説明

転炉の操業方法

【課題】脱りん炉に装入する適切な銑鉄スクラップの量を算出可能とする。
【解決手段】上底吹き型の転炉で装入されたスクラップを溶解しながら脱炭処理を行う転炉の操業方法において、13.5〜16分に設定された吹錬時間内に前記スクラップを完全に溶解すべく、スクラップ半径rc≦100%溶解半径rc,100%の関係を満たし、且つ上吹きの攪拌動力εTと底下吹きの攪拌動力εBとが、0.6≦εT/εB≦1.5、800≦εT≦1200、600≦εB≦1400の関係を満たすように、脱炭処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑に対して脱炭処理を行う転炉の操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、転炉を用いた製鋼プロセスにおいては、転炉(転炉型精錬容器)に、まずスクラップ(例えば、製鉄所内で発生するブルームやスラブ等の半製品)を装入し、その後、溶銑を装入して、上吹きランスから酸素を高速で溶銑湯面に吹きつけ吹錬を行っている。
装入されたスクラップに関しては、スクラップ表面において、溶銑中の炭素がスクラップ界面に拡散し界面自体の融点が低下すると共に、溶銑内での脱珪反応や脱炭反応の酸化反応熱に起因する熱が伝わりスクラップ自体が溶解する。
【0003】
したがって、スクラップ溶解を促進させ溶け残りを無くすためには、スクラップへの熱の伝達や炭素の拡散を促進させる必要があり、そのために転炉内の溶銑への攪拌力を強化することが重要である。
溶銑への攪拌力に着目し、転炉内に装入されたスクラップの溶解を促進させ確実に溶かすための技術としては、例えば、特許文献1,2がある。
特許文献1の技術は、上吹きランスと底吹き羽口を有する転炉を用いて脱P吹錬を行う際に、底吹き羽口から吹き込む底吹きガスによる攪拌動力を求め、かかる攪拌動力がスクラップの最小厚さに応じて所定の関係を満たすようにしている。
【0004】
特許文献2の技術は、転炉内に装入されたスクラップが多量である場合に、装入スクラップ量Sと残留溶銑量Mの比(S/M)の値に応じて、底吹きガスの攪拌動力が所定の式を満たすようにしている。
また、他の文献(特許文献3)には、上底吹き転炉を用いた製鋼工程において、溶銑の脱Si、脱P、脱S処理実施における底吹き攪拌動力を1.0kW/t・s以上とし、溶銑の脱Si、脱P、脱S処理工程末期に、2.0kW/t・s以上とした上吹き攪拌動力を10〜75%低下させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−120315号公報
【特許文献2】特公平4−38811号公報
【特許文献3】特開2003−64411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、粗鋼需要変動への柔軟な対応、生産能力向上のために、製鋼工程において、HMR(溶銑配合率)を下げたり、短時間で多量のスクラップを溶解することが求められている。すなわち、スクラップ、特に重量屑が溶け残るという操業上好ましくない現象を生じさせずに、転炉での吹錬を効率的に行う「スクラップの高速溶解技術」が必要とされている。
しかしながら、前述した特許文献1,2においては、溶銑を攪拌するエネルギの大きさを示す攪拌動力に関し、底吹きガスの影響のみを考慮していて、上吹き酸素による溶銑攪拌の強度や底吹きとのバランスなどは考慮されていない。加えて、他の条件であるスクラップ装入量の影響や吹錬時間の影響を考慮するものとはなっていない。したがって、特許文献1,2の技術を実際の転炉に適用することが困難であるばかりか、適用したとしてもスクラップ溶け残りが発生する可能性が否めない。
【0006】
その点、特許文献3の技術は、上吹きランスによる上吹き攪拌動力と、底吹き攪拌動力とを考慮するものとなっているが、転炉内溶銑の脱P、脱S処理に対して、生産性を阻害することなく、スラグのフォーミング性を確保しつつ排滓性を向上させるものであって、スクラップ溶け残りを無くすための技術とはなっていない。
そこで、本発明は、上記問題を鑑み、上底吹き転炉において、装入されたスクラップの完全溶解を可能とする転炉の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかる転炉の操業方法は、上底吹き型の転炉で装入されたスクラップを溶解しながら脱炭処理を行うものであって、13.5〜16分に設定された吹錬時間内に前記スクラップを完全に溶解すべく、式(2)で求められるスクラップ半径rcと式(3),(4)で求められる100%溶解半径rc,100%とが、式(1)を満たし、且つ上吹きの攪拌動力εTと底下吹きの攪拌動力εBとが、式(5)〜(7)を満たすように、脱炭処理を行うことを特徴とする。
【0008】
【数2】

