説明

軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォーム

【課題】 ポリオールコンパウンド液の相溶性と保存安定性に優れ、且つ発泡時の安定性に優れ、独泡率が低く圧縮永久歪が小さく、熱融着性及び高周波融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)に優れる軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、有機リン化合物(C)を含む軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物であって、前記(A)に用いる成分が、ポリオキシアルキレングリコール(a1)と、主鎖に側鎖を有する多価アルコールを用いた重量平均分子量700〜1200のポリエステルポリオール(a2)、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)とを必須に併用するものであり、前記(a1)と(a2)と(a3)との混合比が(a1)/(a2)/(a3)=94/1/5〜58/12/30質量比であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォームに関する。更に詳しくは、原料のポリオールコンパウンド液が相溶性に優れ分離が起こり難く保存安定性に優れ、且つ、フォームの機械的物性(特に独泡率が低く、圧縮永久歪が小さい)に優れ、且つ、優れた熱融着性及び高周波融着性を発現可能な軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可とう性を持つ軟質ポリウレタンフォームは種々の形状に加工されて、例えば、クッション材、遮吸音材、衝撃吸収材、断熱材、薄くすいたものを織物類等と貼り合わせて衣料品などとして幅広く利用されている。
【0003】
織物類等の素材と軟質ポリウレタンフォームとを貼り合わせる方法としては、例えば、(1)接着剤を用いて行なう方法、あるいは(2)軟質ポリウレタンフォームの表面の一部を熱溶融あるいは高周波溶融させて、溶融部分に織物類を押し付けて接着させる方法などがあるが、後者の方法の方が、経済性、操作の簡便さ、生産効率などの観点から有利であると一般に考えられている。
【0004】
軟質ポリウレタンフォームを基材に貼り合わせて使用する用途では、フォームの発泡時の安定性、熱融着性、高周波融着性、フォーム物性、残留歪などの種々の特性のバランスが重要である。
【0005】
一方、最近では、価格競争の激化に伴い製造コスト削減を目的に、軟質ポリウレタンフォームを基材と張り合わせた後の巻き取り速度の高速化や、フォームの薄肉化などの種々の合理化が益々進んでおり、融着後のフォームの初期剥離強度、最終剥離強度、圧縮永久歪の向上が更に求められている。
【0006】
これまでに、軟質ポリウレタンフォームに良好な熱融着性及び高周波融着性を付与する目的で、種々の提案が成されてきた。
【0007】
例えば、高分子量のポリオール、ポリイソシアネート、水及び/又は他の発泡剤、触媒ならびにその他の助剤を使用して軟質ウレタンフォームを製造するに当り、分子中に少なくとも2個の活性水素原子を有する有機のリン化合物を当該ポリオールの重量に対してリン含量として0.5重量%までの範囲で存在させ、かつ当該高分子量のポリオールの全部または一部としてポリオキシアルキレンポリオールにそのヒドロキシル基に対して等モルより多くの飽和脂肪族および芳香族ポリカルボン酸無水物のうち少なくとも一つと環状エーテル基を有する化合物とを反応させて得られた主としてポリエステル構造からなる鎖をポリエーテル構造の末端にブロックさせた機構を有するポリエーテルポリエステルポリオール(ヒドロキシル基1個当りの分子量約800以上)を使用する熱融着可能な可とう性ウレタンフォームの製造法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の製造法で得られる軟質ポリウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂の粘度が高くなりすぎて、フォームの圧縮永久歪が悪化したり、あるいは全量使用ではフォームが硬くなりすぎて軟質化が困難になる等の問題があり、未だ満足のいくものではなかった。
【0009】
また、主鎖に側鎖を有する多価アルコールを1種以上用いたポリエステルポリオール及びポリオキシアルキレングリコールとを併用する軟質ポリウレタンフォームが知られている(例えば、特許文献2参照)。かかる軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールの安定性、フォームの機械的物性が良好であり、且つ、熱融着性及び高周波融着性が良好であるという。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載のポリウレタンフォームは、独泡率が高く圧縮永久歪が高すぎること、あるいは、初期剥離強度及び最終剥離強度に劣ることなどの実用上の解決すべき問題を残していた。
【0011】
以上のように、従来の技術は、原料のポリオールコンパウンド液の相溶性と保存安定性、あるいは、軟質ポリウレタンフォームの機械的物性、残留歪、熱融着性、高周波融着性などの何れかの特性に未だ問題を残しているため、バランスのとれた優れた性能を有する軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォームの開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭46−30309号公報
【特許文献2】特開平2−232218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、原料のポリオールコンパウンド液が相溶性と保存安定性に優れており分離が起こりにくく、発泡時の安定性に優れ、且つ、独泡率が低く圧縮永久歪が小さく、フォームの機械的物性、熱融着性及び高周波融着性に優れる軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート、有機リン化合物を含む軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物であって、前記ポリヒドロキシ化合物に用いる成分が、特定のポリオキシアルキレンポリオールと、特定のポリエステルポリオール、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体の3成分を必須としてなり、かかる3成分を特定の質量比で混合し用いることにより、相溶性の向上とポリウレタン樹脂の分離の解消、フォームの発泡状態の安定化、樹脂の独泡率の低減及びフォームの圧縮永久歪の減少を実現でき、且つ、優れた熱融着性及び高周波融着性を有し、高い初期剥離強度及び最終剥離強度の発現が可能な軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物、及びそれを用いてなる軟質ポリウレタンフォームを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
