説明

転写装置及び転写方法

【課題】従来よりも的確な転写をする転写装置を提供する。
【解決手段】ローラーヘッド11によりモールド21を被成型品60に線状に押圧して、この押圧している部位に紫外線を照射することにより、モールド21に形成された微細な転写パターンを被成型品60に転写させる転写装置1において、被成型品60を保持するステージ側装置30と、ステージ側装置30を移動させることによりローラーヘッド11が転動してモールド21が押圧している押圧部位61を移動させるベース側装置40と、押圧部位61からステージ側装置30の移動方向に紫外線を照射する紫外線照射装置50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写する転写装置及び転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体露光装置や電子電描画装置などでシリコン基板等に微細な転写パターンを形成して型(以下、モールド)を作製し、被成型品にモールドを所定の圧力で押圧して型に形成された転写パターンを転写するために、例えば、特開2007−19451号公報(特許文献1)に記載された転写装置が提案されている。この転写装置は、被成型品をヒータにより加熱してモールドを押圧し、その後、被成型品を冷却させることにより被成型品に転写パターンを転写することができるものである。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された転写装置の構成図を示す図である。図9に示すように、転写装置500は、被成型品502を固定するステージ504と、モールド506を保持するモールド保持部508a、508b、509a、509bと、モールド506をモールド保持部508、509ごと昇降させるモールド昇降機構510と、モールド506を被成型品502に押し付けるヘッド512とから略構成されている。
【0004】
このように構成された転写装置500は、真空吸着又はメカクランプによって被成型品502をステージ504に固定すると、モールド昇降機構510がモールド保持部508、509を昇降させてモールド506と接触させてヘッド512がモールド506を押し付ける。さらに、ヘッド512の内部に備えられたヒータ514が被成型品502を加熱し、ステージ504の内部に備えられたヒータ514によりモールド506が加熱される。
【0005】
そして、ステージ504が左方向520に移動すると、ヘッド512はモールド506を押し付けながらモールド506上をスライドすることとなる。このスライドによりモールド506が押し付けられた部分は、ヒータ516によって熱せられる。さらに、ヘッド512がスライドすると、モールド506が押し付けられた部分上にはヒータ516がなくなるため、被成型品502は離型が可能な温度に冷やされる。そして、ヘッド512が被成型品502全体をスライドし終えると、ヘッド512及びモールド保持部509が上昇してモールド506を被成型品502から引き離すことにより、モールド506に形成された微細な転写パターンを被成型品502に転写する。
【0006】
また、従来、ガラス等の基板に紫外線硬化樹脂を設けておいて、ローラーを用いて基板と紫外線硬化樹脂とをモールドで押圧するとともに、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて転写をする方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−19451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した紫外線硬化樹脂を用いた転写では、紫外線がもれることにより、押圧前に紫外線硬化樹脂が硬化し、的確な転写がなされないおそれがあるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、紫外線硬化樹脂を用いた転写装置及び転写方法において、従来よりも的確な転写をすることができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、ローラーヘッドによりモールドを被成型品に線状に押圧して、この押圧している部位に紫外線を照射することにより、該モールドに形成された微細な転写パターンを該被成型品に転写させる転写装置において、前記被成型品を保持するステージ側装置と、前記ステージ側装置を移動させることにより前記ローラーヘッドが転動して前記モールドが押圧している押圧部位を移動させるベース側装置と、前記押圧部位から前記ステージ側装置の移動方向に紫外線を照射する紫外線照射装置とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の転写装置において、前記紫外線照射装置は、前記紫外線を集光して前記押圧部位に照射し、