説明

転炉炉体状態の測定装置

【課題】 製鋼用転炉本体の鉄皮温度と該本体とそれを支持するトラニオンリングとの距離を同時に測定することを可能とし、かつ、測定のためセンサーが損傷したとき等においてセンサーから測定値変換器に至る配線の交換作業を効率化し得る転炉の炉体状態測定装置を提案することを目的とする。
【解決手段】 転炉本体に鉄皮とトラニオンリング内面との間隙を測定するためのレーザー距離計と前記鉄皮の温度を測定する熱電対と前記レーザー距離計及び熱電対の発する計測信号をケーブルによってデータ処理装置に送信可能となした転炉の炉体状態測定装置において、前記トラニオンリングに端子収容箱を設けるとともに、該端子収容箱内に前記レーザー距離計及び前記熱電対とを電気的に接続・離脱可能とする集合端子を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用転炉の炉体状態の測定装置に係り、特に製鋼用転炉本体の鉄皮温度及び鉄皮とトラニオンリングとの距離を同時に測定するための装置に関する。本発明は、また、転炉の炉体状態の測定装置の保守点検を容易にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼用転炉は、一般に、回転軸に支持されたトラニオンリングに炉体本体の鉄皮が支持されており、これにより炉体本体が傾動可能にされている。このトラニオンリングは上部と下部で炉体を支持しており、転炉本体とトラニオンリングとの間には隙間が設けられている。
【0003】
上記の転炉本体の鉄皮は精錬時の高熱に繰返し曝されるため炉体変形が進行する。そのため従来の転炉装置の保守・点検作業に当たっては、転炉本体の鉄皮とトラニオンリングとの隙間を測定し、この隙間が規定値以下になったとき、転炉本体を交換することとしていた。また、転炉の鉄皮の内側には、耐火物が施工されているが、精錬チャージ数を重ねるにしたがって次第に溶損し、その厚みが小さくなる。耐火物の厚みが薄くなると鉄皮の受ける熱負荷も大きくなり、炉体の変形が加速されることになる。そこで、上記転炉本体の操業時の温度を測定し、あるいは推定して上記転炉本体の交換時期の適切化が図られている。
【0004】
かかるトラニオンリングと鉄皮との隙間を測定する手段として、例えば特許文献1には、転炉の炉体を支持するトラニオンリングに距離計を設けて炉体とトラニオンリングとの距離を常時測定するようにした転炉々体間隙測定装置が開示されている。また、転炉鉄皮の温度の測定手段として、例えば特許文献2には、製鋼炉鉄皮冷却装置に用いるための炉体状態測定装置として炉体に温度測定用センサーを貼付することが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−134616号公報
【特許文献2】特開平1−104712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら特許文献1、2に開示された手段は、トラニオンリングと炉体鉄皮の距離と温度を同時に測定するものではない上に、例えば、特許文献2に示すように、センサーで検知された温度信号を伝達する通信ケーブルは、トラニオンリング周りからトラニオン軸2を貫通する孔を通して測定値変換器16に直接つなぎ込まれる構造になっており、また、上記センサーから測定値変換器に至る配線は、転炉操業時の高熱に曝されるため、その損傷防止のためにガス等によって冷却された配管を通して行われるようになっているので、例えば、センサーが損傷すると、センサーの貼付部から測定値変換器に至る配線をすべて交換することが必要であった。
【0007】
本発明は、製鋼用転炉本体の鉄皮温度及び鉄皮とトラニオンリングとの距離を同時に測定することを可能とし、かつ、測定のためセンサーが損傷したとき等においてセンサーから測定値変換器に至る配線の交換作業を効率化し得る転炉の炉体状態測定装置を提案することを目的とする。また、本発明は、かかる炉体状態測定装置を備えた転炉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、転炉本体に鉄皮とトラニオンリング内面との間隙を測定するためのレーザー距離計と前記鉄皮の温度を測定する熱電対と前記レーザー距離計及び熱電対の発する計測信号をケーブルによってデータ処理装置に送信可能となした転炉の炉体状態測定装置において、前記トラニオンリングに端子収容箱を設けるとともに、該端子収容箱内に前記レーザー距離計及び前記熱電対とを電気的に接続・離脱可能とする集合端子を設けている。
【0009】
上記発明において、内部に冷却ガスを導通可能な配管又はホースを前記端子箱から前記トラニオン軸の操作側端部まで延在せしめるとともに、該配管内に前記集合端子から通信ケーブルを挿通せしめるのが好適である。
