説明

転写材冷却装置、及び画像形成装置

【課題】転写材から放熱部までの熱移送経路において低熱抵抗を実現できる転写材冷却装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写材冷却装置においては、定着装置8から搬送方向Dに並置したベルト冷却ローラ13、14に良好な熱伝導性を有する無端状ベルト部材16を張架し、定着装置8で加熱された転写材をベルトローラ13、14間に張架された無端状ベルト部材16に接触させて冷却し、さらに、転写材で加熱された無端状ベルト部材16をベルト冷却ローラ13、14で冷却するようにしたので、転写材の温度を迅速かつ効果的に低減することが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材上のトナー像を加熱して定着する定着手段を備える画像形成装置に使用する転写材冷却装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、ファクシミリ、複写装置等の電子写真式画像形成装置は、画像情報に基づいて、紙やOHPシート等の転写材に文字、記号、写真画像等の画像を記録するものである。このような画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式が普通紙に高精細な画像を高速で記録することができる点から広く使用されている。近年、画像形成装置の高速化・カラー化によって、高速出力機においては、転写材の移動速度が大きくなるため、冷却手段による冷却が不十分になる。また、カラー機においては、4個等複数の現像装置が必要になり、その結果として転写材上のトナー量が多くなるため、転写材上にトナー像を定着するためには定着装置においてより大きな熱量が必要となってしまう。このため、定着装置による定着処理後に転写材の冷却手段を設けたとしても、この冷却手段による冷却が追いつかない状態になってしまうという問題があった。
【0003】
このように、定着装置を通過した直後の転写材が充分冷却されずに排紙されると、排紙トレー上で転写材同士が張り付いてしまう所謂ブロッキングが生じたり、また、転写材が熱を持ったまま両面ユニットに搬送されると、その経路において周囲の温度を上昇させてしまう問題を招く。特に、現像装置などトナーが存在する個所では、トナーの溶融・固着などが起こり、機器の信頼性・画質品質などに悪影響を及ぼす。従来、転写材を冷却する方法としては、転写材の搬送経路で気流により転写材を冷却するもの(例えば、特許文献1参照)や、ヒートパイプを組み込んだヒートパイプローラで直接転写材を冷却する方法(例えば、特許文献2参照)があった。しかし、特許文献1記載のものでは、充分な冷却性能を確保するために転写材と気流との熱抵抗を小さくしなければならない。そのためには、気流の速度を上げるか転写材と気流が接する面積を大きくする必要がある。また、空気の熱容量が小さいために流量も大きくしなければならない。このため、現実的なダクトスペースやファンで適切な空気の流量とすることは難しかった。
【0004】
また、特許文献2記載のものでは、転写材とヒートパイプの接触面積および接触圧力が限られるためその部分で熱抵抗が大きくなってしまう。さらにヒートパイプローラと放熱フィンの接続部分(通常かしめ加工や溶接)で熱抵抗が大きいために充分な冷却性能が得られない。ところで、より効率の高い冷却方法として液冷方式が挙げられる。液冷方式は温度上昇箇所に流路を形成し、または流路を形成した受熱部を密着あるいは近接させて、流路に温度上昇箇所よりも低温の冷却液を供給することで温度上昇箇所から熱を奪うものである。一般に冷却液は水を主成分とし、凍結温度を下げるためにプロピレングリコールやエチレングリコールなどを添加したり、金属の構成部品の錆を防ぐために防錆剤(例えば、リン酸塩系物質:リン酸カリ塩、無機カリ塩等)を添加したりして使用する。
【0005】
