説明

車載電気機器用コネクタ

【課題】車載電気機器用コネクタのコネクタハウジングにより保持されたケーブルの車両の衝突に伴う断線をより良好に抑制する。
【解決手段】車両に搭載される電気機器同士の接続に用いられる車載電気機器用コネクタ1は、ケーブル8をケーブル側端部2aから突出するように保持するコネクタハウジング2を含み、当該コネクタハウジング2は、ケーブル側端部2aの端面の近傍に、当該端面からケーブル8の突出方向とは反対側に離間するにつれてケーブル側端部2aの外周面から離間する斜面2sをもった突起2pを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ケーブルを一端部から突出するように保持するコネクタハウジングを含み、車両に搭載される電気機器同士の接続に用いられる車載電気機器用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車載電気機器用コネクタとして、電気自動車やハイブリッド自動車のモータと、当該モータを駆動するインバータとを接続するのに用いられるコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコネクタは、3本のケーブルを一端部から突出するように保持するコネクタハウジングを含み、インバータ等を収容するケースに対して当該ケーブルが車両後方に向けて延びるように接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように配置される車載電気機器用コネクタを備えた車両が衝突してしまうと、インバータ等を収容するケースが車両後方へと移動してしまうことがある。このような場合、コネクタがケースと共に車両後方へと移動することから、コネクタハウジングにより保持されたケーブルが折り畳まれるように撓んでしまい、コネクタハウジングの一端部と局所的に接触して断線してしまうおそれがある。そして、コネクタハウジングの一端部の角に面取加工を施しておいたとしても、車両の衝突に伴うケーブルの断線を良好に抑制し得ない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、車載電気機器用コネクタのコネクタハウジングにより保持されたケーブルの車両の衝突に伴う断線をより良好に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車載電気機器用コネクタは、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明による車載電気機器用コネクタは、
ケーブルを一端部から突出するように保持するコネクタハウジングを含み、車両に搭載される電気機器同士の接続に用いられる車載電気機器用コネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、前記一端部の端面の近傍に、該端面から前記ケーブルの突出方向とは反対側に離間するにつれて該一端部の外周面から離間する斜面をもった突起を有することを特徴とする。
【0008】
この車載電気機器用コネクタでは、ケーブルを一端部から突出するように保持するコネクタハウジングが、その一端部の端面の近傍に、当該端面からケーブルの突出方向とは反対側に離間するにつれて当該一端部の外周面から離間する斜面をもった突起を有している。これにより、車両が衝突してしまい、コネクタが周辺の部材に向けて移動してコネクタハウジングと当該周辺の部材とに挟まれたケーブルが折り畳まれるように撓んだとしても、当該ケーブルをコネクタハウジングの突起の斜面と接触させることで、ケーブルとコネクタハウジング(突起)との接触面積を増加させることができる。従って、この車載電気機器用コネクタによれば、車両の衝突に伴うケーブルとコネクタハウジングとの局所的な接触、すなわち当該ケーブルに局所的な応力集中が発生するのを良好に抑制することができるので、コネクタハウジングにより保持されたケーブルの車両の衝突に伴う断線をより良好に抑制することが可能となる。なお、斜面は、外方に向けて凸となる曲面であること好ましく、これにより、ケーブルとコネクタハウジングの突起との接触面積をより大きくすると共に、斜面(曲面)の終端でケーブルと突起とが局所的に接触するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による車載電気機器用コネクタ1を含む車両の一例であるハイブリッド自動車10を示す概略構成図である。
【図2】車載電気機器用コネクタ1の側面図である。
【図3】車載電気機器用コネクタ1の正面図である。
【図4】車載電気機器用コネクタ1の平面図である。
【図5】(a),(b)および(c)は、ハイブリッド自動車10の衝突前後におけるコネクタハウジング2とケーブル8との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明による車両の一例であるハイブリッド自動車10を示す概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料を用いて動力を出力するエンジン(内燃機関)12と、当該エンジン12と共に動力出力装置20を構成するトランスアクスル21とを含む。エンジン12およびトランスアクスルケース21は、ハイブリッド自動車10の図示しないエンジンコンパートメント内に配置される。
【0012】