該押圧部位を硬化反応が開始した状態に半硬化する第1紫外線照射装置と、前記半硬化した半硬化部位に前記紫外線を照射し、該半硬化部位を硬化する第2紫外線照射装置とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、モールドを被成型品に線状に押圧して、この押圧している部位を移動するとともに前記押圧部位に紫外線を照射することにより、前記モールドに形成された微細な転写パターンを該被成型品に転写させる転写方法において、前記押圧部位に線状の第1の紫外線を照射して前記被成型品を半硬化させる第1の硬化段階と、前記第1の硬化段階で半硬化した被成型品に、第2の紫外線を照射して前記被成型品を完全に硬化させる第2の硬化段階とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紫外線硬化樹脂を用いた転写装置及び転写方法において、従来よりも的確な転写をすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る転写装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る転写装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る転写装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る転写装置の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る転写装置の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る転写装置の概略図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る転写装置の概略図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る転写装置の概略図である。
【図9】従来における転写装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。はじめに、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の断面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の動作を説明するための図である。
【0016】
はじめに、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る転写装置の構成について説明する。
【0017】
図1から図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る転写装置1は、ローラーヘッド11を転動可能に軸支したローラー側装置10と、モールド21を昇降可能に保持したモールド側装置20と、被成型品60を保持するステージ側装置30と、ステージ側装置30を相対的に移動させるベース側装置40と、被成型品60(所定の粘度を有し、紫外線で硬化する樹脂)に紫外線を照射する紫外線照射装置50から略構成されている。
【0018】
図1に示すように、ローラー側装置10は、モールド21を被成型品60に線状に押圧するローラーヘッド11と、ベース側装置40に固定されたローラー側柱12から構成されている。ローラーヘッド11は、電気モータ(図示省略)の駆動によってモールド21上で昇降が可能に構成されている。従って、モールド21及び被成型品60を交換する際にはローラーヘッド11を上昇し、モールド21を被成型品60に押圧する際にはローラーヘッド11を下降するように制御することができる。
【0019】
また、ローラーヘッド11は、ステージ側装置30を相対的に移動させることにより転動し、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位61を移動させる。例えば、図2に示すように、ステージ側装置30が矢印A方向に移動した場合、ローラーヘッド11は矢印B方向に回転することにより、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位(図3(b)等の紙面に直交する方向に直線的に延びている押圧部位)61を移動させる。
【0020】
図3に示すように、モールド側装置20は、微細な転写パターンが形成されたシート状のモールド21と、モールド21に連結されたスプリング22a、22bと、スプリング22a、22bが連結されたモールド側柱23a、23bと、モールド側柱23a、23bに貫通したプーラー24a、24bから構成されている。微細な転写パターンは、例えば、多数の微細な凹凸で形成されており、その高さやピッチが可視光線の波長程度か若しくは可視光線の波長よりもわずかに大きいか、わずかに小さいパターンとなっている。