一般的な液冷装置の構成を図9に示す。液冷装置は、管路24を介して温度上昇部20A、20Bに密着している受熱部20Aa、20Ba、リザーブタンク21、放熱部23、ポンプ22が接続される構成を備え、管路24内を冷却液がポンプ22で循環して流れるようになっている。受熱部20Aa、20Baにおいて温められた冷却液を放熱部23で冷却することで所定量の冷却液を循環させて冷却を行うことが可能となる。放熱部23は、良熱伝導部材に形成された流路と、この流路と接続される良熱伝導部材によるフィンからなり、流路及びフィンを冷却ファンを用いて強制対流熱伝達により冷却することで流路内を流れる冷却液の温度を低下させるようになっている。冷却液を水とすると、定積熱容量が空気の3000倍以上であり、少ない流量で大きな熱量を移送できるので、強制空冷に比べ効率のよい冷却が可能である。また、ヒートパイプローラによる方法では放熱箇所の熱抵抗が大きくなってしまうのに対し、液冷では放熱部23(ラジエータ)まで冷却液を満たすことができるから、放熱部23における熱抵抗を小さくすることができる。従って、前述の特許文献1や特許文献2の強制空冷法やヒートパイプ法等に比べて優れた冷却能力を有する。上記の液冷システムを用いて定着装置を通過後の転写材を冷却する転写材冷却装置を使用する方法も提案されている。(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のものでは、中空ローラ内に冷却液を収納した冷却ローラを使用し、冷却液をポンプで放熱部及び冷却ローラ内でポンプによって循環させ、冷却ローラと対向ローラとの間に定着後の転写材を挟圧しながら転写材を搬送すると共に、転写材を冷却するようになっている。しかしながら、転写材と冷却ローラとの接触面積が小さいために熱抵抗が大きく、この液冷システムを用いたとしてもなお冷却性能が充分ではない。
また、特許文献2記載のものでは、ポンプで放熱部を通って循環される冷却液を内蔵する冷却部とローラとの間にフィルム状無端ベルトを張架させて冷却部と搬送ローラとを対向させ、この冷却部と搬送ローラとの間に転写材とフィルム状無端ベルトを挟持して転写材を所定方向に搬送すると共に、冷却部で転写材の熱を吸熱して転写材を冷却することが記載されている。この特許文献2記載のものでは、フィルム状無端ベルトと転写材との接触部分を大きくすることで転写材とフィルム状無端ベルトとの熱抵抗が小さくできる。しかし、フィルム状無端ベルトと冷却部とを摺動させるため、その部分の摺動抵抗を小さくする必要があり、フィルム状無端ベルトと冷却部との接触面積を小さくするか摺動抵抗の小さい材質とする必要があり、フィルム状無端ベルトと冷却部との熱抵抗を小さくすることが困難である。したがって全熱移送経路にわたって低熱抵抗にはならず充分は冷却性能が得られない。本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、転写材から放熱部までの熱移送経路において低熱抵抗を実現できる転写材冷却装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、転写材上のトナー像を加熱して定着する定着手段を通過した転写材を冷却する転写材冷却装置であって、前記定着手段を通過した前記転写材を搬送するベルト部材と、当該ベルト部材と外周で接触し、内部に冷却液の流路を有して当該冷却液に前記ベルト部材の熱を移動させるベルト冷却手段と、当該冷却液の熱を放熱する放熱部と、前記冷却液を循環させるポンプと、前記ベルト冷却手段、放熱部及びポンプを連結して前記冷却液を還流させる管路と、を備え、前記ベルト冷却手段は、転写材搬送方向に沿って前記流路を複数有し、前記流路内を流れる冷却液の方向が転写材搬送方向と交差する方向であって、隣り合う流路を流れる冷却液の方向が互いに異なることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の転写材冷却装置において、隣り合う前記流路間を連結する連結流路を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2記載の転写材冷却装置において、前記連結流路は、前記ベルト部材の外側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項2または3記載の転写材冷却装置において、冷却液は、前記連結流路を介して転写材搬送方向下流側の流路から上流側の流路に流れることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、転写材上にトナー像を形成する画像形成手段と、当該転写材上に形成されたトナー像を加熱して当該転写材上に定着させる定着手段と、当該定着手段から搬送された転写材を冷却する転写材冷却装置と、を備えた画像形成装置において、前記転写材冷却装置は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の転写材冷却装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写材から放熱部までの熱移送経路において低熱抵抗を実現できる転写材冷却装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明による実施例1の転写材冷却装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2のG方向から見た加圧ローラと案内手段を省略した平面模式図である。
