説明

転写シート並びにその転写シートを用いる被転写物製造方法及び被転写物

【課題】 可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に転写した図柄の周縁部にはみ出した接着層が、繰り返し変形により転写対象部と大きく異なる外観となることを防ぐ。
【解決手段】 ベースシート10上に、所要図柄より周縁が2mm拡張された形状を製版したスクリーン版により離型処理剤でその形状を印刷し、剥離層12を形成した。その上に、所要図柄を製版したスクリーン版により赤色インキでその図柄を印刷し、図柄層14を形成した。その上に、所要図柄より周縁が0.2mm縮小された形状を製版したスクリーン版により白色隠蔽インキでその形状を印刷し、隠蔽層16を形成した。その上より、所要図柄より周縁が0.7mm拡張された形状を製版したスクリーン版により、転写対象物の色に近似した色の接着層インキによりその形状を印刷し、接着層18を形成し、転写シートAを得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布状の繊維製品からなる衣類等の対象物又はその他の対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し図柄を熱転写するための転写シート、その転写シートを用いて図柄が転写形成された被転写物を製造する被転写物製造方法、並びに前記転写シートを用いて図柄が転写形成された被転写物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類等を構成する布状の繊維製品(一般には、染色等により着色された繊維製品)に対し図柄を形成する手段としては、前記繊維製品上に隠ぺい性を有する着色インキを繊維製品に捺染して図柄を形成するか、又は、前記繊維製品上に隠蔽性を有する白色インキで隠蔽層を形成し、その隠蔽層上に着色インキを捺染して積層することにより図柄を形成する直接捺染法、並びに、耐熱性のある紙又は合成樹脂フィルムからなるベースシート上に剥離層、図柄層、及び接着層をこの順に積層して転写シートを作成し、前記繊維製品上に熱プレス機やアイロンにより転写シートの接着層を加圧下熱融着させて図柄を転写形成した後、ベースシートを剥離する熱転写法が知られている。
【0003】
直接捺染法は、各繊維製品に対しそれぞれ捺染作業を行って図柄を形成しなければならないので効率が良いとは言えず、而も作業に熟練を要した。
【0004】
一方、特開平5−287686号公報等に記載されている熱転写法の場合、印刷機を用いてベースシート上に樹脂インキにより剥離層、図柄層、及び接着層を順に印刷することにより容易に転写シートを作成することができ、1枚のベースシート上に多数の剥離層、図柄層、及び接着層を一度に形成してベースシートを切離することにより多数の転写シートを得ることもできる。而も、その転写シートを用いて前記繊維製品上に熱プレス機やアイロンにより接着層を加圧下熱融着させることにより、繊細且つ鮮明で而も強固な図柄を転写形成することができる。
【0005】
このように、熱転写法によれば前記繊維製品上に効率良く図柄を形成することができる。この熱転写法における転写シートには、ホットメルト性接着剤等を用いた樹脂を主成分とするホットメルト接着性の接着層を必要とする。
【0006】
ところが、ベースシート上に樹脂インキにより剥離層、図柄層、及び接着層を印刷する場合に、印刷時の温度や湿度に応じたベースシートの伸縮や印刷機の精度上の限界等により、図柄層に対し接着層を正確に一致させることは困難である。
【0007】
そのため、図柄全体を確実に繊維製品上に転写できるようにするには、接着層を図柄層よりもやや大きめに形成すること、すなわち、接着層の周縁部が図柄層の周縁部からはみ出すように形成することが必要となる。具体的には、接着層を印刷するための版における接着層形成部の周縁部を、図柄層を印刷するための版における図柄層形成部の周縁部から0.2乃至2.0mm程度大きくし、繊維製品上に転写された場合に接着層が実質上無色透明となる樹脂インキを用いて接着層を印刷形成している。
【0008】
繊維製品上に図柄が転写形成された場合、その図柄の周縁部から接着層の周縁部がはみ出してはみ出し縁部を形成するが、はみ出し縁部の色等の外観は、実質上無色透明のはみ出し縁部を介して転写対象部の色等の外観が実質上そのまま表れることとなり、見かけ上変わらない。従って転写形成された図柄の輪郭は明瞭である。
【0009】
ところが、接着層は図柄が転写された転写対象部に熱融着により直接固着しているため、転写対象部が伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けると、接着層内に歪や微細クラック等が生じて、接着層のはみ出し縁部は光の乱反射や散乱等により白色状を呈する(いわゆる白化現象を呈する)ようになり、はみ出し縁部の色が転写対象部の色と明瞭に異なったものとなり易い。これにより、転写形成された図柄は、その輪郭が不明瞭になったり、周縁部に不自然な外観を呈するはみ出し縁部が顕著に表れたりして美感が損なわれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−287686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、衣類を始めとする布状の繊維製品からなる対象物又はその他の対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し熱転写した図柄の周縁部にはみ出した接着層が、衣類の脱着や着衣状態での動作や洗濯等による伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けることにより色等の外観が変化してはみ出し縁部の色がはみ出し縁部の周囲の転写対象部の色と明瞭に異なったものとなることが効果的に防がれる転写シート、その転写シートを用いて図柄が転写形成された被転写物を製造する被転写物製造方法、並びに前記転写シートを用いて図柄が転写形成された被転写物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、転写後に剥離されるベースシート、対象物の転写対象部上に図柄を形成するための図柄層、及び樹脂を主成分とするホットメルト接着性の接着層を、この順に有してなる熱転写シートにおける接着層の全て又は周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とすることにより、変形を繰り返し受けても色等の外観が転写対象部と明瞭に異なったものとなることが効果的に防がれることを見出し、更に研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0013】
(1) 上記目的を達成する本発明の熱転写シートは、
転写後に剥離されるベースシート、対象物の転写対象部上に図柄を形成するための図柄層、及び樹脂を主成分とするホットメルト接着性の接着層を、この順に有してなり、前記接着層において対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成するための熱転写シートであって、
前記接着層の周縁部は、前記図柄層の周縁部からはみ出すように形成され、転写対象部に転写された場合に図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を形成するものであり、
前記接着層の全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分は、着色剤により着色されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の被転写物製造方法は、
転写対象部に図柄が転写形成された被転写物を製造するための被転写物製造方法であって、
上記何れかの熱転写シートを、その接着層において対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成する工程を含み、
前記転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の被転写物は、
上記何れかの熱転写シートが、その接着層において、対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に熱融着して図柄層による図柄が転写形成され、
