説明

車輪状態監視装置

【課題】ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を的確に把握することが可能な車輪状態監視装置を提供すること。
【解決手段】車輪センサユニット3は、タイヤの表面温度を検出する第1温度センサ12と、タイヤ内の温度を検出する第2温度センサ13と、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度とに基づいて車輪の状態を判定するセンサユニットコントローラ14とを備える。センサユニットコントローラ14は、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度との関係に基づき、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの状態に関する検出情報を用いて、ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を監視する車輪状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、車両に設けられた複数のタイヤの状態を運転者が車室内で確認できるようにするために、無線方式のタイヤ状態監視装置が提案されている、同特許文献1に記載されたタイヤ状態監視装置は、車両のホイール部にそれぞれ装着される複数のタイヤセンサユニットと、車両の車体に搭載される受信機ユニットとを備えている。各タイヤセンサユニットは、対応するタイヤの状態、即ちタイヤ内の圧力や温度を検出し、検出されたタイヤの状態を示すデータを含む状態データ信号を無線送信する。一方、受信機ユニットは、各タイヤセンサユニットからの状態データ信号を受信して、タイヤ状態に関する情報を、車室内に設けられた表示器に必要に応じて表示させる。
【0003】
上記特許文献1のタイヤセンサユニットは、タイヤ内の温度、具体的にはタイヤ内の空気温度を検出する温度センサを備えている。例えば車両の走行時においてタイヤの異常に起因して同タイヤが急激に発熱した場合には、タイヤで生じた熱がタイヤ内の空気に伝達され、その空気の温度が温度センサで検出されることになる。そのため、タイヤが実際に発熱してからその発熱が実際に検出されるまでの間にある程度の時間を要し、タイヤの異常を即時に検出することが難しい。
【0004】
そこで、特許文献2では、タイヤから放射される赤外線を検知することを通じてタイヤの表面温度を検出する赤外線温度センサを備えたタイヤ表面温度監視システムが提案されている。同特許文献2に開示されたシステムでは、タイヤの表面温度の変化を即時に検出することができるので、タイヤの異常に起因する同タイヤの急激な発熱を即時に検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−212669号公報
【特許文献2】特開2005−263158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪(若しくはその近傍)で生じ得る異常には、タイヤ自身に生じる異常だけでなく、タイヤ以外の箇所で生じる異常もある。しかしながら、上記特許文献1に開示された装置は、タイヤ内の温度及び圧力に基づきタイヤ自身の異常を検出するものであり、上記特許文献2に開示されたシステムは、タイヤの表面温度に基づきタイヤ自身の異常を検出するものである。すなわち、上記両特許文献1,2のいずれも、タイヤの状態に関する検出情報に基づきタイヤ自身の異常を検出することはできても、タイヤ以外の箇所で生じる異常を検出することはできない。
【0007】
本発明の目的は、ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を的確に把握することが可能な車輪状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願発明は、ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を監視する車輪状態監視装置において、前記タイヤの表面温度を検出する第1温度センサと、前記タイヤ内の温度を検出する第2温度センサと、前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とに基づいて車輪の状態を判定する判定部とを備える車輪状態監視装置を提供する。
【0009】
本発明の一態様において、前記判定部は、前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度との関係に基づき、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定する。
【0010】
例えば、タイヤに異常が生じた場合には、その異常に起因してタイヤが発熱して、そのタイヤで生じた熱がタイヤ内の空気に伝達される。そのため、第1温度センサによって検出されるタイヤ表面温度が第2温度センサによって検出されるタイヤ内温度よりも先に上昇することになる。逆に、タイヤではなくホイール部の側で何らかの異常に起因する発熱が生じた場合には、熱がホイール部からタイヤ内の空気に伝達されるとともに、そのタイヤ内の加熱された空気によってタイヤの表面温度が上昇する。そのため、第2温度センサによって検出されるタイヤ内温度が第1温度センサによって検出されるタイヤ表面温度よりも先に上昇することになる。
【0011】
