説明

軌道走行玩具セット

【課題】軌道上を走行する走行玩具のスピード感と、水中走行時の水しぶきによるダイナミックな変色機能を備えた軌道走行玩具セットを提供する。
【解決手段】走行玩具6と、走行玩具6が走行する軌道を備えた軌道玩具2とからなる軌道走行玩具セット1であって、前記軌道玩具2が、陸上走行路3と、内部に水中走行路41を有する液体貯溜部4と、水の付着により変色し乾燥により変色前の状態に戻る水変色部5とからなり、前記水中走行路41の一端と陸上走行路3は連通してなり、水中走行路41の他端近傍に水変色部5を配置してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行玩具セットに関する。更には、走行玩具と、走行体が走行する軌道玩具とからなる軌道走行玩具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道上を走行する玩具として、可逆熱変色性走行玩具と、水槽を有する軌道玩具とからなる走行玩具セットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記走行玩具セットは、走行玩具が軌道内の水槽の水に浸漬された際、走行玩具が変色する視覚的効果を付与した走行玩具セットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3113852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の走行玩具セットの変色効果を更に追求したものであって、即ち、軌道上を走行する走行玩具のスピード感と、水中走行時の水しぶきによるダイナミックな変色機能を備えた軌道走行玩具セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、走行玩具と、走行玩具が走行する軌道を備えた軌道玩具とからなる玩具セットであって、前記軌道玩具が、陸上走行路と、内部に水中走行路を有する液体貯溜部と、水の付着により変色し乾燥により変色前の状態に戻る水変色部とからなり、前記水中走行路の一端と陸上走行路は連通してなり、水中走行路の他端近傍に水変色部を配置してなる軌道走行玩具セットを要件とする。
更には、前記水変色部が、基材と、基材上に設けた低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層とからなること、前記基材と多孔質層の間に非変色像を設けてなること、前記液体貯溜部の内底面に略U字形の水中走行路を設けてなること、前記陸上走行路の始点に走行玩具の発射装置を設けてなること、前記走行玩具が温度変化により変色する可逆熱変色層を備えてなること、前記液体貯溜部内に氷槽部を設けてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、軌道上を走行する走行玩具のスピード感と、水中走行時の水しぶきによるダイナミックな変色特性を備えた、アクション性と興趣に富む軌道走行玩具セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の軌道走行玩具セットの一実施例の要部断面説明図である。
【図2】水変色部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記軌道玩具は、走行玩具を走行させる陸上走行路と、走行玩具が水中走行するための水中走行路を内部に有する液体貯溜部と、水の付着により変色し乾燥により変色前の状態に戻る水変色部により構成されてなる。尚、前記陸上走行路と液体貯溜部や、液体貯溜部と水変色部はそれぞれ一体であってもよいし、別体であってもよい。
前記水中走行路の一端と陸上走行路は連通しており、走行玩具が水中から飛び出すように構成される水中走行路の他端側近傍に水変色部を配置している。従って、走行玩具は、陸上走行路を走行し、次いで、液体貯溜部の水中走行路を走行して変色部に至る。
前記走行玩具が液体貯溜部内(水中走行路)を走行して水中から出てきた際に水しぶきを生じ、該水しぶきが水変色部に付着することで変色して様相変化を生じる。尚、前記液体貯溜部の内底面を略U字形に形成して走行路とすることにより、少量の液量で多量の水しぶきを発生させることができ、水変色部の様相変化を大きくすることができる。
【0009】
また、前記液体貯溜部内に氷槽部を設けることで貯溜する液体の温度を容易に調整することもできる。その場合、前記水温に応じて貯溜部や走行玩具を熱変色できるような構成とすることが好ましい。
【0010】
前記陸上走行路は自走式玩具を自走させたり、非自走式玩具を手動で走行させることが可能な軌道のみの構成の他、始点に発射装置を設けて非自走式玩具を高速で走行させる構成としたもの、或いは、水平面に対して傾斜させた陸上走行路を重力によって上から下へ走行玩具を走行させる構成としたもの等が適用できる。
前記発射装置としては、バネやゴム等の弾性部材の伸縮を用いたもの等、走行玩具を軌道方向に高速で押し出すことができる構成であればどのようなものであってもよい。
【0011】
前記水変色部は、基材と、基材上に設けた低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層とから構成され、更に、基材と多孔質層の間に水の付着で変色しない非変色像を設けることもできる。
前記水変色部は水中走行路の他端(陸上走行路が連通していない側)に連設、或いは非連設状態に設けられており、走行玩具の速度や大きさに応じて変化する水しぶきの量や飛距離に対応した位置に配置される。