【0009】
なお、全吹錬期間において、上吹きの攪拌動力εTと底下吹きの攪拌動力εBとが、式(5)〜式(7)を満たすように操業することは非常に好ましい。
上吹きの攪拌動力εT、底吹きの攪拌動力εBは、式(8),式(9)を用いて算出する。
【0010】
【数3】

【0011】
本願発明者らは、様々な転炉操業データを分析することで、上述の式(1)〜式(7)の条件を見いだし、この条件を満たす転炉の操業を行うことで、上底吹き転炉において、装入されたスクラップの完全溶解を可能とすることができることを明らかとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる転炉の操業方法を用いることで、上底吹き転炉において、装入されたスクラップの完全溶解を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる転炉の操業方法を、図を例示して説明する。
図1は、本操業方法を適用する上底吹き転炉1の概略を示したものである。
上底吹き転炉1(単に転炉と呼ぶこともある)には予めスクラップ2(冷鉄源)が装入されていて、その上で脱りん工程を経た溶銑3が流し入れられる。転炉1内の溶銑3に対しては、脱炭剤等の副原料を投入すると共に、転炉1の炉口から上吹きランス4(単にランス又はノズルと呼ぶこともある)を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付ける。それと同時に、炉底に設けられた羽口5から窒素やアルゴンなどのガスを吹き込み溶銑3を攪拌しつつ脱炭精錬(吹錬)を行う。
【0014】
脱炭が終わった溶鋼は、転炉1を傾けることで、転炉1の出鋼口から出鋼され、2次精錬処理設備や連続鋳造設備へと搬送される。
かかる転炉1の操業においては、転炉1の設備条件や総酸素量の条件より、吹錬時間は13.5分以上16分未満とされている。
また、全吹錬時間において、ランス4から供給される上吹き酸素の流量QTは、上吹き攪拌動力εTが式(6)を満たすように調整され、転炉底面の羽口5から供給される底吹きガスの流量QBは、式(7)を満たすように調整され、溶銑3に対し弱攪拌状態となっている。同時に、式(5)を満たすように、上吹き酸素の流量QTと底吹きガスの流量QBとの割合をコントロールするとよい。
【0015】
加えて、転炉1内に装入されたスクラップ2と溶銑3に関しては、式(1)〜式(4)を満たすような、スクラップ厚さL、スクラップ装入量W、溶銑装入量Wmとなっている。なお、スクラップ厚さLとしては、スクラップ2の長さ、幅、厚さの内、最小の値を採用する。
【0016】
【数4】

【0017】
なお、上吹きの攪拌動力εT、底吹きの攪拌動力εBは、公知である、式(8),式(9)を用いて算出する(鉄と鋼,76(1990),p1791、鉄と鋼,67(1981),p672)。
【0018】
【数5】

【0019】
このような転炉1の操業条件を採用することで、装入されたスクラップ2を吹錬時間内に完全に溶解することができるようになる。
次に、式(1)〜式(7)の導出方法について述べる。
本願発明人は、転炉1において、装入されたスクラップ2の完全溶解を可能とする転炉の操業方法を検証すべく、様々な実験や過去の吹錬データの採取・分析を行った。データの採取にあたっては、後述するNiトレーサー法を用いた。
まず、スクラップ2の厚さLをもとに算出されるスクラップ半径rcという量に着目した。スクラップ半径rcとは、様々な形状を有するスクラップ2が等価的に球形状をしていると考えた場合の半径を意味するものである。
【0020】
本実施形態の場合、スクラップ半径rcは、式(2)を用いて算出する。式(2)は、以下のような考えのもと算出されたものである。
まず、転炉1に多数個のスクラップ2を装入した場合、スクラップ2同士の付着(重なりも含む)などにより溶解が遅れる状況が発生する。すなわち、スクラップ溶解時は、他のスクラップ2との相互作用の影響でその溶解挙動が変化すると考えられる。そこで、多数個のスクラップ2を装入した場合、単一スクラップ2のよりも見かけ上スクラップ半径が大きくなると考え、スクラップ半径rcは、スクラップ厚さLだけでなく、スクラップ装入量Wの影響を大きく受けると考えるに至った。
【0021】
そこで、スクラップ半径rcを式(2)’のように仮定した上で、式(2)’の両辺にlogを作用させた式(2)”を考える。
【0022】
【数6】