【0021】
モールド21は、半導体露光装置や電子電描画装置などで被成型品60を押圧する面に微細な転写パターンが形成されたニッケル電鋳で構成されている。また、モールド21は、スプリング22a、22bを介してモールド側柱23a、23bに連結されているため、転写する際にモールド21にかかる力をスプリング22a、22bの弾性力で吸収することができる。
【0022】
モールド側柱23a、23bとプーラー24a、24bは、モールド21の左右に2組設けられ、モールド21の一端及び他端をスプリング22a、22bを介して固定することによりモールド21を保持する。また、プーラー24a、24bは、ステッピングモータ(図示省略)の駆動によって昇降が可能に構成されている。プーラー24a、24bの昇降により、モールド21は、被成型品60上で昇降が可能に保持されている。従って、被成型品60を交換する際にはモールド21を上昇し、モールド21を被成型品60に接触する際にはモールド21を下降するように制御することができる。
【0023】
さらに、2組のプーラー24a、24bは、同期して昇降することでモールド21を水平に保持することができるが、同期せずに独立して昇降が可能に構成されているため、例えば、24aのみを昇降することでモールド21を斜めに保持することができる。
【0024】
図1及び図2に示すように、ステージ側装置30は、被成型品60が設けられているガラス基板31を真空吸着等によって保持して紫外線を被成型品60へ透過するガラスステージ32と、ガラス基板31の変形を抑制するバックアップローラー33a、33bから構成されている。
【0025】
図2に示すように、バックアップローラー33a、33bは、ガラスステージ32の裏面側に設けられており、ステージ側装置30が移動するとバックアップローラー33a、33bが転動するように構成されている。バックアップローラー33a、33bは、紫外線照射装置50の左側及び右側にそれぞれ設けられており、例えば、ステージ側装置30が矢印A方向に移動した場合、バックアップローラー33a、33bは矢印C方向に回転することによりガラス基板31の変形を抑制する。
【0026】
図1及び図2に示すように、ベース側装置40は、ステージ側装置30の嵌合部(図示省略)と嵌合するレール41と、レール41を保持するベース板42から構成されている。ベース装置40は、ステージ側装置30をレール41の長手方向に移動可能に構成されている。そして、ステージ側装置30がレール41上を移動することによりローラーヘッド11が転動し、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位61を移動させる。
【0027】
図2に示すように、紫外線照射装置50は、ベース側装置40に固定されている。そして、紫外線照射装置50は、押圧部位61からステージ側装置30の移動方向に紫外線を照射することにより、被成型品(紫外線硬化樹脂)60を硬化する。つまり、紫外線照射装置50は、ステージ側装置30の移動方向とは反対側に紫外線がもれないように(押圧される前の紫外線硬化樹脂には、紫外線がもれて照射されないように)、押圧部位61からすでに押圧された部位に向かって紫外線を照射する。
【0028】
このように、紫外線照射装置50は、押圧部位61からステージ側装置30の移動方向に紫外線を照射することにより被成型品60を硬化するため、モールド21が押圧する前に被成型品60が硬化することがない。従って、従来よりも的確な転写をすることができる。すなわち、紫外線硬化樹脂60が押圧される前に硬化してしまうことによる転写不良の発生を抑制することができる。
【0029】
また、紫外線照射装置50により、モールド21が押圧している押圧部位61からステージ側装置30の移動方向の被成型品60に紫外線を照射して硬化するため、加熱による転写と比較して被成型品60を離型可能な温度まで冷す時間が短縮され、製造における生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間であるタクトタイムが少ない。
【0030】
次に、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る転写装置1の動作について説明する。図3(a)は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の動作開始直後を示す図である。図3(b)は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の押圧動作を示す図である。図3(c)は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の転写動作を示す図である。図3(d)は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の転写動作を示す図である。図3(e)は、本発明の第1実施形態に係る転写装置の動作終了直後を示す図である。