前記転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色が、同一又は近似した色であることを特徴とする。
【0016】
熱転写シートを、接着層において対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に、ホットメルト接着性の接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成することができる。この状態でベースシートを剥離することにより、転写対象部に転写形成された図柄が表れる。
【0017】
転写された接着層の周縁部は、図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を形成する。転写対象部に融着した接着層の全て又ははみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色(少なくとも転写対象部のうち接着層が融着した部分の周縁部の色)を、同一又は近似した色とすることにより、はみ出し縁部に不都合が生じることが防がれる。すなわち、接着層を介して図柄が転写された転写対象部が伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けて(接着層内に歪や微細クラックが生じること等により)、はみ出し縁部の色等の外観がはみ出し縁部の周囲の転写対象部の色等の外観と大きく異なったものとなることが効果的に防がれる。
【0018】
(2) 本発明の熱転写シートは、上記接着層の全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分が、上記着色剤を除いた状態で転写対象部に転写された場合に実質上無色透明となるものとすることができる。
【0019】
接着層の全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分が着色剤を除いたものである場合、転写対象部に転写された接着層のうち、少なくとも転写された図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を含む部分は実質上無色透明となるものであるため、はみ出し縁部の色等の外観は、実質上無色透明のはみ出し縁部を介して転写対象部の色等の外観が実質上そのまま表れることとなり、見かけ上変わらない。
【0020】
ところが、接着層を介して図柄が転写された転写対象部が伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けると接着層内に歪や微細クラック等が生じて、はみ出し縁部は光の乱反射や散乱等により白色状を呈するようになり、はみ出し縁部の色等の外観がはみ出し縁部の周囲の転写対象部の色等の外観と明瞭に異なったものとなる。
【0021】
しかしながら、転写対象部に融着した接着層の全て又ははみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とすることにより、接着層を介して図柄が転写された転写対象部が伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けて色等の外観が変化し、はみ出し縁部の色等の外観がはみ出し縁部の周囲の転写対象部の色等の外観と明瞭に異なったものとなることが効果的に防がれる。
【0022】
(3) 本発明の熱転写シートは、上記接着層の周縁部の図柄層の周縁部からのはみ出し幅が0.2乃至2.0mmであるものとすることができる。
【0023】
(4) 上記各熱転写シートは、ベースシートと図柄層の間に剥離層を有するものとすることができる。
【0024】
(5) 上記各熱転写シートは、図柄層と接着層の間に隠蔽層を有するものとすることができる。
【0025】
この場合、接着層と隠蔽層の間に染料吸着層を有するものとすることができる。
【0026】
(6) 上記各熱転写シートは、図柄層のベースシート側に隣接して保護層を有するものとすることができる。
【0027】
(7) 本発明の熱転写シートは、上記接着層が、樹脂を主成分とする液状体により形成された層に対し、その液状体が未固化の状態でホットメルト樹脂粒子が散布されて形成されるものとすることができる。
【0028】
この場合、転写対象部に圧接される側である接着層の表面部にホットメルト樹脂粒子が位置するので、転写対象部に対する接着層の接着力が強いものとなる。
【0029】
また本発明の熱転写シートは、上記接着層が、樹脂を主成分とする液状体にホットメルト樹脂粒子が配合されたものにより形成されるものとすることができる。
【0030】
これらのホットメルト樹脂粒子は、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂又はポリエステル樹脂からなるものとすることができる。
【0031】
(8) 本発明の熱転写シートは、上記図柄層が樹脂を主成分とし、その図柄層及び接着層の主成分である樹脂がポリウレタン樹脂であるものとすることができる。
【0032】
(9) 上記本発明の各熱転写シートは、上記転写対象部に転写された場合の接着層のはみ出し縁部の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とするためのものとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の転写シートを用いた被転写物、本発明の被転写物製造方法により製造された被転写物、及び本発明の被転写物においては、布状の繊維製品からなる衣類等の対象物又はその他の対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し熱転写した図柄の周縁部にはみ出した接着層が、衣類の脱着や着衣状態での動作や洗濯等による伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けることにより色等の外観が大きく変化してはみ出し縁部の色等の外観がはみ出し縁部の周囲の転写対象部の色等の外観と大きく異なったものとなり、図柄層による図柄の輪郭が不明瞭になったり、図柄の周縁部に繰り返し変形等により不自然な外観を呈するはみ出し縁部が顕著に表れたりして図柄及び被転写物の美感が損なわれることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】転写シートAの模式的な要部断面図である。
【図2】被転写物U1の模式的な要部断面図である。
【図3】転写シートBの模式的な要部断面図である。
【図4】被転写物V1の模式的な要部断面図である。
【図5】転写シートCの模式的な要部断面図である。
【図6】被転写物W1の模式的な要部断面図である。
【図7】転写シートDの模式的な要部断面図である。
【図8】被転写物X1の模式的な要部断面図である。
【図9】転写シートEの模式的な要部断面図である。
【図10】被転写物Y1の模式的な要部断面図である。
【図11】転写シートFの模式的な要部断面図である。
【図12】被転写物Z1の模式的な要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1. 対象物
【0036】
本発明の転写シートを用いて図柄を転写形成する対象物は、その全部又は部分が、可撓性および/または伸縮性(すなわち可撓性及び伸縮性の両方又は何れか一方)を有する転写対象部からなる。転写対象部は、何らかの着色が施されているか、又はその材料自体の色を呈する。
【0037】
このような転写対象部に、転写シートによる図柄が接着層の熱融着により転写され、転写対象部が伸縮および/または屈曲等の変形を繰り返し受けると、接着層内に歪や微細クラック等が生じて、接着層のはみ出し縁部は光の乱反射や散乱等により白色状を呈するようになる。
【0038】
対象物としては、例えば、織物、編物、不織布等の着色された布状の繊維製品、そのような布状の繊維製品を材料とする繊維製品(例えば衣類、帽子、マフラー、靴下等)、皮革又は皮革を材料とする製品(例えば、衣類、ベルト、履物、帽子等)を挙げることができる。布状の繊維製品や布状の繊維製品を材料とする繊維製品は、可撓性及び伸縮性に富んでいるため、より適している。対象物の一部が布状の繊維製品等の可撓性および/または伸縮性を有する材料からなる転写対象部であるものや、対象物の一部を除いて布状の繊維製品等の可撓性および/または伸縮性を有する材料からなる転写対象部であるものであってもよい。
【0039】
なお、本発明の転写シートを用いて可撓性および伸縮性を有しない物又は部分に図柄を転写形成することは可能である。
