説明

軟質ウレタンフォームの加工方法

【課題】一枚の平板プレス型と一つの尖頭プレス型とを組み合わせ、熱プレス処理によってウレタンフォームの表裏に同形の凹凸形状を形成する加工方法を提供する。
【解決手段】軟質ウレタンフォームの熱プレス処理にあって、一枚の平板プレス型と尖頭プレス型との組み合わせによって軟質ウレタンフォームを挟み、尖頭プレス型に添って軟質ウレタンフォームを圧縮し、両型の温度を170〜250℃とし、これを15〜1秒間加熱させ、尖頭プレス型による前記軟質ウレタンフォームの圧縮部位を樹脂化し、軟質ウレタンフォームの表裏に樹脂化層を跨いで同形の凹凸形状を形成した軟質ウレタンフォームの加工方法である。1‥軟質ウレタンフォーム、1a‥軟質ウレタンフォームの圧縮部、1b‥軟質ウレタンフォームのドーム部、2‥プレス型(平板)、3‥プレス型(尖頭型)、3a‥尖頭部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ウレタンフォームの加工方法に関するものであり、その一部を加熱・加圧処理(以下、問題のない限り『熱プレス処理』という)を施して表裏同形の凹凸形状を得る加工方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より軟質ウレタンフォームの熱プレス処理は広く知られているところであり、かかる技術をもって得られる製品は非常に多く存在する。即ち、軟質ウレタンフォームの両側よりプレス型にて挟み込み、この状態で熱プレス処理してなるもので、挟み込まれた部位の軟質ウレタンフォームはかかる熱プレス処理によってウレタンフォームが熱により永久歪みを受け、特にウレタンフォーム体が樹脂化してその部位が凹み、凹凸形状が形成されるものである。
【0003】
上記の熱プレス処理にあって、軟質ウレタンフォームに凹凸形状を形成するため、一方のプレス型を平板のプレス型にて構成し、他方を凹凸形状を構成する先端を備えたプレス型を用い、これをもって軟質ウレタンフォームを挟み込み、この状態にて加熱して挟まれた部位に熱的歪を加える方法がある。この場合には、図1にて示すように得られたウレタンフォーム成形品10は平板に接する側12はやや凹凸が小さく平たくなっており、凹凸の先端を備えたプレス型に接する側13が凹凸の大きいウレタンフォーム成形品10となってしまう。即ち、表裏の凹凸形状が異なるウレタンフォーム成形品10となるため、成形品の用途や使用状態が限定されることとなってしまう。
【0004】
この点を改良するには、上記の熱プレス処理にあって、軟質ウレタンフォームの表裏に同形の凹凸形状を形成するには、図2に示すように一対の尖頭を備えたプレス型21、22を製造し、このプレス型21、22の尖頭部を合致させて軟質ウレタンフォームを挟み込み、この状態にて加熱して挟まれた部位のみのウレタンフォームに熱的歪14を加える方法が採用されていた。このように、軟質ウレタンフォーム10の表裏に同形の凹凸形状を形成するには、一対のプレス型21、22の尖頭部を正確に形成した型を製造しなくてはならず、しかもこれを合致させて加工する必要があるため、その型代及び加工代が高価となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軟質ウレタンフォームの熱プレス処理にあって、一枚の平板プレス型と一つの尖頭プレス型との組み合わせによって、ウレタンフォームの表裏に同形の凹凸形状を形成する軟質ウレタンフォームの加工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、軟質ウレタンフォームの熱プレス処理にあって、一枚の平板プレス型と尖頭プレス型との組み合わせによって軟質ウレタンフォームを挟み、尖頭プレス型に添って軟質ウレタンフォームを圧縮し、両型の温度を170〜250℃とし、これを15〜1秒間加熱させ、尖頭プレス型による前記軟質ウレタンフォームの圧縮部位を樹脂化し、軟質ウレタンフォームの表裏に樹脂化層を跨いで同形の凹凸形状を形成したことを特徴とする軟質ウレタンフォームの加工方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、安価な加工方法によって軟質ウレタンフォームの表裏に樹脂化層を挟んで同形の凹凸形状を簡単に成形加工することができたものであり、具体的には、一方のプレス型は平板で行うことができるため、成形時の型代が半額ですむという大きなメリットがある。勿論、表裏に形成された凹凸はほぼ同形の形状であり、従来の平板を用いる方法によって得られる加工物とは形状的に格段に優れたものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
