説明

軒裏天井構造、耐火補強体及び軒裏天井構造の耐火補強方法

【課題】建物の軒裏天井構造において、軒裏天井板の厚さ増大させるよりも効率よく軒裏の耐火性能を向上させる。
【解決手段】建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒天部材80を設け、軒天部材80の上方に軒裏空間Sを形成する軒裏天井構造において、軒天部材80は、所定の耐火性能を有する軒裏天井板35と、該軒裏天井板35に積層される耐火補強層81とを備え、耐火補強層81を耐火断熱層82と、熱遮断層83と、吸熱層84のいずれか1の層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の軒裏天井構造、該軒裏天井構造に設けられる耐火補強体及び該軒裏天井構造の耐火補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物においては、隣家の火災による延焼・類焼の抑制・防止を目的として、隣家に対向する軒についても耐火性能を要求され、軒の裏に耐火性能を有するけい酸カルシウム板等の成形板(軒裏天井板)を敷設する軒裏天井構造が公知である(例えば特許文献1参照)。
また、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)においては、建築基準法により定められる耐火性能以上の耐火性能を住宅に付与することについての規定が盛り込まれる等、住宅に対する耐火性能向上の要請は近年さらに増してきており、軒裏天井の構造についても上記建築基準法で定められている所定時間の耐火性能を凌ぐ耐火性能を付与することが望まれている。
これに対し、耐火性能を向上させるべく、上記軒裏天井板に代えて厚さを増した軒裏天井板を使用することが考えられる。
【特許文献1】特開平6−73828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の如き軒裏天井板の厚さは、8mm、12mm、16mm等、製造元によりいくつかの厚さに限定されたものが一般に流通しており、使用者側で流通している厚さ以外の厚さの軒裏天井板を準備することがきわめて困難であり、厚さを増大させることで軒裏天井板に所望の耐火性能を付与することは困難であるという問題がある。
また、軒裏天井板として用いられるけい酸カルシウム板等の重量は一般に大きく、軒裏の耐火性能向上のために軒裏天井板の厚さを増大させると、当該軒裏天井板の重量が増すこととなって当該軒裏天井板を支持する支持構造の強度の向上まで図らなければならないという問題を招来する。
また、軒裏には一般に複数枚の軒裏天井板を列べて敷設しているため、既設住宅等の建物の軒裏の耐火性能を向上させるために各軒裏天井板を逐一完全に取り外す作業を行うことは手間となる問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、軒裏天井板の厚さ増大させるよりも効率よく軒裏の耐火性能を向上させることができる軒裏天井構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、軒裏天井板の厚さ増大させるよりも効率よく軒裏の耐火性能を向上させることができる耐火補強体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、既設の建物の軒裏天井構造の耐火性能を向上させるための耐火性能補強方法において、各軒裏天井板を軒裏から完全に取り外すことなく軒裏構造の耐火性能を向上させることができる耐火性能補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明に係る軒裏天井構造は、
(1)建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒天部材が設けられ、該軒天部材の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒天部材は、所定の耐火性能を有する軒裏天井板と、該軒裏天井板に積層される耐火補強層とを備え、該耐火補強層は、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴としている。
なお、軒裏とは、建物の外壁よりも突出する庇の裏側を含むことはもちろん、下階よりも突出して設けられる上階ベランダや上階居室の裏側等、下階よりも上階を突出させて形成される建物の当該下階より見上げることができる上階の裏側や、1階部分をピロティとする建物の当該ピロティの天井部分をも含む。
【0006】
また、軒裏天井板の所定の耐熱性能とは、軒裏天井板を敷設した軒において、軒裏天井板の下方から火熱を加えた場合であっても、当該軒裏空間を所定時間の間一定の温度以下の雰囲気に維持することを言うものであって、軒裏天井板の性能によって30〜45分程度の耐火性能を有するものが存在する。
また、軒裏天井板の所定の耐火性能とは、例えば、軒裏天井板を敷設した軒に対して国土交通大臣認定として規定される所定の耐火試験を行った際に、当該軒裏空間と外壁との間に設けられる板(標準板という)裏面の温度を所定時間の間一定の温度以下の雰囲気に維持すること可能とする性能のことを示すが、建築基準法により規定されている性能についても当然に含み、将来規定されるあらゆる評価試験において規定される性能のことをも含む。
【0007】
なお、軒裏天井板の構成材料や素材によって、30分〜45分程度の耐火性能を有するものが存在する。
上記構成によれば、耐火補強層により軒裏天井板を通じて軒裏空間に移動する(上昇する)熱の移動が抑制されることとなるので、軒裏空間の温度上昇が鈍化し、これによって、軒裏天井板単体による耐火性能以上の耐火性能を確保することができる。
ここで、熱の移動について詳述すると、熱移動には、熱伝導、熱対流、熱輻射の3つのプロセスが混在している。そこで、少なくともこれらのうちの1つでも抑制することが可能であれば、全体として熱の移動を鈍化させることができ、その結果、耐火性能を維持すべき時間(耐火時間)の延長を図ることができる。
【0008】
また、軒裏空間への伝熱自体を減少させることができれば、当該軒裏空間に向かう熱の総量を減少させることができ、これによっても軒天部材の裏面の温度上昇を鈍化させることができる。
上記耐火補強層の耐火断熱層は、熱伝導を主として抑制することができる層であって、これにより、軒裏天井板を通じて軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることができる。この結果、軒裏空間の温度上昇を鈍化させることができる。
また、熱遮断層は、熱伝導を除く熱輻射、熱対流を主として遮断することができるものであって、当該熱遮断層を軒裏天井板の上方に設けることにより、軒裏天井板から軒裏空間に向かう熱輻射や当該熱遮断層下方での対流熱の軒裏空間への抜けが確実に遮断されることとなり、これによって、軒裏天井板から軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることができる。
【0009】
さらに、吸熱層は、軒裏空間に進入する熱を適宜吸収するものであって、当該吸熱層を軒裏天井板の上方に積層することにより軒裏天井板から軒裏空間に伝達される熱の総量が低減され、これによっても空気層から軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることができる。
上記耐火補強層は、これら耐火断熱層と熱遮断層と吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されているので、軒裏天井板から軒裏空間に向けての熱移動は著しく抑制され又は伝熱の総量が低減されることとなり、これによって軒裏天井板のみによる軒裏天井構造の耐火性能よりも耐火性能を著しく向上させることができるのである。
【0010】
しかも、耐火補強層は、軒裏天井板よりも薄く形成されるので、軒天部材は、少なくとも当該軒裏天井板の厚さを2倍とするものよりも薄く形成され、かかる僅かな厚さの増大は、軒裏天井板を軒裏に保持する際に予め設けられているクリアランスや遊びによって解消することができる。これによって、該軒裏天井板を支持する従来の軒裏天井構造の仕様を変更・改修することなく軒天部材を軒裏に取り付けることができる。
