説明

軟骨細胞の自家移植用の注射できる軟骨細胞の簡易な移植方法

【課題】本発明は、軟骨細胞の自家移植のための、注射できる軟骨細胞の移植方法に関す
る。
【解決手段】この目的のために、本発明は、動物の軟骨の主成分を構成するフィブリン、
ヒアルロン酸、及びコラーゲンを含有する基質を、注射器の先端の混合用チップの使用に
よって混合し、生じる混合物を損傷した軟骨領域に注射することからなる、軟骨細胞の自
家移植のための注射できる軟骨細胞の移植方法、を提供する。
さらに、本発明は、下記のステップからなる軟骨細胞の自家移植用の注射できる軟骨細胞
の移植方法、を提供する。1番目のバイアル(赤色)に入れた軟骨細胞培養液1mlを1
mlの無菌注射器に入れ、そして、注射器を2番目のバイアル(青色)に垂直方向に挿入
することによって、該細胞培養液を白色又は明るい黄色の凍結乾燥した粉末(フィブリノ
ゲン)を入れた2番目のバイアルに注入する;注射器を3番目のバイアルに垂直方向に挿
入することによって、1番目のバイアル(赤色)に入れた細胞培養液1mlを白色の凍結
乾燥した粉末(トロンビン)を入れた3番目のバイアル(赤色、小さい)に注入し、それ
によって、徐々に、赤い液体を注入する;1mlの注射器を用いて3番目のバイアル(赤
色、小さい)の1mlのうち0.1ccを集め、4番目のバイアル(黄色)の底部に注入す
る;1mlの無菌注射器を用いて軟骨細胞懸濁液を入れた2個のバイアルの全内容物を4
番目のバイアル(黄色)に添加し、該注射器を用いて該内容物を2,3回混合する;2番
目のバイアル(青色)の内容物の完全な溶解を確認し、次いで、溶解した物質の全部を1
mlの注射器に注入する;4番目のバイアル(黄色)の良く混合した細胞治療剤を1ml
の注射器に注入する;そして、2番目のバイアル(青色)及び4番目のバイアル(黄色)
の内容物で満たした2個の1ml注射器を注射器立てに載せ、両注射器にネジチップを取
り付け、注射器の先端の混合用のチップを用いて両注射器の内容物を混合し、生じた移植
されるべき混合物を動物の損傷した軟骨領域に注射する。
上記の構成を有する本発明は、軟骨の主成分であるフィブリン、ヒアルロン酸、及びコラ
ーゲンを含有する基質を混合し、移植することによる、従来の骨膜移植に見られる不都合
の解決;多様な軟骨損傷及び激しい骨関節炎の治療;単純化した外科手術法による、治療
される患者の負担の軽減;そして、これにより、より早く、かつより効果的な軟骨生成の
促進と、その結果の顧客の満足度の増大、のような有利な効果をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射によって軟骨治療剤(軟骨単位:軟骨細胞の自家移植用の生体外で培養し
た軟骨細胞)を移植する方法に関する。特に、本発明は、軟骨の主成分を構成するフィブ
リン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンを含有する基質(マトリックス)の混合と移植を含
む、軟骨治療剤を移植する方法に関し、これにより従来の骨膜移植の面倒を解消し、幅広
い欠損と悪化した変形性関節症の治療が可能になり、治療される患者の負担は、簡易化し
た外科手術法により軽くなり、よって、軟骨の成長をより早く効果的に促進し、顧客の満
足度を改善する。
【背景技術】
【0002】
最近、分子生物学、細胞生物学、発生生物学、及び組織工学が、よく知られているように
、損傷した組織と器官に対する機能の改善、維持、及び復元方法の発達によって健康と生
活の質の改善に貢献している。
【0003】
組織工学は、細胞の接着、成長、及び分化、並びにサイトカインと成長因子の活性度を、
細胞間の合図物質を分泌するための組織交換としての、細胞ベースの基質との相互作用を
介して制御することによって組織代替物を製造する。組織工学における初期の研究は細胞
単独の利用又は細胞によって生産される基質複合体を用いる細胞療法に主として焦点が当
てられており、故に、より進歩した組織代替物の発展のための緊急の必要性に至らしめ、
その結果、軟骨細胞と基質との混合物を利用する軟骨細胞治療剤の発達に導くそれの応用
を大きく制約していた。
【0004】
関節の不安定及び半月軟骨の部分的欠陥が関節表面の磨耗と損傷を促進することが証明さ