【0010】
また、端子収容箱から該トラニオンリングを鉄皮側まで貫通する貫通孔内にレーザー距離計を設置するとともに、該レーザー距離計を端子収容箱から噴出するガスにより冷却可能とするのが好適である。
【0011】
さらに、端子収容箱をトラニオンリングの空気穴に隣接して設けるとともに、熱電対を該端子収容箱から該空気穴を経由して鉄皮に取付けるようにするができる。
【0012】
製鋼用転炉には、上記何れかの転炉の炉体状態測定装置を複数備えるのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、製鋼用転炉本体の鉄皮温度及び鉄皮とトラニオンリングとの距離を同時に測定することが可能となるとともに、センサー等が損傷したとき、端子収容箱より末端側のセンサー部のみを交換すればよく、従来の如く大掛かりな配線用足場を設置した上でセンサーの交換作業を行う必要がなく、転炉の稼働率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の炉体状態測定装置10の適用された製鋼用転炉の概略側面図であり、図2は、図1のA−A矢視断面図である。ここに示すように、炉体本体1がトラニオンリング2によって支持され、トラニオン軸3を介して転炉本体1が傾動可能になっている。トラニオン軸3は、駆動側(DR側)から図示しない駆動源によって駆動されるようになっている。また、トラニオンリング2には複数の空気穴6があけられており、ここから導入される空気によって炉体本体1が冷却されるようになっている。炉体本体1は、鉄皮4の内側に耐火レンガ5が内張りされている。
【0015】
本発明において用いる炉体状態測定装置10は、図2、3に示すように、転炉本体1の鉄皮4とトラニオンリング2の内面との間隙xを測定するためのレーザー距離計11と前記鉄皮4の温度を測定する熱電対12とを備えている。また、これらレーザー距離計11及び熱電対12は、通信ケーブル13によってデータ処理装置(図示しない)に送信可能となっており、転炉の炉体状態、特に鉄皮4の状態が転炉操業中においても監視できるようになっている。
【0016】
前記レーザー距離計11及び熱電対12は、これらを動作状態におくことによりそれぞれ転炉本体1の鉄皮4とトラニオンリング2の内面との間隙xに関する距離情報及び鉄皮4の温度情報に相当する電気信号を発するが、本発明においては、これら電気信号がトラニオンリング2に設けた端子収容箱20内の集合端子21からケーブル配管31を通して外部に伝達されるようになっている。
【0017】
端子箱20は、図3に示す例では、トラニオンリング2の一部を切り欠いて箱型をなすようにトラニオンリング2の内部に設けられており、その外周側は開閉可能の扉22となっており、内部にレーザー距離計11等を取付け・取外し可能に設置している。したがって、レーザー距離計を作動状態におくことにより、トラニオンリング2の取付け位置を基準にして鉄皮4までの距離xに係る測定信号が発生し、この信号が導線25により端子箱20内の集合端子21を経て外部に伝達されるようになっている。
【0018】
端子箱20の一方の側面(図3の左側)は、空気穴6と接しており、空気穴6に設けた端子26に取付けられた熱電対12により鉄皮4の温度を測定できるようになっている。熱電対12による鉄皮4の温度測定信号は端子26から延びた補償導線27等を介して、端子箱20内の集合端子21を経て外部に伝達されるようになっている。
【0019】
したがって、例えば、熱電対12に断線等の事故が生じたときには、空気穴6に設けた端子26から先の熱電対本体のみを交換すれば足りることになる。また、レーザー距離計11が故障したとき、あるいは定期点検するときには、これを貫通孔23から取外し、正常に作動するものに取り替えればよい。
【0020】
上記のようにして、温度信号及び距離測定信号は、端子箱20の集合端子21から、例えば、通信ケーブル13により測定値変換器やデータ処理装置に伝達されるが、本発明では、通信ケーブル13を、内部に冷却ガスを導通できる配管31を前記端子収容箱20からトラニオン軸3の操作側端部9まで延在せしめるとともに、該配管31内に集合端子21から通信ケーブル13を挿通せしめることによって行う。
【0021】
配管31は、図3に示すように、端子収容箱20の側面に開口しており、その中を集合端子21から延びる導電ケーブル13が挿通できるようになっている。配管31は、図1に示すように、トラニオン軸3を貫通して操作側端部9において、例えばT字継手に接続され、その一方から導電ケーブル13が導出され、他方が冷却ガス供給部に接続されている。
【0022】
