説明

軟水化装置、並びに、給湯システム

【課題】利用者による軟水の利用と重複しないタイミングで軟水器の再生を実施可能な軟水化装置、並びに、当該軟水化装置を備えた給湯システムの提供を目的とする。
【解決手段】軟水化装置は、軟水器と、再生塩水供給器と、制御手段とを有する。軟水化装置は、再生塩水供給器に補水して生成される塩水を軟水器に供給し、その後、軟水器に水を通じることにより塩水を排出させて洗浄する再生運転を実施可能である。再生運転のタイミングは、軟水化運転の実施履歴に基づいて設定され、再生運転の開始予定の予定タイミングT1を基準として設定される所定の期間L内に軟水化運転の実施が見込まれる場合に、再生運転を開始する開始タイミングT2が、前記予定タイミングT1に対して遅延される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から供給された湯水を軟水化可能な軟水化装置、並びに、当該ユニットを用いた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、陽イオン交換樹脂が入れられている軟水器を通過させて、水道水や井戸水などを軟水に変え、この軟水器を通過させた水を用いて給湯が行われている。そして、軟水は、肌によく、泡立ちも良いのでお風呂で使用したい需要が増えてきている。
【0003】
このような軟水器は、水道水や井戸水などを通過させて軟水化を継続すると、最終的には軟水化ができなくなる。そのため、軟水器に塩水を供給して、軟水器の再生を行っている。
【0004】
このような軟水器の再生を自動的に行うものもあり、このように自動的に行う装置の場合には、例えば、軟水器を通過する水の量が一定量を超えた時に再生を行ったり、所定の周期で再生を行ったりしている。
このような装置は、特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】特開2002−39613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軟水器の再生を行う際は、軟水器に対する水道水や井戸水の供給を遮断して、塩水を軟水器に供給するため、軟水器の再生中は、軟水化を行うことができない。そして、この再生処理は、所定の時間ごとなどに実施するが、軟水器の再生と、給湯を行う時期とが重なる場合があるという問題がある。
【0006】
そのため、例えば、特許文献1の装置では、浴槽に対する落とし込みの実施中で軟水器の再生が行われる場合、落とし込みを一旦中断し、軟水器の再生を行い、軟水器の再生が終了した後に、落とし込みが再開される。そして、落とし込みの中断までの量を記憶しておき、落とし込みが中断しても、所定の量の落とし込みができるようになっている。
【0007】
しかしながら、軟水器の再生は、塩タンクへの水の供給と、その塩タンクから軟水器への塩水供給とを繰り返し、最後に水を通じて洗浄して行われるので、時間がかかるものである。また、仮に塩タンクに一度に大量の塩水を調製可能な構成とし、塩タンクへの水の供給頻度を抑制したとしても、軟水器の再生には相当の時間を要する。そして、その間、使用できない状態が続くので、軟水のお湯を利用できなかったり、落とし込みに時間がかかったりするので、利用者にとっては不便であった。
【0008】
一方、利用者が軟水を利用する時間帯を避けて軟水器の再生を行うべく、夜間に再生処理を行う構成とすることも考えられる。しかし、この場合は、軟水器の作動音が騒音として際だってしまうという不都合を招来してしまう。また、近年のライフスタイルの多様化に伴い、深夜に軟水が使用される可能性もある。そのため、このような場合は、夜間に再生処理を行う構成としても、軟水の使用と軟水器の再生処理とがバッティングしてしまうといった不都合を招来する可能性があった。従って、従来技術においては、かかる不都合を考慮しつつ、いかに利用者による軟水の利用と重複しないタイミングで軟水器の再生を行うかが問題となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記した不都合が生じない軟水化装置、並びに、当該軟水化装置を備えた給湯システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、軟水器と、再生塩水供給器と、制御手段とを有し、軟水器を通った水を軟水化して供給する軟水化運転と、再生塩水供給器に補水して生成される塩水を軟水器へ供給し、その後、軟水器に水を通じることにより塩水を排出させて洗浄する再生運転とを実施可能であり、軟水化運転の実施履歴に基づき、前記制御手段によって再生運転の開始予定の予定タイミングT1が設定され、再生運転の開始予定の予定タイミングT1を基準として設定される所定の期間L内に軟水化運転の実施が見込まれる場合に、再生運転を開始する開始タイミングT2が、前記予定タイミングT1に対して遅延されることを特徴とする軟水化装置である。
【0011】
かかる構成によれば、軟水化運転と重複しないタイミングで再生運転を実施可能な軟水化装置を提供することができる。また、本発明の軟水化装置は、軟水化運転の実施が再生運転の実施予定と重複すると想定される場合に、再生運転の開始予定の予定タイミングT1から再生運転の開始を遅延するものであり、再生運転が夜間のような騒音の発生が懸念される時間帯に集中する訳ではない。そのため、本発明の軟水化装置は、例えば夜間のような騒音の発生を防止したい時間帯に再生運転が集中するのを防止することができる。
【0012】
ここで、上記したように再生運転を開始する開始タイミングT2を遅延する場合の遅延時間は、軟水化運転に伴う供給先における軟水の使用形態を加味して設定されることが望ましい。具体的には、例えば、軟水の使用形態によっては、軟水の使用が一旦停止しても、その後間もなく軟水が再使用される可能性が高い場合がある。このような場合は、軟水の再使用を考慮して遅延時間を長い目に取ることが望ましい可能性が高い。このように、供給先における軟水の使用形態を考慮して再生運転の遅延時間を調整すれば、より一層確実に利用者が軟水を利用する時間帯を避けて軟水器の再生を行うことができるものと想定される。
【0013】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、軟水の供給先における軟水の使用形態に基づき、遅延時間の長さが調整されることを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置である。
【0014】
かかる構成によれば、利用者が軟水を利用する時間帯を避けて軟水器の再生運転を行うことができ、利用者の軟水の利用を阻害することなく、軟水器の再生運転を実施可能な軟水化装置を提供できる。
【0015】
ここで、上記請求項1又は2に記載の軟水化装置は、期間Lが、予定タイミングT1から始まり、当該予定タイミングT1から再生運転に要する時間だけ後のタイミングT3で終わる期間L1であることを特徴とするものであってもよい(請求項3)。
【0016】
かかる構成によれば、利用者が軟水を利用する時間帯と軟水器が再生運転を行う期間とが重複するのを確実に防止でき、再生運転によって利用者が軟水を利用できなくなるのを防止できる。