即ち、本発明は、ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、有機リン化合物(C)を含むポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物であって、前記ポリヒドロキシ化合物(A)に用いる成分が、ポリオキシアルキレングリコール(a1)と、主鎖に側鎖を有する多価アルコールを用いた重量平均分子量700〜1200のポリエステルポリオール(a2)、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)とを併用するものであり、前記(a1)と(a2)と(a3)との混合比が(a1)/(a2)/(a3)=94/1/5〜58/12/30質量比であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物に関するものである。
【0016】
また、本発明は、前記軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物を用い、水発泡させてなることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームに関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物は、ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、有機リン化合物(C)を含み、前記ポリヒドロキシ化合物に用いる成分が、特定のポリオキシアルキレンポリオールと、特定のポリエステルポリオール、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体の3成分を必須としてなり、かかる3成分を特定の質量比の範囲で混合し用いることにより、原料のポリオールコンパウンド液の相溶性と保存安定性の向上及びポリウレタン樹脂の分離の解消、フォームの発泡状態の安定化、樹脂の独泡率の低減及びフォームの圧縮永久歪の減少などを実現でき、且つ優れた熱融着性及び高周波融着性を有し、高い初期剥離強度及び最終剥離強度を発現できる。本発明の軟質ポリウレタンフォームは、例えば、座席、内装材、イス、クッション、履物、家具類、衣料類、クッション材、遮吸音材、衝撃吸収材、断熱材などのクッション性、吸収性、あるいは断熱性などの特性が要求される広範囲の分野に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物は、ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、及び有機リン化合物(C)を必須に含んでなる。
【0020】
前記ポリヒドロキシ化合物(A)は、ポリオキシアルキレングリコール(a1)と、主鎖に側鎖を有する多価アルコールを用いた重量平均分子量(以下「Mw」という。)700〜1200のポリエステルポリオール(a2)(以下「ポリエステルポリオール(a2)」という。)、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)(以下「ブロック共重合体(a3)」という。)の3成分を必須に併用してなるポリオール成分である。
【0021】
前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)としては、特に限定しないが、前記(a1)を得るための出発物質が、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、あるいはEO及びPO等により鎖延長されたもの(以下、順に「EO付加体」、「PO付加体」、「EO/PO付加体」という。)などを用いることができる。
【0022】
前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)としては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンエーテルポリオール、ポリオキシエチレン/オキシプロピレンエーテルポリオール(オキシアルキレン単位として、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位を備える。)等の汎用ポリオールを挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、ポリオキシアルキレングリコール(a1)のMwは、好ましくは1500〜5000の範囲であり、より好ましくは2000〜4000の範囲であり、更に好ましくは2500〜3500の範囲である。かかる範囲であれば、加工後の成形品に適度な硬度と反発弾性を付与することができる。
【0024】
更に、ポリオキシアルキレングリコール(a1)の官能基数(水酸基数)は、好ましくは2〜4、より好ましくは2又は3、更に好ましくは3である。かかる範囲であれば、発泡状態が安定であり、フォームの成形を良好、且つ安定して行うことができ、量産性に富む軟質ポリウレタンフォームとすることができる。
【0025】
また、ポリオキシアルキレングリコール(a1)の水酸基価は、好ましくは30〜80、より好ましくは40〜70、更に好ましくは50〜60である。(a1)の水酸基価がかかる範囲であれば、適度に連通化が可能となり、クッション性に優れる軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0026】
前記ポリエステルポリオール(a2)は、側鎖基を有する多価アルコールを単独、又は、側鎖基を有する多価アルコールと側鎖基を有しない多価アルコールとを併用したグリコール成分と、ジカルボン酸(脂肪族系、芳香族系、脂環族系)を酸成分として、エステル化反応することにより得られるポリエステルポリオールである。