【0031】
図3では、紫外線照射装置50は、押圧部位61に下方から平行線の紫外線を被成型品60に対して垂直に照射する場合について説明する。しかしながら、モールド21が押圧する前の被成型品60が硬化する場合には、すでに押圧された部位(押圧される前の被成型品60が硬化しない部位)に紫外線を照射するように紫外線照射装置50の位置を変更することが可能である。
【0032】
図3(a)に示すように、被成型品60に転写を開始する際、プーラー24a、24bは、ステッピングモータ(図示省略)の駆動により、真空吸着等によってガラス基板31に固定した被成型品60とモールド21が所定の間隔を保つ位置まで下降する。また、ローラーヘッド11も電気モータ(図示省略)の駆動により、モールド21に接触するまで下降する。
【0033】
ローラーヘッド11がモールド21に接触すると、図3(b)に示すように、ローラーヘッド11は、電気モータ(図示省略)の駆動により、モールド21を被成型品60に加重Fで線状に押圧する。また、ローラーヘッド11によりモールド21が被成型品60を押圧すると、ローラーヘッド11の転動方向にあるプーラー24aを上昇する。プーラー24aが所定の位置で停止すると、スプリング22aの弾性力によって、モールド21は被成型品60を押圧した押圧部位61から所定の傾斜角度を保つ位置で保持される。
【0034】
このように、モールド21を押圧部位61から所定の傾斜角度を保つ位置で保持することにより、ローラーヘッド11の転動時にモールド21と被成型品60の間に気泡が入ることがなく、高精度に転写することが可能となる。
【0035】
さらに、図3(b)に示すように、ベース側装置40に固定された紫外線照射装置50は、ローラー11によりモールド21が被成型品60を押圧した押圧部位61に、下方から平行線の紫外線を被成型品60に対して垂直に照射することにより、被成型品60を硬化する。
【0036】
図3(c)に示すように、モールド21を押圧部位61から所定の傾斜角度を保つ位置に保持すると、ステージ側装置30は矢印A方向にレール41上を所定の速度(転写が可能な速度)で移動する。ステージ側装置30が移動すると、ローラーヘッド11が転動し、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位61が徐々に移動する。
【0037】
また、ステージ側装置30は、モールド21が被成型品60を押圧する押圧部位61が常に紫外線照射装置50の上方に位置するように移動する。つまり、ローラーヘッド11の転動による押圧部位61の移動に伴い、押圧部位61に常に紫外線が当たるようにステージ側装置30が移動する。
【0038】
ステージ側装置30が移動すると、図3(d)に示すように、ステージ側装置30の移動方向にあるプーラー24bが徐々に上昇する。プーラー24bが上昇することにより、モールド21が被成型品60を押圧した押圧部位61からステージ側装置30の移動方向のモールド21は、被成型品60から引き離される。つまり、ローラーヘッド11によりモールドが押圧した押圧部位61に紫外線照射装置50が紫外線を照射することにより被成型品60に転写パターンを転写し、プーラー24bは、転写後に離型が実行できる速度で上昇する。プーラー24bが上昇すると、スプリング22bの弾性力によってモールド21と被成型品60が離型する。
【0039】
モールド21が押圧した被成型品60に紫外線を照射し、被成型品60の硬化が終わると、図3(e)に示すように、ローラーヘッド11を電気モータ(図示省略)の駆動により上昇する。また、プーラー24a、24bは、ステッピングモータ(図示省略)の駆動により、モールド21と被成型品60が所定の間隔を保つ位置まで上昇して転写を終了する。
【0040】
このようにして、本発明の第1実施形態に係る転写装置1は、被成型品60を保持するステージ側装置30と、ステージ側装置30を移動させることによりローラーヘッド11が転動してモールド21が押圧している押圧部位61を移動(変更)させるベース側装置40と、押圧部位61からステージ側装置30の移動方向に紫外線を照射する紫外線照射装置50とを有する。
【0041】
そして、本発明の第1実施形態に係る転写装置1によれば、紫外線照射装置50により、モールド21が押圧している押圧部位61からステージ側装置30の移動方向の被成型品60に紫外線を照射するため、紫外線がもれることにより、モールド21が押圧する前に被成型品60が硬化することがない。従って、従来よりも的確な転写を行うことができる。
【0042】