従って、本発明のように、第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とに基づいて車輪の状態を判定するようにすれば、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定することが可能となり、ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を的確に把握することができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記判定部は、前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とのうち、いずれが先に所定の異常判定値にまで上昇するか否かに基づき、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定する。より具体的には、前記判定部は、前記タイヤ表面温度が前記タイヤ内温度よりも先に第1異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤにあると判定し、前記タイヤ内温度が前記タイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ以外にあると判定する。
【0013】
上記構成によれば、第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とをそれぞれ異常判定値と比較するだけの簡単な構成で、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを容易に判定することができる。
【0014】
本発明の一態様において、車輪状態監視装置は前記タイヤ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、前記判定部は、前記圧力センサによって検出されたタイヤ内圧力が低いほど、前記異常判定値を小さくする。
【0015】
タイヤ内温度が上昇するとタイヤ内圧力も上昇する。換言すれば、タイヤ内圧力は、タイヤ内温度だけでなく、同タイヤ内温度の影響を受けるタイヤ表面温度にも影響する。これは、第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度(或いは、第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度)が同じであっても、そのときのタイヤ内圧力が低いほど危険度は高くなるということを意味する。そこで本発明のように、圧力センサによって検出されたタイヤ内圧力が低いほど異常判定値を小さくすれば、異常の発生の可能性をより的確に判定することができるようになる。
【0016】
本発明の一態様において、車輪状態監視装置は前記タイヤ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、前記判定部は、前記圧力センサによって検出されたタイヤ内圧力が所定の許容値を下回っている状況下で、前記タイヤ表面温度が前記タイヤ内温度よりも先に第1異常判定値にまで上昇した場合に、前記タイヤにバーストが発生する可能性があると判定する。
【0017】
上記構成によれば、タイヤ内圧力をタイヤの状態に関する検出情報としてさらに用いることにより、タイヤに発生する可能性のある異常がバーストであることを的確に判定することができる。
【0018】
本発明の一態様において、前記判定部は、前記タイヤ表面温度が前記第1異常判定値を越えた状態で、前記タイヤ内温度が同第1異常判定値にまで上昇した場合に、前記バーストの発生の可能性が高くなったと判定する。
【0019】
上記構成によれば、タイヤ表面温度の上昇とその後に続くタイヤ内温度の上昇とに基づき、バーストの発生の可能性が高くなったことを的確に判定することができる。
本発明の一態様において、前記車輪は前記ホイール部の近傍に配置されたブレーキ機構を含み、前記判定部は、前記タイヤ内温度が前記タイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇した場合には、前記ブレーキ機構に引きずり現象が生じている可能性があると判定する。
【0020】
ブレーキ機構に引きずり現象が生じた場合には、ブレーキ機構で発生した熱がホイール部に伝達されるとともに、同ホイール部からタイヤ内の空気に伝達され、そしてタイヤ内の加熱された空気によってタイヤの表面温度が上昇する。よって、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇したことをもって、ブレーキ機構に引きずり現象が生じている可能性があると判定することができる。
【0021】
本発明の一態様において、前記第2異常判定値は、車両停止時に前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度よりも所定温度高い値に設定される。車両停止時におけるタイヤ内温度は、実質的に車両の置かれた環境温度を反映しているので、そのようなタイヤ内温度を基準として第2異常判定値を設定することにより、車両の置かれた環境温度に影響されることなく、ブレーキ機構に引きずり現象が生じている可能性があることを的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る車輪状態監視装置が搭載された車両を示す概略構成図。
【図2】図1の車輪センサユニットが取り付けられた車輪の部分断面図。
