説明

軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料

【課題】口蓋裂などの先天異常、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻などの瘻孔に代表される生体の軟組織欠損を、適正かつ安全に再建、閉鎖、修復できる、医学的、倫理的、技術的に実用化が十分可能な膜材料を提供する。
【解決手段】吸収性多孔質膜材料に血液、血液成分、骨髄液等を供与してなる、軟組織再生基盤材料を提供する。生分解性材料には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−カプロラクトンなどのポリカルボン酸系材料(混合物、共重合体を含む)、キチン、ポリアミノ酸、多糖類などが好適に利用される。中でも、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトンの3元共重合体は、ε−カプロラクトンのモル比率により柔軟性等を調整でき、ポリグリコール酸のモル比率により分解速度を調整できるため、本目的に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料に関するもので、口蓋裂などの先天異常、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻、食道瘻、気管支瘻、心室中隔穿孔、横隔膜ヘルニアなどの瘻孔に代表される生体の軟組織欠損を、適正かつ安全に再建、閉鎖、修復できる、医学的、倫理的、技術的に実用化が十分可能な材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
外傷、手術等に起因して必要となる軟組織の再生、治療は、古来より自己再生能力に依存した方法が選択されてきた。また、先天的な欠損や奇形に対しての治療方法は皆無に等しかった。しかしながら近年、医療レベルの向上や、再生医療分野の進展により組織移植や、それに使用するスキャホールドの検討などが行われ、患者のQOLは向上の兆しが見られる。
このような状況下ではあるが、本発明が対象とする軟組織の欠損、特に生体内に物理的空隙を生ずるような欠損を治療する医療技術は、骨などの硬組織に対する医療技術と比較して、技術的な遅れが見られる。
上記した軟組織の欠損に由来する疾患の具体的な例としては、口蓋裂などの先天異常、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻、食道瘻、気管支瘻、心室中隔穿孔、横隔膜ヘルニアなどに代表される瘻孔や、歯肉の欠損などなど、枚挙に暇が無い。
これら、欠損に対する現在の治療法の一部を以下に説明する。
(A)口蓋裂の治療方法としては、主に手術が選択されるが、方法としてはPushback法、Furlow法などがあり、Furlow法は最近広く行われている手術法である。口腔側、鼻腔側でそれぞれZ形成を行う方法で、筋肉を含むように口蓋垂側に基部をもつ粘膜筋弁を作製することにより筋層を後ろに移動させる術式である。しかしながら、本術式では裂の幅が大きいと、とくに口蓋側に基部をもつ弁はうまく移動しないため、縫合が困難となる。
対してPushback法は、粘骨膜弁を後方に移動させる術式であるが、粘骨膜弁の後方移動により前方に生ずる骨の露出部が瘢痕化することで、上顎骨の発育障害がおこる。また、往々にして瘻孔が発生するなどの問題がみられる。このような瘻孔は大きいものでは、(1)飲食物が鼻にまわり、鼻の穴から外部にこぼれ出る(2)鼻の分泌物が口の中に流出する(3)鼻粘膜の炎症や、口臭の原因となる(4)言語障害、などの障害が生じる。
(B)心室中隔穿孔や横隔膜ヘルニアなどはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や生物組織由来のシート(パッチ)によって補填されることが多い。これらは一定の治療効果が認められるが、自己の組織を再生することが出来ず、一生異物が体内に残存する、あるいは生物組織由来のシートが治療の供されることもあるが、感染等の危険性を否定することが出来ないなどの問題が残存する。
【0003】
このような現状の技術分野のなかでも特に深刻な問題は、先天的な障害により発生する小児医療の問題であると考えられる。先に述べた口蓋裂に対する手術は、手術の侵襲に耐えうる体力がない幼児に対しては実施できない。また、術後の幼児の発育が著しいため、手術による周辺組織の接合方法はその後の成長を考慮した方法でなければならず、手術に起因した瘢痕や傷、場合によってはケロイド様の組織が、長年に亘って消えない等の問題も少なくない。もしその様な問題が生じた場合は再手術を行うことが一般的で、患者のQOLが考慮されているとは言いがたい。
次にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の非分解性合成高分子によって補填される方法は、材料が成長に伴って大きくならないため、小児医療には使用できない。生物組織由来のシートを使用した治療は、感染リスクなどから許容できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、軟組織の欠損、主に生体内に物理的空隙を生ずる欠損の再生に関する。詳しくは小児医療に展開可能であることを前提とした、安全で簡便かつ、患者のQOLを向上させられる医療用材料を提供するである。
この様な問題を解決すべく、軟組織欠損に関する研究は若干行われている。