【0017】
ここで、上記したように予定タイミングT1から再生運転に要する時間だけ後のタイミングT3までの間に軟水の利用が想定される場合は、軟水器の再生運転を控えることが望ましい。しかし、予定タイミングT1よりも前の時点で軟水の利用が開始され、予定タイミングT1を過ぎても軟水が利用される場合が想定される。また、予定タイミングT1よりも前のタイミングで軟水の利用が終了する場合であっても、軟水の利用終了後間もなく軟水の利用が再開されることが想定される場合もある。
【0018】
本発明はかかる事態を想定したものであり、予定タイミングT1よりも前の時点から予定タイミングT1を過ぎても軟水が利用されるような使用形態であったり、予定タイミングT1よりも前のタイミングで軟水の利用が終了し、その後間もなく軟水の利用が再開されるような形態での使用が想定される場合であっても、利用者による軟水の利用を阻害することなく、軟水器の再生運転を実施可能な軟水化装置を提供できる。
【0019】
ここで、上記請求項1〜3のいずれかに記載の軟水化装置は、再生運転の開始予定の予定タイミングT1が、軟水器における水の軟水化能力が喪失すると想定されるタイミングT5よりも前のタイミングに設定されることを特徴とするものであることが望ましい(請求項4)。
【0020】
かかる構成によれば、再生運転の開始予定の予定タイミングT1が遅延された結果、予定タイミングT1以降に軟水器において軟水化運転が実施されたとしても、確実に軟水化された状態の湯水を供給することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、浴槽に湯水を落とし込む落とし込み運転、および、浴槽内の湯水を追い焚きする追い焚き運転を実施可能な給湯装置に供給される湯水を軟水化するものであり、前記給湯装置において落とし込み運転、または、追い焚き運転の実施が見込まれる場合に、制御手段より軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟水化装置である。
【0022】
かかる構成によれば、軟水の供給先たる給湯装置において落とし込み運転や追い焚き運転が実施される場合においても、落とし込み運転や追い焚き運転のために必要な軟水の供給を阻害することなく、軟水器の再生運転を実施可能な軟水化装置を提供できる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、軟水を加熱して熱負荷に供給する加熱軟水供給運転を実施可能な給湯装置に供給される湯水を軟水化するものであり、前記給湯装置において加熱軟水供給運転の実施が見込まれる場合に、制御手段により軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軟水化装置である。
【0024】
本発明の軟水化装置では、軟水の供給先たる給湯装置において上記した加熱軟水供給運転の実施が見込まれる場合に再生運転の開始タイミングT2が遅延され、加熱軟水供給運転用に使用する軟水を供給する軟水化運転が再生運転に対して優先される。そのため、本発明の軟水化装置によれば、加熱軟水供給運転に必要な軟水の供給を阻害することなく、軟水器の再生運転を実施可能な軟水化装置を提供できる。
【0025】
ここで、上記したように給湯装置側において軟水が給湯等に使用される場合は、洗面所や台所で使用される場合のようにごく短時間で済む場合と、シャワーや浴槽への落とし込みに使用される場合のように比較的長時間にわたる場合とがある。また、一般的に長時間にわたって加熱軟水供給運転が行われた場合は、一旦加熱軟水供給運転が停止しても、その後加熱軟水供給運転が再開されることが多い傾向にある。従って、加熱軟水供給運転により軟水が使用される場合であって、その使用時間がある程度の長時間に及ぶと想定される場合は、再生運転の開始タイミングT2を遅延することが望ましい。
【0026】
そこで、上記請求項6に記載の軟水化装置は、給湯装置が加熱軟水供給運転を実施している間に再生運転の開始予定の予定タイミングT1が到来する場合であって、加熱軟水供給運転の実施期間が所定時間以上であることを条件として、再生運転の開始タイミングT2が遅延されることを特徴とする構成とすることがより一層望ましい(請求項7)。
【0027】
ここで、上記請求項6や請求項7に記載の軟水化装置において採用されている給湯装置では、加熱軟水供給運転が一旦完了してもその後間もなく加熱軟水供給運転を再開するといったような使用形態で使用される可能性がある。このように先の加熱軟水供給運転の完了と、後の加熱軟水供給運転の開始との間隔が短い場合において、後の加熱軟水供給運転において速やかに給湯設定温度の湯を供給可能とするためには、先の加熱軟水供給運転が完了した後、しばらくの間、加熱軟水供給運転の再開に備えて加熱軟水供給運転の再開時において、速やかに給湯設定温度の湯を供給できる状態(待機状態)で給湯装置を待機させておく方策をとることができる。
【0028】
上記したように、給湯装置を待機状態で待機できる構成とした場合、待機状態とする期間は、加熱軟水供給運転が開始される可能性が高い期間に設定されるものと想定される。そのため、この期間内に再生運転の開始予定の予定タイミングT1が到来する場合は、再生運転が加熱軟水供給運転と重複するのを防止すべく、再生運転を実際に開始する開始タイミングT2を待機状態とする期間が経過した後のタイミングに設定することが望ましい。
【0029】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項8に記載の発明は、給湯装置が加熱軟水供給運転を完了した後、所定の期間Mにわたって加熱軟水供給運転の再開に備えて待機する待機動作を実施するものであり、再生運転の開始予定の予定タイミングT1が、前記期間Mの完了までのタイミングに該当することを条件として、再生運転の開始タイミングT2が遅延されることを特徴とする請求項6又は7に記載の軟水化装置である。
【0030】
かかる構成によれば、給湯装置が待機動作中に加熱軟水供給運転を再開するようなことがあっても、加熱軟水供給運転と再生運転とが重複するのを防止できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、制御手段が、浴室への入室の有無を検知する検知手段から発信される入室の有無に関する検知信号を受信可能であり、浴室への入室があった旨の検知信号を制御手段が受信した場合に、制御手段により軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の軟水化装置である。
【0032】
本発明のように浴室への入室の有無を検知可能な検知手段を設けた場合、この検知手段により浴室への入室があったことが検知されると、軟水が使用される可能性が高く、軟水化運転の実施が見込まれるものと想定される。そこで、かかる知見に基づき、本発明では、浴室への入室があった旨の検知信号を制御手段が受信した場合に、制御手段によって軟水化運転の実施見込みがあると判断され、再生運転の開始タイミングT2を遅延することとしている。そのため、本発明によれば、浴室での軟水の使用のために軟水化運転が実施される場合であっても、これと軟水化装置の再生運転とが重複するのを防止できる。