【0011】
(2)また、前記耐火断熱層は、火熱に起因する温度上昇により膨張して所定厚さの断熱層を形成する膨張断熱シート又は膨張断熱塗膜を備えていることが好ましい。
これによれば、耐火補強層は非火災時においてはシート又は塗膜といった薄膜状を維持されることとなり、耐火補強層の薄化及び軽量化を向上させることができる。また、火災時においては耐火補強層に熱供給されることによりシート又は塗膜が膨張して所定厚さの断熱層を形成することとなるので、当該断熱層により軒裏天井板から軒裏空間への熱伝達が著しく抑制され、これによって軒裏空間の温度上昇の鈍化が図られることとなるのである。
【0012】
(3)また、前記熱遮断層は、アルミニウム薄膜、亜鉛鉄板又は鋼板により形成されていることが好ましい。
前記熱遮断層がアルミニウム薄膜により形成されると、当該熱遮断層はきわめて薄く且つ軽量に形成され、耐火補強体の軽量化が図られることとなる。また、アルミニウムは、高い熱反射率(一般には97%)を有しているので、輻射熱がアルミニウム薄膜に到達する場合であっても、殆どの輻射熱はアルミニウム薄膜表面で反射されることとなり、きわめて僅かな輻射熱がアルミニウム薄膜を貫通するのみである。したがって、アルミニウム薄膜は主として熱輻射を遮断する熱遮断層として好適である。
【0013】
また、前記熱遮断層を亜鉛鉄板又は鋼板により形成すると、これらは主として熱対流を遮断する熱遮断層を形成するので、上述の如く熱気流及び熱輻射を遮断することが可能となる。特に、これら亜鉛鉄板及び鋼板は火災時の火熱雰囲気の温度に比して融点が著しく高いので、火災時においても容易に融解することなく板形状を維持することができ、これによって、熱気流を長期に亘って遮断することができるのである。また、熱対流のうち、特に熱気流が問題となるが、これら亜鉛鉄板や鋼板を熱遮断層として採用すると当該熱気流も確実に抑制することができる。
なお、熱気流とは、火災時に発生する高温度の気流であって、その上昇速度は中心で最大となり、一般に実測値で12m/sec〜14m/sec程度であるとされる(建築大辞典(彰国社、第2版)参照)。
【0014】
また、アルミニウム薄膜は主として輻射熱を遮断・反射するものであることはもちろん、膜状を維持することにより対流熱も当然に遮断することができる。同様に、亜鉛鉄板や鋼板は主として対流熱を遮断するものであることはもちろん、輻射熱をも当然に遮断することができる。
【0015】
(4)また、前記吸熱層は、水酸化アルミニウムを主材として形成されていることが好ましい。
これによれば、吸熱層をきわめて薄く且つ軽量に形成することができ、軒天部材の軽量化が図られることとなる。また、水酸化アルミニウムは、火災時の雰囲気温度となる280℃前後で脱水するので、火災時の伝熱を吸収する層としては好適である。
(5)また、前記吸熱層は、水酸化アルミニウム粉末を袋体に封入してなる吸熱袋を敷設して形成されることが好ましい。吸熱層を水酸化アルミニウムを粉状に形成すると、水酸化アルミニウムの表面積が向上することとなって吸熱性能を向上させることができる。一方、粉状物を部材に組み込んだり施工することはきわめて困難であるので、袋体に封入することとし、これによって、容易に吸熱層を形成することを可能としているのである。
【0016】
(6)また、上記課題解決のための他の具体的手段として、本願発明は、
建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒裏天井板が設けられ、該軒裏天井板の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒裏天井板の上面が、水酸化アルミニウムを主材として形成される吸熱層を備える耐火補強体により覆われていることが好ましい。
(7)上記構成においては、前記吸熱層を、水酸化アルミニウム粉末を封入してなる包袋を敷設して形成することが好ましく、また、(8)前記耐火補強体を、前記吸熱層と、アルミニウムからなる熱遮断層とを備えて形成することも好ましい。
(9)前記耐火補強体は、前記軒裏天井板の上面に前記吸熱層を載置し、前記吸熱層の上面に前記熱遮断層を積層した状態で前記軒裏空間に設けられていることが好ましい。
【0017】
(10)また、上記課題解決のための他の具体的手段として、本願発明に係る耐火補強体は、
建物の軒裏天井構造を形成する軒裏天井板に積層される耐火補強体であって、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴としている。
【0018】
(11)また、上記課題解決のための他の具体的手段として、本願発明に係る耐火補強体は、
建物の軒裏天井構造を形成する軒裏天井板に積層される耐火補強体であって、水酸化アルミニウムを主材とする吸熱層を備えて形成されることを特徴としている。
(12)また、前記吸熱層は、水酸化アルミニウム粉末を封入してなる包袋を敷設して形成されることは好ましい。同様に(13)、前記吸熱層と、アルミニウムからなる熱遮断層とを備えて形成されることは好ましい。また、(14)前記軒裏天井板上に前記吸熱層が位置し、該吸熱層上に熱遮断層が位置することは好ましい。
【0019】
(15)また、上記課題解決のための具体的手段として、本願発明に係る軒裏天井構造の耐火補強方法は、
軒先の桁行き方向に沿って所定の耐火性能を有する複数枚の軒裏天井板が敷き並べられて軒裏空間が形成され、各軒裏天井板は、建物の外壁に沿う側縁部が外壁取付金物に保持されると共に前記軒先に沿う側縁部が前記軒先に支持されている軒先取付金物に保持されている軒裏天井構造の耐火補強方法であって、
いずれか一方の取付金物を取り外して前記軒裏天井板の一方の側縁部の保持状態を解除し、
他方の側縁部を揺動軸として前記軒裏天井板を下向き方向に揺動させて該軒裏天井板の上面を露出させ、
該軒裏天井板の上面に耐火補強体を敷設し、その後、
前記軒裏天井板を前記揺動軸廻り上向き方向に揺動させた後、前記一方の取付金物を取り付けて前記軒裏天井板の一方の側縁部を再び保持状態とする
ことを特徴としている。
上記構成によれば、軒裏天井板の一方の側縁部は、耐火補強体を敷設する前後に亘って取付金物に保持した状態で、軒裏天井板の上面に耐火補強体を敷設することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の軒裏天井構造によれば、軒裏天井板の厚さ増大させるよりも効率よく軒裏の耐火性能を向上させることができる。
また、本発明の補強断熱体によれば、軒裏天井板の厚さ増大させるよりも効率よく軒裏の耐火性能を向上させることができる。
本発明の耐火性能補強方法によれば、各軒裏天井板を軒裏から完全に取り外すことなく軒裏構造の耐火性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図20に基づき、本発明を2階建ての戸建て住宅に採用した実施の形態につき、詳細に説明する。
なお、図1及び図2については、寄棟屋根を有する住宅に本願発明の軒裏天井構造を採用した第1実施形態についての図面であって、図3は、寄棟屋根を有する住宅に本願発明の軒裏天井構造を採用した第2実施形態についての図面であって、図4及び図5については、寄棟屋根を有する既設の住宅に本願発明の軒裏天井構造を設ける手順を示す図面であって、図6及び図7は軒裏天井構造の第3実施形態等であり、図8は第3実施形態の変形例を説明する軒裏天井構造の要部断面図であって、図9及び図10については陸屋根を有する住宅に本願発明の軒裏天井構造を採用した第4実施形態についての図面であって、図11〜図15は本願発明に関する実施例等の実験についての図面であり、図16及び図17は実施例3の試験体の構成を示す断面図であって、図18及び図19は、実施例3の試験結果を示すグラフであって、図20は実施例4の試験結果を示すグラフである。
【0022】
<第1実施形態>