れている。さらに、関節の軟骨は、一度損傷すると、生体内で完全には再生できない。損
傷した関節の軟骨に加わる慢性的な刺激は、関節の痛みと関節の動きの徐々に進む制約を
引き起こし、致命的な退行性の関節炎となる。生体内で増殖することができない軟骨細胞
は生体外での増殖条件の調整によって軟骨細胞の分化と増殖を引き起こすことによって関
節の再生に効果的に用いることができる。結果として、移植された軟骨細胞は正常な関節
の軟骨のそれらと類似の組織学的及び機械的な性質を取得し、そして、移植拒絶反応又は
組織破壊は観察されず、90%以上の患者で良い結果が得られる。
【0005】
一方、軟骨細胞自家移植(ACT)は損傷した関節の軟骨の治療のための効果的な治療法であ
る。磨耗(abrasion) 関節形成術 、ドリリングと微小骨折術(drilling and microfractur
e)、骨膜と軟骨膜の自家移植などの他の治療術は、損傷した関節の軟骨を線維軟骨又は線
維軟骨質組織に置き換えることになるが、ガラス状(hyaline)の軟骨を実質的に生成しな
い。しかしながら、他の従来の技術と比べて、ACTの最も重要な長所は、ガラス状の軟
骨の生成にある。
【0006】
このような優れた長所にもかかわらず、軟骨細胞自家移植は、図1に示すいくつかの技術
的及び理論的困難性に悩んでいる。
【0007】
すなわち、第一に、この軟骨細胞自家移植技術は、骨膜を集めるために手術部位の大きな
切開を必要とすることである。このような大きな切開は、手術の後の激しい痛みを伴い、
膝の可動性を低下させる。
【0008】
第二に、軟骨欠損領域の境界に骨膜の小片(patch)を縫合することは、時に骨膜の肥大及
び関節内の癒着を伴うことが報告されている非常に面倒な外科技術を必要とする。骨膜の
縫合は軟骨細胞自家移植の遂行のための外科プロセスの中で最も時間がかかるプロセスで
ある。
【0009】
加えて、軟骨細胞自家移植は、移植した部位からの軟骨細胞の漏洩が外科手術後の膝の治
療上の運動のようなリハビリテーションプロセスの間に時々生じ、そして、移植部位に液
相状で存在する移植した軟骨細胞は、重力の作用によって一方の側へ集中し、かくして、
不均等な分布状態と軟骨の異質性の成長を引き起こすので不都合である。
【0010】
上述の諸問題を解決するために、生分解性及び生体適合性高分子をキャリア又は足場とし
て用いることに多くの研究が集中している。例えば、生体内及び生体外における軟骨の組
織工学に関する非常に多くの研究が、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びフィブリンのよう
な自然界に存在する高分子をバイオマテリアルとして用いて、あるいは、ポリ乳酸やポリ
グリコール酸のような合成高分子を用いて活発に企てられている。
【0011】
足場は、細胞の成長と増殖及び軟骨細胞の表現型に必要な孔構造を維持するのに重要な役
割を演じる。フィブリン及びヒアルロン酸は、上記のとおり、足場として使用するための
要求を満足する適切な高分子である。フィブリンは、自然界に存在する物質であり、軟骨
細胞移植のための非常に適切な生物学的なキャリアである。加えて、フィブリンは、生体
適合性、生物分解性及び軟骨下の骨(形態的に隣接している骨、すなわち、軟骨のすぐ下
または下方の骨)への結合性能のような長所を持つことが既に報告されている。その上に
、フィブリン構造は、所望の形状に容易に変形可能であり、注射に容易に使用される。一
方、ヒアルロン酸は、滑膜関節液に見られる一種の潤滑剤であり、関節おける湿気の含有
量の制御を果たす。
【0012】
しかしながら、一つの問題がなお存在する。組織工学用の大部分の足場は、小片、スポン
ジ、及びシートのような固体タイプであり、組織工学用の軟骨治療剤は隣接する生来(nat
ive)の軟骨に結合することが困難である。この事実は、軟骨欠損領域に移植された軟骨治
療剤は欠損領域の間の境界の不十分な治癒になってしまうということにおいて重要である

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の課題の観点からなされたものであり、注射によって軟骨治療剤を移植す
る方法を提供する。
【0014】
それゆえ、本発明の第一の課題は、軟骨の主成分であるコラーゲン、ヒアルロン酸、及びフィブリンを含有する基質を混合し、そして移植することによって従来の骨膜移植の面倒を解消することである。
