説明

車輌用前照灯

【課題】 製造コストの高騰を来たすことなく状況に応じた最適な照射状態を確保して幻惑光の発生の防止等を図る。
【解決手段】 カバー3とランプハウジング2によって構成された灯具外筐4の内部に灯具ユニット6が配置され、灯具ユニットに、光を出射する光源7と、光源から出射された光を前方へ向けて反射するリフレクター11と、光源から出射された光を投影して前方に照射する投影レンズ8と、略左右方向を向く一対の反射面12a、12aを有し光源と投影レンズの間に位置され左右方向へ移動可能とされた反射体12とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、略左右方向を向く一対の反射面を有する反射体を左右方向へ移動させて状況に応じた最適な照射状態を確保して幻惑光の発生を防止する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には左右に並らぶ複数の光源が配置され、該複数の光源の点灯及び消灯を各別に制御して状況に応じた所望の配光パターンを形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、三つの発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を光源として用い、この三つの発光ダイオードによって遠距離を照射するためのハイビームの配光パターンを形成し、異なる照射領域を各光源から出射された光によって照射するようにしている。
【0004】
即ち、第1の発光ダイオードから出射される光によって左側の照射領域を照射し、第2の発光ダイオードから出射される光によって中央の照射領域を照射し、第3の発光ダイオードから出射される光によって右側の照射領域を照射するようにしている。
【0005】
このような複数の照射領域を各光源から出射された光によって照射する構成にすることにより、先行車輌や対向車輌が存在する照射領域を照射する光源を消灯し、先行車輌や対向車輌に対する幻惑光の発生を低減するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−179969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、各照射領域をそれぞれの発光ダイオードから出射された光によって照射するようにしているため、照射領域の数と同数の発光ダイオードが必要であり、その分、製造コストが高くなってしまうと言う問題がある。
【0008】
また、各照射領域が予め定められた範囲であるため、照射領域の大きさや位置を変えることができず、先行車輌や対向車輌の存在位置に応じた的確な配光制御を行うことが困難であると言う問題もある。
【0009】
さらに、先行車輌や対向車輌の存在しない照射領域においては、輝度の向上を図ることが望ましい。
【0010】
そこで、本発明車輌用前照灯は、製造コストの高騰を来たすことなく状況に応じた最適な照射状態を確保して幻惑光の発生の防止等を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置され、前記灯具ユニットが、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を前方へ向けて反射するリフレクターと、前記光源から出射された光を投影して前方に照射する投影レンズと、略左右方向を向く一対の反射面を有し前記光源と前記投影レンズの間に位置され左右方向へ移動可能とされた反射体とを備えたものである。
【0012】
従って、車輌用前照灯にあっては、反射体の位置に応じて照射範囲の位置及び大きさが変化すると共に一対の反射面で反射された光がそれぞれ前方に照射される。
【発明の効果】
【0013】
本発明車輌用前照灯は、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置された車輌用前照灯であって、前記灯具ユニットが、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を前方へ向けて反射するリフレクターと、前記光源から出射された光を投影して前方に照射する投影レンズと、略左右方向を向く一対の反射面を有し前記光源と前記投影レンズの間に位置され左右方向へ移動可能とされた反射体とを備えたことを特徴とする。
【0014】
従って、左右方向へ移動可能な反射体によって光を遮蔽して所望の配光パターンを形成しており、照射領域を分割して照射領域の数と同数の光源を配置する構成とされていないため、光源の数が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、反射体の移動位置に応じて必要な配光パターンを形成することができるため、照射領域の大きさや位置を自由に変えることが可能であり、先行車輌や対向車輌の存在位置に応じて最適な照射状態を確保して幻惑光の発生を防止することができる。
【0016】
さらに、反射体の反射面で反射された光が反射体の反射面に達することなく前方へ向けて照射された光に重ね合わされるため、その分、前方へ向けて照射される光の輝度の向上を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載した発明にあっては、前記光源を左右に離隔して二つ配置し、それぞれの前記光源から出射された光を前方向けて反射する前記リフレクターを左右に連続して二つ配置している。
【0018】
従って、異なる種類の配光パターンの数を増やすことができ、配光制御の自由度の向上を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載した発明にあっては、前記光源から出射された光を遮蔽するシェードを設け、前記反射体を前記シェードに対して上下方向へ移動可能にしたので、シェードと反射体の間から必要な照射領域に対して光を出射して輝度の向上を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載した発明にあっては、前記反射体の上面を上側反射面として形成したので、上側反射面で反射された光がシェードと反射体の間を通過して前方に照射されるため、一層の輝度の向上を図ることができる。
【0021】
請求項5に記載した発明にあっては、前記灯具外筐及び前記灯具ユニットが車体の左右両端部にそれぞれ配置され、左側の前記灯具ユニットの反射体と右側の前記灯具ユニットの反射体とを同期して移動させるようにしている。
