説明

転写方法および記録物

【課題】種々の基材シートに形成した画像を記録媒体に容易に転写することが可能な転写方法を提供し、また、このような転写方法を用いて画像を転写した記録物を提供する。
【解決手段】下地層形成用粒子が分散した第1のインクを用いて形成された下地層12を有する基材シート11の前記下地層上に、顔料粒子が分散した第2のインクをインクジェット法により付与し、画像層13を形成する第2のインク付与工程と、前記下地層上に形成された前記画像層が前記下地層に完全に定着する前に、前記画像層の少なくとも一部を記録媒体14に転写する転写工程と、を有する。第1のインクは、下地層形成用粒子としての白色粒子が分散したインクであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙やプラスチックフィルム等のシート上に熱的に転写可能な画像層を設けた
構成を有する転写シート(転写媒体)が知られている。熱転写シートにより文字、記号等
の画像層は、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷あるいはオフセット印刷等でシート上
に形成されるのが一般的である。熱転写シート(熱転写媒体)は、画像層を記録媒体(被
転写媒体)に転写することで、記録媒体に画像を記録することができる。
【0003】
また、このような画像層をインクジェット方式によりインクをシートに吐出して形成し
た転写シートも知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、転写媒体は画像層を形成するシートの種類によっては、画像層がシート
表面に強固に定着してしまい、画像層が記録媒体に十分に転写されないといった問題があ
った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−168250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、種々の基材シートに形成した画像を記録媒体に容易に転写することが
可能な転写方法を提供すること、また、このような転写方法を用いて画像を転写した記録
物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の転写方法は、下地層形成用粒子が分散した第1のインクを用いて形成された下
地層を有する基材シートの前記下地層上に、顔料粒子が分散した第2のインクをインクジ
ェット法により付与し、画像層を形成する第2のインク付与工程と、
前記下地層上に形成された前記画像層が前記下地層に完全に定着する前に、前記画像層
の少なくとも一部を記録媒体に転写する転写工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の転写方法では、前記第1のインクは、下地層形成用粒子としての白色粒子が分
散したインクであることが好ましい。
これにより、基材シートに形成した画像層を容易に転写することができるとともに、画
像層の色味を容易に確認することができる。
本発明の転写方法では、前記下地層形成用粒子の平均粒子径は、10nm以上1000
nm以下であることが好ましい。
これにより、基材シートに形成した画像層をより確実に転写することができる。
【0008】
本発明の転写方法では、前記第2のインク中に含まれる前記顔料粒子の平均粒子径は、
5nm以上300nm以下であることが好ましい。
これにより、基材シートに形成した画像層をより確実に転写することができる。
本発明の転写方法では、前記転写工程において、前記下地層上に形成された前記画像層
を構成する前記第2のインクの液状成分の濃度が5質量%以下になる前に前記画像層の少
なくとも一部を記録媒体に転写することが好ましい。
これにより、基材シートに形成した画像層をより確実に転写することができる。
【0009】
本発明の転写方法では、前記下地層は、前記第1のインクをインクジェット法により前
記基材シート上に付与することにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、種々の基材シートに形成した画像層を記録媒体に容易に転写することが可
能な転写方法を提供することができる。
これにより、任意の範囲に下地層12を容易に形成することができる。また、下地層お
よび画像層の双方をより容易に形成することができる。
【0010】
本発明の転写方法では、前記基材シートは、インク受理層としての膨潤層を有すること
が好ましい。
これにより、より鮮明な画像を基材シートに形成することができるとともに、基材シー
トに形成した画像層をより確実に転写することができる。
本発明の記録物は、本発明のいずれか一項に記載の転写方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記第1のインクで形成された画像層とを備えたことを特徴とする。
これにより、鮮明な画像を備えた記録物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の転写方法の一例を示す模式図である。
【図2】インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《転写方法》
まず、本発明の転写方法について説明する。
図1は、本発明の転写方法の一例を示す模式図である。
本実施形態の転写方法は、基材シート11を準備する基材シート準備工程と、当該基材
シート11に下地層形成用粒子が分散した第1のインクをインクジェット法により付与し