【0015】
本発明の第二の課題は、移植の際に、注射できる軟骨治療剤を短時間で、すなわち、約1〜5分でゲル化させる、急速ゲル化特性を用いることによる便利なその場移植を提供することである。
【0016】
本発明の第三の課題は、移植した部位が隣接した生来の軟骨に完全に結合することを可能にすること、並びに多様な軟骨欠損及び激しい骨関節炎の治療を可能とすることである。
【0017】
本発明の第四の課題は、簡易化した外科手術法によって治療される患者の負担を軽減する
ことである。
【0018】
本発明の第五の課題は、このような簡易化した外科手術方法により、より早く、かつ効果
的に軟骨の生成を促進し、これにより顧客の満足度を大きくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一観点によれば、上述及びその他の目的は、動物の軟骨の主成分を構成するコラーゲン、ヒアルロン酸、及びフィブリンを含有する基質を、注射器の先端の混合用チッ
プの使用によって混合し、生じる混合物を損傷した軟骨領域に注射することからなる、軟
骨細胞の自家移植用の注射できる軟骨細胞の移植方法の提供によって達成できる。
【0020】
本発明の別の観点によれば、下記のステップによるところの軟骨細胞の自家移植用の注
射できる軟骨細胞の移植方法が提供される。
1番目のバイアル(赤色)に入れた軟骨細胞培養液1mlを1mlの無菌注射器に入れ
、そして、注射器を2番目のバイアル(青色)に垂直方向に挿入することによって、該細
胞培養液を白色又は明るい黄色の凍結乾燥した粉末(フィブリノゲン)を入れた2番目の
バイアルに注入する;
注射器を3番目のバイアルに垂直方向に挿入することによって、1番目のバイアル(赤
色)に入れた細胞培養液1mlを白色の凍結乾燥した粉末(トロンビン)を入れた3番目
のバイアル(赤色、小さい)に注入し、それによって、徐々に、赤い液体を注入する;
1mlの注射器を用いて3番目のバイアル(赤色、小さい)の1mlのうち0.1cc
を集め、4番目のバイアル(黄色)の底部に注入する;
1mlの無菌注射器を用いて軟骨細胞懸濁液を入れた2個のバイアルの全内容物を4番
目のバイアル(黄色)に添加し、該注射器を用いて該内容物を2,3回混合する;
2番目のバイアル(青色)の内容物の完全な溶解を確認し、次いで、溶解した物質の全
部を1mlの注射器に注入する;
4番目のバイアル(黄色)の良く混合した細胞治療剤を1mlの注射器に注入する;そ
して、
2番目のバイアル(青色)及び4番目のバイアル(黄色)の内容物で満たした2個の1
ml注射器を注射器立てに載せ、両注射器にネジチップを取り付け、注射器の先端の混合
用のチップを用いて両注射器の内容物を混合し、生じた移植されるべき混合物を動物の損
傷した軟骨領域に注射する。
【0021】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及びその他の長所は添付の図面と共同してなされ
る下記の詳細な説明からより明瞭に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施態様を添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明に適用される、注射による軟骨治療剤の移植方法は、図2から図12に示されるよ
うに構成される。
【0024】
以降の本発明の説明に関して、既知の機能又は本発明に関係する構成の具体的な説明が、
もし、本発明の主題を不明瞭にするかもしれないと思われるならば、それらの詳細な説明
は省略する。
【0025】
以降に記載される用語は、本発明における機能を考慮に入れて規定されており、そして、
慣習や製造者の意図に応じて異なっているかもしれない。それゆえ、ここで使用される用
語は本発明の明細書全体の内容に基づいて解釈されるべきである。
【0026】
本発明は、動物の軟骨の主成分を構成するコラーゲン、ヒアルロン酸、及びフィブリンを
含有する基質を、注射器の先端の混合用チップの使用によって混合し、生じる混合物を損
傷した軟骨領域に注射することを特徴とする。
【0027】
すなわち、本発明は、下記を可能とする:移植の際に、注射できる軟骨治療剤を約1〜5
