車輌用情報呈示装置
【課題】運転者がドアミラーへの視線誘導を伴わずに後側方からの他車輌の接近を認識することが可能な車輌用情報呈示装置を提供する。
【解決手段】車輌用情報呈示装置10は、相対距離Diを検出する他車輌検出センサ11と、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなる視覚パターン20を生成するパターン生成装置14と、運転者の周辺視野に視覚パターン20を呈示する表示ディスプレイ15と、を備え、視覚パターン20は、自車輌1を示す自車輌発光体21と、他車輌を示し、第1の運動を行う他車輌発光体22と、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に配置され、第2の運動を行う複数の中間発光体23と、を有し、パターン生成装置14は、相対距離Diが短くなるほど、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から所定軌道に沿って移動して自車輌発光体21の側方に近づくように、視覚パターン20を変化させる。
【解決手段】車輌用情報呈示装置10は、相対距離Diを検出する他車輌検出センサ11と、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなる視覚パターン20を生成するパターン生成装置14と、運転者の周辺視野に視覚パターン20を呈示する表示ディスプレイ15と、を備え、視覚パターン20は、自車輌1を示す自車輌発光体21と、他車輌を示し、第1の運動を行う他車輌発光体22と、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に配置され、第2の運動を行う複数の中間発光体23と、を有し、パターン生成装置14は、相対距離Diが短くなるほど、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から所定軌道に沿って移動して自車輌発光体21の側方に近づくように、視覚パターン20を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車輌と他車輌との位置関係を俯瞰した視覚パターンを用いて、自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する車輌用情報呈示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車輌の後側方を走行する他車輌との危険度を認識するためのガイドラインとして、ドアミラー内に配列したLEDを点灯或いは点滅させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−334566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、車線変更や合流の際に、運転者は、視線を車輌前方からドアミラーに移動させて、ドアミラーに映し出される他車輌とガイドラインとの位置関係をドアミラーを注視して確認しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転者のドアミラーへの注視を伴わずに後側方からの他車輌の接近を認識することが可能な車輌用情報呈示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、自車輌と他車輌との位置関係を俯瞰した視覚パターンを運転者の周辺視野に呈示すると共に、自車輌に対する他車輌の相対距離が短くなるほど、他車輌発光体が自車輌発光体の下方から所定軌道に沿って移動して自車輌発光体の側方に近づくように、視覚パターンを変化させることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない視覚パターンが運転者の周辺視野に呈示され、さらに、周辺視でも識別可能な視覚パターンの向きの変化によって、他車輌の位置変化を把握することができるので、運転者は視線をドアミラーに誘導されることなく周辺視によって他車輌の接近を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態において表示ディスプレイに表示された視覚パターンの一例を示す図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、図2に示す視覚パターンの他車輛発光体の第1の運動を説明するための図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、自車輛が本線に合流する例を示す俯瞰図である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、本発明の実施形態において表示ディスプレイに表示された画面の一例を示す図であり、図4の各シーンにおける表示例である。
【図6】図6(a)〜図6(d)は、本発明の実施形態における視覚パターンの他の例を示す図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、本発明の実施形態において高空間周波数パターンを重畳的に表示した表示ディスプレイの画面の例を示す図である。
【図8】図8は、自車輛が5車線の道路を走行している例を示す俯瞰図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における視覚パターンの変形例を示す図であり、図8に示すシーンにおける表示例である。
【図10】図10は、自車輛が5車線の道路を走行している例を示す俯瞰図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態における視覚パターンの他の変形例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態において車室内を運転席から前方に向かって見た図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態における運転席周りの側面図である。
【図14】図14(a)は、本発明の実施形態における視覚パターンを呈示しない場合の実験結果を示すグラフであり、図14(b)は、視覚パターンを呈示した場合の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図、図2は本実施形態における視覚パターンの一例を示す図、図3は視覚パターンの他車輌発光体の第1の運動を説明するための図である。
【0011】
本実施形態における車輌用情報呈示装置10は、自車輌が合流車線から本線に合流する際に、視覚パターン20を用いて自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する装置である。この車輌用情報呈示装置10は、図1に示すように、他車輌検出センサ11と、車速センサ12と、TTC演算装置13と、パターン生成装置14と、表示ディスプレイ15と、効果音生成装置16と、を備えている。
【0012】
他車輌検出センサ11は、例えば、自車輌1の後端に設けられたレーザレンジファインダから構成されており、自車輌1の後側方に存在する他車輌までの距離と方向を検出することが可能となっている。一方、車速センサ12は、自車輌1の速度Vsを検出することが可能となっている。これらのセンサ11,12はTTC演算装置13に接続されており、検出結果をTTC演算装置13にそれぞれ出力することが可能となっている。なお、他車輌検出センサ11を、レーザレンジファインダに代えて、ミリ波レーダやステレオカメラ等で構成しても良い。
【0013】
TTC演算装置13は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、上記のセンサ11,12による検出結果に基づいて、TTC(Time To Contact:他車輌が自車輌位置に達するまでの時間)を演算する。
【0014】
具体的には、このTTC演算装置13は、先ず、他車輌検出センサ11によって検出された他車輌までの距離Di(自車輌に対する他車輌の相対距離(車間距離)、以下単に相対距離Diとも称する。)を微分することで、他車輌の速度Vtを算出する。
【0015】
次いで、TTC演算装置13は、相対距離Di及び他車輌の速度Vtと、速度センサ12によって検出された自車輌1の速度Vsと、に基づいて、TTC(=Di/(Vt−Vs)=[相対距離]/[相対速度])を算出し、相対距離DiとTTCをパターン生成装置14に出力する。
【0016】
パターン生成装置14も、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、TTC演算装置13によって算出された相対距離DiとTTCに基づいて、自車輌1と他車輌との位置関係を俯瞰した(上方から見た自車輌1と他車輌との位置関係を示す)視覚パターン20を生成する。なお、上述のTTC演算装置13とパターン生成装置14とを同一のコンピュータによって実現してもよい。