例えば、物理的空隙を生ずる欠損を直接的に対象とはしていないものの、特許文献1(国際公開WO95/22305、特表平10−500031)などは、本治療用途に展開可能と考えられる。本発明は、創傷治癒(事故、外科的にまたは疾患によって生じた創傷を含む)の促進に用いられる器具であって、生物学的に許容し得る材料、例えば生体内で生分解するポリマーで形成される基材を有し、この基材が、誘導された組織修復を可能とし、かつ正常な機能および形態を有する組織の再生を助長するために、基材上に細胞成長を方向付けることが可能な手段を有するものである。
しかしながら、本発明は生分解するポリマー単体を埋植するため、大きな瘻孔や組織欠損を閉鎖、再生させることは困難と予想される。
【0005】
さらに最近では、特許文献2(特表2003−535620)、特許文献3(特開2005−278910)、特許文献4(特開平7−188053)、特許文献5(特表2006−508773)に代表されるような、軟組織再建のための足場となる基材に組織の再生を助長させる成分を組み合わせる手法が発明されている。
例えば特許文献2(特表2003−535620)は基材として、清浄および滅菌したシート状の骨、骨髄、線維性結合組織、黄色弾力性結合組織、軟骨、筋肉、脈管構造、表皮および真皮を非制限的に含む任意の種類の動物組織を使用し、再生を助長させる成分としてあらゆる材料が検討されている。
特許文献3(特開2005−278910)は基材としてコラーゲン、ポリペプチド、ポリサッカライドまたはポリエステルなどを使用し、再生を助長させる成分として振盪培養された間葉系幹細胞を検討している。
また特許文献4(特開平7−188053)基材としてニトロセルロース膜、ポリ乳酸等を使用し、再生を助長させる成分として、大腸菌によって合成されたヒトPDGF、ヒトEGF、ヒトbFGF、ヒトTGFなどを固定化する方法を検討している。
特許文献5(特表2006−508773)は基材として乳酸、グリコリドおよびε−カプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つのモノマーのホモポリマーまたはそれらの2つ以上を含むコポリマーを含む材料等を使用し、再生を助長させる成分として、細胞生理活性物質(HGF、血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)白血病抑制因子(LIF)、c−kitリガンド(SCF)など)、細胞接着分子(コラーゲン、ICAM、NCAM、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン、ラミニン、インテグリン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーなど)、細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニンなど)、医薬成分、免疫抑制剤、細胞などが検討されている。
【0006】
いずれの発明も、軟組織の再建と言う目的に対して十分な効果が見られたとの報告がなされており、一般的な医療分野での広い普及が期待されている。
しかしながら上述の発明は、その発明の効果が著しいにもかかわらず、一般的な医療分野には全くと言って良いほど普及していない。
その理由としては、上述の発明が著しい効果を持ち合わせるという利点と相反して、潜在的に避けがたいリスクを持ち合わせているためである。
具体的には生物由来材料を使用することに起因する感染、免疫反応等である。
【0007】
医療機器の一般的な考え方に、リスク−ベネフィットがある。即ち、その機器を使用することで期待されるベネフィットが、想定されるリスクを上回っていれば、その医療機器は使用しても良いという考え方である。
しかしながらこのような考え方はあくまでも建前であり、実際は期待されるベネフィットが、想定されるリスクを遥かに上回っており、かつリスクが明確になっていなければ、医療機器としての認可を受けることは出来ず、結果として一般的な医療分野での広い普及はありえない。また、仮に認可を受けることが出来たとしても、ごく限られた症例にしか使用できないという条件がつき、一般的な医療分野に広く普及することはない。さらに、上述した既存の発明品の中には臨床で使用するまでに、何日にもわたる前処理が必要なものが含まれる。このようなものも、ごく限られた重篤な待機症例にしか使用できないという条件がつく。
これまで為されてきた多くの発明が、その効果にもかかわらず、一般的な医療分野に全くと言って良いほど普及していない理由は上記のごとく現状に起因する。
【0008】
上述した既存の発明品の各々についてその問題点を以下に記載する。
特許文献2(特表2003−535620)は基材として、清浄および滅菌したシート状の骨、骨髄、線維性結合組織、黄色弾力性結合組織、軟骨、筋肉、脈管構造、表皮および真皮を非制限的に含む任意の種類の動物組織を使用しているため、生物感染や発熱、免疫反応の惹起が完全には否定できないという問題がある。
特許文献3(特開2005−278910)は再生を助長させる成分として振盪培養された間葉系幹細胞を検討しているが、細胞がうまくコーティングされないという問題、細胞を使うことによる細胞の採取方法、細胞の採取部位の問題、免疫学的な問題、生体外で培養するため感染症の問題、施設環境の問題、製品を使用するために長期で煩雑な前処理が必要であるなどの問題がある。ちなみに使用する間葉系幹細胞が患者自身のものであったとしても、それを培養するためには動物由来材料が培地に添加されるのが一般的な現状である。
