説明

軟質ポリウレタン系発泡体の製造方法

【課題】オゾン層を破壊することが著しく少なく、一層微細で且つ均一なフォーム径をもち、肌当たりがソフトで、かさかさ感がなく且つ高級感のあるシルキー感触の連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体を容易に製造する。
【解決手段】本連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体の製造方法は、ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しうる活性水素化合物とを発泡剤の存在下に反応させて、発泡体を製造する方法において、発泡剤は、C(2n+2)〔n=1〜8〕で表されるフッ化炭素、及びC(2n+1)H〔n=1〜7〕或いはC2n〔n=1〜7〕で表されるフッ化水素化炭素から選ばれる化合物であり、応開始前の粘度の低い状態で泡立てを行い、その後反応硬化させる。この発泡体は、単位面積当りのセル個数が10個/mm以上、セルの断面形状が円形若しくは略円形であり、セル径が50〜300μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細セル構造でシルキー感触のあるマイクロセルの連続気泡型軟質ポリウレタン系発泡体の製造方法に関する。本発明は、化粧パフ、化粧チップ・アプリケーター(アイカラー、頬紅用道具等)、洗顔・ボディ洗浄用具、拭き取り用具、肌のマッサージ用具及び肌の敏感な部位への緩衝材、OA機器用各種ロール及びフォーム等の製造に利用される。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートと、該ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しうる活性水素化合物とを発泡剤の存在下に反応させて、ポリウレタン系発泡体は製造される。この発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリウレアフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、比較的低発泡のものとしては、マイクロセルラーポリウレタンエラストマー、マイクロセルラーポリウレタンウレアエラストマー等がある。
【0003】
この際使用される発泡剤としては、水素原子を含まない塩素化フッ素化炭素(「CFC」ともいう。)、例えば、トリクロロフルオロメタン(「R11」ともいう。)やジクロロジフルオロメタン(「R12」ともいう。)が知られている。また、これら従来の塩素化フッ素化炭素の代替フロンの探索が活発に行われており、オゾン層を破壊しにくい塩素化フッ素化水素化炭素(「HCFC」ともいう。)及び塩素原子を含まないフッ素化水素化炭素(「HFC」ともいう。)、更にはフッ素化炭素(「FC」ともいう。)が開発されている。例えば、「HCFC」の例としてCClFCH(「R141b」ともいう。)等が知られている。また、「HFC」の例としてCHFCH等、「FC」の例としてC10、C12等が知られている(特開平6−212012号公報、特開平3−746号公報等)。
また、メチレンクロライドやペンタン、ヘキサン等の炭化水素等も使用されている。
【0004】
従来、ポリイソシアネートと、該ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しうる活性水素化合物とを発泡剤の存在下に反応させて、軟質ポリウレタン系発泡体を製造する方法において、従来知られうる微細セル構造のマイクロセルの連続気泡性軟質ポリウレタンフォームは、セル径が最も細かいものでさえ、セル数が80個程度/25mm程度が限度であった。即ち、セル径が約300〜340μm程度のものが最も細かく、これ以上細かいものは製造できなかった。
この為、化粧用パフ或いはOA機器用ロール又はフォーム等の分野において非常に微細なセル構造のフォームが要求されているにもかかわらず、通常の軟質ウレタンフォームにおいては、上記の様なセルサイズのものを供給するのが限度であった。
そこで、いわゆる、湿式法と呼ばれる製造方法が考案されており、シルキー感触を有するマイクロセルラーポリウレタン発泡体が知られている。