【図4】本発明による実施例1で使用される無端状ベルト部材の断面図である。
【図5】本発明による実施例1で使用される放熱部の斜視図である。
【図6】本発明による実施例2の転写材冷却装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明による参考例の転写材冷却装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】本発明による実施例3の転写材冷却装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】従来の冷却装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真式画像形成装置としてのモノクロ複写機の概略構成を示す図である。本実施形態のモノクロ複写機においては、画像読取装置7で複写すべき原稿を光学的に読み込み、原稿の画像情報を電気信号に変換し、電気信号に変換された画像情報に応じて光書込み装置5から光を照射して画像形成ユニット1のドラム状感光体2上に静電潜像を書き込むようになっている。画像形成ユニット1では、感光体2の周辺に、帯電装置3、現像装置4、クリーニング装置6及び図示しない除電装置が配置されている。帯電装置3は、帯電ローラを採用した接触帯電方式であり、感光体2に接触して電圧を印加することにより、感光体2の表面を一様に帯電する。この帯電装置としては、非接触のスコロトロン帯電等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。現像装置4は、現像剤中のトナーを感光体2上の静電潜像に付着させ、トナー像を形成させる。クリーニング装置6は、感光体2上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置6としては、先端が感光体2に押し当てられるように構成されたブレードを用いることができる。除電装置は、ランプで構成されており、光を照射して感光体2の表面電位を初期化する。
【0015】
この画像形成ユニット1では、矢印A方向に回転する感光体1の表面を帯電装置3で一様に帯電し、このようにして帯電された感光体1の表面に、上述のような画像情報に応じた光を光書込み装置から照射して静電潜像を形成する。続いて、このようにして形成された感光体1上の静電潜像に対して、現像装置4からトナーを供給してトナー像化して現像する。このようにして感光体1上に形成されたトナー像は、転写装置11によってバイアス電圧を印加されて給紙ユニット12から搬送経路S1を経由して搬送された紙、OHP等の転写材Pに転写される。転写材P上にトナー像を転写した後に感光体1上に残存するトナーは、クリーニング装置6によって除去され、感光体1上に残存する電荷が除電装置で除去される。このように、感光体1が1回転する毎にトナー像が感光体1上に形成される。
【0016】
トナー像が転写された転写材Pは、搬送経路S2で矢印方向に搬送され、定着装置8の定着ローラ8a及び加圧ローラ8bで加熱、加圧され、転写材P上のトナー像を定着させる。この後、転写材Pの片面のみに記録する場合は、搬送経路S3を経て排紙トレー10に排出される。また、転写材Pの両面に記録する場合には、搬送経路S4を経由して両面ユニット25において転写材Pの表裏を反転し再び搬送経路S1に搬送し、再度上記の工程を行う。なお、本実施形態においては、現像装置4として黒トナーを使用したモノクロ複写機について例示したが、現像装置として、イエロー、シアン、マゼンタ、黒等のカラートナーをそれぞれ収納した複数の現像装置を使用して、カラー画像を形成する画像形成装置であっても良い。この場合に、搬送経路S2に沿って、それぞれの色の画像を形成する複数の画像形成ユニット1を並置してカラー画像を形成するものであっても良い。