【0040】
2. 転写シート
【0041】
本発明の転写シートは、転写後に剥離されるベースシート、対象物の転写対象部上に図柄を形成するための図柄層、及び樹脂を主成分とするホットメルト接着性の接着層を、この順に有してなるものであり、必要に応じその他の層等を設けることができる。
【0042】
(1) ベースシート(離型紙又は離型フィルム)
【0043】
ベースシートは、図柄を転写した後、転写対象部に転写形成された図柄から剥離される。
【0044】
ベースシートと図柄の間に離型性を付与する上で、ベースシートと図柄層の間に剥離層を設ける(具体的には、例えばベースシートの図柄層側の面に剥離層を形成する)ことができ、それ自体が離型性を有するベースシート(例えばポリテトラフルオロエチレン製のシート等)を採用することもできる。
【0045】
(1-1) ベースシートとしては、転写条件(例えば、転写温度100乃至200℃、転写時間2乃至30秒、転写圧15乃至100kPa)に耐える材料を採用することができる。
【0046】
一般には、紙又は合成樹脂フィルムをベースシートとして用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、例えばポリエステルフィルムが好ましく用いられる。比較的低温での転写には例えばポリプロピレンフィルムを用いることができる。
【0047】
(1-2) 剥離層の材料としては、ワックス、パラフィン、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッソ樹脂、ベースシートと密着性のない樹脂類等を例示することができる。このような材料により、ベースシートの少なくとも片面(図柄層側の面)に薄膜を形成することによりこれを剥離層とすることができる。このような薄膜の形成は、例えばコーティング又は印刷により行い得る。このように離型性の薄膜が形成されたシートは離型シートとなる。
【0048】
(2) 保護層、図柄層、隠蔽層、染料吸着層、接着層
【0049】
保護層、図柄層、隠蔽層、染料吸着層、及び接着層は、それぞれ、各種樹脂を主成分とし、必要に応じ各種着色剤により着色された材料により、形成することができる。使用し得る樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン/ブタジエン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等を例示することができる。
【0050】
保護層、図柄層、隠蔽層、及び染料吸着層を形成するための樹脂としてはポリウレタン樹脂が好ましい。接着層にホットメルト接着性を付与する上で用い得るホットメルト樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等が好ましく、これらを混合して用いることもできる。
【0051】
このような樹脂を用いて各層を形成するには、樹脂を、有機溶剤に溶解および/または分散させることにより、又は水分散させることにより、又はエマルジョン化することにより、樹脂インキ化して用いることが好ましい。インキの他の成分としては、必要な着色剤、硬化剤、その他の添加物等を例示することができる。このようなインキ(樹脂インキ)を用いて印刷機により印刷することにより、各層を形成することができる。
【0052】
図柄層については、例えばオフセット印刷方式又はスクリーン印刷方式によって形成することができる。隠蔽層、染料吸着層、接着層は、その機能を発揮させる上である程度の厚みが必要であるため、スクリーン印刷方式が好ましい。なお、スクリーン印刷のためのスクリーン版は、例えば、アルミニウム枠に30乃至350mesh/inchのポリエステル又はナイロンの紗を張り、その紗に感光性乳剤を塗布し、所望の図柄のポジフィルムを重ねて露光した後、乳剤を洗い流し、紗を乾燥させることにより得られる。得られたスクリーン版上にインキを置き、ゴムスキージ等で刷ることにより、所望の図柄層等の層をスクリーン印刷することができる。
【0053】
接着層を形成するには、例えば、ホットメルト接着性を有する樹脂インキを用いることや、ホットメルト樹脂粒子(粒子径が例えば20乃至80μm程度のもの)を樹脂インキ中に分散させて得たインキを用いることや、樹脂インキにより形成した層上にホットメルト樹脂粒子(粒子径が例えば80乃至300μm程度のもの)を散布して用いることができる。このようなホットメルト樹脂粒子は、例えば、重合により粒子状に形成することにより、或いは粉砕することにより得ることができる。
【0054】
(2-1) 保護層
【0055】
保護層は、転写対象部に転写された図柄の表面強度を保持して図柄を保護する目的で、図柄層のベースシート側に隣接して必要に応じ形成するものであり、必須のものではない。
【0056】
通常、保護層は無色透明である。保護層は、例えばベースシート上に設けられた剥離層上に又は離型性を有するベースシート上に、例えば樹脂インキを印刷することにより又はコーティングすることにより、形成することができる。
【0057】
ベースシートに予め剥離層(離型剤層)及び保護層がコーティング又は印刷により形成されたものを用いることもできる。
【0058】
(2-2) 図柄層
【0059】
図柄層は、対象物の転写対象部上に図柄を形成するためのものであり、例えばベースシート上に設けられた剥離層上に又は離型性を有するベースシート上に、必要に応じ保護層を介在させて、例えば樹脂インキを印刷することにより形成することができる。
【0060】
図柄層により形成される図柄は、例えば、絵、文字、図形、若しくは、記号、又はこれらの2以上の組み合わせとすることができる。
【0061】
印刷等により図柄層を形成するための樹脂インキとしては、有機顔料又は無機顔料等の各種着色剤により着色したものを用いることができる。
【0062】
用い得る着色剤の例としては、
黄色顔料としてのアゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、イソインドリノン系顔料、チタン系顔料、鉄系顔料;
赤色顔料としてのアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、クロモフタル系顔料、鉄系顔料;
緑色又は青色顔料としてのフタロシアニン系顔料;
紫色顔料としてのジオキサジン系顔料;
黒色顔料としてのカーボンブラック、鉄系顔料;
白色顔料としての酸化チタン顔料、酸化ケイ素顔料、アルミニウムシリケート顔料
等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。2種以上の着色剤を混合したあらゆる色の混合着色剤を用いることができる。
【0063】
また、着色剤として、アルミニウム粉等の金属粉、アルミペースト、パール顔料、真鍮粉、グリッター等の他、感温変色性顔料、感光変色性顔料、蓄光性顔料等の特殊色素を用いることもできる。
【0064】
(2-3) 隠蔽層
【0065】
隠蔽層は、転写対象部上に図柄を明瞭に表示させるため或いは浮き立たせるために形成するものであり、図柄層と接着層の間に、通常は図柄層上に形成することができる。隠蔽層は、通常は、白色顔料等により着色されて可視光線非透過性の白色状をなす。
【0066】
隠蔽層は、転写対象部が比較的濃色の場合に必要性が高く、淡色又は薄色の場合には必要性が低い。図柄の色が、図柄層の色と転写対象部の色又は着色された接着層の色との混色としてデザインされている場合においては隠蔽層を用いない。
【0067】
隠蔽層と図柄層をそれぞれ形成する場合(特に印刷により形成する場合)に、両者の輪郭は必ずしも精度良く一致しないので、図柄層の周縁部が隠蔽層の周縁部から僅かにはみ出すようにするか、或いは、隠蔽層の周縁部が図柄層の周縁部からはみ出すようにして隠蔽層を図柄の一部とする(すなわち、隠蔽層が図柄層の一部を構成する)ことが好ましい。
【0068】
隠蔽層は、例えば上記のような樹脂インキに隠蔽剤(白色顔料)として酸化チタン、酸化ケイ素、アルミニウムシリケートなどを配合して白色に着色したインキにより形成することができる。白色以外の着色剤で着色した隠蔽層を形成することもあり得る。隠蔽層の形成は、例えば樹脂インキを印刷することにより行い得る。
【0069】
(2-4) 染料吸着層
【0070】
染料吸着層は、分散染料で染色されたポリエステル繊維からなる転写対象部上に図柄の熱転写を行う場合に、転写時の熱で分散染料が昇華して図柄層や隠蔽層を汚染し、図柄の意匠性を損ねることを防止するための層である。
【0071】
