転写装置
【課題】薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能な金属薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対し、無電解めっき処理を施す。基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42が選択的に形成される。また、平板ブランケット1を用いてインク2を転写させると共に、転写工程において加圧圧縮により接触を行う。位置合わせが容易となると共に接触の際の圧力が全体として均一化され、金属薄膜42を形成する際の歩留りが向上する。また、インク2中に、金属薄膜42の材料自体ではなく、無電解めっき処理の触媒材料が含まれるようにする。従来と比べ、金属薄膜42の抵抗値が低くなると共に、パターンの微細化が容易となる。
【解決手段】触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対し、無電解めっき処理を施す。基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42が選択的に形成される。また、平板ブランケット1を用いてインク2を転写させると共に、転写工程において加圧圧縮により接触を行う。位置合わせが容易となると共に接触の際の圧力が全体として均一化され、金属薄膜42を形成する際の歩留りが向上する。また、インク2中に、金属薄膜42の材料自体ではなく、無電解めっき処理の触媒材料が含まれるようにする。従来と比べ、金属薄膜42の抵抗値が低くなると共に、パターンの微細化が容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転オフセット印刷法を用いたパターン転写方法および金属薄膜パターン転写方法に適用される転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反転オフセット印刷法を利用した薄膜パターンの形成方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、円柱状のロール上にシリコーン樹脂が形成された円柱状のブランケットと、所望のパターンが形成された凸版とを用いた反転オフセット印刷法によって、基板上に所望の樹脂薄膜パターンを形成するようにものが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、水溶性樹脂(ポリエチレンオキサイド)中に導電性微粒子(平均粒径が50nm以下のもの)を混合したインクを用いて反転オフセット印刷法を行うことにより、基板上に所望の導電性薄膜パターンを形成するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―58921号公報
【特許文献2】特開2006−278845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1では、円柱形状のブランケットを用いて反転オフセット印刷を行っているため、平板である基板への転写の際に基板全体で接触圧力を均一に保つのが困難となり、パターンつぶれが生じてしまうことになる。また、円柱形状のブランケットと平板である基板とを接触させるため、これらの間の位置合わせが容易ではない。よって、薄膜を形成する際の歩留りが低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、この特許文献1では、主にエッチングレジストを用途として基板上に樹脂薄膜を形成していることから、仮に基板上に導電性薄膜(金属薄膜)を形成しようとすると、基板全面に金属薄膜を成膜した後に樹脂インクを印刷すると共に、この樹脂インクを所定のパターンでエッチングして剥離する工程が必要になり、工程数が増えてしまうことになる。
【0008】
一方、上記特許文献2では、インク中に導電性微粒子が混合されているため、そのような導電性微粒子を用いて、基板上に直接的に導電性薄膜を形成することが可能である。また、この特許文献2では、ブランケットの形状についても円柱状には限定されていないことから、平板のブランケットに対しても適用可能であると考えられる。
【0009】
しかしながら、引用文献2では、上記のようにインク中に樹脂(水溶性樹脂)も含まれていることから、形成された導電性薄膜の抵抗値が、導電性微粒子のみからなる薄膜の抵抗値よりも増加してしまうことになる。また、インクが導電性微粒子と樹脂との混合物であるため、ブランケット上に塗布されたインクの厚みが大きくなってしまい、パターンの微細化が容易ではない。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能な転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転写装置は、平板ブランケットを固定するための第1のステージと、凸版または基板を固定するための第2のステージと、平板ブランケットの外周部を第1のステージに固定するための固定部とを備え、第1のステージには、圧縮空気を噴射するための空気導入口が設けられているものである。
【0012】
本発明の転写装置では、平板ブランケットを用いて基板上にインクが転写されると共に、転写工程において加圧圧縮により接触がなされているため、凸版または基板とブランケットとの間の位置合わせが容易となると共に、接触の際の圧力が全体として均一化される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転写装置によれば、平板ブランケットを用いてインクを転写させると共に転写工程において加圧圧縮により接触を行うようにしたので、位置合わせを容易とすると共に接触の際の圧力を全体として均一化させ、薄膜を形成する際の歩留りを向上させることができる。よって、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る金属薄膜の形成方法の主要な工程の一部を表す断面図である。
【図2】図1に続く工程を表す断面図である。
【図3】図2に続く工程を表す断面図である。
【図4】平板ブランケットと凸版との接触方法の一例を表す断面図である。
【図5】平板ブランケットと凸版との接触方法の他の例を表す断面図である。
【図6】平板ブランケットと凸版との分離方法の一例を表す断面図である。
【図7】平板ブランケットと凸版との分離方法の他の例を表す断面図である。
【図8】平板ブランケットと基板との接触方法の一例を表す断面図である。
【図9】平板ブランケットと基板との接触方法の他の例を表す断面図である。
【図10】平板ブランケットと基板とを接触させる際のアライメント方法の一例を表す断面図および平面図である。
【図11】アライメントマークを施した平板ブランケットの一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係る金属薄膜の形成方法について説明するための断面図である。
【0016】
まず、図1(A)に示したように、平板ブランケット1上にインク2を塗布する。この平板ブランケット1は、ガラス板や金属板などからなる硬質の基材11と、この基材11上のPDMS(ポリジメチルシロキサン)層12とにより構成し、PDMS層12上にインクが塗布されるようにする。このように硬質の基材11上に柔軟なPDMS層を設けることにより、平面方向の精度を高め、転写圧力を低減することができるからである。なお、基材11の厚みは10〜500μm程度とし、PDMS層12の厚みは1〜5000μmとするのが望ましい。
【0017】
インク2としては、後述する無電解めっき処理の際の触媒となる触媒材料を含み、かつ印刷方法(反転オフセット印刷方法)に適したものを用いる。具体的には、インク2の溶質としては、触媒材料である金属化合物または金属微粒子(金属ナノ粒子)を含むものを用い、インク2の溶媒としては、詳細は後述するが、その沸点が100℃以下の非極性溶媒であり、かつPDMS層12上での接触角が10度以下のものが望ましい。このような溶質と溶媒とを混合することにより、インク2とする。なお、インク2の濃度は、0.01〜30重量%であることが望ましいが、これに限るものではない。
【0018】
金属化合物としては、金(Au)、銀(Ag)またはパラジウム(Pd)などの金属と、分子式CnHmCOOHにより表記される直鎖脂肪酸、分子式CH3(CH2)nNH2により表記される直鎖アルキルアミン、分子式CH3(CH2)nSHにより表記される直鎖アルキルチオールまたは分子式CH3(CH2)nCNにより表記される直鎖アルキルニトリルなどのうちの少なくとも1つ以上の有機化合物とを結合したものを用いることができる。なお、これらの分子式において、nは、5以上40以下の整数であることが望ましく、mは、m=2n+1であることが望ましい。
【0019】
金属ナノ粒子としては、Au、AgまたはPdなどの金属の微粒子(平均粒径が、0.1〜20nm以下であることが望ましい。)を用いることができ、その表面が有機化合物の保護剤により覆われたものを用いるのが望ましい。金属ナノ粒子を安定的に保存することができるからである。そのような保護剤としては、分子式CH3(CH2)nNH2により表記される直鎖アルキルアミン、分子式CH3(CH2)nSHにより表記される直鎖アルキルチオールまたは分子式CH3(CH2)nCNにより表記される直鎖アルキルニトリルなどのうちの少なくとも1つ以上の有機化合物とを結合したものを用いることができる。なお、これらの分子式において、nは、5以上40以下の整数であることが望ましく、mは、m=2n+1であることが望ましい。