この実施形態においては、高速印刷出力を行うために、定着装置8によってトナー像が定着された転写材Pは、後述する定着装置8の下流に配設された転写材冷却装置9で冷却されて、搬送経路S3又はS4に搬送される。
【0017】
本発明による転写材冷却装置9においては、後述するように、転写材Pから放熱部までの熱移送経路において低熱抵抗を実現できるようにしている。即ち、転写材Pの熱を伝熱する無端状ベルト部材と転写材Pとの接触面積を大きくするために、定着装置8から搬送経路S2の搬送方向に少なくとも2個のローラを配設し、当該少なくとも2個のローラに無端状ベルト部材を張架する。そして、少なくとも2個のローラ間に張架された無端状ベルト部材の部位で定着装置8を通過した転写材Pを接触させて当該転写材Pの熱を無端状ベルト部材で吸熱して冷却するようにしている。さらに、このようにして吸熱した無端状ベルト部材を前記搬送方向に移送させて転写材Pを当該搬送方向に搬送させると共に、転写材Pによって加熱された無端状ベルト部材をベルト冷却ローラに接触にさせて冷却するようにしている。さらに、冷却された無端状ベルト部材は、再び定着装置8を通過して加熱された転写材Pに接触して当該転写材Pを冷却するようにしている。
【0018】
次に、本発明による転写材冷却装置9について、実施例に基づいて説明する。
【0019】
[実施例1]図2は、本発明による実施例1の転写材冷却装置9の概略構成を示す断面図である。図3は、図2の上方G方向から見た場合の転写材冷却装置9の平面模式図である。本実施例の転写材冷却装置9においては、矢印B方向に回転する定着ローラ8aと矢印C方向に回転する加圧ローラ8bとで転写材Pを加熱して搬送する定着装置8の下流側に、無端状ベルト部材16がベルト冷却ローラ13、14及びテンションローラ15に張架された状態で配置されている。また、ベルト冷却ローラ13、14は、図3に示すように、軸受部13a1、13a2及び14a1、14a2で回転自在に支持され、ベルト冷却ローラ14の回転部14bには、ギヤ14cが取り付けられており、ギヤ14cと噛合する駆動モータMのギヤと連結されている。従って、ベルト冷却ローラ14の回転部14bは、駆動モータMの回転駆動によって回転され、ベルト冷却ローラ14の回転部14bの回転駆動と共にこの回転部14bの外周に張架された無端状ベルト部材16が矢印D方向に移送される。この無端状ベルト部材16の移送に伴いベルト冷却ローラ13の回転部13bが従動して回転する。
【0020】
アルミニウム等の良熱伝導性金属で形成されたベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bは、円筒状に形成されており、これらの回転部13b、14bの軸方向に延びた中空部分が冷却液の流れる流路13d、14dを形成している。そして、図3に示すように、流路13dの一端が軸受部13a1を介して放熱部23のラジエータ23aの排出口と管路となるチューブ24eで接続され、流路13dの他端は、軸受部13a2を介してチューブ24aで軸受部14a2を介して流路14dの一端と接続されている。さらに、流路14dの他端は、軸受部14a1を介してチューブ24bで冷却液を還流させるポンプ22の流入口に接続されている。また、ポンプ22の排出口には、チューブ24cで冷却液を貯留するリザーブタンク21の流入口に接続され、リザーブタンク21の排出口とチューブ24dでラジエータ23aの流入口と接続されている。従って、ベルト冷却ローラ13、14の流路13d、14dを流れて転写材Pによって加熱された無端状ベルト部材16から伝熱して加熱された冷却液は、ポンプ22の作動によって、リザーブタンク21を経由してラジエータ23aに流れ、ラジエータ23aが冷却ファン23bで冷却されて再びベルト冷却ローラ13、14の流路13d、14dに還流される。なお、ベルト冷却ローラ13、14の流路13d、14dの両端面は、回転ジョイントと接続していて、ベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bが回転してもチューブ24a、24b、24eと接続することが可能となっている。
【0021】
この場合、ベルト冷却ローラ13、14の流路13d、14d内を流れる冷却液の液流F2、F4は、チューブ24aで軸受部13a2と軸受部14a2と接続させて互いに逆方向となるようになっている。従って、冷却液の流れ方向による無端状ベルト部材16の冷却作用が偏ることなくほぼ均一に冷却することが可能となる。なお、F1、F2は、チューブ24c及び24a内の冷却液の液流方向を示す。また、駆動ベルト冷却ローラ14の表面を弾性体とし、駆動ベルト冷却ローラ14と無端状ベルト部材16を介して対向する位置に加圧ローラ17を配置して、無端状ベルト部材16を介して駆動ベルト冷却ローラ14を加圧することで駆動ベルト冷却ローラ14表面が加圧ローラ17の形状に倣うように変形させることもできる。ベルト冷却ローラ13、14及びテンションローラ15等のローラ部材は、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた材質が望ましい。アルミニウム製のローラ部材表面に熱伝導性に優れた弾性体層を形成することも可能である。
【0022】
本実施例における無端状ベルト部材16は、図4に示すように、カーボンブラック等の熱伝導性フィラーを分散させた耐熱性ポリイミド層16a上にアルミニウム金属箔層16bを形成した2層構造のベルトが使用され、アルミニウム金属箔層16bは転写材Pと接触し、ポリイミド層16aはベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bの外周と接触して転写材Pの熱をベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bに伝熱可能となっている。従って、ポリイミド層16aの柔軟性によって、無端状ベルト部材16がベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bの外周と密着して、無端状ベルト部材16を冷却液によって効果的に冷却すると共に、無端状ベルト部材16を適切に移送することが可能となる。本発明で使用される無端状ベルト部材16は、本実施例の材質、構造のものに限らず、転写材Pの熱をベルト冷却ローラ13、14の回転部13b、14bに伝熱可能な良好な熱伝導性を有するものであれば十分であり、銅等の他の金属や金属フィラー等の熱伝導性フィラーを混入した耐熱性樹脂からなる単層或いは複数層の無端状ベルトも使用可能である。例えば、耐熱性を改善するために、耐熱性樹脂層上にシリコーン樹脂層を付加したものも使用可能である。
【0023】
本実施例においては、放熱部23として、例えば図5に示す構造のものを使用することができる。放熱部23は、冷却液を冷却するラジエータ23aとラジエータ23aを空気流で熱を奪う冷却ファン23bを備えている。ラジエータ23aは扁平な流路23cの周辺にコルゲートフィン23dがロウ付けされたもので、ラジエータ23aの流入口23a1から流入した冷却液は、コルゲートフィン23dに冷却ファン23bによる気流(矢印E)を作用させることによって排出口23a2から排出される際に、気流で熱が奪われて効率の良い熱交換が行われて冷却される。
【0024】
また、本実施例においては、転写材Pの搬送方向Dに沿った2個のベルト冷却ローラ13、14間の無端状ベルト部材16と転写材Pとを接触させることで転写材Pの無端状ベルト部材16の接触面積を大きくすることが容易になるから、熱抵抗を小さくすることが可能となる。転写材Pから無端状ベルト部材16への熱移動が良好に行われるように、無端状ベルト部材16に対して、ベルト冷却ローラ13、14の反対側から転写材Pを全幅(ベルト冷却ローラの軸方向)に亘って押圧する加圧ローラ17及び転写材Pを搬送方向Dに沿って搬送案内する案内手段18を設けている。この案内手段18としては、転写材Pに静電気を印加したり、空気を無端状ベルト16に向かって転写材Pに吹き付けたりして、転写材Pを無端状ベルト部材16に対して転写材Pの全面が適切に押圧保持されるようにすることが望ましい。さらに、無端状ベルト部材16とベルト冷却ローラ13、14とでニップを形成しながら回転可能かつ高効率な冷却が可能な冷却手段を構成している。ベルト冷却ローラ13、14と無端状ベルト部材16とのニップとは、ベルト冷却ローラ13、14と無端状ベルト部材16の接触開始点から剥離開始点までの間の部分のことを示す。無端状ベルト部材16とベルト冷却ローラ13、14との間の熱抵抗はニップ幅およびニップ圧力が大きいほど小さくなる。ニップ幅を大きくするため、無端状ベルト部材16をベルト冷却ローラ13、14に所定の角度だけ巻きつける方法がとられる。