【0033】
ここで、上記したようにして予定タイミングT1に対して遅延したタイミングを再生運転の開始タイミングT2として設定する場合、一度当該開始タイミングT2を設定しても、この開始タイミングT2にも軟水化運転の実施が見込まれるといった事態が生じる可能性がある。このような事態を想定すると、軟水化運転の開始タイミングT2は複数回遅延可能であることが望ましい。その一方で、軟水化運転を長々と遅延すると、再生運転がいつまでも実施できず、軟水器が完全に軟水化不可能な状態になってしまい、軟水化運転を実施しても実質的に軟水を供給できない状態になってしまう等、様々な弊害が生じる可能性もある。
【0034】
そこで、上記した問題点を勘案して提供される請求項10に記載の発明は、再生運転の開始タイミングT2を、連続して所定の上限回数まで遅延できることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の軟水化装置である。
【0035】
かかる構成によれば、再生運転の開始タイミングT2を最適なタイミングに設定することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明は、再生運転の開始タイミングT2を連続して複数回遅延でき、開始タイミングT2の遅延が所定の基準回数に達することを条件として、制御手段に対して再生運転実施指令を入力可能であり、当該再生運転実施指令が入力されることにより、開始タイミングT2の遅延が解除され、再生運転の実施が許可されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の軟水化装置である。
【0037】
かかる構成によれば、軟水化運転の実施状況に合わせて適切なタイミングまで再生運転の開始タイミングT2を遅延させることができると共に、ユーザーが希望するタイミングで再生運転を実施可能な軟水化装置を提供できる。
【0038】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の軟水化装置と、給湯装置とを有し、前記軟水化装置で軟水化された湯水を前記給湯装置に供給可能であることを特徴とする給湯システムである。
【0039】
本発明の給湯システムは、上記した軟水化装置を備えたものであるため給湯装置の運転に必要な軟水の供給を阻害することなく、軟水装置側において再生運転を実施することができる。
【0040】
請求項13に記載の発明は、軟水化装置および給湯装置をデータ通信可能なように接続するデータ通信網と、当該データ通信網を介して給湯装置に向けて信号を発信する信号発信手段とを有し、当該信号発信手段から発信される信号に基づいて給湯装置が作動するものであり、前記軟水化装置に設けられた制御手段が、当該信号発信手段から発信される信号を前記データ通信網を介して受信し、当該信号に基づいて軟水化運転が実施される見込みが判断されることを特徴とする請求項12に記載の給湯システムである。
【0041】
本発明の給湯システムでは、信号発信手段から発信され、データ通信網を伝達している信号を軟水化装置に設けられた制御手段で受信し、これに基づいて軟水化運転の実施見込みを判断することとしている。すなわち、本発明の給湯システムでは、軟水化装置側の制御手段によって軟水化運転の実施見込みを判断し、必要に応じて再生運転を遅延することとしており、給湯装置側においてこれらの判断を行う必要がない。従って、本発明の給湯システムでは、給湯装置側に軟水化運転の実施見込みを判断するための新たな構成や機能を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、利用者による軟水の利用と重複しないタイミングで軟水器の再生を実施可能な軟水化装置、並びに、当該軟水化装置を備えた給湯システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
続いて、本発明の一実施形態にかかる給湯システム1および軟水化装置10について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図3〜図6は、本実施形態で採用されている軟水化装置10における通水状態を示すものであり、実線で記した部分は通水可能な状態であることを示し、二点鎖線で示した部分は通水不可能な状態であることを示す。
【0044】
図1に示すように、給湯システム1は、給湯装置2と軟水化装置10とを有し、これらをデータ通信網3および軟水供給配管5により接続したものである。また、データ通信網3には、リモコン6や、人検知センサ7が電気的に接続されている。リモコン6は、給湯システム1を操作するためのものである。また、人検知センサ7は、浴室に設置され、浴室における人の有無を検知することができるものである。
【0045】
給湯装置2は、従来公知のものと同様のものとされており、軟水供給配管5を介して軟水化装置10側から供給されてきた軟水(湯水)を加熱して供給する加熱軟水供給運転を実施することができる。また、給湯装置2には、出湯配管8が接続されており、これを介して加熱された軟水(湯水)を外部の熱負荷に供給することができる。具体的には、給湯装置2から出湯配管8を介して供給された軟水(湯水)は、図示しないカランやシャワーへの給湯や、図示しない浴槽への落とし込みに使用できる。すなわち、給湯装置2は、軟水化装置10で軟水化された湯水を用いて給湯に用いる湯水を供給する給湯運転を行うことができる。また、給湯装置2は、軟水化装置10で軟水化された湯水を用いて戻り配管9a及び往き配管9bを介して浴槽への落とし込みを行う落とし込み運転を行うことができる。これに加えて、給湯装置2は、図示しない浴槽との間で接続された戻り配管9aを介して浴槽から戻って来た湯水を再加熱すると共に、往き配管9bを介して浴槽に戻す追い焚き運転を行うことも可能である。
【0046】
給湯装置2は、データ通信網3を介してリモコン6や人検知センサ7、軟水化装置10とデータ通信することができる。また、給湯装置2は、リモコン6を介して設定された設定条件に基づいて加熱軟水供給運転、すなわち軟水を用いた給湯運転や落とし込み運転、追い焚き運転を行うことができる。また、給湯装置2は、内部に水位検知手段4を有し、これによって浴槽(図示せず)における水位を検知できる構成とされている。給湯装置2は、前記した水位検知手段4によって検知された水位に関するデータをデータ通信網3に向けて発信することができる。
【0047】
図2に示すように、軟水化装置10は、軟水器11と、再生塩水供給器12とを有する。軟水器11は、外部から供給された湯水を軟水化することができるものである。具体的には、軟水器11は、陽イオン交換樹脂が充填されたカラムにより構成されている。そのため、軟水器11に外部から供給された湯水を通過させると、これに含まれているカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが陽イオン交換樹脂に吸着され、水の硬度が低下した状態、すなわち軟水化した状態になる。また、軟水器11を構成する陽イオン交換樹脂は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの吸着に限界があるが、塩水を通過させ、陽イオン交換樹脂に吸着しているカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを取り除くことにより、湯水を軟水化可能な状態に再生することができる。