更に、シルキー感触を有するマイクロセルラーポリウレタン発泡体は、湿式法にて製造されることが知られている。即ち、ポリウレタンをジメチルホルムアミド等の特殊の溶剤に溶解させ、これにポリビニルアルコール等の気孔生成剤を配合した組成物を撹拌し、所定の型内に充填させ、ゲル化させ、その後多量の水にてこの気孔生成剤を溶出させることにより、製造される(特開昭58−189242号公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記塩素化フッ素化炭素系発泡剤(「CFC」ともいう。)は、塩素原子を含んでおり、オゾン層を破壊するといわれている。このオゾン破壊係数は、表1に示す如く、0.6〜1.0程度〔上記「R11」が基準(1.0)である。〕である。また、上記塩素化フッ素化水素化炭素(「HCFC」ともいう。)のオゾン破壊係数は、表1に示す如く、0.013〜0.11程度であり、上記CFCよりは小さめではあるものの、依然として0.01〜0.11程度である。しかも、「CFC」及び「HCFC」も、独立気泡型の硬質発泡体の製造によく使用されている。また、このような発泡剤を用いて製造される従来の乾式ポリウレタン発泡体においては、セル径が大きく、そのため肌当たりがざらざらしているし、かさかさ感も感じられる。更に、公知のものでは、セル数が80個/25mm程度が限度であり、特に、100個/25mm以上のものがない(即ち、セル径が大きい。)ため、得られる感触に限界が生じている。
【0006】
一方、上記特開平6−212012号公報、特開平3−746号公報にて開示されている「HFC」及び「FC」の発泡剤は、表1に示すように、オゾン破壊係数はゼロ(0)であり、この使用によれば、オゾン層破壊は著しく低減される。しかし、これらの公報において、上記従来のCFC等の発泡剤の代わりに使用しており、従って、独立気泡型硬質発泡体を製造していることが実質上、開示されているに過ぎない。そのため、連続気泡型ポリウレタン系発泡体の製造については具体的言及及び実験がなされていない。更に、この公報には、軟質ポリウレタンフォーム及び半硬質ポリウレタンフォームにも適用する旨の記載があるものの、1行記載であり、しかもこの軟質ポリウレタンフォームの場合には水を併用するのが好ましい旨の記載がある。以上を総合すると、たとえ軟質ポリウレタンフォームの製造に適用するとしても、水を併用することにより、実質上、軟質ポリウレタンフォームを製造することを示唆するに過ぎない。しかし、本当に連続気泡型軟質ポリウレタンフォームが製造されるのか否か全く不明である。
【0007】
【表1】

【0008】
また、上記ペンタン、ヘキサン等を用いる場合、これらの炭化水素やその誘導体は引火性が強く、配合、発泡、硬化、加熱(キュア)等の製造工程において、火災の発生する危険性が高い。また、その防止のため、設備を防爆化する等の必要があり、設備投資が膨大なものになるという問題がある。
更に、上記湿式ポリウレタン発泡体においては、その製造が複雑であるとともに、ポリウレタン溶解用溶剤であるジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の特殊で高価であるとともに有害な溶剤を使用する必要がある。また、排水処理の問題もある。
【0009】
以上より、以下に示すマイクロセルラーで連続気泡型の軟質ポリウレタン発泡体の乾式法による製法の現出が望まれている。
(1)オゾン層を破壊する発泡剤の使用量を更に一層減らし、地球環境の劣化を防止する。
(2)空気混入混合装置(エアーミキサー)等の特殊な装置を不要とする。
(3)火災等の危険性がなく、且つ安全にフォームを製造する。
(4)特殊溶剤を使用するような複雑な製法ではなく、もっと簡便に製造する。
(5)従来よりも更に一層微細で且つ均一なフォーム径をもち、肌当たりがソフトで、かさかさ感がなく、且つ高級感のあるシルキー感触のマイクロセルの連続気泡型ポリウレタン系発泡体を製造する。
【0010】
本発明は、上記(1)〜(5)の全てを備える連続気泡型軟質ポリウレタン系フォームの製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、連続気泡型マイクロセルの軟質ポリウレタン系発泡体を容易に、簡便に且つ安価に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、フッ素系発泡剤を鋭意検討した所、特有の物性を備えるフッ素系液体を発泡剤として使用した所、独立気泡型ではなく、連続気泡型でしかもマイクロセルを有する軟質ポリウレタン系発泡体を製造できることを見出して、本発明は完成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、以下の効果を有する。
(1)オゾン破壊係数が著しく小さいものを使用するので、オゾン層の破壊が著しく少なく、地球環境の劣化を防止できる。
(2)マイクロセルラー発泡体を製造する上で、従来必要となる空気混入混合装置(エアーミキサー)等の特殊な装置を不要とするので、製造が容易かつ安価となる。
(3)火災等の危険性がなく、しかも安全に発泡体を製造できる。
(4)特殊溶剤を使用するような複雑な製法ではなく、簡便に製造できる。