従って、昇華性を有さない染料で染色された繊維(例えば、綿、ナイロン、レーヨン、麻、羊毛、絹等)からなる転写対象部に対しては必ずしも必要なものではない。
【0072】
染料吸着層は、例えば、上記樹脂をインキ化した実質上無色透明の樹脂インキに、吸着剤として活性炭を配合することにより、黒色の層として得ることができる。
【0073】
染料吸着層は図柄層と接着層の間に形成される。活性炭を配合した染料吸着層を用いる場合、図柄層上に隠蔽層を形成され、その隠蔽層上に染料吸着層を形成することにより、図柄層の明瞭性や鮮明性等が染料吸着層により妨げられることが防がれる。染料吸着層の形成は、例えば樹脂インキを印刷することにより行い得る。
【0074】
(2-5) 接着層
【0075】
接着層は、転写対象部に対し加圧下で加熱されることにより熱融着し、転写対象部上に、図柄層並びに存在する場合には染料吸着層、隠蔽層及び保護層等を、強固に固着させるためのものである。
【0076】
接着層は、樹脂を主成分としホットメルト接着性を有する。接着層は、図柄層上に、必要に応じ隠蔽層や染料吸着層を介在させて、前述のように、例えば、a)ホットメルト接着性を有する樹脂インキを用いて形成することや、b)ホットメルト樹脂粒子を樹脂インキ中に分散させて得たインキを用いて形成することや、c)樹脂インキにより形成した層上にホットメルト樹脂粒子を散布して形成することができる。c)の場合、転写対象部に圧接される側である接着層の表面部にホットメルト樹脂粒子が位置するので、転写対象部に対する接着層の接着力が強いものとなる。
【0077】
接着層は、周縁部が図柄層(隠蔽層が図柄層の一部を構成する場合は、その隠蔽層を含む。)の周縁部からはみ出すように形成する。接着層の周縁部の図柄層の周縁部からのはみ出し幅は、例えば0.2乃至2.0mmの範囲の実質上一定幅とすることができるが、これに限るものではない。なお、周縁部というのは、環状の図形のように図柄に外周と内周の双方が存在する場合は、外周縁部と内周縁部を含む。
【0078】
その接着層の周縁部は、接着層が転写対象部に転写された場合に、図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を形成する。転写対象部に転写されたはみ出し縁部のはみ出し幅は、所定幅に印刷しようとした場合であっても、所定幅に比し若干の増減が生じ得る。
【0079】
接着層のうち図柄層の周縁部からはみ出した部分は、図柄層又は図柄層及び他の層の側方部を取り囲むように形成されるものであってよく、その場合、はみ出した部分はベースシート上に設けられた剥離層上に又は離型性を有するベースシート上に形成される。
【0080】
接着層は、その全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分が、着色剤により着色されている。これにより、転写対象部に融着した接着層の全て又ははみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部(転写対象部のうち接着層が融着した部分の周縁部の色を意味する。)の色を、同一又は近似した色とすることができる。この場合の転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分と、転写対象部との色差ΔE*abは、12以下とすることができる。好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。
【0081】
よって、接着層の形成方法として、次の3種を例示することができる。すなわち、1)ホットメルト接着性を有する実質上無色透明の樹脂インキに着色剤を配合し、転写対象部に近似した色に着色したものを用いて形成する、2)実質上無色透明の樹脂インキに着色剤を配合すると共にホットメルト樹脂粒子を分散含有させたものを用いて形成する、3)実質上無色透明の樹脂インキに着色剤を配合したものを用いて層を形成した後、その層に、インキが未固化の状態(固化は、溶剤若しくは溶媒の蒸発による固化に限らない。)においてホットメルト樹脂粒子を散布した後、余剰のホットメルト樹脂粒子を取り除いて熱処理することにより、樹脂インキとホットメルト樹脂粒子を一体化した接着層を形成する、の3種である。
【0082】
3. 転写方法
【0083】
得られた熱転写シートを、熱プレス機やアイロンを用いて、接着層において対象物における転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に、ホットメルト接着性の接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成することができる。その後、ベースシートを剥離することにより、転写対象部に転写形成された図柄が表れる。転写された接着層の周縁部は、図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を形成する。
【0084】
尚、転写対象部と同一又は近似した色に着色されたホットメルト接着性の樹脂インキにより、所要の図柄の形状をなす接着層のみを、ベースシート上に設けられた剥離層上に、又は離型性を有するベースシート上に、印刷等により形成して転写シートを得、この転写シートを用いて転写対象部に図柄を転写することもできる。
【0085】
この場合、転写対象部上に熱転写することにより、転写対象部と同一又は近似した色の図柄が直接転写形成され、その図柄は、転写対象部との光の屈折率の違い等による意匠性を有するものとなる。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
ベースシート10(100μm厚ポリエステルフィルム)上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が2mmずつ拡張された形状を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、離型処理剤WAX IR(WAX、シリコーン、溶剤、ポリアミド樹脂を含む離型処理インキ:株式会社松井色素化学工業所製)により、その形状を印刷し、乾燥させて剥離層12を形成した。
【0087】
その剥離層12上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、赤色インキによりその図柄を印刷し、乾燥させて図柄層14を形成した。用いた赤色インキは、Mタイプクリヤーインキ(ウレタン樹脂、溶剤、シリコーン消泡剤、酸化ケイ素を含むクリヤーインキ:株式会社松井色素化学工業所製)100部、MタイプカラーベースレッドBR(赤色顔料、溶剤、ウレタン樹脂、分散剤を含むトナー顔料:株式会社松井色素化学工業所製)10部、及びコロネートHL(イソシアネート系硬化剤:日本ポリウレタン株式会社製)5部からなる。
【0088】
その図柄層14上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が0.2mmずつ縮小された形状を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、白色隠蔽インキによりその形状を印刷し、乾燥させて隠蔽層16を形成した。用いた白色隠蔽インキは、Mタイプホワイトインキ(酸化チタン、ウレタン樹脂、溶剤、シリコーン系消泡剤を含む隠蔽層インキ)100部及びコロネートHL(イソシアネート系硬化剤:日本ポリウレタン株式会社製)5部からなる。
【0089】
続いて、隠蔽層16上より、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が0.7mmずつ拡張された形状を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、転写対象物(転写対象部)である黒色綿ニットUの色に近似した色の黒色接着層インキによりその形状を乾燥厚み100μmとなるように印刷し、乾燥させて接着層18を形成した。接着層18の周縁部18aは、図柄層14及び隠蔽層16の側方部を取り囲む状態で、ベースシート10上に設けられた剥離層12上に形成された。用いた黒色接着層インキは、サンナロンUG245(溶剤、ウレタン樹脂:株式会社山南合成製)70部、ダイアミド430P−1(ホットメルトナイロン樹脂粒子:ダイセルヒュルツ株式会社製)30部、及びMタイプカラーベースブラックK(黒色顔料、溶剤、ウレタン樹脂、分散剤を含むトナー顔料:株式会社松井色素化学工業所製)10部からなる。
【0090】