特許文献4(特開平7−188053)は大腸菌によって合成されたヒトPDGF、ヒトEGF、ヒトbFGF、ヒトTGFなどを再生を助長させる成分として検討している。本発明も精製度が十分でない限り感染、免疫反応、発熱などの危険性を完全には否定できない。
特許文献5(特表2006−508773)は、基材として乳酸、グリコリドおよびε−カプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つのモノマーのホモポリマーまたはそれらの2つ以上を含むコポリマーを含む材料等を使用し、再生を助長させる成分として、広義でのサイトカインや細胞接着分子、細胞外マトリクスなどが検討されている。本発明も上記発明と同じく、生合成材料もしくは生物由来材料が使用されているため、感染、免疫反応、発熱などの危険性を完全には否定できない。
【0009】
一方で、このような感染や免疫反応のリスクを回避しつつ、組織の再生を助長させる発明もいくつか検討されている。
たとえば、特許文献6(特開2000−143531)などは合成ペプチドを組織の再生を助長させる成分として利用している。このような合成ペプチドを利用した発明は、使用する全ての材料が合成材料であるため極めて安全性が高い。また、組織の再生効果も従来の材料のみを使用する方法と比較すると非常に良好であるため、極めて実用的かつ有益な発明といえる。
しかしながらこれら発明は、製造に要するコストが高い、安定に大量生産を可能とするための高い技術が必要である等の問題が残存する。
対して、特許文献7(特開2005−237956)では組織を収容するように適合されたポケットが形成された多孔性の組織スカホルドが提供されている。本発明は上記ポケットの中に生存可能な患者自身の組織を密封して生体内に移植するという方法であり、主に軟骨や半月板をターゲットとしている。
本発明は(1)組織の再生効果、(2)感染、免疫、発熱などの危険性がない、(3)製造が容易で安価である、といった特徴があり極めて有益である。
しかしながら患者の組織を採取する必要があるため、患者に対する侵襲が大きいこと、医師の術中操作が煩雑である事が問題である。
特許文献8(WO2004/108146)は創傷治癒を対象とした発明であり、カラム内に設置したシート状多孔質体で血液を濾過し、付着した血液細胞を組織の再生を助長させる成分として利用したものである。本発明は(1)組織の再生効果、(2)感染、免疫、発熱などの危険性がない、(3)製造が容易で安価である、(4)術中操作が簡便であるなどといった特徴があり、実用化の期待が持たれる。しかしながら、この発明は本発明が対象とするような軟組織欠損の再建、閉鎖、修復に対する検討が為されていないため、それらに対する治療効果は不明である。また、血液凝固反応を起こしていないため、多孔質体へ接着させられる細胞数に限度がある。加えて生体内においては接着した血液細胞が安定性して多孔質体上に残存しているかが不明である。また、血小板が脱顆粒を起こしていないため、顆粒中に含まれるPDGF、TGF−β、VEGFおよびEGFなどの成長因子が充分に放出されているかも不明である。
特許文献9(特開2003−55237)は骨再生を対象とした発明である。遠心分離法による血漿分離工程を経て得られた多血小板血漿(PRP)に凝固反応起こした後、このゲル状PRPで生分解吸収性の高分子メッシュトレイを填塞する。本PRP添加高分子メッシュで骨欠損部を被覆することで、効率よく骨再生を促すことが可能になるという発明である。本発明は上記した特許文献8(WO2004/108146)とはその治療の対象が異なるが、特許文献8(WO2004/108146)の問題点をほぼ全て補う画期的な発明で、実用化の期待が大きい。しかしながら、この発明は骨再生のみを対象としており、本発明が対象とするような軟組織欠損の再建、閉鎖、修復に対する検討が為されていない。そのため、それらに対する治療効果は不明である。
【0010】
以上の如く、足場となる基材に組織の再生を助長させる成分を組み合わせるという手法は、極めて多様な研究が為されている。
しかしながら、(1)再生効果が十分でない、(2)感染、免疫反応、発熱などの危険性を伴う、(3)医師の術中操作が煩雑である、(4)患者に対する侵襲が大きい、(5)治療までの前準備に長期間を要する、(6)製造に要するコストが高い、(7)実用化のために高い技術が必要である、などといった問題から、一般的な医療分野には広く普及していないのが実状である。くわえて、本発明が対象とするような生体の軟組織欠損の再建、閉鎖、修復に対する検討はほとんど為されていない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、生体の軟組織欠損を、適正かつ安全に再建、閉鎖、修復でき、かつ医学的、倫理的、技術的に実用化が十分可能な膜材料を提供するうえで有効な技術を供するものである。
すなわち、安定・安価に生産が可能であり、前準備を含めた医師の取扱いが容易で、患者への侵襲が少なく、感染、免疫学的な問題が無く、物理化学的性質が目的に沿っており、かつ再生効果が十分であることを前提とした、生体の軟組織欠損を再建、閉鎖、修復できる膜材料を提供する技術に関する。
【特許文献1】国際公開WO95/22305[(特表平10−500031)/特許請求の範囲]
【特許文献2】特表2003−535620(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−278910(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平7−188053(特許請求の範囲、[0016])