また、紫外線照射装置50により、被成型品60を硬化するため、加熱による転写と比較して被成型品60を離型可能な温度まで冷す時間が短縮され、製造における生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間であるタクトタイムが少ない。
【0043】
さらに、ローラーヘッド11の内部に被成型品60を加熱するヒータ等を備える必要がないため、ローラーヘッド11の荷重によって被成型品60が撓むことがなく均一に押圧することができる。従って、転写後の被成型品60の厚さを均一にすることが可能となる。
【0044】
本発明の第1実施形態では、紫外線照射装置50は、押圧部位61からすでに押圧された部位の下方から、平行線の紫外線を被成型品60に対して垂直に照射する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、被成型品60に対して所定の角度から紫外線を照射することができるように紫外線照射装置50を所定の角度内で傾斜可能に構成してもよい。この場合、紫外線照射装置50をステージ側装置30の移動方向側(すでに押圧された部位)に傾斜して紫外線を照射することにより、まだ、モールド21が押圧していない部位に紫外線がもれることを防ぐことができる。
【0045】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の断面図である。図5は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の動作を説明するための図である。
【0046】
なお、第2実施形態に係る転写装置100は、本発明の第1実施形態に係る転写装置1と略同様の構成等を有するため、同様の構成に関しては、説明を省略するものとする。また、第1実施形態に係る転写装置1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0047】
はじめに、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る転写装置の構成について説明する。
【0048】
図4及び図5に示すように、本発明の第2実施形態に係る転写装置100は、ローラーヘッド11を転動可能に軸支したローラー側装置10と、モールド21を昇降可能に保持したモールド側装置20と、被成型品60を保持するステージ側装置30と、ステージ側装置30を相対的に移動させるベース側装置40と、被成型品60に紫外線を照射する紫外線照射装置150から略構成されている。
【0049】
紫外線照射装置150は、第1紫外線照射装置51aと、第2紫外線照射装置51bから構成されている。第1紫外線照射装置51a及び第2紫外線照射装置51bは、ベース側装置40に固定されている。
【0050】
第1紫外線照射装置51aは、光を集光するレンズ(図示省略)により紫外線を集光する。そして、ステージ側装置30がレール41上を移動することによりローラーヘッド11が転動し、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位61(図5参照)に、下方から紫外線を集光して細い紫外線(図4の左右方向における光線束の幅が極めて狭く、押圧部位61で光線束がほぼ収束している紫外線)を被成型品60に対して垂直に照射する(被成型品60の押圧部位61のたとえばほぼ真下から押圧部位61に照射する)。紫外線が照射された押圧部位61は、硬化反応が開始した状態(製品もしくは半製品としての離型が不可能な状態)に半硬化する。
【0051】
ここで、半硬化とは、硬化は開始されたが硬化途中の状態であり、完全に硬化していない状態である。たとえば、半硬化した被成型品60からモールド21を離しても、しばらくの間(数秒〜数分もしくは数時間)は、半硬化した被成型品60に転写された微細な転写パターン(モールド21に形成されている微細な転写パターンの転写で形成された微細な転写パターン)が、外力を受けない限りその形態を維持するようになっている。
【0052】
第2紫外線照射装置51bは、第1紫外線照射装置51aが紫外線を集光して照射することにより半硬化した半硬化部位62(すでにモールド21が押圧した部位、図5参照)に、下方からたとえば平行光の紫外線を被成型品60に対して垂直に照射して半硬化部位62を離型が可能な状態に完全に硬化する。つまり、第2紫外線照射装置51bが照射する紫外線は、第1紫外線照射装置51aが照射する紫外線よりも相対的に太い光線であり、また、第1紫外線照射装置51aが発生する紫外線よりも、図4で、右側にもれない紫外線である。
【0053】
このように、第1紫外線照射装置51aは、ローラーヘッド11が転動してモールドが押圧している押圧部位61に対して、紫外線を集光して細い光線で照射して半硬化する。押圧部位61を細い光線で照射することにより、まだモールドが押圧していない部位に紫外線が照射されて半硬化することがないため、高精度に転写することができる。
【0054】
