説明

転写装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動を抑制し、トナー転写効率の変動を抑制することのできる転写装置を提供する。
【解決手段】一次転写ローラ12a〜12cは中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置と、離間させる位置との間で変位され、中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置における感光体7a〜7cと一次転写ローラ12a〜12cとを結ぶ中心間距離が、感光体7a〜7cの半径と一次転写ローラ12a〜12cの半径との和よりも大きく設定され、一次転写ローラ12a〜12cを支承する可動部材18a〜18cに設けた突き当て部25が、感光体7a〜7cに対して位置関係が定められた被突き当て部材4A〜4Cの被突き当て面26に突き当てられ、一次転写ローラ12a〜12cの位置ずれのうち、中間転写ベルト11の張架方向に対して直交する方向の位置ずれを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の感光体の配列方向に張架されて周回される中間転写ベルトと、感光体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写させるための一次転写ローラとを備えた転写装置及びこれを備えた画像形成装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置には、複数個の感光体の配列方向に張架されて周回される中間転写ベルトと、その感光体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写させるための一次転写ローラとを備えた転写装置を有する構成のものが知られている。
【0003】
その一次転写ローラは中間転写ベルトを感光体に接触させる位置と中間転写ベルトを感光体から離間させる位置との間で離反・接近される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、転写装置には、中間転写ベルトを感光体に接触させる位置における感光体の中心軸と一次転写ローラの中心軸とを結ぶ中心間距離が感光体の半径と一次転写ローラの半径との和よりも大きく設定されているものもある。この種の転写装置はいわゆるオフセットタイプの転写装置といわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このオフセットタイプの転写装置では、一次転写ローラが中間転写ベルトを感光体に接触させる位置と中間転写ベルトを感光体から離間させる位置との間で変位する構造となっているため、感光体に接触する中間転写ベルトの接触部分から一次転写ローラに接触する中間転写ベルトの接触部分までの中間転写ベルトの非接触間距離が、一次転写ローラの変位の都度、変動することがある。
【0006】
その結果、感光体から一次転写ローラまでの通電抵抗が変化し、トナー転写効率が変動するという不都合がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動を抑制し、ひいては、トナー転写効率の変動を抑制することのできる転写装置及びこれを用いたコンパクトな構成の画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の転写装置は、複数個の感光体の配列方向に張架されて周回される中間転写ベルトと、前記感光体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写させるための一次転写ローラとを備え、前記一次転写ローラは前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体から離間させる位置との間で変位され、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置における前記感光体の中心軸と前記一次転写ローラの中心軸とを結ぶ中心間距離が前記感光体の半径と前記一次転写ローラの半径との和よりも大きく設定されているものにおいて、
前記一次転写ローラは可動部材に回転可能に支承され、該可動部材には前記一次転写ローラの位置を規定する突き当て部が設けられ、該突き当て部は、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させた位置において前記感光体に対して位置関係が定められた被突き当て部材に突き当てられ、該被突き当て部材は、前記一次転写ローラの位置ずれのうち、前記突き当て部が突き当たりかつ前記中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向の位置ずれを規制する被突き当て面を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の転写装置は、前記被突き当て面が前記中間転写ベルトの張架方向に対して平行な平面であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の転写装置は、前記被突き当て部材が前記感光体を収容するケースの一部により構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の転写装置は、前記被突き当て部材が前記感光体の軸受け部材の一部により構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の転写装置は、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体から離間させる位置とが、前記中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向に存在し、前記可動部材は、前記一次転写ローラを両位置の間で往復させる構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の転写装置は、前記可動部材が、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体ドラムから離反させる位置との間で弧を描かせて前記一次転写ローラを往復させる構成であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の転写装置は、前記突き当て部が円弧形状であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の転写装置は、前記可動部材が回動軸を中心に回動されるアームを有し、前記一次転写ローラは前記突き当て部と前記回動軸との間にあることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の転写装置は、前記中間転写ベルトが前記感光体の下方に位置し、前記一次転写ローラが前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置において、前記突き当て部が前記感光体に接触する中間転写ベルトの上方に向かって突出して位置していることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の画像形成装置は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の転写装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、請求項2に記載の発明によれば、簡単な構造で一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動を抑制し、ひいては、トナー転写効率の変動を抑制することができる。
【0019】
請求項3、請求項4に記載の発明によれば、感光体に対して直接的に位置関係が定められている感光体のケース又は軸受けの一部を用いて、一次転写ローラの位置ずれのうち、中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向の位置ずれを規制する構造となっているので、一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動をより一層小さくできる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、可動部材が中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向に一次転写ローラを往復させる構造なので、一次転写ローラの往復量を小さくでき、薄型化、コンパクト化を図ることができる。また、迅速に中間転写ベルトを感光体に対して離間接触させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、可動部材が弧を描くようにして一次転写ローラを往復させる構造なので、画像形成装置から転写装置を中間転写ベルトの張架方向に引き抜く構造とした場合、張架方向に引き抜く際に何らかの加減で中間転写ベルトにより力が一次転写ローラに加わったとしても、一次転写ローラが小さな力で退避するので、感光体に無理な力が加わるのを防止でき、画像形成装置から転写装置を引き抜く際に感光体に傷が生じるのを低減できる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、突き当て部を円弧形状に形成したので、被突き当て面に突き当て部を線接触させることができ、一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動を更により一層小さくできる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、可動部材の突き当て部を感光体から極力離間させて設けることができ、また、中間転写ベルトを感光体に接触させる位置と中間転写ベルトを感光体から離間させる位置との間で一次転写ローラを往復変位させる場合に、一次転写ローラの往復変位量に較べて突き当て部の往復変位量を大きくとることができることになり、従って、被突き当て面と中間転写ベルト間との距離を確保することができ、感光体及び中間転写ベルトの傷つき要因を減少させることができる。更に、一次転写ローラの往復変位に起因する中間転写ベルトの非接触間距離の変動を、一次転写ローラと同じ位置に突き当て部を設けた場合に較べて小さくできる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の効果に加えて、特に、中間転写ベルトが被突き当て部材によって傷つけられるのを回避することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜請求項9に記載の転写装置を備えているので、安定した画像品質を提供でき、コンパクト化、小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる転写装置を備えた画像形成装置の概要を示す図である。
【図2】本発明に係わる転写装置の中間転写ベルトの部分を拡大して示す説明図であって、中間転写ベルトを各感光体に接触させた状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる転写装置の中間転写ベルトの部分を拡大して示す説明図であって、ブラック用の感光体を除いて中間転写ベルトを各感光体から離間させた状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係わる一次転写ローラと感光体と中間転写ベルトとの関係を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係わる一次転写ローラと突き当て部と感光体と非突き当て面との関係を示す部分拡大図である。
【図6】本発明の作用を説明するための部分拡大図である。
【図7】本発明の変形例を示す説明図であって、被突き当て面を軸受け部材の下部に形成した状態を示す図である。
【図8】本発明の変形例を示す説明図であって、一次転写ローラを上下方向に垂直に駆動する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
以下に、本発明に係わる転写装置及びこれを用いた画像形成装置の発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る転写装置を備えた画像形成装置の概要を示す説明図であって、この図1において、1はタンデム形式の画像形成装置本体である。この画像形成装置本体1の下部には給紙トレイ2が設けられ、この画像形成装置本体1の上部には露光装置3が設けられている。