【0020】
インク2の溶媒としては、前述したように、その沸点が100℃以下の非極性溶媒であり、かつPDMS層12上での接触角が10度以下のものが望ましい。沸点が100℃以下の溶媒とすることにより、インク2の塗布中または塗布後に溶媒のほとんどを蒸発させ、平板ブランケット1上に、無電解めっき処理の触媒となる溶質のみを残すことができるからである。このような溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタンなどの直鎖アルカン類の炭化水素、シクロペンタンもしくはシクロヘキサンなどのシクロアルカン類、またはエチルメチルエーテル、ジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフランなどエーテル類などが挙げられる。
【0021】
なお、平板ブランケット1上にインク2を塗布する方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、CAPコーティング法、スリットコーティング法、LB成膜法またはインクジェット法などが好適である。
【0022】
続いて、図1(B)に示したように、平板ブランケット1と、所定のパターンからなる凸部31を有する凸版3とを互いに向かい合わせて接触させることにより、平板ブランケット1上のインク2のうち、凸部31に対応する部分を選択的に凸版3上に転写させる。
【0023】
凸版3は、石英、ガラス、樹脂または金属などからなり、フォトリソグラフィー法およびエッチング法などを用いることにより、0.1〜10μm程度の深さの凹部32が形成されたものを用いることが望ましい。なお、後述するように、凸版3に形成するパターンとしては、金属薄膜(金属配線)として形成する領域が凹部32となるようにする。
【0024】
平板ブランケット1と凸版3とを接触させる際には、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。圧縮気体加圧法とは、接触させる対象である平板ブランケット1と凸版3とをそれぞれ向かい合わせて近接しつつ所定のステージ上に固定すると共に、平板ブランケット1および凸版3のうちの一方の背面側から圧縮気体を噴射させて押し出すことにより、平板ブランケット1と凸版3とを接触させる方法である。なお、このとき、押し出される対象物と圧縮気体の供給源であるステージとの間で形成される空間は、密封されるようになっている(下記図4(A),(B)中の矢印P1で示した空間や、下記図5中の矢印P4で示した空間)。
【0025】
具体的には、例えば図4(A)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51、Oリング53A,53Bおよび固定フレーム54A,54Bにより機械的に固定すると共に、凸版3を上部ステージ52により固定し、下部ステージ51の中心付近に設けられた開口部510(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて平板ブランケット1を押し出すようにする。なお、例えば図4(B)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51Aに設けられた開口部511A,511Bにより、図中の符号P2,P3で示したように真空吸着させて固定するようにしてもよい。また、例えば図5に示したように、凸版3を下部ステージ51上に固定すると共に平板ブランケット1の外周部を固定フレーム54C,54Dにより固定し、さらに膨張可能であり柔軟性を有する伸縮性フィルム55を、Oリング53A,53B、固定フレーム54A,54Bおよび上部ステージ52Aにより固定し、上部ステージ52Aの中心付近に設けられた開口部520(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて伸縮性フィルム55および平板ブランケット1を押し出すようにしてもよい。この場合、平板ブランケット1の外周部を機械的に固定するだけでよい。なお、これらの場合において、平板ブランケット1と凸版3とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、平板ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインク2の転写が可能となる。なお、これら図4および図5を含めた図4〜図11においては、インク2,2A,2Bの図示は省略している。
【0026】
続いて、図1(C)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と凸版3とを分離させる。これにより、平板ブランケット1上には、凸版3によって転写されなかった領域にインクが残留し(図中のインク2Aの部分)、後述する金属薄膜(金属配線)のパターンとなる一方、凸版3の凸部31上には、インクが転写される(図中のインク2Bの部分)。なお、平板ブランケット1と凸版3とを分離させる方法としては、例えば図6に示したように、空間P1内を、開口部510を介して真空排気させる(図中の矢印P5参照)ことにより真空化し、平板ブランケット1を下部ステージ51上に吸着させて分離させる方法や、例えば図7に示したように、平板ブランケット1の外周部を持ち上げる(図中の矢印P61,P62参照)ことにより、機械的に分離させる方法などが挙げられる。
【0027】
続いて、図2(A)に示したように、インク2Aが転写された平板ブランケット1と、金属薄膜の形成基板(基板40)とを互いに向かい合わせて接触させることにより、平板ブランケット1上に残留するインク2Aを、基板40上に転写させる。
【0028】
基板40としては、例えば、シリコン、合成石英、ガラス、金属、樹脂または樹脂フィルムなどの材料からなる基板を用いる。また、この基板40上には密着層41を設けておき、この密着層41上にインク2Aが転写されるようにするのが望ましい。インク2Aの固着が容易となるからである。このような密着層41の材料としては、例えば、アミノ系シラン化合物、メルカプト系シラン化合物、フェニル系シラン化合物、アルキル系シラン化合物などの化合物のうち少なくとも1つ以上を含んだものが挙げられる。なお、密着層41は、スピンコート法、浸漬法または熱CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法などを用いて、基板40上に成膜するようにすればよい。
【0029】
平板ブランケット1と基板40とを接触させる際には、前述したように、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。具体的には、例えば図8(A)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51、Oリング53A,53Bおよび固定フレーム54A,54Bにより機械的に固定すると共に、基板40を上部ステージ52により固定し、下部ステージ51の中心付近に設けられた開口部510(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて平板ブランケット1を押し出すようにする。なお、例えば図8(B)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51Aに設けられた開口部511A,511Bにより、図中の符号P2,P3で示したように真空吸着させて固定するようにしてもよい。また、例えば図9に示したように、基板40を下部ステージ51上に固定すると共に平板ブランケット1の外周部を固定フレーム54C,54Dにより固定し、さらに伸縮性フィルム55を、Oリング53A,53B、固定フレーム54A,54Bおよび上部ステージ52Aにより固定し、上部ステージ52Aの中心付近に設けられた開口部520(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて伸縮性フィルム55および平板ブランケット1を押し出すようにしてもよい。この場合、平板ブランケット1の外周部を機械的に固定するだけでよい。なお、これらの場合において、平板ブランケット1と基板40とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、平板ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインク2Aの転写が可能となる。
【0030】
また、基板40上に、所定のアライメントマークを設けておき、平板ブランケット1と基板40とを接触させてインク2Aを転写させる際には、そのようなアライメントマークを利用して基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせ(アライメント)を行うようにするのが望ましい。位置合わせの精度を容易に向上させることができるからである。
【0031】