【0017】
この視覚パターン20は、図2に示すように、自車輌1を示す自車輌発光体21と、他車輌を示す他車輌発光体22と、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に配置された複数の中間発光体23と、を有している。この視覚パターン20は、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されており、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
【0018】
自車輌発光体21は、表示ディスプレイ15の画面の略中央に配置されており、二次元ガウシアンの輝度分布を有する一つの略真円形状の染みパターンから構成されている。
【0019】
他車輌発光体22も、自車輌発光体21と同様に、二次元ガウシアンの輝度分布を有する一つの略真円形状の染みパターンから構成されている。この他車輌発光体22は、自車輌発光体21よりも相対的に大きな直径を有している。
【0020】
この他車輌発光体22は、図3(a)〜図3(c)に示すような第1の運動を常時行っている。具体的には、本実施形態では、この第1の運動として、図3(a)に示すサイン関数に従って、図3(b)と図3(c)に示すように、他車輌発光体22の中心CPが、Y軸に平行な直線Lyを中心として、左右に連続的に位置変調している。なお、図3(b)は、図3(a)のIIIB位置での他車輌発光体22の状態を示し、図3(c)は、図3(a)のIIIC位置での他車輌発光体22の状態を示している。なお、当然のことながら、この第1の運動は、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われている。
【0021】
なお、他車輌発光体22を、サイン関数に代えて、例えばガウス関数に従って位置変調させてもよい。また、直線Lyに代えて、例えば、中間発光体23の中心線を中心として、他車輌発光体22の中心CPを左右に位置変調させてもよい。
【0022】
複数の中間発光体23も、自車輌発光体21及び他車輌発光体22と同様に、二次元ガウシアンの輝度分布を有する略真円形状の染みパターンからそれぞれ構成されている。この中間発光体23は、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に実質的に等間隔に並んで配置されていると共に、自車輌発光体21から他車輌発光体22に向かうに従ってその直径が順次大きくなっている。なお、いずれの中間発光体23も、自車輌発光体21よりも大きく、且つ、他車輌発光体22よりも小さな直径を有しており、これにより、視覚パターン20は、全体として、頭部(他車輌発光体22に相当)と尾部(自車輌発光体21に相当)を持つ雫状の形状を有している。
【0023】
この複数の中間発光体23は、他車輌発光体22の第1の運動とは異なる第2の運動を常時行っている。具体的には、本実施形態では、この第2の運動として、図2に示すように、複数の中間発光体23が、他車輌発光体22から自車輌発光体21に向かって一定の速度で連続的に移動している。なお、他車輌発光体22の近傍から中間発光体23が中心に向かって移動すると、当該他車輌発光体22の近傍に新たな中間発光体23が順次出現すると共に、自車輌発光体21の近傍まで移動した中間発光体23は順次消滅するようになっている。なお、この第2の運動も、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われている。
【0024】
さらに、本実施形態では、パターン生成装置14は、図2に示すように、TTC演算装置13より出力された相対距離Diに応じて、他車輌発光体22が楕円軌道Trに沿って移動するように、視覚パターン20を変化させる。
【0025】
この楕円軌道Trは、自車輌発光体21を中心とした楕円関数で定義されている。そして、この楕円関数は、自車輌発光体21(すなわち原点)から水平方向(X方向)の距離を相対距離Diに対応付けて、相対距離Diが短くなるに従って、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。つまり、この楕円関数に相対距離Diを入力することで、当該楕円軌道Tr上における他車輌発光体22のY方向の位置が決定される。また、この楕円関数は、自車輌発光体21から他車輌発光体22への向きが、自車輌に対する他車輌の実際の向きに実質的に一致するように設定されている。
【0026】
本実施形態では、相対距離Diが200[m]のときに、他車輌発光体22が自車輌発光体21の真下に位置し、相対距離Diが短くなるにつれて他車輌発光体22が楕円軌道Trに沿って上昇し、相対距離Diが0[m]のときに、他車輌発光体22が自車輌発光体21に対して真横に位置するように、楕円関数が設定されている。
【0027】
なお、パターン生成装置14は、この他車輌発光体22の楕円軌道Tr上での動きに併せて、当該他車輌発光体22と自車輌発光体21とを結ぶ中間発光体23の傾きも変化させる。そのため、結果的に、視覚パターン20は、相対距離Diが変化するにつれて、自車輌発光体21を中心として振り子のような動きをする。なお、この視覚パターン20の動きも、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われる。
【0028】
また、本実施形態では、パターン生成装置14は、TTC演算装置13から出力されたTTCに応じて、他車輌発光体22の大きさを変化させると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させる。具体的には、本実施形態では、図2に示すように、TTCが正であり且つ小さいほど、他車輌発光体22の直径を大きくする。また、TTCが正であり且つ小さいほど、他車輌発光体22を白色から黄色に変化させると共に、複数の中間発光体23において白色から黄色に変化させる範囲を、他車輌発光体22から中心に向かって広げる。
【0029】
なお、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を、相対距離Diが所定の閾値(例えば100[m])を下回るまでは白色のまま維持しておき、相対距離Diが当該閾値よりも短くなったら黄色に変化させ、それ以降は相対距離Diが短くなるほど他車輌発光体22及び中間発光体23の色を濃くしてもよい。
【0030】
また、パターン生成装置14が、TTC以外の要素(例えば、自車輌1に対する他車輌51の相対速度(=Vt−Vs)等)に基づいて、他車輌発光体22の大きさや、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させてもよい。
【0031】
また、パターン生成装置14は、他車輌発光体22又は中間発光体23のいずれか一方についてのみ色を変化させてもよい。或いは、パターン生成装置14が、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさや色だけでなく、他車輌発光体22や中間発光体23の形状や輝度を変化させてもよい。或いは、パターン生成装置14が、TTCに応じて、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさ、形状、色、又は輝度の少なくとも一つの変化の大きさや速さを変えてもよい。
【0032】
図4及び図5を参照しながら、このパターン生成装置14が生成する視覚パターン20について具体的に説明する。
【0033】
図4(a)〜図4(d)は、合流車線101を走行している自車輌1が本線100に合流する例を示す俯瞰図である。また、図5(a)〜図5(d)は図4(a)〜図4(d)の各シーンにおける表示例である。
【0034】
先ず、自車輌1が合流車線101から本線100に合流する際に、本線100において自車輌1の後側方を他車輌50が車速Vtを低下させずに自車輌1に接近する場合(図4(a)→図4(b)→図4(c))について説明する。
【0035】
この場合には、図4(a)に示すシーンでは、相対距離が200[m]以上離れているため、図5(a)に示すように、画面上において他車輌発光体22は自車輌発光体21の真下に位置している。
【0036】
そして、図4(b)に示すように、他車輌51が速い車速Vtを維持したまま自車輌1に接近すると、図5(b)に示すように、他車輌発光体22は楕円軌道Trに沿って上方に移動すると共に中間発光体23が傾いて、自車輌発光体21を中心として視覚パターン20が振り子のような動きをする。また、これと同時に、同図に示すように、他車輌発光体22が大きくなると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23が黄色に変化する。
