説明

転写シート

【課題】発泡抑制剤の迅速な浸透を可能とし、転写シートの形成後にブロッキングの発生を防ぐことが可能な転写シートを提供すること。
【解決手段】転写基材上に、転写性を有する発泡抑制インキからなるパターン層、絵柄模様層を少なくともこの順に設けてなる転写シートにおいて、前記転写基材が、紙基材上に、オレフィン系樹脂100重量部に対してポリ乳酸25〜40重量部を添加した樹脂からなるオレフィン系樹脂層を設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗等の建築物や、電車、自動車等の車両や、飛行機、船舶等の内装、外装材、床材、壁紙、天井等の表面に化粧のために転写して使用するための転写シート関するものであり、特には発泡抑制インキによるパターンを転写するための転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記発泡抑制インキによるパターン層を転写するための転写シートに対して、その転写層が転写される被転写材は熱発泡性のポリ塩化ビニル樹脂層である。このポリ塩化ビニル樹脂層には、その発泡を促進させるために、一般に亜鉛やバリウムといった安定剤が添加されている。この安定剤の働きにより、通常は高温で発泡するポリ塩化ビニル樹脂が、その温度以下で発泡できるようになる(特許文献1)。
【0003】
前記転写シートにおける発泡抑制インキからなるパターン層には、発泡抑制剤としてトリアジンが用いられることが多い。トリアジンは安定剤の働きを阻害し、転写されたインキの有る部分の熱発泡性のポリ塩化ビニル樹脂基材は高温でなければ発泡できなくなる(特許文献8)。
【0004】
したがって、発泡抑制剤にトリアジンを用いた転写シートでは、発泡温度を低くすることによって、転写された熱発泡性のポリ塩化ビニル樹脂基材を、発泡する部分と発泡しない部分とに分けることができ、そのために発泡抑制効果を得ることができる(特許文献2,3)。
【0005】
このような熱発泡性のポリ塩化ビニル樹脂層を、発泡する部分と発泡しない部分とに分けるための良好な発泡抑制効果を得るためには、発泡が始まる前に、発泡抑制剤を被転写材であるポリ塩化ビニル樹脂層に迅速に浸透させる必要がある。
【0006】
しかし、発泡抑制剤としてのトリアジンは融点が300℃以上と高温であるため、発泡が始まる前にポリ塩化ビニル樹脂層に浸透させることは困難であり、良好な発泡抑制効果を得ることができないものであった。
【0007】
そこで、発泡抑制剤として、160℃以下の低い融点を示すベンゾトリアゾール、トリアゾール等を用いることが考え出された。低い融点を示すベンゾトリアゾール、トリアゾール等であれば、発泡が始まる前に、発泡抑制剤を被転写材であるポリ塩化ビニル樹脂層内に迅速に浸透させることができ、高融点のトリアジンを用いた場合と比較して大きな発泡抑制効果を得ることができる(特許文献4,7)。
【0008】
しかしながら、融点が低い発泡抑制剤を使用した場合には、転写シートの形成後にブロッキングが発生し易く、転写シートの安定した品質での提供が困難であり、また発泡抑制効果が経時的に低下するため、転写シートとしての長期保存が困難であった。さらに、近年塩化ビニル以外の樹脂を発泡樹脂層に用いる化粧材も増えてきた(特許文献5,6)。
【特許文献1】特公昭43−28636号公報
【特許文献2】特公昭52−39428号公報
【特許文献3】特公昭61−11188号公報
【特許文献4】特開平11−267407号公報
【特許文献5】特開2002−200717号公報
【特許文献6】特開2004−34618号公報
【特許文献7】特開2005−22373号公報
【特許文献8】特開平5−318612号公報
【特許文献9】特開2004−351628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、発泡抑制剤の迅速な浸透を可能とし、転写シートの形成後にブロッキングの発生を防ぐことが可能な転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は転写基材上に、転写性を有する発泡抑制インキからなるパターン層、絵柄模様層を少なくともこの順に設けてなる転写シートにおいて、前記転写基材が、紙基材上に、オレフィン系樹脂100重量部に対してポリ乳酸25〜40重量部を添加した樹脂からなるオレフィン系樹脂層を設けてなることを特徴とする転写シートである。
【0011】
