説明

車載装置及びラジオ番組再生システム

【課題】 携帯端末装置を通じてネット放送の再生を行う車載装置及びラジオ再生システムにおいて、携帯端末装置からの音声データの取得が困難になった場合でも、継続して同じラジオ番組を聴取できる車載装置及びラジオ番組再生システムを提供することを目的としている。
【解決手段】 ラジオ番組再生システムによれば、サイマル配信受信エリアにて、ナビゲーション装置のネット音声受信部での音声データの受信が困難になると、ナビゲーション装置は、地上波放送受信部によるラジオ番組の受信に切替えるので、携帯電話の状況によって音声データの送信が困難になっても、引き続き同じラジオ番組の再生をナビゲーション装置で継続することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波放送によるラジオ番組と、インターネットによりネット配信されるラジオ番組とを再生するものに関して、特に地上波放送とネット配信で同じラジオ番組が受信できるサイマル配信のエリアにおいて用いる車載装置及びラジオ番組再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットラジオと呼ばれる、インターネットプロトコルを通じて、音声による番組を配信するサービスが広く知られている。このインターネットラジオは通常パソコンやスマートフォン等で聴取されるが、例えば特許文献1のようなに車載装置においても聴取できるものも知られている。
【0003】
この特許文献1の車載装置は、携帯電話を介してインターネットと接続し、インターネットラジオ配信サーバから配信されたデータを受信してラジオ番組を再生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯電話によりインターネットに接続し、取得した音声データを車載装置で再生する方法では、携帯電話の状況により、ラジオ番組の聴取を継続して行えない状況が発生することがある。
【0006】
つまり、例えば携帯電話のバッテリが切れてしまうと、携帯電話そのものが機能しなくなるので、インターネットへの接続が継続できなくなり、車載装置でラジオ番組を再生することができなくなってしまう。また例えば携帯電話に他者からの着信があると、そちらの方を優先する必要があるため、携帯電話はインターネットラジオにより配信される音声データの受信を中止してしまい、車載装置でラジオ番組を再生することができなくなってしまう。更にはインターネットラジオが聴取できるエリアから出てしまった場合にも、インターネットラジオにより配信される音声データを携帯電話で受信できなくなるので、車載装置でラジオ番組の再生ができなくなってしまう。
【0007】
本願の発明者は、上記問題を解消すべく種々検討を重ねた結果、地上波により配信されるラジオ番組と同じ内容を同じ地域でインターネットにより同時に配信されるサイマル配信サービスが知られており、このサイマル配信のエリアにおいて、携帯電話による音声データの取得が困難になると、車載装置側で地上波放送の受信に切替えることで、上記課題を解決し得ることに想到し、本発明を解決するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は上記の問題を解決することを課題とし、携帯端末装置を通じてネット放送の再生を行う車載装置及びラジオ再生システムにおいて、携帯端末装置からの音声データの取得が困難になった場合でも、継続して同じラジオ番組を聴取できる車載装置及びラジオ番組再生システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明における車載装置の第1の態様は、
地上波放送によるラジオ番組を受信する地上波放送受信部と、インターネットを介して配信されたラジオ番組の音声データを受信するためのネット音声受信部と、を備える車載装置であって、
前記車載装置は、前記ネット音声受信部での前記音声データの受信が困難になると、前記ネット放送と同じラジオ番組を前記地上波放送で受信可能な場合、前記地上波放送受信部により前記ネット放送と同じラジオ番組を受信することを特徴とする。
【0010】
本発明における車載装置の第2の態様は、第1の態様にかかる車載装置であって、前記ネット音声受信部は、前記ラジオ番組の音声データの他に、地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも受信できることを特徴とする。
【0011】
本発明におけるラジオ番組再生システムの第1の態様は、