トランスアクスル21は、エンジン12のクランクシャフト14に接続されたダンパ22と、シングルピニオン式のプラネタリギヤ30と、主として発電機として作動するモータ(同期発電電動機)MG1と、駆動軸23に動力を入出力するモータ(同期発電電動機)MG2と、ドライブシャフトを介して駆動輪である車輪DWに連結されるデファレンシャルギヤ24と、これらの構成要素を収容するトランスアクスルケース25等を含む。プラネタリギヤ30は、モータMG1のロータに接続されるサンギヤ(第1要素)31と、駆動軸23に接続されるリングギヤ(第2要素)32と、複数のピニオンギヤ33を支持すると共にダンパ22を介してエンジン12のクランクシャフト14に接続されるプラネタリキャリア(第3要素)34とを有する。また、モータMG2のロータは、トランスアクスルケース25内に収容される変速機26を介して駆動軸23(リングギヤ32)に接続される。更に、駆動軸23は、トランスアクスルケース25内に収容されるギヤ機構27を介してデファレンシャルギヤ24に連結される。
【0013】
また、ハイブリッド自動車10は、モータMG1を駆動するインバータ41と、モータMG1を駆動するインバータ42と、正極母線および負極母線からなる電力線やインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやり取り可能なバッテリ50とを含む。バッテリ50は、例えば200〜300Vの定格出力電圧を有するニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池である。本実施形態において、インバータ41,42は、導電性材料からなると共にトランスアクスルケース25に固定されるパワーコントロールユニットケース(以下、「PCUケース」という)45内に収容される。そして、PCUケース45内のインバータ41,42は、PCUケース45に固定された図示しないコネクタシェル(レセプタクル、図5参照)9と結合する車載電気機器用コネクタ(以下、単に「コネクタ」という)1と、当該コネクタ1により保持される3本のケーブル(電線)8を介してモータMG1,MG2と接続される。
【0014】
図2は、コネクタ1の側面図であり、図3は、コネクタ1の正面図であり、図4は、コネクタ1の平面図である。これらの図面に示すように、コネクタ1は、PCUケース45外に露出されるケーブル側端部(一端部)2aと、PCUケース45のコネクタシェル9に嵌合されるケース側端部2bとを有するコネクタハウジング2を含む。コネクタハウジング2のケーブル側端部2aは、中空に形成されており、ケーブル側端部2aの内部には、3本の端子3が配置される。各端子3の外端部3bは、ケース側端部2bから外部に突出し、PCUケース45に固定されると共にインバータ41または42と接続された図示しないケース側端子にそれぞれ電気的に接続される。
【0015】
また、各端子3の外端部3bとは反対側の内端部には、ケーブル8が電気的に接続され、各ケーブル8とケーブル側端部2aの内周との間には、図示しないシール部材が配置される。更に、ケーブル側端部2aの開放端には、3本のケーブル8が挿通されると共にケーブル側端部2aの単面を画成するリテーナ4(図2および図3参照)が嵌合され、これにより、コネクタハウジング2によりケーブル側端部2aから突出するように3本のケーブル8が保持される。なお、本実施形態において、コネクタ1と結合するコネクタシェル9は、各ケーブル8がコネクタハウジング2から車両後方に向けて突出すると共に下方に垂れ下がるようにPCUケース45に固定される。
【0016】
更に、コネクタハウジング2のケーブル側端部2aには、導電性材料からなるシールドブラケット5が嵌合される。シールドブラケット5のケーブル8側の端部5a(図2および図4における左側の端部)の外周には、3本のケーブル8と共にワイヤーハーネスを構成するシールド部材7が嵌め込まれ、当該シールド部材7を介してグリップリング6をシールドブラケット5の端部5aに圧入することにより、シールド部材7がコネクタハウジング2およびシールドブラケット5に固定される。また、シールドブラケット5のPCUケース45側の端部5b(図2および図4における右側の端部)は、導電性材料からなる図示しない連結部材を介してPCUケース45に電気的に接続される。これにより、シールド部材7がシールドブラケット5を介してPCUケース45に電気的に接続される。
【0017】
そして、コネクタハウジング2のケーブル側端部2aの外周には、3本のケーブル8のそれぞれに対応するように3個の突起2pが形成または固定されている。各突起2pは、図3および図4に示すように、ケーブル8の外径よりも若干大きい幅を有し、ケーブル側端部2aの端面近傍かつケーブル側端部2a内の対応するケーブル8の上方でケーブル側端部2aの外周面から上方に突出する。更に、各突起2pは、図2に示すように、ケーブル側端部2aの端面と連続すると共に、当該端面からケーブル8の突出方向(図2および図4における左方向)とは反対側すなわちケース側端部2b側(他端側)に離間するにつれてケーブル側端部2aの外周面から離間する斜面2sを有する。本実施形態において、斜面2sは、図2に示すように、上方(外方)に向けて凸となる曲面(例えば、1/4円柱面)とされる。
【0018】
上述のように構成されるコネクタ1を介してモータMG1,MG2とPCUケース45内のインバータ41,42とが接続される本実施形態のハイブリッド自動車10では、コネクタ1がPCUケース45のコネクタシェル9と結合すると、コネクタハウジング2から各ケーブル8が車両後方に向けて突出すると共に下方に垂れ下がるが、コネクタ1とそれよりも車両後方側(周辺)に位置する周辺部材100(例えば、リザーバタンク)との間には、図5(a)に示すように充分な間隔が形成される。従って、通常時に、各ケーブル8がコネクタハウジング2(PCUケース45)と周辺部材100とにより挟まれてしまうことはない。なお、ケーブル8と周辺部材100との間には、本来シールド部材7が存在するが、図5では、説明を簡単にするためにシールド部材7の図示を省略する。
【0019】