具体的には、例えば図10(A)に示したように、平板ブランケット1上のインク2Aによるアライメントマーク(図示せず)と、予め基板40上に形成されたアライメントマーク(図示せず)とをそれぞれ、アライメント用顕微鏡6(61,62)を用いて比較し、X,Y,θ座標(図10(B)参照)を調整することによって位置合わせを行う。よっ
て、例えば図10(B)に示したように、転写装置には、上下のステージ51,52のいずれか一方に、X,Y,θ座標の制御機構が具備されているようにする。また、平板ブラ
ンケット1と基板40との距離が大きい(例えば、30μm以上)場合、アライメント用顕微鏡6の焦点深度が不足し、アライメントマーク同士の重ね合せが難しくなるため、そのような場合には、画像記録機能を付帯した多焦点アライメント機構を具備するようにするのが望ましい。
【0032】
また、インク2Aの厚みが小さいため、アライメント用顕微鏡6によるインク2Aのアライメントマークの観察が困難な場合には、例えば図11(A)や図11(B)に示した平板ブランケット1A,1Bのように、アライメントマーク13A,13BをPDMS膜12上に予め設けたり、アライメントマーク13C,13Dを基材11上に予め設けたりするようにするのが望ましい。なお、PDMS膜12は透明であるため、図11(B)の場合においても、アライメントマーク13C,13Dを認識することが可能である。これらの場合、第1のアライメントとして、平板ブランケット1と凸版3との間のアライメントを行ってインク転写を行い、平板ブランケット1上のアライメントマークとインクパターンとの位置関係を決定した後、第2のアライメントとして、平板ブランケット1と基板40との間でアライメントを行ってインク転写を行うようにすればよい。
【0033】
続いて、図2(B)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と基板40とを分離させる。これにより、平板ブランケット1上のインク2Aは全て基板40(密着層41)上に転写され、後述する金属薄膜(金属配線)のパターンとなる一方、平板ブランケット1上には、インクが残留しない。なお、平板ブランケット1と凸版3とを分離させる方法としては、前述したように、空間P1内を、開口部510を介して真空排気させることにより真空化し、平板ブランケット1を下部ステージ51上に吸着させて分離させる方法や、平板ブランケット1の外周部を持ち上げることにより、機械的に分離させる方法などが挙げられる。
【0034】
続いて、図2(C)に示したように、インク2Aの溶媒や金属ナノ粒子の保護膜に含まれる有機物を除去することにより、無電解めっきの触媒材料(具体的には、インク2Aの溶質)を活性化させ、これにより後述する無電解めっき処理を促進させるようにする。これは、インク2Aが有機物を多く含む場合、そのままでは無電解めっき処理に対して不活性な場合が多いため、そのような有機物を除去して、触媒活性とするものである。このような活性化処理としては、例えば、図中に示したようにインク2Aに対して紫外線L0を照射するUV(紫外線)オゾン処理や、オゾン水洗浄処理、または焼成処理などにより行う。UVオゾン処理やオゾン水洗浄処理の場合、比較的低温下(例えば、0℃〜200℃程度)で行うことが可能である。また、焼成処理の場合、例えば200℃〜400℃程度の比較的高温下で行うようにする。なお、このような焼成処理の場合において、インク2Aの溶質(触媒材料)としてPdを含むときには、Pd自体の酸化を避けるため、窒素(N)やアルゴン(Ar)などの脱酸素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0035】
続いて、インク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理を施すことにより、図3に示したように、基板40上に金属薄膜42を析出させる。具体的には、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42を選択的に形成させる。無電解めっき処理の際には、基板40を所望の無電解めっき液に浸漬させることにより、インク2Aのある領域にのみ、金属を選択析出させるようにする。このような無電解めっき処理では、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、AuまたはAgなど、様々な金属の析出が可能である。
【0036】
最後に、基板40上に析出された金属薄膜42に対し、100〜1000℃程度のアニール処理を行う。これにより、金属薄膜42の低抵抗化、成膜時の応力緩和、密着性の改善、金属の酸化防止などが可能となる。この際、金属薄膜42の酸化を避けるため、真空、NまたはArなどの脱酸素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0037】
以上により、本実施の形態の金属薄膜(金属薄膜42)が製造される。
【0038】
このようにして本実施の形態の金属薄膜(金属薄膜42)の形成方法では、触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理が施されることにより、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42が選択的に形成される。
【0039】
ここで、平板ブランケット1を用いて基板40上にインク2Aが転写されると共に、転写工程(図1(B)および図2(A)で示した工程)において加圧圧縮により接触がなされている(圧縮気体加圧法が用いられている)ため、凸版3または基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせが容易となると共に、接触の際の圧力が全体として均一化される。
【0040】
また、インク2中には、金属薄膜42の材料自体ではなく、無電解めっき処理の触媒材料が含まれているため、インク中に金属薄膜の材料自体と樹脂とが含まれている従来と比べ、形成された金属薄膜42の抵抗値が低くなると共に、平板ブランケット1上に塗布されたインク2の厚みが小さくなってパターンの微細化が容易となる。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理を施すようにしたので、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42を選択的に形成することができる。また、平板ブランケット1を用いてインク2を転写させると共に転写工程において加圧圧縮により接触を行うようにしたので、位置合わせを容易とすると共に接触の際の圧力を全体として均一化させ、金属薄膜42を形成する際の歩留りを向上させることができる。また、インク2中に、金属薄膜42の材料自体ではなく無電解めっき処理の触媒材料を含ませるようにしたので、従来と比べ、金属薄膜42の抵抗値が低くなると共にパターンの微細化が容易となる。よって、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能となる。
【0042】
また、インク2Aの転写工程(図2(A)で示した工程)とめっき工程(図3で示した工程)との間に、触媒材料を活性化させる工程を含むようにしたので、無電解めっき処理を促進させ、金属薄膜42の形成も促進させることが可能となる。
【0043】
また、基板40および平板ブランケット1の上にそれぞれ、所定のアライメントマークを予め設けておき、インク2Aの転写工程において、これらのアライメントマークを利用して基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせを行うようにした場合には、位置合わせ精度を容易に向上させることができ、さらに歩留まりを向上させることが可能となる。
【実施例】
【0044】
さらに、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0045】
(実施例1)
図3に示した構造の金属薄膜を、以下のようにして作製した。概要としては、無電解めっき処理の触媒材料となる金属化合物であるパラジウム(Pd)微粒子コロイドをインク2に含むようにすると共に、このインク2を反転オフセット印刷法により基板40上に印刷した後、無電解Cuめっき処理によってインク上にCu薄膜を選択的に析出させ、Cu配線を形成した。
【0046】
インク2は、無電解めっき処理の触媒材料となる金属化合物として、Pd微粒子コロイド(田中貴金属工業社製:疎水性PdDA(デシルアミン)コロイドトルエン溶液)を含むようにし、このPd微粒子コロイドを以下の手順で処理したのちに利用した。まず、疎水性PdDAコロイドトルエン溶液を1.0重量%濃度に調整し、これにn−ヘキサデカンチオールを2.0重量%濃度となるように加え、80℃で12時間、過熱攪拌する。そののち、これを常温に冷却し、PdDAコロイドトルエン溶液に対して20倍程度の量のメタノールを加え、Pd微粒子を沈殿させる。その後、この沈殿物と溶液とを1μmのフィルターにて濾過すると共に、このフィルター上に堆積した沈殿物を回収する。この沈殿物は、上記処理により、Pd微粒子の保護剤の一部が、デシルアミンからヘキサデカンチオールに置換される。置換率は、デシルアミンを100とすると、10〜30%である。この処理により、Pd微粒子を、処理前には溶解度の低かったヘキサンやペンタンに溶解できるようになり、1.0重量%濃度になるように、n−ペンタン溶液中に分散させて利用した。
