説明

車載通信端末装置

【課題】車両の振動などから受けるICカードの振動を吸収することができ、ICカードにおけるICチップと接続端子とを確実に接続すると共に、振動によるICカードの損傷を防止することができる車載通信端末装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置において、ETCカード2が載置される載置面3を備えた下ケース4と、下ケース4に対して開閉自在に設けられた上ケース6と、下ケース4に設けられ、ETCカード2に記憶された情報の読み出し、書き込み可能な回路基板13とを備え、上ケース6に、ETCカード2の振動を吸収する弾性シート10a、10bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信端末装置に関し、特に、車両に搭載され、高速道路等の出入口に設置される据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高速道路の出入口を車両が通過したときに、料金を支払うシステムとしてETCシステムが普及している。このETCシステムにあっては、従来のチケットに代えて車両通過情報を車両に搭載した車載通信端末装置と料金所に設置される据置型通信端末装置との間で授受して料金の自動支払いを行い、料金所で停止することなしに車両を通過させることができるので、料金の支払いのための煩わしい処理を不要にして交通の円滑化を図ることができる。
従来のこの種のETCシステムにあっては、据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置を車両に搭載する必要があり、この車載通信端末装置にETCカードを取付けることにより、ETCカードに料金に関する情報を書き込む必要がある。
また、従来の車載通信端末装置には、車両の走行中の振動等によってETCカードに情報伝送している最中にETCカードがコネクタから脱落したり、また、情報の伝送中のETCカードが動いてしまって記録されたデータを誤って壊してしまうような不具合が発生しないようにするために、ETCカードをカードコネクタに取付ける必要がある。
【0003】
従来のこの種のカードコネクタとしては、情報が記録されたETCカードの両端部をETCカードと略同等の厚さを有するガイド溝によりガイドしながら挿抜自在に保持し、このカードと情報伝達を行うコネクタ本体と、コネクタ本体をETCカードの挿抜方向にスライド移動自在に支持するケースと、コネクタ本体を常時ETCカードの抜き出し方向に付勢する弾性部材と、ETCカードの挿入方向にスライド移動したコネクタ本体を所定の位置において保持するロック手段と、ロック手段による保持を解除するロック解除手段とを有したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このカードコネクタにおいては、ETCカードが受容空間内に挿入された状態で、コンタクトはETCカードにより強制的に弾性変形させられるため、コンタクトの押圧部がETCカードの先端部を上方へ押し上げてハウジングのカバー部材の下面に押し付けるようになっている。このためETCカードの先端部はコンタクトの押圧部とカバー部材の下面とにより挟持されて、ETCカードを受容空間内に確実に保持しようとしている。
【特許文献1】特開2002−8778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなカードコネクタにあっては、ETCカードの両端部をETCカードと略同等の厚さを有するガイド溝によりガイドしながら着脱自在に保持するようにしているため、ETCカードとガイド溝との間に隙間が設けられている。ETCカードの受容空間内における保持力はコンタクトの押圧部にのみ作用しているため、ETCカード面と垂直方向のがたつきを充分に押さえることができず、車両の振動によりETCカードがその垂直方向に振動してしまい、コンタクト部分などを損傷してしまうという弊害がある。特に、自動二輪車に車載通信端末装置が搭載された場合には、乗用自動車と比較して振動による衝撃が大きいため、コンタクト部分などの損傷が起きやすい。
本発明は、これらの課題を解決するためになされたもので、車両の振動などから受けるICカードの振動を吸収することができ、ICカードにおけるICチップと接続端子とを確実に接続すると共に、振動によるICカードの損傷を防止することができる車載通信端末装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車載通信端末装置は、車両に搭載され、据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置において、ICカードが載置される載置面を備えた第1収納部材と、前記第1収納部材に対して開閉自在に設けられた第2収納部材と、前記第1収納部材に設けられ、前記ICカードに記憶された情報の読み出し、書き込み可能な制御手段とを備え、前記第2収納部材に、前記ICカードの振動を吸収する振動吸収手段を設けたものから構成されている。