【0023】
かかる式(2)”に対し、数々の吹錬データをあてはめ、変数a,b,cを決定した。
図3にその結果が示してある。まず、図3(a)には、スクラップ厚さLがL=0.20、0.25、0.28(m)の際のデータが複数プロットしてあり、横軸がlog(W/Wm)、縦軸がlog(rc)となっている。この図の各データに最もフィットする線形回帰式を求め、その傾きを求めることで、式(2)”中の係数cを求めることができ、c=0.167となった。
同様に、図3(b)には、スクラップ装入量Wと溶銑装入量Wmとの比が、0.040,0.060、0.096、0.128の際のデータが複数プロットしてあり、横軸がlog(L)、縦軸がlog(rc)となっている。この図の各データに最もフィットする線形回帰式を求め、その傾きを求めることで、式(2)”中の係数bを求めることができ、b=0.531となった。
【0024】
そこで、図3(c)のように、横軸を0.531log(L)+0.167log(W/Wm)、縦軸をlog(rc)とし、全てのデータをプロットした上で、この図のデータに最もフィットする線形回帰式を求め、そのy切片を明らかにした。その結果(log(a)=−0.1338)から、係数a=0.735ということを見いだした。これらの結果から、式(2)を規定するに至った。
一方、本発明の場合、転炉1においてスクラップ溶解能力を評価する場合によく用いられる100%溶解半径rc,100%は、吹錬時間θと総攪拌動力εとに関連すると考え、式(3)’と仮定した。100%溶解半径rc,100%は、この半径(大きさ)を等価的に有するスクラップ2であれば、溶け残り無く完全溶解するということを示している。
【0025】
【数7】

【0026】
式(3)’おける係数a,b,cを求めるべく、式(3)’の両辺にlogを作用させた式(3)”を考え、かかる式(3)”に対し、数々の吹錬データをあてはめ、変数a,b,cを決定した。
図4にその結果が示してある。まず、図4(a)には、吹錬時間θが13.5、15.5、16.0(min)の際のデータが複数プロットしてあり、横軸がlog(ε)、縦軸がlog(rc)となっている。この図のデータに最もフィットする線形回帰式を求め、その傾きを求めることで、式(3)”中の係数cを求めることができ、c=0.378となった。
【0027】
次に、ε=一定のデータを用いて、係数bの値を求めればよいが、実際の操業データを用いた場合、ε=一定のデータを多数準備することは困難であることが多い。ゆえに、図4(a)のy切片がθの関数である(y切片=log(a)+blog(θ))ことを利用して、横軸にlog(θ)、縦軸にy切片の図にデータをプロットし、各データに最もフィットする線形回帰式を求めることで、係数a,bを求めるようにする。
図4(b)にその結果が示してある。この図より明らかなように、係数a,bはそれぞれ0.000499、1.26となり、式(3)を得ることができる。
【0028】
式(3),式(4)で求められる100%溶解半径rc,100%より、式(2)で求められるスクラップ半径rcが小さい場合(式(1)を満たす場合)、転炉1内に装入されたスクラップ2は確実に溶けることになり、非常に好ましい転炉1の操業となる。
図2には、式(2)及び式(3)で計算された値がプロットしてあり、式(1)を満足する条件下のスクラップ2が、吹錬時間中に完全に溶解することが示されるものとなっている。逆に、転炉1に装入したスクラップ2を100%完全溶解するためには、この図の左上の領域に計算結果がプロットされるように、スクラップ条件と吹錬条件を決定すればよい。すなわち、使用するスクラップ厚さLやスクラップ装入量Wが予め判っておれば、それに応じて吹錬時間θや総攪拌動力εを決定すればよいし、逆に、転炉1における吹錬時間θと総攪拌動力εが決まっていれば、それに見合うスクラップ厚さLや装入量Wのスクラップ2を装入するとよい。
【0029】
なお、上吹き攪拌同力密度εT 、底吹き攪拌動力εBは、式(8),式(9)により算出されるものを用いる。
次に、式(4)の導出について述べる。
本願発明者らは、上吹き攪拌と底吹き攪拌とで計算される総攪拌動力εに関し、それぞれの寄与の割合について研究を重ねた結果、上吹き攪拌の影響は底吹き攪拌に比べて、0.7程度の攪拌寄与があることを見出した。
詳しくは、本願発明者らは、底吹きガスによる攪拌強度に加え、上吹き酸素による攪拌強度や底吹きガスとのバランスなどを考慮し、総攪拌動力εを式(4)’の如く仮定した(β=0.1〜1.0)。
【0030】
【数8】