(5)従来よりも更に一層微細で且つ均一なフォーム径をもち、肌当たりがソフトで、かさかさ感がなく、且つ高級感のあるシルキー感触のマイクロセルの連続気泡型軟質ポリウレタン系発泡体を製造できる。従って、このポリウレタン系発泡体は、化粧用塗布具、OA機器用各種ロール及びフォームには好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本第1発明の軟質ポリウレタン系発泡体の製造方法は、ポリイソシアネートと、該ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しうる活性水素化合物とを発泡剤の存在下に反応させて、軟質ポリウレタン系発泡体を製造する方法において、上記発泡剤は、表面張力が15(dynes/cm)以下(通常、8〜15dynes/cm、更に好ましくは13dynes/cm以下、特に8〜13dynes/cm)で且つ該発泡剤への水の溶解度が15ppm以下(通常、5〜15ppm、更に好ましくは7〜11ppm)であるフッ素化炭素(塩素原子を含まない。)であり、上記軟質ポリウレタン系発泡体は連続気泡型であることを特徴とする。この表面張力が15dynes/cmを越える場合、及びこの発泡剤への水の溶解度が15ppmを越える場合には、いずれも、微細なセル構造の発泡体が得られにくいからである。
【0014】
上記「発泡剤」としては、通常、炭化水素の水素原子の一部若しくは全部をフッ素原子で置き換えたフッ化水素化炭素(フッ化炭化水素)又はフッ化炭素、このうち特にフッ化炭素が用いられる。この発泡剤は、表面張力及びこの発泡剤に対する水の溶解度が、極めて低いことを特徴とし、以下の表2に示すものである。尚、この表2には、オゾン破壊係数及び沸点等も併記した。これらのうち、常温で液体の炭素数が5つ以上のフッ素化炭素が好ましく、特に、この炭素数が5〜7の沸点が30〜80℃程度のものがより好ましい。また、この両者を含んでもよい。このフッ化炭素としては、例えば、C(2n+2)〔n=1〜8〕、このフッ化水素化炭素としては、例えば、C(2n+1)H〔n=1〜7〕、C2n〔n=1〜7〕等がある。また、これらの上記化合物には、その分子中に窒素原子や硫黄原子や酸素原子を含んでもよい。
【0015】
更に、セル径及びフォーム感触(柔軟性)の調節のため、上記フッ化水素化炭素(フッ化炭化水素)及び/又はフッ化炭素の発泡剤に、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロエタン(CHCClF)、モノクロロジフルオロエタン(CHCClF)、ジクロロトリフルオロエタン(CFCHCl)等のHCFC(ハイドロクロロフロオロカーボン)、メチレンクロライド等の低沸点溶剤、更には水を配合することもできる。
【0016】
【表2】

【0017】
通常のポリウレタン系発泡体の製造、特に、硬質フォームでの配合系においては、ポリオールやイソシアネートの原料と発泡剤との溶解性が要求される。軟質で且つ独立気泡性の高いフォームを製造するにあっては、上記の如く、ポリオール等の原料に所定の発泡剤を溶解させるか、又は発泡剤として水が通常、使用されるものであり、この原料との溶解性が必要になるか、又は水との相溶性が必要となる。
【0018】
しかし、本発明の発泡剤は、上記に示す如く、ポリオール等の発泡原料(整泡剤や触媒をも含む)との溶解性が極めて低いものであるので、このような発泡剤を連続気泡型軟質ウレタン系発泡体の製造にあえて適用することは、実に驚くべきである。しかも、これによって、セル径が従来と比べると小さく且つ均一であるというマイクロセルラー軟質ウレタン系発泡体、即ちシルキーな感触を有する連続気泡型軟質ウレタン系発泡体が製造されるのは、従来では考えられないものであり、大変な発想の転換によるものであった。
【0019】
上記「ポリイソシアネート」としては、一般に軟質ポリウレタン系発泡体の製造に使用されるものを特に制限することなく使用できるが、なかでもTDI、MDI若しくはそれらの混合物、及びMDI変性物若しくはTDI変性物等が好ましい。
また、これら芳香族系のTDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)の他に、上記「ポリイソシアネート」としては、ポリメリックMDI、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、或いは脂肪族系のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H12MDI(水添MDI)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、LDI(リシンジイソシアネート)、水添XDI、CHDI(シクロヘキシルジイソシアネート)、及びそれらの変性体等が挙げられる。
【0020】