インターネットを介して配信されるラジオ番組の音声データを取得する通信部と、前記通信部により取得した音声データを送信するネット音声送信部と、を備える携帯端末装置と、地上波放送によるラジオ番組を受信する地上波放送受信部と、前記携帯端末装置の前記ネット音声送信部から送信された前記音声データを受信するためのネット音声受信部と、を備える車載装置と、からなるラジオ番組再生システムであって、
ラジオ番組がインターネットと地上波のどちらも受信できるサイマル配信放送受信エリアにて、前記車載装置の前記ネット音声受信部での前記音声データの受信が困難になると、前記車載装置は、前記地上波放送受信部によるラジオ番組の受信に切替えることを特徴とする。
【0012】
本発明におけるラジオ番組再生システムの第2の態様は、第1の態様にかかるラジオ番組再生システムであって、前記サイマル配信放送におけるインターネットを介した配信では、ラジオ番組の音声データの他に、地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも配信しており、前記携帯端末装置の前記ネット音声送信部は、この地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも送信していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様である車載装置によれば、ネット音声受信部での音声データの受信が困難になると、ネット放送と同じラジオ番組を地上波放送で受信可能な場合であれば、地上波放送受信部によりネット放送と同じラジオ番組を受信するので、ネット放送による音声データを送信してくる携帯端末装置の状況によって、音声データの送信が困難になっても、引き続き同じラジオ番組の再生を継続することが可能となる。
【0014】
本発明の第2の態様である車載装置によれば、ネット音声受信部で、同じラジオ番組を地上波によって配信している放送局の受信周波数に関するデータも受信できるので、ネット音声受信部での音声データの受信が困難になっても、すぐに同じ地上波放送を受信することができる。
【0015】
本発明の第1の態様であるラジオ番組再生システムによれば、サイマル配信放送受信エリアにて、車載装置のネット音声受信部での音声データの受信が困難になると、車載装置は、地上波放送受信部によるラジオ番組の受信に切替えるので、携帯端末装置の状況によって、音声データの送信が困難になっても、引き続き同じラジオ番組の再生を車載装置で継続することが可能となる。
【0016】
本発明の第2の態様であるラジオ番組再生システムによれば、サイマル配信放送におけるインターネット配信では、ラジオ番組の音声データの他に、同じラジオ番組の地上波による受信周波数に関するデータも配信しているので、車載装置のネット音声受信部での音声データの受信が困難になっても、すぐに同じ地上波放送を車載装置で受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したラジオ番組再生システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ラジオ番組再生システムを構成するナビゲーション装置と携帯電話との間での処理手順を示すシーケンス図である。
【図3】本発明を適用したナビゲーション装置におけるネット放送による音声出力から地上波放送による音声出力への切替え処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための車載装置及びラジオ番組再生システムを例示するものであって、本発明をこの車載装置及びラジオ番組再生システムに特定することを意図するものではなく、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって定められるものである。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明におけるラジオ番組再生ステム10の構成を示すブロック図である。ラジオ番組再生システム10は、サイマル配信放送100、ナビゲーション装置200、携帯電話300で構成されている。
【0020】
サイマル配信放送100は、放送局110、電波塔120、インターネットラジオ配信サーバ130により行われる。
【0021】
具体的には放送局110において、ラジオ番組が電波塔120を介して地上波放送として提供される。またインターネットラジオ配信サーバ130を介して地上波放送と同じラジオ番組が同時に提供される。このようにサイマル配信放送100においては、特定のラジオ番組が地上波放送とネット放送を通じてサイマル配信されることになる。なお地上波放送として提供されるラジオ番組は、振幅変調によるAM放送であっても、周波数変調によるFM放送の何れであっても構わない。