このようにベースシート10上に各層が積層して得られた転写シートA(図1)を、熱プレス機を用いて、接着層18において黒色綿ニットUの所定の転写対象部に対し180℃、35kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、熱時にベースシート10を剥離した。
【0091】
これにより、黒色綿ニットU上に接着層18が熱融着して図柄層14による線幅1cmの赤色の鮮明な"MATSUI"の文字からなる図柄141が転写形成された被転写物U1(図2)が得られた。
【0092】
転写された接着層18の周縁部18aは、図柄141の周縁部から約0.7mmはみ出したはみ出し縁部18a1を形成するものであった。はみ出し縁部18a1は、黒色綿ニットUと比較して肉眼による違和感を生じないものであった。
【0093】
黒色綿ニットU(転写対象部)とはみ出し縁部18a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0094】
次に、被転写物U1について、伸縮試験(被転写物のうち転写された接着層及び図柄を含む部分について、一定方向の200%伸張と伸張解除による伸縮を、30回繰り返す試験。以下同じ。)及びJIS L−0217 103法による10回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物U1における"MATSUI"の文字からなる図柄141の周縁部からはみ出したはみ出し縁部18a1の色等の外観は、その周囲の黒色綿ニットUとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。
【0095】
試験後における黒色綿ニットU(転写対象部)とはみ出し縁部18a1の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部18a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0096】
なお、前記何れの色差測定も、色彩色差計(ミノルタ社製 CR―310)を用いて行った。以下の実施例及び比較例における色差測定も同様である。
【0097】
また、はみ出し縁部18a1は、幅が狭いため、そのままでは測定できない。そこで、黒色綿ニットU上に、面積以外はみ出し縁部18a1と同じ構成であって色差測定に十分な面積の接着層を別途転写形成したものについて、前記試験前の色差測定、伸縮試験及び繰り返し洗濯試験、並びに伸縮試験及び繰り返し洗濯試験後の色差測定を行った。以下の実施例及び比較例においても同様である。
(実施例2)
【0098】
実施例1におけるベースシート10上に形成した剥離層12上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、白色隠蔽インキによりその図柄を2回重ね印刷し、乾燥させて隠蔽機能を備えた白色の図柄層24を形成した。用いた白色隠蔽インキは、前記Mタイプホワイトインキ100部及び前記コロネートHL5部からなる。
【0099】
その図柄層24上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が0.5mmずつ縮小された形状を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、染料吸着層インキによりその形状を2回重ね印刷し、乾燥させて染料吸着層27を形成した。用いた染料吸着層インキは、Mタイプ活性炭インキ(活性炭、ウレタン樹脂、溶剤、シリコーン系消泡剤を含む染料吸着層インキ:株式会社松井色素化学工業所製)100部及び前記コロネートHL5部からなる。
【0100】
次いで、染料吸着層27上より、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が0.7mmずつ拡張された形状を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、転写対象物(転写対象部)である分散染料で染色された赤色ポリエステルニットVの色に近似した色の赤色接着層インキによりその形状を乾燥厚み80μmとなるように印刷し、その赤色接着層インキが未乾燥の状態で、その層上に前記ダイアミド430P−2(ホットメルトナイロン樹脂粒子:ダイセルヒュルツ株式会社製)を満遍なく散布し、余剰のナイロン樹脂粒子を刷毛で除去した後、130℃で3分間の熱処理を行うことにより、樹脂インキとホットメルト樹脂粒子が一体化した接着層28が形成された。接着層28の周縁部28aは、図柄層24及び染料吸着層27の側方部を取り囲む状態で、ベースシート10上に設けられた剥離層12上に形成された。用いた赤色接着層インキは、マツミンARバインダーGS(水性ウレタン樹脂エマルジョンを含むクリヤーバインダー:株式会社松井色素化学工業所製)100部に、ネオカラーレッドMGD(水性着色顔料:株式会社松井色素化学工業所製)4部及びネオカラーレッドMFB(水性着色顔料:株式会社松井色素化学工業所製)3部を配合してなるものである。
【0101】
このようにベースシート10上に各層が積層して得られた転写シートB(図3)を、熱プレス機を用いて、接着層28において赤色ポリエステルニットVの所定の転写対象部に対し180℃、35kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、熱時にベースシート10を剥離した。
【0102】
これにより、赤色ポリエステルニットV上に接着層28が熱融着して図柄層24による線幅1cmの白色の鮮明な"MATSUI"の文字からなる図柄241が転写形成された被転写物V1(図4)が得られた。転写対象物の分散染料による転写された図柄241の汚染は認められなかった。また、転写された接着層28の周縁部28aは、図柄241の周縁部から約0.7mmはみ出したはみ出し縁部28a1を形成するものであった。はみ出し縁部28a1は、赤色ポリエステルニットVと比較して肉眼による違和感を生じないものであった。
【0103】
赤色ポリエステルニットV(転写対象部)とはみ出し縁部28a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0104】
次に、被転写物V1について、伸縮試験及びJIS L−0217 103法による10回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物V1における"MATSUI"の文字からなる図柄241の周縁部からはみ出したはみ出し縁部28a1の色等の外観は、その周囲の赤色ポリエステルニットVとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。
【0105】
試験後における赤色ポリエステルニットV(転写対象部)とはみ出し縁部28a1の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部28a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(実施例3)
【0106】
ベースシート30(120g/m上質紙)上の全面に、200メッシュのスクリーン版を用いて、前記離型処理剤WAX IRにより印刷を行い、乾燥させて剥離層32を形成した。
【0107】
その剥離層32上に、オフセット印刷機を用いて、それぞれ酸化重合型の赤色インキ(Kディスプレイ:株式会社大日本インキ化学工業製)、青色インキ(VIP:株式会社大日本インキ化学工業製)、黄色インキ(Kディスプレイ:株式会社大日本インキ化学工業製)、及び黒色インキ(D:株式会社大日本インキ化学工業製)により、所定の図柄を順に印刷して乾燥させることにより、バラの図柄の図柄層34を形成した。
【0108】
その図柄層34上に、図柄層34のバラの図柄よりも外周縁が0.2mm縮小された形状を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、白色隠蔽インキによりその形状を2回重ね印刷し、乾燥させて隠蔽層36を形成した。用いた白色隠蔽インキは、前記Mタイプホワイトインキ100部及び前記コロネートHL5部からなる。
【0109】
続いて、隠蔽層16上より、図柄層34のバラの図柄よりも外周縁が0.7mm拡張された形状を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、転写対象物(転写対象部)である黒色ナイロンニットWの色に近似した色の黒色接着層インキによりその形状を乾燥厚み120μmとなるように印刷し、乾燥させて接着層38を形成した。接着層38の周縁部38aは、図柄層34及び隠蔽層36の側方部を取り囲む状態で、ベースシート30上に設けられた剥離層32上に形成された。用いた黒色接着層インキは、前記サンナロンUG245 50部、アロンメルトPSE−120H(ホットメルトポリエステル樹脂粒子:東亜合成化学工業株式会社製)20部、前記MタイプカラーベースブラックK10部、及びシクロヘキサノン30部からなる。