【0037】
さらに、図4(c)に示すように、他車輌51が車速Vtを維持したまま自車輌1にさらに接近すると、図5(c)に示すように、他車輌発光体22は楕円軌道Trに沿ってさらに上昇して自車輌発光体21の側方に位置して中間発光体23がさらに傾斜すると共に、他車輌発光体22がさらに大きくなる。
【0038】
これに対し、自車輌1が本線100に合流する際に、他車輌50が車速Vtを低下させた場合(図4(a)→図4(b)→図4(d))には、図5(d)に示すように、他車輌発光体22が小さくなると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23が黄色から白色に戻る。
【0039】
なお、視覚パターンは、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されていれば特に限定されず、例えば、図6(a)〜図6(d)に示すようなパターンで構成してもよい。
【0040】
図6(a)に示す変形例は略矩形状の染みパターンであり、図6(b)に示す変形例は楕円形状の染みパターンであり、図6(c)に示す変形例は交互に傾斜した楕円形状の染みパターンである。また、背景が明るい場合には、図6(d)に示すように、背景輝度を中心としてガボール関数に従って輝度変調してもよい。いずれのパターンも、上述の視覚パターン20と同様に、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されており、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
【0041】
なお、図6(a)及び図6(b)に示す例では、図2で示した雫型の視覚パターンと比較して、頭部と尾部を区別することができないが、表示ディスプレイ15の画面の隅部に配置する場合に、雫型と同様の効果を得ることができる。また、いずれの例においても、他車輌発光体を構成する部分が第1の運動を行い、中間発光体を構成する部分が第2の運動を行うように変調を行う必要がある。
【0042】
また、図7(a)〜図7(c)に示すように、数字やアイコン等のコード情報や目盛等の高空間周波数成分からなる高空間周波数パターン24A〜24Cを視覚パターン20に付加してもよい。図7(a)〜図7(c)は、本実施形態において高空間周波数成分パターンを重畳的に表示した画面の例を示す図である。
【0043】
図7(a)に示す例では、他車輌発光体22のY方向における位置を実際の相対距離Diに対応付けた目盛を示す高空間周波数パターン24Aを、視覚パターン20に付加している。これにより、運転者は、視覚パターン20だけでは得ることができない正確な距離を認識することができる。
【0044】
また、図7(b)や図7(c)に示す例では、他車輌が接近していることを示す文字やエクスクラメーションマークを示す高空間周波数パターン24B,24Cを、視覚パターン20に付加している。これにより、自車輌1に他車輌が接近していることを運転者に対して積極的に警告することができる。なお、図7(b)や図7(c)に示す高空間周波数パターン24B,24Cを点滅させてもよい。
【0045】
また、図9に示すように、楕円軌道Tr1,Tr2を二重にすることで、3車線以上の道路での車線変更における他車輌51,52の接近を運転者に伝達してもよい。図8は自車輌が5車線道路を走行している例を示す俯瞰図、図9は図8に示すシーンにおける表示例である。
【0046】
図9における第1の楕円軌道Tr1は、図8に示す自車輌1が走行している車線113に隣接する左右の車線112,114に対応している。これに対し、図9における第2の楕円軌道Tr2は、図8において、車線112,114のさらに外側に位置する車線111,115に対応している。本例においても、楕円軌道Tr1,Tr2は、自車輌発光体21を中心とした楕円関数で定義されている。そして、それぞれの楕円関数は、自車輌発光体21から水平方向(X方向)の距離を相対距離Di1,Di2に対応付けて、相対距離Di1,Di2が短くなるに従って他車輌22A,22Bが自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。
【0047】
例えば、図8に示すように、中央の車線113を走行する自車輌1の後方において、当該車線113に隣接する車線112,114を他車輌51,52が走行している場合には、図9に示すように、第1の楕円軌道Tr1上を、第1の他車輌51を示す第1の視覚パターン20Aの他車輌発光体23Aが移動すると共に、同じ第1の楕円軌道Tr1上を、第2の他車輌52を示す第2の視覚パターン20Bの他車輌発光体23Bが移動する。
【0048】
本例では、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した位置情報(測位データ)や、他車輌検出センサ11により検出された他車輌の方向等に基づいて、他車輌発光体23A,23Bがいずれの楕円軌道Tr1又はTr2上に位置するか決定される。従って、他車輌51,52が車線変更すると、第1の楕円軌道Tr1と第2の楕円軌道Tr2との間で他車輌発光体23A,23Bが移動する。
【0049】
なお、本例において、自車輌の周囲の全ての他車輌を視覚パターンによって表示する必要はない。例えば、後方200[m]以内に存在する他車輌のみを表示してもよいし、ウィンカ操作等によって示された車線変更先を走行している他車輌のみを表示してもよい。
【0050】
また、視覚パターン20の他車輌発光体22が移動する軌道は、楕円軌道に特に限定されない。例えば、図11に示す例では、楕円軌道に代えて、ガウス関数によって定義されるガウシアン軌道が採用されている。図10は自車輌が5車線道路を走行している例を示す俯瞰図、図11は図10に示すシーンにおける表示例である。
【0051】
図11における第1〜第4のガウシアン軌道Tr3〜Tr6は、図10に示す自車輌1が走行している車線113以外の車線111,112,114,115にそれぞれ対応している。このガウシアン軌道Tr3〜Tr6は、自車輌発光体21を中心としたガウス関数でそれぞれ定義されている。それぞれのガウス関数は、自車輌発光体21から垂直方向(Y方向)の距離を、自車輌の前後方向に沿った相対距離DiLに対応付けて、相対距離DiLが短くなるに従って他車輌22A,22Bが自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。つまり、対応するガウス関数に相対距離DiLを入力することで、ガウシアン軌道Tr3〜Tr6上における他車輌発光体23CのX方向の位置が決定される。
【0052】
例えば、図10に示すように、中央の車線113を走行する自車輌1の後方において右外側の車線111を他車輌51が走行している場合には、図11に示すように、第1のガウシアン軌道Tr3上を、他車輌51を示す視覚パターン20Cの他車輌発光体22Cが移動する。
【0053】
なお、本例においても、例えば、GPS衛星から受信した位置情報(測位データ)や、他車輌検出センサ11により検出された他車輌の方向等に基づいて、他車輌発光体23Cがいずれのガウシアン軌道Tr3〜Tr6上に位置するか決定される。
【0054】
図12は本実施形態における車室内を運転席から前方に向かって見た図、図13は本実施形態における運転席周りの側面図である。
【0055】
以上にようにパターン生成装置14によって生成された視覚パターン20は、例えば液晶モニタや有機ELモニタから構成され、車室内に設けられた表示ディスプレイ15に表示される。この表示ディスプレイ15は、本実施形態では、図12に示すように、コンビネーションメータ4を覆うクラスタリッド5上に、運転者30の方を向くように設けられている。なお、表示ディスプレイ15の設置位置は、運転者の真正面に限定されず、運転者の右前方や左前方であってもよい。
【0056】
この表示ディスプレイ15は、自車輌1の前方を見ている標準姿勢の運転者30の視野において、中心となる視線L1から離心角10度以上の範囲に設置されている。本実施形態では、図13に示すように、表示ディスプレイ15は視線L1から下方向に離心角10〜20度の範囲に設置されている。このように、本実施形態では、運転者の周辺視野に表示ディスプレイ15を配置しているので、運転者30の前方視認に影響を与えることがない。
【0057】
なお、本実施形態における標準姿勢とは、腰及び背中と運転席シート2との間に隙間がないように運転者30がシート2に深く座り、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだ状態で、膝が伸び切らずに少し余裕のある位置でシート2を合わせ、さらに、背中にシート2をつけたままの状態で、ステアリングホイール3の上部を握った両腕の肘に少し余裕がある角度で背もたれを合わせた姿勢である。
【0058】
