから得られた、無線信号の発信タイミングのうち、例えば、アンテナ5cが受信した無線信号の発信タイミングのみが連続的である場合(S02でYES)、アンテナ5cが担当する通信領域エリアC内においてのみ携帯端末機器2が通話中であると判定される。このとき制御装置4は処理をS03へ進める。
【0043】
S02でYESのとき、制御装置4はS03として、通話者が座っている座席6cを特定する。S02において、エリアCにおいて携帯端末機器2が通話中であると判断されたので、エリアCに対応する座席6cが通話者の座っている座席であると特定することができる。
【0044】
S03の次に、制御装置4による通話中音響制御が実行中であるか否か、すなわち制御装置4内の音響制御フラグが1か0かを判定する(S04)。
【0045】
制御装置4が通話中音響制御を実行中ではない場合(S04でNO)、すなわち、制御装置4内の音響制御フラグが0であれば、制御装置4は処理をS05へ進める。一方、すでに過去の処理により制御装置4による通話中音響制御が実行中であれば(S04でYES)、すなわち音響制御フラグが1であれば制御装置4はS06へ処理を進める。
【0046】
S04でYESの場合において、制御装置4は、通話中音響制御が実行される前の車室内で再生されている音楽の音量やイコライザの設定などの情報(以下、「通話前音響設定」と称する)を記憶装置8に保存する(S05)。
【0047】
S05の次に、制御装置4は、通話者のいる座席6cに応じた通話中音響制御を実行する。S03において通話者の座席が6cであると特定されているので、制御装置4は、あらかじめ記憶装置8に記憶した第1および第2の音響制御値を読出し、この値に基づいてスピーカ7a〜7dの音響を制御するとともに、音響制御フラグを1にセットする(S06)。
【0048】
通話中音響制御を自動で開始(S06)した後、制御装置4は、通話中音響制御は実行している状態でS01に処理を戻し、続いてアンテナ5a〜5dはそれぞれが担当する各通信領域エリアA〜エリアDにて携帯端末機器2から発信される無線信号を再度受信する(S01)。
【0049】
また、S02でNOの場合、制御装置4は処理をS07へ進める。S07において制御装置4は通話中音響制御が実行中であるかどうか、すなわち制御装置4内の音響制御フラグが1であるか0であるかを判定する。
【0050】
通話中音響制御が実行中でない(音響制御フラグが0)である場合(S07でNO)、各座席において携帯端末機器2は通話状態でなく、かつ、通話中音響制御も実行されていないので、以前から通話は行われていなかったとして、制御装置4はS01へ処理を戻す。
【0051】
一方、通話中音響制御が実行中である(音響制御フラグが1)である場合(S07でYES)、制御装置4による通話中音響制御の実行中に、携帯端末機器2の通話が終了したと判定されたものであり、制御装置4はS08へ処理をすすめる。
【0052】
S08において制御装置4は、携帯端末機器2の通話が終了したので、S05で記憶装置8に保存しておいた通話前音響設定を読み出し、音量やイコライザの設定の復帰を行う。このようにすることにより、車室内の音響環境を通話開始前の設定に戻すことができる。制御装置4はS08を終了すると処理をS01へ戻す。
【0053】
ここでは、携帯端末機器2がエリアCにある場合を例として動作の説明を行ったが、携帯端末機器2が違うエリアに存在する場合も、同様の動作を行いそれぞれのエリアが対応する座席毎に応じた通話中音響制御が実行される。
【0054】
このように携携帯端末機器2から発信される無線信号を引き続き継続的に受信し続けることで、現在通話中の携帯端末機器2以外の、各エリア内において新たに通話中になった携帯端末機器があれば検出し音響制御を行う。
【0055】
これにより、携帯端末機器2から発信される無線信号の発信タイミングが、連続的から単発的になった携帯端末機器2がないかを検出することができるので、携帯端末機器2が通話を終了したかどうかを判定することができる。
【0056】
さらに、通話中に通話者が変わるなどして、携帯端末機器2の位置が座席6cから他の座席6a、5b、5dのいずれかに移動したような場合にも、携携帯端末機器2から発信される無線信号を引き続き継続的に受信し続けているので、どの座席で通話が行われているかを正しく検出でき、制御装置4は通話者の座席の移動に追従した通話中音響制御を行
うことができる。
【0057】
次に、記憶装置8に記憶した第1および第2の音響制御値の一例を図5に示す。第1および第2の音響制御値は、通話中であると検出された座席ごとに記憶されている。
【0058】
図5の「通話者座席」は制御装置4が検出した通話中であると検出された座席位置に該当する。また、図5の「スピーカ出力」が第1および第2の音響制御値に相当する。
【0059】
例えば、「通話者座席」が座席6cである場合、「スピーカ出力」は、スピーカ5cが音声出力を「しない」であり、スピーカ5c以外のスピーカは音声出力を「する」となっている。スピーカ5cは通話中であると検出された座席位置に対応するスピーカであり、これが第1の音響制御値に相当し、スピーカ5c以外のスピーカの制御値が第2の音響制御値に相当する。
【0060】
以上のように本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置は、車室内にある携帯端末機器が通話中であると判定されたときこの携帯端末機器の利用者が座る座席を特定し、この特定した座席位置に基づいて車室内の音響を制御するので、帯端末機器の利用者が移動してもこの移動後の位置にて音響を制御がされる。これにより、携帯端末機器が移動してもこの移動に応じた音響設定をすることができる。
【0061】