【0022】
ここで、インターネットラジオは、インターネットプロトコルを通じて、音声による番組を配信するサービスであり、このインターネットラジオは、インターネットに接続することができれば、世界中のラジオ番組が聴取できるので、特定の地域にいながら全世界のラジオ番組を手軽に楽しむことができるというのがその魅力の一つである。
【0023】
一方、インターネットによるラジオ番組のサイマル配信は、このような楽しみ方とは少し異なり、地上波によるラジオ放送と同じ内容を同じ地域でインターネットにより同時に配信するサービスである。このサービスは、地上波放送の受信が可能であった地域が、高層建築物の影響で受信環境が悪化し、地上波放送の受信が困難になったことや、もともと地形の関係で地上波放送の受信が困難なこと、等の理由で最近広まってきているサービスである。
【0024】
そして、ラジオ番組の地上波放送とインターネットへのサイマル配信は、一般的にエリア制限がなされていて、地上波放送に対応して、インターネットによる配信エリアが決められている。つまり地上波放送のエリアと、インターネットによるネット放送のエリアが略同じになるように制限されている。このようなサイマル配信におけるエリア制限については、放送に関する規制や、従来の広告によるビジネス方法への配慮等によるものと言われている。なお、エリア制限をおこなうための、エリアの判断は、通常インターネットラジオ配信サーバ130にアクセスする機器のIPアドレスや、アクセスする機器から位置情報を取得して行われている。
【0025】
ラジオ番組再生システム10を構成するナビゲーション装置200は、本発明における車載装置の典型例である。この他の車載装置として、例えば車に搭載されるオーディオ装置等であってもよい。
【0026】
そしてナビゲーション装置200は、制御部210、現在位置検出部220、地図情報記憶部230、表示部240、音声出力部250、操作入力部260、地上波放送受信部270、ネット音声受信部280を備えて構成されている。
【0027】
制御部210は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成され、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUにおいて実行することにより、ナビゲーション装置200の各部の動作を制御・統括する。また、ナビゲーション機能としての経路探索手段や経路案内手段を構成する。
【0028】
現在位置検出部220は、地球の上空を周回している複数のGPS衛星から時刻情報を含む電波を受信するGPS受信機等で構成され、受信した電波に基づき現在地を検出する。この他、現在位置検出部220としては、距離センサ、方位センサ、舵角センサ等からなる自立航法手段を用いることもできる。
【0029】
地図情報記憶部230は、道路の分岐地点等の結節点をノードとする道路ノードデータと、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路リンクデータを含む道路情報を記憶している。なお、道路ノードデータには、道路ノード番号、位置座標、接続リンク本数、分岐地点名称等が記憶されている。また、道路リンクデータには、始点及び終点となる道路ノード番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、制限速度、車線数、車道幅等の道路属性が含まれている。そして道路リンクデータには、さらに道路属性として橋、トンネル、踏切、料金所等のデータが付与される。また地図情報記憶部230は、道路情報の他に、施設データ、地形図データ等を記憶している。この施設データには、主要なランドマークや各種の施設について、施設の位置、施設の種別(コンビニエンスストア、ガソリンスタンド等)、施設名称、営業時間等の情報が含まれている。また地形図データには、海岸線、湖沼、河川形状等の水系情報、行政境界情報等が含まれる。
【0030】
また、地図情報記憶部230は、各地域における各放送局の放送局名および地上波で受信する際の放送局の受信周波数に関する情報も記憶している。さらに各地域における各放送局からの地上波放送を受信することができるエリアを示す地上波エリア情報と、インターネットを通じてサイマル配信されるラジオ番組を受信できるエリアを示すネット放送エリア情報についても記憶している。これらのエリア情報は、具体的には受信可能なエリアの境界に関する緯度、経度情報等で構成されている。なお、先にも述べたように、同じラジオ番組を地上波とインターネットとによりサイマル配信する場合には、放送に関する規制等の理由でエリア制限がなされているので、このような地上波エリア情報やネット放送エリア情報については、最初からナビゲーション装置200に記憶しておいてもよいし、通信手段を介して入手して記憶する構成であってもよい。