【0027】
前記側鎖基を有する多価アルコールとしては、側鎖としてアルキル基を有する多価アルコールであり、側鎖のアルキル基の炭素数が、好ましくは1〜34のものであり、例えば、1,2−プロピレングリコール、ジ−1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、ネオペンチルグリコール、2−ノルマルブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、3−フェニル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−(4−ノニルフェニル)−1,5−ペンタンジオール、3,3−ビス(4−ノニルフェニル)−1,5−ペンタンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロプロパン、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)シクロブタン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘプタン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0028】
前記側鎖基を有しない多価アルコールとしては、主鎖に側鎖(アルキル基)を有さない多価アルコールであり、官能基数2〜4で分子量60〜300のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−アミルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、シクロヘキサンジメタノール、p−キシレングリコールなどのグリコール類、あるいはグリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの多官能のポリヒドロキシ化合物を使用できる。
【0029】
前記脂肪族系ジカルボン酸としては、炭素数3〜14のものが好ましく、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,11−ウンデカメチレンジカルボン酸、1,12−ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。又、芳香族系ジカルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸もしくはフェナンスレンジカルボン酸があるが、それらの無水物あるいは各種の誘導体も使用できることは無論であり、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。また、脂環族系ジカルボン酸としては、例えば、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0030】
以上に掲げた諸原料を用いて前記ポリエステルエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールを調製するには、常圧又は減圧条件下で、触媒を用いて又は用いずに行なう従来公知のエステル化技術を採用できる。その中でも代表的なものとしては、常圧下にグリコール類とジカルボン酸類とを反応させる方法とか、減圧条件下でエステル化せしめる方法とか、トルエンの如き不活性溶剤の存在下にエステル化を行なったのち、縮合水と溶剤とを共沸させて反応系外に除去せしめる方法などが例示できるが、特に限定はしない。
【0031】
触媒の存在しない系で反応を行なうことも無論可能ではあるが、通常は、エステル化反応を円滑に進行させるためには、触媒を用いることが好ましい。前記触媒としては、従来公知のものが使用でき、例えば、無機酸又は有機酸類;Li、Na、K、Rb、Ca、Mg、Sr、Zn、AL、Ti、V、Cr、Mn、Fc、Co、Ni、Cu、Zr、Pd、Sn、Sb、Pbなどの金属の塩化物、酸化物、水酸化物又は酢酸、シュウ酸、オクチル酸、ラウリル酸若しくはナフテン酸などの脂肪酸塩類;ナトリウム・メチラート、ナトリウム・エチラート、アルミニウム・トリイソプロポキサイド、イソプロピル・チタネート若しくはn−ブチル・チタネートなどのアルコラート類;ナトリウム・フェノラートなどのフェノラート類;あるいはAl、Ti、Zn、Sn、Zr、Pbなどの金属、その他の有機金属化合物などの如き、通常のエステル化用およびエステル交換用に使用されている全ての触媒を用いて行なうことができる。
【0032】
前記触媒の使用量は、前記ポリエステルポリオールを合成する際に用いる原料の合計質量に対して、好ましくは0.00001〜5質量%の範囲であり、より好ましくは0.001〜2質量%の範囲である。
【0033】
また、この際の反応温度は、特に限定しないが、好ましくは100〜250℃の範囲である。
【0034】
また、前記ポリヒドロキシ化合物(A)を合成する際の成分の中に、ポリエステルポリオール(a2)を必須に含有することにより、原料のポリオールコンパウンド液の相溶性と保存安定性、及び、軟質ポリウレタンフォームにおける機械的物性、圧縮永久歪、熱融着性及び高周波融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)などの優れた特性を得ることができる。
【0035】
前記ポリエステルポリオール(a2)としては、特に限定しないが、例えば、ポリジプロピレンアジペート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)アジペート、又は前記組成に1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ペンタンジオールを併用したアジペートなどが挙げられ、好ましくは、ポリジプロピレンアジペート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)アジペートである。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ポリエステルポリオール(a2)のMwは、700〜1200の範囲であり、好ましくは800〜1100の範囲である。前記ポリエステルポリオール(a2)のMwがかかる範囲であれば、ポリオールコンパウンドの相溶性及び保存安定性、ポリウレタンフォームの製造時の発泡状態の安定性(発泡安定性)、機械的物性など優れた特性を得ることができる。前記(a2)のMwが700未満の場合には、フォーム製造時の発泡安定性、及びフォームの機械的物性に劣る。一方、前記(a2)のMwが1200を超える場合には、前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)や他のポリオキシアルキレングリコールとの相溶性が低下し、原料のポリオールコンパウンド液の保存安定性に劣る。