、下地層12を形成する下地層形成工程と、当該下地層12に顔料粒子が分散した第2の
インクをインクジェット法により付与して、画像層13を形成する第2のインク付与工程
と、記録媒体14を用意し、当該記録媒体14と画像層13とが接するように配置し、記
録媒体14に画像層13の少なくとも一部を転写する転写工程とを有している。
【0013】
ところで、従来から、紙やプラスチックフィルム等のシート上に熱的に転写可能な画像
層を設けた構成を有する転写シート(転写媒体)が知られている。熱転写シートにより文
字、記号等の画像層は、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷あるいはオフセット印刷等
でシート上に形成されるのが一般的である。熱転写シート(熱転写媒体)は、画像層を記
録媒体(被転写媒体)に転写することで、記録媒体に画像を記録することができる。
【0014】
また、このような画像層をインクジェット方式によりインクをシートに吐出して形成し
た転写シートも知られている。
しかしながら、転写媒体は画像層を形成するシートの種類によっては、画像層がシート
表面に強固に定着してしまい、画像層が記録媒体に十分に転写されないといった問題があ
った。
そこで、本発明者は、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、転写工程において、下地層
上に形成された画像層が下地層に完全に定着する前に、画像層の少なくとも一部を記録媒
体に転写することにより、上記問題を解決することができ、種々の基材シートに形成した
画像層を記録媒体に容易に転写することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
以下、各工程について詳細に説明する。
<基材シート準備工程>
まず、図1(a)に示すように、基材シート11を用意する(基材シート準備工程)。
基材シート11としては、布、フィルム、普通紙、インク受理層等を有する専用紙等の
紙のほか、例えば、インクが付与される表面を含む領域が、各種プラスチック、セラミッ
クス、ガラス、金属や、これらの複合材料で構成された基材等が挙げられる。
【0016】
ところで、基材シート11としてインク受容層を備えたものを使用した場合、発色性に
優れた画像層13を形成することが可能であるが、画像層13が基材シート11に容易に
定着してしまい、画像層13を十分に記録媒体14に転写することができないといった問
題がある。しかしながら、本発明の転写方法によれば、このようなインク受容層を備えた
基材シートであっても、転写用の基材シート11として用いることができる。
【0017】
インク受容層を有する基材シート11としては、例えば、インク受容層としての空隙層
を有するものやインク受容層としての膨潤層を有するもの等を挙げることができる。これ
らの中でも、特に、インク受容層としての膨潤層を有するものを基材シート11として用
いた場合、より鮮明な画像層13を形成することができるとともに、基材シート11に形
成した画像層13を記録媒体14に対してより確実に転写することができる。
【0018】
なお、本明細書中において、「空隙層」とは、層を構成する成分のうち、樹脂の割合が
3割未満であり、無機粒子で主に構成され、無機粒子間または無機粒子に設けられた孔の
空隙に液体が浸透するよう構成された層のことをいう。また、「膨潤層」とは、層を構成
する成分のうち7割以上が樹脂であり、樹脂層がインクの溶媒により膨潤し、それによっ
て開いた孔に溶媒が浸透するよう構成されている層のことをいう。
【0019】
<下地層形成工程>
次に、図1(b)に示すように、基材シート11に下地層形成用粒子が分散した第1の
インクを付与し、下地層12を形成する(下地層形成工程)。このような下地層12を形
成することにより、後述する転写工程において、画像層13が完全に記録媒体14に定着
する前に画像層13の少なくとも一部を転写することができる。すなわち、下地層12は
、後述する第2のインクで形成された画像層13が記録媒体14に完全に定着するのを阻
害する機能を備えた層である。
【0020】
なお、第1のインクの付与方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディッ
プ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印
刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法等が挙げられる。これらの方法のうち、インクジェ
ット法を用いた場合、版を準備する等の工程が不要で、しかも任意の範囲に下地層12を
容易に形成することができる。また、下地層12と画像層13とを同一の装置で形成する
ことができる。
【0021】
[第1のインク]
以下、第1のインクについて説明する。
下地層12を形成するのに用いる第1のインクは、下地層形成用粒子が分散媒に分散し
たものである。
下地層形成用粒子は、いかなる色の粒子であってもよいが、白色の粒子であるのが好ま
しい。これにより、基材シート11に形成した画像層13を記録媒体14に容易に転写す
ることができるとともに、画像層13の色味を容易に確認することができる。
【0022】
下地層形成用粒子としては、特に限定されず、例えば、顔料粒子、中空粒子、無機微粒
子(酸化チタン、シリカ等)等を挙げることができる。なお、中空粒子とは、中空構造を
有する粒子のことを言う。
