説明

車載装置制御システムおよび車両

【課題】車両の状況に応じた適切な処理を車載装置に行わせるための技術を提供する。
【解決手段】複数の車載装置の動作を制御する車載装置制御システムであって、自車の車両状況に基づいて、複数の車載装置の動作を決定する優先度決定手段と、この優先度に基づいて複数の車載装置の動作を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。ここで、車両状況は、自車に搭載された複数のセンサから得られる情報に基づいて判断されたり、他車や路側機などの外部から通知されることが好ましい。また、制御手段は、車載端末の優先度に応じて、供給電力や割り当てる演算資源の量を制御することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される装置を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される機器のエレクトロニクス化が著しく進んでいる。パワートレイン系と呼ばれるエンジン・ブレーキ・トランスミッションなどの制御や、ボディ系と呼ばれるドアロック・パワーウィンドウ・ライトなどの制御、安全系と呼ばれるABS(Anti-lock Break System)・エアバッグ等の制御は、ECU(Electronic Control Unit)に
よって行われている。また、情報・エンターテイメント系と呼ばれるインターネットへの接続やナビゲーション情報の提供、映像の再生などの処理もマイクロプロセッサによって行われている。
【0003】
これら個々の制御に専用のハードウェアを用意すると、設置面積の増大やコストの上昇という問題が生じる。また、全ての機能が常時必要ではないため、提供する必要のない機能が存在する。稼働していないプロセッサが存在することは、演算資源を無駄にしていることになり、演算資源を効率的に利用できていないことになる。また、そのようなプロセッサに電力を供給することは無駄に電力を消費していることになる。
【0004】
そこで、これらの各処理を共通のプロセッサ(ECU)に対して行わせることが考えられる。例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System)やETC(Electronic Toll Collection)、GPS(Global Positioning System)、無線LANなど
車両内には様々な方式の無線通信装置が存在するが、これら複数の無線方式に対応した共通の無線装置が知られている(特許文献1,2)。このような無線通信装置では、ソフトウェア無線技術を用いて共通のハードウェアで複数の無線方式に対応することで、必要となるハードウェア資源の量を減少させている。
【0005】
上記特許文献1,2には、さらに、位置情報に基づいて優先的に受信する無線方式を切り替える技術が開示されている。例えば、車両が有料道路の料金所付近に位置する場合にはETCを優先的に用いることが記載されている。また、速度情報から停車中だと判断された場合には、ETCやGPSによる通信を行わないことが記載されている。
【0006】
また、車両の位置情報に基づいて車載装置の制御方法を変更させる技術として、車両が施設内にある場合には燃料噴射装置を制御して一定以上の加速を禁止する技術(特許文献3)や、無線メディアのサービスエリア内か否かに応じて無線メディアの監視状態と待機状態を切り替える技術(特許文献4)が開示されている。
【特許文献1】特開2005−192166号公報
【特許文献2】特開2004−80420号公報
【特許文献3】特開平10−272913号公報
【特許文献4】特開2004−15269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両の状況に応じて車載装置に適切な動作を行わせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車載装置制御システムは、以下の手段または処理によって複数の車載装置の動作を制御する。なお、車載装置には、電子的に制御可能
な車載装置であれば、どのようなものも該当する。例えば、車載装置には、エンジン・ブレーキ・ライトなどのパワートレイン系の機器を制御する装置、ABSやエアバッグなどを安全系の機器を制御する装置、ドアロック(キーレスエントリ)・パワーウィンドウ・ライトなどのボディ系の機器を制御する装置、外部との通信を行う装置・ナビゲーション情報を提供する装置・映像の再生を行う装置など情報・エンターテインメント系の装置が該当する。
【0009】
本発明に係る車載装置制御システムは、優先度決定手段と制御手段とを含む。優先度決定手段は、自車の車両状況に基づいて、複数の車載装置の動作の優先度を決定する。制御手段は、決定された各車載装置の優先度に基づいて、各車載装置の動作を制御する。