本発明に係る戸建て住宅1は、所謂寄棟屋根を有する住宅1であって、軽量鉄骨を組み合わせて形成される架構1aと、該架構1aに取り付けられて住宅の側面を形成する外壁構造1bと、架構1aに取り付けられて住宅の上面を形成する屋根構造1cとを備えている。
架構1aは、基礎B上に立設される複数の柱材や面材と、これら柱材や面材を連結する梁材とを備えて形成される軸組構造として構成されている。柱材は、鋼製の角パイプや該角パイプの端部に柱頭部材や柱脚部材を取り付けて形成され、面材は、一対の角パイプをブレースや制振フレームにより連結して形成される。梁材は、H型鋼や鋼製の角パイプにより形成されている。
外壁構造1bは、平板状の外壁2と、該外壁2よりも屋内側に設けられる断熱層(図示省略)とを備えている。
【0023】
外壁2は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成される複数の外壁材を並列状に列べて形成されている。各外壁材は、前記架構1aの最外枠を構成する梁に取り付けられる自重受け金具やイナズマプレート等の金物(図示省略)を介して当該梁に支持されている。
上記ALCパネルは、軽量で且つ高い断熱性能を有するため外壁材として好ましく用いることが可能である。
【0024】
また、図1に示す如く、本発明に係る戸建て住宅1は、本屋に対し下屋を突出して形成されており、屋根構造1cは、上方に下屋の屋根を形成する片流れ状の1階屋根3と、2階の屋根を形成する切妻状の2階屋根4とを備えている。各屋根3、4は、屋根3、4の下方に位置する各外壁2よりも外方に突出した位置に軒5を備えており、これによって、各屋根3、4の軒5と外壁2との間には軒裏空間Sが形成されている。
なお、実施形態の説明の便宜上、図1の紙面垂直方向(法線方向)を桁行き方向とし、図1の紙面平行方向を梁間方向と称呼する。
これら各軒5の構成は略同様であるので、以下は2階部分の軒5の構成について述べることとし、1階部分の軒5についてはその説明を省略する。
【0025】
図2に示す如く、当該軒5は、2階部分の外壁2よりも突出して設けられる軒先構造10と、該軒先構造10により包囲される軒裏空間Sを塞ぐ軒裏天井構造30とを備えている。
なお、軒の出寸法は、2000mm以下が好ましく、1000mm以下が最も好ましい。本実施形態においては、軒の出寸法Lは720mmである。
軒先構造10は、屋根を形成する軒屋根11と、該軒屋根11を支持する垂木部材12と、該垂木部材12の先端部に取り付けられたジョイント金物13と、該ジョイント金物13に取り付けられた鼻隠部材14とを備えている。
【0026】
軒屋根11は、平板状の構造用合板からなる下地板16と、該下地板16の一方の面(上面)に敷設された屋根板部材17とを備えて形成されている。
当該軒屋根11を支持する垂木部材12は、平板状の金属板をプレス加工により断面コ字状の長尺部材として形成されている。また、垂木部材12は、長手方向を梁間方向に向けた状態で所定の間隔を空けて棟から軒に向けて下り傾斜状に複数本架設されている。また、各垂木部材12は、中途部が金物部材k1を介して架構1aを形成する軒桁2bに支持されている。
ジョイント金物13は、垂木部材12の先端部に連結される連結部18と、該連結部18から垂下される垂下部19とを備えている。
【0027】
鼻隠部材14は、下地板16と同様の平板状の構造用合板により形成されており、複数のジョイント金物13に跨った状態で各ジョイント金物13の垂下部19にタッピングネジ等を介して取り付けられている。また、鼻隠部材14は、上端縁を垂木部材12の上端面により形成される傾斜面12aに沿わせた状態でジョイント金物13に取り付けられており、これによって鼻隠部材14の下端部は2階部分の外壁2の上端部に相対する。
また、鼻隠部材14の一方の面(表面)には、屋根板部材17を流れ落ちてくる雨水等を受ける軒樋15が取り付けられている。
上述の如く各部材10〜14が配備されることにより、当該軒5には、軒桁2b、軒屋根11の下地板16、鼻隠部材14により包囲される軒裏空間Sが形成されており、軒裏天井構造30は、当該軒裏空間Sを下方から塞ぐ構造である。
【0028】
ところで、住宅1が密集する都市においては、ある住宅1に火災が発生することにより該住宅1に隣接する隣家に当該火災の火炎が燃え移り(かかる現象を延焼又は類焼という)、これによって隣家まで当該火災に巻き込まれてしまう虞がある。このような隣家への延焼の発端は、外壁2から突出している上述の如き軒5等が火災による火熱に相当時間晒されることにより軒5が燃えてしまうこと等であることが知られており、この種の延焼を防止すべく、軒裏には、所定の耐火性能を備えることが要求されている。
【0029】
本実施形態の軒裏天井構造30は、上述の如く軒裏に要求される耐火性能を向上させるものであって、鼻隠部材14の下端部に取り付けられるL字状金物31と、該L字状金物31に支持される軒先取付金物32と、軒桁2bの下端部に取り付けられて外壁2を支持するZ金物k2に連結される外壁取付金物33と、これら軒先取付金物32と外壁取付金物33の間に組まれる野縁組立体34と、軒先取付金物32と外壁取付金物33に亘って架設されると共に野縁組立体34に懸架される軒天部材80とを備えている。
【0030】
L字状金物31は、長手方向を桁行き方向に一致させた状態で鼻隠部材14の下端部に取り付けられており、該鼻隠部材14の表裏一方の面(本実施形態においては表面)に連結される連結板部37と、該連結板部37の下端から外壁2に向けて水平に突出する水平板部38とを備えている。
軒先取付金物32は、L字状金物31の水平板部38にボルト等を介して締結される断面コ字状の取付部40と、該取付部40の下部に取り付けられる平板状の見切り板42とを備えている。当該取付部40をL字状金物31の水平板部38に取り付けると、該水平板部38の下面と見切り板42の上面は互いに平行となった状態で対向する。
【0031】
外壁取付金物33は、金属板をプレス成形等を施して形成されており、外壁2を支持するZ金物k2にタッピンネジ等を介して連結されるブラケット部43と、該ブラケット部43の先端に形成される軒天保持部46とを備えている。また、ブラケット部43には、平板部に通気孔44aが開設されている。
また、該軒天保持部46は、一対の挟持片47、47と該一対の挟持片47、47を連結する連結部48とを備えている。また、該外壁取付金物33をZ金物k2に取り付けると、軒天保持部46の連結部48の一方の面が所定間隔を有して外壁2と対向することとなるが、該一方の面には火熱により所定温度に達すると少なくとも前記所定間隔の厚さを有するまで厚さ方向に膨張する加熱膨張材49が取り付けられている。
【0032】
また、軒先取付金物32の取付部40と外壁取付金物33の連結部48とは同一の高さを有している。また、該高さは軒裏天井板35の厚さと同一又は僅かに大きい。また、該軒先取付金物32の見切り板42の上面と外壁取付金物33の下側の挟持片47の上面とは同一の高さ位置に設定されている。
野縁組立体34は、外壁取付金物33に支持される野縁受け51と、野縁受け51に亘って架設される複数本の野縁52とを備えている。
野縁受け51は、金属板をプレス成形してなる断面コ字状の長尺部材として形成され、平坦状の側面部53の一端に上面部54が屈曲形成されると共に他端に下面部55が屈曲形成されており、該側面部53が外壁取付金物33のブラケット部43にタッピンネジ等を介して取り付けられている。
野縁52は、金属板をプレス成形してなる角筒状に形成されており、梁間方向に沿って設置され、一方の端部が野縁受け51の上下面部54、55及び側面部53の間に嵌り込んだ状態で当該野縁受け51にタッピンネジ等を介して取り付けられると共に、他方の端部がL字状金物31の水平板部38の上面に載置されている。
【0033】
軒天部材80は、軒裏天井板35と、該軒裏天井板35に積層される耐火補強層81とを備えて形成されており、軒先側の側縁部をL字状金物31の水平板部38と軒先取付金物32の見切り板42に挟持されると共に、外壁側の側縁部を外壁取付金物33の軒天保持部46の一対の挟持片47、47に挟持された状態で軒裏に設けられ、これによって軒裏空間Sを下方より塞いでいる。また、軒天部材80は、一方の側縁部が当該軒天部材80の下方より螺合されるタッピンネジ等を介してL字状金物31の水平板部38に締結されると共に、他の複数箇所が当該軒天部材80の下方より螺合されるタッピンネジ等を介して野縁組立体34の野縁52に締結されている。