また、第1紫外線照射装置51aにより半硬化した半硬化部位62は、第2紫外線照射装置51bにより硬化する。第1紫外線照射装置51aは細い光線で照射するため、第1紫外線照射装置51aのみでは被成型品60を完全に硬化するには時間がかる。しかしながら、第2紫外線照射装置51bにより、第1紫外線照射装置51aよりも太い光線で半硬化部位62を照射して完全に硬化するため、硬化時間を短縮することにより工程作業時間を少なくすることができる。
【0055】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る転写装置100の動作について説明する。図5(a)は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の動作開始直後を示す図である。図5(b)は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の押圧動作を示す図である。図5(c)は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の転写動作を示す図である。図5(d)は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の転写動作を示す図である。図5(e)は、本発明の第2実施形態に係る転写装置の動作終了直後を示す図である。
【0056】
図5(a)に示すように、被成型品60に転写を開始する際、プーラー24a、24bは、ステッピングモータ(図示省略)の駆動により、真空吸着等によってガラス基板31に固定した被成型品60とモールド21が所定の間隔を保つ位置まで下降する。また、ローラーヘッド11も電気モータ(図示省略)駆動により、モールド21に接触するまで下降する。
【0057】
ローラーヘッド11がモールド21に接触すると、図5(b)に示すように、ローラーヘッド11は、電気モータ(図示省略)の駆動により、モールド21を被成型品60に加重Fで線状に押圧する。また、ローラー11によりモールド21が被成型品60を押圧すると、ローラーヘッド11の転動方向にあるプーラー24aを上昇する。プーラー24aが所定の位置で停止すると、スプリング22aの弾性力によって、モールド21は被成型品60を押圧した押圧部位61から所定の傾斜角度を保つ位置で保持される。
【0058】
さらに、図5(b)に示すように、ベース側装置40に固定された第1紫外線照射装置51aは、ローラーヘッド11によりモールド21が被成型品60を押圧した押圧部位61に紫外線を集光して紫外線を照射することにより、被成型品60を硬化が開始した状態に半硬化する。
【0059】
図5(c)に示すように、モールド21を押圧部位61から所定の傾斜角度を保つ位置に保持すると、ステージ側装置30は矢印A方向にレール41上を所定の速度(転写が可能な速度)で移動する。ステージ側装置30が移動すると、ローラーヘッド11が転動し、モールド21が被成型品60を線状に押圧する押圧部位61が徐々に移動する。
【0060】
また、図5(c)に示すように、ベース側装置40に固定された第2紫外線照射装置51bは、第1紫外線照射装置51aが紫外線を照射することにより半硬化した半硬化部位62に、平行光の紫外線を照射することにより半硬化部位62を完全に硬化する。
【0061】
また、ステージ側装置30は、モールド21が被成型品60を押圧する押圧部位61が常に第1紫外線照射装置51aの上方に位置するように移動する。つまり、ローラーヘッド11の転動による押圧部位61の移動に伴い、押圧部位61に第1紫外線照射装置51aが照射する紫外線が常に当たるようにステージ側装置30が移動する。そして、ステージ装置側装置30の移動に伴い、第1紫外線照射装置51aが紫外線を照射した半硬化部位62が第2紫外線照射装置51bの上方に位置する。
【0062】
ステージ側装置30が移動すると、図5(d)に示すように、ステージ側装置30の移動方向にあるプーラー24bが徐々に上昇する。プーラー24bが上昇することにより、完全に硬化した硬化部位63上のモールド21は、被成型品60から引き離される。つまり、ローラーヘッド11によりモールドが押圧した押圧部位61に第1紫外線照射装置51aが紫外線を照射し、押圧部位61からステージ側装置の移動方向の被成型品60に第2紫外線照射装置51bが紫外線を照射することにより被成型品60に転写パターンを転写し、プーラー24bは、転写後に離型が実行できる速度で上昇する。プーラー24bが上昇すると、スプリング22bの弾性力によってモールド21と被成型品60が離型する。
【0063】
第1紫外線照射装置51aが紫外線を照射することにより半硬化した半硬化部位62に第2紫外線照射装置51bが紫外線を照射し、被成型品60が硬化して転写が終わると、図5(e)に示すように、ローラーヘッド11は電気モータ(図示省略)により上昇する。また、プーラー24a、24bはステッピングモータ(図示省略)によりモールド21と被成型品60が所定の間隔を保つ位置まで上昇して転写を終了する。