【0025】
定着装置8を通過した転写材Pは、加圧ローラ17とベルト冷却ローラ14の間を通過し、分離爪19の位置まで案内部材18により無端状ベルト部材16と接触しながら移動し、分離爪19により無端状ベルト部材16から剥離される。この間、転写材Pは無端状ベルト部材16により冷却される。本実施例では、定着装置8を通過した直後の転写材温度は100〜105℃であったのに対し、無端状ベルト部材16から剥離した直後の転写材温度は約45℃まで低下している。以上のように、本実施例による転写材冷却装置においては、定着装置8から搬送方向Dに沿って並置したベルト冷却ローラ13、14に良好な熱伝導性を有する無端状ベルト部材16を張架し、定着装置8で加熱された転写材Pをベルトローラ13、14間に張架された無端状ベルト部材16に接触させて冷却し、さらに、転写材Pで加熱された無端状ベルト部材16をベルト冷却ローラ13、14で冷却するようにしたので、転写材Pの温度を迅速かつ効果的に低減することが可能となっている。
【0026】
また、本実施例による転写材冷却装置として、前記加圧ローラ17及び案内装置18に代えて、もう1組の無端状ベルト部材16、放熱部23、ポンプ22、管路24からなる転写材冷却装置を使用し、転写材冷却装置同士を対向して配置し、転写材Pの両面を冷却することもできる。なお、本実施例による転写材冷却装置においては、無端状ベルト部材16を搬送方向で張架するローラとして、2個のベルト冷却ローラ13、14を使用したが、必ずしも2個のベルト冷却ローラを使用せず、1個のベルト冷却ローラ13又は14を使用し、残りのローラはベルト冷却ローラでない単なる張架ローラであっても良い。さらに、無端状ベルト部材16を搬送方向で張架するローラとして上記実施例のように、2個の張架ローラに限らず、3個以上することもできる。この場合、これらの張架ローラは、全てベルト冷却ローラであっても良いし、単なる張架ローラであっても良い。なお、これらの張架ローラの全てが単なる張架ローラを使用する場合には、後述する実施例3で示すように、ベルト冷却ローラを無端状ベルト部材と接触する接触ローラとして使用することができる。
【0027】
[実施例2]図6は、本発明による実施例2の転写材冷却装置の概略構成を示す図である。この実施例においては、前述の実施例1の転写材冷却装置とは、案内手段18の構造を変えている。この実施例においては、案内手段18として、転写材Pの搬送方向Dに沿って、ベルト冷却ローラ13と14の間に5個の加圧ローラを設置し、これらの加圧ローラ181〜185によって転写材Pを搬送方向Dに搬送、案内すると共に、転写材Pを無端状ベルト部材16の表面に押圧して、効果的に転写材Pの熱を無端状ベルト部材16に伝達可能としている。このように、複数の加圧ローラ181〜185によって転写材Pを案内搬送する場合には、転写材Pを無端状ベルト部材16に対してより密着した状態で接触することが可能となるので、転写材Pの冷却をより効果的に行うことが可能となる。
【0028】
[参考例]図7は、本発明による参考例の転写材冷却装置の概略構成を示す図である。この参考例においては、前述の実施例1の転写材冷却装置とは、ベルト冷却ローラ26を1個のみを使用し、無端状ベルト部材16の移送手段として、搬送方向Dに沿って金属製の駆動ローラ151、従動ローラ152を配設し、テンションローラ153で張力を付与して、無端状ベルト部材16を張架している点で相違している。そして、テンションローラ153と駆動ローラ151との間にベルト冷却ローラ26の回転部26bの外周に掛けまわして無端状ベルト部材16と接触するようにベルト冷却ローラ26を配設している。
【0029】
この場合、ベルト冷却ローラ26は、無端状ベルト部材16の移送と共に連れ回りしながら、回転部26bの軸方向に形成された内部の中空流路26d内を冷却液が流れて無端状ベルト16を冷却する。また、駆動ローラ151の表面を弾性体とし、ローラ部材と無端状ベルト部材16を介して対向する位置に加圧ローラ17を配置して、無端状ベルト部材16を介して駆動ローラ151を加圧することで駆動ローラ151の表面が加圧ローラ17の形状に倣うように変形させることもできる。駆動ローラ151、従動ローラ152、テンションローラ153、ベルト冷却ローラ26等のローラ部材はアルミニウムなどの熱伝導性に優れた材質が望ましい。アルミニウム製のローラ部材表面に熱伝導性に優れた弾性体層を形成することも可能である。