【特許文献5】特表2006−508773(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2000−143531(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2005−237956(特許請求の範囲)
【特許文献8】WO2004/108146(特許請求の範囲・実施例)
【特許文献9】特開2003−55237(特許請求の範囲)
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]本発明は、患者の自己血液、自己血液から調製した血液成分、自己骨髄液のいずれかもしくは、これらの組み合わせの一つから選ばれる再建促進材を、吸収性多孔質膜の少なくとも孔の一部及び/又はその表面の一部に、浸漬または充填することにより担持した軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料を提供する。
[2]本発明は、前記再建促進材を、前記吸収性多孔質膜の自重の5%〜1000%担持した[1]に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[3]本発明は、生体内での吸収期間が15日〜24ヶ月である[1]または[2]に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[4]本発明は、前記吸収性多孔質膜は、気孔率が5%〜99.9%の多孔質またはメッシュからなる[1]から[3]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[5]本発明は、前記吸収性多孔質膜が合成高分子材料である[1]から[4]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[6]本発明は、前記吸収性多孔質膜が脂肪族ポリエステル系材料の単体、混合物、共重合体のいずれかである[1]から[5]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[7]本発明は、前記脂肪族ポリエステル系材料が、乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトンまたはこれらの共重合体である[1]から[6]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[8]本発明は、前記脂肪族ポリエステル系材料が、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトンの三元共重合体で、ε−カプロラクトンのモル比率が5%〜50%であり、ポリグリコール酸のモル比率が1%〜30%である[1]から[7]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[9]本発明は、前記再建促進材のうち自己血液または自己血液から調製した血液成分が、フィブリンまたは血餅である[1]から[8]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[10]本発明は、前記再建促進材のうち自己血液から調製した血液成分が多血小板血漿であり、自己血から遠心分離またはフィルター濾過によって調製された[1]から[9]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[11]本発明は、前記多血小板血漿がトロンビン成分及び/又はカルシウム類の添加によって、凝固反応を誘起されている[10]に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[12]本発明は、前記トロンビン成分が自己血由来成分に負電荷の材料を接触させることで調製された[11]に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[13]本発明は、前記吸収性多孔質膜の少なくとも孔の一部及び/又はその表面の一部に、さらに患者の自己細胞を担持した[1]から[12]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
[14]軟組織欠損が口蓋裂、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻、食道瘻、気管支瘻、心室中隔穿孔、横隔膜ヘルニアのいずれかの1である[1]から[13]に記載のいずれか1項に記載の吸収性多孔質膜材料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば吸収性多孔質膜材料に担持される再建促進材(患者の自己血液、自己血液から調製した血液成分、自己骨髄液のいずれかもしくは、これらの組み合わせの一つから選ばれる)に含まれる複数の細胞、成長因子などの作用により、吸収性多孔質膜材料に接触する軟組織の成長、浸潤が促進される。そして、吸収性多孔質膜材料を足場として軟組織の成長、浸潤が促進され、口蓋裂などの先天異常、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻などの瘻孔に代表される、骨、軟骨等を支持体としない部位における軟組織の欠損部に適用することで、生体組織欠損部を修復することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料]
