説明

転動ボール式差動変速装置

【課題】リテーナが不要となり、動板の偏心回転に対する抵抗負荷をなくしてエピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの円滑回転が可能となり、かつ転動ボールの組付け作業が迅速になる転動ボール式差動変速装置を提供する。
【解決手段】隣接する転動ボール4a同士が互いに外接する状態にして連続配置しているので、リテーナを用いることなく一定数の転動ボール4aをエピ条溝部15あるいはハイポ条溝部16に配列することにより、エピ条溝部15あるいはハイポ条溝部16に対する転動ボール4aの位置決めが自動的に行われる。転動ボール4aの自動位置決めに伴い、転動ボール4aの迅速な組付けにより生産性の向上に寄与する。転動ボール4aを外接状態で連続配置することにより、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16に対する転動ボール4aの滑らかで安定した転動を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動ボールをエピ条溝部とハイポ条溝部に沿わせた状態で、動板と固定板とを向かい合わせて配置し、固定板に対する動板の転頭運動により伝達トルクを出力する転動ボール式差動変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転動ボール式差動変速装置では、自動車部品などの生産工程でロボットなどの関節部の回動変位の伝達に用いられ、組付け部品を次工程に搬送する搬送装置に組み込まれている。この種の差動変速装置のなかでも、エピサイクロイド曲線に沿って案内溝を形成した第一の動板とハイポサイクロイド曲線に沿って案内溝を形成した第二の動板とを転動ボールを介して重ね合わせ、第一の動板に対する第二の動板の回転駆動によりトルクを出力として伝達する転動ボール式差動減速機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このものでは、転動ボールを介して第一の動板と第二の動板とを重ね合わせるだけで済むため、全体の厚みが小さくてコンパクトになりながらも、バックラッシュがなくて伝達効率が高く、低騒音で大きなトルク伝達容量を確保できるようになっている。
【特許文献1】特開平5−231490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の転動ボール式差動減速機構では、図7に示すように、転動ボール50を案内溝51、52の節部51a、52aに対応させるように配置している。このため、第一の動板53および第二の動板54と略同径で、周方向に複数の滑穴55aを等角度間隔に形成した環状のリテーナ55を設けている。リテーナ55の滑穴55aは、転動ボール50の直径幅よりも僅かに大きな直径寸法を有しているので、転動ボール50を滑穴55aに位置決めしながら、第二の動板54を第一の動板53に向かい合わせ状態に配置している。
【0004】
しかしながら、転動ボール50をリテーナ55の滑穴55aにセットして、案内溝51、52に沿わせる組付け作業は手間がかかり勝ちである。第一の動板53に対して第二の動板54が転頭(偏心回転)する際、転動ボール50が案内溝51、52に沿って転動するにつれて、リテーナ55も回転するので、リテーナ55自体が第二の動板54の偏心回転(転頭運動)に対する抵抗負荷となる不都合がある。
【0005】
本発明は上記の事情を考慮してなされたもので、その目的は転動ボールのリテーナを要らなくして、動板の偏心回転に対する抵抗負荷をなくするとともに、エピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの円滑回転が可能となり、かつ転動ボールの組付け作業が迅速になり、生産性の向上に寄与する転動ボール式差動変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1について)
動板は、表面部に多数の波数を有するエピサイクロイド曲線に沿って周方向に形成されたエピ条溝部を設けている。固定板は、表面部にエピサイクロイド曲線の波数とは異なる波数を有するハイポサイクロイド曲線に沿って周方向に形成されたハイポ条溝部を設けている。互いに並列状態でエピ条溝部とハイポ条溝部とを対向させた動板と固定板との間に多数の転動ボールを設け、エピ条溝部とハイポ条溝部とにわたって配列している。
偏心軸は、動板の中央部に連結され、回転入力を受けた際、転動ボールがエピ条溝部とハイポ条溝部とに沿って転動することにより、固定板に対して動板が自転変位と公転変位とを合成した複合運動を行う。整動手段により、動板の複合運動から自転変位のみを出力させるようにしている。