【0047】
平板ブランケット1としては、基材11であるガラス(厚み0.2mm:AF45、ショット社製)上にPDMS(ポリジメチルシロキサン)層12を成膜(スピンコート法)したものを用いるようにし、これを65℃で12時間焼成して利用した。PDMS層12の膜厚は、60μmであった。PDMSとしては、SYLGARD184(東レ・ダウコーニング社製)をトルエンで希釈し、80重量%の濃度にしたものを利用した。
【0048】
まず、インク2の塗布工程(図1(A))において、インク2を平板ブランケット2上にスピンコート法により成膜した。3000rpmおよび20sの成膜条件とし、インク2の層の膜厚は20nmであった。
【0049】
次に、第1転写工程(図1(B))において、平板ブランケット1と凸版3とを圧縮気体加圧法を用いて互いに接触させることにより、インク2のうちの凸部31の部分に対応するインク2Bを、選択的に凸版3上へ転写させた。凸版3としては、石英ガラスにより構成されたものを用いた。具体的には、石英ガラス上に、真空蒸着法によってCr(クロム)膜を200nm程度成膜し、これに対してフォトリソグラフィー法およびウェットエッチング法により所定のパターニングを行うと共に、ドライエッチング法により石英ガラスを1.0μm程度エッチングし、最後にCrをエッチングにより除去することにより、凸部31および凹部32を有する凸版3を作製した。また、平板ブランケット1と凸版3とを互いに接触させる際には、図5に示したように、平板ブランケット1を下部ステージ51および固定フレーム54C,54Dにより固定し、この平板ブランケット1と凸版3との間の距離が1mmとなるように互いに平行になるように向かい合わせて配置したのち、平板ブランケット1の背面(開口部520)から圧縮空気を噴射させて膨張したフッ素樹脂製のフィルム(伸縮性フィルム55)を押し出すことにより、接触させるようにした。なお、転写圧力は10kPaとし、転写時間は10秒間とした。
【0050】
次に、図1(C)および図7に示したように、固定フレーム54C,54Dを持ち上げることにより、平板ブランケット1と凸版3とを互いに分離させた。
【0051】
次に、第2転写工程(図2(A))において、平板ブランケット1と基板40とを圧縮気体加圧法を用いて互いに接触させることにより、平板ブランケット1上のインク2Aを基板40上へ転写させた。これにより、基板40上に、Pd微粒子コロイドを含むインクのパターンを形成した。基板40上には、インク2Aを固着するため、予め密着層41を形成した。この密着層41の材料としては、メルカプト系シラン化合物である、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランフェニル:〔HSC3H6Si(OCH3)3〕を、乳酸エチル中に50mMol/Lの濃度で希釈したものを用いた。また、これをスピンコート法によりガラスの基板40上に成膜すると共に、120℃で30分間アニールを行い、エタノールで超音波洗浄によって10分間リンスを行ったのちに利用した。なお、この第2転写工程の詳細な条件は、基本的に第1転写工程(図1(B))と同様である。また、本実施例においては、基板40上に予め形成されたパターンが存在しないようにしたため、平板ブランケット1と基板40との間の位置合わせとしては、目測によって、互いの中心同士をおおまかに重ね合わせるようにした。
【0052】
次に、図2(B)等に示したように、固定フレーム54C,54Dを持ち上げることにより、平板ブランケット1と基板40とを互いに分離させた。
【0053】
次に、基板40を窒素雰囲気中において200℃で5分間焼成することにより、インク2A中の有機物を分解し、無電解めっき処理の触媒として活性な状態とした。
【0054】
最後に、このようにして作製した基板40に対して、Cuの無電解めっき処理を行った。無電解めっき液としては、奥野製薬工業(株)社製のOPCカッパーTを用いた。これにより、500nmの膜厚のCu薄膜よりなるCu配線を形成した。配線の精細度は、ライン/スペースで5μm/5μmであった。
【0055】
(実施例2)
以下に示した事項を除き、実施例1と同様にして金属薄膜を作製した。概要としては、無電解めっき処理の触媒材料となる金属ナノ粒子であるPdナノ粒子(保護剤:C16H33SH)をインク2に含むようにすると共に、このインク2を反転オフセット印刷法により基板40上に印刷した後、無電解Niめっき処理によってインク上にNi薄膜を選択的に析出させ、Ni配線を形成した。
【0056】
インク2は、無電解めっき処理の触媒材料となる金属ナノ粒子として、平均粒径8nmのPdナノ粒子(保護剤:C16H33SH)を、テトラヒドロフラン中に1.0重量%の濃度で分散させたものを利用した。
【0057】
また、本実施例では、基板40上に予め形成されたアライメントマークを形成することにより、印刷の際の重ね合わせ精度を評価した。この印刷工程においては、図10に示したように、平板ブランケット1を固定・加圧するステージに、X,Y,θ座標の調整機構
および平行調整機構が具備された装置を用いた。平板ブランケット1と基板40との間はスペーサーによって平行に設定され、このような平行を保ちつつ50μmの間隙が維持された状態で、平板ブランケット1と基板40との間の位置合わせを行った。具体的なアライメントとしては、基板40上に予め形成されたアライメントマークと、平板ブランケット1上に第1転写工程(図1(B))において形成されたアライメントマークとを互いに重ね合わせることにより、実施した。第2転写工程(図2(A))の後における重ね合せ精度の測定では、±0.5μm以下の結果が得られた。
【0058】
また、本実施例では、図2(C)に示したように、基板40に対してUVオゾン処理を行うことにより、インク2A中の有機物を分解し、無電解めっき処理の触媒として活性な状態とした。
【0059】
また、本実施例では、このようにして作製した基板40に対して、Niの無電解めっき処理を行った。無電解めっき液としては、奥野製薬工業(株)社製のトップニコロンRDを用いた。これにより、300nmの膜厚のNi薄膜よりなるNi配線を形成した。配線の精細度は、ライン/スペースで3μm/3μmであった。
【0060】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態等では、無電解めっき処理を行うことにより単層の金属薄膜42を形成した場合について説明したが、無電解めっき処理を複数回行うことにより、金属薄膜を多層膜としてもよい。そのように構成した場合、金属薄膜の腐食性や電気的特性、塗れ性などを改善し、所望の特性をもった金属薄膜を形成することが可能となる。
【0062】
また、本発明により形成された金属薄膜は、金属電極を応用した電子デバイス(例えば、薄膜トランジスタやキャパシタ)に適用することが可能である。
【0063】
さらに、上記実施の形態等において説明した各構成要素の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、また他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B…平板ブランケット、11…基材、12…PDMS層、13A〜13D…アライメントマーク、2,2A,2B…インク、3…凸版、31…凸部、32…凹部、40…基板、41…密着層、42…金属薄膜、51,51A…下部ステージ、510,511A,511B,520…開口部、52,52A…上部ステージ、53A,53B…Oリング、54A〜54D…固定フレーム、55…伸縮性フィルム、6,61,62…アライメント用顕微鏡、L0…紫外光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転オフセット印刷法を用いたパターン転写方法および金属薄膜パターン転写方法に適用される転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反転オフセット印刷法を利用した薄膜パターンの形成方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、円柱状のロール上にシリコーン樹脂が形成された円柱状のブランケットと、所望のパターンが形成された凸版とを用いた反転オフセット印刷法によって、基板上に所望の樹脂薄膜パターンを形成するようにものが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、水溶性樹脂(ポリエチレンオキサイド)中に導電性微粒子(平均粒径が50nm以下のもの)を混合したインクを用いて反転オフセット印刷法を行うことにより、基板上に所望の導電性薄膜パターンを形成するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―58921号公報
