説明

軌道レールカバー及び運動案内装置

【課題】簡易な構成によって軌道レールの上面に対する取付け状態を安定させることが可能な軌道レールカバー及び運動案内装置を提供することを目的とする。
【解決手段】軌道レール11と移動ブロック10を有する運動案内装置の軌道レール11の上面に取り付けられる軌道レールカバー1であって、軌道レール11の上面に固定され、軌道レール11の長手方向に延びる板状のカバー台2と、カバー台2に嵌合するカバー本体3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動案内装置の軌道レールに取り付けられる軌道レールカバー、及び運動案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基台に取り付けられた軌道レールと、複数の転動体を介して軌道レールに沿って移動する移動ブロックとを備える運動案内装置が知られている。このような運動案内装置では、軌道レール上面に付着した粉塵等が移動ブロックの移動に伴って移動ブロック内部に侵入し、移動ブロックのガタつき、装置の損傷等を招く虞がある。そこで、この問題を防止すべく、軌道レール上面を、表面が平滑な軌道レールカバーによって覆い、移動ブロックに設けられたシール部材を軌道レールカバー表面と摺擦させることで、粉塵等が移動ブロック内部に侵入することを防止する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の軌道レールカバーには次の課題がある。特許文献1には、レール取付け穴に係合部材を圧入し、係合部材の鍔部に軌道レールカバーを取り付ける構成が開示されている。しかしこの場合、並んで設けられているレール取付け穴の位置精度が低いと、軌道レールカバーが係合する係合部材がずれて配列されることになるので、軌道レールカバーの取付け状態が不安定になる。よって、軌道レールに対してレール取付け穴を高精度に設ける必要がある。また、係合部材はレール取付け穴に圧入されているに過ぎないので、振動や衝撃等によって係合部材がレール取付け穴から外れ、軌道レールカバーの取り付け状態が不安定になる可能性がある。
【0005】
このように従来の軌道レールカバーは、軌道レールへの取付け状態が不安定になる虞がある。また、軌道レールへの取付け状態を安定させようとすると、高精度な加工が必要になるので、製造コストの増大を招くことになる。そこで本発明は、簡易な構成によって軌道レールの上面に対する取付け状態を安定させることが可能な軌道レールカバー及び運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
軌道レールと、前記軌道レールに対して複数の転動体を介して往復移動自在に組み付けられる移動ブロックとを有する運動案内装置の前記軌道レールの上面に取り付けられる軌道レールカバーであって、
前記軌道レールの上面に固定され、前記軌道レールの長手方向に延びる板状のカバー台と、
前記カバー台に嵌合するカバー本体と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、
軌道レールと、
前記軌道レールに対して複数の転動体を介して往復移動自在に組み付けられる移動ブロ
ックと、
上記に記載の軌道レールカバーと、
を有することを特徴とする運動案内装置。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成によって軌道レールの上面に対する取付け状態を安定させることが可能な軌道レールカバー及び運動案内装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態における運動案内装置の概略構成図。
【図2】第1実施形態に係る軌道レールカバーの概略断面図。
【図3】第1実施形態に係る軌道レールカバーの概略断面図。
【図4】第1実施形態に係る軌道レールカバーの取付け工程を説明するための図。
【図5】第2実施形態に係る軌道レールカバーの概略断面図。
【図6】本発明における軌道レールの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
<第1実施形態>
(1−1:運動案内装置の概略構成図)
図1を参照して、本実施形態における運動案内装置について説明する。図1は、本実施形態に係る運動案内装置の概略構成図である。運動案内装置は、直線状に延びる軌道レール11と、多数のローラ12(転動体)を介して軌道レール11に組み付けられた移動ブロック10とから構成されている。この移動ブロック10に対して各種の搬送対象物を搭載することで、かかる搬送対象物を軌道レール11に沿って往復移動自在に案内することができる。
【0012】
また、軌道レール11は基台(不図示)に対してボルトによって固定されており、軌道レール11には、軌道レール11の上面から基台方向にレール取付け穴が穿孔されていると共に、軌道レール11の上面は後述する軌道レールカバー1によって覆われている。また、軌道レール11は、断面略矩形状の長尺体として形成されており、軌道レール11の両側面には、その長手方向に沿って2条ずつのローラ転走面11aが形成されており、軌道レール11全体では計4条のローラ転走面11aが設けられている。
【0013】
