説明

軟質共重合ポリエステル

【課題】 ポリエステルオリゴマーのブリードアウトがしにくく、経時的に光沢低下の少ない軟質ポリエステルを提供する。
【解決手段】 (a)テレフタル酸成分、(b)テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分、(c)エチレングリコール成分、(e)数平均分子量が500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分、及び(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸もしくはそのジエステル誘導体成分、又は、(a)テレフタル酸成分、(c)エチレングリコール成分、(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分、(e)数平均分子量が500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分、及び(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸もしくはそのジエステル誘導体成分をエステル化反応させた後、重縮合を行って得られる軟質共重合ポリエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種成形材料用に使用される軟質共重合ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルは、透明性に優れ、機械的特性に優れていることから、広くボトルやシートの材料として利用されている。ポリエステルは、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化及び/又はエステル交換反応を経て、減圧下、ジオール成分を反応系外に取り出して重縮合反応を行うことにより得られる。この時、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分又は1,4−ブタンジオール成分を用いれば、それぞれ、PETやポリブチレンテレフタレート(PBT)のホモポリマーが得られるが、PETやPBTを構成するこれらのモノマー成分以外のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分を添加することにより、種々の共重合ポリエステルが得られる。特にポリオキシテトラメチレングリコールを共重合すると柔軟性が付与でき、これに更に別のモノマーを共重合して非晶化すると、軟質塩ビ樹脂に似た軟質共重合ポリエステルを得ることができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、このような軟質共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は室温、すなわち25℃以下の場合が多く、成形後もガラス転移温度以上の温度に長期間さらされることとなって、軟質共重合ポリエステル中のオリゴマーのブリードアウトが起こり、その一部が微細な結晶となり、成形物表面の光沢が失われるといった問題が生じていた。
【特許文献1】特許第3270185号公報
【特許文献2】特開2000−302888号公報
【特許文献3】特開2002−363271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリエステルオリゴマーのブリードアウトがしにくく、経時的に光沢低下の少ない軟質ポリエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも下記の(a)、(b)、(c)、(e)、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステルである。
(a)テレフタル酸成分、
(b)テレフタル酸以外のジカルボン酸成分:20〜80モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(c)エチレングリコール成分:145〜300モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分:0.3〜2.5モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)。
【0006】
また、本発明は、少なくとも下記の(a)、(c)、(d)、(e)、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステルである。
(a)テレフタル酸成分、
(c)エチレングリコール成分:50〜100モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分:20〜70モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分:0.3〜2.5モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、ガラス転移温度以上の温度にさらされても、オリゴマーのブリードアウトが起こりにくく、成形物表面の光沢の経時的な低下が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(a)成分は、テレフタル酸成分である。
【0009】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(b)成分について説明する。
(b)成分は、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分である。
(b)成分の使用量は、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、20〜80モル部である。(b)成分をこの範囲で使用することによって、ガラス転移温度を大きく下げることなく共重合ポリエステルの結晶性を十分に落とすことができ、非晶性を付与することができる傾向にある。
【0010】
(b)成分としては、テレフタル酸以外のジカルボン酸であれば特に制限されないが、例えば、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などが挙げられる。中でも、イソフタル酸及びアジピン酸の少なくとも一種が特に好ましい。
【0011】
本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(c)成分は、エチレングリコール成分である。
(c)成分は、前述した(a)成分及び(b)成分と後述する(e)成分及び(f)成分とともに組み合わせて用いる場合には、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、145〜300モル部の範囲で使用し、また、前述した(a)成分と後述する(d)成分、(e)成分及び(f)成分とともに組み合わせて用いる場合には、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、50〜100モル部の範囲で使用する。(c)成分をこの範囲で使用することによって、エステル化反応及び重縮合反応が問題なく進行する傾向にある。
【0012】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(d)成分について説明する。
(d)成分は、エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分である。
(d)成分の使用量は、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、20〜70モル部である。(d)成分をこの範囲で使用することによって、ガラス転移温度を大きく下げることなく共重合ポリエステルの結晶性を十分に落とすことができ、透明性が向上する傾向にある。
【0013】
(d)成分としては、エチレングリコールおよびポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分であれば特に制限されないが、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。中でも、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。
【0014】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(e)成分について説明する。
(e)成分は、数平均分子量が500〜2500のポリテトラメチレングリコール成分であり、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、1〜15モル部の範囲で使用する。(e)成分をこの範囲で使用することによって、共重合性を損なうことなく、柔軟性及び透明性の優れた軟質共重合ポリエステルが得られる傾向にある。(e)成分の使用量の下限値は5モル部以上が好ましく、また、この使用量の上限値は11モル部以下が好ましい。