【0022】
従って、光が照射される領域と反射体によって遮蔽され光が照射されない領域とが明確化され、光の輝度の向上を図った上で的確な配光制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
車輌用前照灯1は、車体の左右両端部にそれぞれ配置されている。
【0025】
車輌用前照灯1は、図1及び図2に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2と該ランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部は灯室5として形成されている。
【0026】
灯室5には灯具ユニット6が配置されている。灯具ユニット6は遠距離を照射する所謂ハイビーム用の灯具ユニットである。灯具ユニット6はランプハウジング2に図示しない光軸調整機構によって傾動自在に支持されている。
【0027】
灯具ユニット6は光源7、7と投影レンズ8とレンズホルダー9とシェード10とリフレクター11、11を有する所謂プロジェクター型の灯具ユニットである。
【0028】
光源7、7は左右に離隔して配置され、光源7、7として、例えば、発光ダイオード(LED)が用いられている。尚、光源7、7は発光ダイオードに限られることはなく、例えば、放電灯やハロゲン灯等の他の種類であってもよい。
【0029】
投影レンズ8は、例えば、前方に凸の略半球状に形成されている。
【0030】
レンズホルダー9は筒状に形成されている。レンズホルダー9の前端面には投影レンズ8の外周部が取り付けられ、該投影レンズ8がレンズホルダー9に保持されている。
【0031】
シェード10は、例えば、それぞれ前後方向を向く板状に形成され、光源7、7から出射された光の一部を遮蔽する機能を有する。
【0032】
リフレクター11、11はレンズホルダー9の後側に配置され、左右に連続して配置されている。リフレクター11、11はそれぞれ内面が光反射面11a、11aとして形成されている。
【0033】
灯具ユニット6には投影レンズ8と光源7、7の間に反射体12が配置され、該反射体12は左右方向へ移動可能にされている。灯具ユニット6にあっては、投影レンズ8の後側焦点とリフレクター11、11の焦点とが略一致されており、反射体12は移動範囲における中央部に位置されているときに、一致された焦点の付近に存在するようにされている。反射体12の左右方向への移動は直線状又は緩やかな円弧状の軌跡で行われる。
【0034】
反射体12は、例えば、縦長のブロック状(直方体状)に形成され、左右両側面がそれぞれ反射面12a、12aとして形成されている。
【0035】
灯具ユニット6において光源7、7から光が出射されると、出射された光はそれぞれリフレクター11、11の光反射面11a、11aで反射され投影レンズ8及びカバー3を順に透過されて前方へ向けて照射される。このときシェード10によって光の一部が遮蔽される。
【0036】
また、このとき反射体12の位置によっては光源7、7から出射された光が反射体12に達する。光源7、7から出射され反射体12の前面に達した光は遮蔽され、反射面12a、12aに達した光は該反射面12a、12aで反射されて前方へ向かう。従って、灯具ユニット6にあっては、反射体12の位置に応じて配光パターンが変化される。
【0037】
灯具ユニット6にあっては、二つの光源7、7が点灯される両側点灯状態と、一方の光源7が点灯され他方の光源7が消灯される片側点灯状態の二つの点灯状態が設定可能とされている。
【0038】
以下に、車輌用前照灯1、1の光源7、7、・・・から光が出射されたときに形成される配光パターンについて説明する(図3及び図4参照)。
【0039】
車輌用前照灯1、1にはそれぞれ灯具ユニット6、6が配置され、該灯具ユニット6、6には、例えば、二つずつの光源7、7、・・・が配置されている。右側の車輌用前照灯1の光源7、7から出射された光と左側の車輌用前照灯1の光源7、7から出射された光とは前方において重ね合わされ、重ね合わされた光によって配光パターンが形成される。
【0040】
灯具ユニット6、6においては、一部の場合を除いて反射体12、12が同期して左右方向へ移動される。
【0041】
また、車輌用前照灯1、1が備えられた車輌には、先行車や対向車等の存在を検知する検知システムが設けられており、反射体12、12は検知システムの検知結果に基づいて左右方向へ移動可能とされている。例えば、検知システムによって先行車や対向車等が検知されたときには、光源7、7、・・・から出射された光が先行車や対向車等に照射されない位置に反射体12、12が移動可能とされている。反射体12、12によって光が遮蔽されない領域はスプリット領域とされる。
【0042】
先ず、両側点灯状態における各モードの配光パターンについて説明する(図3参照)。尚、以下の説明においては、二つの光源7、7を光源7A、7Bとして示し、光源7A、7Bから出射された光によって照射される照射領域をそれぞれPA、PBとして示す。
【0043】
モード1は反射体12、12によって光が遮蔽されない全照射モードである。
【0044】
モード1においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の外側(左側又は右側)に位置され、光源7、7、・・・から出射された光が反射体12、12に遮蔽されることなく照射される。光源7A、7Aから出射された光と光源7B、7Bから出射された光とは照射領域における中央部において重ね合わされて照射される。
【0045】
モード2は反射体12、12によって照射領域の左右方向における中央部に向かう光が遮蔽される第1の中央スプリットモードである。
【0046】
モード2においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央部に位置され、光源7、7、・・・から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7A、7Aから出射された光と光源7B、7Bから出射された光のうち照射領域における中央部に向かう光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における中央部に光が照射されない領域であるスプリット領域Sが形成される。
