説明

軌道レールに埋栓を備えた直動案内ユニット

【課題】 この直動案内ユニットは,埋栓を軌道レールの取付け用孔に容易に簡単に装着でき,埋栓をスライダの摺動に対して耐久性に富んだ硬質材で作製する。
【解決手段】 軌道レール1の取付け用孔17に装着した埋栓7は,円形平板でなる天板部21と天板部21から垂下する円筒状のスカート部22を有し,その外周部24は,取付け用孔17に対してシメシロの無いサイズの外径に形成された蓋部26,シメシロを有して嵌合固着する嵌合部27,嵌合部27に続く先端部となってとなって取付け用孔17へ埋栓7を導入案内するため導入部28,及び蓋部26と嵌合部27との間に位置して嵌合部27の嵌合度合を適正に調節する凹周溝部30から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,工作機械,半導体製造装置等の各種装置に使用される直動案内ユニットにおける軌道レールの取付け用孔に組み込まれて使用される埋栓を備えた直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,スライダと共に直動案内ユニットを構成する軌道レールの上面に開口している取付け孔を塞ぐため取付け孔に適用される埋栓が知られている。該埋栓は,軌道レールの上面側から取付け孔内に圧入される嵌合部と,前記嵌合部から下方に延び且つ前記嵌合部の前記取付け孔内への圧入前に前記取付け孔内に導入される導入部とから成る筒状板材から形成されている。前記導入部は,前記埋栓の前記取付け孔内における姿勢を安定させる機能を有している。前記嵌合部には,嵌合圧入代よりも大きな深さの逃げ溝に形成されており,前記導入部が前記取付け孔の孔径よりも小さい円径でなる外周面に形成されている。また,埋栓は,円形板状でなり,外周に断面矩形状の複数条の凹溝が形成され,アルミニウム,黄銅等の金属製の軟質材で作製されており,軌道レールの取付け孔に確実に装着できるものであり,軌道レールの軌道溝への寸法影響も小さいものであった(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
また,家具等の取付け用ボルトを隠蔽する隠蔽キャップが知られている。該隠蔽キャップは,隠蔽板の周端部に分割して湾曲状に突設させた舌片に形成されている(例えば,特許文献2参照)。
【0004】
また,リニアガイド装置に組み込まれるレール取付穴用キャップが知られている。該リニアガイド装置のレール取付穴用キャップは,軸方向のスリットを備えた円筒胴部と,その胴部の下部から外周に突出する突部と,部分的に厚さを薄くしたキャップ蓋部とを備えたキャップ本体と,前記キャップ本体の蓋部を覆うとともに前記キャップ本体より大きい外径を有する弾性被覆部材とから構成されている(例えば,特許文献3参照)。
【0005】
また,直動案内軸受装置に組み込まれたキャップが知られている。該キャップは,短円柱部の外周部に周方向に略等間隔で複数箇所設けられたR突起状の締め代部とを備えており,締め代部はキャップの上面より軸方向下方に配置されたものになっている(例えば,特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−48138号公報
【特許文献2】実開昭55−173719号公報
【特許文献3】実公平8−7138号公報
【特許文献4】特開2002−227838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に開示された直動案内ユニット用埋栓は,本出願人に係る発明であるが,アルミニウム,黄銅等の軟質金属材で作製され,従来の合成樹脂製の埋栓よりも軌道レールに固着力が大きく装着でき,軌道レールの軌道溝を変形させる影響が小さいものであった。しかしながら,近年,さらに使用条件が過酷な環境になる工作機械で発生する切削粉が飛散する環境下でも耐久性のある埋栓が求められるようになっている。
【0007】
従来,工作機械等の機械装置では,テレスコカバーやジャバラで摺動部を覆うという防塵対策が施されているものがあるが,近年,工作機械等の機械装置の加工エリアの拡大,コンパクト化,コストダウン等から直動案内ユニットの軌道レールが外部に露出して剥き出しで使用される機械が増加している。機械装置の切削粉が軌道レール上の埋栓に降りかかる使用環境では,従来の合成樹脂製埋栓及びアルミ製埋栓では,埋栓自体,直動案内ユニットにおけるスライダのエンドシールのリップ部が摩耗する等の耐久性に問題が生じている。そこで,埋栓を鉄製等の硬質の材料で作られることが求められるようになっており,硬質の材料で埋栓を如何に作製し,如何なる形状に形成するかの課題があった。
【0008】