【0048】
軟水器11には、水供給配管20や軟水供給配管5が接続されている。水供給配管20は、外部の給水源から軟水器11に向けて湯水を供給可能なものである。水供給配管20の中途には、給水弁23や減圧弁24が取り付けられており、給水弁23の開度を調整することにより軟水器11への湯水の供給量を調整することができる。減圧弁24は、給水弁23よりも水供給配管20を流れる湯水の流れ方向上流側の位置に取り付けられている。一方、軟水供給配管5は、軟水器11において軟水化された湯水を給湯装置2側に向けて供給するための配管であり、中途に水量センサ19や軟水供給弁25を有する。そのため、軟水化装置10は、給水弁23や軟水供給弁25を開状態とし、水供給配管20を介して外部の給水源から軟水器11に向けて湯水を供給することにより、この湯水を軟水化し、この軟水化された湯水を軟水供給配管5を介して給湯装置2側に供給することができる。
【0049】
上記した水供給配管20の中途には、排水管21が接続されている。排水管21は、後に詳述する軟水器11の再生運転の際に発生する排水などを排出するために設けられた配管である。排水管21の中途には、排水弁26が設けられている。
【0050】
また、再生塩水供給器12は、軟水器11の再生のための塩水を製造し、これを軟水器11へ供給することができるものである。具体的には、再生塩水供給器12には、塩投入部28が設けられており、これに塩水供給配管29の一端側が接続されている。塩水供給配管29の他端側は、軟水供給配管5に接続されている。さらに具体的には、塩水供給配管29の他端側は、軟水供給配管5の中途であって、軟水器11と軟水供給弁25との間の位置に接続されている。再生塩水供給器12は、塩水供給配管29の中途に設けられた塩水供給弁27を開いて塩水供給配管29から塩投入部28に外部の水を導入することで、この塩を溶解させて塩水を作ることができると共に、この塩水を塩水供給配管29を介して軟水器11へと流すことができる。本実施形態では、塩投入部28が、軟水器11よりも上側に配置されている。そのため、塩投入部28に塩水が溜まっている状態で塩水供給弁27を開くと、塩水が重力による自然落下により塩水供給配管29を勢いよく流れることとなる。
【0051】
上記した軟水供給配管5と水供給配管20との間には、バイパス配管30が接続されており、これにより軟水器11を迂回する流路を形成可能とされている。さらに具体的には、バイパス配管30の一端側は、水供給配管20の中途であって、給水弁23と減圧弁24との間の位置に接続されている。また、バイパス配管30の他端側は、軟水供給配管5の中途であって、水量センサ19や軟水供給弁25よりも軟水の流れ方向下流側(給湯装置2側)の位置に接続されている。バイパス配管30の中途には、バイパス弁31と水量センサ32とが設けられている。そのため、軟水化装置10は、バイパス弁31を開くことにより、水供給配管20を介して外部から供給された湯水をバイパス配管30側に流し、軟水器11を迂回させることができる。
【0052】
上記した軟水化装置10は、軟水化運転と、再生運転とを行うことができる。軟水化運転は、水供給配管20を介して外部の給水源から供給された湯水を軟水化し、これを軟水供給配管5を介して給湯装置2側に供給する運転方法である。また、再生運転は、水供給配管20および塩水供給配管29を介して外部の給水源から供給された湯水を塩投入部28に流入させて塩水を作成し、この塩水を軟水器11に供給することにより、軟水器11を再生する運転方法である。
【0053】
さらに詳細に説明すると、軟水化装置10が軟水化運転を行う場合は、図3に示すように給水弁23や軟水供給弁25が開状態とされると共に、排水弁26や塩水供給弁27、バイパス弁31が閉止された状態とされる。そして、この状態で外部の給水源から水供給配管20を介して軟水器11に湯水が供給される。これにより、軟水器11を通過した湯水は、軟水化され、軟水供給配管5を介して給湯装置2側に供給される。
【0054】
一方、軟水化装置10が再生運転を行う場合は、補水動作と再生動作と洗浄動作とからなる一連の動作が複数回実施される。具体的には、軟水化装置10が再生運転を行う場合は、先ず補水動作が行われ、塩投入部28に塩水が準備される。すなわち、補水動作が行われる場合は、図4に示すように、給水弁23や排水弁26が閉止されると共に、軟水供給弁25や塩水供給弁27、バイパス弁31が開いた状態とされ、この状態で水供給配管20を介して外部の給水源から湯水が供給される。これにより、外部から供給された湯水が水供給配管20からバイパス配管30、軟水供給配管5、並びに、塩水供給配管29を通って塩投入部28に流入する。その後、塩投入部28に予め投入されていた塩が溶解し、塩水が準備された状態になる。なお、補水動作を行っている間、軟水化装置10は、給水弁23が閉止された状態とされており、この状態で図示しない蛇口などが開かれて外部から湯水を供給しても、この湯水は軟水器11を迂回してバイパス配管30を流れた後、塩投入部28側へ供給されない湯水は軟水供給配管5を介して給湯装置2側に排出される。そのため、軟水化装置10は、補水動作中には湯水を軟水化して給湯装置2側に供給することができない。
【0055】
上記したようにして塩投入部28に塩水が準備された状態になると、再生動作が行われる。具体的には、再生動作が行われる場合は、図5に示すように給水弁23や軟水供給弁25が閉止された状態とされる一方、排水弁26や塩水供給弁27、バイパス弁31が開いた状態とされる。これにより、再生塩水供給器12の塩投入部28に準備されていた塩水が軟水器11や排水管21を通って外部に排出される。塩投入部28に準備されている塩水は、重力により勢いよく軟水器11に向けて流れる。これに伴い、軟水器11を構成する陽イオン交換樹脂に吸着しているカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが除去されていく。再生動作は、塩投入部28内の塩水が無くなるまで行われる。なお、再生動作中は、図5に示すように給水弁23や軟水供給弁25が閉止され、バイパス弁31が開いた状態とされる。そのため、再生動作中は、水供給配管20を介して外部から湯水が供給されたとしても、この湯水は軟水器11を迂回して排出されることとなり、外部から供給された湯水を軟水化することができない。
【0056】
上記したようにして再生動作が完了すると、これに続いて洗浄動作が行われる。洗浄動作を行う場合は、図6に示すように軟水供給弁25や排水弁26、バイパス弁31が開いた状態とされ、給水弁23や塩水供給弁27が閉じた状態とされる。そして、この状態で外部の給水源から水供給配管20を介して湯水が供給される。これにより、外部から供給された湯水が、水供給配管20からバイパス配管30を通って、軟水器11に流れ込み、軟水器11が洗浄される。軟水器11を洗浄した湯水は、排水管21に向けて流れ、これを介して外部に排出される。なお、洗浄動作を行っている間、軟水化装置10は、補水動作中と同様に給水弁23が閉止された状態とされている。そのため、軟水化装置10は、洗浄動作中に外部から湯水を供給しても、この湯水は軟水化されることなく排水管21又は給湯装置2側に向けて排出されることとなる。