【0034】
軒裏天井板35は、所定の耐火性能を有する平板状の繊維混入けい酸カルシウム板により形成されており、当該けい酸カルシウム板の厚さは、6mm〜16mmが好ましく、耐火性能の観点からは16mmの厚さを有するものが最も好ましい。
ここで、また、軒裏天井板35の所定の耐火性能とは、例えば、軒裏天井板35を敷設した軒5に対して国土交通大臣認定として規定される所定の耐火試験を行った際に、当該軒5の軒裏空間Sと外壁2との間に設けられる板(標準板という)裏面の温度を所定時間の間一定の温度以下の雰囲気に維持すること可能とする性能のことを示すが、建築基準法により規定されている性能についても当然に含み、将来規定されるあらゆる評価試験において規定される性能のことをも含む。
【0035】
本実施形態においては、軒裏天井板35として繊維混入けい酸カルシウム板を採用しているが、軒裏天井板35としては、繊維混入けい酸カルシウム板に代えて、繊維混入セメントけい酸カルシウム板、繊維補強セメント板、石灰・けい酸カルシウム板、硬質木片セメント板等の窯業系サイディングボード等が用いられ、軒裏天井板35としての厚さは、要求される耐火性能や材質によって6mm〜25mm程度の間で選択される。
また、上記厚さ16mmの繊維混入けい酸カルシウム板により形成される軒裏天井板35の断熱性能は、35〜45分程度の耐火性能を有し、耐火補強層81は、当該軒裏天井板35の耐火性能を補完して軒裏天井構造30全体の耐火時間の延長を図るものである。
【0036】
該耐火補強層81は、軒裏天井板35を通じて軒裏空間Sに向かう熱の移動を抑制するものであって、軒裏空間Sの温度上昇を鈍化させて軒裏天井板35単体による耐火時間よりも当該耐火時間を延長させ、これによって軒裏天井板35単体の耐火性能以上の耐火性能が確保される。
ここで、熱の移動について詳述すると、熱移動には、熱伝導、熱対流、熱輻射の3つのプロセスが混在している。そこで、少なくともこれらのうちの1つでも抑制することが可能であれば、全体として熱の移動を鈍化させることができ、その結果、耐火性能を維持すべき時間(耐火時間)の延長を図ることができる。
【0037】
また、一方で、軒裏空間Sに向かう熱を吸収することができれば、当該軒裏空間Sに向かう熱の総量を減少させることができるので、これによっても軒裏空間Sの温度上昇が抑制される。
したがって、耐火補強層81は、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1の層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されているものが好ましく、本実施形態において、耐火補強層81は、軒裏天井板35の上面に積層される耐火断熱層82と、該耐火断熱層82の上面に積層される熱遮断層83とを備えている。
上記耐火補強層81の耐火断熱層82は、熱伝導を主として抑制することができる層であって、これにより、当該耐火補強層81によって軒裏天井板35を介して軒裏空間に向かう熱の移動が抑制される。
【0038】
本実施形態においては、当該耐火断熱層82として、軒裏天井板35を覆う状態で設置されて且つ火熱により所定温度に達すると発泡して厚さ方向に膨張して所定の断熱層を形成する膨張断熱シートを用いている。
該膨張断熱シートは、グラファイト粉末等の発泡顔料をエポキシ樹脂やブチル等の樹脂バインダーで固めたシート状に形成され、加熱により所定温度に達すると発泡・膨張し、膨張後に燃焼せずに断熱性を発揮する有機系の耐火材である。該膨張断熱シートは、通常の温度環境下では膨張することなく、200℃以上に加熱されると厚さ方向に5〜40倍程度に発泡して膨張し、当該膨張による発泡残渣が断熱層として機能するものであって、通常の温度環境下で厚さを1mm〜5mm程度とすると共に重量1.2kg/m2 〜2.0kg/m2 程度とし、火災時の高温雰囲気により5〜30倍に膨張するものが好ましい。本実施形態においては、この種の断熱膨張シートとして、通常時(非火災時)に厚さ2mm、重量1.8kg/m2であって、加熱により厚さ方向に10倍程度に膨張するフィブロック(登録商標フィブロック/Fiblock。商標権者:積水化学工業株式会社)を用いている。
【0039】
なお、断熱膨張シートとしては、上記フィブロックに限定されず、無機系又は有機系の他の熱膨張性の断熱シートも採用可能である。また、断熱膨張シートに代えて、加熱により膨張する加熱膨張塗膜を採用することも可能である。
熱遮断層83は、熱伝導を除く熱輻射、熱対流を主として遮断するものであって、当該熱遮断層83を耐火断熱層82の上方に設けることにより、軒裏天井板35から軒裏空間Sに向かう熱輻射や耐火断熱層82を通じて熱遮断層83に達する対流熱の軒裏空間Sへの抜けが確実に遮断されることとなり、これによって、軒裏空間Sに向かう熱の移動を大幅に抑制させることが可能となっている。
【0040】
本実施形態においては、熱遮断層83として厚さを0.2mm程度とし、重量を0.5kg/m2 程度とするアルミニウム薄膜(アルミニウム箔)を用いており、これによって、当該熱遮断層83はきわめて薄く且つ軽量に形成され、耐火補強層81の軽量化が図られることとなる。
また、アルミニウムは、高い熱反射率(一般には97%程度)を有しているので、輻射熱がアルミニウム薄膜に到達する場合であっても、殆どの輻射熱はアルミニウム薄膜表面で反射され、きわめて僅かな輻射熱がアルミニウム薄膜を貫通するのみとなり、これによって、軒天部材80を通じての軒裏空間Sへの熱の移動が抑制され、ひいては軒裏空間Sの温度上昇の鈍化が図られるのである。
【0041】
なお、アルミニウム箔としては、0.1〜1.0kg/m2 程度のものを採用することが好ましく、その他、アルミニウム箔をガラス繊維により補強してなるアルミガラスクロス等を上記アルミニウム箔相当の単位重量で用いることも好ましい。
本実施形態によれば、軒天部材80に耐火断熱層82及び熱遮断層83を備える耐火補強層81が設けられているので、軒天部材80を経由して軒裏空間Sに至る熱の移動が抑制され、これによって軒裏天井板35のみによる軒裏天井構造の耐火性能よりも耐火性能を向上が図られる。
【0042】
また、軒裏天井板35の重量が13.0kg/m2 〜16.0kg/m2 程度であるのに対し、耐火補強層81は、上記2層を合計しても厚さを2.3mm〜2.7mm、重量を2.0kg/m2 〜2.5kg/m2 程度とするものである。したがって、軒裏天井板35に耐火補強層81を積層して形成される軒天部材80は、軒裏天井板35単体と比較しても僅かに厚さ及び重量が増すに過ぎないにも拘らず、高い断熱性能を発揮することとなり、上述の如き軒裏天井板35を積層する場合よりも低重量であって且つ当該軒裏天井板35を積層したものと同等又はそれ以上に耐火性能を有するものとなる。この結果、該軒裏天井板35単体を支持する建物の躯体構成を変更・改修することなく軒天部材80の軒裏への取り付けが可能となっている。
【0043】
なお、火熱により耐火断熱層82は厚さ方向に膨張することとなるが、タッピンネジ等により軒裏天井板35と野縁52に挟持されている部分等は当該挟持力に抗ってまで厚さ方向に膨張することはなく、当該膨張により軒裏天井板35と野縁52との連結状態が解除される虞はない。
また、火災等の加熱により軒下周辺部が所定の温度雰囲気となると、外壁取付金物33の軒天保持部46の加熱膨張材49が膨張して外壁2に達する。これにより、通気孔44aは加熱膨張材49により塞がれることとなり、当該通気孔44aを通じての熱気流の流入が抑制され、軒裏空間Sの温度上昇も抑制されることとなる。
【0044】
<第2実施形態>