近年,機械装置に組み込まれる直動案内ユニットは,使用条件がさらに過酷な環境になる切削粉が飛散する環境下に設置され,その時に,直動案内ユニットにおける軌道レールに形成された取付け用孔を塞ぐための埋栓に対して,従来のアルミニウム製の埋栓よりも傷が付きにくく,摩耗しない耐久性があるものが求められるようになった。機械装置を駆動して直動案内ユニットにおけるスライダを軌道レール上で摺動させると時に,スライダの摺動によって軌道レールの取付け用孔に嵌め込んだ埋栓に傷が付いた場合に,軌道レールの長手方向に沿って摺動自在なスライダのエンドシールは,埋栓上面を摺接するので,シールリップが早期に摩耗してシール機能が損なわれる結果になっている。また,埋栓が摩耗すれば,エンドシールとの間に隙間ができてシール機能を発揮することができず,さらに切粉等がその隙間に入り込んでシールリップが破損する等の事故が発生すると,エンドシールによるスライダのシール機能が損なわれことになる。
【0009】
そこで,埋栓を鉄等の材料で作製することが求められるようになっている。埋栓をステンレス鋼等の鉄材で形成した場合に,アルミニウム製埋栓,又は合成樹脂製埋栓の形状をそのままにして鉄製に変更しただけでは,取付け孔との嵌合のシメシロにより軌道レールの外側面に位置する軌道溝又は軌道面(以下,総称して軌道面という)が大きく変形してしまう等の軌道レールへの悪影響が発生してしまう。従って,埋栓を鉄材で作製するにあたって軌道レールの軌道面への影響が小さく取付け孔にしっかりと固着できるものが要求されることになる。そのために,鉄製の埋栓は,取付け孔径とのシメシロに対応できるように嵌合部が柔軟に変化できるものであって,且つ適切に固着可能なものが要求される。また,埋栓を軌道レールの取付け用孔に嵌合するにあたって余計な手間をかけることなく,簡単に軌道レールに装着が完了できるものが求められている。
【0010】
しかしながら,上記特許文献1に開示された直動案内ユニット用埋栓は,近年,使用条件がさらに過酷な環境になる切削粉が飛散する環境下では,摩耗する状況となり,耐久性が充分に満足できるものでなかった。また,上記特許文献2に開示された隠蔽キャップは,組立家具に使用されるものであり,直動案内ユニットには防塵,摺動特性に対して十分な機能を発揮できず,不向きなものである。更に,上記特許文献3に開示されたキャップは,弾性被覆部材であって,キャップ本体に固着しなければならないもので,複雑な構成で製作しにくいものであり,高コストになってしまうという問題があった。また,上記特許文献4に開示されたキャップは,R突起状の締め代部を形成しなければならないものであり,合成樹脂製のものになっており,過酷な使用環境での耐久性等に満足できないものであった。
【0011】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,主として,工作機械等の機械装置に使用されるローラやボールの転動体が装填される直動案内ユニットにおいて,埋栓が軌道レールの取付け用孔に容易に安定して装着でき,鉄系,ステンレス鋼,黄銅,セラミックス等の硬質材で構成された切削屑で損傷しない耐久性に富んだ埋栓を備えており,埋栓の天板部と軌道レールとの上面が同一面に形成されてスライダのエンドシールのリップ部を損傷させることがない埋栓を備えた直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は,長手方向に沿って軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールに摺動自在なスライダから成り,前記軌道レールの上面に開口する取付け用孔を塞ぐための埋栓を備えている直動案内ユニットにおいて,
前記埋栓は,硬質材で形成され,前記軌道レールの上面と実質的に同一面になる円形平板でなる天板部と前記天板部に一体構造で前記天板部から垂下する円筒状のスカート部とを有し,前記埋栓の外周部は,前記取付け用孔の上部を塞ぐように前記取付け用孔に対してシメシロの無いサイズの外径に形成された蓋部,前記取付け用孔に対してシメシロを有して前記取付け用孔に嵌合して前記軌道レールに固着される嵌合部,前記嵌合部に続く先端部となって前記取付け用孔へ前記埋栓を導入案内するため導入部,及び前記蓋部と前記嵌合部との間に位置して前記外周部を断面薄肉に形成して前記嵌合部の嵌合度合を適正に調節する凹周溝部から形成されていることを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0013】
この直動案内ユニットにおいて,前記埋栓の前記天板部は,前記埋栓の総高さの略1/4の肉厚に形成されている。また,前記嵌合部は,前記埋栓の総高さの略1/6の高さに形成されている。
【0014】