【0047】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0048】
光源7、7、・・・から出射された光のうち反射体12、12の反射面12a、12a、・・・に達した光は該反射面12a、12a、・・・で反射され、前方へ向けて照射される。反射面12a、12a、・・・に達した光が該反射面12a、12a、・・・で反射されて前方へ向けて照射されることは、以下の各モードにおいても同様である。
【0049】
モード3は反射体12、12によって照射領域における右寄りに向かう光の一部が遮蔽される第1の右側スプリットモードである。
【0050】
モード3においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より左側に位置され、光源7、7、・・・から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7A、7Aから出射された光のうち右端側の部分の光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における右寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0051】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0052】
モード4は反射体12、12によって照射領域の左寄りに向かう光の一部が遮蔽される第1の左側スプリットモードである。
【0053】
モード4においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より右側に位置され、光源7、7、・・・から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7B、7Bから出射された光のうち左端側の部分の光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における左寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0054】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0055】
モード5は反射体12、12によって照射領域の右寄りに向かう光の一部と左寄りに向かう光の一部とがそれぞれ遮蔽される第1のスプリット幅可変モードである。
【0056】
モード5においては、反射体12、12が同期しては移動されず、一方の反射体12が光の通過領域の中央より左側に位置され他方の反射体12が光の通過領域の中央より右側に位置され、光源7、7、・・・から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。一方の灯具ユニット6の光源7Aから出射された光のうち右端側の部分の光が一方の反射体12に遮蔽され、他方の灯具ユニット6の光源7Bから出射された光のうち左端側の部分の光が他方の反射体12に遮蔽され、照射領域における中央部にスプリット領域S1が形成される(図5参照)。
【0057】
また、スプリット領域S1の左右にはそれぞれスプリット領域S2、S2が形成される。スプリット領域S2、S2は一方の光源7Aと他方の光源7Bからそれぞれ出射された光が反射体12、12によって遮蔽されると共に一方の光源7Bと他方の光源7Aからそれぞれ出射された光が照射されて形成される領域である。従って、スプリット領域S2、S2は、光源7A、7Aから出射された光が重ね合わされて形成された照射領域PA及び光源7B、7Bから出射された光が重ね合わされて形成された照射領域PBよりも輝度が低くされた領域である。
【0058】
スプリット領域S1、S2、S2は反射体12、12の移動位置に応じて幅が変化される。従って、配光制御の自由度の向上を図ることができる。
【0059】
このときスプリット領域S1、S2、S2には、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0060】
次に、片側点灯状態における各モードの配光パターンについて説明する(図4参照)。尚、以下の説明においては、二つの光源7、7を光源7A、7Bとして示し、光源7A、7Bから出射された光によって照射される照射領域をPA、PBとして示す。
【0061】
モード6−1は反射体12、12によって照射領域の左右方向における中央部に向かう光が遮蔽される第2の中央スプリットモードである。
【0062】
モード6−1においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央部に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7A、7Aは消灯され、光源7B、7Bから出射された光のうち照射領域における中央部に向かう光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における中央部に光が照射されない領域であるスプリット領域Sが形成される。
【0063】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0064】
モード6−2は反射体12、12によって照射領域の左右方向における中央部に向かう光が遮蔽される第2の中央スプリットモードである。
【0065】
モード6−2においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央部に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7B、7Bは消灯され、光源7A、7Aから出射された光のうち照射領域における中央部に向かう光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における中央部に光が照射されない領域であるスプリット領域Sが形成される。
【0066】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0067】
モード7は反射体12、12によって照射領域における右寄りに向かう光が遮蔽される第2の右側消灯モードである。
【0068】