【0028】
その給紙トレイ2と露光装置3との間には感光体ケース4が設けられ、感光体ケース4の下方にはユニットタイプの転写装置5が設けられている。
【0029】
給紙トレイ2には転写紙の束がセットされ、露光装置3には後述する各感光体へ照明光を配分する露光光学系6が設けられている。なお、その図1において、露光光源は図示が略されている。
【0030】
感光体ケース4には、円筒形状の感光体7a〜7dが所定間隔を開けてこの順に配列されている。ここでは、感光体7aはイエロー用であり、感光体7bはシアン用であり、感光体7cはマゼンタ用であり、感光体7dはブラック用である。感光体ケース4には各感光体7a〜7dに対応してイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各プロセスカートリッジ8a〜8dがセットされる。
【0031】
各感光体7a〜7dは露光装置3により露光されて静電潜像が形成され、各感光体7a〜7dには、各プロセスカートリッジ8a〜8dからトナーが供給されて付着され、各感光体7a〜7dにトナー像(可視像)が形成される。
【0032】
転写装置5には、駆動ローラ9とテンションローラ10とが感光体7a〜7dの配列方向に間隔を開けて設けられている。その駆動ローラ9とテンションローラ10とには感光体7a〜7dの配列方向に張架されて周回される中間転写ベルト11が掛け渡されて設けられている。その転写装置5にはその中間転写ベルト11に接触する一次転写ローラ12a〜12dが各感光体7a〜7dに対応させて設けられている。この一次転写ローラ12a〜12dの構造及び作用については後述する。
【0033】
その画像形成装置本体1の下部には、給紙トレイ2に臨むようにして給紙ローラ13が設けられている。転写紙Sはその給紙ローラ13によって給紙トレイ2から引き出される。
【0034】
画像形成装置本体1には、その転写紙Sの給送方向先方に一対のレジストローラ14が設けられている。一対のレジストローラ14による転写紙Sの給送方向先方には、転写紙Sを間に挟んで中間転写ベルト11に対向する二次転写ローラ15が設けられている。
【0035】
一次転写ローラ12a〜12dと感光体7a〜7dとのニップ間には電位差が与えられ、その一次転写ローラ12a〜12dを用いての電位差と加圧力とによって感光体7a〜7dに形成されたトナー像が中間転写ベルト11において転写される。一対のレジストローラ14は転写紙Sの先端とトナー像の先端とが二次転写ローラ15の位置で一致するように調整する。
【0036】
ついで、この中間転写ベルト11に転写されたトナー像は二次転写ローラ15によって転写紙Sに転写される。
【0037】
画像形成装置本体1には、そのトナー像が転写された転写紙Sの給送方向先方に定着装置16が設けられている。転写紙Sに付着したトナーは加圧溶融されて、トナー像が転写紙Sに画像として定着される。
【0038】
ついで、転写紙Sはその給紙ローラ13、一対のレジストローラ14、駆動ローラ9、二次転写ローラ15、定着装置16によって下方から上方に向かって搬送され、一対の排出ローラ17によって画像形成装置本体1の上部の排出部17’に排出される。
【0039】
転写装置5には、図2に拡大して示すように、各感光体7a〜7dに対応させて、可動部材18a〜18dが設けられている。この可動部材18a〜18dは固定板19に揺動可能に支承されている。ここでは、可動部材18a〜18dは可動アーム部材20から構成されている。その可動アーム部材20は、支承アーム20aと駆動アーム20bとから大略構成されている。この可動アーム部材20は回動軸20cを中心に回転可能とされている。各一次転写ローラ12a〜12dはその支承アーム20aに回転可能に設けられている。
【0040】
可動アーム部材20は、図4に示すように、感光体7a〜7dの軸方向(中間転写ベルト11の幅方向)に間隔を開けて一対設けられ、一次転写ローラ12a〜12dはその一対の可動アーム部材20に掛け渡されている。
【0041】
ここでは、イエロー、シアン、マゼンタのカラー用の可動アーム部材20(18a〜18c)は、図5に示すように、例えば、スライド板21によって回転駆動される。この図5には、代表して、感光体7aとこれに対応する可動部材18aとが部分的に拡大して示されている。
【0042】
そのスライド板21は、中間転写ベルト11の張架方向に往復変位可能とされている。イエロー、シアン、マゼンタのカラー用の可動アーム部材20(18a〜18c)の各駆動アーム20bにはそれぞれ係止ピン22が設けられている。スライド板21にはこれに対応する各係止ピン23が設けられている。各係止ピン22と各係止ピン23との間にはそれぞれ付勢スプリング24が設けられている。
【0043】
そのカラー用の一次転写ローラ12a〜12cは中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置と中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置との間で変位される構成とされている。
【0044】
ここでは、転写装置5は、中間転写ベルト11を感光体7a〜7dに接触させる位置における感光体7a〜7dの中心軸O1と一次転写ローラ12a〜12cの中心軸O2とを結ぶ中心間距離が感光体7a〜7cの半径R1と一次転写ローラ12a〜12cの半径R2との和よりも大きく設定されたいわゆるオフセットタイプのものとされている。
【0045】
イエロー、シアン、マゼンタのカラー用の可動アーム部材20(18a〜18c)は、スライド板21が図5に示すように付勢スプリング24の付勢力に抗して矢印A1 方向に可動されると、回動軸20cを中心にして矢印B1方向に回動されて、一次転写ローラ12a〜12cは、図2に示す中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置から図3に示す中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置に弧を描きつつ変位され、イエロー、シアン、マゼンタのカラー用の可動アーム部材20(18a〜18c)は、スライド板21が図5に示すように矢印A2方向に可動されると、付勢スプリング24の付勢力により回動軸20cを中心にして矢印B2方向に回動されて、一次転写ローラ12a〜12cは、図3に示す中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置から図2に示す中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置に弧を描きつつ変位される。