上記「ポリオール」としても、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びそれらの変成体が挙げられ、その種類等は特に制限されないが、ポリエステルポリオール及びポリマーポリオール、即ちポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチルメタアクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールが好ましく、それらは不溶解性且つ高安定性の懸濁液の状態で使用される。
【0021】
上記「ポリエーテルポリオール」としては、2個以上の活性水素を有する出発物質に、塩基性触媒の存在下、アルキレンオキサイドをランダム又はブロック状に付加重合して得られる。例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、サッカロール、エチレンジアミン等の芳香族アミン等の活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルトリメチレンオキサイド、3,3’−ジメチルトリメチレンオキサイド等のオキサイド物を付加重合させたもの等が挙げられる。また、この種のポリエーテルにアクリロニトリル、スチレン等をグラフト重合させた、いわゆるポリマーポリオール、即ち、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチルメタアクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールが挙げられる。
【0022】
上記「ポリエステルポリオール」としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュガー(ショ糖)等の低分子ポリオールと、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等との縮合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。更に、ラクトンエステルとして分類されるカプロラクトン、メチルバレロラクトンの開環縮合物であるポリオール等が挙げられる。
【0023】
尚、このポリオールを含む組成物には、上記発泡剤以外にも、通常、触媒(例えばアミン系触媒や金属触媒等)、整泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、可塑剤等を配合することができる。
上記「触媒」としては、通常アミン系触媒、特に3級アミンと、上記「金属触媒」としては、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫化合物等を併用し、ポリウレタン系発泡体用として好適な触媒を使用でき、その使用量はポリオール100重量部に対して0.1〜3重量部程度が好ましい。また、整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルの共重合体或いは有機系の界面活性剤等を使用することができる。
【0024】
通常、空気混入混合装置等の使用による機械発泡によって得られるフォームは、セル径が比較的小さいものの、独泡性が高い。これは、空気等を機械的に、液状ポリマーに分散させ、そのままポリマーを硬化させて、泡をとじ込めるために独立気泡のセル構造となる。
一方、本発明では、通常の軟質スラブフォームを製造する方法でありながら、連続気泡の微細なセル構造のポリウレタンフォーム系発泡体が製造されるものである。これは、反応開始前の粘度の低い状態で泡立てを行い、この際、発泡剤として表面張力の著しく小さいフッ化炭素を用いるので、均一でミクロな泡を造ることができ、連続気泡の微細なセル構造の発泡体が得られるものと考えられる。
【0025】
また、本発明の製造方法により製造される軟質ポリウレタン系発泡体は、単位面積当りのセル個数が10個/mm以上であり、セルの断面形状が円形若しくはほぼ円形であり、且つセル径が50〜300μmであるマイクロセル軟質フォームである。上記において、セルの断面形状において「略円形」とは、単純な丸に近似するものばかりではなく、四角形状であってもその角部が丸まった形状をも含み、広い意味に使用される。また、上記各発明において、セル径は50〜300μmのうち、好ましくは60〜200μm、更に好ましくは60〜160μmである。更に、上記各発明において、単位面積当りのセル個数が10個以上(例えば10〜200個)/mm、好ましくは20個以上(例えば20〜150個)/mm、更に好ましくは40個以上(例えば40〜150個)/mmである。
【0026】
本発明が、非常に細かい連続気泡型マイクロセルラーポリウレタン発泡体となるのは、定かではないが、次の様なことが考えられる。マイクロセルラーポリウレタン発泡体を作る上での重要なポイントは、(1)泡の表面張力をできる限り低くすること、(2)泡の核を良く分散させ、しかもその核を数多く混入させることである。