【0110】
このようにベースシート30上に各層が積層して得られた転写シートC(図5)を、熱プレス機を用いて、接着層38において黒色ナイロンニットWの所定の転写対象部に対し180℃、50kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、熱時にベースシート30を剥離した。
【0111】
これにより、黒色ナイロンニットW上に接着層38が熱融着して図柄層34による鮮明なバラの図柄341が転写形成された被転写物W1(図6)が得られた。
【0112】
転写された接着層38の周縁部38aは、図柄341の周縁部から約0.7mmはみ出したはみ出し縁部38a1を形成するものであった。はみ出し縁部38a1は、黒色ナイロンニットWと比較して肉眼による違和感を生じないものであった。
【0113】
黒色ナイロンニットW(転写対象部)とはみ出し縁部38a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0114】
次に、被転写物W1について、伸縮試験及びJIS L−0217 103法による20回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物W1におけるバラの図柄341の周縁部からはみ出したはみ出し縁部38a1の色等の外観は、その周囲の黒色ナイロンニットWとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。
【0115】
試験後における黒色ナイロンニットW(転写対象部)とはみ出し縁部38a1の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部38a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(実施例4)
【0116】
ベースシート40上に剥離層42及び保護層43が順に積層された構造の離型ポリエステルフィルムHA−2(ポリエステルフィルム上にシリコーン樹脂層[剥離層]及びアルキッドメラミン樹脂層[保護層]が順に積層されたフィルム:株式会社藤森工業製)における保護層43上に、実施例2において剥離層12上に隠蔽機能を備えた白色の図柄層24、染料吸着層27及び接着層28を形成したのと同様に、隠蔽機能を備えた白色の図柄層44、染料吸着層47、及び接着層48を形成し熱転写シートD(図7)を得た。
【0117】
この転写シートDを、熱プレス機を用いて、接着層48において赤色ポリエステルコットンニットXの所定の転写対象部に対し160℃、50kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、自然冷却させた上でベースシート10を剥離した。
【0118】
これにより、赤色ポリエステルコットンニットX上に接着層48が熱融着して図柄層44による線幅1cmの白色の鮮明な"MATSUI"の文字からなる図柄441が転写形成された被転写物X1(図8)が得られた。転写された接着層48の周縁部48aは、図柄441の周縁部から約0.7mmはみ出したはみ出し縁部48a1を形成するものであった。はみ出し縁部48a1は、赤色ポリエステルコットンニットXと比較して肉眼による違和感を生じないものであった。
【0119】
赤色ポリエステルコットンニットX(転写対象部)とはみ出し縁部48a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0120】
次に、被転写物X1について、伸縮試験及びJIS L−0217 103法による20回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物X1における"MATSUI"の文字からなる図柄441の周縁部からはみ出したはみ出し縁部48a1の色等の外観は、その周囲の赤色ポリエステルコットンニットXとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。更に、洗濯後にタンブラー乾燥を行った場合も、図柄441にブロッキングは発生せず、この点は保護層43による図柄保護の効果であると認められた。
【0121】
試験後における赤色ポリエステルコットンニットX(転写対象部)とはみ出し縁部48a1の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部48a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(実施例5)
【0122】
ベースシート50(100μm厚ポリエステルフィルム)上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が2mmずつ拡張された形状を製版した180メッシュのスクリーン版を用いて、離型処理剤WAX IR(WAX、シリコーン、溶剤、ポリアミド樹脂を含む離型処理インキ:株式会社松井色素化学工業所製)により、その形状を印刷し、乾燥させて剥離層52を形成した。
【0123】
その剥離層52上に、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、転写対象物(転写対象部)である黒色綿ニットYの色に近似した色の黒色接着層インキによりその図柄を乾燥厚み100μmとなるように印刷し、乾燥させて接着層58を形成した。用いた黒色接着層インキは、前記サンナロンUG245 70部、ユーファインP−602(ホットメルトウレタン樹脂粒子:旭硝子株式会社製)30部、前記MタイプカラーベースブラックK10部からなる。
【0124】
このようにして得られた転写シートE(図9)を、熱プレス機を用いて、接着層58において黒色綿ニットYの所定の転写対象部に対し180℃、35kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、熱時にベースシート10を剥離した。
【0125】
これにより、黒色綿ニットY上に接着層58が熱融着して光沢のある黒色の"MATSUI"の文字からなる図柄が形成された被転写物Y1(図10)が得られた。
【0126】
黒色綿ニットY(転写対象部)と接着層58の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0127】
次に、被転写物Y1について、伸縮試験及びJIS L−0217 103法による10回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物Y1における接着層58による"MATSUI"の文字からなる図柄の色等の外観は、その周囲の黒色綿ニットYとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。
【0128】
試験後における黒色綿ニットY(転写対象部)と接着層58の色差ΔE*ab、並びに、試験前後における接着層58の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(実施例6)
【0129】
実施例1と同様にして、ベースシート10上に、剥離層12、図柄層14、及び隠蔽層16を順次形成した。
【0130】
続いて、隠蔽層16上より、線幅1cmの"MATSUI"の文字からなる図柄よりも各文字の外周縁又は内外周縁が0.7mmずつ拡張された形状を製版した100メッシュのスクリーン版を用いて、転写対象物(転写対象部)である黒色綿ニットZの色に近似した色の黒色接着層インキによりその形状を乾燥厚み100μmとなるように印刷し、乾燥させて接着層68を形成した。接着層68の周縁部68aは、図柄層14及び隠蔽層16の側方部を取り囲む状態で、ベースシート10上に設けられた剥離層12上に形成された。用いた黒色接着層インキは、前記サンナロンUG245 50部、バイロン300(ポリエステル樹脂:株式会社東洋紡製)30部、前記MタイプカラーベースブラックK 10部、及びシクロヘキサノン10部からなる。
【0131】
このようにベースシート10上に各層が積層して得られた転写シートF(図11)を、熱プレス機を用いて、接着層68において黒色綿ニットZの所定の転写対象部に対し180℃、35kPaの条件で10秒間にわたり圧接させつつ加熱した後、熱時にベースシート10を剥離した。