本発明の軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料は、患者の自己血液、自己血液から調製した血液成分、自己骨髄液のいずれかもしくは、これらの組み合わせの一つから選ばれる再建促進材を、吸収性多孔質膜の少なくとも孔の一部及び/又はその表面の一部に、浸漬または充填することにより担持することにより構成される。再生の足場となる吸収性多孔質膜材料は、その種類を特に限定されるべきではないが、感染、免疫、発熱等のリスクが無い合成高分子材料が選択されるべきである。
また、再生効果を増大させるための「再建促進材」は、患者自身に由来すべき材料が使用される。以下に本発明を実施するための最良の形態の一例を示すが、以下の限りではない。
【0015】
本発明によれば、再建促進材を担持した吸収性多孔質膜材料によって、口蓋裂などの先天性異常、鼻口腔瘻、食道瘻、気管支瘻、心室中隔穿孔、横隔膜ヘルニアなどの瘻孔に代表される生体の軟組織欠損を覆う形で補填すると、吸収性多孔質膜材料に担持されている再建促進材に含まれる、複数の細胞、成長因子などの作用により、吸収性多孔質膜材料に接触する軟組織の成長、浸潤が促進される。そして、吸収性多孔質膜材料を足場として軟組織の成長、浸潤が促進され、口蓋裂、鼻口腔瘻などの瘻孔に代表される、骨、軟骨等を支持体としない生体の軟組織欠損部を修復することが可能となる。
【0016】
[再建促進材の担持]
再建促進材は、吸収性多孔質膜の自重の5%〜1000%担持するのが良い。
再建促進材の担持量があまり少なければ(5%未満)その再生効果は十分に発揮されない。反対に、それらの量が多すぎると(1000%を超える)、結果として吸収性多孔質膜のボリュームが低下するため、接触する軟組織が成長、浸潤するために十分な足場が確保できないため、求められる再生効果が得られない。
【0017】
[生体内での吸収期間]
生体内での吸収期間は、15日〜24ヶ月である。吸収期間が15日未満では、生体組織が修復するまで足場として残存することが不可能であるため好ましくない。また、吸収期間が24ヶ月を超えると、必要以上の長期間にわたって体内に異物が残存する事となるため、炎症や発ガンなどといった有害な事象を惹起しかねないため好ましくない。
【0018】
[吸収性多孔質膜の材料]
吸収性多孔質膜の材料は、軟組織に埋植するということを鑑み、柔軟な材料が好ましい。また、口蓋裂、鼻口腔瘻などの瘻孔に代表される軟組織の欠損を再生するまでの期間材料の形状を維持でき、再生後には速やかに材料が吸収されるべきである。
これらの目的を達成するために、生体吸収性の足場材料としては多くの材料が検討されている。例えば、脂肪族ポリエステル、ポリアミノ酸、コラーゲン、ラミニン、グリコサミノグリカン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸などである。
これら材料を、感染、免疫、発熱などの危険性がない材料という観点で検討した場合、完全な合成高分子材料であり、ヒトへの埋植材料として安全性が確認されている脂肪族ポリエステル系材料が望ましい。また、その中でも特に従来の医療器具として使用実績がある、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−カプロラクトンまたはこれらの重合体が好適である。
【0019】
より望ましい吸収性多孔質膜は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトンの3元共重合体である。
これらポリマーは3元共重合体として使用することで、ε−カプロラクトンのモル比率の調節によって柔軟性をコントロールでき、ポリグリコール酸のモル比率の調節によって分解吸収速度をコントロールできるという利点がある。
本目的を達成するための物理的、化学的材料特性を得るには、ε−カプロラクトンのモル比率が5%〜50%、ポリグリコール酸のモル比率が1%〜30%、乳酸のモル比率が20%〜94%である3元共重合体吸収性多孔質膜材料が望ましい。具体的にはε−カプロラクトンのモル比率が5%未満であるとその物性が硬すぎるため、軟組織への適応には不適である。
反対にε−カプロラクトンのモル比率が50%を超えると、分解速度が遅すぎる、多孔質に加工した際に形状を維持できない等の弊害が生じる。ポリグリコール酸のモル比率が1%未満だと、分解速度が遅すぎるため不適である。反対にポリグリコール酸のモル比率が30%を超えると、その物性が硬くなりすぎるため、軟組織への適応には不適である。
また数平均分子量は10万以上、50万以下程度が好適である。
好適な一例として、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトンの三元共重合体のモル比率は、70:10:20が挙げられる。
【0020】
[吸収性多孔質膜の気孔率]
気孔率が5%〜99.9%の多孔質またはメッシュからなる。気孔率が5%未満であると、軟組織が付着、成長、浸潤するための十分なスペースが確保され無いために不適当である。また、気孔率が99.9%を超えると、細胞が接着できる足場の面積が少なすぎるために不適当である。
【0021】
[吸収性多孔質膜の製造方法]
次にポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトン三元共重合体からなる吸収性多孔質膜の製造方法の一例について説明する。
ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトン三元共重合体をクロロホルムに溶解し、そこに塩化ナトリウム等のクロロホルムには不溶性で、水には可溶性である粒子を混合する方法がある。この時の塩化ナトリウムの添加量と粒径によって、膜材料の気孔率とポアサイズを自由にコントロールすることが可能である。塩化ナトリウムを添加して撹拌した後、キャストフィルム法によってシート状に成型し、本シートを蒸留水に浸漬することで塩化ナトリウムを溶解溶出させれば、目的の気孔率およびポアサイズを有する吸収性多孔質膜材料が得られる。
好適な一例としては、気孔率70%、ポアサイズの直径50μmの吸収性多孔質膜材料が挙げられる。このような膜材料は、十分な血液、血液成分等を保持でき、軟組織の足場としての役割も果たすことが出来る。
【0022】
[再建促進材]
再建促進材は、患者の自己血液、自己血液から調製した血液成分、自己骨髄液のいずれかもしくは、これらの組み合わせの一つから選ばれる。
吸収性多孔質膜に担持される血液または血液成分は、一定の期間材料周辺に残存すべきである。そのため、これらは凝固、または半凝固状態であるフィブリンまたは血餅が望ましい。
血液および血液成分は通常の採血と同じように、患者の静脈から回収可能である。
フィブリンおよび血餅は、採血した血液をガラス容器などに接触させるだけで得ることが出来る。また、カルシウム塩を添加しても良い。
血液成分には複数の細胞や成長因子が含まれ、組織の再生に利用することが可能である。特に血小板のα顆粒中には、創傷治癒や組織再生に効果的な成長因子が多く含まれていることが知られており、この血小板を濃縮し、局所に移植することによって組織再生を促進させる方法は極めて有効である。
多血小板血漿は、この血小板を高濃度に濃縮した血漿のことで、血液凝固反応の過程で血小板が脱顆粒を起こし、顆粒中に含まれるPDGF、TGF−β、VEGFおよびEGFなどの成長因子を放出する。よって、多血小板血漿は十分な血液凝固反応を誘起させて適用することが望ましい。また、血液凝固反応を誘起させるための材料も、合成材料か患者自身に由来する材料に限られることが望ましい。
【0023】
(多血小板血漿の調整方法)
多血小板血漿は、回収した血液より以下の方法によって抽出することが可能である。
(ステップS1)内部を滅菌処理された第1の容器に血液を収容する。
(ステップS2)これを遠心分離によって血漿と血球に分離する。
(ステップS3)第1の容器から第2の容器に、血球を分離した残りの液体を無菌的に移動させる。
(ステップS4)これを遠心分離によって血漿と多血小板血漿に分離する。
(ステップS5)第2の容器から第3の容器に、血漿を分離した残りの多血小板血漿を無菌的に移動させる。
【0024】
なお、第一の容器には凝固防止用のクエン酸等を所定量入れておくべきである。
ステップS2の遠心分離の条件は、例えば、1200rpm/20minなどが良い。これにより、血液中の比較的重い血球が遠心方向外方に分離される。
ステップS2により分離したされた血球成分と上精の液体A(血漿と多血小板血漿)は、明確な分離面によって分けられている。
第3のステップS3では、この液体Aを容器1からシリンジ及び注射針で吸引し、第2の容器に無菌的に移送させる行程である。この際に若干の血球成分を移送させることは問題とならない。
第4のステップS4は、前記液体Aを収容した容器2ごと遠心分離機にかけることにより行われる。遠心分離の条件は、例えば、1900rpm/15minなどが良い。これにより、液体A中の比較的軽い成分B(血漿)が上層に分離される。したがって、容器2から成分B(血漿)を分離した残余液が多血小板血漿Cとなる。
【0025】
なお、この様な2回の遠心分離操作が煩雑な場合、1回の操作に簡略することも可能である。すなわち、450Gで7minの間遠心分離にすることにより抹消血を赤血球層と血漿層とに分離させることが可能である。血小板はこの2つの層の間にあるバフィーコートに集められる。慎重にバフィーコートの上下層をシリンジで吸引することで、本液を多血小板血漿Cとして使用することも可能である。
このようにして抽出された多血小板血漿は、カルシウム塩を添加することで凝固反応が誘起される。このままでも使用可能であるが、トロンビン成分を添加することで、更に旺盛な凝固反応を誘起することが可能である。トロンビン成分は自己の血漿から調製することが生物感染の予防と言う観点で望ましい。
【0026】
(自己トロンビンの調製方法)
自己トロンビンの調製方法の一例を以下に示す。
末梢血を採血して滅菌済み遠沈管に注ぎ、負電荷材料と接触させる。負電荷材料との接触の例としては、ガラス容器などの負電荷を持つ容器との接触、セラミックスビーズのような、より表面積の大きな負電荷材料との積極的な接触、コラーゲン様ポリペプチドのような負電荷を有する生体適合性材料との混合などが挙げられる。
末梢全血に上記の処理を施した後30分間アクチベートさせ、遠心分離(2000G/12min)する。得られた上澄みにはトロンビン成分が含有されており、これを自己トロンビンD(含有血漿)として使用することが可能である。
【0027】
(多血小板血漿の凝固方法)
多血小板血漿の凝固方法の一例を以下に示す。自己トロンビンD:10%塩化カルシウム溶液=3:1になるよう、滅菌済み容器内で混和する(アクチベーターEと呼ぶ)。そこに多血小板血漿を注ぎ、多血小板血漿D:アクチベーターE=10:1となるように混和することで、効率よく多血小板血漿Dを凝固させることが可能である(凝固多血小板血漿F)。
このようにして抽出され、凝固反応を誘起した凝固多血小板血漿Fを吸収性多孔質膜材料に供与することで、本実施形態に係る軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料が製造される。