一方で移動ブロック10には、ローラ転走面11aと対向して移動方向に延びる負荷ローラ転走路10aが左右にそれぞれ2条ずつ設けられており、この負荷ローラ転走路10aと平行に延びるローラ戻し路が形成されている。さらに移動ブロック10の移動方向両端に設けられているエンドプレート13には方向転換路(不図示)が設けられている。これにより、負荷ローラ転走路10a、方向転換路、ローラ戻し路によって、ローラ12の無限循環路が形成されている。そして無限循環路内において、ローラ12がローラリテーナ12aによって等間隔に複数保持されている。
【0014】
かかる構成によれば、軌道レール11に対して移動ブロック10が往復自在に移動する際に、無限循環路内をローラ12が移動することで、軌道レール11上を移動ブロック10がスムーズに移動することができる。なお、ここでは転動体としてローラ12を用いて
いるが、この他に転動体としてボールを用いることも可能である。
【0015】
また、エンドプレート13の端面にはエンドシール14が設けられている。エンドシール14は、軌道レールカバー1の表面と摺擦するように設けられており、軌道レールカバー1の表面に付着した粉塵等が移動ブロック10内部に侵入しない様に、移動ブロック10の移動に伴って軌道レールカバー1の表面を清掃する役割を担っている。
【0016】
(1−2:軌道レールカバーの概略構成)
図2、図3を参照して、本実施形態に係る軌道レールカバー1について説明する。図2、図3は、本実施形態に係る軌道レールカバー1の概略断面図である。軌道レールカバー1は、軌道レール11の上面に固定され、軌道レール11の長手方向に延びる板状のカバー台2と、カバー台2に嵌合するカバー本体3とを有している。
【0017】
カバー台2は、軌道レール11の上面に皿ボルトによって直接固定されており、PP(ポリプロピレン)、ABS、又はPVC等の樹脂を押し出し成形することで形成される。また、カバー台2の幅方向(長手方向と直交する方向)の端縁には、カバー本体3と嵌合するための凸部(嵌合部)が形成されている。なお、ここでは長手方向の寸法が約5000mm、厚みが2〜3mmのものを用いているが、軌道レール11の長さ、又は所望する強度に応じてカバー台2の長さ、厚みを適宜変更することが可能である。
【0018】
カバー本体3は、樹脂又は金属のいずれかの材料によって形成することができる。樹脂によって形成する場合は、PP(ポリプロピレン)、ABS、及びPVC等の樹脂を使用し、金属によって形成する場合は、アルミ等の材料を使用することができる。また、カバー本体3の幅方向の端縁には、カバー台2と嵌合するためのコの字状の嵌合部が形成されている。この嵌合部が、上述したカバー台2の嵌合部と嵌合することにより、カバー本体3をカバー台2に対して取り付けることができる。
【0019】
カバー台2、カバー本体3ともに幅方向の寸法は、軌道レール11の上面をほぼ全て覆う程度の寸法であればよい。これによれば、軌道レール11の上面に形成されているレール取付け穴、及びカバー台2を取付けるためにカバー台2に設けられているカバー台取付け穴を塞ぐことができ、軌道レール11の上面を平滑な状態にすることができる。よって、カバー本体3の表面に付着した粉塵等をエンドシール14によって好適に除去することが可能になる。
【0020】
なお、カバー台2とカバー本体3のそれぞれに形成されている嵌合部の形状は上述した形状に限られるものではない。例えば、図3に示すように、カバー台2とカバー本体3の端縁にそれぞれ傾斜状の嵌合部を形成し、これらの嵌合部を互いに嵌合させることでカバー本体3をカバー台2に対して取り付ける構成であってもよい。
【0021】
(1−3:軌道レールカバーの取付け方法)
図4(a)〜図4(c)を参照して、軌道レール11に対する軌道レールカバー1の取付け方法について説明する。図4(a)〜図4(c)は、軌道レールカバー1の取付け工程を説明するための図である。
【0022】
軌道レール11には取付け穴が形成されており、軌道レール11はこの取付け穴において不図示の基台にボルト18によって固定されている。軌道レールカバー1を取付ける際は、タップ加工によって軌道レール11上面にカバー台2の取付け穴11bを穿孔する(図4(a))。その後、皿ボルト15によって、カバー台2を軌道レール11の上面に固定する(図4(b))。
【0023】
カバー台2を軌道レール11の上面に固定した状態では、軌道レール11の取付け穴は塞がれ、カバー台2の取付け穴のみが露出した状態となる。その後、軌道レール11の長手方向からカバー本体3をスライドさせて挿入し、軌道レールカバー1の取付け動作を完了する(図4(c))。なお、取付け動作完了後にカバー本体3が軌道レール11の長手方向に意図せず移動することを防止するために、軌道レール11の両端にストッパを設けてもよい。
【0024】
このように本実施形態に係る軌道レールカバー1によれば、軌道レール11の上面に固定された板状のカバー台2に対してカバー本体3を嵌合させることで軌道レール11の上面を覆う構成であるので、簡易な構成によってカバー本体3の取付け状態を安定させることができる。即ち、従来のようにカバー本体の弾性を利用してカバー本体を取り付けたりするような構成ではないので、簡易な構成によって精度良く軌道レールカバー1を取り付けることができる。