【図3】図1の車輪センサユニットの回路構成を示すブロック図。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、図3の車輪センサユニットの動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、車輪状態監視装置を搭載した車両1が示されている。車輪状態監視装置は、車両1の4つの車輪2にそれぞれ取り付けられる4つの車輪センサユニット3と、車両1の車体に設置される受信機ユニット4とを備えている。
【0024】
図1及び図2に示すように、前記各車輪2は、ホイール部5と同ホイール部5に装着されるタイヤ6とを含む。なお本実施形態では、各車輪2は、ホイール部5の近傍(例えば、ホイール部5のリムの径方向内側にある空間部)に配置されたブレーキ機構7をも含むものとする。ブレーキ機構7は、例えば、ホイール部5と一体回転するブレーキディスクとブレーキディスクを挟持可能なブレーキパッドとを有する。
【0025】
前記各車輪センサユニット3は、タイヤ6の内部空間に配置されるように、そのタイヤ6が装着されたホイール部5に対して取り付けられている。各車輪センサユニット3は、ホイール部5を貫通して延びるバルブステム3aを一体に有している。各車輪センサユニット3は、対応するタイヤ6の状態(タイヤ内圧力、タイヤ内温度、タイヤ表面温度)を検出して、検出されたタイヤ状態を示すデータを含む信号、即ちタイヤ状態データ信号を無線送信する。各車輪センサユニット3はまた、タイヤ6に関する検出情報に基づいて対応する車輪2の状態(タイヤ6のバーストの可能性、ブレーキ機構7の引きずり現象の可能性、タイヤ6の熱劣化の可能性)を判定して、判定された車輪状態を示すデータを含む信号、即ち車輪状態データ信号(異常報知信号)を無線送信する。
【0026】
図3に示すように、前記各車輪センサユニット3は、圧力センサ11、第1温度センサ12、第2温度センサ13、走行センサ15、制御部及び判定部としてのセンサユニットコントローラ14、送信部としてのRF送信回路16を備えている。センサ11,12,13は、タイヤ6の状態(或いは、車輪2の状態)を検出する検出部を構成する。センサ11,12,13,15、センサユニットコントローラ14、及びRF送信回路16は、車輪センサユニット3に内蔵された電池18から供給される電力によって駆動される。
【0027】
前記圧力センサ11は、対応するタイヤ6内の圧力(内部空気圧)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内圧力データをセンサユニットコントローラ14に出力する。第1温度センサ12は、サーモパイル等の赤外線温度センサよりなり、タイヤ6から放射される赤外線を検知することを通じてタイヤ6の表面温度、詳しくはタイヤ6の内側表面の温度を検出し、その検出によって得られたタイヤ表面温度データをセンサユニットコントローラ14に出力する。第2温度センサ13は、サーミスタや熱電対等の一般的な温度センサであり、対応するタイヤ6内の温度(内部空気温度)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内温度データをセンサユニットコントローラ14に出力する。センサユニットコントローラ14は、CPU、RAM14a(記憶部)及びROMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、RAM14aには固有の識別情報であるIDコードが登録されている。このIDコードは、各車輪センサユニット3を受信機ユニット4において識別するために使用される情報であり、センサユニットコントローラ14からの送信信号に含められる。センサユニットコントローラ14は、タイヤ内圧力データ、タイヤ表面温度データ、タイヤ内温度データ及びIDコードを含むデータを、RF送信回路16に出力する。RF送信回路16は、センサユニットコントローラ14からのデータを変調して変調信号を生成し、変調信号を送信アンテナ19から無線送信する。
【0028】
各車輪センサユニット3は、例えば、タイヤ状態の計測動作を第1の所定時間間隔(例えば、1〜15秒間隔)で定期的に行う一方、前記タイヤ状態データ信号の送信動作を前記第1の所定時間間隔よりも長い第2の所定時間間隔(例えば、1分間隔)で定期的に行う。但し、計測されたタイヤ状態が異常を示す場合(例えば、タイヤ内圧力の異常低下、タイヤ内圧力の急変、タイヤ内温度の急変、タイヤ表面温度の急変等)や、車輪状態の判定結果が異常の可能性を示す場合(例えば、タイヤ6のバーストの可能性有り、ブレーキ機構7の引きずり現象の可能性有り、タイヤ6の熱劣化の可能性有り等)、車輪センサユニット3は定期的な送信動作とは関係無く、直ちに送信動作を行う。
【0029】
前記走行センサ15は例えば加速度センサよりなり、車両1の走行の有無を検出するために用いられる。センサユニットコントローラ14は、走行センサ15の検出結果に基づき、車両1が走行中であるのか停車中であるのかを判定する。なお、車両1が走行停止されているときには、少なくともタイヤ状態データ信号の定期的な送信動作を行わないようにしてもよいし、或いは前記第1の所定時間間隔や前記第2の所定時間間隔を車両走行時よりも長くしてもよい。さらには、車両1の走行時において、車速に応じて前記第1の所定時間間隔や前記第2の所定時間間隔を変更してもよい。この場合、車速が上昇するほど、第1の所定時間間隔や第2の所定時間間隔を短くするのが好ましい。
【0030】
図2に、前記第1温度センサ12の設置態様を示す。車輪センサユニット3のハウジング21には開口21aが形成され、その開口21aには透明な受光窓22が取り付けられている。そして、第1温度センサ12は、受光窓22の内側において、シールリング23を介して開口21aに取り付けられている。第1温度センサ12は、タイヤ6の内側表面から放射された赤外線を、受光窓22を通じて受け止める。受光窓22は、測定すべき赤外線の波長に影響を与えない材料、例えば石英ガラスやポリエチレン等より形成される。