【0031】
表示部240は、制御部210の指令に基づき、探索された経路や車の現在位置を示すマークからなるナビゲーションとしての表示や、ラジオ受信部270で受信しているラジオ番組に関する表示や、ネット音声受信部280で受信しているネット放送によるラジオ番組に関する表示をおこなうためのものである。そしてこの表示部240は、液晶パネル等の表示デバイスによって構成される。
【0032】
音声出力部250は、ナビゲーション装置200における経路案内の際の案内音声や、ラジオ受信部270で受信したラジオ番組の音声や、ネット音声受信部280で受信したラジオ番組の音声を出力するものである。この音声出力部250は、スピーカ等で構成される。
【0033】
操作入力部260は、ユーザによって操作され、出発地、目的地等の経路探索条件を入力したり、複数のラジオ番組の中から好みの番組を選択したりするためのものである。操作入力部260は、ナビゲーション装置200の前面に配置されたハードキーや、表示部240に設けられたタッチパネルや、付属されたリモコン等で構成される。
【0034】
地上波放送受信部270は、放送局110が電波塔120を介して配信する高周波の電波を、アンテナ(図示せず)を介して受信し、制御部210の指令に基づいて高周波信号を変換し、復調IC(図示せず)により音声信号を抽出するものである。そしてこの音声信号が音声出力部250を介して出力されることで、ラジオ番組が再生されることになる。なお地上波放送受信部270は、振幅変調されたAM放送と、周波数変調されたFM放送を共に受信することができるものである。
【0035】
ネット音声受信部280は、携帯電話300が取得したネット放送による音声データが携帯電話300のネット音声送信部370から送信され、この送信された音声データを受信するためのものである。そしてネット音声受信部280で受信した音声データは、音声出力部250を介して出力されることになる。
【0036】
なお、ネット音声受信部280とネット音声送信部370との間の送受信手段は、Wi−Fi(登録商標)と呼ばれるようなIEEE802.11シリーズの技術規格である無線LAN、Bluetooth(登録商標)、WiMAX(登録商標)、赤外線通信等、無線通信手段によるものでもよい。或いはケーブル等を用いた有線通信手段によるものでもよい。何れにしても、ネット放送によりサイマル配信されたラジオ番組の音声データを、携帯電話300が取得した際に、ラジオ番組をナビゲーション装置200で再生できるデータを送受信できればよい。したがって、携帯電話300で取得した音声データからラジオ番組を再生するための音声信号のみを抽出し、抽出した音声信号をネット音声送信部370からネット音声受信部280へ直接送信して、ナビゲーション装置200で音声信号を出力する構成であってもよい。
【0037】
ラジオ番組再生システム10を構成する携帯電話300は、本発明における携帯端末装置の典型例である。この他の携帯端末装置として、例えばPHSやスマートフォン等、インターネットへ接続するための通信機能を備えた携帯端末装置であればよい。
【0038】
携帯電話300は、通話機能とともに通信機能を備えるものであり、制御部310、表示部320、音声入力部330、音声出力部340、操作入力部350、通信部360、ネット音声出力部370を備えて構成されており、その他に特に図示していないがアンテナ、バッテリ等も備えて構成されている。
【0039】
制御部310は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成され、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUにおいて実行することにより、携帯電話300の各部の動作を制御・統括する。
【0040】
表示部320は、携帯電話300における各種機能のメニューを表示したり、着信相手の電話番号を表示したり、メールを表示したりするものである。またインターネット上のホームページの表示を行う。この表示部320は、液晶パネル等の表示デバイスによって構成される。
【0041】
音声入力部330は、携帯電話300に備え付けられたマイクで構成されており、入力された音声をA/D変換し、次いで音声コーデックによって圧縮処理し、圧縮された音声データを制御部310に出力する。
【0042】
音声出力部340は、携帯電話300に備え付けられたスピーカで構成されており、通話相手の音声データを音声コーデックによって伸張処理し、D/A変換して出力するものである。