この構成により、第2収納部材を開放した状態で第1収納部材の載置面にICカードを載置し、ICカードを第1収納部材に載置した状態で第2収納部材を閉じるようにしたので、広い空間を利用してICカードを車載通信端末装置に取付けることができる。
第2収納部材が閉塞されると、第2収納部材に設けられたICカードの振動を吸収する振動吸収手段により、車両などから伝達されるICカードの振動が吸収され、ICカードにおけるICチップと接続端子とが確実に接続されるのでICカードに記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるICカードの損傷が防止される。
【0007】
また、本発明に係る車載通信端末装置の前記振動吸収手段は、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記第1収納部材に載置された前記ICカードを前記載置面に押圧し、前記載置面と共に前記ICカードを挟持するように構成される。
この構成により、第2収納部材が閉塞されると、第1収納部材に載置されたICカードが載置面に押圧され、ICカードが載置面と振動吸収手段により挟持されるので、ICカードにおけるICチップと接続端子とが確実に接続され、ICカードに記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるICカードの損傷が防止される。
【0008】
また、本発明に係る車載通信端末装置の前記振動吸収手段は、振動吸収性を有する振動吸収片からなり、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記振動吸収片が前記ICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接する位置になるように前記第2収納部材に設けられるものから構成されている。
この構成により、振動吸収手段が振動吸収性を有する振動吸収片であると、第2収納部材が閉塞されたとき、振動吸収片がICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接し、ICチップ部分が接続端子に直接押圧され、より確実にICチップと接続端子とが接続され、かつICカードの振動が吸収されるので、ICカードに記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるICカードの損傷が防止される。
【0009】
また、本発明に係る車載通信端末装置の前記振動吸収手段は、複数の前記振動吸収片からなり、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記振動吸収片の少なくとも1つが前記ICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接する位置になるように前記第2収納部材に設けられるものから構成される。
この構成により、振動吸収手段が複数の振動吸収片であると、第2収納部材が閉塞されたとき、少なくとも1つの振動吸収片がICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接し、ICチップ部分が接続端子に直接押圧され、さらに他の振動吸収片によりICカードが押圧されるので、より確実にICチップと接続端子とが接続されると共に、ICカードの振動がより吸収され、ICカードに記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生がより防止されると共に、振動によるICカードの損傷がより防止される。
【0010】
また、本発明に係る車載通信端末装置の前記振動吸収片は、樹脂、ゴムおよびエラストマーの少なくともいずれかからなる弾性シートで構成される。
この構成により、振動吸収片が樹脂、ゴムおよびエラストマーの少なくともいずれかにより形成された弾性シートであると、より振動吸収性が高まり、振動吸収片により載置面に押圧されたICカードの振動がより好適に吸収される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車載通信端末装置によれば、車両の振動などから受けるICカードの振動を吸収することができ、ICカードにおけるICチップと接続端子とを確実に接続すると共に、振動によるICカードの損傷を防止することができる車載通信端末装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図10は本発明に係る車載通信端末装置の一実施の形態を示す図であり、ICカードとしてETCカードに適用した例を示している。
【0013】
まず、構成を説明する。図1、図2において、車載通信端末装置1は、ETCレーンの料金所の図示しない据置型通信端末装置に設けられたETCアンテナとの間で電波により無線通信を行い、車両情報、ETCカード情報、課金情報等の情報のやり取りを行うものであり、四輪車両、二輪車両等に任意の姿勢で装着されるものである。