【0057】
ここで、上記した軟水化装置10において、軟水器11を再生する再生運転は1時間余りの時間を要する。また、上記したように、軟水化装置10が再生運転を行う場合は、外部から供給された湯水が軟水器11を迂回して給湯装置2側に供給されることとなり、軟水を給湯装置2に供給することができない。そこで、かかる事態を想定し、本実施形態の給湯システム1では、軟水化装置10に設けられた制御手段40により図7のフローチャートに示すような制御を行うことにより、給湯装置2において軟水を必要とする運転と、軟水化装置10の再生運転とが重複するのを防止し、要求に応じて給湯装置2側において軟水を使用することができるようにしている。
【0058】
さらに具体的に説明すると、軟水化装置10に設けられた制御手段40は、図7に示すように、先ずステップ1において軟水器11の再生運転の開始予定の予定タイミングT1を設定する。この予定タイミングT1の設定に際しては、軟水器11における軟水化運転の実施履歴が考慮される。具体的には、予定タイミングT1としては、軟水器11を使用開始したタイミングや、先の再生運転において軟水器11が再生されたタイミングT0から軟水化運転を行った積算値が所定の時間に達する時点や、前記したタイミングT0から所定期間後の時点、タイミングT0から軟水器11を通過して軟水化された湯水の量が所定量に達する時点等の適宜のタイミングを選択し、設定することができる。ここで、図8に示すように、予定タイミングT1は、軟水器11が完全に湯水を軟水化できなくなるタイミングT5ではなく、このタイミングT5よりもやや早いタイミングに設定される。すなわち、予定タイミングT1において、軟水器11は、軟水化能力がやや低下しているものの、湯水を軟水化する能力は完全には喪失していない。
【0059】
上記したようにしてステップ1で再生運転の開始予定の予定タイミングT1が設定されると、制御フローがステップ2に移行し、予定タイミングT1以前のタイミングで軟水化運転が実施されたか否か、すなわち給湯装置2側において給湯や落とし込み等が行われたか否かが確認される。具体的には、データ通信網3上を行き交う通信データを制御装置40が常時監視することにより、給湯装置2側における給湯や落とし込み等の運転の有無が確認される。さらに詳細には、給湯装置2は、給湯や落とし込み等の運転を行う際に、燃焼作動状態である旨をリモコン6を介して報知すべく、リモコン6に向けて燃焼作動中である旨の信号を発信する。制御装置40は、給湯装置2から燃焼作動中である旨の信号が発信されていないかを常時監視することにより、軟水化運転が行われたか否かを判断している。
【0060】
ここで、上記したようにして判断した結果、軟水化運転が実施されていない場合は、制御フローが後述するステップ8に移行する。一方、図8に矢印(1)〜(3)に示すように、予定タイミングT1以前のタイミングにおいて軟水化運転が実施されたことが確認されると、制御フローがステップ3に移行する。そして、ステップ3では、軟水化運転が完了するタイミングが予定タイミングT1より前であるか否かが確認される。ここで、軟水化運転の完了が予定タイミングT1よりも前である場合、すなわち図8に矢印(1)や矢印(2)で示すような場合は、制御フローが後述するステップ4に移行する。一方、図8に矢印(3)で示すように、軟水化運転の完了が予定タイミングT1以後にずれ込む場合は、制御フローが後述するステップ7へ移行する。
【0061】
ステップ3で軟水化運転が予定タイミングT1よりも前に完了したことが確認され、制御フローがステップ4に移行した場合は、この軟水化運転完了のタイミングから所定の期間M以内に予定タイミングT1が到来するか否かが確認される。ここで、期間Mは、給湯装置2が加熱軟水供給運転の完了後に再出湯に備えて準備している期間にあわせて設定されている。具体的には、給湯装置2では、給湯停止中において、再び出湯要求が発生した場合であっても、リモコン6で設定された給湯設定温度の湯が遅滞なく出湯できるように、給湯装置2内部における現在の缶体温度の検出値、入水温度の検出値、及び、給湯設定温度に基づいて、給湯装置2内部に配された熱交換器(図示せず)に向かって流れる缶体流量と、外部から供給された湯水が熱交換器を迂回して出湯側に合流するバイパス流量との比率を制御している。本実施形態では、このような制御を行っている期間を再出湯に備えて準備している期間として想定し、この期間の長さに合わせて期間Mの長さが調整されている。
【0062】
図8に矢印(2)で示す場合のように、ステップ4で軟水化運転の完了から期間M以内に予定タイミングT1が到来する場合は、制御フローがステップ5に進む。一方、図8に矢印(1)で示すように、軟水化運転の完了から予定タイミングT1までの期間が期間Mよりも長い場合は、制御フローがステップ8に進む。換言すれば、予定タイミングT1を基準として期間Mだけ前のタイミングT4(T4=T1−M)と、予定タイミングT1から再生運転に要する期間Lだけ後のタイミングT3(T3=T1+L)とを想定し、このタイミングT4〜T3の期間L2(L)とした場合に、図8に矢印(1)で示すように、軟水化運転が完了するタイミングがタイミングT4よりも前のタイミングであれば制御フローがステップ5に移行する。一方、図8に矢印(2)で示すように、軟水化運転が完了するタイミングがタイミングT4以降であり、期間L2に差し掛かると想定される場合は、制御フローがステップ8に移行する。
【0063】
制御フローがステップ5に進んだ場合(図8の矢印(2)の場合)は、給湯装置2が一旦燃焼作動を停止した後、再出湯に備えて準備している期間内に予定タイミングT1が到来する場合である。この場合は、予定タイミングT1の時点で給湯装置2が燃焼作動を再開し、これに伴い軟水化装置10から給湯装置2に対して軟水を供給する軟水化運転が行われる見込みがある、又は、再出湯要求が発生する可能性が高い状態にある。そのため、制御フローがステップ5に進んだ場合は、軟水化装置10の再生運転を予定タイミングT1から遅延させるべく、所定の遅延時間N1を設定する。その後、ステップ6において、予定タイミングT1より遅延時間N1分だけ遅いタイミングが、実際に再生運転を実施するための開始タイミングT2として設定される。ここで、遅延時間N1は、給湯装置2が加熱軟水供給運転の完了後に再出湯に備えて準備している期間Mに基づいて設定され、本実施形態では、遅延時間N1が期間Mに設定される。その後、制御フローはステップ11に進み、先に設定された開始タイミングT2が到来しているか否かが確認される。そして、未だ開始タイミングT2になっていない場合は、制御フローがステップ2に戻される。一方、開始タイミングT2に到達している場合は、制御フローがステップ12に進められ、再生運転が実施される。
【0064】