【0043】
操作入力部350は、携帯電話300における各種機能を選択するためのキーや、電話番号を入力するためのテンキー、メール送信の宛先や本文を入力するためのキー、或いはタッチパネル等で構成される。
【0044】
通信部360は、インターネットに接続し、インターネットラジオ配信サーバ130へアクセスするためのものである。具体的な通信手段としては、3G回線による方法や、Wi−Fi等の無線通信等による方法がある。そして通信部360を介して携帯電話300は、インターネットラジオ配信サーバ130へアクセスし、ラジオ番組の音声データを取得する。また通信部360は、携帯電話300の通話機能を実現するものとしても機能する。
【0045】
ネット音声送信部370は、通信部360を介して取得したネット放送によるラジオ番組の音声データをナビゲーション装置200のネット音声受信部280へ送信するためのものである。この送信の手段としては、先にも述べたように無線通信によるものでも有線通信によるものでも構わない。
【0046】
次に、ラジオ番組再生システム10におけるナビゲーション装置200と携帯電話300との間での処理手順を、図2に示すシーケンス図を用いて説明する。
【0047】
まず携帯電話300において、ユーザの操作等によりナビゲーション装置200との接続が行われる(ステップ401)。具体的には、有線による接続であれば、例えばUSBケーブルをネット音声送信部370とネット音声受信部280とに挿入することによって行われ、無線による接続であれば、例えばBluetoothによる接続の場合であればペアリングの操作により接続が行われる。
【0048】
次に、携帯電話300は通信部360を介してインターネットへ接続する(ステップ402)。そしてユーザが操作入力部350を介して選択する等の方法により、特定のラジオ番組が選局されその番組が配信されているインターネットラジオ配信サーバ130へアクセスする(ステップ403)。
【0049】
この時インターネットラジオ配信サーバ130側では、サイマル配信を行っているラジオ番組であって、エリア制限を行う必要があるものであれば、エリア外へ配信しないために、配信可能か否かを判断する必要がある。そこで配信可能か否かを判断するために、インターネットラジオ配信サーバ130は、携帯電話300に対して位置情報の提供を要求することになる。この要求に対して携帯電話300では、携帯電話300が備えるGPS(図示せず)等により現在位置情報を取得し、この位置情報をインターネットラジオ配信サーバ130へ送信する。なおエリア制限の判定を行うために必要な現在位置情報は、ナビゲーション装置200の現在位置検出部220から取得したものを用いる構成でも構わない。ナビゲーション装置200の現在位置検出部220による現在位置情報は、経路案内等にも用いられるため、比較的精度の高い位置情報なので、このような構成であれば、精度の高い位置情報を用いてエリア制限の判定を行うことが可能となる。
【0050】
そして、携帯電話300は、インターネットラジオ配信サーバ130から該当するラジオ番組の音声データを取得し(ステップ404)、ネット音声送信部370を介してナビゲーション装置200のネット音声受信部280へ音声データを送信する(ステップ405)。なお、インターネットラジオ配信サーバ130から取得した音声データと同様の音声データを携帯電話300がナビゲーション装置200へ送信できるのであれば、同様の音声データを送信すればよい。携帯電話300とナビゲーション装置200との間の通信手段によっては、携帯電話300が取得した音声データを、そのままナビゲーション装置200へ送信ができない場合もあるので、この場合少なくともラジオ番組を再生できる音声信号のみを抽出してナビゲーション装置200へ送信すればよい。
【0051】
ナビゲーション装置200では、音声受信部280を介して音声データを受信し(ステップ406)、音声データから音声信号を抽出し、音声出力部250からラジオ番組の音声を出力する(ステップ407)。
【0052】
その後、携帯電話300で音声データを取得し、その音声データを基にナビゲーション装置200で音声を出力している時、携帯電話300側でバッテリ切れや、他者からの着信が生じた場合、或いはナビゲーション装置200を搭載する車の移動によって、サイマル配信エリアの外側へ移動してしまった場合等の事情により、携帯電話300で音声データの取得が停止する状況が生じる(ステップ408)。この状況が発生することにより、携帯電話300からナビゲーション装置200への音声データの送信が行えなくなる。
【0053】