この車載通信端末装置1は、ETCカード2が載置される載置面3を備えた第1収納部材としての下ケース4と、下ケース4にヒンジ5を介して連結され、下ケース4に対して開閉自在に設けられた第2収納部材としての上ケース6とを備えている。
【0014】
なお、本実施の形態では、下ケース4を下側にして車両に取付けているので、下ケース4と上ケース6という表現を用いているが、ヒンジ5の回動中心を鉛直方向にして使用する場合には、例えば、右ケース、左ケースという表現にしてもよい。
【0015】
下ケース4にはバックル7の基端部7aが回動自在に取付けられており、このバックル7の上端部7bは基端部7aを支点として揺動自在になっている。なお、下ケース4および上ケース6およびバックル7は樹脂材料から成形されている。
このバックル7の上端部7bは、上ケース6の端部に形成された係合凹部6b(図8参照)に係合する係合位置に揺動されると、係合凹部6bに係合して上ケース6を下ケース4に強固に係合するようになっており、上ケース6との間で一定の隙間24(1〜2mm程度)が形成されるように、上ケース6の端部から中心部に向かって上方に傾斜するテーパ状に形成されている。
このため、上ケース6を開放するためにバックル7の係合を解除する際に、利用者の指先を隙間24に進入させてバックル7を解除位置に容易に移動させることができる。
また、載置面3に載置されるETCカード2は、図3に示すように、端部にICチップ2aが設けられており、このICチップ2aはCPU、メモリおよび入出力インターフェースを備え、車両情報、ETCカード情報、課金情報等が記憶されるようになっている。
【0016】
一方、載置面3は、下ケース4に対して凸状の平面形状をしており、下ケース4との間で段差が形成されている(図6(c)参照)。また、載置面3の短手方向両端部にはガイドレール8aが突出しており、このガイドレール8aはETCカード2の長手方向に亘って延在し、このガイドレール8aによってETCカード2の短手方向両端部が位置決めされるようになっている(図4参照)。
【0017】
また、載置面3の端部には一対のストッパ片(第1位置決め部材)8bが設けられており、このストッパ片8bはETCカード2の長手方向一端部(直交方向一端部)に当接して、ETCカード2の長手方向一端部を載置面3上に位置決めするようになっている。
また、上ケース6には第2位置決め部材としての突出片6aが設けられており、この突出片6aはガイドレール8aの延在方向と略直交する方向に延在し、上ケース6が閉じられたときに、載置面3の外方に位置してETCカード2の長手方向他端部(直交方向他端部)を載置面3上に位置決めするようになっている。
また、ガイドレール8aの延在方向一端部には保持片9が設けられており、この保持片9は載置面3に対向して設けられ、ETCカード2の短手方向両端部の一部分を載置面3と共に保持するようになっている。この保持片9は2箇所のガイドレール8aの内の1方にのみ設けられていてもよく、いずれのガイドレール8aにも設けられていなくてもよい。
【0018】
なお、この保持片9と載置面3との距離はETCカード2の板厚と同等かそれ以下であることが好ましい。但し、保持片9と載置面3との距離がETCカード2の板厚以下にする場合には、ETCカード2を保持片9と載置面3の間に挿通するのを妨げる距離にしないようにする必要があるのは言うまでもない。
【0019】
また、上ケース6には振動吸収手段または振動吸収片としての弾性シート10a、10bが設けられており、この弾性シート10a、10bは上ケース6が閉じたときにETCカード2を載置面3に向かって押圧するようになっている。図2に示すように、弾性シートを複数個設けるとき、例えば、2個のときは弾性シート10a、10bの少なくとも1つがICチップ2aの反対側に当接する位置になるように上ケース6に設けられていることが好ましい。このように、弾性シート10aが配置されていると、図5に示すように、上ケース6が閉じたときにETCカード2に対して矢印A方向に押圧力が作用し、載置面3と弾性シート10aとによりETCカード2が挟持される。ETCカード2が載置面3と弾性シート10aとにより挟持されると、接続端子16aの有する弾性により矢印B方向に押圧力が作用し、接続端子16aとICチップ2aが確実に接続される。
【0020】
この弾性シート10a、10bは、ETCカード2の振動を吸収するものであればよく、例えば、弾性を有するポリウレタンやシリコーンなどの樹脂、ニトリルゴムやネオプレンゴムなどのゴムおよび熱可塑性のエラストマーなどから形成されるものでもよい。また、市販のゲル状のシート、例えば、シリコーンゲルシートやウレタンゲルシートを用いてもよい。弾性シート10a、10bは、1mm〜5mmの厚みからなり、任意の大きさおよび形状、例えば、縦が1cm〜5cm、横が1cm〜5cmからなる四角形、円形、楕円形、多角形などでもよい。この弾性シート10a、10bは、上ケース6を成形する際にインサート成形などによって一体的に成形してもよく、上ケース6に接着などにより取付けてもよい。
【0021】
また、弾性シート10a、10bは、車両などの振動がETCカード2と接続端子16aの接触部分やETCカード2と載置面3の当接部分などにそのまま伝達しないよう、防振する機能がある。一般的に防振機能には振動絶縁と振動減衰との2つの機能がある。