【0031】
その上で、溶銑3とスクラップ2との熱伝達率hを、総攪拌動力εのみの関数であると仮定すると共に、熱伝達率hは総攪拌動力εの0.2或いは0.3乗に依存するといわれている関係を基にして、log(h)とlog(ε)とが最も線形関係を示すようなβの値を求めるようにした。
溶銑3〜スクラップ2間の熱伝達率hを計算するにあたっては、スクラップ溶解モデル(例えば、「スクラップ−溶鉄相互間の熱と炭素の同時移動を考慮したスクラップ溶解モデル」、磯部ら、鉄と鋼、76(1990)、p2033)等を用いるとよい。
【0032】
図5には、βを0.1〜1.0と変化させた場合の総攪拌動力(log(ε))と、スクラップ溶解モデルの計算により決定した熱伝達率(log(h))との値をプロットしたものを示している。
この図からわかるように、β=0.7の場合に最も線形関係(分散R2≒1)があることが明らかとなった。ゆえに、本発明では、ε=0.7×εT+εBと規定した。
次に、式(5)に関し、上底吹き攪拌動力εTと底吹き攪拌動力εBとの比の範囲を、0.6〜1.5と規定した理由について以下に述べる。
【0033】
底吹き攪拌と上底吹き攪拌を併用してスクラップ2の溶解を行うに際し、εT/εB <0.6の場合、底吹きガス量QBは多いことになるが、逆に底吹きガス量QBが多すぎて、転炉1の底に配置されたスクラップ2周辺の乱れが生じにくい状況下となる。加えて、上吹き酸素の流量QTが小さいことから、底吹きガスによる溶銑攪拌効果よりも溶銑3に対する冷却効果の影響の方が大きくなり、溶銑3の熱が奪われてしまうことになる。その結果、スクラップ2ヘの熱と[C]の供給が遅くなり、見かけ上100%溶解半径rc,100%が小さくなってしまう。
【0034】
一方、εT/εB >1.5の場合は、底吹きガス量QBが少なく、スクラップ2近傍での溶銑3の攪拌が弱くなる。その場合、スクラップ2同士が融着しやすくなって、見かけ上スクラップ半径rcが大きくなってしまい、結果的にスクラップ2が溶け残る原因となる。
これらのことより、本願発明人らは、効果的なスクラップ溶解には両者のバランス4が重要であるとの見解にいたって、スクラップ2ー溶銑3間の熱と炭素の速やかな移動の観点から、上底吹き攪拌動力εTと底吹き攪拌動力εBとの比の範囲を、式(5)のようにした。
【0035】
なお、上吹き酸素の流量QTが大きく送酸速度が大の場合、脱炭処理の時間が短いため、スクラップ2の溶解が追いつかなかったり、スピッティングによる炉口への地金付着やダスト発生量が増大したり等、操業上好ましくない現象が起こる。逆に、上吹き酸素の流量QTが小さい場合、スクラップ溶解の面では問題ないが、転炉1本来の機能である脱炭処理が遅くなり、生産性が著しく悪化する。これらのことより、上吹き攪拌動力εTを式(6)のように800≦εT≦1200と規定した。
一方、底吹きガスに関しては、流量QBが小さい場合にはスクラップ2が溶け残る可能性があるため、一定流量以上は大きくすることが好ましい。ところが、底吹き流量QBを大きくするためには、底吹き羽口5や底吹きガス供給設備を大容量のものに対応させる必要があり、設備面で問題が生じる可能性大である。これらのことを鑑み、底吹き攪拌動力を式(7)のように600≦εB≦1400と規定した。
【実施例】
【0036】
以上述べた、転炉1の操業方法を用いて、溶銑3の吹錬を行った結果を表1に示す。なお、全ての場合において、吹錬時間は13.5分以上〜16分未満である。本実施例で使用した上底吹き転炉1は250ton規模のものであり、製鉄所内において発生した種々な厚さLを持つスクラップ2を8〜24ton装入し吹錬を行った。
スクラップ2の溶解状況はNiトレーサー法(後述)により明らかにした。
【0037】
【表1】