この時、ナビゲーション装置200では、ネット放送に基づくラジオ番組の再生が継続できなくなるので、サイマル配信されているラジオ番組であれば地上波によって配信されている同じラジオ番組を受信するために、地上波の選局を行う(ステップ409)。どの地上波であるのかを特定するための具体的な方法としては、例えばインターネットにより配信される音声データの中に、ラジオ番組の音声信号に関するデータだけでなく放送局110の情報等、その他の情報が併せて配信されているのであれば、その情報に基づき地上波を特定することが可能である。したがって音声データから放送局110に関するデータも抽出し、このデータも併せて携帯電話300からナビゲーション装置200へ送信しておくことで、ネット放送と同じラジオ番組を放送している放送局110を選択してもよい。特に、放送局110側で、地上波放送を受信するための周波数に関する情報を、インターネットラジオ側においてもラジオ番組の音声データに加えて配信しておくとよい。よってサイマル配信を行う上では、単にラジオ番組の音声データだけでなく、放送局110に関する情報も併せて音声データの中に含めて配信しておくのがよい。一方、ネット音声送信部370とネット音声受信部280との間では、ラジオ番組の音声信号に関するデータしか送受信できないのであれば、ナビゲーション装置200側で、音声処理の技術を用いて、ネット放送によるラジオ番組の音声を基にして、ナビゲーション装置200で受信可能な地上波放送の音声との比較を行い、該当する放送局を特定しもよい。
【0054】
ネット放送によるラジオ番組と同じラジオ番組を放送している放送局110が決まると、地上波放送受信部270では、その放送局110が配信する地上波を受信する(ステップ410)。そして受信した地上波を基に、地上波によるラジオ番組の音声を音声出力部250を介して出力する(ステップ411)。
【0055】
このような一連の処理により、ラジオ番組再生システム10では、携帯電話300の状況によって、ネット放送に基づくラジオ番組の再生がナビゲーション装置200で行えなくなったとしても、ナビゲーション装置200側で、ネット放送によるラジオ番組と同じラジオ番組が配信されている地上波を受信するのでラジオ番組の再生を継続させることが可能となる。
【0056】
次に、ナビゲーション装置200における、ネット放送の音声出力から地上波放送の音声出力への切替えの処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0057】
この処理は携帯電話300と接続状態となることにより開始される。まず携帯電話300が取得した音声データを、携帯電話300がナビゲーション装置200へ送信し、送信した音声データをナビゲーション装置200が受信したか否かについて判断する(ステップ501)。具体的には、ネット音声受信部280で音声データを受信できていればナビゲーション装置200で受信しているということになる。受信できていなければ、携帯電話300側でネット放送による音声データを取得できないということで、ナビゲーション装置200側での処理は終了することになる。
【0058】
次にステップ501でナビゲーション装置200がネット放送による音声データを受信していれば、音声信号を抽出し音声出力部250を介して音声を出力することで、ラジオ番組を再生する(ステップ502)。
【0059】
なお、携帯電話300側では、ネット放送による音声データを取得しているが、インターネットラジオで配信される音声データの中に、音声信号に関するデータの他、ラジオ番組を提供している放送局の周波数情報や広告情報も含まれているのであれば、これらのデータもナビゲーション装置200へ併せて送信しておく構成が好ましい。そしてこれらのデータをナビゲーション装置200側で受信した場合には、メモリ等に一時的に記憶しておき、適宜、表示部240等を介して再生することになる。
【0060】
次に、ナビゲーション装置200は、ネット音声受信部280で引き続き携帯電話300から送信された音声データを受信できているか否かについて判断する(ステップ503)。受信できていればステップ502に戻り、引き続きネット放送によるラジオ番組を再生する。
【0061】
携帯電話300からの音声データが受信できていなければ、音声データを送信している携帯電話300側で、音声データを取得できていないと判断して次のステップ504に進む。ここで、携帯電話300側で音声データを取得できていない状況としては、先にも述べたが、携帯電話300のバッテリ切れや、他者からの着信が生じた場合、或いはナビゲーション装置200を搭載する車の移動によって、サイマル配信エリアの外側へ移動してしまった場合等が考えられる。何れにしても、ネット音声送信部370からからネット放送の音声データを送信できくなった状況のことである。