一方、上記したステップ4において軟水化運転の完了から期間M以内に予定タイミングT1が到来しないと判断された場合、すなわち軟水化運転の完了のタイミングから予定タイミングT1に至る期間が期間Mよりも長い場合(図8の矢印(1)の場合に相当)は、制御フローがステップ8に移行する。換言すれば、軟水化装置10において軟水化運転が完了した後、給湯装置2側が再出湯に備えて準備状態にある期間を経過した後に予定タイミングT1が到来すると予測される場合は、制御フローがステップ8に移行する。また、上記したように、ステップ2において予定タイミングT1以前のタイミングであって、軟水化運転が実施されていない場合についても制御フローがステップ8に移行する。このようにして、制御フローがステップ2やステップ4からステップ8に移行してくると、軟水化運転が、予定タイミングT1から、軟水化装置10が再生運転に要する期間L1(L)だけ後のタイミングT3までの間に、軟水化運転の実施予定がないか否かが確認される。
【0065】
ここで、軟水化運転の実施予定については、軟水化装置10が備える制御手段40により、データ通信網3に向けて給湯装置2やリモコン6、人検知センサ7から発信されたデータに基づいて予測される。さらに具体的に説明すると、図1に示すように、本実施形態の軟水化装置10は、制御手段40を備えており、これがデータ通信網3に接続されている。制御手段40は、データ通信網3を介して給湯装置2やリモコン6、人検知センサ7から発信されたデータを検知する。そして、制御手段40は、リモコン6から発信されている信号に、予定タイミングT1からT3までの間に給湯装置2が給湯動作(追い焚きを含まない)を行うように指示する信号、具体的には給湯装置2に加熱軟水供給運転を行うように指令するための信号が発信されているか否かを確認する。また、制御手段40は、人検知センサ7から発信されたデータに基づき、浴室における人の有無や出入りを確認する。そして、この検知結果に基づき、予定タイミングT1からT3までの間に、加熱軟水供給運転が行われ、軟水化装置10側において軟水化運転が行われる可能性があるか否かを判断する。さらに、制御手段40は、給湯装置2から発信される浴槽内の水位に関するデータに基づき、入浴者の有無を判断し、これに基づいて予定タイミングT1からT3までの間に給湯装置2が給湯動作(追い焚きを含まない)を行う可能性が高いか否かを判断する。
【0066】
上記したようにしてステップ8において制御手段40により軟水化運転の実施見込みを判断した結果、図8に矢印(4)や矢印(5)で示すように軟水化運転が予定タイミングT1からT3の期間に行われる予定がある、又は、可能性が高いと判断された場合は、制御フローがステップ9に進む。逆に、軟水化運転が予定タイミングT1からT3の期間に行われないと判断された場合は、制御フローが後述するステップ13に移行する。
【0067】
制御フローがステップ9に進むと、遅延時間N2が設定される。ここで、遅延時間N2は、予定タイミングT1からT3までの間に給湯装置2側で実施されると見込まれる動作態様に応じて調整される。具体的には、本実施形態では、給湯装置2において落とし込み運転とその後の追い焚き運転とその後の保温運転とで構成される風呂自動運転が実施されると予想される場合、人検知センサ7や浴槽内の水位により浴室内や浴槽内に人の存在が確認された場合、並びに、加熱軟水供給運転が行われると判断された場合のそれぞれについて最適な遅延時間N2が調整されている。本実施形態では、給湯装置2において落とし込み運転とその後の追い焚き運転とその後の保温運転とで構成される風呂自動運転が実施されると予想された場合は、遅延時間N2が4時間に設定され、人検知センサ7により浴室内に人の存在が確認された場合や浴槽内に入浴者が居ると判断された場合は、遅延時間N2が10分に設定される。また、ステップ3において軟水化運転が予定タイミングT1を過ぎてから完了した場合であって、ステップ7で軟水化運転が時間a以上継続して実施された場合についても、ステップ9で遅延時間N2が10分に設定される(図8の矢印(3)の場合に相当)。
【0068】
ステップ9で遅延時間N2が設定されると、制御フローがステップ10に移行する。そして、予定タイミングT1からタイミングT3(T3=T1+L)の間で開始あるいは実施されていた軟水化運転が完了したタイミングを起点とし、このタイミングから遅延時間N2が経過した時点が、再生運転を開始するための開始タイミングT2として設定される。その後、制御フローがステップ11に進み、未だ開始タイミングT2になっていない場合は制御フローがステップ2に戻される。逆に、ステップ11で開始タイミングT2に到達している場合は制御フローがステップ12に進み、軟水化装置10において再生運転が実施される。
【0069】
一方、上記したステップ7において軟水化運転の実施時間が時間aよりも短かった場合や、ステップ8において予定タイミングT1からT3の間に軟水化運転の実施見込みがないと判断された場合は、制御フローがステップ13に移行する。ここで、未だ予定タイミングT1に達していない場合は制御フローがステップ2に戻されるが、予定タイミングT1に達している場合は制御フローがステップ14に進められ、軟水化装置10において再生運転が実施される。
【0070】
上記したように、本実施形態の給湯システム1で採用されている軟水化装置10は、軟水化運転の実施履歴に基づいて設定される再生運転の開始予定の予定タイミングT1から再生運転に要する期間L1内に軟水化運転の実施が見込まれる場合に、実際に再生運転を開始するタイミングが、前記した予定タイミングT1に対して遅延された開始タイミングT2とされる。そのため、軟水化装置10では、軟水化運転と重複しないタイミングで再生運転を実施可能であり、再生運転のために軟水を利用した給湯運転や落とし込み運転等の加熱軟水供給運転の実施が阻害されるのを防止できる。
【0071】
また、上記したように軟水化装置10は、給湯装置2に対して軟水を供給する軟水化運転の実施が再生運転の実施予定と重複する場合であっても、給湯装置2において軟水の使用が完了すると、その後所定のタイミングで再生運転がなされるものであり、例えば再生運転が夜間のような所定の時間帯に集中的に行われる訳ではない。そのため、軟水化装置10は、例えば夜間のような騒音の発生を防止したい時間帯に再生運転が行われるのを最小限に抑制することができる。
【0072】
軟水化装置10は、再生運転を遅延する場合に、遅延の原因となった給湯装置2における軟水の使用形態に応じて、期間N2の長さを調整する構成を採用している。そのため、上記した構成によれば、軟水の供給先たる給湯装置2における軟水の使用形態を考慮した上で軟水化運転が実施される時間帯を避けて軟水器11の再生を行うことができ、給湯装置2における軟水の使用要求と再生運転とが重複するのを確実に防止することができる。
【0073】