【0037】
前記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)は、ポリオキシアルキレングリコールにポリエステル鎖を付加することでブロック化した共重合体であり、例えば、ポリオキシアルキレングリコールに、ポリカルボン酸無水物と多価アルコール及び/又はアルキレンオキシド化合物を反応させることにより得ることができる。
【0038】
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、活性水素含有化合物にEOやPOなどのアルキレンオキシドの単独付加又は2種以上をランダム付加もしくはブロック付加した構造を有する化合物などを挙げることができる。
【0039】
前記活性水素含有化合物としては、水、あるいはメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、脂肪酸モノグリセリド、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビット、ソルビタン、蔗糖などの1価アルコール類又は多価アルコール類、あるいはアミン類、多価フェノール類、多価カルボン酸類などを挙げることができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、水、多価アルコール類が好ましい。
【0040】
前記ポリオキシアルキレングリコールのMwは、特に限定しないが、好ましくは200〜5000の範囲である。ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール(分子量1000〜2000)などが好ましい。なお、ポリオキシアルキレングリコールを前記ブロック共重合体(a3)のポリエーテル成分として使用する場合には、ポリエチレンプロピレングリコールのMwは、好ましくは300〜2500の範囲、より好ましくは350〜2200の範囲である。前記ポリエチレンプロピレングリコールのMwが、300より小さいと、ポリエーテルの持つ柔軟性が低下するため好ましくない。また、2500より大きいとエステル化の反応性が低下するため生産性が悪く、コンパウンド時の相溶性及び保存安定性も低下するため好ましくない。
【0041】
前記ポリカルボン酸無水物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,11−ウンデカメチレンジカルボン酸、1,12−ドデカメチレンジカルボン酸などの脂肪族系酸無水物、あるいはオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナンスレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族系無水物が挙げられる。また、前記酸無水物の使用のほかに、各種の誘導体も使用できることは無論可能である。
【0042】
前記ポリカルボン酸無水物の使用量は、前記ポリオキシアルキレングリコールのヒドロキシル基に対して、少なくとも等モル以上であることが望ましい。前記ポリカルボン酸無水物の使用量が等モルよりも少ない場合には、初期剥離強度を十分に付与できないおそれがあり好ましくない。
【0043】
上記多価アルコールとしては、特に限定しないが、通常、ポリエステルの合成に用いられる多価アルコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等の二価アルコール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、前記ポリオキシアルキレングリコールと混合した場合の良好な相溶性、共重合ポリオールの樹脂粘度などの観点から、好ましくは、側鎖に基を有する多価アルコールとして、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等、あるいはエーテル結合を持つ多価アルコールとして、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられ、より好ましくは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられる。
【0044】
上記アルキレンオキシド化合物としては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0045】
以上のような諸原料を用いて前記ブロック共重合体(a3)を調製するには、前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)及びポリエステルポリオール(a2)を得るのと同様の合成条件、あるいは触媒などを用いて行なう従来公知のエステル化あるいはエーテル化技術が採用できる。
【0046】
前記ブロック共重合体(a3)のMwは、好ましくは1000〜5000の範囲であり、より好ましくは2000〜3000範囲である。前記ブロック共重合体(a3)のMwがかかる範囲であれば、原料のポリオールコンパウンド液の相溶性及び保存安定性、軟質ポリウレタンフォームの発泡安定性、機械的物性などの優れた性能を得ることができる。前記ブロック共重合体(a3)のMwが1000未満の場合には、軟質ポリウレタンフォーム製造時の発泡安定性に劣り、フォームが固くなりすぎて機械的物性に劣る傾向にある。一方、ブロック共重合体(a3)のMwが5000を超える場合には、前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)との相溶性に劣り、原料ポリオール液の安定性が低下する傾向にあり、また、コンパウンドの粘度が高くなり、軟質ポリウレタンフォーム製造時の発泡安定性が低下する傾向にある。
【0047】
前記ポリヒドロキシ化合物(A)は、必須の構成成分である前記(a1)〜(a3)以外に、必要に応じてその他のグリコール成分(a4)として、官能基数が2〜8であり、Mwが500〜7000のポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、あるいはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等のアジピン酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、及びそれらに多官能成分(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオールなど)を併用することも可能である。