この直動案内ユニットにおいて,前記埋栓の外周部を構成する前記スカート部は,前記天板部の肉厚より薄い肉厚に形成されている。
【0015】
この直動案内ユニットにおいて,前記埋栓の前記凹周溝部は,前記蓋部側に対して前記嵌合部側が大きな逃げ角になるR形状に形成されている。更に,前記埋栓は,前記凹周溝部の周壁面と前記取付け用孔の周壁面との間には,塵埃,取付け時に発生したバリ等の異物を堆積するため,前記嵌合部側が前記R部で空所となる溜め部が形成されている。
【0016】
この直動案内ユニットにおいて,前記埋栓を構成する硬質材は,鉄,ステンレス鋼,黄銅又はセラミックスから選択される材料で形成されている。
【0017】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記埋栓の前記導入部は,前記嵌合部から縮径のテーパ部となって延びる自由端,又は前記嵌合部より縮径の段部となって延びる自由端である。
【発明の効果】
【0018】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,埋栓の外周部における蓋部は,該蓋部と軌道レールの取付け用孔の周面との間にほとんど隙間の無い状態に嵌合し,軌道レールの上面に発生して散乱する切削屑,塵等の異物がスライダのエンドシールのリップ部で軌道レールの上面から排除され,異物が取付け用孔に侵入することが防止される。また,埋栓の外周部における嵌合部は,軌道レールの取付け用孔に締まり嵌め状態に固着され,埋栓が軌道レールの取付け用孔に安定して固定される。また,埋栓の外周部における導入部は,取付け孔内へ埋栓の姿勢を安定させた状態で挿入することができ,埋栓を軌道レールの取付け用孔へ容易に装着し易くする機能を有している。埋栓は,特に,上記のように,例えば,工作機械等で発生する切削屑で損傷することがない硬質材で形成されているが,上記のような形状でサイズ設定条件で形成されているので,埋栓を軌道レールの取付け用孔に装着したとしても,軌道レールの軌道面への変形等の悪影響を及ぼすことなく,容易に安定して取付け用孔に装着される。また,埋栓の外周部における凹周溝部は,蓋部と取付け用孔との間から塵埃等の細かい異物がたとえ侵入したとしても,取付け用孔の周壁面と凹周溝部の周壁面との間に形成される空所の溜め部に堆積され,スライダの摺動を阻害することがなく,常にスムーズな摺動運動を発揮させることができ,また,取付け用孔に埋栓を装着する際に発生したバリ等の異物も上記空所に堆積されることになり,軌道レールの取付け用孔に装着されて軌道レールの軌道面の変形等の悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明による直動案内ユニットに設けた埋栓は,特に,本出願人に係る特開2002−48138号公報に開示された埋栓の耐久性等の特性を改良したものである。以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットにおける軌道レールの取付け用孔に装着された埋栓の実施例を説明する。
【0020】
この直動案内ユニットは,図1,図2及び図3に示すように,転動体としてローラ5が使用されるタイプに適用されて最適なものであり,長手方向の両側面37に沿って延びる一対の軌道面11(第1軌道面)をそれぞれ備えた長尺な軌道レール1,軌道レール1の長手方向に摺動自在なスライダ2,及び軌道レール1とスライダ2との間に形成された軌道路20及びスライダ2に設けられたリターン路10と方向転換路(図示せず)から成る循環路を転走するローラ5を有している。スライダ2は,軌道レール1の軌道面11に対向して軌道面12(第2軌道面)が形成されたケーシング3,及びケーシング3の両端面に配設されて上下の軌道路20と上下のリターン路10とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ4を有している。この直動案内ユニットは,軌道レール1の軌道面11とケーシング3の軌道面12との間には負荷軌道路即ち軌道路20が形成されている。軌道路20は,ケーシング3の袖部41に二条列ずつ4個形成されている。ローラ5は,軌道路20において,ケーシング3とエンドキャップ4に対して取り付けられ且つ軌道レール1の逃溝43に配設された保持板13によって,保持されてそれぞれ転動する。この直動案内ユニットは,図2に示すように,軌道面11と軌道面12と間に形成された軌道路20をローラ5が転走し,上側の軌道路20のローラ5が下側のリターン路10へ循環し,下側の軌道路20のローラ5が上側のリターン路10へ循環して,スライダ2が軌道レール1に沿って相対摺動自在になっている。この直動案内ユニットは,ケーシング3とエンドキャップ4との下面に下面シール14が配置され,エンドキャップ4の端面にリップ部16を備えたエンドシール15が接して配置され,シール構造に形成されている。また,軌道レール1には,各種の機器,ワーク,取付体,機台等のベース23に軌道レール1を固定するため,取付け用孔17が形成されている。ケーシング3には,各種の機器,ワーク,取付体等の物体を取り付けため取付け用ねじ孔18が設けられている。