発泡体の気泡の生成過程は、巻き込まれた空気が攪拌により細分化され、これが核となって泡が成長するということが重要であり、巻き込まれた空気を攪拌によって細分化するということは、攪拌エネルギーによって液体の表面積を増加させることを意味する。液体の表面積をdAだけ広げるのに必要な仕事量dWは、一般に次式で示されるように表面張力γに比例する。
dW=γ・dA W:仕事量(erg)
A:表面積(cm
γ:表面張力(erg/cm
従って、表面張力を下げてやれば、より少ない仕事量で表面積の増加、即ち、巻き込みガスの分散が達成できることになる。
通常、界面活性剤は液体の表面に単分子層を形成して液体の表面張力を界面活性剤の表面張力に近い値まで下げることができるため、原料成分内に巻き込みガスを細かく分散する役割を果たしている。
即ち、本発明に使用するフッ素化炭素系発泡剤は、非常に表面張力が低く、反応の初期段階では液状であるので、泡の表面張力を低下するように働く。しかも、他の発泡原料との相溶性が低いので、液同士を混ぜても相分離した液液分散液となるが、この様な不均一な液系を微分散させることにより、泡の核及び発泡剤が微分散され、気泡形成初期段階の核形成剤として有効に働くため、できあがった樹脂発泡体のセル(気泡)は、非常に細かいものとなることが推察できる。更に、泡の核を微分散して大量に含んでおり、且つこの溶解性が極めて小さいので、反応硬化する際にもこの発泡剤が系外へ逃げようとして、連続気泡型フォームになるものと考えられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]連続気泡型マイクロセル軟質ポリウレタンフォームの製造
(1)実施例品の製造
まず、A液及びB液として以下のものを準備した。
A液(ポリオール成分):ポリマーポリオール(三井東圧社製、商品名「POP34/28」)100重量部、発泡剤(C12、物性は表2に示す。)10重量部、及び整泡剤(東レシリコン社製、商品名「SF2910」)1.0重量部及び樹脂化触媒(スタナスオクトエート、中京油脂社製)0.3重量部、水1.3重量部、アミン触媒(日本乳化剤(株)製、商品名「LV33」)0.3重量部を混合しポリオール成分を調整した。
B液:ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「ミリオネートMTL」)
【0028】
上記配合のA液と、イソシアネートインデックスが110となる量のB液とを混合し、これを機械撹拌により泡立てを行った。その後、反応硬化させ、得られたフォームを110℃で4時間アフターキュアーして連泡性フォームスラブ(600×300×2000mm)を得た。
そして、これを表面部及び裏面部の各20mm厚さを除去し、厚さ10mmの板材(実施例品1という。)を製作した。
また、上記のA液中のポリオール成分をポリエステルポリオール(日本ポリウレタン株式会社製、商品名「N2200」:ジエチレングリコール及びトリメチロールプロパンと、アジピン酸とを縮合させたポリエステルポリオール、水酸基価(OHV);60)100重量部、反応性の調整用の触媒を適当に調整し、B液:ポリイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、商品名「TDI80」)に変更し、常法に従って軟質スラブフォームを製造した。そして、これを表面部及び裏面部の各20mm厚さを除去し、厚さ10mmの板材(実施例品2という。)を製作した。
【0029】
(2)乾式型比較例品1〜3の製造及び湿式型比較例品の入手
上記発泡剤としてのC12の代わりに、ウレタン発泡用として通常用いられるフッ化塩素化炭素(CClF、物性は表1に示す。)を使用すること以外は、上記と同様にして、ポリウレタンフォーム1(乾式型比較例品1という。)を製造した。
また、同様にC12の代わりに、ウレタン発泡代替用として通常用いられるフッ素化塩素化水素化炭素(CClFCH、物性は表1に示す。)を使用すること以外は、上記と同様にして、ポリウレタンフォーム製板材(乾式型比較例品2という。)を製造した。更に、同様にC12の代わりに、フッ素化水素化炭素(CHFCH、物性は表1に示す。)を使用すること以外は、上記と同様にして、ポリウレタンフォーム製板材(乾式型比較例品3という。)を製造した。
また、上記特開昭58−189242号公報に開示された従来技術を用いて製造されたと考えられる湿式ポリウレタンフォームから得た板材(パフ、湿式型比較例品という。商品名;「ルビセル」、東洋ポリマー(株)製)を入手した。
【0030】
[2]各板材のセル構造の比較
上記実施例品1、湿式型比較例品及び乾式型比較例品1の各板材の表面の写真(80倍に拡大)を撮影し、その写真を、各々、図1、図2及び図3に示す。また、実施例品2は実施例品1と、乾式型比較例品2及び3は乾式型比較例品1と、それぞれ、目視上同等の目の大きさ及び感触を得たので、この実施例品2及び乾式型比較例品2及び3の拡大写真撮影を省略した。