【0010】
制御手段は、例えば、優先度が低い車載装置への電力供給を減少させることで、消費電力を抑制することが好ましい。ここで、制御手段は、車載装置への電力供給を完全に止めてその機能を無効にしても良く、少ない電力が消費される省電力モードへ移行させても良い。このような構成によれば、車両状況に応じて、不要な消費電力を抑制することができる。
【0011】
複数の車載装置の処理が共通のプロセッサによって行われている場合には、制御手段は、優先度の高い車載装置に対してより多くの演算資源を割り当てることが好ましい。複数の車載装置の処理が共通のプロセッサによって行われる構成は、例えば、汎用プロセッサ上でOS(Operation System)が稼働され、そのOS上で各車載装置の処理がタスクとして実行される構成が考えられる。この場合、優先度が高い車載装置からのタスクにより多くの演算時間を割り当てることが好ましい。また、複数の車載装置の処理が共通のプロセッサによって行われる構成として、動的に再構成可能な半導体デバイスを用いて、その配線回路を切り替えることで複数の車載装置からの処理に対応する構成も考えられる。この場合、優先度の高い車載装置からの処理に割り当てる配線回路の面積(量)を大きくすることが好ましい。これらの方法によって、優先度の高い車載装置に対してより多くの演算資源を割り当てることで、車両状況に応じて緊急度の高い処理を優先的に処理することができ、システム全体としての処理が効率化される。なお、演算資源とは電子的な処理のために必要となるハードウェア資源のことをいい、プロセッサだけでなく、メモリやその他の周辺機器をも含む。
【0012】
さらに、制御手段は、車載装置の優先度が高い場合と低い場合とで、上記の共通のプロセッサに実行させる処理の内容を変更することが好ましい。一般に、品質の高い(高精度な)処理結果を得るためには演算量の多い処理が必要となる。例えば、高精度な結果を得るためには、高度なアルゴリズムを用いたり、ループ処理の繰り返し回数を多くしたりする必要がある。その結果、高精度な結果を得るためには必要な演算量が多くなる。そこで、制御手段は、車載装置の優先度が高い場合には優先度が低いときよりも、精度の高い処理結果が得られる処理、すなわち高性能な処理を共通のプロセッサに行わせることが好ましい。換言すれば、制御手段は、第1の処理と、第1の処理より高精度な結果を得ることができるが演算量の多い第2の処理とを共通のプロセッサに実行させることが可能であり、車載装置の優先度が高いときは第1の処理を実行させ、優先度が低いときは第2の処理を実行させる。このような構成をとることによって、優先度の高い車載装置には高品質な処理結果を与えることが可能となる。
【0013】
車両状況は、自車に搭載された複数のセンサから得られる情報に基づいて判断されることが好適である。すなわち、車両状況は、単一のセンサから得られる情報に基づいてではなく、複数の情報に基づいて総合的に判断されるものであることが好ましい。なお、複数のセンサから得られる情報と車両状況との対応関係があらかじめ定義された車両状況定義テーブルを本発明に係る車載装置制御システムが有しており、この車両状況定義テーブル
と複数のセンサから得られる情報に基づいて、車両状況が判断されることが好ましい。
【0014】
また、車両状況は他車や路側機などから無線通信によって通知されることも好ましい。すなわち、自車内から取得される情報ではなく、車外から取得される情報に基づいて自車の車両状況が判断されることも好ましい。自車内で得られる情報には限りがあるため、車外からの情報に基づいて車両状況を判断することで、より高度に自車の置かれている状況を判断することができる。車外から得られる情報としては、他車や路側機などが自車と通信しようとしているという情報がある。また、渋滞の有無や、道路上の障害物・対向車や歩行者など衝突の危険性についての情報も含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の状況に応じて車載装置に適切な動作を行わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る車載装置制御システムのシステム構成を示す図である。本車載装置制御システムは、車両状況取得部1、車両状況定義テーブル2、優先度テーブル3、車載装置制御部4、複数のセンサ11〜15、複数の車載装置21〜25から構成される。本車載装置制御システムの概要を説明すると、複数のセンサ11〜15から得られる情報に基づいて、車両状況取得部1が車両状況を判断し、各車載装置21〜25の動作優先度を決定して、その優先度に基づいて車載装置21〜25の動作を制御する。
【0018】