【0012】
前記基材としては、合成紙、耐水紙、プラスチックフィルム、織物、編物、組物、不織布等の布帛、天然又は合成皮革、樹脂成形物、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が用いられ、玩具全体のイメージに応じた形状や材質で構成される。
【0013】
前記基材上に形成される多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、一種又は二種以上を併用して適用される。尚、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料は、屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0014】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2質量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、布帛の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層の塗布量は5〜50g/m、好ましくは、10〜30g/mである。
5g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、50g/mを越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
【0015】
前記多孔質層中には、一般染料や蛍光染料、着色顔料を添加して色変化を多様化することができる。
前記着色顔料は、一般顔料や蛍光顔料の他、雲母、アルミナ、ガラス等の芯物質を酸化チタンで被覆した透明性金属光沢顔料(パール顔料)を例示できる。
また、温度変化により可逆的に色変化する可逆熱変色材料を混在させて、環境温度や付着させる水温により色変化させることができる。
その他、必要に応じて、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、可塑剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0016】
前記基材と多孔質層の間には、非変色像を設けて多孔質層が吸液状態で非変色像が現出する構成とすることもできる。これにより液体付着時の様相変化を更に多彩なものとすることができ、玩具全体のコンセプトをより明瞭にすることが可能となる。
前記多孔質層及び非変色像は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により適宜形成できる。
【0017】
前記軌道玩具を走行する走行玩具としては、球状体やソリ状の他、体車体に回転自在に配設された車輪を備えたものが用いられ、モーターやゼンマイで走行する自走式のものや、手押しによる非自走式が適用できる。
更に、前記走行玩具には、温度変化により変色する可逆熱変色層を設けて熱変色性能(色調変化や様相変化)を付与することもできる。
前記可逆熱変色性能は、可逆熱変色性材料をインキ形態として走行体に直接塗布、印刷したり、可逆熱変色性シール形態のものを貼付したり、樹脂組成物中に可逆熱変色性材料を混練して成形することにより付与できる。
【0018】
前記可逆熱変色性材料としては、可逆熱変色性組成物を含むものが用いられ、前記組成物は電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる反応媒体の三成分を含む組成物が好適に用いられる。具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特開平7−186540号公報に記載されている可逆熱変色性組成物が挙げられる。
また、本出願人が提案した特公平1−29398号公報に記載した如き、温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
更に、本出願人が提案した特公平4−17154号公報に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性組成物も有効である。
【0019】
また、加熱発色型の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案による、電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号公報)を挙げることができる。更には、没食子酸エステル等を適用した系(特開2003−253149号公報)等を応用できる。
【0020】
前記した可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、従来公知の方法で得られるマイクロカプセルに内包して使用することが好ましい。それは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0021】
また、前記可逆熱変色性能を有する部分を保護するために、該可逆熱変色部上に透明性樹脂層を設けることができる。前記透明性樹脂層としては、従来汎用の各種樹脂フィルムを貼付したり、樹脂を含有する液状組成物を塗布することで積層される。