本実施形態では、パターン生成装置14は、表示ディスプレイ15に視覚パターン20を出力するのと同時に、相対距離DiやTTCを示す信号を効果音生成装置16に出力する。
【0059】
効果音生成装置16は、パターン生成装置14からの出力信号を受けて、例えば後側方から接近する他車輌の走行音等の効果音を、視覚パターン20の向きの変化に同期させたり、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさや色の変化に同期させて、スピーカ161,162を介して、音場処理によって三次元的に出力する。なお、例えば、他車輌が自車輌に最接近した場合にのみ効果音を出力してもよい。
【0060】
これにより、運転者に伝える情報の冗長性が高まるので、情報の伝達精度を高めることができる。なお、音場処理によって走行音を三次元的に出力するため、図12に示すように、少なくとも2つのスピーカ161,162が、運転者を中心として左右に配置されている。
【0061】
以上のように、本発明では、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、自車輌1と他車輌51との位置関係を俯瞰した視覚パターン20を運転者30の周辺視野に呈示すると共に、自車輌1に対する他車輌51の相対距離Diが短くなるほど、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から楕円軌道又はガウシアン軌道に沿って移動して自車輌発光体21の側方に近づくように、視覚パターン20を変化させる。
【0062】
このため、本実施形態では、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない視覚パターン20が運転者の周辺視野に呈示されており、さらに周辺視でも識別可能な視覚パターン20の向きの変化によって、他車輌51の位置変化を把握することができるので、運転者は視線をドアミラーに誘導されることなく周辺視によって他車輌の接近を認識することができる。
【0063】
また、本実施形態では、視覚パターン20において、他車輌発光体22が第1の運動をすると共に、中間発光体23が第1の運動とは異なる第2の運動をするので、運転者が周辺視によって他車輌発光体22と中間発光体23を識別することができ、視覚パターン20の向きを把握し易くなっている。
【0064】
また、本実施形態では、少なくとも相対速度に応じて、他車輌発光体若しくは中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つを連続的に変化させ、又は、他車輌発光体若しくは中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つの変化の大きさ若しくは速さの少なくとも一方を変化させる。これにより、運転者は周辺視において視覚パターン20を視認し易くなる。
【0065】
特に、本実施形態では、TTCに応じて、他車輌発光体22の大きさを変化させたり、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させる。このため、運転者は、他車輌を表す染みパターンの大きさの変化や黄色領域の面積の変化を周辺視によって感じ取ることができるので、合流場面等において、他車輌の前又は後ろのいずれに入るかの判断を適切に行うことができる。
【0066】
また、TTCに応じて他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させることで、色彩を判別し難い運転者も、自車輌への他車輌の接近を認識することができる。
【0067】
また、本実施形態では、運転者の視界において、中心となる視界から10度以上の範囲に視覚パターン20を呈示するので、運転者は周辺視によって視覚パターン20を把握することができる。
【0068】
また、実施形態では、表示ディスプレイ15の画面上における自車輌発光体21に対する他車輌発光体22の向きが、自車輌1に対する他車輌51の実際の向きと実質的に一致しており、画面上における自車輌発光体21に対する他車輌発光体22の向きが、自車輌1に対する他車輌51の実際の向きを指示している。このため、運転者は、自車輌1に接近する他車輌51の位置を直感的に把握することができる。
【0069】
ここで、図14(a)及び図14(b)を参照しながら本実施形態の具体的な効果について説明する。図14(a)は本実施形態における視覚パターンを呈示しない場合の実験結果を示すグラフであり、図14(b)は視覚パターンを呈示した場合の実験結果を示すグラフである。
【0070】
この実験では、ドライビングシミュレータ上で合流場面を設定し、(1)ドライバに対して視覚パターンを呈示しない場合(図14(a))と、(2)ドライバに対して本実施形態の視覚パターンを呈示した場合(図14(b))において、ドライバの判断がどのように変化するかを調査した。
【0071】
なお、図14(a)及び図14(b)における「GO」と「NOGO」は、合流時におけるドライバの判断を意味しており、「GO」は他車輌の前方に入る判断であり、「NOGO」、他車輌の後方に入る判断である。また、同図において、横軸はTTCを示し、縦軸はTHW(Time HeadWay(=相対距離Di/他車速度Vt))を示し、補助線はRF(Risk Feeling:危険感覚(=1/THW+5/TTC))を示している。このRFは、TTCとTHWが短いほど大きくなる。
【0072】
同図に示されるように、本実施形態の視覚パターンを呈示することで、NOGO判断がより低いRF値でなされるようになったのが5/8名(図14(a)におけるa矢印)であり、GO判断がより低いRF値でなされるようになったのが6/8名(図14(a)におけるb矢印)であり、NOGO判断とGO判断がなされるRF値の差が大きくなったのが5/8名(図14(a)におけるc矢印)であった。この実験結果から、本実施形態の視覚パターンを呈示することで、適切な行動選択がなされることが分かった。
【0073】
なお、本実施形態における他車輌検出センサ11が本発明における他車輌検出手段の一例に相当し、本実施形態におけるパターン生成装置14が本発明におけるパターン生成手段の一例に相当し、本実施形態における表示ディスプレイ15が本発明における呈示手段の一例に相当し、本実施形態における効果音生成装置16が本発明における効果音生成手段の一例に相当する。
【0074】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0075】
1…自車輌
10…車輌用情報呈示装置
11…他車輌検出センサ
12…車速センサ
13…TTC演算装置
14…パターン生成装置
15…表示ディスプレイ
16…効果音生成装置
161,162…スピーカ
20…視覚パターン
21…自車輌発光体
22…他車輌発光体
23…中間発光体
30…運転者
51,52…他車輌
100…本線
101…合流車線
111〜115…第1〜第5の車線
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車輌と他車輌との位置関係を俯瞰した視覚パターンを用いて、自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する車輌用情報呈示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車輌の後側方を走行する他車輌との危険度を認識するためのガイドラインとして、ドアミラー内に配列したLEDを点灯或いは点滅させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−334566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、車線変更や合流の際に、運転者は、視線を車輌前方からドアミラーに移動させて、ドアミラーに映し出される他車輌とガイドラインとの位置関係をドアミラーを注視して確認しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転者のドアミラーへの注視を伴わずに後側方からの他車輌の接近を認識することが可能な車輌用情報呈示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、自車輌と他車輌との位置関係を俯瞰した視覚パターンを運転者の周辺視野に呈示すると共に、自車輌に対する他車輌の相対距離が短くなるほど、他車輌発光体が自車輌発光体の下方から所定軌道に沿って移動して自車輌発光体の側方に近づくように、視覚パターンを変化させることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない視覚パターンが運転者の周辺視野に呈示され、さらに、周辺視でも識別可能な視覚パターンの向きの変化によって、他車輌の位置変化を把握することができるので、運転者は視線をドアミラーに誘導されることなく周辺視によって他車輌の接近を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態において表示ディスプレイに表示された視覚パターンの一例を示す図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、図2に示す視覚パターンの他車輛発光体の第1の運動を説明するための図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、自車輛が本線に合流する例を示す俯瞰図である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、本発明の実施形態において表示ディスプレイに表示された画面の一例を示す図であり、図4の各シーンにおける表示例である。