エピ条溝部の波幅ピッチおよびハイポ条溝部の波幅ピッチを転動ボールの直径よりも僅かに大きく設定し、転動ボールを互いに外接させた状態でエピ条溝部およびハイポ条溝部に沿って連続配置している。
【0007】
請求項1では、隣接する転動ボール同士が互いに外接する状態にして連続配置しているので、リテーナを用いることなく一定数の転動ボールをエピ条溝部あるいはハイポ条溝部に配列することにより、エピ条溝部あるいはハイポ条溝部に対する転動ボールの位置決めが自動的に行われる。
転動ボールの自動位置決めに伴い、転動ボールの組付け作業が迅速になり、生産性の向上に寄与させることができる。
転動ボールを外接状態で連続配置することにより、転動ボールを介して固定板と動板とが一体化して全体の剛性が高まるとともに、エピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの滑らかで安定した円滑転動が可能となる。
リテーナが要らなくなって、動板の偏心回転に対する抵抗負荷がなくなるため、この観点からも転動ボールの円滑転動に寄与することができる。
【0008】
(請求項2について)
転動ボールに対するエピ条溝部の噛合により接して圧力角を成す接線の法線が一点で交わるエピ集合力点を設定する。転動ボールに対するハイポ条溝部の噛合により接して圧力角を成す接線の法線が一点で交わるハイポ集合力点を設定する。固定板の偏心位置からエピ集合力点に到る力点距離と動板の偏心位置からハイポ集合力点に到る力点距離とを等しく設定している。
【0009】
研究、実験および試作を繰り返した後に判明したことであるが、転動ボールを介して動板と固定板との間で円滑な回転により高精度の回転伝達を行うには、動板における力点距離と固定板における力点距離とを等しくする必要があった。
エピ集合力点およびハイポ集合力点は、エピ条溝部およびハイポ条溝部とに対する噛合位置に変換可能なものと想定すれば、仮想噛み合いピッチ円上の集合点と言うこともできる。
【0010】
(請求項3について)
互いに隣接する転動ボール同士には、互いに近接する方向に圧接力が付与されている。これにより、転動ボール同士が接する外接部を連結して成す赤道軸回りで、転動ボールの転動割合が大きくなるように設定している。
この場合、隣接する転動ボールの外接部における摩耗を極力抑制することが可能となるので、隣接する転動ボール同士は隙間を生じなくなり、堅固な外接状態を保持し、エピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの良好な位置決め状態を長期にわたって維持することができる。
【0011】
(請求項4について)
転動ボールは一定の極性で着磁されており、互いに隣接する転動ボール同士には、互いに近接する方向に磁気吸引力を働かせている。これにより、転動ボール同士が接する外接部を連結して成す赤道軸の回りで、転動ボールの転動割合が大きくなるように設定している。
【0012】
この場合も、隣接する転動ボールの外接部における摩耗を極力抑制することが可能となるので、請求項3と同様な効果が得られる。転動ボール同士は磁気吸引力により、互いに密着し合ってエピ条溝部およびハイポ条溝部に沿って並ぶようになるので、この点からも転動ボールの組付け作業性の向上に寄与する。
転動ボールを着磁させた状態で、請求項3のように、転動ボール同士が近接する方向に圧接力を加えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の転動ボール式差動変速装置では、転動ボールを保持するリテーナが不要になるため、動板が偏心回転する際の抵抗負荷をなくす。エピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの円滑回転が可能となり、かつ転動ボールの組付け作業が迅速になり、生産性の向上に寄与させる。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。
図1に示す転動ボール式差動変速装置Aにおいて、偏平で矩形のケーシング1の左側壁および右側壁には挿通口2、3を対向状態に形成している。ケーシング1の右側壁内面には、挿通口2と連通する配置孔5を有する円盤状の固定板4が取り付けられている。動板6は、中央部に透孔7を形成し、ケーシング1内で固定板4と近接対向状態に並置されている。
【0015】
偏心軸8はケーシング1内に設けられており、その一端部は固定板4の配置孔5を挿通する偏心部8aとして軸受9を介して動板6の透孔7内に支持されている。偏心軸8の他端は、軸受10を介して挿通口3に支持され、挿通口3から外部に突出する入力部11を備えている。偏心軸8の偏心量eを後述するサイクロイド系曲線のエピ条溝部15およびハイポ条溝部16がそれぞれ形成する波高長h1、h2に相当する寸法に設定している(図2参照)。