なお、本実施形態に係る車載装置制御システムは、各車載装置や各センサ以外に、CPU(中央演算処理装置)などの演算手段、RAMやROM等の記憶手段を有する。車両状況定義テーブル2および優先度テーブル3は記憶手段に格納される。車両状況取得部1および車載装置制御部4は、記憶手段に格納されたプログラムが演算手段によって実行されることによって、その機能が実現される。なお、車両状況取得部1および車載装置制御部4は、専用のチップを用いてその機能が実現されても構わない。
【0019】
本実施形態では、車載装置制御部4は、ETC装置21、VICS装置22、セルラ電話23、GPS装置24、およびキーレスエントリ25を制御の対象とする。ETC装置21は、有料道路の料金所においてDSRC(Dedicated Short Range Communication)
方式の無線通信を用いて料金の支払いを行うための装置である。VICS装置22は、FM多重放送や電波ビーコン、光ビーコンなどから交通情報を受信するための装置である。セルラ電話23は、無線通信による通話のための装置であって、CDMA(Code Division Multiple Access)やTDMA(Time Division Multiple Access)などの無線方式によって無線通信を行う。GPS装置24は、人工衛星から発信される電波を受信して、位置情報を取得するための装置である。キーレスエントリ25は、キーをロックに差し込むことなく、無線通信を用いてロックを解除するための装置である。本実施形態では、制御の対象となる車載装置として無線通信を用いる装置を例として取り上げているが、これらは一例であって無線通信を用いる車載装置である必要はない。
【0020】
また、本実施形態では、車両状況取得部1は、キースイッチ11、シフトレバー12、車速センサ13、エアバッグ14、盗難防止装置15から、車両状況を判断するための情報を取得する。キースイッチ11からは、キースイッチの状態(OFF,ACC,ON)などの情報を取得する。シフトレバー12からは、シフトレバーの位置(P,L,2,D
,R)を取得する。車速センサ13からは、自車の車速を取得する。エアバッグ14からは、衝突の有無を取得する。盗難防止装置15からは、盗難発生の有無を取得する。なお、これらの装置は車両状況を判断するための情報を取得するためのセンサの例示であって、車両状況を判断するための情報を取得するためのセンサはこれらに限られるものではない。例えば、車両状況取得部1は、ライト、ワイパー、横滑りセンサ(ヨーセンサ)、ABS(の作動)、ミリ波レーダ、GPS装置など、様々な装置から情報を取得して、車両状況を判断することができる。
【0021】
車両状況取得部1は、上記複数のセンサから情報を取得して、自車の車両状況を判断する。ここで、センサから得られる情報と車両状況との対応付けは車両状況定義テーブル2にあらかじめ格納されている。図2は、車両状況定義テーブル2の例を示すものである。図2を参照すると、キースイッチがOFF、シフトレバーがP、車速が時速0kmのときには、車両状況が「駐車中」であると判断されることが分かる。また、キースイッチがON、シフトレバーがD,2,Lのいずれか、車速が時速0kmより大きいときは、車両状況が「走行(前進)」と判断されることが分かる。
【0022】
本実施形態では、車両状況として「駐車中」「停止中」「走行(前進)」「後退」「衝突時」「盗難被害時」の6つの状況を定義しているが、より細分化して定義したり、これらとは異なる車両状況を定義しても良い。例えば「走行(前進)」を、「低速走行」「中速走行」「高速走行」のように細分化して定義しても良く、キースイッチ11がOFFからONになった時点として「エンジン始動時」を定義しても良い。
【0023】
車載装置制御部4は、車両状況取得部1が判断した自車の車両状況に基づいて各車載装置の動作の優先度を決定する。ここで、車載装置制御部4は、自車の車両状況と優先度テーブル3を参照して、各車載装置の動作の優先度を決定する。優先度テーブル3には、各車両状況における各車載装置の動作優先度が定義されている。図3は、優先度テーブル3の例を示す図である。図中の数字は、優先度を表す数字であって、値が小さい数字ほど優先度が高いことを示す。例えば、駐車中であれば、キーレスエントリ25以外の車載装置は動作させる必要がないので、優先度が低く設定されている。逆に、駐車中以外であればキーレスエントリ25は動作させる必要がないので、駐車中以外ではキーレスエントリ25の動作優先度は低く設定されている。また、衝突時や盗難被害時には、位置情報を外部に伝えることと、外部との通話手段を確保するために、GPS装置24とセルラ電話23の動作優先度が高く設定される。各車載装置の各車両状況における優先度は、適宜設定することができる。なお、動作優先度として複数の車載装置に同じ優先度(値)を割り当てても構わない。
【0024】