振動絶縁とは、例えば、本発明に係る車載通信端末装置1に加わる強制振動をfとし、車載通信端末装置1の上ケース6に弾性シート10a、10bを装着した状態の車載通信端末装置1の固有振動数(固有振動数は共振周波数と同等)をf0とすると、f÷f0で表される振動数比が√2(約1.4)以上となることをいう。この振動数比が√2(約1.4)以上となるとき、振動の伝達を表す振動伝達率が1以下となるので、振動絶縁は振動振動伝達率としても表され、振動伝達率が1以下となることでもある。すなわち、車載通信端末装置1に加わる強制振動fが伝達されにくくなることを振動絶縁という。
また、振動減衰とは振動エネルギーを熱などに変換し、振動を抑制することをいい、固有振動数と車載通信端末装置1に加わる強制振動fが合致した場合、車載通信端末装置1の振動の増幅(共振現象)を抑制することをいう。
【0022】
弾性シート10a、10bは、使用する材料自体が内部減衰特性を有しているので、3方向のばねとして機能することとなり、主に振動絶縁の機能が発揮される。この振動絶縁機能は、共振周波数においても作用し、共振時の伝達率(共振倍率)を低下させることができる。このような機能を有する弾性シート10a、10bの材料、大きさ、厚み及び装着箇所としては、目的の振動絶縁機能を発揮させ伝達する振動を吸収するため、弾性シート10a、10bを組み込んだ車載通信端末装置1の固有振動数を測定などにより求め、その結果に応じて適宜選択することができる。
【0023】
この測定方法としては、弾性シート10a、10bを車載通信端末装置1に組み込み、振動試験機などの外部から強制的に車載通信端末装置1に振動を加え、振動数を徐々に変化(上昇または下降)させたとき、車載通信端末装置1の振幅が急増する振動数を確認することにより行うことができる。弾性シート10a、10bを組み込んだ車載通信端末装置1と組み込まない車載通信端末装置の共振周波数における振幅の大きさを比較して、弾性シート10a、10bを組み込んだ車載通信端末装置1の共振周波数における振幅が低下していることを確認することができる。
さらに、弾性シート10a、10bは、周期的、連続的な振動を吸収する防振機能だけでなく、一時的、突発的な力(衝撃エネルギー)を緩和する緩衝機能をも有するので、弾性シート10a、10bの弾性を利用することによって、衝撃を受けた瞬間、その衝撃を緩和することもできる。そのため、ETCカード2と接続端子16aの接触部分やETCカード2と載置面3の当接部分などへの衝撃を緩和することができ、ETCカード2の損傷を防止することができる。
【0024】
このように、弾性シート10a、10bが上ケース6に設けられているので、車両の振動などから受けるETCカード2の振動が弾性シート10a、10bにより充分に吸収され、ETCカード2におけるICチップ2aと接続端子16aとが確実に接続されると共に、振動によるETCカード2の損傷が防止される。
【0025】
また、上ケース6には一対の突起(第1突起)11が設けられており、この突起11は保持片9に向かって突出している。なお、この突起11は1つでもよい。
また、図6(c)に示すように、載置面3の外方に位置する下ケース4には突起(第2突起)4aが設けられており、この突起4aは載置面3の高さと略同じ高さに形成されている。また、この突起4aは、上ケース6が閉塞されたときに、突出片6aに近接する位置に設けられている。
【0026】
また、下ケース4には車載通信端末装置1を制御する回路基板(制御手段)13が内蔵されており、下ケース4には回路基板13の接続端子16aを載置面3から突出させる貫通孔12が形成されている。
この貫通孔12は、載置面3にETCカード2が載置されてETCカード2の長手方向一端部がストッパ片8bに当接したときに、ICチップ2aに対向する位置に形成されており、接続端子16aにICチップ2aを接触させるようになっている。
また、接続端子16aは可撓性を有する導電性部材から構成されており、ICチップ2aに弾性的に接触することにより、上ケース6が閉じられて弾性シート10a、10bによってETCカード2が載置面3に押圧されたときに、弾性シート10aの押圧力に抗してETCカード2を保持片9方向に押圧力が作用するようになっている。
【0027】
図7は下ケース4に内蔵された回路基板13のブロック図である。
図7において、回路基板13は、電源回路14、制御回路15、ICチップリードライト回路16、表示処理回路17および無線回路18を備えている。
制御回路15は、CPU(Central processing unit)、ROM(Read only memory)およびRAM(Random access memory)から構成されており、所定のシーケンスに従って車載通信端末装置1の全体を制御するようになっている。
電源回路14は配線19を介して車両に設けられたバッテリーから12Vの電源が供給されるようになっており、回路基板13に電源を供給するようになっている。