【0038】
No1〜No24は、式(1)〜式(7)の全てを満たすように、転炉1における吹錬を行った場合であって、いずれの場合も100%の溶解率を達成した。No25〜No45は、式(1)〜式(4)を満たさない条件下で吹錬を行った場合であって、スクラップ2の溶け残りが発生している。
詳しくは、No25〜No45の内、式(5)〜式(7)を満たすもの(例えば、No27,39,45)は、スクラップ溶解率が90%以上で、解け残りはあるもののほとんど溶解している状況となっている。なお、No31のデータに関しては、式(5)〜(7)を満たしているが、スクラップ厚さと装入量が大きく、スクラップ溶解率が77%となっている。
【0039】
しかしながら、底吹きガスによる攪拌が関係する条件式→式(5),式(7)を満たさないもの(例えば、No30,42)は、溶解率が50%台となっており、好ましくない状況である。
No46〜48は、吹錬の途中(吹錬開始後10分)で上吹き攪拌動力εTあるいは底吹き攪拌動力εBを変化させた場合である。No46は、吹錬途中までは式(5),(6)を満たし、吹錬途中からはかかる条件を外れるようにしたものである。No47は、吹錬途中から式(5),(7)を満たすようにしたものである。No48は、吹錬途中までは式(5),(7)を満たし、吹錬途中からはかかる条件を外れるようにしたものである。どの場合も吹錬条件を変化させたために、スクラップ2の溶け残りが発生している。
【0040】
これらの実施例からわかるように、スクラップ溶解率を100%とするためには、式(1)〜式(4)を満たす、すなわちスクラップ半径rcを100%溶解半径rc,100%より小さくすると共に、全吹錬期間(θ=13.5〜16分)に対して、式(5)〜式(7)の条件を満たすことが必要であることがわかる。
なお、上述した「Niトレーサー法」とは、種々の厚さを持ち且つNi含有量が既知のスクラップ2を転炉1に一括装入し、吹錬中及び吹き止め時に数回、溶銑サンプリングを行い、誘導結合プラズマ発光分光分析法により溶銑3または溶鋼中のNi量(Ni化学分析値)を求めるものである。溶銑3中のNi量が、予め装入したスクラップ2に含有されるNi量と同じになれば、スクラップ2が完全溶解したと判定できる。また、溶銑3または溶鋼中のNi量と予め装入したスクラップ2に含有されるNi量との比により、溶解したスクラップ2の量が明らかとなる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】上底吹き転炉の概略図である。
【図2】スクラップ半径と100%溶解半径との関係を示した図である。
【図3】スクラップ半径の計算式を導出するための図である。
【図4】100%溶解半径の計算式を導出するための図である。
【図5】上吹き攪拌動力の寄与度を求めるための図である。
【符号の説明】
【0043】
1 上底吹き転炉
2 スクラップ
3 溶銑
4 上吹きランス
5 羽口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上底吹き型の転炉で装入されたスクラップを溶解しながら脱炭処理を行う転炉の操業方法において、
13.5〜16分に設定された吹錬時間内に前記スクラップを完全に溶解すべく、式(2)で求められるスクラップ半径rcと式(3),(4)で求められる100%溶解半径rc,100%とが、式(1)を満たし、且つ上吹きの攪拌動力εTと底下吹きの攪拌動力εBとが、式(5)〜(7)を満たすように、脱炭処理を行うことを特徴とする転炉の操業方法。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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