車載装置制御部4は、上記のようにして決定した動作優先度に基づいて各車載装置の動作を制御する。例えば、車載装置制御部4は、動作優先度が低い車載装置への電力供給を減少させる。車載装置制御部4は、図3において動作優先度が「9」に該当する車載装置への電力供給を停止しその機能をオフにする。また、車載装置制御部4は、図3において動作優先度が「8」に該当する車載装置を省電力モードへと移行させる。このように、優先度の低い車載装置への電力供給を押さえることで、不要な電力消費を抑制することが可能となる。なお、優先度が所定の閾値以上の場合に供給電力を減少させているが、各車載装置の優先度から優先順位を判断して下位に相当する装置への電力供給を抑制しても良い。
【0025】
<動作例>
図4は、本実施形態における車載装置制御システムの動作例を示すフローチャートである。まず、車両状況取得部1は、複数のセンサ11〜15から情報を取得する(S01)。そして、車両状況取得部1は、取得した情報と車両状況定義テーブル2とに基づいて自
車の車両状況を判断する(S02)。車載装置制御部4は、自車の車両状況と優先度テーブル3から各車載装置の動作優先度を決定する(S03)。そして、車載装置制御部4は、自車の各車載装置の動作優先度に基づいて、各車載装置の動作を制御する(S04)。なお、本実施形態では、各車載装置への供給電力を制御する。
【0026】
<実施形態の効果>
本実施形態では、車両状況に基づいて不要あるいは優先度の低い機能への電力供給を抑制しているため、消費電力を抑制することが可能となる。また、本実施形態では、車両状況を単一のセンサから得ているのではなく、複数のセンサから得られる情報に基づいて総合的に判断している。したがって、単一の情報に基づいて車載装置の動作を制御する場合よりも、より自車の置かれている状況に即した制御が可能となる。
【0027】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、各車載装置の演算処理が共通のプロセッサによって行われる実施形態である。システム構成は第1の実施形態と同様(図1)であるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施形態において、各車載装置におけるデジタル処理は、車載装置制御部4によって実行される。車載装置制御部4上ではOSが実行されており、OSの機能の一部としてタスク管理機能(タスクスケジューリング機能)が実行される。タスク管理機能は、具体的には、実行すべき複数のタスクがあったときに、どのような順番でどのタスクを実行するかを決定する。各車載装置の処理はタスクとして車載装置制御部4にその実行が依頼され、車載装置制御部4は依頼されたタスクを実行する順序を決定する。
【0029】
ここで、車載装置制御部4は、自車の車両状況に基づいて決定した各車載装置の動作優先度を、依頼されたタスクの優先度(以下、タスク優先度という)としてタスク管理を行う。そして、動作優先度の高い車載装置から依頼されたタスクにより多くの演算資源が割り当てられるようにする。
【0030】
具体的には、タスク優先度の高いタスクから順番に処理することで、優先度の高いタスクを優先的に実行することができる。また、依頼された各タスクを一定周期で少しずつ実行し、タスク優先度の高いタスクほど一回に割り当てるCPU時間を長くしてもよい。これ以外にも既存のどのような方法を用いて、優先度の高いタスクを優先的に実行する構成をとっても良い。
【0031】
本実施形態によれば、各車載装置の処理を共通のプロセッサによって実現しているためプロセッサの数を抑えることができ、設置面積及びコストの削減ができる。さらに、優先度の高い処理に優先的にプロセッサの演算資源を割り当てることで、自車の置かれている状況に即して効率の良い処理を行うことが可能となる。
【0032】
なお、上記の説明ではCPU時間についてのみ説明しているが、タスク優先度に応じてタスクが使用可能なメモリの量を変化させてもよく、通信に必要な資源(使用可能帯域等)を変化させても良い。
【0033】
(第3の実施形態)
本実施形態は第2の実施形態と基本的に同一であるため、詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施形態では、車載装置の優先度が高い場合には、優先度が低い場合よりもより良い処理結果が得られる高性能な処理を行う。
【0034】
例えば、ETC装置21やVICS装置22などでは受信した信号をデジタル変換して
デジタル信号処理を行う。この際、各装置ではデジタル信号に対してフィルタリング処理(デジタル信号処理)を実行する。このフィルタリング処理の際に、車載動作制御部4は、車載装置の動作優先度が高い場合には高次のフィルタを用い、動作優先度が低い場合には低次のフィルタを用いる。高次のフィルタを用いる場合には、より多くの演算資源が必要となるが、得られる処理結果の精度が向上する。これにより、例えばデジタル信号からノイズを除去する処理をより効果的に行うことが可能となる。
【0035】