【図6】図6(a)〜図6(d)は、本発明の実施形態における視覚パターンの他の例を示す図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、本発明の実施形態において高空間周波数パターンを重畳的に表示した表示ディスプレイの画面の例を示す図である。
【図8】図8は、自車輛が5車線の道路を走行している例を示す俯瞰図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における視覚パターンの変形例を示す図であり、図8に示すシーンにおける表示例である。
【図10】図10は、自車輛が5車線の道路を走行している例を示す俯瞰図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態における視覚パターンの他の変形例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態において車室内を運転席から前方に向かって見た図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態における運転席周りの側面図である。
【図14】図14(a)は、本発明の実施形態における視覚パターンを呈示しない場合の実験結果を示すグラフであり、図14(b)は、視覚パターンを呈示した場合の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図、図2は本実施形態における視覚パターンの一例を示す図、図3は視覚パターンの他車輌発光体の第1の運動を説明するための図である。
【0011】
本実施形態における車輌用情報呈示装置10は、自車輌が合流車線から本線に合流する際に、視覚パターン20を用いて自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する装置である。この車輌用情報呈示装置10は、図1に示すように、他車輌検出センサ11と、車速センサ12と、TTC演算装置13と、パターン生成装置14と、表示ディスプレイ15と、効果音生成装置16と、を備えている。
【0012】
他車輌検出センサ11は、例えば、自車輌1の後端に設けられたレーザレンジファインダから構成されており、自車輌1の後側方に存在する他車輌までの距離と方向を検出することが可能となっている。一方、車速センサ12は、自車輌1の速度Vsを検出することが可能となっている。これらのセンサ11,12はTTC演算装置13に接続されており、検出結果をTTC演算装置13にそれぞれ出力することが可能となっている。なお、他車輌検出センサ11を、レーザレンジファインダに代えて、ミリ波レーダやステレオカメラ等で構成しても良い。
【0013】
TTC演算装置13は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、上記のセンサ11,12による検出結果に基づいて、TTC(Time To Contact:他車輌が自車輌位置に達するまでの時間)を演算する。
【0014】
具体的には、このTTC演算装置13は、先ず、他車輌検出センサ11によって検出された他車輌までの距離Di(自車輌に対する他車輌の相対距離(車間距離)、以下単に相対距離Diとも称する。)を微分することで、他車輌の速度Vtを算出する。
【0015】
次いで、TTC演算装置13は、相対距離Di及び他車輌の速度Vtと、速度センサ12によって検出された自車輌1の速度Vsと、に基づいて、TTC(=Di/(Vt−Vs)=[相対距離]/[相対速度])を算出し、相対距離DiとTTCをパターン生成装置14に出力する。
【0016】
パターン生成装置14も、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、TTC演算装置13によって算出された相対距離DiとTTCに基づいて、自車輌1と他車輌との位置関係を俯瞰した(上方から見た自車輌1と他車輌との位置関係を示す)視覚パターン20を生成する。なお、上述のTTC演算装置13とパターン生成装置14とを同一のコンピュータによって実現してもよい。
【0017】
この視覚パターン20は、図2に示すように、自車輌1を示す自車輌発光体21と、他車輌を示す他車輌発光体22と、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に配置された複数の中間発光体23と、を有している。この視覚パターン20は、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されており、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
【0018】
自車輌発光体21は、表示ディスプレイ15の画面の略中央に配置されており、二次元ガウシアンの輝度分布を有する一つの略真円形状の染みパターンから構成されている。
【0019】
他車輌発光体22も、自車輌発光体21と同様に、二次元ガウシアンの輝度分布を有する一つの略真円形状の染みパターンから構成されている。この他車輌発光体22は、自車輌発光体21よりも相対的に大きな直径を有している。
【0020】
この他車輌発光体22は、図3(a)〜図3(c)に示すような第1の運動を常時行っている。具体的には、本実施形態では、この第1の運動として、図3(a)に示すサイン関数に従って、図3(b)と図3(c)に示すように、他車輌発光体22の中心CPが、Y軸に平行な直線Lyを中心として、左右に連続的に位置変調している。なお、図3(b)は、図3(a)のIIIB位置での他車輌発光体22の状態を示し、図3(c)は、図3(a)のIIIC位置での他車輌発光体22の状態を示している。なお、当然のことながら、この第1の運動は、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われている。
【0021】
なお、他車輌発光体22を、サイン関数に代えて、例えばガウス関数に従って位置変調させてもよい。また、直線Lyに代えて、例えば、中間発光体23の中心線を中心として、他車輌発光体22の中心CPを左右に位置変調させてもよい。
【0022】
複数の中間発光体23も、自車輌発光体21及び他車輌発光体22と同様に、二次元ガウシアンの輝度分布を有する略真円形状の染みパターンからそれぞれ構成されている。この中間発光体23は、自車輌発光体21と他車輌発光体22との間に実質的に等間隔に並んで配置されていると共に、自車輌発光体21から他車輌発光体22に向かうに従ってその直径が順次大きくなっている。なお、いずれの中間発光体23も、自車輌発光体21よりも大きく、且つ、他車輌発光体22よりも小さな直径を有しており、これにより、視覚パターン20は、全体として、頭部(他車輌発光体22に相当)と尾部(自車輌発光体21に相当)を持つ雫状の形状を有している。
【0023】
この複数の中間発光体23は、他車輌発光体22の第1の運動とは異なる第2の運動を常時行っている。具体的には、本実施形態では、この第2の運動として、図2に示すように、複数の中間発光体23が、他車輌発光体22から自車輌発光体21に向かって一定の速度で連続的に移動している。なお、他車輌発光体22の近傍から中間発光体23が中心に向かって移動すると、当該他車輌発光体22の近傍に新たな中間発光体23が順次出現すると共に、自車輌発光体21の近傍まで移動した中間発光体23は順次消滅するようになっている。なお、この第2の運動も、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われている。
【0024】
さらに、本実施形態では、パターン生成装置14は、図2に示すように、TTC演算装置13より出力された相対距離Diに応じて、他車輌発光体22が楕円軌道Trに沿って移動するように、視覚パターン20を変化させる。
【0025】