【0048】
前記その他のグリコール成分(a4)の使用量は、本発明の目的を逸脱しない範囲で設定することができる。
【0049】
前記ポリヒドロキシ化合物(A)に用いる成分は、前記ポリオキシアルキレングリコール(a1)とポリエステルポリオール(a2)とブロック共重合体(a3)の3成分を必須に併用するものであり、その際の前記(a1)と(a2)と(a3)の混合比は(a1)/(a2)/(a3)=94/1/5〜58/12/30質量比の範囲であり、好ましくは82/3/15〜70/10/20質量比の範囲である。前記3成分の混合比がかかる範囲であれば、ポリオールコンパウンド液の相溶性及び長期の保存安定性に優れ、熱融着性、高周波融着性、圧縮永久歪などの優れた性能を有する軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0050】
本発明に用いることのできる前記ポリイソシアネート(B)としては、特に限定しないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート若しくは2,6−トリレンジイソシアネート又はこれらの混合物(例えばTDI−80;2,4−体と2,6−体の混合物で2,4−体/2,6−体=80/20質量比のもの)、m−若しくはp−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの各種誘導体などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0051】
更に、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物では、必須成分として、ポリヒドロキシ化合物(A)とポリイソシアネート(B)と共に、有機リン化合物(C)を併用する。
【0052】
本発明では、前記有機リン化合物(C)を必須に用いることにより、初期剥離強度、最終剥離強度などの物性の更なる向上を図ることができる。
【0053】
前記有機リン化合物(C)は、前記軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物を調整する如何なる段階で配合しても構わないが、通常は、予め、ポリヒドロキシ化合物(A)と有機リン化合物(C)を配合し、ポリオールコンパウンドを調整しておき、次いで、ポリイソシアネート(B)を配合する方法で行なうことができる。
【0054】
前記有機リン化合物(C)とは、ホスフェート、ホスホネート等を同一分子中に有し、少なくとも2個の活性水素原子を有する有機のリン化合物であり、一般的にポリウレタンフォームの難燃剤などとして使用されている化合物と同様のものが使用できる。前記有機リン化合物(C)としては、特に限定しないが、例えば、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブトキシエチルトエフェート、トリクレジルホシフェート、あるいはポリオキシアルキレンビスクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル、あるいは非ハロゲン系の縮合リン酸エステル等が挙げられ、これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。前記含ハロゲン系及び非ハロゲン系の縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、CR−504L(商品名、大八化学株式会社製、ポリオキシアルキレンビスクロロアルキルホスフェート)、CR−570(商品名、同社製、ハロゲン系縮合リン酸エステル)、ダイガード−580(同社製、非ハロゲン系リン酸エステル)、ダイガード−610(同社製、非ハロゲン系リン酸エステル)などが挙げられる。
【0055】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、以上の原料を用いて、従来公知の方法により、例えば、プレポリマー法、ワンショット法等により、前記軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物を調整し、次いでフォームを製造すればよい。
【0056】
前記プレポリマー法とは、例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートを予め反応させてプレポリマーを得て、次いで、これに発泡剤である水、触媒、整泡剤、難燃剤、及びその他添加剤の存在下、ポリヒドロキシ化合物を反応させ、ポリウレタンフォームを得る方法である。
【0057】
一方、ワンショット法とは、例えば、触媒、発泡剤である水、整法剤及びその他添加剤の存在下に、有機ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させ、ポリウレタンフォームを得る方法である。
【0058】
使用する原料は、ワンショット法、プレポリマー法等のいずれの製造方法でも前掲した原料を何れも使用することができる。
【0059】
更に、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物には、触媒を必要に応じて配合することができる。
【0060】
前記触媒の種類及び添加量は、触媒の混合後から型内に流し込むまでの時間、温度、最終的な発泡状態などを考慮して選択すればよく、特に限定はしない。
【0061】
本発明に用いる触媒とは、一般にポリウレタンフォームを製造する際に通常用いられるものでよく、例えば、有機スズ化合物触媒、アミン系触媒等が挙げられる。有機スズ化合物触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、スタナスオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキソエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等、あるいはアミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルエーテル、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルイミダゾール等の第三級アミン系触媒などが挙げられ、これらは単独使用でも2種以上を併用してもいい。