本実施形態においては、軒裏天井構造30の構成以外は上記第1実施形態と同様であるので、上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態において、軒裏天井構造は、図3に示す如く、鼻隠部材14の下端部に取り付けられるL字状金物31と、該L字状金物31に懸架される軒先取付金物32と、軒桁2bの下端部に取り付けられて外壁2を支持するZ金物k2に連結される外壁取付金物33と、これら軒先取付金物32と外壁取付金物33の間に組まれる野縁組立体34と、軒先取付金物32と外壁取付金物33に亘って架設されると共に野縁組立体34に懸架される軒裏天井板35と、軒裏天井板35上に載置される耐火補強体81aとを備えている。
即ち、本実施形態においては、上記第1実施形態の軒裏天井板35と耐火補強層81とを別部材とし、耐火補強層81を耐火補強体81aとして部材化して構成されており、当該耐火補強体81aは、軒裏天井板35の耐火性能を補完して軒裏天井構造全体の耐火時間の延長を図るものである。
【0045】
なお、図3においては、説明の便宜のために軒裏天井板35と耐火補強体81aとの間に空隙を設けているが、実際には軒裏天井板35上に耐火補強体81aが載置されるため、これら2部材35、81aの間には隙間は殆ど生じていない。
耐火補強体81aの各層の構成は上記第1実施形態の耐火補強層81と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態の構成は以上からなるものであって、次に、図4及び図5を用いて軒裏天井板35のみを取付金物32、33にて保持する軒裏天井構造30を有する既存の軒5に上述の如く耐火補強体81aを設置する方法について説明する。
【0046】
図4(a)に示す如く、まず、軒先取付金物32を取り外すと共に、野縁組立体34による軒裏天井板35の支持を解除する。これにより、軒裏天井板35は、外壁取付金物33の軒天保持部46の一対の挟持片47、47にのみ保持された状態となる。ここで、軒先取付金物32と軒裏天井板35及びL字状金物31との連結、或いは軒裏天井板35と野縁組立体34の野縁52との連結は当該軒裏天井板35の下側からタッピンネジ等を介して締結されているので、軒裏天井板35の下方(軒下)から各タッピンネジを取り外すことにより、各部材の連結状態は容易に解除される。
【0047】
また、一対の挟持片47、47と軒裏天井板35との間には、施工誤差を解消する等の目的で僅かな隙間が存在しており、当該隙間により、軒裏天井板35は、外壁取付金物33に収容されている外壁側の側縁部を揺動軸とすると共に軒先側の側縁部を自由端として揺動自在となる。この状態で該軒裏天井板35の軒先側の側縁部を押し下げ、図4(b)に示す如く軒裏天井板35の上面を露出させる。ここで、外壁取付金物33の軒天保持部46により軒裏天井板35の外壁側側縁部が隙間なく挟持されている場合、軒裏天井板35の揺動に伴って外壁取付金物33も僅かに変形することとなるが、外壁取付金物33は靭性に富む金属板により形成されていれば、当該揺動程度の変形は弾性変形の範囲内であって、軒裏天井板35を元の位置に戻すことにより容易にもとの形状に復帰させることが可能である。
【0048】
そして、図5(a)に示す如く、軒裏天井板35の上面に耐火補強体81aを敷設するのである。このとき、耐火補強体81aは、2.0mm〜3.0mm程度の厚さのシート状に形成されているので、当該軒裏天井板35の上面に耐火補強体81aを敷設しても嵩高くなる虞はない。また、軒裏天井板35と外壁取付金物33の軒天保持部46の挟持片47との間に隙間が設けられているので、当該隙間にも耐火補強体81aは挿し入れられる。当該施工により、耐火補強体81aによって軒裏天井板35の上面を全面に亘って覆う。
その後、図5(b)に示す如く、軒裏天井板35の軒先側の側縁部を押し上げて該軒裏天井板35を水平状態に保持し、先ほど取り外した軒先取付金物32を再び取り付け、該軒先取付金物32の座部とL字状金物31の水平板部38で軒裏天井板35の軒先側の側縁部及び耐火補強体81aを挟持する。ここでも、耐火補強体81aは上述の如く薄く形成されているので、該耐火補強体81aの厚さに起因して軒先取付金物32による軒裏天井板35の保持状態が阻害される虞はない。
【0049】
最後に、再びタッピンネジ等で再び軒裏天井板35と野縁組立体34の野縁52とを締結する。これにより、耐火補強体81aは、軒裏天井板35と野縁組立34体の野縁51に挟持されることとなる。
本実施形態によれば、軒裏天井板35を軒裏から完全に取り外すことなく当該軒裏天井板35の上面に耐火補強体81aが敷設される。軒裏天井板35の一方の側縁部は、耐火補強体81aを敷設する前後に亘って取付金物32、33に保持された状態が維持されるので、当該軒裏天井板35の重量の一部は当該外壁取付金物33を介して建物(躯体構造)が負担することとなり、これによって軒裏天井板35のハンドリングを容易に行うことができる。また、両取付金物32、33のうち、一方の軒先取付金物32を取り外すだけで施工を行うことができるので、施工時間の短縮化も図られる。
【0050】
<第3実施形態>
本実施形態は、耐火補強体81aの構成は上記第1実施形態と異なるものの、他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、耐火補強体81a以外の構成は第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
図6に示す如く、本実施形態の耐火補強体81aは、軒裏天井板35の上面に設けられる熱遮断層83と、該熱遮断層83の上面に積層される吸熱層84とを備えて構成されている。
本実施形態においては、熱遮断層83として厚さを0.2mm程度とし且つ重量を0.5kg/m2 程度とするアルミニウム薄膜(アルミニウム箔)が用いられている。また、該熱遮断層83は、一方の側縁部を野縁組立体34の野縁52の上面部53を覆いつつ側面部53の裏面側に回り込ませると共に、他方の側縁部をL字状金物31の水平板部38の上面を覆わせた状態で設けられている。
【0051】
なお、アルミニウム箔としては、0.1〜1.0kg/m2 程度のものを採用することが好ましく、その他、アルミニウム箔をガラス繊維により補強してなるアルミガラスクロス等を上記アルミニウム箔相当の単位重量で用いることも好ましい。
吸熱層84は、熱遮断層83からの伝熱を吸収するものであって、当該吸熱層84により、軒裏空間Sに伝達される熱の総量が低減され、これによっても軒裏空間Sの温度上昇の鈍化が図られるのである。
【0052】
本実施形態においては、吸熱層84として当該粉末状の水酸化アルミニウムをポリエステル製の不織布等で形成される袋体に封入してなる吸熱袋87を複数個連結したものが用いられている。各袋体内には重量5.0kg/m2 程度の粉末状水酸化アルミニウムを5mm〜10mm程度の厚さとして封入されている。当該水酸化アルミニウム粉末を吸熱層84として採用する場合は、0.5〜6.0kg/m2 程度の単位重量で用いるのが好ましく、軒裏天井構造30に付与される重量とのバランスを考慮すると5.0kg/m2 程度の単位重量で用いるのことが最も好ましい。また、この様に吸熱層84を複数の吸熱袋87により形成することにより、吸熱層84として用いる粉末状の水酸化アルミニウムの扱いが容易となものとなる。また、水酸化アルミニウムは、火災時の火熱雰囲気の温度付近に相当する280℃前後で脱水するので、火災時の熱遮断層83からの伝熱を有効に吸収する。
【0053】
本実施形態においても、軒裏天井板35を経由して軒裏空間Sに至る熱の移動が著しく鈍化され、これによって軒裏天井板35のみによる軒裏天井構造30の耐火性能よりも耐火性能を向上が図られる。
また、本願発明の構成は、上記実施形態に限定されず、上記実施形態以外の構成も採用可能である。
例えば、熱遮断層83として、亜鉛鉄板や鋼板等の金属板を採用することが可能である。当該金属板としては、厚さを0.1mm〜1.0mm程度に設定することが好ましく、0.27mm程度が最も好ましい。熱遮断層83としての金属板は、主として熱対流を遮断する熱遮断層を形成するので、熱気流を遮断することが可能となる。特に、これら亜鉛鉄板や鋼板は火災時の火熱雰囲気の温度に比して融点が著しく高いので、火災時においても容易に融解することなく板形状が維持され、これによって、火災時の熱気流等も長期に亘って遮断されるものとなる。
【0054】