この楕円軌道Trは、自車輌発光体21を中心とした楕円関数で定義されている。そして、この楕円関数は、自車輌発光体21(すなわち原点)から水平方向(X方向)の距離を相対距離Diに対応付けて、相対距離Diが短くなるに従って、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。つまり、この楕円関数に相対距離Diを入力することで、当該楕円軌道Tr上における他車輌発光体22のY方向の位置が決定される。また、この楕円関数は、自車輌発光体21から他車輌発光体22への向きが、自車輌に対する他車輌の実際の向きに実質的に一致するように設定されている。
【0026】
本実施形態では、相対距離Diが200[m]のときに、他車輌発光体22が自車輌発光体21の真下に位置し、相対距離Diが短くなるにつれて他車輌発光体22が楕円軌道Trに沿って上昇し、相対距離Diが0[m]のときに、他車輌発光体22が自車輌発光体21に対して真横に位置するように、楕円関数が設定されている。
【0027】
なお、パターン生成装置14は、この他車輌発光体22の楕円軌道Tr上での動きに併せて、当該他車輌発光体22と自車輌発光体21とを結ぶ中間発光体23の傾きも変化させる。そのため、結果的に、視覚パターン20は、相対距離Diが変化するにつれて、自車輌発光体21を中心として振り子のような動きをする。なお、この視覚パターン20の動きも、上述の輝度エッジが生じない時間周波数(本例では1〜7[Hz]の中時間周波数)の範囲内において行われる。
【0028】
また、本実施形態では、パターン生成装置14は、TTC演算装置13から出力されたTTCに応じて、他車輌発光体22の大きさを変化させると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させる。具体的には、本実施形態では、図2に示すように、TTCが正であり且つ小さいほど、他車輌発光体22の直径を大きくする。また、TTCが正であり且つ小さいほど、他車輌発光体22を白色から黄色に変化させると共に、複数の中間発光体23において白色から黄色に変化させる範囲を、他車輌発光体22から中心に向かって広げる。
【0029】
なお、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を、相対距離Diが所定の閾値(例えば100[m])を下回るまでは白色のまま維持しておき、相対距離Diが当該閾値よりも短くなったら黄色に変化させ、それ以降は相対距離Diが短くなるほど他車輌発光体22及び中間発光体23の色を濃くしてもよい。
【0030】
また、パターン生成装置14が、TTC以外の要素(例えば、自車輌1に対する他車輌51の相対速度(=Vt−Vs)等)に基づいて、他車輌発光体22の大きさや、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させてもよい。
【0031】
また、パターン生成装置14は、他車輌発光体22又は中間発光体23のいずれか一方についてのみ色を変化させてもよい。或いは、パターン生成装置14が、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさや色だけでなく、他車輌発光体22や中間発光体23の形状や輝度を変化させてもよい。或いは、パターン生成装置14が、TTCに応じて、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさ、形状、色、又は輝度の少なくとも一つの変化の大きさや速さを変えてもよい。
【0032】
図4及び図5を参照しながら、このパターン生成装置14が生成する視覚パターン20について具体的に説明する。
【0033】
図4(a)〜図4(d)は、合流車線101を走行している自車輌1が本線100に合流する例を示す俯瞰図である。また、図5(a)〜図5(d)は図4(a)〜図4(d)の各シーンにおける表示例である。
【0034】
先ず、自車輌1が合流車線101から本線100に合流する際に、本線100において自車輌1の後側方を他車輌50が車速Vtを低下させずに自車輌1に接近する場合(図4(a)→図4(b)→図4(c))について説明する。
【0035】
この場合には、図4(a)に示すシーンでは、相対距離が200[m]以上離れているため、図5(a)に示すように、画面上において他車輌発光体22は自車輌発光体21の真下に位置している。
【0036】
そして、図4(b)に示すように、他車輌51が速い車速Vtを維持したまま自車輌1に接近すると、図5(b)に示すように、他車輌発光体22は楕円軌道Trに沿って上方に移動すると共に中間発光体23が傾いて、自車輌発光体21を中心として視覚パターン20が振り子のような動きをする。また、これと同時に、同図に示すように、他車輌発光体22が大きくなると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23が黄色に変化する。
【0037】
さらに、図4(c)に示すように、他車輌51が車速Vtを維持したまま自車輌1にさらに接近すると、図5(c)に示すように、他車輌発光体22は楕円軌道Trに沿ってさらに上昇して自車輌発光体21の側方に位置して中間発光体23がさらに傾斜すると共に、他車輌発光体22がさらに大きくなる。
【0038】
これに対し、自車輌1が本線100に合流する際に、他車輌50が車速Vtを低下させた場合(図4(a)→図4(b)→図4(d))には、図5(d)に示すように、他車輌発光体22が小さくなると共に、他車輌発光体22及び中間発光体23が黄色から白色に戻る。
【0039】
なお、視覚パターンは、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されていれば特に限定されず、例えば、図6(a)〜図6(d)に示すようなパターンで構成してもよい。
【0040】
図6(a)に示す変形例は略矩形状の染みパターンであり、図6(b)に示す変形例は楕円形状の染みパターンであり、図6(c)に示す変形例は交互に傾斜した楕円形状の染みパターンである。また、背景が明るい場合には、図6(d)に示すように、背景輝度を中心としてガボール関数に従って輝度変調してもよい。いずれのパターンも、上述の視覚パターン20と同様に、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されており、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
【0041】
なお、図6(a)及び図6(b)に示す例では、図2で示した雫型の視覚パターンと比較して、頭部と尾部を区別することができないが、表示ディスプレイ15の画面の隅部に配置する場合に、雫型と同様の効果を得ることができる。また、いずれの例においても、他車輌発光体を構成する部分が第1の運動を行い、中間発光体を構成する部分が第2の運動を行うように変調を行う必要がある。
【0042】
また、図7(a)〜図7(c)に示すように、数字やアイコン等のコード情報や目盛等の高空間周波数成分からなる高空間周波数パターン24A〜24Cを視覚パターン20に付加してもよい。図7(a)〜図7(c)は、本実施形態において高空間周波数成分パターンを重畳的に表示した画面の例を示す図である。
【0043】
図7(a)に示す例では、他車輌発光体22のY方向における位置を実際の相対距離Diに対応付けた目盛を示す高空間周波数パターン24Aを、視覚パターン20に付加している。これにより、運転者は、視覚パターン20だけでは得ることができない正確な距離を認識することができる。
【0044】
また、図7(b)や図7(c)に示す例では、他車輌が接近していることを示す文字やエクスクラメーションマークを示す高空間周波数パターン24B,24Cを、視覚パターン20に付加している。これにより、自車輌1に他車輌が接近していることを運転者に対して積極的に警告することができる。なお、図7(b)や図7(c)に示す高空間周波数パターン24B,24Cを点滅させてもよい。
【0045】
また、図9に示すように、楕円軌道Tr1,Tr2を二重にすることで、3車線以上の道路での車線変更における他車輌51,52の接近を運転者に伝達してもよい。図8は自車輌が5車線道路を走行している例を示す俯瞰図、図9は図8に示すシーンにおける表示例である。
【0046】
図9における第1の楕円軌道Tr1は、図8に示す自車輌1が走行している車線113に隣接する左右の車線112,114に対応している。これに対し、図9における第2の楕円軌道Tr2は、図8において、車線112,114のさらに外側に位置する車線111,115に対応している。本例においても、楕円軌道Tr1,Tr2は、自車輌発光体21を中心とした楕円関数で定義されている。そして、それぞれの楕円関数は、自車輌発光体21から水平方向(X方向)の距離を相対距離Di1,Di2に対応付けて、相対距離Di1,Di2が短くなるに従って他車輌22A,22Bが自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。