【0031】
これらの図によれば、乾式ポリウレタンフォーム(乾式比較例品1、図3)では、セル径が約288〜450μm(写真で23〜36mm)程度の範囲にあり、単位面積当りのセル個数が約9.2〜10.1個/mm(図3の表示領域73×95mmに約10〜11個のセルがある。)である。尚、セルの断面形状が円形若しくはほぼ円形である。この密度は110g/cmである。手で触った感触は、ざらざらしている。
【0032】
また、湿式比較品(図2)では、気泡が球状ではなく、即ち、乾式のようにセルの横断面が略円形を示すのではなく、枝状のトンネルが3次元的に繋がっているミクロ構造、換言すれば、綿菓子を散りばめたような構造を示している。これは、水溶性の高分子ポリマーがポリウレタン内に延びた状態にて多数分散されていたからと考えられる。即ち、乾式による場合のようにセル(即ち1つの気泡)というものを観念できず、セル数を容易に数えることができない。従って、この湿式におけるミクロ構造は、乾式の場合と全く異なる。更に、目視上においては、所々に大きな溝(穴)が観察され、十分に均一な構造とはなっていない。この密度は150g/cmである。触感はきめ細やかな感じはあるものの、長期間での摩耗耐久性が悪く、トンネル構造が徐々に破壊され、きめ細かさの感触が低下しやすい。
【0033】
一方、実施例品1(図1)においては、セルの断面形状が円形若しくはほぼ円形(又は四角形状であっても比較的丸まったものを含む。)であり、そしてセル径が約75〜163μm(写真中で6〜13mm)程度の範囲にある。また、単位面積当りのセル個数が約56.2〜68.2個/mm(図1の表示領域73×95mmに約61〜74個のセルがある。)であり、従来の乾式ポリウレタンフォームと比べると、セル径が著しく小さく、セル個数が著しく多い。この密度は120g/cmである。更に、目視上においても、写真上においても、極めて均一な気泡状態を示している。触感はきめ細やかな感じであり、且つ高級感がする。
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、使用する原料は、他種のイソシアネート及び他種のポリオール、多種のフッ素化炭素系発泡剤等を使用できる。更に、発泡程度及びセル径の大きさ等も種々設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施例に係る板材の表面を80倍の倍率にて撮影した乾式ポリウレタンフォームの粒子構造を示す説明写真である。
【図2】本比較例に係る湿式法にて製造されたポリウレタンフォームからなる板材の表面を80倍の倍率にて撮影した湿式ポリウレタンフォームの粒子構造を示す説明写真である。
【図3】本比較例に係る乾式法にて製造されたポリウレタンフォームからなる板材の表面を80倍の倍率にて撮影した乾式ポリウレタンフォームの粒子構造を示す説明写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと、該ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しうる活性水素化合物とを発泡剤の存在下に反応させて、連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体を製造する方法において、
上記発泡剤は、C(2n+2)〔n=1〜8〕で表されるフッ化炭素、及び、C(2n+1)H〔n=1〜7〕或いはC2n〔n=1〜7〕で表されるフッ化水素化炭素から選ばれる化合物であり、
且つ、反応開始前の粘度の低い状態で泡立てを行い、その後、反応硬化させることを特徴とする連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体の製造方法。
【請求項2】
上記連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体は、単位面積当りのセル個数が10個/mm以上であり、セルの断面形状が円形若しくはほぼ円形であり、且つセル径が50〜300μmである請求項1に記載の連続気泡型軟質ポリウレタンスラブ発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206923(P2006−206923A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127959(P2006−127959)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【分割の表示】特願平8−146717の分割
【原出願日】平成8年5月15日(1996.5.15)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】