【0062】
また、本発明においては、水(有機イソシアネートとの反応で炭酸ガスを生成する)を発泡剤として主に使用するが、必要に応じてモノフルオルトリクロルメタン或いはメチレンクロライドのような低沸点の有機化合物及び空気も使用することができる。
【0063】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物には、上述した配合成分以外に、ポリウレタンフォームに要求される性能に応じて、各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、製造工程の何れの段階においても用いることができる。かかる添加剤とは、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、砥粒、充填剤、顔料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、ブレンド用樹脂など公知慣用の添加剤が例示できる。尚、本発明で記載する添加剤は一例であって、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
【0064】
前記整泡剤としては、一般に用いられるポリウレタンフォーム製造用のシリコーン整泡剤でよく、微細な気泡を安定的に形成可能なものであれば特に限定せず、例えば、シリコン L−540(日本ユニカ株式会社製)等が挙げられる。
【0065】
前記充填材としては、例えば、炭酸塩、珪酸、珪酸塩、水酸化物、硫酸塩、硼酸塩、チタン酸塩、金属酸化物、炭素物、有機物等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0067】
下記の実施例及び比較例で得た原料のポリオールコンパウンド液の相溶性及び保存安定性、発泡したポリウレタンフォームの物性(密度、圧縮硬さ、抗張力、伸度、引裂強度、圧縮永久歪)を日本工業規格 JIS K 6400に準拠して評価した。また、熱融着性について、下記の方法によりポリエステル布の初期剥離強度及び最終剥離強度を測定し評価した。
【0068】
〔ポリオールコンパウンドの相溶性の試験方法〕
100ccビーカーに実施例及び比較例で調整したポリオールコンパウンド50gをそれぞれ入れ、1時間後にポリオールコンパウンドの外観変化を目視観察し下記の基準にて評価した。
相溶性の評価基準
○:透明な外観を保っていた。
△:わずかに濁りが発生していた。
×:濁りが発生あるいは白濁状態。
【0069】
〔ポリオールコンパウンドの保存安定性の試験方法〕
100ccガラス瓶に実施例及び比較例で調整したポリオールコンパウンド50gをそれぞれ入れ、ポリオールコンパウンドの外観を確認後、相対湿度100%、内温50℃の恒温恒湿槽中で4週間保存後、外観変化を目視観察し下記の基準にて評価した。
保存安定性の評価基準
○:4週間後も透明な外観を保っている。
△:わずかに濁りが発生した。
×:濁りが発生あるいは白濁状態になった。
【0070】
〔圧縮硬さの測定方法〕
日本工業規格 JIS K6400に準拠して測定し、下記の基準にて評価した。
25%圧縮硬さ(単位:kg/314cm2)の評価基準。
○:12.0未満の場合。
×:12.0以上の場合。
【0071】
〔抗張力の測定方法〕
JIS K6400に準拠して測定した。
【0072】
〔伸度の測定方法〕
JIS K6400に準拠して測定し、下記の基準にて評価した。
伸度(単位:%)の評価基準。
○:160以上の場合。
△:150以上160未満の場合。
×:150未満の場合。
【0073】
〔引裂強度の測定方法〕
JIS K6400に準拠して測定した。
【0074】
〔圧縮永久歪の測定方法〕
JIS K6400に準拠して測定し、下記の基準にて評価した。
50%及び90%圧縮永久歪(単位:%)の評価基準。
○:10.0未満の場合。
×:10.0以上の場合。
【0075】
〔熱融着性の試験方法〕
得られた軟質ポリウレタンフォームを厚さ15mmにスライスし、縦150mm×横50mmのサイズにカットし、試料用ポリウレタンフォームを作成する。
前記試料用ポリウレタンフォームの全面を一定の炎に調整されたガスバーナーで炙り溶融させ、直ちに所定の織物(モケット又はトリコット)上に一定圧力(2〜5kg/30cm2)下で融着させる。
融着させてから4分30秒放置後及び24時間放置後に、この融着フォームから120mm×25mmの試験片をとり、日本工業規格 JIS L−1066−1963に準拠して剥離強度(g/インチ)を測定し、熱融着性の評価を行なった。
融着させてから4分30秒放置後の評価結果を初期剥離強度(g/インチ、以下単位略す。)、24時間放置後の評価結果を最終剥離強度とした。
初期剥離強度と最終剥離強度の評価基準は下記の通りである。
○:100以上の場合。
×:100未満の場合。
【0076】
〔実施例1〕
5リットル4つ口フラスコに、ジプロピレングリコール1705部、アジピン酸1300部、テトラブチルチタネート0.15部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させ重縮合を行い、ポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=810のもの。)を得た。
また、ジオキシプロピレングリコール(Mw=1000のもの。)1000部に無水フタル酸332部を加え反応させ、その後、プロピレンオキサイド152部を加え付加反応させ、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)(Mw=1412のもの。)を得た。
次いで、ポリヒドロキシ化合物(A)として、前記ポリエステルポリオール(a2)5部と前記ブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(商品名、大八化学株式会社製、ポリオキシアルキレンビスクロロアルキルホスフェート)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、これに更にトリエチレンジアミン0.1部と水4.0部との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)1.0部、スタナスオクトエート0.25部を加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を51.4部(NCOインデックス=105)加えて激しく撹拌後、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S1)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F1)を得た。