更に、前記透明性樹脂層には、天然雲母、合成雲母、偏平ガラス片、酸化珪素、又は薄片状酸化アルミニウムから選ばれる材料を芯物質とし、金属酸化物で被覆した金属光沢顔料或いはコレステリック液晶型光輝性顔料等の光輝性顔料や、一般染料、一般顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤等を添加することもできる。
【0022】
前記走行体が水槽部内の水中走行路を通過することで、水温に応じて可逆熱変色層が変色し、様相変化を呈する。
また、加熱消色型の可逆熱変色層を走行玩具に適用した際、前述の氷槽部を液体貯溜部内に設けた構成によって水温を下げることができるため、冷却による様相変化を短時間で確実に行うことができる。
【実施例】
【0023】
図1は軌道走行玩具セットの一実施例を示す要部断面図である。
前記軌道走行玩具セット1は、軌道玩具2と、該軌道玩具2の走行路を走行する走行玩具6とから構成されている。
走行玩具6は回転自在な車輪を備えた非自走式の模型自動車であり、車体部は白色の樹脂成形物に可逆熱変色性インキ(18℃以下で青色を示し、30℃以上で消色する)を塗布して可逆熱変色層を形成した熱変色性走行玩具である。そのため、前記走行玩具6は、30℃以上で白色、18℃以下で青色を呈するものである。
【0024】
前記軌道玩具2は、発射装置31を備えた陸上走行路3と、水を貯溜する貯溜部4と、水の付着によって様相変化を発現する水変色部5から構成される。
前記陸上走行路3は軌道部分が直線部とループ部とにより構成され、走行軌道の両サイドにガイド部32を備えた樹脂成形物である。
また、前記軌道の始点には発射装置31が設けられている。前記発射装置31は、装置本体内にバネ部材を備え、伸張状態で係止されるバネ部材の係止を解除するスイッチを押圧することで、バネ部材の弾発力によって前方に載置する走行玩具6を高速で発射させるものである。
【0025】
着色透明樹脂からなる円筒容器状の貯溜部4は、容器内に水中走行路41を備えており、該水中走行路41の端部が、前記陸上走行路3の軌道終点と連接されるように着脱可能に形成される。
前記水中走行路41は液体貯溜部4の内底面に略U字形に一体成形される軌道であり、陸上走行路3から高速で入水する走行玩具6が貯溜部4内から出水時にジャンプできるような軌道を形成している。
また、液体貯溜部4内には氷を収容する氷槽部が設けられており、収容する液体の温度を容易に下げることができる。そのため、入水時に走行玩具6の可逆熱変色層を瞬時に変色させることが可能となり、出水時には色調の異なった走行玩具6が現れるという興趣に富んだものとなる。
【0026】
更に、水中走行路41の出水側端部近傍には、走行玩具が着地する位置と、貯溜部4の外周上縁に水変色部5が配置されている。前記水変色部5は、それぞれシート状と立て看板形態(立体物)で構成されている。
前記シート状の水変色部5は、貯溜部4の外周から前方(走行玩具6の進行方向)に延設するように載置される略扇形の合成紙を基材51とするものであり、前記基材51上に、サメが水面より出現した写真と熱帯魚が描かれた海中写真を非変色性インキでスクリーン印刷して非変色像53を形成した後、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷した後、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層52を形成したものである(図2参照)。
前記水変色部5は、乾燥状態では略全面が白色(多孔質層の色調)に視認されるが、水を付着させると多孔質層が吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化し、下層の写真状非変色像53が視認される。吸液状態ではその状態を維持しているが、水が蒸発乾燥することにより、元の白色の状態へと変化する。
【0027】
また、前記看板形態の水変色部5は、水中走行路41の出水側端部に隣接するように円筒容器上縁に配置される略楕円形の合成樹脂成形物を基材51とするものであり、前記基材51上に、看板用の文字シールを貼着して非変色像53を形成した後、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷した後、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層52を形成したものである(図2参照)。
前記水変色部5は、乾燥状態では略全面が白色(多孔質層の色調)に視認されるが、水を付着させると多孔質層が吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化し、下層の文字シール(非変色像53)が視認される。吸液状態ではその状態を維持しているが、水が蒸発乾燥することにより、元の白色の状態へと変化する。
【0028】
前記構成からなる軌道走行玩具セットは、陸上走行路3の始点に配設される発射装置31の前方(走行玩具の進行方向)に載置した白色走行玩具6が、スイッチを押圧することで高速発進して陸上走行路3の直線部からループ部を疾走する。その後、高速状態で液体貯溜部4内に入水して水中走行路41を走行する。その際、走行玩具6は液体貯溜部4内で白色から青色に熱変色するため、出水時には色調の異なる青色走行玩具6が現れる。
【0029】
前記青色走行玩具6が水中走行路41を走行して出水側端部からジャンプする際、液面より高速に出水することで水しぶきを上げるため、該水しぶきを受けて各水変色部5の多孔質層52が吸液、透明化する。その際、看板状の水変色部5からは文字が現出して視認可能となる。また、シート状の水変色部5は、前記水しぶきと着陸した走行玩具に付着する水によってサメや海中写真の像が広域に渡って視認される。