【0031】
図1に示すように、前記受信機ユニット4は、車体の所定箇所に設置され、例えば車両1のバッテリ(図示せず)からの電力によって動作する。受信機ユニット4は、車体の任意の箇所に配置された少なくとも1つの受信アンテナ32を備えており、各車輪センサユニット3から受信アンテナ32を通じて前記タイヤ状態データ信号や車輪状態データ信号(異常報知信号)を受信して、その受信した信号を処理する。
【0032】
受信機ユニット4は、受信機ユニットコントローラ33、RF受信回路35、警報器37、及び表示器38を備えている。受信機ユニットコントローラ33はCPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、受信機ユニット4の動作を統括的に制御する。RF受信回路35は、各車輪センサユニット3から受信アンテナ32を通じて受信された変調信号を復調して、受信機ユニットコントローラ33に送る。受信機ユニットコントローラ33は、RF受信回路35からのデータ信号に基づき、発信元の車輪センサユニット3に対応するタイヤ6の内部空気圧、表面温度及び内部温度を把握するとともに、車輪2の異常の有無を把握する。
【0033】
受信機ユニットコントローラ33はまた、前記内部空気圧、表面温度及び内部温度に関する情報や、車輪2の異常の有無に関する情報等を前記表示器38に表示させる。表示器38は、車室内等、車両1の搭乗者の視認範囲に配置される。受信機ユニットコントローラ33はさらに、内部空気圧、表面温度及び内部温度の異常や車輪2の異常を前記警報器(報知器)37にて報知させる。警報器37としては、例えば、異常を音によって報知する装置や、異常を光によって報知する装置が適用される。なお、このような異常を報知器としての表示器38によって報知させるようにしてもよい。この場合、異常の具体的内容を表示器38上に文字で表示することが好ましい。
【0034】
さて、例えば、タイヤ6に異常が生じた場合には、その異常に起因してタイヤ6が発熱して、そのタイヤ6で生じた熱がタイヤ6内の空気に伝達される。そのため、第1温度センサ12によって検出されるタイヤ表面温度が第2温度センサ13によって検出されるタイヤ内温度よりも先に上昇することになる。逆に、タイヤ6ではなくホイール部5の側で何らかの異常に起因する発熱が生じた場合には、熱がホイール部5からタイヤ6内の空気に伝達されるとともに、そのタイヤ6内の加熱された空気によってタイヤ6の表面温度が上昇する。そのため、第2温度センサ13によって検出されるタイヤ内温度が第1温度センサ12によって検出されるタイヤ表面温度よりも先に上昇することになる。
【0035】
そこで本実施形態では、センサユニットコントローラ14は、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度とに基づいて、車輪2の状態を判定するようにしている。具体的には、センサユニットコントローラ14は、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度との関係に基づき、異常の発生の可能性がタイヤ6にあるのかタイヤ6以外にあるのかを判定する。より具体的には、センサユニットコントローラ14は、タイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも先に第1異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ6にあると判定し、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ6以外にあると判定する。
【0036】
以下に、各車輪センサユニット3の動作について、図4(a)〜図4(c)に従って説明する。図4(a)〜図4(c)にはそれぞれ、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度の経時変化と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度の経時変化とが示されている。
【0037】
図4(a)では、車両1が走行を開始するのに伴い、タイヤ表面温度が徐々に上昇するとともに、それに追随してタイヤ内温度が上昇している。この状況は正常な状況であるので、異常の可能性有りとの判定はなされない。その後、特に異常の徴候が無ければ、タイヤ表面温度及びタイヤ内温度は、ある程度の変動を伴いながら正常温度範囲内で推移する。
【0038】
しかし、図4(a)では、車両1の走行開始からある程度時間が経過した時点において、タイヤ表面温度が正常温度範囲を越えて上昇するとともに、その上昇に遅れてタイヤ内温度が上昇している。ここで、タイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも先に第1異常判定値T1(例えば、110℃)にまで上昇した場合、センサユニットコントローラ14は、タイヤ6に異常の発生の可能性があると判定し、その判定結果を示す異常報知信号をRF送信回路16を通じて受信機ユニット4へ無線送信する。特に、圧力センサ11によって検出されたタイヤ内圧力が所定の許容値(例えば、180kPa)を下回っている状況下で、タイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも先に前記第1異常判定値T1にまで上昇した場合には、センサユニットコントローラ14は、タイヤ6にバーストが発生する可能性があると判定して、その判定結果を示す異常報知信号をRF送信回路16を通じて受信機ユニット4へ無線送信する。そして、この異常報知信号の受信に応答して、受信機ユニットコントローラ33は、警報器37及び表示器38の少なくとも一方に報知動作を行わせる。