【0064】
このように、本発明の第2実施形態に係る転写装置100は、紫外線を集光して押圧部位61に照射し、押圧部位61を硬化反応が開始した状態に半硬化する第1紫外線照射装置51aと、半硬化した半硬化部位62に紫外線を照射し、半硬化部位62を硬化する第2紫外線照射装置51bとを有する。
【0065】
そして、本発明の第2実施形態に係る転写装置100によれば、第1紫外線照射装置51aは、ローラーヘッド11が転動してモールド21が押圧している押圧部位61に対して、紫外線を集光して細い光線で照射して半硬化する。押圧部位61を細い光線で照射することにより、まだモールド21が押圧していない部位に紫外線が照射されて半硬化することがないため、高精度に転写することができる。
【0066】
また、第1紫外線照射装置51aにより半硬化した半硬化部位62は、第2紫外線照射装置51bにより硬化する。第1紫外線照射装置51aは細い光線で照射するため、第1紫外線照射装置51aのみでは被成型品60を完全に硬化するには時間がかる。しかしながら、第2紫外線照射装置51bにより第1紫外線照射装置51aよりも太い光線で半硬化部位62を照射して完全に硬化するため、硬化時間を短縮することにより工程作業時間が少ない。
【0067】
本発明の第2実施形態では、第1紫外線照射装置51a及び第2紫外線照射装置51bはベース側装置40に固定され、押圧部位61及び半硬化部位62の下方から平行線の紫外線を被成型品60に対して垂直に照射する場合について説明したが、これに限定されず、被成型品60に対して所定の角度から紫外線を照射することができるように第1紫外線照射装置51a及び第2紫外線照射装置51bを所定の角度内で傾斜可能に構成してもよい。特に、第1紫外線照射装置51aをステージ側装置30の移動方向側(すでに押圧された部位)に傾斜して所定の角度から紫外線を照射することにより、まだ、モールド21が押圧していない部位に紫外線がもれることを防ぐことができる。
【0068】
次に、図6から図8を参照して、本発明の第3実施形態から第5実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る転写装置の斜視図である。図7は、本発明の第4実施形態に係る転写装置の斜視図である。図8は、本発明の第5実施形態に係る転写装置の斜視図である。
【0069】
なお、本発明の第3実施形態から第5実施形態に係る転写装置は、本発明の第1実施形態に係る転写装置1と略同様の構成等を有するため、同様の構成に関しては、説明を省略するものとする。また、第1実施形態に係る転写装置1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0070】
図6に示すように、本発明の第3実施形態に係る転写装置200は、ローラーヘッド211と、被成型品60(図2参照)が設けられているガラス基板31を保持して紫外線を被成型品60へ透過するガラスステージ32と、被成型品60に紫外線を照射する紫外線照射装置50から略構成されている。
【0071】
ローラーヘッド211は、微細な転写パターンが形成されたニッケル電鋳を密着して巻き付けることにより固定した転写パターン部位222を有している。そして、紫外線照射装置50は、ローラーヘッド211が転動することにより転写パターン部位222が被成型品60(図2参照)を線状に押圧する押圧部位61(図3参照)からすでに押圧された部位に対し、下方から紫外線を被成型品60に照射することにより被成型品60を硬化する。
【0072】
このように、本発明の第3実施形態に係る転写装置200によれば、転写パターンが形成されたニッケル電鋳を密着して巻き付ているため、転写パターン部位222を交換することにより転写パターンを変更することができる。また、ニッケル電鋳を密着して固定することによりニッケル電鋳のゆがみを矯正することができる。
【0073】
また、図7に示すように、本発明の第4実施形態に係る転写装置300は、ローラーヘッド311と、被成型品60(図2参照)を保持するガラス基板31と、ガラス基板31を保持して紫外線を被成型品60へ透過するガラスステージ32と、被成型品60に紫外線を照射する紫外線照射装置50から略構成されている。
【0074】
ローラーヘッド311は、機械加工により微細な転写パターンが形成された転写パターン部位333を有している。そして、紫外線照射装置50は、ローラーヘッド311が転動することにより転写パターン部位333が被成型品60(図2参照)を線状に押圧する押圧部位61(図3参照)からすでに押圧された部位に対し、下方から紫外線を被成型品60に照射することにより被成型品60を硬化する。
【0075】