従来例で説明した通り、一方のプレス型を平板とした技術は公知であるが、この場合、加熱時の温度が170〜250℃であり、その加熱時間も30〜60秒程度と比較的長い時間をかけるものである。しかもその際の軟質ウレタンフォ−ムの圧縮率は約1/3〜1/10程度の圧縮である。このため、平板側に接触する軟質ウレタンフォームがヒ−トセットの影響を受けてしまい、しかも圧縮部位の軟質ウレタンフォーム14は樹脂化するに至らず、熱的歪を受けてはいるがフォーム体を残したままの層となっている。そして、従来の軟質ウレタンフォームの加工物は、圧縮部位がフォーム体のままの層である方が良いとされていた。その理由は、樹脂化前の状態ではこの部位の色合いは軟質ウレタンフォームの色合いとほぼ同じであり、加工物の面でフォーム体のままの方が好ましいとされていたからである。
【0009】
しかるに、本発明にあっては、樹脂化層を積極的に形成し、加工物として表裏に形成される凹凸形状をほぼ同じ形状のものを得ようとするものであり、しかも図2にて示す方法と異なり、プレス型が一方のみに適用すれば良いという加工方法である。このため、得られた加工物は表裏における凹凸の差がなくなるため使用する側が限定されることはなく、しかも尖頭部を備えたプレス型が一方のみで良いため、加工コストが著しく安くなるというメリットもある。
【0010】
本発明は、言ってみれば従来の技術の逆転の発想による加工方法に基づくものであり、従来の加工条件を大きく変更し、かつ、極めて特定の条件下にすることによって本発明に到達したものである。
【0011】
このため、平板プレス型と尖頭プレス型及び軟質ウレタンフォームとの関係は、両型間の軟質ウレタンフォームの樹脂化層を形成する圧縮部の隙間を0.1〜2.0mmとし、かかる部位の軟質ウレタンフォームの圧縮時の樹脂化層の密度が0.5〜1.2g/cm3 とすることによって本発明の特徴ある加工方法が完成したものである。そして、本発明にあっては、圧縮部は完全に樹脂化(ウレタンフォームからウレタン樹脂への変化)がなされるものであり、その色合いもフォームの色合いとは異なるものとなっている。勿論、樹脂化されているためにこの部位からのバラケや剥離は生じない。この点、従来の加工方法におけるフォーム体の儘の状態であると、この部位のヒートセットが経時的に甘くなり、バラケが生じることがあり、欠点の一つとされていたが、これを解決したものであるとも言える。
【0012】
加工条件としては、従来行われていた加工条件とは大きく異なり、両型の加熱温度は170〜250℃であり、この条件下に極く短時間(15〜1秒)の処理、好ましくは両型の温度を200℃とした時には5秒程度で十分である。勿論、従来では両型及び軟質ウレタンフォームとの関係が大きく異なる上に、200℃で30秒以上の処理を行っていたことから見て大きな違いであることが分かる。特に、従来の加工方法によれば、加熱処理時間が長いことから、平板型側の軟質ウレタンフォーム面がヒ−トセットされてしまい、加工後(冷却後)でも軟質ウレタンフォームが十分に回復しない現象が起こってしまい、表裏の凹凸形状が大きく異なってしまうことから、その加工物の使用も見栄えの点で好ましくなく、実際の使用の面でも方向性があるものとなってしまうという欠点があったが、本発明はこれを完全に解決したものであると言うことができる。
【0013】
本発明で言う尖頭プレス型とは軟質ウレタンフオームに所望の形状の樹脂化層を作るための例えば厚さ1〜2mm程度の尖頭部があれば良く、プレス板が一般的ではあるが、ロール表面に尖頭部が備えられたものであってもよい。
【実施例】
【0014】
以下、実施例をもって本発明を更に説明する。即ち、密度0.05g/cm3 の軟質ウレタンフォーム10の表裏に対称の凹凸形状12、13を形成する加工方法であって、図3は本発明の加工方法に用いる一対のプレス型であり、平板型2と所望の凹凸形状を付与する尖頭部3aを備えたプレス型3が用いられる。この例では幅2mmの線状尖頭部3aを備えたプレス型3であり、尖頭部3aは20mmの間隔をもって備えられた。
【0015】
図4はかかるプレス型2、3を用いて厚さ20mmの軟質ウレタンフォーム1を挟み込んだ状態を示すものであり、プレス型2側の面は平坦になっており、プレス型3側の面は尖頭部3aにて圧縮1aされ、その間は半球状のドーム1bとなっている。尚、この圧縮部1aの両型2、3の隙間を1.0mmとし、圧縮された際のかかる軟質ウレタンフォームの圧縮率は1/20であった。