【0047】
例えば、図8に示すように、中央の車線113を走行する自車輌1の後方において、当該車線113に隣接する車線112,114を他車輌51,52が走行している場合には、図9に示すように、第1の楕円軌道Tr1上を、第1の他車輌51を示す第1の視覚パターン20Aの他車輌発光体23Aが移動すると共に、同じ第1の楕円軌道Tr1上を、第2の他車輌52を示す第2の視覚パターン20Bの他車輌発光体23Bが移動する。
【0048】
本例では、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した位置情報(測位データ)や、他車輌検出センサ11により検出された他車輌の方向等に基づいて、他車輌発光体23A,23Bがいずれの楕円軌道Tr1又はTr2上に位置するか決定される。従って、他車輌51,52が車線変更すると、第1の楕円軌道Tr1と第2の楕円軌道Tr2との間で他車輌発光体23A,23Bが移動する。
【0049】
なお、本例において、自車輌の周囲の全ての他車輌を視覚パターンによって表示する必要はない。例えば、後方200[m]以内に存在する他車輌のみを表示してもよいし、ウィンカ操作等によって示された車線変更先を走行している他車輌のみを表示してもよい。
【0050】
また、視覚パターン20の他車輌発光体22が移動する軌道は、楕円軌道に特に限定されない。例えば、図11に示す例では、楕円軌道に代えて、ガウス関数によって定義されるガウシアン軌道が採用されている。図10は自車輌が5車線道路を走行している例を示す俯瞰図、図11は図10に示すシーンにおける表示例である。
【0051】
図11における第1〜第4のガウシアン軌道Tr3〜Tr6は、図10に示す自車輌1が走行している車線113以外の車線111,112,114,115にそれぞれ対応している。このガウシアン軌道Tr3〜Tr6は、自車輌発光体21を中心としたガウス関数でそれぞれ定義されている。それぞれのガウス関数は、自車輌発光体21から垂直方向(Y方向)の距離を、自車輌の前後方向に沿った相対距離DiLに対応付けて、相対距離DiLが短くなるに従って他車輌22A,22Bが自車輌発光体21の下方から側方に向かって移動するように設定されている。つまり、対応するガウス関数に相対距離DiLを入力することで、ガウシアン軌道Tr3〜Tr6上における他車輌発光体23CのX方向の位置が決定される。
【0052】
例えば、図10に示すように、中央の車線113を走行する自車輌1の後方において右外側の車線111を他車輌51が走行している場合には、図11に示すように、第1のガウシアン軌道Tr3上を、他車輌51を示す視覚パターン20Cの他車輌発光体22Cが移動する。
【0053】
なお、本例においても、例えば、GPS衛星から受信した位置情報(測位データ)や、他車輌検出センサ11により検出された他車輌の方向等に基づいて、他車輌発光体23Cがいずれのガウシアン軌道Tr3〜Tr6上に位置するか決定される。
【0054】
図12は本実施形態における車室内を運転席から前方に向かって見た図、図13は本実施形態における運転席周りの側面図である。
【0055】
以上にようにパターン生成装置14によって生成された視覚パターン20は、例えば液晶モニタや有機ELモニタから構成され、車室内に設けられた表示ディスプレイ15に表示される。この表示ディスプレイ15は、本実施形態では、図12に示すように、コンビネーションメータ4を覆うクラスタリッド5上に、運転者30の方を向くように設けられている。なお、表示ディスプレイ15の設置位置は、運転者の真正面に限定されず、運転者の右前方や左前方であってもよい。
【0056】
この表示ディスプレイ15は、自車輌1の前方を見ている標準姿勢の運転者30の視野において、中心となる視線L1から離心角10度以上の範囲に設置されている。本実施形態では、図13に示すように、表示ディスプレイ15は視線L1から下方向に離心角10〜20度の範囲に設置されている。このように、本実施形態では、運転者の周辺視野に表示ディスプレイ15を配置しているので、運転者30の前方視認に影響を与えることがない。
【0057】
なお、本実施形態における標準姿勢とは、腰及び背中と運転席シート2との間に隙間がないように運転者30がシート2に深く座り、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだ状態で、膝が伸び切らずに少し余裕のある位置でシート2を合わせ、さらに、背中にシート2をつけたままの状態で、ステアリングホイール3の上部を握った両腕の肘に少し余裕がある角度で背もたれを合わせた姿勢である。
【0058】
本実施形態では、パターン生成装置14は、表示ディスプレイ15に視覚パターン20を出力するのと同時に、相対距離DiやTTCを示す信号を効果音生成装置16に出力する。
【0059】
効果音生成装置16は、パターン生成装置14からの出力信号を受けて、例えば後側方から接近する他車輌の走行音等の効果音を、視覚パターン20の向きの変化に同期させたり、他車輌発光体22や中間発光体23の大きさや色の変化に同期させて、スピーカ161,162を介して、音場処理によって三次元的に出力する。なお、例えば、他車輌が自車輌に最接近した場合にのみ効果音を出力してもよい。
【0060】
これにより、運転者に伝える情報の冗長性が高まるので、情報の伝達精度を高めることができる。なお、音場処理によって走行音を三次元的に出力するため、図12に示すように、少なくとも2つのスピーカ161,162が、運転者を中心として左右に配置されている。
【0061】
以上のように、本発明では、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、自車輌1と他車輌51との位置関係を俯瞰した視覚パターン20を運転者30の周辺視野に呈示すると共に、自車輌1に対する他車輌51の相対距離Diが短くなるほど、他車輌発光体22が自車輌発光体21の下方から楕円軌道又はガウシアン軌道に沿って移動して自車輌発光体21の側方に近づくように、視覚パターン20を変化させる。
【0062】
このため、本実施形態では、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない視覚パターン20が運転者の周辺視野に呈示されており、さらに周辺視でも識別可能な視覚パターン20の向きの変化によって、他車輌51の位置変化を把握することができるので、運転者は視線をドアミラーに誘導されることなく周辺視によって他車輌の接近を認識することができる。
【0063】
また、本実施形態では、視覚パターン20において、他車輌発光体22が第1の運動をすると共に、中間発光体23が第1の運動とは異なる第2の運動をするので、運転者が周辺視によって他車輌発光体22と中間発光体23を識別することができ、視覚パターン20の向きを把握し易くなっている。
【0064】
また、本実施形態では、少なくとも相対速度に応じて、他車輌発光体若しくは中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つを連続的に変化させ、又は、他車輌発光体若しくは中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つの変化の大きさ若しくは速さの少なくとも一方を変化させる。これにより、運転者は周辺視において視覚パターン20を視認し易くなる。
【0065】
特に、本実施形態では、TTCに応じて、他車輌発光体22の大きさを変化させたり、他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させる。このため、運転者は、他車輌を表す染みパターンの大きさの変化や黄色領域の面積の変化を周辺視によって感じ取ることができるので、合流場面等において、他車輌の前又は後ろのいずれに入るかの判断を適切に行うことができる。
【0066】
また、TTCに応じて他車輌発光体22及び中間発光体23の色を変化させることで、色彩を判別し難い運転者も、自車輌への他車輌の接近を認識することができる。
【0067】
また、本実施形態では、運転者の視界において、中心となる視界から10度以上の範囲に視覚パターン20を呈示するので、運転者は周辺視によって視覚パターン20を把握することができる。
【0068】
また、実施形態では、表示ディスプレイ15の画面上における自車輌発光体21に対する他車輌発光体22の向きが、自車輌1に対する他車輌51の実際の向きと実質的に一致しており、画面上における自車輌発光体21に対する他車輌発光体22の向きが、自車輌1に対する他車輌51の実際の向きを指示している。このため、運転者は、自車輌1に接近する他車輌51の位置を直感的に把握することができる。
【0069】
ここで、図14(a)及び図14(b)を参照しながら本実施形態の具体的な効果について説明する。図14(a)は本実施形態における視覚パターンを呈示しない場合の実験結果を示すグラフであり、図14(b)は視覚パターンを呈示した場合の実験結果を示すグラフである。