また、請求項2記載の発明は前記発泡抑制インキベンゾトリアゾール系発泡抑制材を含有し前記発泡抑制インキからなるパターン層がシート全面に設けられたものであって、前記発泡抑制インキからなるパターン層の発泡抑制インキを設けた部分の幅が1500μm〜3000μmであり、前記発泡抑制インキからなるパターン層のインキを設けない部分の幅が1500μm〜3000μmであることを特徴とする請求項1記載の転写シートである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明により、発泡抑制インキを設ける転写面上にオレフィン系樹脂100重量部に対しポリ乳酸25〜40重量部を添加したオレフィン系樹脂層とすることで、転写の際に発泡抑制剤の迅速な浸透を可能としている。また紙を基材とすることで転写シートの形成後にブロッキングの発生を防ぐことが可能としている。
【0013】
またその請求項2記載の発明により、パターン層がシート全面に渡っていることから転写の際に安定した浸透が可能となり、またパターン層の発泡抑制インキを設けた部分と設けない部分の幅を限定することで、転写シートでのブロッキングの発生をより効果的に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の転写シートの一実施例の断面の構造を示す。
紙基材1の上にオレフィン系樹脂層2、発泡抑制インキからなるパターン層3、絵柄模様層4が設けられてなる。
【0015】
本発明における紙基材1としては、坪量10〜100g/m程度の度の上質紙が適当であるが、特にこれに限定するものではなく、後述するオレフィン系樹脂層2が設けられるものであれば使用可能である。
【0016】
本発明におけるオレフィン系樹脂層2は、前記紙基材1の表面にオレフィン系樹脂をラミネート又はコーティングしたものであってもよいし、紙基材1とオレフィン系樹脂層をシートとしてこれらを積層したものであってもよい。
【0017】
オレフィン系樹脂層2はオレフィン系樹脂100重量部に対してポリ乳酸25〜40重量部を添加した樹脂からなる。オレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポロメチルペンテン樹脂などが使用可能である。ポリ乳酸樹脂の他、その物性に影響を与えない範囲で他のバイオマス材料や生分解性樹脂、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、加水分解抑止剤、核剤など従来公知の各種の添加剤の1種以上を添加しても良い。
【0018】
バイオマス材料や生分解性樹脂は主に耐熱性向上の為に適宜添加されるものであり、具体的には、ポリヒドロキシブチレート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリカプロラクトン系、酢酸セルロース系、ポリエステルアミド系、酢酸ビニル系、デンプン系のものから適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
【0019】
本発明における発泡抑制インキからなるパターン層3は、オレフィン系樹脂層2の表面に印刷などの手段により形成される。発泡抑制剤としては、無水トリメット酸、ベンゾトリアゾール系としては、1−[N,N−ビス(2エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールあるいはこの誘導体、1−[N,N−ビス(ヒドロキシルエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールあるいはこの誘導体等が使用可能である。特には融点が160℃以上300℃未満のカルボキシベンゾトリアゾールが好適に用いられ、カルボキシベンゾトリアゾール等の発泡抑制剤の添加量としては、当該発泡抑制インキ中5〜50重量部であることが好ましい。
【0020】
さらに、当該発泡抑制インキ中のカルボキシベンゾトリアゾールは、溶解性を向上させるためにアミン中和し、アルコールで溶解させることが好ましく、当該アミンの沸点は200℃以下であることがさらに好ましい。
【0021】
また、発泡抑制インキ中には、被転写剤であるポリ塩化ビニル樹脂への熱転写性を確保するために、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂を主成分としたインキを使用することが好ましく、アクリル樹脂の添加量は、当該発泡抑制インキ中1〜30重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の添加量は、当該発泡抑制インキ中1〜30重量部であることが好ましい。
【0022】
さらに、発泡抑制インキ中の体質顔料シリカの含有量は、当該発泡抑制インキ中1〜10部であることが好ましい。
【0023】