ICチップリードライト回路16は接続端子16aを介してICチップ2aに記憶された車両情報、ETCカード情報、課金情報等の読取処理および車両情報、ETCカード情報、課金情報等の記憶処理を行うようになっている。
表示処理回路17は配線20を介してLEDランプ22に接続されており、LEDランプ22の点灯制御を行う。
制御回路15はICチップリードライト回路16によりICチップ2aが検出されると、表示処理回路17に指令信号を出力してLEDランプ22を点灯させることにより、動作確認を行う。
無線回路18は配線21を介してアンテナ23に接続されており、ETCアンテナとの間で所定周波数帯域の高周波、例えば、5.8GHz帯の高周波を使用して無線通信を行うようになっている。
【0028】
このような構成を有する車載通信端末装置1にETCカード2を取付ける場合には、バックル7を解除位置に移動させて上ケース6を開放し(図2参照)、この状態でガイドレール8aに沿ってETCカード2を載置面3上でスライドさせる。
ETCカード2の長手方向一端部が保持片9と載置面3の間に挿通されてストッパ片8bに当接すると、ETCカード2の全面が載置面3に載置され、接続端子16aにICチップ2aが接触する。
このとき、接続端子16aがETCカード2を保持片9に向かって押圧し、接続端子16aおよび保持片9によってETCカード2が保持され、下ケース4から抜け出ることがない。特に、バイク等に車載通信端末装置1を搭載したときに、ヒンジ5の回動中心を鉛直方向にした場合には、ETCカード2が下ケース4から落下しない。
【0029】
次いで、上ケース6を閉じてバックル7を係合位置に揺動させることにより、上ケース6を下ケース4に固定する。このとき、また、ETCカード2の長手方向両端部および短手方向両端部がガイドレール8a、ストッパ片8bおよび突出片6aによって載置面3上に位置決めされると共に、前述したように弾性シート10a、10bがETCカード2を載置面3に向かって押圧することにより、ICチップ2aを接続端子16aに確実に接触させる。
また、弾性シート10aの押圧力に抗して接続端子16aがETCカード2を保持片9に向かって押圧し、保持片9および接続端子16aによってETCカード2が下ケース4により強固に保持される。
また、車載通信端末装置1からETCカード2を取外す場合には、バックル7を解除位置に移動させて上ケース6を開放し、この状態でガイドレール8aに沿ってETCカード2を載置面3上でスライドさせて載置面3から取外す。
【0030】
このように本実施の形態では、ETCカード2が載置される載置面3を備えた下ケース4と、下ケース4に対して開閉自在に設けられた上ケース6と、下ケース4に載置面3に対向して設けられ、載置面3と共にETCカード2を保持する保持片9とを設けたので、上ケース6を開放した状態で下ケース4の載置面3にETCカード2を載置し、保持片9および載置面3によってETCカード2を保持することができ、広い空間を利用してETCカード2を車載通信端末装置1に取付けることができる。
また、ETCカード2を下ケース4から取出すときには、上ケース6を開放した状態で載置面3からETCカード2を取出すことができるので、広い空間を利用してETCカード2を車載通信端末装置1から取外すことができる。
この結果、ETCカード2の着脱作業を簡単に行うことができる。また、ETCカード2の装着後でもETCカード2を保持片9および載置面3によって保持することができるため、車両の走行時の振動等によってETCカード2が下ケース4に対して変位してしまうのを防止して、ETCカード2に記憶された情報の読取不良や記憶不良が発生するのを防止することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、接続端子16aを貫通孔12から露出させてETCカード2に弾性的に接触させることにより、上ケース6が開かれているときは、ETCカード2を保持片9に押圧しているので、ETCカード2を下ケース4によってより一層確実に保持することができる。
一方、ETCカード2を下ケース4に取付けることにより、何らかの理由でETCカード2が保持片9に乗り上げることが考えられる(図9参照)。
この場合には、ETCカード2の装着不良となることがあり、接続端子16aにICチップ2aが接触しないことがあるので、ICチップ2aに記憶された情報の読取不良や記憶不良が発生してしまう。さらに、使用者が気づかないで上ケース6を閉めてしまうおそれがあり、ETCカード2の破損のおそれもある。
本実施の形態では、上ケース6に、保持片9に向かって突出する突起11を設けたので、ETCカード2を下ケース4に取付けるときに、ETCカード2の装着不良によってETCカード2が保持片9に乗り上げた状態で上ケース6を閉じた場合に、肉厚のある突起11がETCカード2を介して保持片9に当接することにより、上ケース6を完全に閉じないようにすることができる(図10参照)。