上述した中でも、下地層形成用粒子として中空粒子を用いた場合、記録媒体14に基材
シート11に形成した画像層13をより容易に転写することができる。
【0023】
また、上述した中でも、下地層形成用粒子として酸化チタンを用いた場合、記録媒体1
4に基材シート11に形成した画像層13をより容易に転写することができる。これによ
り、基材シート11に形成した画像層13を記録媒体14に容易に転写することができる
とともに、画像層13の色味を容易に確認することができる。
このような下地層形成用粒子の平均粒子径は、10nm以上1000nm以下であるの
が好ましく、100nm以上600nm以下であるのがより好ましい。これにより、後述
する第2のインクで形成された画像層13が記録媒体14に完全に定着するのをより確実
に阻害することができ、基材シート11に形成した画像層13をより確実に転写すること
ができる。
【0024】
第1のインク中における下地層形成用粒子の含有量は、1質量%以上30質量%以下で
あるのが好ましく、5質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、
後述する第2のインクで形成された画像層13が記録媒体14に完全に定着するのをより
効果的に阻害することができる。
また、第1のインク中には、下地層形成用粒子を分散する分散媒が含まれていてもよい
。分散媒としては、公知の溶剤を用いることができる。
また、第1のインク中には、樹脂成分が含まれていてもよい。
【0025】
樹脂成分としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステ
ル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロ
ニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン
、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタク
リル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルア
クリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミ
ド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロース
アセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル
共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエス
テル等が挙げられる。
なお、第1のインク中には、上記成分の他、尿素系化合物、多価アルコール、アルカノ
ールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、界面活性剤、pH調整剤、浸透
剤等が含まれていてもよい。
【0026】
<第2のインク付与工程>
次に、図1(c)に示すように、後述するインクジェット装置(インクジェット法)を
用いて、顔料粒子が分散した第2のインクを形成した下地層12の上に付与し、画像層1
3を形成する(第2のインク付与工程)。
[第2のインク]
第2のインクは、顔料粒子が分散媒に分散したものであり、画像層13を形成するため
に用いるインクである。
顔料粒子としては、例えば、各種公知の有機顔料、光輝性顔料等が挙げることができる

【0027】
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7
、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、
65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、
109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、
138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、
185、213等が挙げられる。
【0028】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、
30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57
(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149
、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179
、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264
またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、5
0等が挙げられる。
【0029】
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、1
5:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、
65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピ
グメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.
ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、4
0、43、63等が挙げられる。
【0030】
光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子等を挙げることができる。パール顔料の代
表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢
を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッ
ケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を挙げることができ、これら
の単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いるこ
とができる。
【0031】
第2のインク中に含まれる顔料粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以下である
のが好ましく、10nm以上100nm以下であるのがより好ましい。これにより、基材
シート11に形成される画像層13は、記録媒体14への転写性がより優れたものとなる

第2のインク中における顔料粒子の添加量は、0.5質量%以上20質量%以下である
のが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。これにより、後述
するインクジェット装置からの吐出性を良好なものとしつつ、形成される画像層13をよ
り鮮明なものとすることができる。
【0032】
また、第2のインク中には、顔料粒子を分散する分散媒が含まれていてもよい。分散媒
としては、公知の溶剤を用いることができる。
また、第2のインク中には、樹脂成分が含まれていてもよい。
樹脂成分としては、上記第1のインクの欄で例示したものを挙げることができる。
なお、第2のインク中には、上記成分の他、多価アルコール、グリコールエーテル、界
面活性剤等が含まれていてもよい。
【0033】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレン
グリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、
ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、
1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,
2−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙
げられる。
【0034】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリ
コールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレング
リコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの
多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク
中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20
質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好まし
い。
【0035】
界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面
活性剤等を挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル
−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール
、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−
オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用す
ることもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サ
ーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products a
nd Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0036】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK
−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
さらに、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他
の界面活性剤を含有することもできる。
また、第2のインクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、尿素系化合物、アルカノールア
ミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、チオ尿素等が挙げられる。
【0037】
<転写工程>
次に、記録媒体14を用意し、画像層13と対向するように配置する。
次に、図1(d)に示すように、画像層13と記録媒体14とを接触させる。その後、
基材シート11を記録媒体14から剥がすことにより、画像層13の一部が記録媒体14
に転写され、画像層13と記録媒体14とを備えた記録物100が得られる。
【0038】
画像層13は下地層12上に設けられているため、画像層13は下地層12に完全に定
着していない。このため、本工程は、画像層13が下地層に完全に定着する前に行われる
。これにより、画像層13の少なくとも一部を記録媒体14に容易に転写することができ
る。
なお、「画像層13が下地層12に完全に定着する前」とは、画像層13を構成する第
2のインクを構成する樹脂成分が固化する前、または、画像層13を構成する第2のイン
クを構成する分散媒が基材シート11側への吸収や揮発等によって完全に除去される前の
ことを言う。
【0039】
より具体的には、「画像層13が下地層12に完全に定着する前」とは、下地層12上
に形成された画像層13を構成する第2のインクの液状成分の量が5質量%以下になる前
を言うのが好ましく、1質量%以下になる前を言うのがより好ましい。これにより、記録
媒体14に基材シート11に形成した画像層13をより確実に転写することができる。
記録媒体14としては、特に限定されず、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートな
どが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙
類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている
不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレー
ト(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル
、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスル
ホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガ
ラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また記録媒体14としては、コー
ト紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。
【0040】
《インクジェット装置》
次に、インクジェット装置(液滴吐出装置)の好適な実施形態について説明する。
図2は、本実施形態に係るインクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンタ1(以下、プリンタ1
という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテ
ン3上には、媒体送りモーター4の駆動により媒体Pが給送されるようになっている。ま
た、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられて
いる。
【0041】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持され
ている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャ
リッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の
駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを
供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッ
ジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカ
ートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数の
ノズルから、プラテン3上に給送された媒体Pに対して吐出されるようになっている。こ
れにより画像(画像層)を形成することが可能となる。
吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でもよい。
また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定
されるものではない。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インク組成物の調製
(1)カラーインク
カラーインクとして、シアン顔料(平均粒子径:100nm):10質量%、スチレン
−アクリル酸共重合体(BASFジャパン株式会社製、商品名「ジョンクリル62J」)
:2質量%、1,2−ヘキサンジオール:5質量%、グリセリン:10質量%、トリエタ
ノールアミン:0.9質量%、シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社
製、商品名「BYK−348」):0.5質量%である組成のシアンインクを用意した。
また、シアン顔料をマゼンダ顔料(平均粒子径:100nm)に変更して同様の組成のマ
ゼンダインクを用意した。
【0043】
(2)光輝性インク
銀粒子(平均粒子径:20nm)10質量%、トリエチレングリコールモノブチルエー
テルを5質量%、グリセリンを5質量%、1,2−ヘキサンジオールを1.5質量%、ト
リメチロールプロパンを1.5質量%、シリコン系界面活性剤(BYK−348)1質量
%)、濃度調整用のイオン交換水を残分となる光輝性インクを用意した。
【0044】
(3)中空粒子が分散したインク(中空粒子インク)
中空構造を有する粒子(アクリルスチレン系中空樹脂、製品名:SX8782(D)、
JSR株式会社製、平均粒子径:600nm):10質量%、スチレン−アクリル酸共重
合体(BASFジャパン株式会社製、商品名「ジョンクリル62J」):2質量%、1,
2−ヘキサンジオール:5質量%、グリセリン:10質量%、トリエタノールアミン:0
.9質量%、シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BY
K−348」):0.5質量%である組成の中空粒子インク(白色インク)を用意した。
【0045】
(4)酸化チタンが分散したインク(酸化チタンインク)
二酸化チタン粒子(平均粒子径:300nm)(シーアイ化成株式会社製、商品名「N
anoTek(R) Slurry」:10質量%、スチレン−アクリル酸共重合体(B
ASFジャパン株式会社製、商品名「ジョンクリル62J」):2質量%、1,2−ヘキ
サンジオール:5質量%、グリセリン:10質量%、トリエタノールアミン:0.9質量
%、シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−34
8」):0.5質量%である組成の酸化チタンインク(白色インク)を用意した。
【0046】
[2]記録物の製造
(実施例1)
基材シートとして、膨潤層を有するメディア(セイコーエプソン社製、商品名「WXC
PF24R」)を用意し、当該基材シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製
)により、第1のインクとしての中空粒子インクを100%dutyで付与し、下地層を
形成した。
【0047】
その後、形成した下地層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、第2
のインクとしてのシアンインクを100%dutyで付与し、画像層を形成した。
次に、画像層を形成するシアンインク中の液状成分の濃度が5質量%以下になる前に、
画像層をPETフィルム(リンテック社製、商品名「PET50A」)に転写し、記録物
を得た。なお、転写の際に、JOL−DIGITAL−4R230(日本オフィスラミネ
ーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を120℃、圧力を30kg/cm2、
速度を20cm/秒と設定した。
(実施例2〜16)
第1のインクおよび第2のインクとして、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例
1と同様にして記録物を製造した。
【0048】
(比較例1〜5)
下地層を形成せずに、第2のインクとして、表1に示すものを用いた以外は、前記実施
例1と同様にして記録物を製造した。
また、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印刷ドット数」は単位面積当たりの実印刷ドット数であり、「縦解像度」お
よび「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0049】
【表1】

【0050】
[3]画像転写性の評価
各実施例および各比較例の記録物を、下記の基準に従い、画像転写性を評価した。
◎ :転写面は平滑で剥離ムラが見られない
○ :20%以下の剥離ムラが見られる。
△ :20%超の剥離ムラが見られる。
× :全く剥離しない。
これらの結果を表1に合わせて示した。
表1から明らかなように、各実施例の記録物は、転写性に優れていた。また、これに対
して、各比較例では、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0051】
1…インクジェット式プリンタ(プリンタ) 2…フレーム 3…プラテン 4…媒体
送りモーター 5…ガイド部材 6…キャリッジ 7…タイミングベルト 8…キャリッ
ジモーター 9…ヘッド 10…インクカートリッジ P…媒体 11…基材シート
12…下地層 13…画像層 14…記録媒体 100…記録物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層形成用粒子が分散した第1のインクを用いて形成された下地層を有する基材シー
トの前記下地層上に、顔料粒子が分散した第2のインクをインクジェット法により付与し
、画像層を形成する第2のインク付与工程と、
前記下地層上に形成された前記画像層が前記下地層に完全に定着する前に、前記画像層
の少なくとも一部を記録媒体に転写する転写工程と、を有することを特徴とする転写方法

【請求項2】
前記第1のインクは、下地層形成用粒子としての白色粒子が分散したインクである請求
項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記下地層形成用粒子の平均粒子径は、10nm以上1000nm以下である請求項1
又は2に記載の転写方法。
【請求項4】
前記第2のインク中に含まれる前記顔料粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以
下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の転写方法。
【請求項5】
前記転写工程において、前記下地層上に形成された前記画像層を構成する前記第2のイ
ンクの液状成分の濃度が5質量%以下になる前に前記画像層の少なくとも一部を記録媒体
に転写する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の転写方法。
【請求項6】
前記下地層は、前記第1のインクをインクジェット法により前記基材シート上に付与す
ることにより形成されたものである請求項1ないし5のいずれか一項に記載の転写方法。
【請求項7】
前記基材シートは、インク受理層としての膨潤層を有する請求項1ないし6のいずれか
一項に記載の転写方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の転写方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記第1のインクで形成された画像層とを備えたことを特徴とする記
録物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206358(P2012−206358A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73553(P2011−73553)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】