【0030】
[実施例3]図8は、本発明による実施例3の転写材冷却装置の概略構成を示す図である。この実施例においては、前述の実施例1の転写材冷却装置とは、案内手段18の構造を変えている。本実施例においては、実施例1で使用された加圧ローラ17と案内手段18とに代えて大口径の加圧ローラ186を使用している。定着装置8を通過した転写材Pは、大口径ローラ186と無端状ベルト部材16の間を通過し、分離爪19の位置まで無端状ベルト部材16と接触しながら移動し、分離爪19により無端状ベルト部材16から剥離される。このような大口径の加圧ローラ186を使用することによって、部品点数を削減できる利点がある。
【符号の説明】
【0031】
1 画像形成ユニット、2 感光体、3 帯電装置、4 現像装置、5 光書込み装置、6 クリーニング装置、7 画像読取装置、8 定着装置、8a 定着ローラ、8b 加圧ローラ、9 転写材冷却装置、11 転写装置、13、14、26 ベルト冷却ローラ、13a1、13a2、14a1、14a2 軸受部、13b、14b、26b 回転部、13d、14d、26d 流路、15、153 テンションローラ、16 無端状ベルト部材、17 加圧ローラ、18 案内手段、19 分離爪、21 リザーブタンク、22 ポンプ、23 放熱部、23a ラジエータ、23b 冷却ファン、24a、24b、24c、24d、24e チューブ(管路)、151 駆動ローラ、152 従動ローラ、181〜185 加圧ローラ、186 大口径加圧ローラ、D 搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2005−227454公報
【特許文献2】特開2003−241623公報
【特許文献3】特開2005−298109公報
【特許文献4】特開2005−349627公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材上のトナー像を加熱して定着する定着手段を通過した転写材を冷却する転写材冷却装置であって、
前記定着手段を通過した前記転写材を搬送するベルト部材と、
当該ベルト部材と外周で接触し、内部に冷却液の流路を有して当該冷却液に前記ベルト部材の熱を移動させるベルト冷却手段と、
当該冷却液の熱を放熱する放熱部と、
前記冷却液を循環させるポンプと、
前記ベルト冷却手段、放熱部及びポンプを連結して前記冷却液を還流させる管路と、
を備え、
前記ベルト冷却手段は、転写材搬送方向に沿って前記流路を複数有し、
前記流路内を流れる冷却液の方向が転写材搬送方向と交差する方向であって、隣り合う流路を流れる冷却液の方向が互いに異なる
ことを特徴とする転写材冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の転写材冷却装置において、
隣り合う前記流路間を連結する連結流路を有することを特徴とする転写材冷却装置。
【請求項3】
請求項2記載の転写材冷却装置において、
前記連結流路は、前記ベルト部材の外側に配置されていることを特徴とする転写材冷却装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の転写材冷却装置において、
冷却液は、前記連結流路を介して転写材搬送方向下流側の流路から上流側の流路に流れることを特徴とする転写材冷却装置。
【請求項5】
転写材上にトナー像を形成する画像形成手段と、当該転写材上に形成されたトナー像を加熱して当該転写材上に定着させる定着手段と、当該定着手段から搬送された転写材を冷却する転写材冷却装置と、を備えた画像形成装置において、前記転写材冷却装置は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の転写材冷却装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29844(P2013−29844A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195825(P2012−195825)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2008−11695(P2008−11695)の分割
【原出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】