モード7においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より左側に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7A、7Aは消灯され、光源7B、7Bから出射された光のうち左端側の部分の光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における右寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0069】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0070】
モード8は反射体12、12によって照射領域における左寄りに向かう光が遮蔽される第2の左側消灯モードである。
【0071】
モード8においては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より右側に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。光源7B、7Bは消灯され、光源7A、7Aから出射された光のうち右端側の部分の光がそれぞれ反射体12、12に遮蔽され、照射領域における左寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0072】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0073】
モード9は反射体12、12によって照射領域の左寄りに向かう光の一部と右寄りに向かう光の一部とがそれぞれ遮蔽される第2のスプリット幅可変モードである。
【0074】
モード9においては、反射体12、12が同期しては移動されず、一方の反射体12が光の通過領域の中央より右側に位置され他方の反射体12が光の通過領域の中央より左側に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽される。一方の光源7Aと他方の光源7Bとは消灯され、一方の灯具ユニット6の光源7Bから出射された光のうち左端側の部分の光が一方の反射体12に遮蔽され、他方の灯具ユニット6の光源7Aから出射された光のうち右端側の部分の光が他方の反射体12に遮蔽され、照射領域における中央部に幅広のスプリット領域Sが形成される(図6参照)。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて幅が変化される。従って、配光制御の自由度の向上を図ることができる。
【0075】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0076】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、左右方向へ移動可能な反射体12によって光を遮蔽して所望の配光パターンを形成しており、照射領域を分割して照射領域の数と同数の光源を配置する構成とされていないため、光源7の数が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
また、反射体12の移動位置に応じて必要な配光パターンを形成することができるため、照射領域の大きさや位置を自由に変えることが可能であり、先行車輌や対向車輌の存在位置に応じて最適な照射状態を確保して幻惑光の発生を防止することができる。
【0078】
さらに、反射体12の反射面12a、12aで反射された光が反射体12の反射面12a、12aに達することなく前方へ向けて照射された光に重ね合わされるため、その分、前方へ向けて照射される光の輝度の向上を図ることができる。
【0079】
さらにまた、車輌用前照灯1にあっては、二つの光源7、7と左右に連続する二つのリフレクター11、11を配置しているため、異なる種類の配光パターンの数を増やすことができ、配光制御の自由度の向上を図ることができる。
【0080】
加えて、左右に配置された車輌用前照灯1、1の各灯具ユニット6、6における反射体2、12を同期して左右方向へ移動させることにより、光が照射される領域とスプリットが形成される領域とが明確化され、光の輝度の向上を図った上で的確な配光制御を行うことができる。
【0081】
尚、上記には、ブロック状に形成された反射体12を例として示したが、反射体12は略左右方向を向く反射面12a、12aを有していれば他の形状であってもよく、反射体12は、例えば、図7に示すように、水平断面形状が前方又は後方に開口されたコ字状、台形状、H字状、V字状等の形状であってもよい。
【0082】
上記したように、車輌用前照灯1に設けられた灯具ユニット6は遠距離を照射するハイビーム用の灯具ユニットであるが、車輌には近距離を照射するロービーム用の灯具ユニットも設けられており、ハイビーム用の灯具ユニットから光が照射されるときにはロービーム用の灯具ユニットからも光が照射される。
【0083】
ハイビーム用の灯具ユニット6から照射された光α、αとロービーム用の灯具ユニットから出射された光βの一部とは水平カットラインH付近で重ね合わされる(図8参照)。このとき配光パターンにスプリットSが形成される場合には、重ね合わされた部分αp、αpの間の部分βpが部分αp、αpが左右に存在するために暗く見えてしまう。
【0084】
そこで、車輌用前照灯1にあっては、反射体12を左右方向に加えて上下方向へ移動可能とすることにより、部分βpを暗く見えないようにしている(図2参照)。
【0085】
即ち、反射体12をシェード10の下側まで移動させることにより、シェード10と反射体12の間に部分βpに照射される光Aが通過する空間Bを形成し、空間Bを通過した光Aが部分βpに重ね合わされるようにすることにより部分βpを暗く見えないようにしている。
【0086】
このように反射体12を上下方向へ移動可能にすることにより、必要な照射領域に対して光を出射して輝度の向上を図ることができる。
【0087】
尚、反射体12を上下方向へ移動可能にしたときに、反射体12の上面を上側反射面12bとして形成してもよい。反射体12の上面を上側反射面12bとして形成することにより、上側反射面12bで反射された光がシェード10と反射体12の間を通過して前方に照射されるため、一層の輝度の向上を図ることができる。
【0088】
また、上記には、灯具ユニット6に二つの光源7、7と二つのリフレクター11、11を配置した例を示したが、光源7とリフレクター11の数は二つずつに限られることはなく、任意の数を配置することが可能である。