【0046】
イエロー、シアン、マゼンタのカラー用の可動アーム部材20(18a〜18c)の各支承アーム20aには、一次転写ローラ12a〜12cの位置を規定する突き当て部25が設けられている。
【0047】
感光体ケース4の下部は、ここでは、中間転写ベルト11を各感光体7a〜7cに接触させた位置において感光体7a〜7cに対して位置関係が定められた被突き当て部材4A〜4Cとして機能し、被突き当て部材4A〜4Cは、中間転写ベルト11を各感光体7a〜7cに接触させた位置において突き当て部25が突き当たる被突き当て面26を有する。
【0048】
この被突き当て面26は中間転写ベルト11の張架方向に対して平行な平面から構成されている。その突き当て部25は図5に拡大して示すように円弧形状とされている。各一次転写ローラ12a〜12cは突き当て部25と回動軸20cとの間に位置し、突き当て部25は、各一次転写ローラ12a〜12cが中間転写ベルト11を各感光体7a〜7cに接触させる位置において、各感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の上方に向かって突出して位置されている。
【0049】
その各被突き当て部材4A〜4Cは、各一次転写ローラ12a〜12cの位置ずれのうち、突き当て部25が突き当たりかつ中間転写ベルト11の張架方向に対して直交する方向の位置ずれを規制する役割を有する。
【0050】
なお、一次転写ローラ12dはここでは中間転写ベルト11を挟んで感光体7dに接触する位置で回動可能に保持されている。この一次転写ローラ12dはブラックのみのモノクロ印刷の時に使用する。
【0051】
このように構成すると、各一次転写ローラ12a〜12cの往復変位に起因する中間転写ベルト11の非接触間距離の変動を抑制し、ひいては、トナー転写効率の変動を抑制することができる。
【0052】
図6は各一次転写ローラ12a〜12cの往復変位に起因する中間転写ベルト11の接触間距離の変動を説明するための模式図である。
【0053】
すなわち、図6に示すように、各一次転写ローラ12a〜12cの往復変位に起因して各一次転写ローラ12a〜12cが、上下方向(中間転写ベルト11の張架方向に対して直交する方向)に範囲F1でばらつくと、感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの中間転写ベルト11の非接触間距離がM1からM2のばらつき範囲で変動する。
【0054】
また、各一次転写ローラ12a〜12cの往復変位に起因して各一次転写ローラ12a〜12cが、左右方向(中間転写ベルト11の張架方向)に範囲F2でばらつくと、感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの中間転写ベルト11の非接触間距離がM1からM3のばらつき範囲で変動する。
【0055】
その図6において、実線で示す一次転写ローラ12a〜12cは、ばらつき範囲F1、F2の基準位置を示し、破線で示す一次転写ローラ12a〜12cは、ばらつき範囲F1の最上限位置でかつばらつき範囲F2の基準位置にある状態を示し、一点鎖線で示す一次転写ローラ12a〜12cは、ばらつき範囲F1の基準位置でかつばらつき範囲F2の最右端位置にある状態を示している。
【0056】
また、非接触間距離M1は、一次転写ローラ12a〜12cが基準位置にあるときの感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの非接触部分の長さを意味し、非接触間距離M2は、一次転写ローラ12a〜12cがばらつき範囲F1の最上限位置でかつばらつき範囲F2の基準位置にあるときの感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの非接触部分の長さを意味し、非接触間距離M3は、一次転写ローラ12a〜12cがばらつき範囲F1の基準位置でかつばらつき範囲F2の最右端位置にあるときの感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの非接触部分の長さを意味する。
【0057】
上下方向の中間転写ベルト11の非接触間距離の変動Δ1(Δ1=M1−M2)は左右方向の中間転写ベルト11の接触間距離の変動Δ2(Δ2=M3−M1)よりも大きい。これは、図6に示すように、一次転写ローラ12a〜12cが上下方向に位置ずれを起こすと、中間転写ベルト11が感光体7a〜7cの外周面に巻き付くことになるからである。この中間転写ベルト11の巻き付け部分に符号11’を示す。
【0058】
感光体7a〜7cには、所定の電位が予め印加され、露光に応じてトナーが付着され、感光体7a〜7cと一次転写ローラ12a〜12cとの間に、電位差Vが生じるが、感光体7a〜7cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g1から一次転写ローラ12a〜12cに接触する中間転写ベルト11の接触部分g2までの非接触部分の長さが変化すると、その非接触部分の長さに応じて中間転写ベルト11の長さに対応する抵抗分が変動することになって、ひいては電位差Vが変動するので、中間転写ベルト11への転写効率が変動することになる。
【0059】
そこで、各一次転写ローラ12a〜12cの往復変位に起因する各一次転写ローラ12a〜12cの上下方向(中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向)の位置ずれを規制することにすると、中間転写ベルト11の接触間距離の変動を抑制できる。
(変形例1)
実施例では、被突き当て部材4A〜4Cとして感光体ケース4の下部を用いることにしたが、図7に示すように、感光体7a〜7cの軸受け部材27の下部27aを用いるようにしても良い。なお、その図7において、28は各感光体7a〜7cの中心軸、28’はギヤであり、ここでは、各感光体7a〜7cは中心軸28に対して回転される。