このため、使用者にETCカード2の装着不良であることを認識させて正常に取付ける作業を促すことができ、ETCカード2に記憶された情報の読取不良や記憶不良が発生するのを防止することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、下ケース4にETCカード2の短手方向両端部を位置決めするガイドレール8aおよびETCカード2の長手方向一端部を位置決めするストッパ片8bを設けると共に、上ケース6にETCカード2の長手方向他端部を位置決めする突出片6aを設けたので、ETCカード2を下ケース4に簡単に位置決めすることができると共に、ETCカード2の装着後に、車両の走行時の振動等によってETCカード2が下ケース4に対して変位してしまうのをより一層防止することができる。
また、本実施の形態では、ETCカード2の長手方向他端部を位置決めする突出片6aを上ケース6に設けたので、上ケース6を開放した状態でETCカード2を下ケース4に取付けるときに、ETCカード2の長手方向他端部が突出片6aに引っ掛かるのを防止して、すなわち、ETCカード2の周囲の一部に引っ掛かる部材を無くしてETCカード2を下ケース4から簡単に取外すことができる。
【0033】
また、本実施の形態では、下ケース4の載置面3の外方に、載置面3の高さと略同じ高さの突起4aを設け、この突起4aを上ケース6が閉塞されたときに突出片6aに近接する位置に設けたので以下のような効果を得ることができる。
図6(a)に示すように、突起4aがない場合であっても、ETCカード2が載置面3に正常に取付けられると、ETCカード2の長手方向他端部は突出片6aによって正常に位置決めされる。
ところが、ETCカード2の長手方向他端部が載置面3から外方にずれた状態で上ケース6を閉じた場合には、突起4aがないと突出片6aがETCカード2の長手方向他端部に衝突してETCカード2が折れ曲がってしまうおそれがある(図6(b)参照)。
これに対して、本実施の形態では、図6(c)に示すように、上ケース6を閉じたときに突出片6aに近接する載置面3の外方に、この載置面3の高さと略同じ高さの突起4aを設けたので、ETCカード2の長手方向他端部が載置面3から外方にずれた状態で上ケース6を閉じた場合に、突出片6aがETCカード2の長手方向他端部に衝突しても、ETCカード2の長手方向他端部を突起4aに乗り上げさせて載置面3と同じ高さにすることができ、ETCカード2が折れ曲がるのを防止することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明に係る車載通信端末装置1においては、ETCカード2が載置される載置面3を備えた下ケース4と、下ケース4に対して開閉自在に設けられた上ケース6と、下ケース4に設けられ、ETCカード2に記憶された情報の読み出し、書き込み可能な回路基板13とを備え、上ケース6に、ETCカード2の振動を吸収する弾性シート10a、10bを設けているので、上ケース6が閉塞されると、上ケース6に設けられたETCカード2の振動を吸収する弾性シート10a、10bにより、車両などから伝達されるETCカード2の振動が吸収され、ETCカード2におけるICチップ2aと接続端子16aとが確実に接続されるのでETCカード2に記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるETCカード2の損傷が防止される。
【0035】
また、車載通信端末装置1においては、弾性シート10a、10bは、上ケース6が閉塞されると、下ケース4に載置されたETCカード2を載置面3に押圧し、ETCカード2と載置面3とを挟持するので、ETCカード2におけるICチップ2aと接続端子16aとが確実に接続され、ETCカードに記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるETCカードの損傷が防止される。
【0036】
また、車載通信端末装置1においては、上ケース6が閉塞されたとき、弾性シート10a、10bの内少なくとも10aがETCカード2におけるICチップ2aの反対側に当接する位置になるように上ケース6に設けられているので、上ケース6が閉塞されると、弾性シート10aがICチップ2aの反対側に当接し、ICチップ2aが接続端子16aに直接押圧され、より確実にICチップ2aと接続端子16aとが接続され、かつETCカード2の振動が吸収され、ETCカード2に記憶された情報の読取不良や記憶不良の発生が防止されると共に、振動によるETCカード2の損傷が防止される。
【0037】
また、車載通信端末装置1においては、弾性シート10a、10bが樹脂、ゴムおよびエラストマーの少なくともいずれかにより形成されるので、より振動吸収性が高まり、弾性シート10a、10bにより載置面3に押圧されたETCカード2の振動がより好適に吸収される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る車載通信端末装置は、車両の振動などから受けるICカードの振動を吸収することができ、ICカードにおけるICチップと接続端子とを確実に接続すると共に、振動によるICカードの損傷を防止することができるという効果を有し、高速道路等の出入口に設置される据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置が閉塞した状態の車載通信端末装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置が開放した状態の車載通信端末装置の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置に装着されるETCカードの構成図