【0089】
以下に、例として、一つの光源7が配置された灯具ユニットから光が出射されたときの配光パターンについて説明する(図9参照)。
【0090】
右側の車輌用前照灯1の光源7から出射された光と左側の車輌用前照灯1の光源7から出射された光とは前方において重ね合わされ、重ね合わされた光によって配光パターンが形成される。反射体12、12は同期して左右方向へ移動される。
【0091】
右側の車輌用前照灯1の光源7から出射された光によって形成される配光パターンと左側の車輌用前照灯1の光源7から出射された光によって形成される配光パターンとは同じであるため、図9には、一方の灯具ユニットの状態と配光パターンについてのみ示す。
【0092】
モード1Aは反射体12、12によって光が遮蔽されない全照射モードである。
【0093】
モード1Aにおいては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の外側(右側又は左側)に位置され、光源7、7から出射された光が反射体12、12に遮蔽されることなく照射される。
【0094】
モード2Aは反射体12、12によって照射領域の左右方向における中央部に向かう光が遮蔽される中央スプリットモードである。
【0095】
モード2Aにおいては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央部に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽され、照射領域における中央部にスプリット領域Sが形成される。
【0096】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0097】
モード3Aは反射体12、12によって照射領域における右寄りに向かう光の一部が遮蔽される右側スプリットモードである。
【0098】
モード3Aにおいては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より左側に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽され、照射領域における右寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0099】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0100】
モード4Aは反射体12、12によって照射領域における左寄りに向かう光の一部が遮蔽される左側スプリットモードである。
【0101】
モード4Aにおいては、反射体12、12がそれぞれ光の通過領域の中央より右側に位置され、光源7、7から出射された光の一部が反射体12、12に遮蔽され、照射領域における左寄りの部分にスプリット領域Sが形成される。スプリット領域Sは反射体12、12の移動位置に応じて位置が変化される。
【0102】
このときスプリット領域Sには、例えば、先行車や対向車等が存在し、先行車や対向車等に対する幻惑光の発生が防止される。
【0103】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図2乃至図9と共に本発明の最良の形態を示すものであり、本図は車輌用前照灯の概略水平断面図である。
【図2】車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図3】両側点灯状態の各モードを示す図である。
【図4】片側点灯状態の各モードを示す図である。
【図5】両側点灯状態の第1のスプリット幅可変モードの状態を示す図である。
【図6】片側点灯状態の第2のスプリット幅可変モードの状態を示す図である。
【図7】反射体の別の例を示す断面図である。
【図8】スプリットが形成された状態においてロービームが照射されているときの配光パターンを示す図である。
【図9】光源が一つの場合の各モードを示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、3…カバー、4…灯具外筐、6…灯具ユニット、7…光源、8…投影レンズ、11…リフレクター、12…反射体、12a…反射面、12b…上側反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置された車輌用前照灯であって、
前記灯具ユニットが、
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を前方へ向けて反射するリフレクターと、
前記光源から出射された光を投影して前方に照射する投影レンズと、
略左右方向を向く一対の反射面を有し前記光源と前記投影レンズの間に位置され左右方向へ移動可能とされた反射体とを備えた
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記光源を左右に離隔して二つ配置し、
それぞれの前記光源から出射された光を前方向けて反射する前記リフレクターを左右に連続して二つ配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記光源から出射された光を遮蔽するシェードを設け、
前記反射体を前記シェードに対して上下方向へ移動可能にした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記反射体の上面を上側反射面として形成した
ことを特徴とする請求項3に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
前記灯具外筐及び前記灯具ユニットが車体の左右両端部にそれぞれ配置され、
左側の前記灯具ユニットの反射体と右側の前記灯具ユニットの反射体とを同期して移動させるようにした
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車輌用前照灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−165386(P2011−165386A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24197(P2010−24197)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】