【0016】
円盤状をなす整動板12は、ケーシング1内で動板6と対向状態に配置され、中央部に軸受13を介して挿通口2に支持された出力軸14を取り付けている。
固定板4の表面には、図2および図3(b)、(c)に示すように、エピサイクロイド曲線に沿って20個の波数Z1で基礎円Bp上に連続刻設したエピ条溝部15を設けている。
【0017】
動板6の表面には、ハイポサイクロイド曲線に沿って22個の波数Z2で基礎円Bp上に連続刻設したハイポ条溝部16をエピ条溝部15に対応させて設けている。
固定板4と動板6との間には、多数の転動ボール4aがスチールボールとして周方向に設けられている。転動ボール4aは、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16に沿って転動可能に設けられ、固定板4に対する動板6の偏心回転運動を可能にしている。
【0018】
エピ条溝部15の波幅ピッチW1およびハイポ条溝部16の波幅ピッチW2は、転動ボール4aの直径Dよりも僅かに大きく設定されている。隣接する転動ボール4aを互いに外接させた数珠つなぎ状態で、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16に沿って連続配置している。
動板6の外表面で、ハイポ条溝部16の反対側には、断面半円状の径小な環状溝18が等角度間隔で複数設けられている(図1参照)。動板6の偏心回転運動を許容するため、環状溝18の直径と後述する回転ボール20の直径との寸法差が偏心量E(=e)として、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16の波高長h1、h2に等しくなるように設定されている。
【0019】
固定板4のエピ条溝部15、転動ボール4aおよび動板6のハイポ条溝部16においては、図3(a)に示すように、転動ボール4aに対するエピ条溝部15およびハイポ条溝部16に転動ボール4aが噛合して成す圧力角(ω1)を有する。
研究、実験および試作を繰り返すことにより、圧力角(ω1)における接線T1の法線Tnが動板6ではハイポ集合力点Px1として、固定板4ではエピ集合力点Px2として一点で交わることが判明した。
【0020】
図3(b)、(c)において、動板6の中心6Aに対して偏心量eの存する位置を偏心位置Ep1とし、固定板4の中心4Aに対して偏心量eの存する位置を偏心位置Ep2とする。動板6の偏心位置Ep1からハイポ集合力点Px1に到る力点距離Ef1と固定板4の偏心位置Ep2からエピ集合力点Px2に到る力点距離Ef2とを等しく設定している。
【0021】
研究、実験および試作を繰り返した後に判明したことであるが、転動ボール4aを介して動板6と固定板4との間で円滑な回転により高精度の回転伝達を行うには、動板6における力点距離Ef1と固定板4における力点距離Ef2とを等しくする必要があったからである。エピ集合力点Px2およびハイポ集合力点Px1は、エピ条溝部15とハイポ条溝部16とに対する噛合位置に変換可能なものと想定すれば、仮想噛み合いピッチ円上の集合点と言うこともできる。
【0022】
図1および図2において、整動板12の環状溝18に対向する表面には、環状溝18と外径が同一で同数の環状溝19が周方向に形成されている。動板6と整動板12との間には、環状溝18および環状溝19に嵌め込まれた回動ボール20が配置されて整動機構30を構成している。
整動機構30はオルダム継手であってもよく、要は動板6の複合運動から整動板12に自転変位のみを伝達できるものであればよい。
【0023】
上記構成において、搬送用ロボットに適用した場合、偏心軸8の入力部11には電動機(図示せず)が連結され、出力軸14には関節用のアーム(図示せず)が取り付けられている。電動機への通電により、偏心軸8が回転駆動されて偏心部8aにより動板6に偏心回転力が伝達される(図1および図2参照)。
偏心回転力を受けた動板6は、転動ボール4aをハイポ条溝部16および固定板4のエピ条溝部15に沿って転動させて、図4に示すように、動板6が固定板4に対して公転変位と自転変位からなる複合運動(転頭運動)を行う。
【0024】
動板6の複合運動に伴い、整動機構30の回動ボール20が環状溝18および整動板12の環状溝19の各外周壁部を接触状態で転動する。これにより、動板6の複合運動から公転変位が吸収され、整動板12に自転変位のみを伝達して出力軸14を減速状態に回転させて関節用のアームを所定の工程に移動させる。
【0025】