【0028】
さらに、吸収性多孔質膜材料に骨髄液を供与することで、その再生効果を向上させることが期待できる。
骨髄液は手術室で全身麻酔下に、腰骨のお尻側から針を刺して吸引採取することができる。本目的への骨髄液の使用は少量ですむため、侵襲や作業時間は少ない。
このようにして得られた患者の骨髄液を吸収性多孔質膜材料に担持することで、本実施形態に係る軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料が製造される。
自己骨髄液は少量であれば術場で容易に採取が可能であり、複数の細胞や成長因子を含むため、旺盛な再生効果が期待できる。また、感染、免疫、発熱といった問題が見られないことから本発明の趣旨、目的に合致する。
【0029】
(患者の自己細胞)
また、更なる再生効果を目的として、患者の自己細胞を上記吸収性多孔質膜材料に供することも可能である。患者の自己細胞を得る方法に一例として、G−CSFの皮下注射をし、投与後4日目〜5日目に、静脈より血液分離装置を用いて血液を体外循環させ、末梢幹核細胞を選択的に採取する方法が挙げられる。
このようにして得られた患者の自己細胞を吸収性多孔質膜材料に供与することで、本実施形態に係る軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料が製造される。
患者の自己細胞を得る方法は複数あるが、中には患者への侵襲が少なく、比較的簡便に採取できる方法も開発されている。例えば、G−CSF(granulocyte colony stimulating factor)を患者に投与し、造血幹細胞を骨髄から末梢血中に動員させ、循環している造血幹細胞を血球分離装置によって採取するという方法がある。
このような、患者への侵襲が少なく、術前の培養を必要としない方法であれば、細胞の利用はさらなる大きな再生効果が期待でき、かつ感染、免疫、発熱といった問題が見られないことから本発明の趣旨、目的に合致する。
【0030】
本実施形態に係る軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料によれば、この吸収性多孔質膜材料を、口蓋裂、鼻口腔瘻などの瘻孔に代表される軟組織の欠損部に供することで、担持されている血液、血液成分、凝固多血小板血漿、骨髄液、細胞などの作用により、当該吸収性多孔質膜材料が接触する生体組織の成長を促進させることが可能となる。すなわち生体組織は、血液、血液成分、凝固多血小板血漿、骨髄液、細胞などを一種の成長因子とし、吸収性多孔質膜材料を足場として成長し、これにより、生体組織欠損部が修復されていくことになる。また、吸収性多孔質膜材料は、骨不在部位への軟組織の進入を遮蔽する遮蔽膜としての働き、すなわち再生の場を確保提供する役割も有する。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の一実施例に係る吸収性多孔質膜材料とその製造方法について説明する。なお、本発明は医療用途に使用されるが、発明の検証を人体で実施することは法律上不可能である。よって、本発明の実施はマウスの耳にパンチングホールを施した疾患モデルを対象として検証した。
また、実施例に係る吸収性多孔質膜材料には、ポリ乳酸-ポリグリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体に、マウス自己血液成分を担持したもので評価した。
【0032】
(吸収性多孔質膜材料)
吸収性多孔質膜の材料は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体を使用した。組成のモル比率は、ポリ乳酸:ポリグリコール酸:ε−カプロラクトン=70:10:20であり、分子量は数平均分子量=25万の材料を使用した。
【0033】
(多孔質の作製)
上記材料をクロロホルムに完全に溶解した。そこに粒径50μmに篩った塩化ナトリウムを、重量比率で ポリマー:塩化ナトリウム=30:70になるように添加した。
よく撹拌した後、本溶液をガラス板の上に滴下し、乾燥させてキャストフィルムを得た。
本キャストフィルムを蒸留水中でよく撹拌し、添加された塩化ナトリウムをすべて洗い出すことで、フィルム状の吸収性多孔質膜材料を作製した。
前記のように作製した吸収性多孔質膜材料の再生効果を確認するため、ラット耳介モデルを作製して実験を行った。ラットの耳に対して3mm角のパンチングホールを開けた(図1と図2参照)。
【0034】
また比較例として、パンチングホールへの処置を一切しなかった場合の結果を確認した。
その結果、ラット耳介のパンチングホールは3週間が経過しても残存したままであった(図3参照)。また、HE染色した組織標本を観察した結果、パンチングホールの軟組織断端は既に表皮化しており、これ以上の修復は期待できなかった(図4参照)。
【0035】
次に、ラットの自己血液を静脈から採血し、ガラス容器内でカルシウム塩を添加し、撹拌することでフィブリンを作製した。
本フィブリンを前記と同様に作製した吸収性多孔質膜の孔に充填し、パンチングホールを開けたラット耳介に移植した(図5と図6参照)。移植方法は、耳介の片面に上記膜を載せ、両面から保護カバーで被覆するという方法を選択した(図7参照)。
【0036】
上記膜による治療の1週間後には既にパンチングホールの軟組織欠損はほとんど修復された(図8参照)。また、上記膜による治療の2週間後には、パンチングホールの軟組織欠損は完全に修復されていた(図9参照)。