【0016】
かかる状態にあって、予め両型2、3は200℃に加熱されており、圧縮された状態で5秒間停止し、その後直ちに両型2、3を開放した。
【0017】
図5は上記加工方法にて得られた軟質ウレタンフォーム成形品10の断面図を示す。14は上記加工方法にて形成された樹脂化層であり、ウレタンフォーム1のフォームセルが押し漬され、樹脂化したウレタン層である。かかる部位の密度はほぼ1.0g/cm3 であった。この樹脂化層14を挟んで表裏に半球状の軟質ウレタンフォーム凹凸形状12、13が形成された。12は平板プレス型2に接する側の半球状であり、13は尖頭プレス型3側半球状である。半球状12は加熱時間が極く短時間であるために、ヒートセットの影響が少なく、ほぼ半球状13と同じ形状を呈するものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
従来の加工方法で得られた図1の成形品と図5にて示す本発明の成形品とを比較すると本発明の成形品は加工部位の樹脂化が進んでおり、その加工部位はくっきりと鮮明に現れ、しかも凹凸形状は加工時のヒートセットの影響が極めて少なく、表裏の凹凸形状がほぼ同一の形状となる。しかも、加工のための型も一方のみの製造でよく、加工工程でのコストが安くて済むこととなる。以上の特徴は、従来の加工方法と比較してその加工工程での条件を従来の技術では全く考えのつかない極めて特徴ある条件を選択したからである。
【0019】
上記したように、得られた成形品は表裏が同一形状をなす凹凸にて構成されるため、裏表や左右の区別なく各種の製品に適用可能となったものであり、一例を挙げれば、スポンジタオル、スポンジ布巾等の家庭用品、車洗浄具、水切りシート、車両や屋内の内装材等その用途は多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は従来の方法の第1例にて得られた成形品の断面図である。
【図2】図2は従来の方法の第2例を示す図である。
【図3】図3は本発明の加工方法を示すプレス型の断面図である。
【図4】図4は図3に示すプレス型を用いて軟質ウレタンフォームを挟み込んだ際の断面図である。
【図5】図5は本発明の加工方法にて得られた成形品の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1‥軟質ウレタンフォーム、
1a‥軟質ウレタンフォームの圧縮部、
1b‥軟質ウレタンフォームのドーム部、
2‥プレス型(平板)、
3‥プレス型(尖頭型)、
3a‥尖頭部、
10‥軟質ウレタンフォーム成形品、
12、13‥凹凸形状、
14‥樹脂化層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ウレタンフォームの熱プレス処理にあって、一枚の平板プレス型と尖頭プレス型との組み合わせによって軟質ウレタンフォームを挟み、尖頭プレス型に添って軟質ウレタンフォームを圧縮し、両型の温度を170〜250℃とし、これを15〜1秒間加熱させ、尖頭プレス型による前記軟質ウレタンフォ−ムの圧縮部位を樹脂化し、軟質ウレタンフォームの表裏に樹脂化層を跨いで同形の凹凸形状を形成したことを特徴とする軟質ウレタンフォームの加工方法。
【請求項2】
平板プレス型と尖頭プレス型との間の樹脂化層を形成する圧縮部の隙間が、0.1〜2.0mmである請求項1記載の軟質ウレタンフォームの加工方法。
【請求項3】
平板プレス型と尖頭プレス型との間に挟まれ、樹脂化させる部位の軟質ウレタンフォームの圧縮倍率が、1/10〜1/100である請求項1又は2記載の軟質ウレタンフォームの加工方法。
【請求項4】
樹脂化層の密度が、0.5〜1.2g/cm3 である請求項1乃至3いずれか1記載の軟質ウレタンフォームの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−290236(P2007−290236A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120512(P2006−120512)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(591049055)ブリヂストン化成品東京株式会社 (9)
【Fターム(参考)】