この場合、偏心軸8の一回転量は、転動ボール4aがハイポ条溝部16を波数1個分の長さ寸法だけ転動する距離、あるいは転動ボール4aがエピ条溝部15を波数1個分の長さ寸法だけ転動する距離に相当する。一般に、エピ条溝部15の波数をZ1とし、ハイポ条溝部16の波数をZ2とすると、減速比Rは[(Z2−Z1)/{(Z2−Z1)+Z1}]={1−(Z1/Z2)}の演算式により算出される。実施例1では、波数Z1を20、波数Z2を22としているので、減速比Rは{1−(20/22)}=1/11となる。
【0026】
本発明では、隣接する転動ボール4a同士が互いに外接する状態にして連続配置しているので、リテーナを用いることなく一定数の転動ボール4aをエピ条溝部15あるいはハイポ条溝部16に配列することにより、エピ条溝部15あるいはハイポ条溝部16に対する転動ボール4aの位置決めが自動的に行われる。
転動ボール4aの自動位置決めに伴い、転動ボール4aの組付け作業が迅速になり、生産性の向上に寄与させることができる。
【0027】
転動ボール4aを外接状態で連続配置することにより、転動ボール4aを介して固定板4と動板6とが一体化して全体の剛性が高まるとともに、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16に対する転動ボール4aの滑らかで安定した円滑転動が可能となる。
リテーナが要らなくなって、動板6の偏心回転に対する抵抗負荷がなくなるため、この観点からも転動ボール4aの円滑転動に寄与することができる。
【実施例2】
【0028】
図5は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、互いに隣接する転動ボール同士が近接する方向に圧接力を加えたことである。
転動ボール同士に加えた圧接力により、転動ボール4a同士が接する外接部Epを連結して成す赤道軸Tp回りで、転動ボール4aの転動割合が大きくなるように設定している{図5(a)参照}。
【0029】
隣接する転動ボール4a同士間に働く圧接力Pにより、外接部Epでの当接力が大きくなるため、転動ボール4aの極軸Np回りや、動径軸Rp回りの回転が抑制されるようになる。
これにより、隣接する転動ボール4aの外接部Epにおける摩耗を極力抑制することが可能となり、隣接する転動ボール4a同士は隙間を生じなくなり、堅固な外接状態が保持されて、エピ条溝部15およびハイポ条溝部16に対する転動ボール4aの良好な位置決め状態を長期にわたって維持することができる。
ちなみに、図5(b)は、転動ボール4a同士間に働く圧接力Pと転動ボール4aの赤道軸Tp回りの転動割合Rcとの関係を示したもので、圧接力Pが大きくなるにつれて転動割合Rcが漸増してピークに達した後に漸減することが分かる。
【実施例3】
【0030】
図6は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例1と異なるところは、互いに隣接する転動ボール4a同士が吸引される方向に着磁したことである。
互いに隣接する転動ボール4a同士には、互いに近接する方向に磁気吸引力Fを働かせている。これにより、転動ボール4a同士が赤道軸Tp回りで、転動ボール4aの転動割合が大きくなるように設定している{図6(a)参照}。
【0031】
この場合も、隣接する転動ボール4aの外接部Epにおける摩耗を極力抑制することが可能となるので、実施例2と同様な効果が得られる。転動ボール4a同士は磁気吸引力により、互いに密着し合ってエピ条溝部15およびハイポ条溝部16に沿って並ぶようになるので、この点からも転動ボール4aの組付けが迅速になり作業性の向上に寄与する。
転動ボール4aを着磁させた状態で、実施例2のように、転動ボール4a同士が近接する方向に圧接力Pを加えてもよい。
ちなみに、図6(b)は、着磁した転動ボール4a同士間に働く磁気吸引力Fによる圧接力Pと転動ボール4aの赤道軸Tp回りの転動割合Rcとの関係を示したもので、磁気吸引力Fによる圧接力Pが大きくなるにつれて転動割合Rcが漸増してピークに達した後に漸減することが分かる。
【0032】
〔変形例〕
エピ条溝部15およびハイポ条溝部16の内面は、傾斜面状やゴシック壁状または断面略V字壁状であってもよい。
【0033】
エピ条溝部15の波数Z1やハイポ条溝部16の波数Z2は、20個や22個に限らず、使用状況や必要な変速域に応じて所望に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の転動ボール式差動変速装置では、転動ボールを位置保持するリテーナが不要になるため、動板の偏心回転の抵抗負荷をなくするとともに、エピ条溝部およびハイポ条溝部に対する転動ボールの円滑回転が可能となり、かつ転動ボールの組付け作業が迅速になり、生産性の向上に寄与する。このため、減速機としての高い性能や効率化を求める需要者の増加に伴い、関連部品の流通を介して機械産業一般へ適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】転動ボール式差動変速装置の縦断面図である(実施例1)。