【特許文献2】特開2006−278845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1では、円柱形状のブランケットを用いて反転オフセット印刷を行っているため、平板である基板への転写の際に基板全体で接触圧力を均一に保つのが困難となり、パターンつぶれが生じてしまうことになる。また、円柱形状のブランケットと平板である基板とを接触させるため、これらの間の位置合わせが容易ではない。よって、薄膜を形成する際の歩留りが低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、この特許文献1では、主にエッチングレジストを用途として基板上に樹脂薄膜を形成していることから、仮に基板上に導電性薄膜(金属薄膜)を形成しようとすると、基板全面に金属薄膜を成膜した後に樹脂インクを印刷すると共に、この樹脂インクを所定のパターンでエッチングして剥離する工程が必要になり、工程数が増えてしまうことになる。
【0008】
一方、上記特許文献2では、インク中に導電性微粒子が混合されているため、そのような導電性微粒子を用いて、基板上に直接的に導電性薄膜を形成することが可能である。また、この特許文献2では、ブランケットの形状についても円柱状には限定されていないことから、平板のブランケットに対しても適用可能であると考えられる。
【0009】
しかしながら、引用文献2では、上記のようにインク中に樹脂(水溶性樹脂)も含まれていることから、形成された導電性薄膜の抵抗値が、導電性微粒子のみからなる薄膜の抵抗値よりも増加してしまうことになる。また、インクが導電性微粒子と樹脂との混合物であるため、ブランケット上に塗布されたインクの厚みが大きくなってしまい、パターンの微細化が容易ではない。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能な転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転写装置は、平板ブランケットを固定するための第1のステージと、凸版または基板を固定するための第2のステージと、平板ブランケットの外周部を第1のステージに固定するための固定部とを備え、第1のステージには、圧縮空気を噴射するための空気導入口が設けられているものである。
【0012】
本発明の転写装置では、平板ブランケットを用いて基板上にインクが転写されると共に、転写工程において加圧圧縮により接触がなされているため、凸版または基板とブランケットとの間の位置合わせが容易となると共に、接触の際の圧力が全体として均一化される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転写装置によれば、平板ブランケットを用いてインクを転写させると共に転写工程において加圧圧縮により接触を行うようにしたので、位置合わせを容易とすると共に接触の際の圧力を全体として均一化させ、薄膜を形成する際の歩留りを向上させることができる。よって、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る金属薄膜の形成方法の主要な工程の一部を表す断面図である。
【図2】図1に続く工程を表す断面図である。
【図3】図2に続く工程を表す断面図である。
【図4】平板ブランケットと凸版との接触方法の一例を表す断面図である。
【図5】平板ブランケットと凸版との接触方法の他の例を表す断面図である。
【図6】平板ブランケットと凸版との分離方法の一例を表す断面図である。
【図7】平板ブランケットと凸版との分離方法の他の例を表す断面図である。
【図8】平板ブランケットと基板との接触方法の一例を表す断面図である。
【図9】平板ブランケットと基板との接触方法の他の例を表す断面図である。
【図10】平板ブランケットと基板とを接触させる際のアライメント方法の一例を表す断面図および平面図である。
【図11】アライメントマークを施した平板ブランケットの一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係る金属薄膜の形成方法について説明するための断面図である。
【0016】
まず、図1(A)に示したように、平板ブランケット1上にインク2を塗布する。この平板ブランケット1は、ガラス板や金属板などからなる硬質の基材11と、この基材11上のPDMS(ポリジメチルシロキサン)層12とにより構成し、PDMS層12上にインクが塗布されるようにする。このように硬質の基材11上に柔軟なPDMS層を設けることにより、平面方向の精度を高め、転写圧力を低減することができるからである。なお、基材11の厚みは10〜500μm程度とし、PDMS層12の厚みは1〜5000μmとするのが望ましい。
【0017】
インク2としては、後述する無電解めっき処理の際の触媒となる触媒材料を含み、かつ印刷方法(反転オフセット印刷方法)に適したものを用いる。具体的には、インク2の溶質としては、触媒材料である金属化合物または金属微粒子(金属ナノ粒子)を含むものを用い、インク2の溶媒としては、詳細は後述するが、その沸点が100℃以下の非極性溶媒であり、かつPDMS層12上での接触角が10度以下のものが望ましい。このような溶質と溶媒とを混合することにより、インク2とする。なお、インク2の濃度は、0.01〜30重量%であることが望ましいが、これに限るものではない。
【0018】
金属化合物としては、金(Au)、銀(Ag)またはパラジウム(Pd)などの金属と、分子式CnHmCOOHにより表記される直鎖脂肪酸、分子式CH3(CH2)nNH2により表記される直鎖アルキルアミン、分子式CH3(CH2)nSHにより表記される直鎖アルキルチオールまたは分子式CH3(CH2)nCNにより表記される直鎖アルキルニトリルなどのうちの少なくとも1つ以上の有機化合物とを結合したものを用いることができる。なお、これらの分子式において、nは、5以上40以下の整数であることが望ましく、mは、m=2n+1であることが望ましい。
【0019】
金属ナノ粒子としては、Au、AgまたはPdなどの金属の微粒子(平均粒径が、0.1〜20nm以下であることが望ましい。)を用いることができ、その表面が有機化合物の保護剤により覆われたものを用いるのが望ましい。金属ナノ粒子を安定的に保存することができるからである。そのような保護剤としては、分子式CH3(CH2)nNH2により表記される直鎖アルキルアミン、分子式CH3(CH2)nSHにより表記される直鎖アルキルチオールまたは分子式CH3(CH2)nCNにより表記される直鎖アルキルニトリルなどのうちの少なくとも1つ以上の有機化合物とを結合したものを用いることができる。なお、これらの分子式において、nは、5以上40以下の整数であることが望ましく、mは、m=2n+1であることが望ましい。
【0020】
インク2の溶媒としては、前述したように、その沸点が100℃以下の非極性溶媒であり、かつPDMS層12上での接触角が10度以下のものが望ましい。沸点が100℃以下の溶媒とすることにより、インク2の塗布中または塗布後に溶媒のほとんどを蒸発させ、平板ブランケット1上に、無電解めっき処理の触媒となる溶質のみを残すことができるからである。このような溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタンなどの直鎖アルカン類の炭化水素、シクロペンタンもしくはシクロヘキサンなどのシクロアルカン類、またはエチルメチルエーテル、ジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフランなどエーテル類などが挙げられる。
【0021】
なお、平板ブランケット1上にインク2を塗布する方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、CAPコーティング法、スリットコーティング法、LB成膜法またはインクジェット法などが好適である。
【0022】
続いて、図1(B)に示したように、平板ブランケット1と、所定のパターンからなる凸部31を有する凸版3とを互いに向かい合わせて接触させることにより、平板ブランケット1上のインク2のうち、凸部31に対応する部分を選択的に凸版3上に転写させる。
【0023】
凸版3は、石英、ガラス、樹脂または金属などからなり、フォトリソグラフィー法およびエッチング法などを用いることにより、0.1〜10μm程度の深さの凹部32が形成されたものを用いることが望ましい。なお、後述するように、凸版3に形成するパターンとしては、金属薄膜(金属配線)として形成する領域が凹部32となるようにする。
【0024】
平板ブランケット1と凸版3とを接触させる際には、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。圧縮気体加圧法とは、接触させる対象である平板ブランケット1と凸版3とをそれぞれ向かい合わせて近接しつつ所定のステージ上に固定すると共に、平板ブランケット1および凸版3のうちの一方の背面側から圧縮気体を噴射させて押し出すことにより、平板ブランケット1と凸版3とを接触させる方法である。なお、このとき、押し出される対象物と圧縮気体の供給源であるステージとの間で形成される空間は、密封されるようになっている(下記図4(A),(B)中の矢印P1で示した空間や、下記図5中の矢印P4で示した空間)。
【0025】