【0030】
前記走行玩具6の走行からジャンプまでのアクションと、貯溜液や水しぶきによる走行玩具6と水変色部5の様相変化がすべて高速走行状態で一連して起こることから、軌道上を疾走する走行玩具のスピード感と、水中走行時の水しぶきによるダイナミックな変色特性を備えた、アクション性と興趣に富んだ軌道走行玩具セットとなる。
【0031】
また、前記看板状の水変色部5に変えて、アーチ状の透明樹脂成形物の内周面に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなるスプレーインキを用いて、全面にスプレー塗装した後、80℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、更に前記多孔質層上に風景写真を印刷した水透過性基材を貼着することで得られるトンネル部材を水中走行路41の出水側上方に取り付けることもできる(図示せず)。
前記トンネル部材は乾燥状態では白色に視認されるが、走行玩具出水時の水しぶきによって内面に液体が付着することで、白色の多孔質層が透明化して外部から風景写真が視認できるようになる。吸液状態ではその状態を維持しているが、水が蒸発乾燥することにより、元の白色の状態へと変化するものである。
前記トンネル部材を用いた場合にも、軌道上を疾走する走行玩具のスピード感と、水中走行時の水しぶきによるダイナミックな変色特性を備えた、アクション性と興趣に富んだ軌道走行玩具セットとなる。
【0032】
更に、前記シート状の水変色部5に変えて、水中走行路41の出水側端部に連接するようなスロープ状走行軌道を設けて出水した走行玩具を走行させることもできる。その際には、前記軌道表面に水変色部を形成して、出水した走行玩具の轍等の走行跡(像)を視認できるようにすることが好ましい(図示せず)。
前記スロープ状走行軌道の例として、タック付き合成紙(基材51)上に暗紫色インキによってベタ印刷して着色層53を形成した後、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料0.5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる印刷インキを用いて全面に印刷した後、80℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層52を形成してなる水変色性シートを作製し、樹脂成形物からなるスロープ状走行軌道の軌道表面に貼着したものが適用できる(図2参照)。
前記スロープ状走行軌道は、乾燥状態では黄色に視認されるが、出水後の車輪から液体が付着することで、黄色の多孔質層が透明化して黒色の轍が視認できるようになる。吸液状態ではその状態を維持しているが、水が蒸発乾燥することにより、元の黄色の状態へと変化するものである。
尚、前記軌道を用いる場合、走行玩具の車輪をスポンジ等の多孔質部材により構成することで、より鮮明な走行跡を出現させることができる。
前記スロープ状走行軌道を用いた際には、よりアクション性が高く、興趣に富んだ軌道走行玩具セットとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 軌道走行玩具セット
2 軌道玩具
3 陸上走行路
31 発射装置
32,42 ガイド
4 液体貯溜部
41 水中走行路
5 水変色部
51 基材
52 多孔質層
53 着色層
6 走行玩具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行玩具と、走行玩具が走行する軌道を備えた軌道玩具とからなる玩具セットであって、前記軌道玩具が、陸上走行路と、内部に水中走行路を有する液体貯溜部と、水の付着により変色し乾燥により変色前の状態に戻る水変色部とからなり、前記水中走行路の一端に陸上走行路が連通してなり、水中走行路の他端近傍に水変色部を配置してなる軌道走行玩具セット。
【請求項2】
前記水変色部が、基材と、基材上に設けた低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層とからなる請求項1記載の軌道走行玩具セット。
【請求項3】
前記基材と多孔質層の間に非変色像を設けてなる請求項2記載の軌道走行玩具セット。
【請求項4】
前記液体貯溜部の内底面に略U字形の水中走行路を設けてなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軌道走行玩具セット。
【請求項5】
前記陸上走行路の始点に走行玩具の発射装置を設けてなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の軌道走行玩具セット。
【請求項6】
前記走行玩具が、温度変化により変色する可逆熱変色層を備えてなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の軌道走行玩具セット。
【請求項7】
前記液体貯溜部内に氷槽部を設けてなる請求項6記載の軌道走行玩具セット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−36294(P2011−36294A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183934(P2009−183934)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】