【図2】転動ボール式差動変速装置の主要部を示す分解斜視図である(実施例1)。
【図3】(a)は圧力角における接線の法線を示す模式図、動板の平面図、(b)は動板に対する転動ボールの配置関係を示す平面図、(c)は固定板の平面図である(実施例1)。
【図4】固定板および動板が重なり合って回転する態様を示す平面図である(実施例1)。
【図5】(a)は転動ボール同士が赤道軸回りで転動する態様を示す拡大正面図、(b)は転動ボール同士間に働く圧接力と転動ボールの赤道軸回りの転動割合との関係を示すグラフである(実施例2)。
【図6】(a)は転動ボール同士が赤道軸回りで転動する態様を示す拡大正面図、(b)は着磁した転動ボール同士間に働く磁気吸引力による圧接力と転動ボールの赤道軸回りの転動割合との関係を示すグラフである(実施例3)。
【図7】従来の固定板、動板、リテーナおよび転動ボールの配置関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
4 固定板
4A 固定板の中心
4a 転動ボール
6 動板
6A 動板の中心
8 偏心軸
12 整動板(整動手段)
14 出力軸
15 エピ条溝部
16 ハイポ条溝部
18、19 環状溝(整動手段)
20 回動ボール(整動手段)
30 整動機構
E、e 偏心量
W1、W2 波幅ピッチ
F 磁気吸引力
Bp 基礎円
Tp 赤道軸
Rp 動径軸
Np 極軸
Rc 転動割合
A 転動ボール式差動変速装置
Ep1 動板の偏心位置
Ep2 固定板の偏心位置
Px1 ハイポ集合力点
Px2 エピ集合力点
Ef1 動板の力点距離
Ef2 固定板の力点距離
Tn 法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の波数を有するエピサイクロイド曲線に沿って周方向に形成されたエピ条溝部を表面部に設けた動板と、
前記エピサイクロイド曲線の波数とは異なる波数を有するハイポサイクロイド曲線に沿って周方向に形成されたハイポ条溝部を表面部に設けた固定板と、
互いに並列状態で前記エピ条溝部と前記ハイポ条溝部とを対向させた前記動板と前記固定板との間に設けられ、前記エピ条溝部と前記ハイポ条溝部とにわたって配列された多数の転動ボールと、
前記動板の中央部に連結され、回転入力を受けた際、前記転動ボールが前記エピ条溝部と前記ハイポ条溝部とに沿って転動することにより、前記固定板に対して前記動板が自転変位と公転変位とを合成した複合運動を行うようにした偏心軸と、
前記動板の複合運動から自転変位のみを出力させるようにした整動手段とを備え、
前記エピ条溝部の波幅ピッチおよび前記ハイポ条溝部の波幅ピッチを前記転動ボールの直径よりも僅かに大きく設定し、前記転動ボールを互いに外接させた状態で前記エピ条溝部および前記ハイポ条溝部に沿って連続配置したことを特徴とする転動ボール式差動変速装置。
【請求項2】
前記転動ボールに対する前記エピ条溝部の噛合により接して圧力角を成す接線の法線が一点で交わるエピ集合力点を設定するとともに、前記転動ボールに対する前記ハイポ条溝部の噛合により接して圧力角を成す接線の法線が一点で交わるハイポ集合力点を設定し、 前記固定板の偏心位置から前記エピ集合力点に到る距離と前記動板の偏心位置から前記ハイポ集合力点に到る距離とを等しく設定したことを特徴とする請求項1に記載の転動ボール式差動変速装置。
【請求項3】
互いに隣接する前記転動ボール同士には、互いに近接する方向に圧接力が付与されており、前記転動ボール同士が接する外接部を連結して成す赤道軸の回りで、前記転動ボールの転動割合が大きくなるように設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転動ボール式差動変速装置。
【請求項4】
前記転動ボールは一定の極性で着磁されており、互いに隣接する前記転動ボール同士には、互いに近接する方向に磁気吸引力が働いており、前記転動ボール同士が接する外接部を連結して成す赤道軸の回りで、前記転動ボールの転動割合が大きくなるように設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転動ボール式差動変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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