【0132】
これにより、黒色綿ニットZ上に接着層68が熱融着して図柄層14による線幅1cmの赤色の鮮明な"MATSUI"の文字からなる図柄141が転写形成された被転写物Z1(図12)が得られた。
【0133】
転写された接着層68の周縁部68aは、図柄141の周縁部から約0.7mmはみ出したはみ出し縁部68a1を形成するものであった。はみ出し縁部68a1は、黒色綿ニットZと比較して肉眼による違和感を生じないものであった。
【0134】
黒色綿ニットZ(転写対象部)とはみ出し縁部68a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0135】
次に、被転写物Z1について、伸縮試験及びJIS L−0217 103法による10回の繰り返し洗濯試験を行った。試験後の被転写物Z1における"MATSUI"の文字からなる図柄141の周縁部からはみ出したはみ出し縁部68a1の色等の外観は、その周囲の黒色綿ニットZとの間で大きな差異がなく、意匠性が損なわれない良好なものであった。
【0136】
試験後における黒色綿ニットZ(転写対象部)とはみ出し縁部68a1の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部68a1の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
【0137】
接着層インキとしてMタイプカラーベースブラックKを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は実施例1と同様に転写シートを作成した。
【0138】
この転写シートを用いて実施例1と同様に黒色綿ニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例1と同様の被転写物が得られた。
【0139】
黒色綿ニット(転写対象部)と赤色の"MATSUI"の文字からなる図柄の周縁部からはみ出した接着層によるはみ出し縁部との色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0140】
この被転写物について、実施例1と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における前記はみ出し縁部の色等の外観は、白色状を呈し(白化)、"MATSUI"の文字からなる図柄は、その周縁部にぼやけたような白い影を有し鮮明性に欠けるものとなって、意匠性が損なわれた。
【0141】
試験後における黒色綿ニット(転写対象部)と前記はみ出し縁部の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例2)
【0142】
接着層インキとしてネオカラーレッドMGD及びネオカラーレッドMFBを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は、実施例2と同様に転写シートを作成した。
【0143】
この転写シートを用いて実施例2と同様に赤色ポリエステルニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例2と同様の被転写物が得られた。
【0144】
赤色ポリエステルニット(転写対象部)と白色の"MATSUI"の文字からなる図柄の周縁部からはみ出した接着層によるはみ出し縁部との色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0145】
この被転写物について、実施例1と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における前記はみ出し縁部の色等の外観は、白色状を呈し(白化)、"MATSUI"の文字からなる図柄は、その周縁部にぼやけたような白い影を有し鮮明性に欠けるものとなって、意匠性が損なわれた。
【0146】
試験後における赤色ポリエステルニット(転写対象部)と前記はみ出し縁部の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例3)
【0147】
接着層インキとしてMタイプカラーベースブラックKを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は実施例3と同様に転写シートを作成した。
【0148】
この転写シートを用いて実施例3と同様に黒色ナイロンニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例3と同様の被転写物が得られた。
【0149】
黒色ナイロンニット(転写対象部)とバラの図柄の周縁部からはみ出した接着層によるはみ出し縁部との色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0150】
この被転写物について、実施例3と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における前記はみ出し縁部の色等の外観は、白色状を呈し(白化)、バラの図柄は、その周縁部にぼやけたような白い影を有し鮮明性に欠けるものとなって、意匠性が損なわれた。
【0151】
試験後における黒色ナイロンニット(転写対象部)と前記はみ出し縁部の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例4)
【0152】
接着層インキとしてネオカラーレッドMGD及びネオカラーレッドMFBを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は、実施例4と同様に転写シートを作成した。
【0153】
この転写シートを用いて実施例4と同様に赤色ポリエステルコットンニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例4と同様の被転写物が得られた。
【0154】
赤色ポリエステルコットンニット(転写対象部)と白色の"MATSUI"の文字からなる図柄の周縁部からはみ出した接着層によるはみ出し縁部との色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0155】
この被転写物について、実施例4と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における前記はみ出し縁部の色等の外観は、白色状を呈し(白化)、"MATSUI"の文字からなる図柄は、その周縁部に汚れのようなぼやけた白い影を有し鮮明性に欠けるものとなって、意匠性が損なわれた。
【0156】
試験後における赤色ポリエステルコットンニット(転写対象部)と前記はみ出し縁部の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例5)
【0157】
接着層インキとしてMタイプカラーベースブラックKを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は実施例5と同様に転写シートを作成した。
【0158】
この転写シートを用いて実施例5と同様に黒色綿ニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例5と同様の被転写物が得られた。
【0159】
黒色綿ニット(転写対象部)と接着層による"MATSUI"の文字からなる図柄との色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0160】
この被転写物について、実施例5と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における接着層による"MATSUI"の文字からなる図柄は、光沢が損なわれて全体的に白色状を呈するものとなり(白化)、意匠性が損なわれた。
【0161】
試験後における黒色綿ニット(転写対象部)と接着層の色差ΔE*ab、並びに、試験前後における接着層の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
(比較例6)
【0162】
接着層インキとしてMタイプカラーベースブラックKを含有しないものを用いることにより、接着層を実質上無色透明に形成したこと以外は実施例6と同様に転写シートを作成した。
【0163】