HE染色した組織標本を観察した結果、軟組織の欠損は完全に修復されており、本発明の効果が確認された(図10参照)。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例における動物実験で、マウスの耳にパンチングホールを開けたところの図面代用写真と補足図面
【図2】実施例における動物実験で、マウスの耳にパンチングホールを開けた直後の図面代用写真
【図3】比較例における動物実験で、マウスの耳に開けたパンチングホールに対して未処置のまま3週間放置した図面代用写真
【図4】図3の組織標本の図面代用写真
【図5】本発明によって、マウスの耳に開けたパンチングホールを治療する直前の図面代用写真
【図6】本発明によって、マウスの耳に開けたパンチングホールを治療した直後の図面代用写真
【図7】本発明によって、マウスの耳に開けたパンチングホールを治療するイメージ図
【図8】本発明による、マウスの耳に開けたパンチングホールの治療1週間後の図面代用写真
【図9】本発明による、マウスの耳に開けたパンチングホールの治療2週間後の図面代用写真
【図10】図9の組織標本の図面代用写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の自己血液、自己血液から調製した血液成分、自己骨髄液のいずれかもしくは、これらの組み合わせの一つから選ばれる再建促進材を、吸収性多孔質膜の少なくとも孔の一部及び/又はその表面の一部に、浸漬または充填することにより担持したことを特徴とする軟組織再建のための吸収性多孔質膜材料。
【請求項2】
前記再建促進材を、前記吸収性多孔質膜の自重の5%〜1000%担持したことを特徴とする請求項1に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項3】
生体内での吸収期間が15日〜24ヶ月であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項4】
前記吸収性多孔質膜は、気孔率が5%〜99.9%の多孔質またはメッシュからなることを特徴とする請求項1から請求項3に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項5】
前記吸収性多孔質膜が合成高分子材料であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項6】
前記吸収性多孔質膜が脂肪族ポリエステル系材料の単体、混合物、共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項5に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル系材料が、乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトンまたはこれらの共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項6に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステル系材料が、ポリ乳酸−ポリグリコール酸−ε−カプロラクトンの三元共重合体で、ε−カプロラクトンのモル比率が5%〜50%であり、ポリグリコール酸のモル比率が1%〜30%であることを特徴とする請求項1から請求項7に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項9】
前記再建促進材のうち自己血液または自己血液から調製した血液成分が、フィブリンまたは血餅であることを特徴とする請求項1から請求項8に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項10】
前記再建促進材のうち自己血液から調製した血液成分が多血小板血漿であり、自己血から遠心分離またはフィルター濾過によって調製されたことを特徴とする請求項1から請求項9に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項11】
前記多血小板血漿がトロンビン成分及び/又はカルシウム類の添加によって、凝固反応を誘起されていることを特徴とする請求項10に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項12】
前記トロンビン成分が自己血由来成分に負電荷の材料を接触させることで調製されたことを特徴とする請求項11に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項13】
前記吸収性多孔質膜の少なくとも孔の一部及び/又はその表面の一部に、さらに患者の自己細胞を担持したことを特徴とする請求項1から請求項12に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。
【請求項14】
軟組織欠損が口蓋裂、鼻口腔瘻、上顎洞口腔瘻、食道瘻、気管支瘻、心室中隔穿孔、横隔膜ヘルニアのいずれかの1であることを特徴とする請求項1から請求項13に記載のいずれかの1の請求項に記載の吸収性多孔質膜材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−93094(P2008−93094A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276391(P2006−276391)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】