【0039】
その後、タイヤ表面温度が前記第1異常判定値T1を越えたままの状態で、タイヤ内温度が同第1異常判定値T1にまで上昇した場合、タイヤ内圧力が前記許容値を下回っているか否かに拘わらず、センサユニットコントローラ14は、バーストの発生の可能性が高くなった(或いは、バーストの発生が近づいてきた)と判定する。そして、センサユニットコントローラ14は、その判定結果を示す異常報知信号をRF送信回路16を通じて受信機ユニット4へ無線送信する。この異常報知信号の受信に応答して、受信機ユニットコントローラ33は、警報器37及び表示器38の少なくとも一方に報知動作を行わせる。なお、タイヤ内温度が第1異常判定値T1にまで上昇した時点では、タイヤ表面温度が第1異常判定値T1にまで上昇した時点よりもタイヤ6の危険度が高まっていると予測される。そのため、報知動作としては、タイヤ6の危険度がより高まったことを車両1の搭乗者に報知し得る態様とすることが望ましい。
【0040】
次に、図4(b)では、車両1が走行を開始した直後において、タイヤ内温度が比較的急激に上昇するとともに、その上昇度合いよりも若干緩やかな度合いでタイヤ表面温度が上昇している。そして、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値T2にまで上昇した場合、センサユニットコントローラ14は、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じている可能性があると判定し、その判定結果を示す異常報知信号をRF送信回路16を通じて受信機ユニット4へ無線送信する。この異常報知信号の受信に応答して、受信機ユニットコントローラ33は、警報器37及び表示器38の少なくとも一方に報知動作を行わせる。
【0041】
なお、第2異常判定値T2は、車両1の停止時に第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度よりも所定温度ΔT(例えば、50℃)高い値に設定される。すなわち、センサユニットコントローラ14は、走行センサ15からの検出信号に基づき車両1の走行が開始されたことを判定すると、その走行開始直前に第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度に対し、一定値(固定値)である所定温度ΔTを加算して、その加算結果を第2異常判定値T2として設定する。
【0042】
なお、上述したブレーキ機構7の引きずり現象の判定は、車両1が走行を開始した直後だけでなく、それ以後の通常走行時においても同様に行うことができる。この場合に用いられる第2異常判定値T2は、車両1の走行開始時に設定された第2異常判定値T2以上の値に設定されてもよい。
【0043】
また、図4(c)では、車両1の走行中において、タイヤ表面温度が所定の高温閾値T3(例えば、100℃)以上になっている。この場合、センサユニットコントローラ14は、タイヤ表面温度が高温閾値T3以上になっている時間を積算し、その積算時間が劣化判定値(例えば、100時間)以上になった場合に、タイヤ6が熱劣化したと判定する。そして、センサユニットコントローラ14は、その判定結果を示す異常報知信号をRF送信回路16を通じて受信機ユニット4へ無線送信する。なお、積算時間はセンサユニットコントローラ14のRAM14aに記憶されて、随時更新される。この異常報知信号の受信に応答して、受信機ユニットコントローラ33は、警報器37及び表示器38の少なくとも一方に報知動作を行わせる。勿論、図4(a)及び図4(b)においてタイヤ表面温度が高温閾値T3以上になった場合にも、時間の積算は行われる。
【0044】
なお、図4(a)及び図4(b)は、車両1の走行開始時点においてタイヤ表面温度とタイヤ内温度とがほぼ同じである状況を示している。しかし、例えば車両1の走行停止から次の走行開始までの間の時間が比較的短い場合等、場合によっては、車両1の走行開始時点においてタイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも低くなっていることがある。このような状況で車両1の走行が開始された場合、特に異常の徴候が無ければ、タイヤ表面温度がタイヤ内温度に達するまで上昇した後に、タイヤ内温度がタイヤ表面温度に追随して上昇する。すなわちタイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも低くなっている状況から車両1の走行が開始されたとしても、特に異常の徴候が無ければ、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に上昇することはない(例えば、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じていない限り、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値T2にまで上昇することはない)。そのため、車両1の走行開始時点においてタイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも低くても、それが原因で異常の可能性有りとの誤判定がなされることはない。
【0045】
以上詳述した本実施形態は、下記の利点を有する。