【0021】
また,エンドキャップ4は,図1に示すように,ケーシング3に対して位置決めされ,エンドキャップ4の取付孔に通じてボルト40でケーシング3に固定されている。エンドキャップ4は,潤滑剤を給油口42及び給油溝(図示せず)を備えており,給油口42及び給油溝を通じて軌道路20,リターン路10及び方向転換路から成る循環路に潤滑剤が供給され,端面(又は側面)の給油口42にグリースニップル39が取り付けられている。パイプ6は,ケーシング3の両側に位置するエンドキャップ4によってケーシング3の嵌挿孔9に嵌挿して固定されるように構成されており,それによって,リターン路10と方向転換路との断面矩形状の循環路が段差無くスムーズに接続され,ローラ5は方向転換路からリターン路10ヘ,及びリターン路10から方向転換路へスムーズに循環することができる。パイプ6は,例えば,ケーシング3の嵌挿孔9に手動等でスムーズに嵌挿され,ケーシング3にエンドキャップ4を固定することによってスライダ2に固定される。この直動案内ユニットは,スライダ2を構成するケーシング3の嵌挿孔9に長手状でなるパイプ6を挿通し,リターン路10は,パイプ6の内部に形成された断面矩形状の通し孔によって形成される。パイプ6で形成されるリターン路10は,ローラ5がスムーズに通過できるように,円筒ころの軸心で縦断面した外形の矩形サイズより僅かに大きな矩形サイズに形成されている。
【0022】
この直動案内ユニットは,特に,軌道レール1の取付け用孔17に固着される埋栓7に特徴を有している。埋栓7は,硬質材である鉄,ステンレス鋼,黄銅又はセラミックスで構成され,軌道レール1の取付け用孔17への固着力も大きく,軌道溝又は軌道面(以下,軌道面で総称する)を変形させる影響も小さいものであり,しかも作業性がよい構造に構成されている。一般に,直動案内ユニットは,工作機械等の加工機械の利用環境に適用される場合に,これらの作業環境では切削屑等が発生する作業環境であり,そのような環境では転動体がローラ5でなるタイプが多く使用されている。この直動案内ユニットでは,軌道レール1の取付け用孔17に装着された埋栓7が切削屑等の異物で損傷等を受けずに,スライダ2が軌道レール1上を常に良好な摺動特性を発揮できるように硬質材で構成したものである。従って,埋栓7は,上記のような直動案内ユニットにおける軌道レール1に適用して好適なものとして形成されている。
【0023】
この直動案内ユニットでは,軌道レール1を取付け相手部材であるベッド,機台等のベース23に固着するために,軌道レール1の上面19には,所定間隔で取付け用孔17が形成されている。相手部材のベース23に軌道レール1を固着するには,取付け用孔17に取付け用ボルト8を挿入し,ベース23に形成されたねじ穴(ねじ孔)38に取付け用ボルト8を螺入して軌道レール1をベース23に固着している。取付け用ボルト8は,一般的に六角穴44が頭部36に形成された六角穴付きボルトが使用され,軌道レール1の取付け用孔17は,ボルト8の頭部36を収容するザグリ穴34とボルト8のねじ部を貫通させる通し孔35とに形成されている。取付け用孔17のザグリ穴34の深さは,ボルト8の頭部36上に埋栓7を収容できるようにボルト8の頭部36の長さよりも深く形成されている。埋栓7は,図3に示すように,軌道レール1が取付け用ボルト8によってベース23に固着された後に,埋栓7がザグリ穴34が形成された取付け用孔17の上部25に嵌入されて埋栓7の上面32が軌道レール1の上面19と面一に嵌着されるものになっている。埋栓7は,硬質材で作製されているが,取付け用孔17に嵌着された状態で,埋栓7が取付け用孔17を変形させることなく,軌道レール1の軌道面11間の所定寸法Pkの変化がほとんど発生しない小さいものになっている。
【0024】