具体的には、例えば図4(A)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51、Oリング53A,53Bおよび固定フレーム54A,54Bにより機械的に固定すると共に、凸版3を上部ステージ52により固定し、下部ステージ51の中心付近に設けられた開口部510(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて平板ブランケット1を押し出すようにする。なお、例えば図4(B)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51Aに設けられた開口部511A,511Bにより、図中の符号P2,P3で示したように真空吸着させて固定するようにしてもよい。また、例えば図5に示したように、凸版3を下部ステージ51上に固定すると共に平板ブランケット1の外周部を固定フレーム54C,54Dにより固定し、さらに膨張可能であり柔軟性を有する伸縮性フィルム55を、Oリング53A,53B、固定フレーム54A,54Bおよび上部ステージ52Aにより固定し、上部ステージ52Aの中心付近に設けられた開口部520(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて伸縮性フィルム55および平板ブランケット1を押し出すようにしてもよい。この場合、平板ブランケット1の外周部を機械的に固定するだけでよい。なお、これらの場合において、平板ブランケット1と凸版3とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、平板ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインク2の転写が可能となる。なお、これら図4および図5を含めた図4〜図11においては、インク2,2A,2Bの図示は省略している。
【0026】
続いて、図1(C)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と凸版3とを分離させる。これにより、平板ブランケット1上には、凸版3によって転写されなかった領域にインクが残留し(図中のインク2Aの部分)、後述する金属薄膜(金属配線)のパターンとなる一方、凸版3の凸部31上には、インクが転写される(図中のインク2Bの部分)。なお、平板ブランケット1と凸版3とを分離させる方法としては、例えば図6に示したように、空間P1内を、開口部510を介して真空排気させる(図中の矢印P5参照)ことにより真空化し、平板ブランケット1を下部ステージ51上に吸着させて分離させる方法や、例えば図7に示したように、平板ブランケット1の外周部を持ち上げる(図中の矢印P61,P62参照)ことにより、機械的に分離させる方法などが挙げられる。
【0027】
続いて、図2(A)に示したように、インク2Aが転写された平板ブランケット1と、金属薄膜の形成基板(基板40)とを互いに向かい合わせて接触させることにより、平板ブランケット1上に残留するインク2Aを、基板40上に転写させる。
【0028】
基板40としては、例えば、シリコン、合成石英、ガラス、金属、樹脂または樹脂フィルムなどの材料からなる基板を用いる。また、この基板40上には密着層41を設けておき、この密着層41上にインク2Aが転写されるようにするのが望ましい。インク2Aの固着が容易となるからである。このような密着層41の材料としては、例えば、アミノ系シラン化合物、メルカプト系シラン化合物、フェニル系シラン化合物、アルキル系シラン化合物などの化合物のうち少なくとも1つ以上を含んだものが挙げられる。なお、密着層41は、スピンコート法、浸漬法または熱CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法などを用いて、基板40上に成膜するようにすればよい。
【0029】
平板ブランケット1と基板40とを接触させる際には、前述したように、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。具体的には、例えば図8(A)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51、Oリング53A,53Bおよび固定フレーム54A,54Bにより機械的に固定すると共に、基板40を上部ステージ52により固定し、下部ステージ51の中心付近に設けられた開口部510(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて平板ブランケット1を押し出すようにする。なお、例えば図8(B)に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ51Aに設けられた開口部511A,511Bにより、図中の符号P2,P3で示したように真空吸着させて固定するようにしてもよい。また、例えば図9に示したように、基板40を下部ステージ51上に固定すると共に平板ブランケット1の外周部を固定フレーム54C,54Dにより固定し、さらに伸縮性フィルム55を、Oリング53A,53B、固定フレーム54A,54Bおよび上部ステージ52Aにより固定し、上部ステージ52Aの中心付近に設けられた開口部520(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて伸縮性フィルム55および平板ブランケット1を押し出すようにしてもよい。この場合、平板ブランケット1の外周部を機械的に固定するだけでよい。なお、これらの場合において、平板ブランケット1と基板40とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、平板ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインク2Aの転写が可能となる。
【0030】
また、基板40上に、所定のアライメントマークを設けておき、平板ブランケット1と基板40とを接触させてインク2Aを転写させる際には、そのようなアライメントマークを利用して基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせ(アライメント)を行うようにするのが望ましい。位置合わせの精度を容易に向上させることができるからである。
【0031】
具体的には、例えば図10(A)に示したように、平板ブランケット1上のインク2Aによるアライメントマーク(図示せず)と、予め基板40上に形成されたアライメントマーク(図示せず)とをそれぞれ、アライメント用顕微鏡6(61,62)を用いて比較し、X,Y,θ座標(図10(B)参照)を調整することによって位置合わせを行う。よっ
て、例えば図10(B)に示したように、転写装置には、上下のステージ51,52のいずれか一方に、X,Y,θ座標の制御機構が具備されているようにする。また、平板ブラ
ンケット1と基板40との距離が大きい(例えば、30μm以上)場合、アライメント用顕微鏡6の焦点深度が不足し、アライメントマーク同士の重ね合せが難しくなるため、そのような場合には、画像記録機能を付帯した多焦点アライメント機構を具備するようにするのが望ましい。
【0032】
また、インク2Aの厚みが小さいため、アライメント用顕微鏡6によるインク2Aのアライメントマークの観察が困難な場合には、例えば図11(A)や図11(B)に示した平板ブランケット1A,1Bのように、アライメントマーク13A,13BをPDMS膜12上に予め設けたり、アライメントマーク13C,13Dを基材11上に予め設けたりするようにするのが望ましい。なお、PDMS膜12は透明であるため、図11(B)の場合においても、アライメントマーク13C,13Dを認識することが可能である。これらの場合、第1のアライメントとして、平板ブランケット1と凸版3との間のアライメントを行ってインク転写を行い、平板ブランケット1上のアライメントマークとインクパターンとの位置関係を決定した後、第2のアライメントとして、平板ブランケット1と基板40との間でアライメントを行ってインク転写を行うようにすればよい。
【0033】
続いて、図2(B)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と基板40とを分離させる。これにより、平板ブランケット1上のインク2Aは全て基板40(密着層41)上に転写され、後述する金属薄膜(金属配線)のパターンとなる一方、平板ブランケット1上には、インクが残留しない。なお、平板ブランケット1と凸版3とを分離させる方法としては、前述したように、空間P1内を、開口部510を介して真空排気させることにより真空化し、平板ブランケット1を下部ステージ51上に吸着させて分離させる方法や、平板ブランケット1の外周部を持ち上げることにより、機械的に分離させる方法などが挙げられる。
【0034】
続いて、図2(C)に示したように、インク2Aの溶媒や金属ナノ粒子の保護膜に含まれる有機物を除去することにより、無電解めっきの触媒材料(具体的には、インク2Aの溶質)を活性化させ、これにより後述する無電解めっき処理を促進させるようにする。これは、インク2Aが有機物を多く含む場合、そのままでは無電解めっき処理に対して不活性な場合が多いため、そのような有機物を除去して、触媒活性とするものである。このような活性化処理としては、例えば、図中に示したようにインク2Aに対して紫外線L0を照射するUV(紫外線)オゾン処理や、オゾン水洗浄処理、または焼成処理などにより行う。UVオゾン処理やオゾン水洗浄処理の場合、比較的低温下(例えば、0℃〜200℃程度)で行うことが可能である。また、焼成処理の場合、例えば200℃〜400℃程度の比較的高温下で行うようにする。なお、このような焼成処理の場合において、インク2Aの溶質(触媒材料)としてPdを含むときには、Pd自体の酸化を避けるため、窒素(N)やアルゴン(Ar)などの脱酸素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0035】