【0070】
この実験では、ドライビングシミュレータ上で合流場面を設定し、(1)ドライバに対して視覚パターンを呈示しない場合(図14(a))と、(2)ドライバに対して本実施形態の視覚パターンを呈示した場合(図14(b))において、ドライバの判断がどのように変化するかを調査した。
【0071】
なお、図14(a)及び図14(b)における「GO」と「NOGO」は、合流時におけるドライバの判断を意味しており、「GO」は他車輌の前方に入る判断であり、「NOGO」、他車輌の後方に入る判断である。また、同図において、横軸はTTCを示し、縦軸はTHW(Time HeadWay(=相対距離Di/他車速度Vt))を示し、補助線はRF(Risk Feeling:危険感覚(=1/THW+5/TTC))を示している。このRFは、TTCとTHWが短いほど大きくなる。
【0072】
同図に示されるように、本実施形態の視覚パターンを呈示することで、NOGO判断がより低いRF値でなされるようになったのが5/8名(図14(a)におけるa矢印)であり、GO判断がより低いRF値でなされるようになったのが6/8名(図14(a)におけるb矢印)であり、NOGO判断とGO判断がなされるRF値の差が大きくなったのが5/8名(図14(a)におけるc矢印)であった。この実験結果から、本実施形態の視覚パターンを呈示することで、適切な行動選択がなされることが分かった。
【0073】
なお、本実施形態における他車輌検出センサ11が本発明における他車輌検出手段の一例に相当し、本実施形態におけるパターン生成装置14が本発明におけるパターン生成手段の一例に相当し、本実施形態における表示ディスプレイ15が本発明における呈示手段の一例に相当し、本実施形態における効果音生成装置16が本発明における効果音生成手段の一例に相当する。
【0074】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0075】
1…自車輌
10…車輌用情報呈示装置
11…他車輌検出センサ
12…車速センサ
13…TTC演算装置
14…パターン生成装置
15…表示ディスプレイ
16…効果音生成装置
161,162…スピーカ
20…視覚パターン
21…自車輌発光体
22…他車輌発光体
23…中間発光体
30…運転者
51,52…他車輌
100…本線
101…合流車線
111〜115…第1〜第5の車線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する車輌用情報呈示装置であって、
前記自車輌に対する前記他車輌の相対距離を少なくとも検出する他車輌検出手段と、
中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、前記自車輌と前記他車輌との位置関係を俯瞰すると共に、前記他車輌検出手段の検出結果に基づいて変化する視覚パターンを生成するパターン生成手段と、
前記運転者の周辺視野に前記視覚パターンを呈示する呈示手段と、を備えており、
前記視覚パターンは、
前記自車輌を示す自車輌発光体と、
前記他車輌を示し、第1の運動を行う他車輌発光体と、
前記自車輌発光体と前記他車輌発光体との間に並んで配置され、前記第1の運動とは異なる第2の運動を行う複数の中間発光体と、を有し、
前記パターン生成手段は、前記相対距離が短くなるほど、前記呈示手段の画面上において前記他車輌発光体が前記自車輌発光体の下方から所定軌道に沿って移動して前記自車輌発光体の側方に近づくように、前記視覚パターンを変化させることを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記所定軌道は、楕円関数によって定義される楕円軌道、又は、ガウス関数によって定義されるガウシアン軌道を含むことを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記他車輌検出手段は、前記自車輌に対する前記他車輌の相対速度を検出し、
前記パターン生成手段は、
少なくとも前記相対速度に基づいて、前記他車輌発光体若しくは前記中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つを連続的に変化させ、又は、
少なくとも前記相対速度に基づいて、前記他車輌発光体若しくは前記中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つの変化の大きさ若しくは速さの少なくとも一方を変化させることを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記運転者の周辺視野は、前記運転者の視界において、中心となる視点から10度以上の範囲であり、
前記呈示手段の画面上における前記自車輌発光体に対する前記他車輌発光体の向きが、前記自車輌に対する前記他車輌の向きを指示することを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記視覚パターンの変化に同期した効果音を発する効果音発生手段を備えたことを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記呈示手段は、前記視覚パターンに加えて、高空間周波数成分からなるパターンを表示することを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項1】
自車輌への他車輌の接近を運転者に伝達する車輌用情報呈示装置であって、
前記自車輌に対する前記他車輌の相対距離を少なくとも検出する他車輌検出手段と、
中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなり、前記自車輌と前記他車輌との位置関係を俯瞰すると共に、前記他車輌検出手段の検出結果に基づいて変化する視覚パターンを生成するパターン生成手段と、
前記運転者の周辺視野に前記視覚パターンを呈示する呈示手段と、を備えており、
前記視覚パターンは、
前記自車輌を示す自車輌発光体と、
前記他車輌を示し、第1の運動を行う他車輌発光体と、
前記自車輌発光体と前記他車輌発光体との間に並んで配置され、前記第1の運動とは異なる第2の運動を行う複数の中間発光体と、を有し、
前記パターン生成手段は、前記相対距離が短くなるほど、前記呈示手段の画面上において前記他車輌発光体が前記自車輌発光体の下方から所定軌道に沿って移動して前記自車輌発光体の側方に近づくように、前記視覚パターンを変化させることを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記所定軌道は、楕円関数によって定義される楕円軌道、又は、ガウス関数によって定義されるガウシアン軌道を含むことを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記他車輌検出手段は、前記自車輌に対する前記他車輌の相対速度を検出し、
前記パターン生成手段は、
少なくとも前記相対速度に基づいて、前記他車輌発光体若しくは前記中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つを連続的に変化させ、又は、
少なくとも前記相対速度に基づいて、前記他車輌発光体若しくは前記中間発光体の少なくとも一方の大きさ、形状、色、若しくは輝度の少なくとも一つの変化の大きさ若しくは速さの少なくとも一方を変化させることを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記運転者の周辺視野は、前記運転者の視界において、中心となる視点から10度以上の範囲であり、
前記呈示手段の画面上における前記自車輌発光体に対する前記他車輌発光体の向きが、前記自車輌に対する前記他車輌の向きを指示することを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記視覚パターンの変化に同期した効果音を発する効果音発生手段を備えたことを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用情報呈示装置であって、
前記呈示手段は、前記視覚パターンに加えて、高空間周波数成分からなるパターンを表示することを特徴とする車輌用情報呈示装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2013−69196(P2013−69196A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208518(P2011−208518)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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