上記した軟水化装置10では、例えば図8に矢印(2)で示すように、予定タイミングT1よりも前の時点で給湯や落とし込み等により軟水の利用が完了する場合であっても、その後、間もなく軟水の使用が開始される場合を想定し、予定タイミングT1とこれよりも所定時間だけ前のタイミングT4との間の期間に軟水の使用が差し掛かってしまった場合に、再生運転を期間N1分だけ遅延することとしている。また、図8に矢印(3)で示すように、予定タイミングT1よりも前の時点で給湯や落とし込み等により軟水の利用が開始され、予定タイミングT1を過ぎても軟水が利用される場合があることを想定し、この場合に軟水の使用終了のタイミングから期間N2分だけ再生運転を遅延することとしている。そのため、軟水化装置10によれば、予定タイミングT1よりも前のタイミングで軟水の利用が終了し、その後間もなく軟水の利用が再開されるような使用形態での使用が想定される場合や、予定タイミングT1を過ぎても軟水が利用されるような使用形態が想定される場合であっても、給湯装置2に軟水を供給することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、再生運転の開始予定の予定タイミングT1として軟水器11が完全に軟水化能力を喪失すると想定されるタイミングT5よりも前のタイミングに設定されている。そのため、本実施形態の給湯システム1では、上記したようにして再生運転の開始予定の予定タイミングT1を遅延させねばならない状況になっても、確実に軟水化された状態の湯水を供給することができる。
【0075】
本実施形態の軟水化装置10では、一般的に長時間にわたって加熱軟水供給運転が行われた場合に、加熱軟水供給運転が一旦停止した後、間もなく加熱軟水供給運転が再開されることが多い傾向にあることを考慮し、再生運転の開始タイミングT2を遅延することとしている。具体的には、給湯装置2への軟水化運転が所定時間a以上の長時間にわたって継続して実施されることを条件として、開始タイミングT2を遅延することとしている。そのため、軟水化装置10は、加熱軟水供給運転の実施傾向を考慮した上で適切なタイミングで再生運転を行うことができる。
【0076】
本実施形態で採用されている給湯装置2は、上記したように先の加熱軟水供給運転の完了と、後の加熱軟水供給運転の開始との間隔が短い場合に後の加熱軟水供給運転において速やかに給湯設定温度の湯を供給可能とするために、先の加熱軟水供給運転が完了した後、所定の期間Mの間に待機状態となり、加熱軟水供給運転の再開に備えて加熱軟水供給運転を再開しやすい状態となる構成とされている。また、軟水化装置10は、この期間Mの間に加熱軟水供給運転が再開される可能性があることを考慮し、この期間M内に再生運転の開始予定の予定タイミングT1が到来する場合に、実際に再生運転を開始する開始タイミングT2を遅延することとしている。そのため、上記した構成によれば、先の加熱軟水供給運転の完了後、間もなく後の加熱軟水供給運転が実施されるような場合であっても、後の加熱軟水供給運転において軟水を使用可能な給湯システム1を提供することができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、給湯装置2として加熱軟水供給運転の完了後、期間Mにわたって待機状態で待機するものを採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、待機状態で待機しないものを採用してもよい。また、給湯装置2が待機状態で待機可能なものでない場合であっても、軟水化装置10は、加熱軟水供給運転の終了後、所定の期間Mの間に再生運転の開始予定の予定タイミングT1が到来する場合に再生運転を遅延する構成としてもよい。
【0078】
上記実施形態では、浴室への入室の有無を検知するための検知手段として人の存在を検知可能な人検知センサ7を用いた例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば従来公知のスイッチやセンサ等を用いて入室の有無を検知する構成としてもよい。また、上記実施形態では、給湯装置2内に設けられた水位検知手段4により、入浴者の有無を検知し、この検知結果を軟水の使用予測に利用する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、このような構成を備えていないものであってもよい。
【0079】
上記実施形態では、軟水化装置10を給湯装置2と組み合わせて給湯システム1を構築した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軟水化装置10は、単体で使用されても、他の装置と組み合わせて使用されてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、給湯装置2と軟水化装置10とを軟水供給配管5で繋ぎ、軟水化装置10で調製された軟水の全てを給湯装置2に供給するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば軟水供給配管5におけるバイパス配管30との合流部よりも軟水の流れ方向下流側において軟水供給配管5を分岐し、給湯装置2以外の蛇口等へも軟水を供給可能な構成とすることも可能である。
【0081】
軟水化装置10は、リモコン6や人検知センサ7、給湯装置2から発信されたデータをデータ通信網3を介して内部に設けられた制御手段40によって監視し、これに基づいて給湯装置2の動作を予測し、軟水化運転の実施見込みを判断している。そのため、上記した給湯システム1では、給湯装置2側に軟水化運転の実施予測を行う構成が不要である。従って、上記実施形態の給湯システム1は、従来公知のものと同様の給湯装置や、既に設置されている給湯装置を採用して構築することができる。なお、上記実施形態では、給湯装置2の汎用性を考慮し、給湯装置2側に制御手段40のように軟水化運転の実施見込みを判断可能な構成を設けない構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、給湯装置2側に制御手段40に相当するものを設けてもよい。
【0082】
上記実施形態で示したデータ通信網3を介した給湯装置2と軟水化装置10との間のデータ通信は、双方向通信である必要はなく、データ通信網3上を送受信される通信データを軟水化装置10側の制御装置40が単に監視することができるだけの構成であってもよい。また、データ通信網3は、有線、無線を問わず、いかなる通信形態のもので構築されていてもよい。
【0083】
上記実施形態では、予定タイミングT1を基準として所定の期間内に給湯装置2が作動して軟水化運転を行わねばならない場合や軟水化運転の実施が見込まれる場合に、実際に再生運転を開始する開始タイミングT2を予定タイミングT1よりも遅延したタイミングに設定し、開始タイミングT2になると再生運転を実施する構成を例示した。しかし、本発明は再生運転の開始タイミングT2を1回だけ遅延する構成に限定されるものではなく、複数回にわたって延長する構成としてもよい。
【0084】
具体的には、予定タイミングT1から所定の期間だけ遅延したタイミングを一旦開始タイミングT2として設定すると共に、その後このタイミングを基準として所定の期間内に軟水化運転の実施見込みがあるか否かを再度確認し、実施見込みがあると判断された場合に再度、開始タイミングT2を遅延する構成としてもよい。このように、複数回にわたって開始タイミングT2を遅延することとすれば、軟水化運転と再生運転とが重複する可能性をより一層低減することができる。なお、このように複数回にわたって開始タイミングT2を遅延させる場合は、遅延可能な回数を制限し、この回数が所定の上限回数に達した場合はそれ以上遅延できない構成としてもよい。また、開始タイミングT2が軟水器11が完全に軟水化能力を喪失すると想定されるタイミングT5以後、あるいは、このタイミングT5に近いタイミング以後になる場合に、開始タイミングT2を遅延できない構成としてもよい。