【0025】
<第2実施形態>
(軌道レールカバーの概略構成)
図5を参照して、第2実施形態に係る軌道レールカバーについて説明する。図5は、本実施形態に係る軌道レールカバー1の概略断面図である。本実施形態に係る軌道レールカバー1は、上面に軌道レールカバー取付け用の取付け溝11cが形成されている軌道レール11に対して適用することができる。この取付け溝11cは、軌道レール11に研削加工を施すことで形成可能である。なお、軌道レールカバー1の取付け方法は第1実施形態で説明した方法と同一である。
【0026】
このように本実施形態によれば、カバー本体3をカバー台2と軌道レール11の取付け溝11cとで保持するので、カバー本体3の取り付け状態をさらに安定させることができる。なお、第1実施形態で説明したように、カバー本体3が軌道レール11の長手方向に意図せず移動することを防止するために、軌道レール11の両端にストッパを設けるとよい。
【0027】
<その他の実施形態>
(カバー台の取り付け方法について)
上記第1、第2実施形態では、皿ボルト15によってカバー台2を軌道レール11の上面に取付けているが、カバー台2の取り付け方法はこれに限られるものではない。運動案内装置が使用される環境によっては、シール等によってカバー台2を軌道レール11の上面に接着してもよい。この場合は、カバー台取付け用のタップ加工を軌道レール11に施す必要がないので、軌道レールカバー1の製造工程、製造コストを低減することができる。
【0028】
(軌道レールの形状について)
第1、第2実施形態では、図2〜図5に示す軌道レールを用いて説明を行ったが、本発明に係る軌道レールカバーを適用可能な軌道レールのタイプはこれに限られるものではない。一例として、図6に本発明に係る軌道レールカバーを適用可能な軌道レールの概略断面図を示す。
【0029】
図6(a)、図6(c)に示すように、ローラ又はボールの転走溝が軌道レールの上面付近にある場合は、転走溝に干渉しないように軌道レールカバーを設けるとよい。また、図6(b)のように、1つの軌道レールの上面に2つの軌道レールカバーを設けてもよい。
【0030】
(めねじ付きボルトについて)
第1、第2実施形態では、軌道レール11の上面にカバー台2を固定する際に、タップ加工によって軌道レール11にカバー台取付け用の取付け穴を穿孔している。しかし、カバー台2の取り付け方法はこれに限られるものではない。
【0031】
例えば、軌道レール11を基台に取り付ける際に、「めねじ付きボルト」によって軌道レール11を基台に取付け、その後、「めねじ付きボルト」に穿孔されているネジ穴を利用してカバー台2を軌道レール11に取り付けてもよい。なお、「めねじ付きボルト」とは、頭部にネジ穴が穿孔されているネジ穴付きボルトのことを指す。これによれば、「めねじ付きボルト」のネジ穴を利用してカバー台2を軌道レール11の上面に取り付けるので、軌道レール11の上面にカバー台取付け用のタップ加工を施す必要がない。よって、軌道レールカバー1の製造工程、製造コストの低減を図ることが可能になる。なお、カバー台2とカバー本体3を、長手方向に沿って適宜分割させてもよい。
【0032】
以上、上述した<その他の実施形態>によっても、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0033】
1…軌道レールカバー 2…カバー台 3…カバー本体 10…移動ブロック 11…軌道レール 12…ローラ 13…エンドプレート 14…エンドシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道レールと、前記軌道レールに対して複数の転動体を介して往復移動自在に組み付けられる移動ブロックとを有する運動案内装置の前記軌道レールの上面に取り付けられる軌道レールカバーであって、
前記軌道レールの上面に固定され、前記軌道レールの長手方向に延びる板状のカバー台と、
前記カバー台に嵌合するカバー本体と、
を備えることを特徴とする軌道レールカバー。
【請求項2】
前記カバー台の長手方向に直交する方向である幅方向の端部に、前記カバー本体との嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軌道レールカバー。
【請求項3】
前記カバー本体は、
前記軌道レールの長手方向にスライドさせて前記カバー台に取り付けられるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道レールカバー。
【請求項4】
軌道レールと、
前記軌道レールに対して複数の転動体を介して往復移動自在に組み付けられる移動ブロックと、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の軌道レールカバーと、
を有することを特徴とする運動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107666(P2012−107666A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255724(P2010−255724)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】