埋栓7は,図4の半分を断面した正面図と図8の下面図に示すように,上面32が平らに形成された円形平板でなる天板部21と,天板部21と一体になって天板部21の外縁33から垂下する円筒状のスカート部22とから形成されている。スカート部22の長さは,短いものであり,埋栓7の総高さΗが小さいものになっている。天板部21は,全体的に薄肉に形成され,埋栓7の外周部24は,天板部21の外周部分であって取付け用孔17の上部を塞ぐように取付け用孔17とはシメシロの無い外径D1でなる蓋部26,蓋部26に続き断面で薄肉部を形成するための凹周溝部30,凹周溝部30に続き取付け用孔17にシメシロを有して嵌合して固着するための嵌合部27,及び嵌合部27に続き先端部となって取付け用孔17へ導入案内するための導入部28から構成されている。埋栓7の導入部28は,嵌合部27から逃げ角θ1,好ましくは略15°で縮径のテーパ部となって延びる自由端に形成されている。また,凹周溝部30は,下方の嵌合部27が取付け用孔17との嵌合において嵌合度合を適正にするために蓋部26と嵌合部27との間を断面薄肉に形成されたものになっている。
【0025】
埋栓7の外周部24における凹周溝部30は,断面薄肉に形成されているので,鉄製の場合において,取付け孔径とのシメシロに対応して嵌合部27が軌道レール1の軌道面11への影響がないように柔軟に変化追従して取付け孔17に適切に固着できるようになっている。また,埋栓7は,凹周溝部30の周壁面と取付け用孔17の周壁面との間には,塵埃,埋栓7の取付け用孔17への取付け時に発生したバリ等の異物を堆積するため,嵌合部27側がR部46,例えば,0.2Rになった空所になった溜め部45が形成されている。埋栓7の材質的構成は,直動案内ユニットの使用条件にもよるが,軌道レール1の上面19と表面粗さ,硬度等が同様な状態に構成できるものであれば,好ましく,上記のような硬質材が選定できる。
【0026】
埋栓7は,全体的に断面肉厚が薄く形成されてるものであり,埋栓7の裏面側即ち内部が凹部31に形成されている。また,天板部21は,埋栓7の総高さのおおきくとも1/4の肉厚,好ましくは略1/4の肉厚に形成されていることが好ましい。更に,嵌合部27は,埋栓7の総高さのおおきくとも1/6の高さに形成されており,好ましくは略1/6の肉厚に形成されている。また,スカート部22は,天板部21の肉厚より薄い肉厚に形成されている。
【0027】
埋栓7は,サイズ上での設定条件を具体的に記載すると,例えば,次のとおりである。 蓋部外径D1,嵌合部外径D,導入部最小径D2,総高さΗ,蓋部高さ(長さ)Η4,嵌合部高さ(長さ)Η1,凹周溝部高さ(幅)Η2,導入部高さ(長さ)Η3,スカート部肉厚tb,天板部内厚t,及び取付け用孔17のザグリ穴内径df(図3)とすると,例えば,次の関係を有している。
埋栓7は,径に関しては,次の関係に形成されている。
D1≦df,D>df,D2<df
埋栓7は,高さに関しては,次の関係に形成されている。
t≦1/4Η,Η1≦1/6Η,tb≦t,Η2≒1/4Η,Η3≒1/3Η,
Η4≒t
また,埋栓7の具体的なサイズに関しては,次の関係に形成されている。
D1=略φ20mm,Η=3,2mm,t=0.7mm
【0028】
また,埋栓7について, 凹周溝部30は,蓋部26側から緩いテーパ状の凹溝に続きR部46に切り上がった凹溝で嵌合部27に繋がった形状に形成されている。即ち,凹周溝部27は,蓋部26側の逃げ角θ2,好ましくは,略15°に対して嵌合部27側が大きな逃げ角となるR部46になっており,更に,埋栓7は,凹周溝部30の周壁面と取付け用孔17の周壁面との間には,塵埃,取付け時に発生したバリ等の異物を堆積するため,嵌合部27側がR部46で空所となる溜め部45が形成されている。このことによって,埋栓7を軌道レール1の取付け用孔17に嵌合した時に,凹周溝部30によって嵌合部27の変形のしやすさ,摺接屑の切り上がり等に対応できるものになっている。鉄等の硬質材から成る埋栓7は,上述の構成により,軌道レール1の取付け用孔17に嵌着された状態で,軌道レール1の軌道面11への影響も小さく,取付け孔径とのシメシロに対応できるように嵌合部27が柔軟に変化できるものになっており,且つ取付け用孔17に安定して適正に固着ができるものになっている。更に,埋栓7は,取付け孔17に嵌合するだけでよく,余計な手間をかけることなく,取付け用孔17に簡単に装着ができるものになっている。
【0029】
また,直動案内ユニットは,防錆が要請される使用環境ではステンレス鋼で作製することができる。従って,ステンンス鋼製の軌道レール1に対応して,埋栓7もステンレス鋼製で作製することができるものである。また,近年の直動案内ユニットは,半導体製造装置等では,軌道レール1がセラミック製のものになっており,セラミック製の軌道レール1に対して,埋栓7をセラミックスで作製することができるものである。また,通常の使用環境にあっては,埋栓7を黄銅製で作製することもできるものである。
【0030】