【0015】
また、ポリオキシテトラメチレングリコール成分の数平均分子量が500〜2500の範囲であることによって、共重合性を損なうことなく、柔軟性及び透明性の優れた軟質共重合ポリエステルが得られる傾向にある。数平均分子量の下限値は650以上が好ましく、また、上限値は2000以下が好ましい。
【0016】
また、(e)成分は熱分解を起こす可能性もあるため、ヒンダードフェノール系、亜リン酸系、チオエーテル系などの一般的な安定剤の一種又はこれらの組合せと共に用いることが好ましい。これらの安定剤は重縮合反応の進行に問題がないよう、(e)成分100質量部に対して10質量部以下で用いるのが好ましい。
【0017】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(f)成分について説明する。
(f)成分は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体である。(f)成分を使用することにより、オリゴマーのブリードアウトを抑制することができ、成形物表面の経時的な光沢低下を抑制することができる傾向にある。
【0018】
一般的に、テレフタル酸成分及びエチレングリコール成分が構成単位として含まれる共重合ポリエステルでは、これら以外のジカルボン酸成分やジオール成分が複数種類含まれていても、エステル化反応、エステル交換反応あるいは重縮合反応の過程で、その組成に見合ったある一定の確率で、エチレンテレフタレート環状三量体が副生する。この環状三量体は結晶性であり、その融点は約320℃であり、一般的なPETを溶融・成形した場合にも、環状三量体が樹脂から遊離して粉状の溶融しにくい異物となる場合がある。共重合ポリエステルの場合には、PETに比べてガラス転移温度が低いため、室温以下でもゴム状態にあり、溶融状態にならなくてもポリエステル分子鎖を縫って環状三量体が滲みだし、樹脂表面に微小な結晶をつくり、光沢性が徐々に失われていく。
【0019】
本発明の共重合ポリエステルでは、(f)成分を共重合することによって、共重合ポリエステル分子鎖の一部及び環状三量体がイオン結合によって拘束され、環状三量体のブリードアウトを阻害しているものと考えられる。
【0020】
(f)成分の使用量は、特に制限されないが、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、0.3〜2.5モル部が好ましい。(f)成分の使用量がこの範囲である場合に、上述の効果が得られる傾向にある。
(f)成分としては、特に限定されないが、例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)などが挙げられる。
【0021】
本発明の軟質共重合ポリエステルにおいては、前述した(a)〜(f)成分以外にも、必要に応じて、反応混合物の重縮合を妨げない限り、三官能以上のモノマー、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物などの多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールを使用することができる。
三官能以上のモノマーの使用量は、特に制限されないが、(a)テレフタル酸成分100モル部に対して、3モル部以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の軟質共重合ポリエステルのガラス転移温度は−10〜25℃である。ガラス転移温度がこの範囲内である場合に、柔軟性、ロール剥離性及び透明性が良好となる傾向にある。ガラス転移温度の下限値は−5℃以上が好ましく、また、上限値は15℃以下が好ましい。
【0023】
また、本発明の軟質共重合ポリエステルの固有粘度〔η〕は0.80〜1.20dl/gである。固有粘度がこの範囲である場合に、軟質共重合ポリエステルが十分な樹脂強度を持ち、Tダイ押し出し法などでの溶融成形に問題のない溶融粘度となる傾向にある。固有粘度の下限値は0.85dl/g以上が好ましく、また、固有粘度の上限値は1.15dl/g以下が好ましい。
【0024】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、前述の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られるポリエステル、又は、(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られるポリエステルである。
【0025】
エステル化反応の反応温度は、特に制限されないが、220〜265℃が好ましい。また、エステル化反応が終了した時点で、反応混合物を重縮合反応器に移し、重縮合触媒を添加し、最終的には265〜285℃、1.0kPa以下の圧力下でエチレングリコールを反応器より留去することにより、重縮合反応を行う。
【0026】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、重縮合反応が終了した後、反応器よりストランド状で取り出し、8〜18℃の冷却水中で切断してペレット化することが好ましい。この温度範囲の冷却水を使用することにより、水切り後、ペレット同士が融着せず、またストランドが過度に冷却されて切断時に砕けることもない傾向にある。冷却水の温度の下限値は10℃以上がより好ましく、また、上限値は15℃以下がより好ましい。
【0027】
本発明の軟質共重合ポリエステルにおいては、ペレットとなった後の保管及び輸送でも融着が発生しないように、共重合ポリエステルペレットに対して0.4質量%以下の添加剤を使用することもできる。
【0028】
使用される添加剤としては、ペレット同士の融着を防止するものであれば特に制限されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属塩、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂の粉末、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、耐光剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、シリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート樹脂等の粉末が好ましい。
【0029】
また、添加剤の平均粒子径は、特に制限されないが、0.3〜20μmが好ましい。平均粒子径をこの範囲である場合に、添加物の凝集が無く、フィルム等に成形した場合ブツが少なく、ブロッキング防止効果も大きくなる傾向にある。添加剤の平均粒子径の下限値は0.5μm以上がより好ましく、また上限値は15μm以下がより好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。実施例及び比較例において、共重合ポリエステルの評価は下記の方法を用いた。
(1)固有粘度[η](dl/g)
25℃のフェノール/テトラクロロエタン等質量混合溶媒中で測定した。
(2)ガラス転移温度 Tg(℃)
JIS K−7121に準じて、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の昇温速度で測定したショルダー値をガラス転移温度(℃)とした。
【0031】
(3)透明性
共重合ポリエステルを押出製膜機(サーモプラスチック工業(株)、40mm単軸押出機)で、樹脂温度が250℃、チルロール温度が5℃となるように製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得て、シートの透明性を下記の基準で5段階評価し、評価5を透明性良好とした。
「5」:ほぼ透明で、シートを透かして向こう側の文字や図柄が鮮明に識別できる。
「4」:ほぼ透明だが、評価「5」より劣る。
「3」:濁りがある。
「2」:やや白濁し、シートを透かして向こう側の文字や図柄は辛うじて識別できるものの、透明性を要する用途には不適である。
「1」:白濁し、シートを透かして向こう側の文字や図柄の識別はできない。
【0032】
(4)シート表面光沢
透明性試験で作製したポリエステルシートより一辺15cmの正方形を切り出し、この試験片を60℃にて10日間オーブン内で加温し、熱処理前後の75°光沢度をハンディ型光沢計(日本電色工業製PG−1)で測定した。熱処理後の光沢保持率(熱処理後光沢/熱処理前光沢×100%)は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0033】