また、携帯端末機器の位置を詳細に捉えるためには、通常精度の高いアンテナ装置などの通信環境が必要となり機器の構成にかかるコストが高くなってしまう。しかし、本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置は、詳細位置ではなく座席位置を特定するため、簡易な構成で構成することができる。通常、乗員は決められた座席位置のいずれにしか座らないため実用上、本発明の構成で十分である。
【0062】
なお、図5では通話者の座っている座席に一番近いスピーカの出力を切り、その他のスピーカは引き続き音楽を再生するという設定を示しているが、単にスピーカの出力を切るだけではなく、通話者の座っている座席に一番近いスピーカから出力される音量を小さくし、その他のスピーカに関しては、通話者の座っている座席に一番近いスピーカよりも大きい音量で出力するような音響制御値としてもよい
また、携帯端末機器2から発信される無線信号の発信タイミングを検出する動作を、通話中音響制御を実行した後も継続して行うことができる。このようにすることにより、新たに通話中になった携帯端末機器2の検出、または、携帯端末機器2の通話終了の検出が可能である。さらに、携帯端末機器2が最初の話者から他の話者へ手渡されたン場合など、携帯端末機器2の車室内での移動に対しても追従して音響を制御することができる。
【0063】
また、本発明の一実施の形態における車載用音響制御装置は、携帯端末機器2から発信される無線信号の発信タイミングが連続的か否かを検出する構成になっている。このようにすることにより、携帯端末機器2が通話時と待受時とで発信タイミングが異なるものであれば、携帯端末機器2の通信方式に依存することなく通話時であることを検出することができ有利である。
【0064】
なお、本実施の形態では、アンテナ5を各座席の近傍に配置する構成となっているが、座席ごとに通信領域に分割して携帯端末機器2から発信される無線信号を受信できるのであれば、座席の近傍以外の場所にアンテナ5を設置してもよい。
【0065】
例えば、各領域に対して指向性をもったアンテナ5を車室の中央の床または天井に複数設置する構成にしてもよい。このようにすることにより、アンテナ5を座席近傍に設置するよりも、集約して設置できアンテナ5の設置が容易になる。
【0066】
また、車室の中央の床または天井に1つのアンテナ5を設置し、その1つのアンテナ5を機械的に各座席方向に指向性が向けられるように回転させ、順次座席ごとの通信領域に対して携帯端末機器2からの無線信号を検出するような構成であってもよい。このようにすることにより、アンテナ5の個数を減らすことができる、アンテナ5の設置コストを下げることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、通話者の座っている座席を特定するために、アンテナ5を利用する構成にて説明したが、さらに乗員が車両に備えたシートベルトを着用しているか否かを検知するシートベルトセンサ9、および、座席に乗員が座っているか否かを検知する着座センサ10の少なくとも1つの情報を用いることができる。
【0068】
具体的には、制御装置4は、この受信装置3が特定した座席位置がシートベルトセンサ9、または、着座センサ10により乗員が座っていると検出された座席である場合のみ車室内の音響を制御するようにできる。
【0069】
例えば、携帯端末機器2がカバンの中に入っているなどして通話者の手元ではなく誰も座っていない座席に置いてある状態で着信があった場合、その座席には誰も座っていないので通話中音響制御は不要である。制御装置4はこのような場合に通話中音響制御を実行しなくすることができる。このようにすることにより、誰も座っていない座席に対して通話中音響制御行うことを防止できる。
【0070】
なお、本実施の形態では、制御装置4に接続する音響機器として車両に装備されているスピーカ7を記載してあるが、その他、ツィータやウーハなどの音響機器が接続されてもよい。これにより、制御装置4にスピーカ7のみが接続された場合に比べて、より臨場感のある音響を車室内で楽しむことが出来る。
【0071】
なお、本実施の形態では、1つの座席に対して第1の音響制御値を作成して記憶装置8に記憶したが、「座席6bと6cで同時に携帯端末機器2による通話が行われている場合」といったように、複数の座席位置で通話中である場合における座席位置ごとの音響制御値を記憶装置8に記憶しておいてもよい。
【0072】
これにより、複数の携帯端末機器が通話中と判定された場合、または、新たに別の携帯端末機器2cが通話中になった場合においても最適な通話中音響制御を行うことができる。
【0073】
制御装置4は、各座席の近傍にそれぞれ配置した集音マイク11が収集した音声情報に基づいて車室内の音響を制御することができる。例えば、座席周辺の音を相殺させることのできる逆相の音を制御装置4で計算し生成し、スピーカ7からこの逆相音を発生させることで通話者のいる座席の周辺の音を消すこともできる。このようにすることにより、あらかじめ記憶装置8に記憶した第1および第2の音響制御値によるものだけでなく、車室内の音場にも対応できるため、リアルタイムに通話に適した音響環境を構築することができる。
【0074】
なお、本実施の形態における車載用音響制御装置1を、ハンズフリー通話機能を備えた車両に搭載し、受信装置3により、運転席に対応する通信領域内で検出された携帯端末機器2からの無線信号の電界強度が設定された閾値を越えたことが検出されたときに自動的にハンズフリー通話に移行してもよい。
【0075】
このようにすることにより、運転者が走行中に携帯端末機器2を手に持ちながら運転す