このように、本発明の第4実施形態に係る転写装置200によれば、ローラーヘッド311は、機械加工により形成された転写パターン部位333を有しているため、転写の精度は機械加工の精度に依存する。従って、転写パターン部位333を高精度に加工することにより、被成型品60に高精度な転写をすることができる。
【0076】
さらに、図8に示すように、本発明の第5実施形態に係る転写装置400は、上述した第1実施形態に示した転写装置1と略同様の構成であり、ローラーヘッド411と、微細な転写パターンが形成されたシート状のモールド21と、被成型品60が設けられているガラス基板31を保持して紫外線を被成型品60へ透過するガラスステージ32と、被成型品60に紫外線を照射する紫外線照射装置50から略構成されている。
【0077】
図8に示す転写装置400は、第3実施形態に示した転写装置200及び第4実施形態に示した転写装置300と比較して、ローラーヘッド411に転写パターン部位222、333(図6及び図7参照)が形成されていないため、ローラーヘッド411の径を小さくすることが可能となる。従って、被成型品60の撓み等による転写精度の低下を抑制することができる。
【0078】
また、図8に示す転写装置400によれば、ローラーヘッド411が転動することにより移動した後のモールド21と被成型品60の接触状態を維持することができるため、ローラーヘッド411によりモールド21を被成型品60に押圧する押圧部位61(図2参照)以外(例えば、すでに押圧された部位)にも紫外線を照射することが可能となる。従って、第5実施形態に示した転写装置400は、第2実施形態に示した転写装置100の第1紫外線照射装置51a及び第2紫外線照射装置51b(図4及び図5参照)を適用することが可能である。
【0079】
以上、本発明の転写装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、紫外線を照射することにより、微細な転写パターンを被成型品に転写させる上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 転写装置
10 ローラー側装置
11 ローラーヘッド
12 ローラー側柱
20 モールド側装置
21 モールド
22 スプリング
23 モールド側柱
24 プーラー
30 ステージ側装置
31 ガラス基板
32 ガラスステージ
40 ベース側装置
41 レール
42 ベース板
50 紫外線照射装置
51a 第1紫外線照射装置
51b 第2紫外線照射装置
60 被成型品
61 押圧部位
62 半硬化部位
63 硬化部位
100 転写装置(第2実施形態)
200 転写装置(第3実施形態)
300 転写装置(第4実施形態)
400 転写装置(第5実施形態)
211 ローラーヘッド(第3実施形態)
222 転写パターン部位(第3実施形態)
311 ローラーヘッド(第4実施形態)
333 転写パターン部位(第4実施形態)
411 ローラーヘッド(第5実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーヘッドによりモールドを被成型品に線状に押圧して、この押圧している部位に紫外線を照射することにより、該モールドに形成された微細な転写パターンを該被成型品に転写させる転写装置において、
前記被成型品を保持するステージ側装置と、
前記ステージ側装置を移動させることにより前記ローラーヘッドが転動して前記モールドが押圧している押圧部位を移動させるベース側装置と、
前記押圧部位から前記ステージ側装置の移動方向に紫外線を照射する紫外線照射装置とを有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記紫外線照射装置は、
前記紫外線を集光して前記押圧部位に照射し、該押圧部位を硬化反応が開始した状態に半硬化する第1紫外線照射装置と、
前記半硬化した半硬化部位に前記紫外線を照射し、該半硬化部位を硬化する第2紫外線照射装置とを有することを特徴とする転写装置。
【請求項3】
モールドを被成型品に線状に押圧して、この押圧している部位を移動するとともに前記押圧部位に紫外線を照射することにより、前記モールドに形成された微細な転写パターンを該被成型品に転写させる転写方法において、
前記押圧部位に線状の第1の紫外線を照射して前記被成型品を半硬化させる第1の硬化段階と、
前記第1の硬化段階で半硬化した被成型品に、第2の紫外線を照射して前記被成型品を完全に硬化させる第2の硬化段階と、
を有することを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183782(P2011−183782A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54527(P2010−54527)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】