(1) 本実施形態では、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度とに基づいて、車輪2の状態を判定するようにしている。これにより、異常の発生の可能性がタイヤ6にあるのかタイヤ6以外にあるのかを判定することが可能となり、ホイール部5と同ホイール部5に装着されるタイヤ6とを含む車輪2の状態を的確に把握することができる。
【0046】
(2) タイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも先に第1異常判定値T1にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ6にあると判定され、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値T2にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ6以外にあると判定される。よって、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度と第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度とをそれぞれ異常判定値と比較するだけの簡単な構成で、異常の発生の可能性がタイヤ6にあるのかタイヤ6以外にあるのかを容易に判定することができる。
【0047】
(3) 圧力センサ11によって検出されたタイヤ内圧力が所定の許容値を下回っている状況下で、タイヤ表面温度がタイヤ内温度よりも先に第1異常判定値T1にまで上昇した場合には、タイヤ6にバーストが発生する可能性があると判定される。このように、タイヤ内圧力をタイヤ6の状態に関する検出情報としてさらに用いることにより、タイヤ6に発生する可能性のある異常がバーストであることを的確に判定することができる。
【0048】
(4) タイヤ表面温度が第1異常判定値T1を越えた状態で、タイヤ内温度が同第1異常判定値T1にまで上昇した場合には、前記バーストの発生の可能性が高くなったと判定される。このように、タイヤ表面温度の上昇とその後に続くタイヤ内温度の上昇とに基づき、バーストの発生の可能性が高くなったことを的確に判定することができる。
【0049】
(5) タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値T2にまで上昇した場合には、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じている可能性があると判定される。すなわち、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じた場合には、ブレーキ機構7で発生した熱がホイール部5に伝達されるとともに、同ホイール部5からタイヤ6内の空気に伝達され、そしてタイヤ6内の加熱された空気によってタイヤ6の表面温度が上昇する。よって、タイヤ内温度がタイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値T2にまで上昇したことをもって、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じている可能性があると判定することができる。
【0050】
(6) 前記第2異常判定値T2は、車両1の停止時に第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度よりも所定温度ΔT高い値に設定される。車両1の停止時におけるタイヤ内温度は、実質的に車両1の置かれた環境温度を反映している、すなわち車両1の置かれた環境温度とほぼ等しい。よって、そのようなタイヤ内温度を基準として第2異常判定値T2を設定することにより、車両1の置かれた環境温度に影響されることなく、ブレーキ機構7に引きずり現象が生じている可能性があることを的確に判定することができる。
【0051】
なお、上記実施形態は以下のように変更することも可能である。
・タイヤ内温度が上昇するとタイヤ内圧力も上昇する。換言すれば、タイヤ内圧力は、タイヤ内温度だけでなく、同タイヤ内温度の影響を受けるタイヤ表面温度にも影響する。これは、第2温度センサ13によって検出されたタイヤ内温度(或いは、第1温度センサ12によって検出されたタイヤ表面温度)が同じであっても、そのときのタイヤ内圧力が低いほど危険度は高くなるということを意味する。そこで、圧力センサ11によって検出されたタイヤ内圧力が低いほど、第1異常判定値T1を小さくしたり第2異常判定値T2を小さくしたりしてもよい。このようにすれば、タイヤ内圧力に起因する温度変化に影響を受けることなく、異常の発生の可能性をより的確に判定することができるようになる。
【0052】
・タイヤ表面温度やタイヤ内温度の上昇度合いが急激なほど、異常の程度が大きいと考えられる。そこで、タイヤ表面温度やタイヤ内温度の上昇度合いが急激なほど、第1異常判定値T1や第2異常判定値T2を小さくしてもよい。このようにすれば、異常の発生の可能性をより早期に判定することができて、起こり得る異常に対して極力早期に対処することが可能となる。
【0053】
・第1異常判定値T1、第2異常判定値T2、所定温度ΔT、高温閾値T3、及びタイヤ内圧力についての許容値に関する具体的数値はあくまで例示であり、それらの数値は上記実施形態で記載した数値に限定されることなく適宜変更してもよい。
【0054】