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸129kg(779mol)、イソフタル酸58.3kg(351mol)、エチレングリコール106kg(1715mol)、トリメチロールプロパン0.209kg(1.56mol)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル3.46kg(11.7mol)、数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール78.2kg(78.2mol)、及び安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン5.86kgを仕込み、300kPaの窒素圧をかけ、発生する水を反応系外に留去しつつ、温度を260℃まで引き上げ、180分エステル化反応を行った。反応器を大気圧に戻し、重縮合触媒として二酸化ゲルマニウム90.0g(0.860mol)及びトリエチルフォスフェート12.0g(0.066mol)を添加し、15分後反応混合物を重縮合反応器に移液した。5分後に減圧を開始し、最終的には0.10kPaで、エチレングリコールを反応系外に留去しながら260℃で重縮合を行い、120分後所定の軸トルクに達したので、減圧をといて重縮合反応を停止した。5分後、0.2MPaの窒素圧力をかけ、反応器より樹脂をストランド状にして取り出し、13℃の冷却水中で切断し、共重合ポリエステル1のペレットを得た。
【0034】
なお、表1には、テレフタル酸成分を100モル部に換算した場合の仕込みのモル部を示す。ただし、安定剤については、ポリオキシテトラメチレングリコール成分を100質量部に換算した場合の仕込みの質量部を示す。
得られた共重合ポリエステル1の固有粘度[η]は0.95dl/g、Tgは−4℃であった。
共重合ポリエステル1のシートを作製し、透明性と熱処理前後の光沢保持性を評価した。これらの結果を表1に示した。共重合ポリエステル1は柔軟性に富み、透明性及び光沢保持率が良好であった。
【0035】
実施例2〜8
仕込み組成を表1のように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステルのペレット2〜8を得た。評価結果を表1に示す。
【0036】
比較例1
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル9のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル9のペレットから作製したシートは、柔軟ではあったが、分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用したため、透明性が不良であった。
【0037】
比較例2
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル10のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル10のペレットから得られたシートは、光沢保持率は良好であったが、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が少ないため、Tgが高く柔軟性がなかった。また、透明性も劣っていた。
【0038】
比較例3
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル11のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル11のペレットから得られたシートは、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が多い上に、固有粘度[η]が1.25と高くて製膜状態が悪いため、透明性が不良であった。
【0039】
比較例4
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル12のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル12のペレットから得られたシートは柔軟ではあったが、分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用したため、透明性が不良で、光沢保持率も悪かった。
【0040】
比較例5
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル13のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル樹脂13のペレットから得られたシートは、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が少ないため、Tgが高くて柔軟性がなかった。また、透明性に劣っていた。
【0041】
比較例6
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル14のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル14のペレットから得られたシートは、固有粘度[η]が大きくて製膜状態が悪いため、透明性に劣っていた。また、Tgが低い上に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸誘導体の使用量が少ないため、固体オリゴマーのブリードアウトが発生し、光沢保持率が極めて悪かった。
【0042】
比較例7
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル15のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル15のペレットから得られたシートは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸誘導体の使用量が多いため、固体オリゴマーのブリードアウトが発生し、光沢保持率が極めて悪かった。
【0043】
比較例8
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル16のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル16のペレットから得られたシートは、(d)成分の使用量が多いため、固有粘度とTgが低下し、固体オリゴマーのブリードアウトが発生して、光沢保持率が悪かった。
【0044】
なお、表1〜2中の安定剤1〜3は、それぞれ以下の化合物である。
安定剤1:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
安定剤2:3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン
安定剤3:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(a)、(b)、(c)、(e)、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステル。
(a)テレフタル酸成分、
(b)テレフタル酸以外のジカルボン酸成分:20〜80モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(c)エチレングリコール成分:145〜300モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分:0.3〜2.5モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)。
【請求項2】
少なくとも下記の(a)、(c)、(d)、(e)、及び(f)成分をエステル化反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステル。
(a)テレフタル酸成分、
(c)エチレングリコール成分:50〜100モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分:20〜70モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)、
(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分:0.3〜2.5モル部(テレフタル酸成分100モル部に対して)。

【公開番号】特開2006−291068(P2006−291068A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114620(P2005−114620)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】