このようにして、導電ケーブル13は、配管31を満たす冷却ガスによって冷却されるので、長期間に亘って断線等の事故から開放される。また、配管31を通して冷却ガスが端子収容箱20内に送り込まれるので、端子収容箱20内を冷却することができ、その内部の集合端子21や補償導線27を転炉炉体の熱から保護することができる。
【0023】
また、レーザー距離計11は、前記端子収容箱20から鉄皮4に向けてトラニオンリング2に穿った貫通孔23内に設置されるが、該貫通孔23とレーザー距離計11の間に適当な隙間を設けることにより、前記配管31から冷却ガスがレーザー距離計11の周囲に供給され、レーザー距離計の冷却が図られることになる。
【0024】
上記の構成により、転炉炉体の状態を常時監視できることになるが、転炉炉体の状態はその周方向に受ける熱負荷のばらつきなどにより一様ではない。したがって、上記炉体状態測定装置は、トラニオンリング2の周方向の少なくとも2箇所以上、好ましくは4〜6箇所に設けるのがよい。
【0025】
この場合において、前記配管31及びその中を挿通される導電ケーブル13は、個別にトラニオン軸3内を通してもよいが、保守・点検等の効率化を考慮して、例えば、図4に示すようにトラニオン軸3への挿通直前にケーブル集合箱33を設け、配管31A、31B、32Cを配管32にまとめた上でトラニオン軸3内に通すようにするのがよい。
【0026】
なお、本例では、端子収容箱20は空気穴20に接するようにトラニオンリング2内にも受けられているが、必ずしもそのようにする必要はなく、例えば、トラニオンリン2の外周側に空気穴から離間して設けてもよいまた、本例では、導電ケーブル13は、配管31に挿通されているが、この配管31をホースに置換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の炉体状態測定装置10の適用された製鋼用転炉の概略側面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である
【図3】本発明に係る炉体状態測定装置の構成を示す模式説明図である。
【図4】ケーブル集合箱の構成を示す模式説明図である
【符号の説明】
【0028】
1:炉体本体
2:トラニオンリング
3:トラニオン軸
4:鉄皮
5:耐火レンガ
6:空気穴
9:操作側端部
10:炉体状態測定装置
11:レーザー距離計
12:熱電対
13:通信ケーブル
20:端子収容箱
21:集合端子
22:扉
23:貫通孔
25:導線
26:端子
27:補償導線
31(31A,31B, 31C):配管
32:集合配管
33:ケーブル集合箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉本体に鉄皮とトラニオンリング内面との間隙を測定するためのレーザー距離計と前記鉄皮の温度を測定する熱電対と前記レーザー距離計及び熱電対の発する計測信号をケーブルによってデータ処理装置に送信可能となした転炉の炉体状態測定装置において、
前記トラニオンリングに端子収容箱を設けるとともに、該端子収容箱内に前記レーザー距離計及び前記熱電対とを電気的に接続・切断可能とする集合端子を設けてなることを特徴とする転炉の炉体状態測定装置。
【請求項2】
内部に冷却ガスを導通可能な配管又はホースを前記端子箱から前記トラニオン軸の操作側端部まで延在せしめるとともに、該配管又はホース内に前記集合端子から通信ケーブルを挿通せしめてなることを特徴とする請求項1記載の転炉の炉体状態測定装置。
【請求項3】
端子収容箱からトラニオンリングを鉄皮側まで貫通する貫通孔内にレーザー距離計を設置するとともに、該レーザー距離計を端子収容箱から噴出するガスにより冷却可能としてなることを特徴とする請求項1又は2記載の転炉の炉体状態測定装置。
【請求項4】
端子収容箱をトラニオンリングの空気穴に隣接して設けるとともに、熱電対を該端子収容箱から該空気穴を経由して鉄皮に取付けるものとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の転炉の炉体状態測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の転炉の炉体状態測定装置を複数備えていることを特徴とする製鋼用転炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−214717(P2008−214717A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56175(P2007−56175)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】