分の短時間でゲル化させる、急速ゲル化特性による便利なその場移植;隣接する生来の軟
骨への移植部位の完全な結合、並びに多様な軟骨損傷及び激しい骨関節炎の治療;簡易化
した外科手術法による患者に加わる負担の軽減;そして、これにより、より早く、かつよ
り効果的な軟骨生成の促進。
【0028】
さらに、本発明は、本発明の軟骨治療剤を注射により移植する方法を、下記の実施例に従
い提供する。
【実施例1】
【0029】
本実施例において、動物(犬の)軟骨細胞を用い、下記のシーケンスに従って実験を遂行
した。実験結果は、3ヵ月後に評価した。
【0030】
すなわち、図2に示すとおり、1.軟骨欠損領域の縁を切り整え(trimm)、欠損領域の寸
法を測定する。次に、下記の各ステップを遂行する。
【0031】
2.キット内の内容物の中から、1番目のバイアル(赤色)のアルミニウムキャップを外
し、バイアルの表面とキャップを70%エタノールで洗浄する。ここで、1番目のバイア
ル(赤色)は赤色の培養した細胞懸濁液(軟骨細胞培養体+ヒアルロン酸+アプロチニン
、他)を入れてある。
【0032】
3.2番目のバイアル(青色)のアルミニウムキャップを外し、バイアルの表面とキャッ
プを70%エタノールで洗浄する。こで、2番目のバイアル(青色)は白色又は明るい黄
色の凍結乾燥した粉末(フィブリノゲン)を含有する無色のバイアルである。
【0033】
4.1番目のバイアル(赤色)の内容物の1mlを1mlの無菌注射器内に導入し、垂直
に立てた2番目のバイアル(青色)中に該注射器の針を挿入する。ここで、注射器の内容
物は、バイアルの内壁に沿って注入されるのではなく、針の先端が凍結乾燥物(lyophiliz
ate)に接触するのを注意深く避けながら、凍結乾燥物の上に直接注入される。これに関し
て、2番目のバイアル(青色)を、2番目のバイアル(青色)内の凍結乾燥物が完全に溶
解するまで手で穏やかに振る。
【0034】
5.3番目のバイアル(赤色、小)のアルミニウムキャップを外し、バイアルの表面とキ
ャップを70%エタノールで洗浄する。ここで、3番目のバイアル(赤色、小)は、白色
の凍結乾燥した粉末(トロンビン)を入れた無色のバイアルである。
【0035】
6.1番目のバイアル(赤色)に入れた1mlの溶液を注射器内に導入し、垂直に立てた
3番目のバイアル(赤色、小)に該注射器の針を挿入し、これにより赤色の液体を徐々に
注入する。
【0036】
7.4番目のバイアル(黄色)のアルミニウムキャップを外し、バイアルの表面とキャッ
プを70%エタノールで洗浄した後、3番目のバイアル(赤色、小)中の1mlの内容物
の内の0.1ccを1mlの注射器を用いて集め、4番目のバイアル(黄色)の底部に注
入する。
【0037】
8.軟骨細胞懸濁液を入れた2個のバイアルの全内容物を1mlの無菌注射器を用いて4
番目のバイアル(黄色)に導入し、続けて該注射器を用いて2,3回混合する。
【0038】
9.2番目のバイアル(青色)の内容物の完全な溶解を確認した後、溶解した物質の全部
を1mlの注射器に充填する。
【0039】
10.4番目のバイアル(黄色)の良く混合した細胞治療剤を1mlの注射器に導入する

【0040】
11.2番目のバイアル(青色)の内容物を充填した2個の1ml注射器を、それぞれ、
注射器立てに載せる。
【0041】
12.ネジ結合チップを注射器に取り付け、続いてネジチップとピストンサポートを取り
付ける。
【0042】
13.組み立ての完了後に、移植を開始する。ここで、可能であれば、軟骨治療剤の注射
を停止することなく一度に遂行する。
【0043】
14.移植の完了約5分後に、移植部位の縁を切り整える(trim)。
【0044】
本発明と従来の軟骨細胞自家移植(ACT)との比較を下記の表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
一方、本発明に用いることができる細胞培養用の培地としては、当該技術分野で通常用い
られるところの、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地),ハム(Ham’s)F−12,D
MEM/F−12,IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地),マッコイ(Mccoy’s) 5