評価結果を第1表に記載した。実施例1で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れ、且つ、ポリウレタンフォームの機械的物性、熱融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)に優れていた。
【0077】
〔実施例2〕
5リットル4つ口フラスコに、ジプロピレングリコール1605部、アジピン酸1395部、テトラブチルチタネート0.15部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させ重縮合を行い、ジプロピレングリコール1605部、アジピン酸1395部を重縮合し、ポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=1092のもの。)を得た。
次いで、ポリヒドロキシ化合物(A)として、前記ポリエステルポリオール(a2)5部と実施例1のブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部、及び有機リン化合物(C)としてダイガード−580(商品名、大八化学株式会社製、非ハロゲン系リン酸エステル)10部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S2)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F2)を得た。
評価結果を第1表に記載した。実施例2で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れ、且つ、ポリウレタンフォームの機械的物性、熱融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)に優れていた。
【0078】
〔実施例3〕
ポリヒドロキシ化合物(A)として、実施例2で合成したポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート12部と実施例1のブロック共重合体(a3)15部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)70部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S3)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F3)を得た。
評価結果を第1表に記載した。実施例3で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れ、且つ、ポリウレタンフォームの機械的物性、熱融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)に優れていた。
【0079】
〔実施例4〕
3−メチル−1,5−ペンタンジオール1499部、アジピン酸1501部、テトラブチルチタネート0.15部仕込み、同様の操作にて重縮合し、ポリエステルポリオール(a2)であるポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)アジペート(Mw=1189のもの。)を得た。
次いで、ポリヒドロキシ化合物(A)として、前記ポリエステルポリオール(a2)5部と実施例1のブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S4)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、本発明の軟質ポリウレタンフォーム(F4)を得た。
評価結果を第2表に記載した。実施例4で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れ、且つ、ポリウレタンフォームの機械的物性、熱融着性(初期剥離強度、最終剥離強度)に優れていた。
【0080】
〔比較例1〕
ジプロピレングリコール1829部、アジピン酸1171部、テトラブチルチタネート0.15部仕込み、同様の操作にて重縮合し、ポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=507のもの。)を得た。
次いで、ポリヒドロキシ化合物(A)として、前記ポリエステルポリオール(a2)5部と実施例1のブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S5)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F5)を得た。
評価結果を第2表に記載した。比較例1で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れていたが、それを用いて得た軟質ポリウレタンフォーム(F5)は、圧縮硬さ、伸度に劣っていた。
【0081】
〔比較例2〕
ジプロピレングリコール1534部、アジピン酸1457部、テトラブチルチタネート0.15部仕込み、同様の操作にて重縮合し、ポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=1300のもの。)を得た。
次いで、ポリヒドロキシ化合物(A)として、前記ポリエステルポリオール(a2)5部と実施例1のブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S6)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F6)を得た。
評価結果を第2表に記載した。比較例2で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に劣り、それを用いて得た軟質ポリウレタンフォーム(F6)は、伸度に劣っていた。
【0082】
〔比較例3〕