【0062】
携帯電話300からの音声データが受信できていなければ、次にネット放送で受信していたラジオ番組と同じラジオ番組を地上波で受信可能か否かを判断する(ステップ504)。
【0063】
具体的には例えば、ネット放送で受信していた放送局名と受信周波数により地図情報記憶部230の情報を基に、現在位置検出部220による現在位置において地上波が受信可能か否かを判断する。ネット放送で受信していた放送局名と受信周波数は、先にも述べたようにネット放送の音声データの中に放送局名と受信周波数に関する情報が含まれていればこの情報を用いればよく、ネット放送の音声データの中に放送局名と受信周波数に関する情報が含まれていなければ、ネット放送によるラジオ番組の音声と、ナビゲーション装置200が現在位置で受信可能な地上波によるラジオ番組の音声とをナビゲーション装置200側で比較して判断すればよい。
【0064】
ネット放送で受信していたラジオ番組と同じラジオ番組を地上波では受信できない場合には、サイマル配信エリアではないと判断し、ナビゲーション装置200での処理を終えることになるが、ネット放送で受信していたラジオ番組と同じラジオ番組を地上波で受信できる場合には、このラジオ番組はサイマル配信されているということなので、ステップ505に進んで該当する地上波を選局し配信された音声データを受信する(ステップ505)。そして受信した音声データを基に、音声信号を抽出し、音声出力部250を介して音声を出力することで、地上波によるラジオ番組の再生を行う(ステップ506)。
【符号の説明】
【0065】
10 ラジオ番組再生システム
100 サイマル配信放送
110 放送局
120 電波塔
130 インターネットラジオ配信サーバ
200 ナビゲーション装置
270 地上波放送受信部
280 ネット音声受信部
300 携帯電話
360 通信部
370 ネット音声送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上波放送によるラジオ番組を受信する地上波放送受信部と、
インターネットを介して配信されたラジオ番組の音声データを受信するためのネット音声受信部と、を備える車載装置であって、
前記車載装置は、前記ネット音声受信部での前記音声データの受信が困難になると、前記ネット放送と同じラジオ番組を前記地上波放送で受信可能な場合、前記地上波放送受信部により前記ネット放送と同じラジオ番組を受信することを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記ネット音声受信部は、前記ラジオ番組の音声データの他に、地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも受信できることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
インターネットを介して配信されるラジオ番組の音声データを取得する通信部と、
前記通信部により取得した音声データを送信するネット音声送信部と、を備える携帯端末装置と、
地上波放送によるラジオ番組を受信する地上波放送受信部と、
前記携帯端末装置の前記ネット音声送信部から送信された前記音声データを受信するためのネット音声受信部と、を備える車載装置と、からなるラジオ番組再生システムであって、
ラジオ番組がインターネットと地上波のどちらも受信できるサイマル配信放送受信エリアにて、前記車載装置の前記ネット音声受信部での前記音声データの受信が困難になると、
前記車載装置は、前記地上波放送受信部によるラジオ番組の受信に切替えることを特徴とするラジオ番組再生システム。
【請求項4】
前記サイマル配信放送におけるインターネットを介した配信では、ラジオ番組の音声データの他に、地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも配信しており、
前記携帯端末装置の前記ネット音声送信部は、この地上波によって同じラジオ番組を配信している放送局の受信周波数に関するデータも送信していることを特徴とする請求項3に記載のラジオ番組再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74587(P2013−74587A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214113(P2011−214113)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】