るという危険な状況を避けることができ、かつ、運転者や同乗者ともに特別な操作を必要とせず、自動でハンズフリー通話に切り替わるので、乗員にとって利便性が向上する。
【0076】
なお、本実施の形態において、制御装置4が通話者の座席を特定すると記載したが、受信装置3がこの処理をおこなってもよい。これにより、制御装置4は、座席を特定するのに必要であった演算処理の負担が低減でき、通話中音響制御の実行により多くの演算処理を割り当てることができるようになる。
【0077】
なお、本実施の形態では、受信装置3は、携帯端末機器2から発信される無線信号を受信するという受信用途のみの利用をしたが、携帯端末機器2との相互通信を行う機能を追加することで、通信装置として利用してもよく、携帯端末機器2との無線通信の方法として、Bluetooth(登録商標)を利用した構成にしてもよい。このことにより、それぞれの携帯端末機器2の機種情報などをペアリングによって特定することなどができるので、例えば、ある特定の携帯端末機器2のおいては、着信があっても通話中音響制御を実行しないなどの設定を制御装置4に登録することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車室内で携帯端末機器を用いて通話中がされている場合に、車室内の音響の設定を制御する車載用音響制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 車載用音響制御装置
2 携帯端末機器
3 受信装置
4 制御装置
5 アンテナ
6 座席
7 スピーカ
8 記憶装置
9 シートベルトセンサ
10 着座センサ
11 マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内にある携帯端末機器が通話中であるか否かを判定する通信判定手段と、
この通信判定手段により車室内にある携帯端末機器が通話中であると判定されたときこの携帯端末機器の利用者が座る座席を特定する通話者座席特定手段と、
この通話者座席特定手段が特定した座席位置に基づいて車室内の音響を制御する音響制御手段とを備えることを特徴とする車載用音響制御装置。
【請求項2】
座席位置ごとの音響制御値を記憶した記憶装置をさらに備え、
前記音響制御手段は、前記通話者座席特定手段が特定した座席位置に対応する音響制御値を前記記憶装置から読出すことで車室内の音響を制御することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項3】
車室内に複数のスピーカをさらに備え、
前記記憶装置に記憶された座席位置ごとの音響の制御値は、
前記通話者座席特定手段が特定した座席位置に最も近いスピーカに対応する第1の音響制御値と、このスピーカ以外のスピーカに対応する第2の音響制御値とを記憶することを特徴とする請求項2に記載の車載用音響制御装置。
【請求項4】
前記記憶装置に記憶された第1の音響制御値は、第2の音響制御値よりも音量を小さくする制御値であること、もしくは、音量をオフにする制御値であることを特徴とする請求項3に記載の車載用音響制御装置。
【請求項5】
車室内の座席ごとそれぞれに携帯端末機器から送信される無線信号を受信するための複数のアンテナをさらに備え、
前記通信判定手段は、前記アンテナが受信した携帯端末機器から発信される無線信号の発信タイミングにより車室内にある携帯端末機器が通話中であるか否かを判定し、
通話者座席特定手段は、いずれの前記アンテナで携帯端末機器から発信される無線信号を受信したかにより携帯端末機器の利用者が座る座席を特定することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項6】
車両に備えたシートベルトを着用しているか否かを検知するシートベルトセンサをさらに備え、前記音響制御手段は、この通話者座席特定手段が特定した座席位置が前記シートベルトセンサによりシートベルトが着用されていると検出された座席である場合のみ車室内の音響を制御することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項7】
座席に乗員が座っているか否かを検知する着座センサをさらに備え、
前記音響制御手段は、この通話者座席特定手段が特定した座席位置が前記着座センサにより乗員が座っていると検出された座席である場合のみ車室内の音響を制御することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項8】
車室内の音を集音するためのマイクをさらに備え、
前記音響制御手段は前記マイクによって得られた各座席の音響の状態に基づいて車室内の音響を制御することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項9】
前記通話者座席特定手段は、
前記音響制御手段による音響の制御が開始された後も継続して携帯端末機器の利用者が座る座席を特定することを特徴とする請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項10】
前記記憶装置が記憶する座席位置ごとの音響制御値は、複数の座席位置で通話中である場
合における座席位置ごとの音響制御値であることを特徴とする請求項2に記載の車載用音響制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−228828(P2011−228828A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94686(P2010−94686)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】