ポリヒドロキシ化合物(A)として、実施例2のポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=1092のもの。)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)77部、及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S7)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F7)を得た。
評価結果を第3表に記載した。比較例3で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に劣り、それを用いて得た軟質ポリウレタンフォーム(F7)は、伸度、圧縮永久歪、熱融着性(初期剥離強度)に劣っていた。
【0083】
〔比較例4〕
比較例4では、実施例1において用いた、有機リン化合物(C)のみを用いずに行なった。
ポリヒドロキシ化合物(A)として、実施例1のポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=810のもの。)5部と実施例1のブロック共重合体(a3)20部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)75部を混合しポリオールコンパウンドとした後、実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S8)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡後、軟質ポリウレタンフォーム(F8)を得た。
評価結果を第3表に記載した。比較例4で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に優れていたが、それを用いて得た軟質ポリウレタンフォーム(F8)は、伸度、熱融着性(初期剥離強度)に劣っていた。
【0084】
〔比較例5〕
比較例5では、実施例1において用いた、ポリエステルポリオール(a2)であるポリジプロピレンアジペート(Mw=810のもの。)のみを用いずに行なった。
実施例1のブロック共重合体(a3)25部に、ポリオキシアルキレンポリオール(a1)であるポリオキシプロピレントリオール(Mw=3000のもの。)72部及び有機リン化合物(C)としてCR−504L(大八化学株式会社製)3部を混合しポリオールコンパウンドとした。実施例1と同様に、これに更にトリエチレンジアミンと水との溶解液、シリコンL−540(日本ユニカ株式会社製)、スタナスオクトエートを加え、更にポリイソシアネート(B)としてTDI−80を加えて激しく撹拌後、軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物(S9)を調整し、直ちに型に注ぎ込み発泡させたが、樹脂の相溶性が悪く、軟質ポリウレタンフォーム(F9)を得ることができなかった。
評価結果を第3表に記載した。比較例5で得たポリオールコンパウンド液は相溶性及び保存安定性に劣り、且つ、ポリウレタンフォームを得ることができなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
第1表〜第3表に記載の略号は、下記の化合物を意味する。
DPG :ジプロピレングリコール
AA :アジピン酸
3MPD :3−メチル−1,5−ペンタンジオール
DPG−AA:ポリジプロピレンアジペート
3MPD−AA:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)アジペート
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物は、ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、有機リン化合物(C)を含み、前記ポリヒドロキシ化合物に用いる成分が、特定のポリオキシアルキレンポリオールと、特定のポリエステルポリオール、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体の3成分を必須としてなり、かかる3成分を特定の質量比の範囲で混合し用いることにより、原料のポリオールコンパウンド液の相溶性と保存安定性の向上及びポリウレタン樹脂の分離の解消、フォームの発泡状態の安定化、樹脂の独泡率の低減、及びフォームの圧縮永久歪の減少を実現でき、且つ、優れた熱融着性及び高周波融着性を有し、高い初期剥離強度及び最終剥離強度を発現できる。また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、例えば、座席、内装材、イス、クッション、履物、家具類、衣料類、クッション材、遮吸音材、衝撃吸収材、断熱材などのクッション性、吸収性、あるいは断熱性などの特性が要求される広範囲の分野に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシ化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、有機リン化合物(C)を含むポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物であって、前記ポリヒドロキシ化合物(A)に用いる成分が、ポリオキシアルキレングリコール(a1)と、主鎖に側鎖を有する多価アルコールを用いてなる重量平均分子量700〜1200のポリエステルポリオール(a2)、及びポリエステルポリエーテルブロック共重合体(a3)とを併用するものであり、前記(a1)と(a2)と(a3)との混合比が、(a1)/(a2)/(a3)=
94/1/5〜58/12/30質量比であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(a2)が、ポリジプロピレンアジペート又はポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)アジペートである請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用樹脂組成物を用い、水発泡させてなることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2011−241336(P2011−241336A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116246(P2010−116246)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】