続いて、インク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理を施すことにより、図3に示したように、基板40上に金属薄膜42を析出させる。具体的には、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42を選択的に形成させる。無電解めっき処理の際には、基板40を所望の無電解めっき液に浸漬させることにより、インク2Aのある領域にのみ、金属を選択析出させるようにする。このような無電解めっき処理では、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、AuまたはAgなど、様々な金属の析出が可能である。
【0036】
最後に、基板40上に析出された金属薄膜42に対し、100〜1000℃程度のアニール処理を行う。これにより、金属薄膜42の低抵抗化、成膜時の応力緩和、密着性の改善、金属の酸化防止などが可能となる。この際、金属薄膜42の酸化を避けるため、真空、NまたはArなどの脱酸素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0037】
以上により、本実施の形態の金属薄膜(金属薄膜42)が製造される。
【0038】
このようにして本実施の形態の金属薄膜(金属薄膜42)の形成方法では、触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理が施されることにより、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42が選択的に形成される。
【0039】
ここで、平板ブランケット1を用いて基板40上にインク2Aが転写されると共に、転写工程(図1(B)および図2(A)で示した工程)において加圧圧縮により接触がなされている(圧縮気体加圧法が用いられている)ため、凸版3または基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせが容易となると共に、接触の際の圧力が全体として均一化される。
【0040】
また、インク2中には、金属薄膜42の材料自体ではなく、無電解めっき処理の触媒材料が含まれているため、インク中に金属薄膜の材料自体と樹脂とが含まれている従来と比べ、形成された金属薄膜42の抵抗値が低くなると共に、平板ブランケット1上に塗布されたインク2の厚みが小さくなってパターンの微細化が容易となる。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、触媒材料を含むインク2Aが転写された基板40に対して無電解めっき処理を施すようにしたので、基板40上のうちのインク2Aの転写領域に対し、金属薄膜42を選択的に形成することができる。また、平板ブランケット1を用いてインク2を転写させると共に転写工程において加圧圧縮により接触を行うようにしたので、位置合わせを容易とすると共に接触の際の圧力を全体として均一化させ、金属薄膜42を形成する際の歩留りを向上させることができる。また、インク2中に、金属薄膜42の材料自体ではなく無電解めっき処理の触媒材料を含ませるようにしたので、従来と比べ、金属薄膜42の抵抗値が低くなると共にパターンの微細化が容易となる。よって、薄膜の抵抗値を必要以上に高くすることなく、従来よりも微細化および高歩留り化を実現することが可能となる。
【0042】
また、インク2Aの転写工程(図2(A)で示した工程)とめっき工程(図3で示した工程)との間に、触媒材料を活性化させる工程を含むようにしたので、無電解めっき処理を促進させ、金属薄膜42の形成も促進させることが可能となる。
【0043】
また、基板40および平板ブランケット1の上にそれぞれ、所定のアライメントマークを予め設けておき、インク2Aの転写工程において、これらのアライメントマークを利用して基板40と平板ブランケット1との間の位置合わせを行うようにした場合には、位置合わせ精度を容易に向上させることができ、さらに歩留まりを向上させることが可能となる。
【実施例】
【0044】
さらに、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0045】
(実施例1)
図3に示した構造の金属薄膜を、以下のようにして作製した。概要としては、無電解めっき処理の触媒材料となる金属化合物であるパラジウム(Pd)微粒子コロイドをインク2に含むようにすると共に、このインク2を反転オフセット印刷法により基板40上に印刷した後、無電解Cuめっき処理によってインク上にCu薄膜を選択的に析出させ、Cu配線を形成した。
【0046】
インク2は、無電解めっき処理の触媒材料となる金属化合物として、Pd微粒子コロイド(田中貴金属工業社製:疎水性PdDA(デシルアミン)コロイドトルエン溶液)を含むようにし、このPd微粒子コロイドを以下の手順で処理したのちに利用した。まず、疎水性PdDAコロイドトルエン溶液を1.0重量%濃度に調整し、これにn−ヘキサデカンチオールを2.0重量%濃度となるように加え、80℃で12時間、過熱攪拌する。そののち、これを常温に冷却し、PdDAコロイドトルエン溶液に対して20倍程度の量のメタノールを加え、Pd微粒子を沈殿させる。その後、この沈殿物と溶液とを1μmのフィルターにて濾過すると共に、このフィルター上に堆積した沈殿物を回収する。この沈殿物は、上記処理により、Pd微粒子の保護剤の一部が、デシルアミンからヘキサデカンチオールに置換される。置換率は、デシルアミンを100とすると、10〜30%である。この処理により、Pd微粒子を、処理前には溶解度の低かったヘキサンやペンタンに溶解できるようになり、1.0重量%濃度になるように、n−ペンタン溶液中に分散させて利用した。
【0047】
平板ブランケット1としては、基材11であるガラス(厚み0.2mm:AF45、ショット社製)上にPDMS(ポリジメチルシロキサン)層12を成膜(スピンコート法)したものを用いるようにし、これを65℃で12時間焼成して利用した。PDMS層12の膜厚は、60μmであった。PDMSとしては、SYLGARD184(東レ・ダウコーニング社製)をトルエンで希釈し、80重量%の濃度にしたものを利用した。
【0048】
まず、インク2の塗布工程(図1(A))において、インク2を平板ブランケット2上にスピンコート法により成膜した。3000rpmおよび20sの成膜条件とし、インク2の層の膜厚は20nmであった。
【0049】
次に、第1転写工程(図1(B))において、平板ブランケット1と凸版3とを圧縮気体加圧法を用いて互いに接触させることにより、インク2のうちの凸部31の部分に対応するインク2Bを、選択的に凸版3上へ転写させた。凸版3としては、石英ガラスにより構成されたものを用いた。具体的には、石英ガラス上に、真空蒸着法によってCr(クロム)膜を200nm程度成膜し、これに対してフォトリソグラフィー法およびウェットエッチング法により所定のパターニングを行うと共に、ドライエッチング法により石英ガラスを1.0μm程度エッチングし、最後にCrをエッチングにより除去することにより、凸部31および凹部32を有する凸版3を作製した。また、平板ブランケット1と凸版3とを互いに接触させる際には、図5に示したように、平板ブランケット1を下部ステージ51および固定フレーム54C,54Dにより固定し、この平板ブランケット1と凸版3との間の距離が1mmとなるように互いに平行になるように向かい合わせて配置したのち、平板ブランケット1の背面(開口部520)から圧縮空気を噴射させて膨張したフッ素樹脂製のフィルム(伸縮性フィルム55)を押し出すことにより、接触させるようにした。なお、転写圧力は10kPaとし、転写時間は10秒間とした。
【0050】
次に、図1(C)および図7に示したように、固定フレーム54C,54Dを持ち上げることにより、平板ブランケット1と凸版3とを互いに分離させた。
【0051】
次に、第2転写工程(図2(A))において、平板ブランケット1と基板40とを圧縮気体加圧法を用いて互いに接触させることにより、平板ブランケット1上のインク2Aを基板40上へ転写させた。これにより、基板40上に、Pd微粒子コロイドを含むインクのパターンを形成した。基板40上には、インク2Aを固着するため、予め密着層41を形成した。この密着層41の材料としては、メルカプト系シラン化合物である、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランフェニル:〔HSC3H6Si(OCH3)3〕を、乳酸エチル中に50mMol/Lの濃度で希釈したものを用いた。また、これをスピンコート法によりガラスの基板40上に成膜すると共に、120℃で30分間アニールを行い、エタノールで超音波洗浄によって10分間リンスを行ったのちに利用した。なお、この第2転写工程の詳細な条件は、基本的に第1転写工程(図1(B))と同様である。また、本実施例においては、基板40上に予め形成されたパターンが存在しないようにしたため、平板ブランケット1と基板40との間の位置合わせとしては、目測によって、互いの中心同士をおおまかに重ね合わせるようにした。