A培地,MEM(最小必須培地),アルファ−MEM,RPMI 1640,ライボビッ
ツ(Leibovitz’s)L−15倍地,及びイーグル基礎培地,が挙げられる。
【0047】
好ましくは、ここで用いられる凍結乾燥した粉末(フィブリノゲン)の濃度は10mg/
mLから200mg/mLの範囲である。フィブリノゲンの濃度が10mg/mLより少
ないと、基質としてその性質を発揮するには少なすぎる。反対に、フィブリノゲンの濃度
が200mg/mLより多いと、溶解の困難性が生じ、かつ非常に大きな粘性の故に、使
用することが困難である。それ故に、10mg/mLから200mg/mLの範囲内でフ
ィブリノゲンを使用することが好ましい。
【0048】
さらに、ここで使用される白色の凍結乾燥した粉末(トロンビン)の濃度は、好ましくは
、1IU/mLから200IU/mLの範囲である。トロンビンの濃度が1IU/mLよ
り少ない場合は、フィブリンを形成するには少な過ぎ、それにより数分内でのゲル化を達
成するのが不可能となる。反対に、トロンビンの濃度が200IU/mLより多い場合は
、トロンビンは混合するとすぐに凝固し、それにより注射できる治療剤として使用するに
適さない。それ故に、1IU/mLから200IU/mLの範囲内でトロンビンを使用す
ることが好ましい。
【0049】
さらに、ここで使用されるアプロチニンの濃度は、好ましくは、100KIU/mLから
20,00KIU/mLの範囲である。アプロチニンの濃度が100KIU/mLより少
ない場合は、フィブリンの分解の抑制の手助けにならない。反対に、アプロチニンの濃度
が20,00KIU/mLより多い場合は、細胞毒性が生じるかもしれない。それ故に、
100KIU/mLから20,00KIU/mLの範囲内でアプロチニンを使用すること
が好ましい。
【0050】
さらに、ここで使用されるヒアルロン酸の量は、好ましくは、0.01から2%(w/v)
である。ヒアルロン酸の量が0.01%より少ない場合は、基質としてのその機能を十分
に発揮することが困難である。反対に、ヒアルロン酸の量が2%より多い場合は、フィブ
リンの結合性能が形態的に影響され、それにより基質の強度と硬度に影響する。それ故に
、0.01から2%(w/v)の範囲内でヒアルロン酸を使用することが好ましい。
【0051】
さらに、ここで使用されるII型コラーゲンの量は、好ましくは50μg/mLから1mg
/mLの範囲である。II型コラーゲンの量が50μg/mLより少ない場合は、その機能
を十分に発揮することが困難である。反対に、II型コラーゲンの量が1mg/mLより多
い場合は、その特性がフィブリンの結合性能に影響を及ぼし、それにより基質の強度と硬
度に影響する。それ故に、50μg/mLから1mg/mLの範囲内でII型コラーゲンを
使用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述から明らかなとおり、本発明は、下記の効果を奏する。軟骨の主成分であるフィブリ
ン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンを含有する基質を混合し、移植することによる、従来
の骨膜移植に見られる不都合の解決;特に、移植の際に、注射できる軟骨治療剤を短時間
で、すなわち、約1〜5分でゲル化させる、急速ゲル化特性による便利なその場移植;隣
接する生来の軟骨への移植部位の完全な結合、並びに多様な軟骨損傷及び激しい骨関節炎
の治療;簡易化した外科手術法による、治療される患者の負担の軽減;そして、これによ
り、より早く、かつより効果的な軟骨生成の促進と、その結果の顧客の満足度の増大。
【0053】
本発明の好ましい実施例を例証目的で開示したが、当業者は、添付の請求項に開示したと
おりの本発明の範囲と精神から離れることなく、多くの改変、追加、及び置換が可能であ
ることを十分に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】軟骨治療剤を移植する従来の方法を示す図面代用光学写真である。
【図2】本発明に適用される注射できる軟骨治療剤の移植方法を示す図である。
【図3】本発明に適用される軟骨治療剤の移植方法を示す図面代用光学写真である。