(変形例2)
ここでは、可動部材18a〜18cは、図8に示すように、例えば、上方に向かってスプリング29により付勢された上下方向板30を有する。この上下方向板30には突き当て部25を一体に有する軸受け板31が設けられている。この軸受け板31には、一次転写ローラ12a〜12cが回転可能に支承されている。
【0060】
この変形例2では、中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置と中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置とは、中間転写ベルト11の張架方向に対して直交する方向(垂直方向)に存在し、上下方向板30を下降させると、一次転写ローラ12a〜12cは、中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置から中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置に変位され、上下方向板30を上昇させると、一次転写ローラ12a〜12cは、中間転写ベルト11を感光体7a〜7cから離間させる位置から中間転写ベルト11を感光体7a〜7cに接触させる位置に変位される。
【符号の説明】
【0061】
4A〜4C…被突き当て部材
7a〜7d…感光体
11…中間転写ベルト
12a〜12c…一次転写ローラ
18a〜18c…可動部材
25…突き当て部
26…被突き当て面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2003−186313号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の感光体の配列方向に張架されて周回される中間転写ベルトと、前記感光体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写させるための一次転写ローラとを備え、前記一次転写ローラは前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体から離間させる位置との間で変位され、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置における前記感光体の中心軸と前記一次転写ローラの中心軸とを結ぶ中心間距離が前記感光体の半径と前記一次転写ローラの半径との和よりも大きく設定されている転写装置であって、
前記一次転写ローラは可動部材に回転可能に支承され、該可動部材には前記一次転写ローラの位置を規定する突き当て部が設けられ、
該突き当て部は、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させた位置において前記感光体に対して位置関係が定められた被突き当て部材に突き当てられ、該被突き当て部材は、前記一次転写ローラの位置ずれのうち、前記突き当て部が突き当たりかつ前記中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向の位置ずれを規制する被突き当て面を有していることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記被突き当て面が前記中間転写ベルトの張架方向に対して平行な平面であることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記被突き当て部材が前記感光体を収容するケースの一部により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記被突き当て部材が前記感光体の軸受け部材の一部により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項5】
前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体から離間させる位置とは、前記中間転写ベルトの張架方向に対して直交する方向に存在し、前記可動部材は、前記一次転写ローラを両位置の間で往復させる構成であることを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項6】
前記可動部材は、前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置と前記中間転写ベルトを前記感光体ドラムから離反させる位置との間で弧を描かせて前記一次転写ローラを往復させる構成であることを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項7】
前記突き当て部が円弧形状であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の転写装置。
【請求項8】
前記可動部材が回動軸を中心に回動されるアームを有し、前記一次転写ローラは前記突き当て部と前記回動軸との間にあることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の転写装置。
【請求項9】
前記中間転写ベルトは前記感光体の下方に位置し、前記一次転写ローラが前記中間転写ベルトを前記感光体に接触させる位置において、前記突き当て部は前記感光体に接触する中間転写ベルトの上方に向かって突出して位置していることを特徴とする請求項8に記載の転写装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の転写装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−123413(P2012−123413A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31426(P2012−31426)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2006−20988(P2006−20988)の分割
【原出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】