【図4】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置にETCカードが取付けられた状態の車載通信端末装置の斜視図
【図5】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置にETCカードが取付けられた状態の車載通信端末装置の側面部分断面図
【図6】(a)は下ケースに突起が無い車載通信端末装置にETCカードが正常に取付けられたときの車載通信端末装置の正面断面図、(b)は下ケースに突起が無い車載通信端末装置にETCカードが正常に取付けられないときの車載通信端末装置の正面断面図、(c)は本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置にETCカードが正常に取付けられないときの車載通信端末装置の正面断面図
【図7】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置の回路基板のブロック図
【図8】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置にETCカードが取付けられた状態の車載通信端末装置の側面断面図
【図9】上ケースに突起が無い車載通信端末装置にETCカードを誤装着した状態を示す車載通信端末装置の側面断面図
【図10】本発明の一実施の形態に係る車載通信端末装置にETCカードを誤装着した状態を示す側面断面図
【符号の説明】
【0040】
1 車載通信端末装置
2 ETCカード(ICカード)
3 載置面
4 下ケース(第1収納部材)
4a 突起(第2突起)
5 ヒンジ
6 上ケース(第2収納部材)
6a 突出片(第2位置決め部材)
7 バックル
7a 基端部
7b 上端部
8a ガイドレール
8b ストッパ片(第1位置決め部材)
9 保持片
10a 弾性シート(振動吸収手段、振動吸収片)
10b 弾性シート(振動吸収手段、振動吸収片)
11 突起(第1突起)
12 貫通孔
13 回路基板(制御手段)
14 電源回路
15 制御回路
16 ICチップリードライト回路
16a 接続端子
17 表示処理回路
18 無線回路
19、20、21 配線
22 LEDランプ
23 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置において、
ICカードが載置される載置面を備えた第1収納部材と、前記第1収納部材に対して開閉自在に設けられた第2収納部材と、前記第1収納部材に設けられ、前記ICカードに記憶された情報の読み出し、書き込み可能な制御手段とを備え、
前記第2収納部材に、前記ICカードの振動を吸収する振動吸収手段を設けたことを特徴とする車載通信端末装置。
【請求項2】
前記振動吸収手段は、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記第1収納部材に載置された前記ICカードを前記載置面に押圧し、前記載置面と共に前記ICカードを挟持することを特徴とする請求項1に記載の車載通信端末装置。
【請求項3】
前記振動吸収手段は、振動吸収性を有する振動吸収片からなり、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記振動吸収片が前記ICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接する位置になるように前記第2収納部材に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載通信端末装置。
【請求項4】
前記振動吸収手段は、複数の前記振動吸収片からなり、前記第2収納部材が閉塞されたとき、前記振動吸収片の少なくとも1つが前記ICカードにおけるICチップ部分の反対側に当接する位置になるように前記第2収納部材に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載通信端末装置。
【請求項5】
前記振動吸収片は、樹脂、ゴムおよびエラストマーの少なくともいずれかからなる弾性シートであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車載通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−323301(P2007−323301A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151953(P2006−151953)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】