なお、熱気流とは、火災時に発生する高温度の気流であって、その上昇速度は中心で最大となり、実測値で12m/sec〜14m/secであるとされる(建築大辞典(彰国社、第2版)参照)。
また、上記実施形態のアルミニウム箔は主として輻射熱を遮断・反射するものであることはもちろん、膜状を維持することにより対流熱も当然に遮断することができ、同様に、亜鉛鉄板や鋼板の金属板は主として対流熱を遮断するものであることはもちろん、輻射熱をも当然に遮断することができる。
また、水酸化アルミニウムを吸熱層84として使用するにつき、水酸化アルミニウム粉末を散布することが可能であることはもちろん、水酸化アルミニウムを含む塗膜、又は水酸化アルミニウム粉末を接着剤で定着させた定着膜、又は水酸化アルミニウムを成分として含む紙体、又は水酸化アルミニウム粉末定着樹脂フィルムによって吸熱層84を形成することももちろん可能であり、水酸化アルミニウムによる吸熱層を形成する場合には、水酸化アルミニウムは5.0kg/m2 程度の容量が確保されていれば、如何なる態様により形成されていても構わない。
【0055】
また、耐火補強体81aの層構成についても、上記実施形態に限定されることはなく、耐火断熱層82と、熱遮断層83と、吸熱層84とのいずれか1層を少なくとも有していれば、これらの上下の位置関係や層数は必要に応じて適宜変更することができる。
したがって、図7に示す如く、密度60kg/m3 〜200kg/m3 のロックウール厚さ25mm〜50mmとしたものを耐火断熱層82として採用することが可能であり、厚さ50mmとする密度60kg/m3 のロックウール又は厚さ25mmとする密度200kg/m3 のロックウールを耐火断熱層82として採用することは好ましい。当該構成においては、耐火補強体81aが、軒裏天井構造30を構成し、桁行き方向に等間隔で設けられた野縁組立体34の間の空間に充填されるものとなっている。
【0056】
また、アルミニウム箔からなる熱遮断層83にロックウールからなる耐火断熱層82を積層し、当該耐火断熱層82に亜鉛鉄板からなる熱遮断層83を積層し、さらに、当該熱遮断層83の上面に吸熱袋87からなる吸熱層84を載置する構成も可能である。
また、亜鉛鉄板からなる熱遮断層83上に吸熱袋87からなる吸熱層84を載置する構成も採用可能であり、該吸熱層84に代えて加熱膨張材からなる耐火断熱層82を積層する構成も採用可能である。
【0057】
また、図8は、上記第3実施形態の変形例であり、該実施形態は、軒裏天井板35上に設置される耐火補強体81aとして、軒裏天井板35上に設置される吸熱層84と、該吸熱層84上に設けられる熱遮断層83とを備えている。
該耐火補強体81aにおいて、吸熱層84は、上記第3実施実施形態と同様に、粉末状の水酸化アルミニウムをポリエステル製の不織布等で形成される袋体に封入してなる吸熱袋87を複数個連結したものが用いられている。所定の耐火性能を発揮させるには、重量5.0kg/m2 程度の粉末状水酸化アルミニウムにより吸熱層84を形成することが好ましい一方、施工性を確保するためには、耐火補強体81a全体として必要に応じて適宜曲げ伸ばし出来る構成が好ましく、これらをいずれも達成可能な構成として、本実施形態においては、袋体を平面視で10cm×15cm程度の長方形状に形成し且つ該袋体に75g程度の水酸化アルミニウムを封入して吸熱袋87を形成することとし、当該吸熱袋87を長手方向に複数個連結して帯状に吸熱体を形成し、さらに当該帯状の吸熱体を幅方向に複数連結することで吸熱層84を形成している。
また、熱遮断層83は、厚さを0.2mm程度とし且つ重量を0.05kg/m2 程度とするアルミニウム薄膜を厚さ0.1mm程度のガラスクロスで補強したアルミガラスクロスが用いられている。該熱遮断層83は、吸熱層84の上面を完全に覆った状態で設けられ、該熱遮断層83の周縁部には、軒裏天井構造30の野縁52等の上面を覆う重なり代が設けられている。
また、上記耐火補強体81aにおいて、該熱遮断層83と吸熱層84とは、複数位置でステープル等により連結されることで一体化されている。これにより、軒裏天井板35上に耐火補強体81aを敷設するだけで吸熱層84と熱遮断層83とが同時に形成され、軒裏天井板35上に容易に耐火補強層81を形成することが可能である。また、本実施形態においては、吸熱層84、熱遮断層83ともに可撓性を有しているので、施工に応じて適宜曲げ伸ばしを行うことが可能であって軒裏天井板35上への設置を容易に行い得るばかりでなく、軒裏天井板35上に設置するだけで野縁52等の軒裏天井板35上の凹凸形状に適当に追従した状態位置付けられることとなり、施工性もきわめて高いものとなるのである。
なお、吸熱層84を形成する吸熱袋87の大きさや形状、水酸化アルミニウムの容量や粒度、熱遮断層83の厚さや重量等は、要求される耐火性能に応じて適宜変更したものを採用することも可能である。また、耐火補強体81aの梁間方向の長さは適宜変更可能であって、本実施形態の如く梁間方向に1の耐火補強体81aを設ける構成も可能であるばかりでなく、梁間方向の大きさを小さくした耐火補強体81aを複数個並べる構成も採用可能である。同様に、耐火補強体81aの桁行き方向の長さも、1の耐火補強体81aで軒裏天井板35の敷設長さに相当する耐火補強体81aを用いることも可能であるばかりでなく、複数の耐火補強体81aを桁行き方向に並べて敷設することで軒裏天井板35を敷設方向に亘って覆う構成を採用することも可能である。
【0058】
<第4実施形態>
図9に示す如く、本発明に係る戸建て住宅1は、所謂陸屋根を有する住宅1であって、軽量鉄骨を組み合わせて形成される架構1aと、該架構1aに取り付けられて住宅の側面を形成する外壁構造1bと、架構1aに取り付けられて住宅の上面を形成する屋根構造1cとを備えている。
架構1aは、基礎B上に立設される複数の柱材や面材と、これら柱材や面材を連結する梁材とを備えて形成される軸組構造として構成されている。
外壁構造1bは、平板状の外壁2と、該外壁2よりも屋内側に設けられる断熱層(図示省略)とを備えている。
外壁2は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成される複数の外壁材を並列状に並べて形成されている。
また、屋根構造1cは、平板状の軽量気泡コンクリートパネルを水平に敷き並べて形成される所謂陸屋根として形成されており、2階部分の外壁2よりも突出する軒5を備えている。
【0059】
図10に示す如く、当該軒5は、2階部分の外壁2よりも突出して設けられる軒先構造10と、該軒先構造10を支持する支持構造20と、該軒先構造10により包囲される軒裏空間Sを塞ぐ軒裏天井構造30とを備えている。
支持構造20は、一対の柱材の間に架設されて2階部分の外壁2及び屋根板2cを支持する軒桁2bと、該軒桁2bから外壁2の外方に向けて伸びる持出し梁21と、これら持出し梁21の先端同士を連結する軒先桁22とを備えている。これらの梁21及び桁2b、22は、梁間や梁と桁の間にジョイントピース(図示省略)を配備し、当該梁及び桁とジョイントピースとをボルト等により締結することにより連結される。
【0060】
軒先構造10は、支持構造20の軒桁2bから軒先桁22に亘って架設される軒板部材23と、該軒板部材23の先端に取り付けられる役物部材24と、該役物部材24の下方に位置すると共に軒先桁22の上端部から該軒先桁22の下端部よりも下方に伸びる鼻隠部材25とを備えている。
軒板部材23は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されている。また、軒桁2b及び軒先桁22の上面には剛床金物が取り付けられており、該剛床金物と軒板部材23との間にはモルタルが充填されている。また、隣接する軒板部材23の間にはコッター(図示省略)が取り付けられており、これら隣接する軒板部材23はコッター及びモルタルを介して連結されている。
【0061】