また、例えば、車載装置としてドライブレコードが搭載されている場合には、衝突時(エアバックの作動によって判断)には、記録画像数を増やす(サンプリング間隔を短くしたり、画像解像度を上げたりする)処理を行うことが考えられる。
【0036】
このように、動作優先度の高い車載装置からの処理には高性能な処理を実行できる。また逆に、動作優先度の低い車載装置の処理は処理負荷の軽い処理を実行させることで、処理効率を向上させることができる。
【0037】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態では、車載装置制御4として動的に再構成可能な半導体デバイス(以下、動的再構成デバイスという)を用いる。動的再構成デバイスは、複数の演算ユニット(PE:Processing Element)とその配線とから構成され、配線回路を動的に再構成することで実行する処理の内容を変更することが可能である。動的再構成デバイスとしては、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)や、リコンフィギュラブルチップ(Reconfigurable Chip)と呼ばれる半導体デバイス
が相当する。
【0038】
本実施形態における車載装置制御部4では、動的再構成デバイス上の演算ユニットが各車載装置の処理を実行できるように構成される。図5は、動的再構成デバイスが行う演算ユニット(PE)の各車載装置への割り当ての状況を模式的に示す図である。動的再構成デバイス30は、共通処理用の演算ユニット31、セルラ電話用32,VICS装置用33、ETC装置用34,GPS装置用35にそれぞれ割り当てられた演算ユニットを有する。
【0039】
ここで、車載装置制御部4は、車両状況に基づいて決定される各車載装置の動作優先度に応じて、それぞれの車載装置に割り当てる演算ユニットの量(面積)を増減させる。より具体的には、車載装置制御部4は、車載装置の動作優先度が高ければ高いほど割り当てる演算ユニットの量を多くする。図5(a)は、セルラ電話、VICS装置、ETC装置、GPS装置の間で優先度の差が無い場合の状態を示す。そして、衝突時や盗難発生時などセルラ電話とGPS装置の優先度が高く設定された場合には、図5(b)に示すように配線回路を再構成して、セルラ電話とGPS装置に対して割り当てる演算ユニットの量を増やす。このように配線回路を再構成することにより、優先度の高い車載装置の処理に対してより多くの演算資源を割り当てることが可能となる。
【0040】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態では、自車の置かれている状況である車両状況を自車に搭載されたセンサからではなく、他車もしくは路側機から無線通信によって取得する。図6は、本実施形態に係るシステム構成を示す図である。なお、上記の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
車両状況取得部1は、無線通信部5を介して他車や路側機と通信を行う。無線通信部5が用いる無線通信方式としては、DSRC、IEEE802.11xなどの無線LAN、IEEE802.16、IEEE802.20など種々の方式が考えられるがどのような
無線通信方式を用いても構わない。車両状況取得部1は他車や路側機から自車の車両状況を取得し、車載装置制御部4は取得した車両状況に基づいて各車載装置の動作優先度を決定する。
【0042】
図7は、路側機が無線通信を用いて、自車に対して車両状況を通知する例を説明する図である。例えば図7(a)が示すように、路側機は脇道から本道に進入しようとする車両が存在する場合に、本道を走行中の車両に対して警告を通知する。また図7(b)に示すように、見通しの悪い道路の前方に障害物が存在する場合にも、その道路を走行中の車両に対して警告を通知する。これらの通知を受信した場合、本実施形態における車載装置制御システムは、例えば、衝突を予測するためのシステムや衝突を回避するためのシステムの動作優先度を高く設定することが考えられる。
【0043】
図8は、他車が無線通信を用いて、自車に対して車両状況を通知する例を説明する図である。例えば図8(a)に示すように、前方の車両が急ブレーキをかけた場合には、その旨の通知を後方の車両に対して車車間通信で通知する。本実施形態における車載装置制御システムは、このような車両状況に置かれていることを検知すると、例えば、衝突を予測するためのシステムや衝突を回避するためのシステムの動作優先度を高く設定することが考えられる。また、図8(b)では、交差点に右折車が存在している。このような状況で、右折車は対向車等が存在しないか確認するための信号を発信する。この信号を受信した車両は、自車の周囲に右折車が存在することを検知できる。本実施形態における車載装置制御システムは、このような車両状況に置かれていることを検知すると、車車間通信を行うための準備や、複数の無線通信方式のうちから車車間通信に割り当てる通信資源を増やす処理を行う。