【0085】
また、上記したように複数回にわたって開始タイミングT2を遅延可能とした場合は、開始タイミングT2を遅延した回数が所定の基準回数に達することを条件として、リモコン6等を用いてユーザーが任意に開始タイミングT2の遅延を解除し、再生運転の実施を許可する指令(再生運転実施指令)を制御手段40に向けて発信できる構成としてもよい。かかる構成によれば、ユーザーが給湯などを軟水を用いて行う必要がないと判断した場合や、再生運転を優先したいと判断した場合などに、ユーザーの意図を反映したタイミングで再生運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態にかかる給湯システムを示した模式図である。
【図2】図1に示す給湯システムに用いられている軟水化ユニットを示した作動原理図である。
【図3】図2の軟水化ユニットが軟水化運転を行う場合の作動原理図である。
【図4】図2の軟水化ユニットが再生運転において補水動作を行う場合の作動原理図である。
【図5】図2の軟水化ユニットが再生運転において再生動作を行う場合の作動原理図である。
【図6】図2の軟水化ユニットが再生運転において洗浄動作を行う場合の作動原理図である。
【図7】軟水化ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図8】軟水化ユニットの動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 給湯システム
2 給湯装置
3 データ通信網
4 水位検知手段(検知手段)
7 人検知センサ(検知手段)
10 軟水化装置
11 軟水器
12 再生塩水供給器
40 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟水器と、再生塩水供給器と、制御手段とを有し、
軟水器を通った水を軟水化して供給する軟水化運転と、
再生塩水供給器に補水して生成される塩水を軟水器へ供給し、その後、軟水器に水を通じることにより塩水を排出させて洗浄する再生運転とを実施可能であり、
軟水化運転の実施履歴に基づき、前記制御手段によって再生運転の開始予定の予定タイミングT1が設定され、
再生運転の開始予定の予定タイミングT1を基準として設定される所定の期間L内に軟水化運転の実施が見込まれる場合に、再生運転を開始する開始タイミングT2が、前記予定タイミングT1に対して遅延されることを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
軟水の供給先における軟水の使用形態に基づき、遅延時間の長さが調整されることを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
期間Lが、予定タイミングT1から始まり、当該予定タイミングT1から再生運転に要する時間だけ後のタイミングT3で終わる期間L1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
再生運転の開始予定の予定タイミングT1が、軟水器における水の軟水化能力が喪失すると想定されるタイミングT5よりも前のタイミングに設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項5】
浴槽に湯水を落とし込む落とし込み運転、および、浴槽内の湯水を追い焚きする追い焚き運転を実施可能な給湯装置に供給される湯水を軟水化するものであり、
前記給湯装置において落とし込み運転、または、追い焚き運転の実施が見込まれる場合に、制御手段より軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項6】
軟水を加熱して熱負荷に供給する加熱軟水供給運転を実施可能な給湯装置に供給される湯水を軟水化するものであり、
前記給湯装置において加熱軟水供給運転の実施が見込まれる場合に、制御手段により軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項7】
給湯装置が加熱軟水供給運転を実施している間に再生運転の開始予定の予定タイミングT1が到来する場合であって、加熱軟水供給運転の実施期間が所定時間以上であることを条件として、再生運転の開始タイミングT2が遅延されることを特徴とする請求項6に記載の軟水化装置。
【請求項8】
給湯装置が加熱軟水供給運転を完了した後、所定の期間Mにわたって加熱軟水供給運転の再開に備えて待機する待機動作を実施するものであり、
再生運転の開始予定の予定タイミングT1が、前記期間Mの完了までのタイミングに該当することを条件として、再生運転の開始タイミングT2が遅延されることを特徴とする請求項6又は7に記載の軟水化装置。
【請求項9】
制御手段が、浴室への入室の有無を検知する検知手段から発信される入室の有無に関する検知信号を受信可能であり、
浴室への入室があった旨の検知信号を制御手段が受信した場合に、制御手段により軟水化運転の実施の見込みがあると判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項10】
再生運転の開始タイミングT2を、連続して所定の上限回数まで遅延できることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項11】
再生運転の開始タイミングT2を連続して複数回遅延でき、
開始タイミングT2の遅延が所定の基準回数に達することを条件として、制御手段に対して再生運転実施指令を入力可能であり、
当該再生運転実施指令が入力されることにより、開始タイミングT2の遅延が解除され、再生運転の実施が許可されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の軟水化装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の軟水化装置と、給湯装置とを有し、
前記軟水化装置で軟水化された湯水を前記給湯装置に供給可能であることを特徴とする給湯システム。
【請求項13】
軟水化装置および給湯装置をデータ通信可能なように接続するデータ通信網と、
当該データ通信網を介して給湯装置に向けて信号を発信する信号発信手段とを有し、
当該信号発信手段から発信される信号に基づいて給湯装置が作動するものであり、
前記軟水化装置に設けられた制御手段が、当該信号発信手段から発信される信号を前記データ通信網を介して受信し、当該信号に基づいて軟水化運転が実施される見込みが判断されることを特徴とする請求項12に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−106871(P2009−106871A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282428(P2007−282428)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】