役物部材24は、軒先桁22の上端部にボルト等を介して締結されて該軒先桁22の上端部から水平に伸びる平坦部24aと、該平坦部24aの先端部から直角に屈曲されて上方に伸びる立上り部24bと、該立上り部24bの先端から軒板部材23に向けて傾斜状に屈曲して形成される屈曲部24cとを備えて形成されている。また、役物部材24は、平坦部24aが軒先桁22の上端部にボルト等を介して締結されている。また、平坦部24aの先端部と立上り部24bと傾斜部との間には裏打ち材26が充填されると共に、該裏打ち材と軒板部材23との間にはモルタルが充填されている。
鼻隠部材25は、軒板部材23と同様に平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されており、一方の面を軒先桁22に対向させた状態で設けられ、上端部及び下端部が金物部材k3を介して軒先桁22に取り付けられている。また、鼻隠部材25の他方の面には、軒樋15が取り付けられている。
【0062】
上述の如く各部材が配備されることにより、当該軒5には、軒桁2b、軒板部材23、軒先桁22及び鼻隠部材25により包囲される軒裏空間Sが形成されており、軒裏天井構造30は、当該軒裏空間Sを下方から塞ぐ構造である。
軒裏天井構造30は、軒先桁から鼻隠部材25の下端部まで延設される先桁下金物36と、該先桁下金物36の下端部に取り付けられるブラケット金物31aと、該ブラケット金物31aに懸架される軒先取付金物32と、軒桁2bの下端部に取り付けられて外壁2を支持するZ金物k2に連結される外壁取付金物33と、これら軒先取付金物32と外壁取付金物33の間に組まれる野縁組立体34と、軒先取付金物32と外壁取付金物33に亘って架設されると共に野縁組立体34に懸架される軒天部材80とを備えている。
【0063】
ブラケット金物31aは、先桁下金物36に重なった状態でタッピンネジ等を介して鼻隠部材25に取り付けられる取付部31bと、建物の外壁に向けて延びる水平板部31cとを備えている。また、軒先取付金物32は、金属板をプレス成形等を施して形成されており、ブラケット金物31aの水平板部31cにボルト等を介して締結される締結部32bと、該締結部32bの先端部から屈曲して形成される小口部32cと、該小口部32cの下端部から屈曲して形成される座部32dとを備えている。
残りの軒裏天井構造30の各構成については、上記第1実施形態と同様であるので、上記第1実施形態と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、軒裏天井板35上に耐火断熱層82、熱遮断層83を備える耐火補強体81aが設けられているので、軒裏天井板35を経由して軒裏空間Sに至る熱の移動が抑制されることとなり、これによって軒裏天井板35のみによる軒裏天井構造30の耐火性能よりも耐火性能を向上が図られる。
また、当該実施形態は、上記屋根構造1cのみに拘らず、図9に示す如く、住宅1の2階に設けられる張出しベランダDの張出し床の下部構造dに採用することも可能である。かかる構成においては、役物部材24及び鼻隠部材25に代えて、手摺り壁26が取り付けられている。該手摺り壁26は、軒板部材23と同様に平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されており、下端部を軒先桁22よりも下方に位置すると共に上端部を2階外壁2の中途部に位置させた状態で取付金物等を介して軒先桁22に取り付けられている。
【0065】
以上、本発明の軒裏天井構造30の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではない。
例えば、上記軒裏天井構造30は、1階をピロティとする住宅1の当該1階部分の天井構造に採用することも可能である。
【0066】
本願発明の構成は以上であって、本願発明の有効性を確認すべく、本願発明者らは、軒天部材80及び軒裏天井板35として、以下に示す複数の実施例と比較例とを用いて実験を行った。なお、当該実施例の軒天部材80は、軒裏天井板35と耐火補強層81とを一体化したもののみでなく、軒裏天井板35に耐火補強体81aを載置した構成を含む。
【0067】
<実施例1>
【表1】


※( )内は、膨張後の厚さを示す。
【0068】
<実施例2>
【表2】

【0069】
<比較例1>
【表3】

【0070】
(試験方法)
図11及び図12は、耐火補強層81の有無やその構成を除いて各試験体に共通の構成を示している。図に示す如く、各試験体は、上記第1実施形態の垂木部材12、ジョイント金物13、鼻隠部材14、耐火補強体81aを除く軒裏天井構造30を共通して備えており、当該軒裏天井構造30の所定位置に軒天部材80(軒裏天井板35及び耐火補強体81a等)を設ける。なお、比較例においては軒裏天井板35のみを設ける。
当該試験体は、住宅1にて桁行き方向に沿設される軒のうち、互いに等間隔に列ぶ3本の垂木部材12によって規定される部分のみを抽出してモデル化したものであって、軒の出L1を550mm、桁行き方向の長さL2を1000mmとするものが採用されている。また、実施例の軒裏天井板35及び比較例の軒裏天井板35は、梁間方向に427mm、桁行き方向に500mmのものを2枚並べて敷設している。
【0071】
また、各試験体は、軒裏天井板35の下面を除く全ての面を厚さ25mmの繊維混入けい酸カルシウム板を2枚積層してなる耐熱壁Wにより隙間なく覆い、これによって軒裏天井板35の下面のみを露出させている。さらに、垂木部材12上に載置される外壁と擬制される耐熱壁Wと軒の取り合い位置に形成されている開口部を平坦な標準板Qにより塞いておく。
また、当該試験体には、図11及び図12のa、b、cの位置に熱電対を夫々仕込んでおく。
なお、当該図11は、実施例2の試験体を示している。
そして、各試験体を耐火試験炉内に設置し、その後、試験体の軒裏天井板35の露出面に向けて火炎を放射して火災時を再現し、当該火炎放射による各熱電対の温度変化を記録する。
そして、a又はbの平均温度が140℃以上になるまでの時間を耐火時間として計測すると共に、各熱電対の温度上昇の履歴を観察する。
なお、当該火炎の火熱設定は、ISO834に規定される標準火熱曲線に沿うものであって、温度曲線は以下の式1によって規定される。
【0072】
【数1】

【0073】
また、当該試験方法は、上記所定の試験に相当し、国土交通大臣認定の耐火試験に相当する。
(試験結果)
図13は、実施例1の試験結果であって、グラフ(イ)は標準耐火曲線、グラフ(ロ)は140℃を示す直線、グラフ(ハ)はaとbの平均温度曲線、(ニ)はcの温度曲線を示している。また、図14は実施例2の試験結果であって、各グラフは図13と同様である。また、図15は比較例1の試験結果であって、各グラフは図13と同様である。
図から明らかなとおり、実施例1及び実施例2の耐火時間は比較例1の耐火時間よりも長く、これによって実施例1及び実施例2の構成は耐火性能の向上に効果的であることが確認される。なお、当該比較例の耐火時間は35分であるのに対し、実施例1の耐火時間は52分であり、実施例2の耐火時間は77分である。
なお、耐火時間とは、各熱電対の平均温度上昇が燃焼開始(温度計測開始)から140℃を越えることとなるまでに掛かる時間のことを言い、当該規定は上記国土交通大臣認定の耐火試験に相当する。
【0074】
本願発明の有効性を確認すべく、本願発明者らは、さらに軒天部材80及び軒裏天井板35として、以下に示す複数の実施例を用いて実験を行った。なお、当該実施例の軒天部材80は、軒裏天井板35と耐火補強層81とを一体化したもののみでなく、軒裏天井板35に耐火補強体81aを載置した構成を含む。
【0075】
<実施例3>
【表4】

【0076】
(試験方法)
図16及び図17は、上記実施例3の試験体の構成を示している。図に示す如く、該試験体は、上記第1実施形態の垂木部材12、ジョイント金物13、鼻隠部材14、を備えると共に、軒裏天井板35及び耐火補強体81aを備えている。
当該試験体は、住宅1にて桁行き方向に沿設される軒のうち、互いに等間隔に列ぶ5本の垂木部材12によって規定される部分のみを抽出してモデル化したものであって、軒の出L1を550mm、桁行き方向の長さL2を3200mmとするものが採用されている。また、軒裏天井板35は、上記実施例1等とおなじものを4枚並べて敷設している。他の構成についても、上記実施例1等と同様である。