これに対して、ハイブリッド自動車10が正面から衝突した場合を想定すると、このような場合、PCUケース45に固定されたコネクタシェル9と結合したコネクタ1は、図5(b)に示すように、衝突に伴う車両前部の変形により車両後方側へと移動することがある。これにより、少なくとも何れかのケーブル8は、図示しないシールド部材7の内部でコネクタハウジング2と周辺部材100とにより挟まれ、図5(b)に示すように撓む。そして、コネクタハウジング2(PCUケース45)の車両後方側への移動量によっては、図5(c)に示すように、コネクタハウジング2と周辺部材100とに挟まれたケーブル8が図示しないシールド部材7の内部でコネクタハウジング2側に折り畳まれるように撓んでしまう可能性がある。
【0020】
これを踏まえて、本実施形態のコネクタ1には、ケーブル側端部2aの端面の近傍に突起2pがケーブル8ごとに設けられている。これにより、ケーブル8が図5(c)に示すように撓んでしまったとしても、当該ケーブル8をコネクタハウジング2の突起2pの斜面2sと接触させることで、ケーブル8とコネクタハウジング2(突起2p)との接触面積を増加させることができる。従って、コネクタ1によれば、ハイブリッド自動車10の衝突に伴うケーブル8とコネクタハウジング2との局所的な接触、すなわち当該ケーブル8に局所的な応力集中が発生するのを良好に抑制することができる。
【0021】
なお、上述のコネクタ1やケーブル8を含むワイヤーハーネスはエンジンコンパートメントといった狭隘な空間内に配置されることから、少なくともケーブル8の山なりに撓む部分(図5(b)および(c)参照)の外周を当該ケーブル8の変形(撓み)に追従可能であると共に高い強度を有するスリーブ状のチューブで覆うと好ましい。また、このようなチューブの端部は、充分な耐熱性をもった汎用のテープ等によりケーブル8等に固定されるとよい。そして、このようなチューブとしては、例えば、フェデラルモーグル社製のクラッシュシールド2441を採用することができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のコネクタ1によれば、ハイブリッド自動車10が衝突してしまい、コネクタ1が周辺部材100に向けて移動してコネクタハウジング2のケーブル側端部2aと周辺部材100とに挟まれたケーブル8が折り畳まれるように撓んだとしても、当該ケーブル8をコネクタハウジング2の突起2pの斜面と接触させることで、ケーブル8とコネクタハウジング2(突起2p)との接触面積を増加させることができる。従って、コネクタ1によれば、ハイブリッド自動車10の衝突に伴うケーブル8とコネクタハウジング2との局所的な接触、すなわち当該ケーブル8に局所的な応力集中が発生するのを抑制することができるので、コネクタハウジング2により保持されたケーブル8のハイブリッド自動車10の衝突に伴う断線をより良好に抑制することが可能となる。
【0023】
なお、上記実施形態のように、突起2pの斜面2sを上方(外方)に向けて凸となる曲面とすれば、ケーブル8とコネクタハウジング2の突起2pとの接触面積をより大きくすると共に、終端でケーブル8と突起2pとが局所的に接触するのを抑制することができるが、斜面2sは平坦な斜面とされてもよい。また、上述のコネクタ1は、3相のケーブルに接続されるものに限られず、コネクタ1による接続対象は、モータおよびインバータに限られるものではない。更に、上述のハイブリッド自動車10は、いわゆる2モータ式の動力出力装置20を含むものであるが、本発明が、いわゆる1モータ式の動力出力装置を含むハイブリッド自動車や、電気自動車、更にはエンジンのみを走行用の動力発生源として含む車両にも適用され得ることはいうまでもない。
【0024】
ここで、上記実施形態における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、上記実施形態はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、車載電気機器用コネクタの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 車載電気機器用コネクタ、2 コネクタハウジング、2a ケーブル側端部、2b ケース側端部、2p 突起、2s 斜面、3 端子、3b 外端部、4 リテーナ、5 シールドブラケット、5a,5b 端部、6 グリップリング、7 シールド部材、8 ケーブル、9 コネクタシェル、10 ハイブリッド自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、20 動力出力装置、21 トランスアクスル、22 ダンパ、23 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、25 トランスアクスルケース、26 変速機、27 ギヤ機構、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 プラネタリキャリア、41,42 インバータ、45 PCUケース、50 バッテリ、100 周辺部材、DW 駆動輪、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを一端部から突出するように保持するコネクタハウジングを含み、車両に搭載される電気機器同士の接続に用いられる車載電気機器用コネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、前記一端部の端面の近傍に、該端面から前記ケーブルの突出方向とは反対側に離間するにつれて該一端部の外周面から離間する斜面をもった突起を有することを特徴とする車載電気機器用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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