【0052】
次に、図2(B)等に示したように、固定フレーム54C,54Dを持ち上げることにより、平板ブランケット1と基板40とを互いに分離させた。
【0053】
次に、基板40を窒素雰囲気中において200℃で5分間焼成することにより、インク2A中の有機物を分解し、無電解めっき処理の触媒として活性な状態とした。
【0054】
最後に、このようにして作製した基板40に対して、Cuの無電解めっき処理を行った。無電解めっき液としては、奥野製薬工業(株)社製のOPCカッパーTを用いた。これにより、500nmの膜厚のCu薄膜よりなるCu配線を形成した。配線の精細度は、ライン/スペースで5μm/5μmであった。
【0055】
(実施例2)
以下に示した事項を除き、実施例1と同様にして金属薄膜を作製した。概要としては、無電解めっき処理の触媒材料となる金属ナノ粒子であるPdナノ粒子(保護剤:C16H33SH)をインク2に含むようにすると共に、このインク2を反転オフセット印刷法により基板40上に印刷した後、無電解Niめっき処理によってインク上にNi薄膜を選択的に析出させ、Ni配線を形成した。
【0056】
インク2は、無電解めっき処理の触媒材料となる金属ナノ粒子として、平均粒径8nmのPdナノ粒子(保護剤:C16H33SH)を、テトラヒドロフラン中に1.0重量%の濃度で分散させたものを利用した。
【0057】
また、本実施例では、基板40上に予め形成されたアライメントマークを形成することにより、印刷の際の重ね合わせ精度を評価した。この印刷工程においては、図10に示したように、平板ブランケット1を固定・加圧するステージに、X,Y,θ座標の調整機構
および平行調整機構が具備された装置を用いた。平板ブランケット1と基板40との間はスペーサーによって平行に設定され、このような平行を保ちつつ50μmの間隙が維持された状態で、平板ブランケット1と基板40との間の位置合わせを行った。具体的なアライメントとしては、基板40上に予め形成されたアライメントマークと、平板ブランケット1上に第1転写工程(図1(B))において形成されたアライメントマークとを互いに重ね合わせることにより、実施した。第2転写工程(図2(A))の後における重ね合せ精度の測定では、±0.5μm以下の結果が得られた。
【0058】
また、本実施例では、図2(C)に示したように、基板40に対してUVオゾン処理を行うことにより、インク2A中の有機物を分解し、無電解めっき処理の触媒として活性な状態とした。
【0059】
また、本実施例では、このようにして作製した基板40に対して、Niの無電解めっき処理を行った。無電解めっき液としては、奥野製薬工業(株)社製のトップニコロンRDを用いた。これにより、300nmの膜厚のNi薄膜よりなるNi配線を形成した。配線の精細度は、ライン/スペースで3μm/3μmであった。
【0060】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態等では、無電解めっき処理を行うことにより単層の金属薄膜42を形成した場合について説明したが、無電解めっき処理を複数回行うことにより、金属薄膜を多層膜としてもよい。そのように構成した場合、金属薄膜の腐食性や電気的特性、塗れ性などを改善し、所望の特性をもった金属薄膜を形成することが可能となる。
【0062】
また、本発明により形成された金属薄膜は、金属電極を応用した電子デバイス(例えば、薄膜トランジスタやキャパシタ)に適用することが可能である。
【0063】
さらに、上記実施の形態等において説明した各構成要素の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、また他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B…平板ブランケット、11…基材、12…PDMS層、13A〜13D…アライメントマーク、2,2A,2B…インク、3…凸版、31…凸部、32…凹部、40…基板、41…密着層、42…金属薄膜、51,51A…下部ステージ、510,511A,511B,520…開口部、52,52A…上部ステージ、53A,53B…Oリング、54A〜54D…固定フレーム、55…伸縮性フィルム、6,61,62…アライメント用顕微鏡、L0…紫外光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板ブランケットを固定するための第1のステージと、
凸版または基板を固定するための第2のステージと、
前記平板ブランケットの外周部を、前記第1のステージに固定するための固定部と
を備え、
前記第1のステージには、圧縮空気を噴射するための空気導入口が設けられている
転写装置。
【請求項2】
前記第1のステージは、前記空気導入口の外側に設けられた複数の開口を更に有し、
前記空気導入口から圧縮空気が噴射され、
前記開口は真空排気を行う
請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記固定部によって前記平板ブランケットの外周部が前記第1のステージに固定されている間に、前記空気導入口から前記圧縮空気が噴射される
請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記平板ブランケットを前記第1のステージに固定するための固定フレームからなる
請求項1または請求項3に記載の転写装置。
【請求項5】
前記固定フレームは、Oリングを備えてなる
請求項4に記載の転写装置。
【請求項6】
前記固定部は、前記第1のステージに設けられた前記開口からなり、
前記開口から前記平板ブランケットを真空吸着することにより、前記平板ブランケットを前記第1のステージに固定する
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項7】
前記平板ブランケットと前記基板との位置合わせを行うためのアライメント用顕微鏡を更に備えた
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項8】
前記アライメント用顕微鏡は、多焦点アライメント機構を有する
請求項7に記載の転写装置。
【請求項1】
平板ブランケットを固定するための第1のステージと、
凸版または基板を固定するための第2のステージと、
前記平板ブランケットの外周部を、前記第1のステージに固定するための固定部と
を備え、
前記第1のステージには、圧縮空気を噴射するための空気導入口が設けられている
転写装置。
【請求項2】
前記第1のステージは、前記空気導入口の外側に設けられた複数の開口を更に有し、
前記空気導入口から圧縮空気が噴射され、
前記開口は真空排気を行う
請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記固定部によって前記平板ブランケットの外周部が前記第1のステージに固定されている間に、前記空気導入口から前記圧縮空気が噴射される
請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記平板ブランケットを前記第1のステージに固定するための固定フレームからなる
請求項1または請求項3に記載の転写装置。
【請求項5】
前記固定フレームは、Oリングを備えてなる
請求項4に記載の転写装置。
【請求項6】
前記固定部は、前記第1のステージに設けられた前記開口からなり、
前記開口から前記平板ブランケットを真空吸着することにより、前記平板ブランケットを前記第1のステージに固定する
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項7】
前記平板ブランケットと前記基板との位置合わせを行うためのアライメント用顕微鏡を更に備えた
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項8】
前記アライメント用顕微鏡は、多焦点アライメント機構を有する
請求項7に記載の転写装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−32022(P2013−32022A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249304(P2012−249304)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【分割の表示】特願2011−168000(P2011−168000)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【分割の表示】特願2011−168000(P2011−168000)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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