この転写シートを用いて実施例6と同様に黒色綿ニット上に転写したところ、肉眼による外観において実施例6と同様の被転写物が得られた。
【0164】
黒色綿ニット(転写対象部)と赤色の"MATSUI"の文字からなる図柄の周縁部からはみ出した接着層によるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0165】
この被転写物について、実施例6と同様に伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を行ったところ、試験後の被転写物における前記はみ出し縁部の色等の外観は、白色状を呈し(白化)、"MATSUI"の文字からなる図柄は、その周縁部にぼやけたような白い影を有し鮮明性に欠けるものとなって、意匠性が損なわれた。
【0166】
試験後における黒色綿ニット(転写対象部)とはみ出し縁部の色差ΔE*ab、並びに、試験前後におけるはみ出し縁部の色差ΔE*abを測定した結果を表1に示す。
【0167】
【表1】

【0168】
伸縮試験及び繰り返し洗濯試験の前における転写対象部とはみ出し縁部(接着層)の色差は実施例に比べて比較例の方が大きい。この原因は、比較例のはみ出し縁部(接着層)が無色透明の樹脂層であるため、外観上、いわゆる色目は対象物とあまり異ならないものの、樹脂光沢があるためにL値(明度)が大きく変わるからである。
【0169】
伸縮試験及び繰り返し洗濯試験を経ることにより、転写対象部とはみ出し縁部(接着層)の色差は、実施例ではあまり変わらないが、比較例では大きく増大する。また、伸縮試験及び繰り返し洗濯試験の前後におけるはみ出し縁部(接着層)の色差は、実施例の場合は小さく、比較例の場合は大きい。実施例の場合、試験前後における外観の変化が小さく、比較例の場合、試験を経ることにより白化して外観が大きく変化することに対応する。
【符号の説明】
【0170】
10 ベースシート
12 剥離層
14 図柄層
141 図柄
16 隠蔽層
18 接着層
18a 周縁部
18a1 はみ出し縁部
24 図柄層
241 図柄
27 染料吸着層
28 接着層
28a 周縁部
28a1 はみ出し縁部
30 ベースシート
32 剥離層
34 図柄層
341 図柄
36 隠蔽層
38 接着層
38a 周縁部
38a1 はみ出し縁部
40 ベースシート
42 剥離層
43 保護層
44 図柄層
441 図柄
48 接着層
48a 周縁部
48a1 はみ出し縁部
50 ベースシート
52 剥離層
58 接着層
68 接着層
68a 周縁部
68a1 はみ出し縁部
A 転写シート
B 転写シート
C 転写シート
D 転写シート
E 転写シート
F 転写シート
U 黒色綿ニット
U1 被転写物
V 赤色ポリエステルニット
V1 被転写物
W 黒色ナイロンニット
W1 被転写物
X 赤色ポリエステルコットンニット
X1 被転写物
Y 黒色綿ニット
Y1 被転写物
Z 黒色綿ニット
Z1 被転写物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写後に剥離されるベースシート、対象物の転写対象部上に図柄を形成するための図柄層、及び樹脂を主成分とするホットメルト接着性の接着層を、この順に有してなり、前記接着層において対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成するための熱転写シートであって、
前記接着層の周縁部は、前記図柄層の周縁部からはみ出すように形成され、転写対象部に転写された場合に図柄の周縁部からはみ出したはみ出し縁部を形成するものであり、
前記接着層の全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分は、着色剤により着色されていることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
上記接着層の全て又は前記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分が、上記着色剤を除いた状態で転写対象部に転写された場合に実質上無色透明となるものである請求項1記載の熱転写シート。
【請求項3】
上記接着層の周縁部の図柄層の周縁部からのはみ出し幅が0.2乃至2.0mmである請求項1又は2記載の熱転写シート。
【請求項4】
ベースシートと図柄層の間に剥離層を有する請求項1、2又は3記載の熱転写シート。
【請求項5】
図柄層と接着層の間に隠蔽層を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項6】
接着層と隠蔽層の間に染料吸着層を有する請求項5記載の熱転写シート。
【請求項7】
図柄層のベースシート側に隣接して保護層を有する請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項8】
上記接着層が、樹脂を主成分とする液状体により形成された層に対し、その液状体が未固化の状態でホットメルト樹脂粒子が散布されて形成されるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項9】
上記接着層が、樹脂を主成分とする液状体にホットメルト樹脂粒子が配合されたものにより形成されるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項10】
上記ホットメルト樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂又はポリエステル樹脂からなるものである請求項8又は9記載の熱転写シート。
【請求項11】
上記図柄層が樹脂を主成分とし、その図柄層及び接着層の主成分である樹脂がポリウレタン樹脂である請求項1乃至10の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項12】
上記転写対象部に転写された場合の接着層のはみ出し縁部の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とするためのものである請求項1乃至11の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項13】
転写対象部に転写された場合の接着層のはみ出し縁部と、転写対象部との色差ΔE*abが12以下である請求項12記載の熱転写シート。
【請求項14】
転写対象部に図柄が転写形成された被転写物を製造するための被転写物製造方法であって、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の熱転写シートを、その接着層において対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に対し圧接させつつ加熱することにより、その転写対象部に接着層を熱融着させて図柄層による図柄を転写形成する工程を含み、
前記転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色を、同一又は近似した色とすることを特徴とする被転写物製造方法。
【請求項15】
転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分と、転写対象部との色差ΔE*abが12以下である請求項14記載の被転写物製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の熱転写シートが、その接着層において、対象物における可撓性および/または伸縮性を有する転写対象部に熱融着して図柄層による図柄が転写形成され、
前記転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分の色と、転写対象部の色が、同一又は近似した色であることを特徴とする被転写物。
【請求項17】
転写対象部に融着した接着層の全て又は上記はみ出し縁部を形成する周縁部を含む部分と、転写対象との色差ΔE*abが12以下である請求項16記載の被転写物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−188591(P2010−188591A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34667(P2009−34667)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(390039583)株式会社松井色素化学工業所 (13)
【Fターム(参考)】