次に,図6及び図8を参照して,この発明による直動案内ユニットにおける軌道レール1の取付け用孔17に装着される埋栓7Aの別の実施例を説明する。埋栓7Aは,導入部29がストレートに延びる段部に形成されている。埋栓7Aのその他の構成は,上記実施例と同じものに形成されている。埋栓7Aの導入部29を,ストレートに延びる段部に形成したことによって,軌道レール1の取付け用孔17に埋栓7Aの導入部29を挿入すると,埋栓7Aは軌道レール1の上面19と平行に位置して埋栓7Aを取付け用孔17に嵌合し易いものにしている。この場合には,埋栓7Aの導入部29の径D3は,D3<dfに形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明による直動案内ユニットは,軌道レールにおける取付け用孔に埋栓が装着されており,切削屑等が発生する作業環境になる工作機械等の各種装置における摺動部に組み込んで利用されて好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明による直動案内ユニットを示し,断面部分を含んでいる斜視図である。
【図2】図1の直動案内ユニットにおけるA−A平面で断面した状態を示す横断面図である。
【図3】図1の軌道レールをベースに取り付け,軌道レールの取付け用孔に埋栓を嵌着させた状態を示す横断面図である。
【図4】図3に示す埋栓の一実施例を示す断面部分を含んでいる正面図である。
【図5】図4の埋栓の要部を示す拡大断面図である。
【図6】図3に示す埋栓の別の実施例を示す断面部分を含んでいる正面図である。
【図7】図6の埋栓の要部を示す拡大断面図である。
【図8】図4又は図6の埋栓を示す下面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 軌道レール
2 スライダ
7,7A 埋栓
11,12 軌道面
17 取付け用孔
19 上面
21 天板部
22 スカート部
24 外周部
25 上部
26 蓋部
27 嵌合部
28,29 導入部
30 凹周溝部
32 上面
45 溜め部
46 R部
D 嵌合部外径
D1 蓋部外径
D2 導入部最小径
H 総高さ
H1 嵌合部高さ
H4 蓋部高さ
t 天板部肉厚
tb スカート部肉厚
θ2 逃げ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールに摺動自在なスライダから成り,前記軌道レールの上面に開口する取付け用孔を塞ぐための埋栓を備えている直動案内ユニットにおいて,
前記埋栓は,硬質材で形成され,前記軌道レールの上面と実質的に同一面になる円形平板でなる天板部と前記天板部に一体構造で前記天板部から垂下する円筒状のスカート部とを有し,前記埋栓の外周部は,前記取付け用孔の上部を塞ぐように前記取付け用孔に対してシメシロの無いサイズの外径に形成された蓋部,前記取付け用孔に対してシメシロを有して前記取付け用孔に嵌合して前記軌道レールに固着される嵌合部,前記嵌合部に続く先端部となって前記取付け用孔へ前記埋栓を導入案内するため導入部,及び前記蓋部と前記嵌合部との間に位置して前記外周部を断面薄肉に形成して前記嵌合部の嵌合度合を適正に調節する凹周溝部から形成されていることを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記埋栓の前記天板部は,前記埋栓の総高さの略1/4の肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記嵌合部は,前記埋栓の総高さの略1/6の高さに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記埋栓の前記外周部を構成する前記スカート部は,前記天板部の肉厚より薄い肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記凹周溝部は,前記蓋部側に対して前記嵌合部側が大きな逃げ角になるR形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記凹周溝部の周壁面と前記取付け用孔の周壁面との間には,塵埃,取付け時に発生したバリ等の異物を堆積するため,前記嵌合部側が前記R形状で空所となる溜め部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記埋栓を構成する硬質材は,鉄,ステンレス鋼,黄銅又はセラミックスから選択される材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記導入部は,前記嵌合部から縮径のテーパ部となって延びる自由端,又は前記嵌合部より縮径の段部となって延びる自由端であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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