【図4】本発明に適用される注射できる軟骨治療剤の注射器の使用による移植方法を示す図面代用光学写真である。
【図5】本発明による注射できる軟骨治療剤の物理的性質を示す図面代用光学写真である。
【図6】本発明の一実施例による犬の軟骨の再生後3カ月目に撮った図面代用光学写真である。
【図7】本発明による軟骨治療剤の移植後8週間目に撮った図面代用電子顕微鏡(EM)組織写真である。
【図8】本発明による軟骨治療剤の移植後12週間目に撮った図面代用電子顕微鏡(EM)組織写真である。
【図9】本発明の一実施例による犬の軟骨組織の再生後12週間目に撮った図面代用顕微鏡組織写真である。
【図10】本発明による軟骨治療剤の微視的解剖学試験の結果を示す図面代用顕微鏡組織写真である。
【図11】本発明による軟骨治療剤の免疫組織学的な試験の結果を示す図面代用顕微鏡組織写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の軟骨の主成分を構成するコラーゲン、ヒアルロン酸、及びフィブリンを含有する基
質を、注射器の先端の混合用チップの使用によって混合し、生じる混合物を損傷した軟骨
領域に注射することからなる、軟骨細胞の自家移植用の注射できる軟骨細胞の移植方法。
【請求項2】
下記のステップからなる軟骨細胞の自家移植用の注射できる軟骨細胞の移植方法。
1番目のバイアル(赤色)に入れた軟骨細胞培養液1mlを1mlの無菌注射器に入れ
、そして、注射器を2番目のバイアル(青色)に垂直方向に挿入することによって、該細
胞培養液を白色又は明るい黄色の凍結乾燥した粉末(フィブリノゲン)を入れた2番目の
バイアルに注入する;
注射器を3番目のバイアルに垂直方向に挿入することによって、1番目のバイアル(赤
色)に入れた細胞培養液1mlを白色の凍結乾燥した粉末(トロンビン)を入れた3番目
のバイアル(赤色、小さい)に注入し、それによって、徐々に、赤い液体を注入する;
1mlの注射器を用いて3番目のバイアル(赤色、小さい)の1mlのうち0.1cc
を集め、4番目のバイアル(黄色)の底部に注入する;
1mlの無菌注射器を用いて軟骨細胞懸濁液を入れた2個のバイアルの全内容物を4番
目のバイアル(黄色)に添加し、該注射器を用いて該内容物を2,3回混合する;
2番目のバイアル(青色)の内容物の完全な溶解を確認し、次いで、溶解した物質の全
部を1mlの注射器に注入する;
4番目のバイアル(黄色)の良く混合した細胞治療剤を1mlの注射器に注入する;そ
して、
2番目のバイアル(青色)及び4番目のバイアル(黄色)の内容物で満たした2個の1
ml注射器を注射器立てに載せ、両注射器にネジチップを取り付け、注射器の先端の混合
用のチップを用いて両注射器の内容物を混合し、生じた移植されるべき混合物を動物の損
傷した軟骨領域に注射する。
【請求項3】
注射器の針の挿入による前記注入ステップは、注射器の内容物を、バイアルの内壁に沿っ
て注入するのではなく、針の先端が凍結乾燥物に接触するのを注意深く避けながら、凍結
乾燥物の上に直接注入することからなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
1番目のバイアル(赤色)の細胞培養液が0.01%〜2%(w/v)のヒアルロン酸、10
0KIU/mL〜20,000KIU/mLのアプロチニン、50μg/mL〜1mg/
mLのII型コラーゲン、又はこれらの混合物を含有することを特徴とする請求項2記載の
方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−501605(P2009−501605A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522686(P2008−522686)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003147
【国際公開番号】WO2007/011094
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506204243)セウォン セロンテック カンパニー リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】SEWON CELLONTECH CO.,LTD.
【Fターム(参考)】