【0044】
本実施形態では、このような構成をとることによって、車内のセンサからだけでは得ることのできない情報に基づいて自車の車両状況を取得することができる。したがって、より柔軟に自車の置かれている状況を判断することが可能となり、より状況に即した処理を行うことが可能となる。なお、自車外からの情報に基づいて自車の車両状況を取得する本実施形態と、自車内の複数のセンサから得られる情報に基づいて自車の車両状況を判断する第1〜4の実施形態を組み合わせることも好ましい。すなわち、自車内の複数のセンサから得られる情報及び他車又は路側機から無線通信によって取得される情報に基づいて自車の車両状況を判断し、これに基づいて各車載装置の動作優先度を決定することも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態における車載装置制御システムのシステム構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における車両状況定義テーブルの例を示す図である。
【図3】第1の実施形態における優先度テーブルの例を示す図である。
【図4】第1の実施形態における車載装置制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【図5】第4の実施形態における車載装置制御である動的再構成デバイスの演算ユニットの割り当て状況を説明する模式図である。
【図6】第5の実施形態における車載装置制御システムのシステム構成を示す図である。
【図7】第5の実施形態において路側機が自車に対して行う車両状況の通知を説明する図である。
【図8】第5の実施形態において他車が自車に対して行う車両状況の通知を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
1 車両状況取得部
2 車両状況定義テーブル
3 優先度テーブル
4 車載装置制御部
5 無線通信部
11 キースイッチ
12 シフトレバー
13 車速センサ
14 エアバッグ
15 盗難防止装置
21 ETC装置
22 VICS装置
23 セルラ電話
24 GPS装置
25 キーレスエントリ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載装置の動作を制御する車載装置制御システムであって、
自車の車両状況に基づいて、前記複数の車載装置の動作の優先度を決定する優先度決定手段と、
前記優先度に基づいて、前記複数の車載装置の動作を制御する制御手段と、
を有する車載装置制御システム。
【請求項2】
自車に搭載された複数のセンサから得られる情報に基づいて、自車の車両状況を判断することを特徴とする請求項1に記載の車載装置制御システム。
【請求項3】
前記複数のセンサから得られる情報と車両状況との対応があらかじめ定義された車両状況定義テーブルをさらに有し、
自車に搭載された複数のセンサから得られる情報と前記車両状況定義テーブルとに基づいて、自車の車両状況を判断することを特徴とする請求項2に記載の車載装置制御システム。
【請求項4】
自車の車両状況は、他車又は路側機から無線通信によって取得されることを特徴とする請求項1に記載の車載装置制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、優先度が低い車載装置への電力供給を減少させることで、消費電力を抑制することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車載装置制御システム。
【請求項6】
前記複数の車載装置の処理は、共通のプロセッサによって実行されており、
前記制御手段は、優先度の高い車載装置に対してより多くの演算資源を割り当てることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車載装置制御システム。
【請求項7】
前記制御手段は、車載装置の優先度が高い場合には、該車載装置の優先度が低い場合よりも性能の良い処理を前記演算資源に実行させることを特徴とする請求項6に記載の車載装置制御システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の車載装置制御システムを搭載した車両。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−237913(P2007−237913A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62834(P2006−62834)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】