・受信機ユニット4が、各車輪センサユニット3から受信したタイヤ6に関する検出情報(タイヤ内圧力、タイヤ内温度、タイヤ表面温度)に基づいて車輪2の状態(タイヤ6のバーストの可能性、ブレーキ機構7の引きずり現象の可能性、タイヤ6の熱劣化の可能性等)を判定するようにしてもよい。この場合、各車輪センサユニット3は、対応するタイヤ6の状態を検出して、タイヤ6に関する検出情報を無線送信するだけでよい。
【0055】
以下に、上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
[A] ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪に設けられる車輪センサユニットにおいて、
前記タイヤの表面温度を検出する第1温度センサと、
前記タイヤ内の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とに基づいて車輪の状態を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された車輪の状態を示すデータを含む状態データ信号を無線送信する送信部と
を備える車輪センサユニット。
【0056】
[B] 上記A項に記載の車輪センサユニットと、前記車輪を有する車両の車体に設置されるとともに前記車輪センサユニットから送信される前記状態データ信号を受信する受信機ユニットとを備える車輪状態監視装置。
【0057】
[C] 前記判定部は、前記タイヤ表面温度が所定の高温閾値以上になっている時間を積算し、その積算時間が劣化判定値以上になった場合に、タイヤが熱劣化したと判定する、請求項1〜9の何れか一項に記載の車輪状態監視装置。
【符号の説明】
【0058】
T1…第1異常判定値,T2…第2異常判定値、ΔT…所定温度、T3…高温閾値、1…車両、2…車輪、3…車輪センサユニット、5…ホイール部、6…タイヤ、7…ブレーキ機構、11…圧力センサ、12…第1温度センサ、13…第2温度センサ、14…センサユニットコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール部と同ホイール部に装着されるタイヤとを含む車輪の状態を監視する車輪状態監視装置において、
前記タイヤの表面温度を検出する第1温度センサと、
前記タイヤ内の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とに基づいて車輪の状態を判定する判定部と
を備える車輪状態監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度との関係に基づき、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定する、請求項1に記載の車輪状態監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1温度センサによって検出されたタイヤ表面温度と前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度とのうち、いずれが先に所定の異常判定値にまで上昇するか否かに基づき、異常の発生の可能性がタイヤにあるのかタイヤ以外にあるのかを判定する、請求項1又は請求項2に記載の車輪状態監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記タイヤ表面温度が前記タイヤ内温度よりも先に第1異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤにあると判定し、前記タイヤ内温度が前記タイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇した場合には、異常の発生の可能性がタイヤ以外にあると判定する、請求項3に記載の車輪状態監視装置。
【請求項5】
前記タイヤ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記判定部は、前記圧力センサによって検出されたタイヤ内圧力が低いほど、前記異常判定値を小さくする、請求項3又は4に記載の車輪状態監視装置。
【請求項6】
前記タイヤ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記判定部は、前記圧力センサによって検出されたタイヤ内圧力が所定の許容値を下回っている状況下で、前記タイヤ表面温度が前記タイヤ内温度よりも先に第1異常判定値にまで上昇した場合に、前記タイヤにバーストが発生する可能性があると判定する、請求項1〜5の何れか一項に記載の車輪状態監視装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記タイヤ表面温度が前記第1異常判定値を越えた状態で、前記タイヤ内温度が同第1異常判定値にまで上昇した場合に、前記バーストの発生の可能性が高くなったと判定する、請求項6に記載の車輪状態監視装置。
【請求項8】
前記車輪は前記ホイール部の近傍に配置されたブレーキ機構を含み、
前記判定部は、前記タイヤ内温度が前記タイヤ表面温度よりも先に第2異常判定値にまで上昇した場合には、前記ブレーキ機構に引きずり現象が生じている可能性があると判定する、請求項1〜7の何れか一項に記載の車輪状態監視装置。
【請求項9】
前記第2異常判定値は、車両停止時に前記第2温度センサによって検出されたタイヤ内温度よりも所定温度高い値に設定される、請求項8に記載の車輪状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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