本発明における絵柄模様層4としては、例えば住宅、店舗等の建築物や、電車、自動車等の車両や、飛行機、船舶等の内装材や外装材、床材等の表面を化粧するための化粧柄や、模様、彩色、木目柄、目地、木目導管柄等があげられるが、特にこれらに限定されるものではなく、単色ベタであってもよい。絵柄模様層は通常の印刷インキにより、グラビア印刷法など公知の方法で設けることが可能である。
【実施例1】
【0024】
<転写シートの作成>
紙基材1として、坪量52.3g/mのフォーム印刷用紙(コンピュータ出力用紙)を用いた。これに、ホモポリプロピレン樹脂100重量部にポリ乳酸樹脂30重量部添加した樹脂を厚さ20μmのシート状としたものを作成してオレフィン系樹脂層2とした。これらを紙繊維の投錨効果により貼り合わせた。
【0025】
前記オレフィン系樹脂層2上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、ジエチルエタノールアミンで中和しアルコールで溶解させた融点が268℃のカルボキシベンゾトリアゾール10重量部、ポリビニルアルコール樹脂1重量部、シリカ1重量部からなる発泡抑制インキ用いて、グラビア印刷法にて発泡抑制インキからなるパターン層3を形成した。このパターン層は厚さ平均1μmの線状柄でシート全面にわたって設け、発泡抑制インキを設けた部分の幅とインキを設けない部分の幅を適宜変更して複数作成した。
【0026】
前記発泡抑制インキからなるパターン層4上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、無機顔料10重量部からなるインキを用い、木目柄の印刷をグラビア印刷法にて施して絵柄模様層5を形成し、転写シートを作成した。
【0027】
<被転写材への転写>
被転写材として、坪量50g/mの紙基材に熱発泡性のポリ塩化ビニル樹脂ゾル100重量部、ポリ乳酸樹脂30重量部を100g/m2厚に塗工したものを用いた。
前記転写シートから紙基材1とポリオレフィン系樹脂層2を剥離し、発泡抑制インキからなるパターン層3を、前記被転写材の樹脂を塗工し面の上に被覆して、200℃の転写ロールを用いて加熱加圧して、目地導管柄の発泡抑制インキからなるパターン層4、木目柄の絵柄模様層5を転写した。
【0028】
その後、220℃のオーブンで100秒間放置して加熱発泡処理し、発泡抑制インキからなるパターン層4の形成された部分の発泡の抑制効果を目視と手で触って確認した。シート全面にわたって発泡の抑制により表面凹凸が形成された。特にパターンの絵柄幅が1500μm〜3000μmであり、且つ前記絵柄幅と絵柄幅の間隔が1500μm〜3000μmである範囲が好適に形成された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の転写シートは、住宅、店舗等の建築物や、電車、自動車等の車両や、飛行機、船舶等の内装、外装材、床材、壁紙、天井等の表面に化粧のために転写して使用するための転写シートとして使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の転写シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1…紙基材
2…オレフィン系樹脂層
3…発泡抑制インキからなるパターン層
4…絵柄模様層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写基材上に、転写性を有する発泡抑制インキからなるパターン層、絵柄模様層を少なくともこの順に設けてなる転写シートにおいて、
前記転写基材が、紙基材上に、オレフィン系樹脂100重量部に対してポリ乳酸25〜40重量部を添加した樹脂からなるオレフィン系樹脂層を設けてなることを特徴とする転写シート。
【請求項2】
前記発泡抑制インキベンゾトリアゾール系発泡抑制材を含有し
前記発泡抑制インキからなるパターン層がシート全面に設けられたものであって、
前記発泡抑制インキからなるパターン層の発泡抑制インキを設けた部分の幅が1500μm〜3000μmであり、
前記発泡抑制インキからなるパターン層のインキを設けない部分の幅が1500μm〜3000μmであることを特徴とする請求項1記載の転写シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−255397(P2009−255397A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107355(P2008−107355)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】