また、当該試験体には、図16及び図17のa、b、c、dの位置に熱電対を夫々仕込んでおく。
そして、各試験体を耐火試験炉内に設置し、その後、試験体の軒裏天井板35の露出面に向けて火炎を放射して火災時を再現し、当該火炎放射による各熱電対の温度変化を記録する。当該火災の再現についても、上記実施例1等と同様である。なお、上記実施例3は、実験設備に合わせて単に寸法を変更させたのみであるので、当該寸法が上記実施例1等と異なる場合であっても、当該実施例や比較例と同様に実施例3における構成の傾向を把握することは可能である。
【0077】
<実施例4>
【表5】

【0078】
(試験方法)
実施例4については、耐火補強体の構成以外の構成については上記実施例1等の試験方法と同じであるので、その説明を省略する。
【0079】
(試験結果)
図18及び、図19は、実施例3の試験結果であって、グラフ(イ)は標準耐火曲線、グラフ(ロ)は140℃を示す直線、グラフ(ハ)はa'の温度曲線、グラフ(ニ)はb'の平均温度曲線、グラフ(ホ)はc'の温度曲線、グラフ(ヘ)はd'の平均温度曲線を示している。
また、図20は実施例4の試験結果であって、グラフ(イ)は標準耐火曲線、グラフ(ロ)は140℃を示す直線、グラフ(ハ)はaとbの平均温度曲線、(ニ)はcの温度曲線を示している。
図から明らかなとおり、実施例3及び実施例4の耐火時間は比較例1の耐火時間よりも長く、これによって実施例3及び実施例4の構成は耐火性能の向上に効果的であることが確認される。なお、当該比較例の耐火時間は35分であるのに対し、実施例3の耐火時間は60分以上であり、実施例4の耐火時間は47分程度である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本願発明の第1実施形態の軒裏天井構造を備える寄棟屋根の住宅の断面図である。
【図2】該軒裏天井構造の断面図である。
【図3】本願発明の第2実施形態の軒裏天井構造の断面図である。
【図4】耐火補強体を備え付ける手順を示す断面図である。
【図5】図4に引き続いて耐火補強体を備え付ける手順を示す断面図である。
【図6】本願発明の第3実施形態の軒裏天井構造の要部断面図である。
【図7】他の軒裏天井構造の要部断面図である。
【図8】第3実施形態の変形例を説明する軒裏天井構造の要部断面図である。
【図9】本願発明の第4実施形態の軒裏天井構造を備える陸屋根の住宅の断面図である。
【図10】該軒裏天井構造の断面図である。
【図11】実施例2の試験体の構成を示す断面図である。
【図12】図10中A−A線に沿う断面であって、測定点の位置を示す概略図である。
【図13】実施例1の試験結果を示すグラフである。
【図14】実施例2の試験結果を示すグラフである。
【図15】比較例1の試験結果を示すグラフである。
【図16】実施例3の試験体の構成を示す断面図である。
【図17】実施例3の試験体の構成を示す断面図である。
【図18】実施例3の試験結果を示すグラフである。
【図19】実施例3の試験結果を示すグラフである。
【図20】実施例4の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1 住宅
2 建物本体
3 1階屋根
4 2階屋根
5 軒
10 軒先構造
11 屋根板部材
12 垂木部材
13 ジョイント金物
14 鼻隠部材
30 軒裏天井構造
31 L字状金物
32 軒先取付金物
33 外壁取付金物
34 野縁組立体
35 軒裏天井板
51 野縁
52 野縁受け
80 軒天部材
81 耐火補強層
81a 耐火補強体
82 耐火断熱層
83 熱遮断層
84 吸熱層
S 軒裏空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒天部材が設けられ、該軒天部材の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒天部材は、所定の耐火性能を有する軒裏天井板と、該軒裏天井板に積層される耐火補強層とを備え、該耐火補強層は、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴とする軒裏天井構造。
【請求項2】
前記耐火断熱層は、火熱に起因する温度上昇により膨張して所定厚さの断熱層を形成する膨張断熱シート又は膨張断熱塗膜により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軒裏天井構造。
【請求項3】
前記熱遮断層は、アルミニウム薄膜、亜鉛鉄板又は鋼板により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軒裏天井構造。
【請求項4】
前記吸熱層は、水酸化アルミニウムを主材として形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軒裏天井構造。
【請求項5】
前記吸熱層は、水酸化アルミニウム粉末を封入してなる包袋を敷設して形成されることを特徴とする請求項4に記載の軒裏天井構造。
【請求項6】
建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒裏天井板が設けられ、該軒裏天井板の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒裏天井板の上面が、水酸化アルミニウムを主材として形成される吸熱層を備える耐火補強体により覆われていることを特徴とする軒裏天井構造。
【請求項7】
前記吸熱層は、水酸化アルミニウム粉末を封入してなる包袋を敷設して形成されることを特徴とする請求項6に記載の軒裏天井構造。
【請求項8】
前記耐火補強体は、請求項7に記載した吸熱層と、アルミニウムを主材とする熱遮断層とを備えて形成されていることを特徴とする請求項6に記載の軒裏天井構造。
【請求項9】
前記耐火補強体は、前記軒裏天井板の上面に前記吸熱層を載置し、前記吸熱層の上面に前記熱遮断層を積層した状態で前記軒裏空間に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の軒裏天井構造。
【請求項10】
建物の軒裏天井構造を形成する軒裏天井板に積層される耐火補強体であって、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴とする耐火補強体。
【請求項11】
建物の軒裏天井構造を形成する軒裏天井板に積層される耐火補強体であって、水酸化アルミニウムを主材とする吸熱層を備えて形成されることを特徴とする耐火補強体。
【請求項12】
前記吸熱層は、水酸化アルミニウム粉末を封入してなる包袋を敷設して形成されることを特徴とする請求項11に記載の耐火補強体。
【請求項13】
前記吸熱層と、アルミニウムからなる熱遮断層とを備えて形成されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の耐火補強体。
【請求項14】
前記軒裏天井板上に前記吸熱層が位置し、該吸熱層上に熱遮断層が位置することを特徴とする請求項13に記載の耐火補強体。
【請求項15】
軒先の桁行き方向に沿って所定の耐火性能を有する複数枚の軒裏天井板が敷き並べられて軒裏空間が形成され、各軒裏天井板は、建物の外壁に沿う側縁部が外壁取付金物に保持されると共に前記軒先に沿う側縁部が前記軒先に支持されている軒先取付金物に保持されている軒裏天井構造の耐火補強方法であって、
いずれか一方の取付金物を取り外して前記軒裏天井板の一方の側縁部の保持状態を解除し、
他方の側縁部を揺動軸として前記軒裏天井板を下向き方向に揺動させて該軒裏天井板の上面を露出させ、
該軒裏天井板の上面に耐火補強体を敷設し、その後、
前記軒裏天井板を前記揺動軸廻り上向き方向に揺動させた後、前記一方の取付金物を取り付けて前記軒裏天井板の一方の側縁部を再び保持状態とする
ことを特徴とする軒裏天井構造の耐火補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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