説明

転移予防のための医薬の製造のためのタウロリジンまたはタウルルタムの使用

【課題】タウロリジンまたはタウルルタム溶液の転移性増殖の予防または低減のための使用を提供する。
【解決手段】特に腹部悪性疾患と闘病するのに使用する場合に、関心が払われている、最小限侵襲腹腔鏡検査の一つの特徴は転移性増殖が認められている範囲である。悪性疾患の処置により悪性細胞の撹乱および放出が生じ、次にその他の部位に移動し、そこでこれらの細胞が付着し、増殖を開始すると転移を生じ、予想のとおりの不幸な結果となる。トロカールを使用する最小限侵襲腹腔鏡検査では、除去中の腫瘍の撹乱および隣接する組織との接触が避けられぬものとなる。これは、外科手術後、特に最小侵襲性腹腔鏡外科手術の過程でのトロカールの使用後の転移性増殖の発症を予防または低減するのに特に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転移を予防する方法、特に悪性腫瘍の転移性増殖を予防する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は外科手術、特に腹腔鏡のような内視鏡外科手術のような最小限侵襲腹部外科手術後の転移性増殖を予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内、特に腹部の悪性腫瘍は外科的に除去されることが多い。多年にわたって侵襲の大きな外科手術による腫瘍の検査および切除が用いられてきたが、さらに近年になって最小限の侵襲外科手術が漸次用いられるようになった。
例えば開腹術または腹腔鏡検査のような侵襲外科手術を使用し得る広範囲な悪性腫瘍の適応症が存在している。これらには限定されるものではないが次のようなものが包含される:食道がん(プラスター細胞(plaster cell)がん、腺がん)および噴門がん;悪性変性潰瘍;胃、洞または体のがん、島細胞の悪性の腺腫、一部または全体の胃切除;胆管または末端総胆管のがん;膵頭、乳頭、膵体または膵尾のがん;小腸または大腸の腸管のがん;肉腫;結腸悪性疾患;腺がん、リンパ腫、悪性カルチノイド、黒色腫、線維肉腫;直腸のがん;卵巣がん;乳がんおよび前立腺がん。
【0003】
最小限侵襲外科手術の使用により、死亡率の低下および術後感染率の低減がもたらされた。例えば、古典的な開腹外科手術、すなわち開腹術では最小限侵襲外科手術よりも手術時間が短くてもよいが、長い術後回復期および例えば敗血症のような感染症の危険性の増大が伴うものである。最小限侵襲腹腔鏡検査が増加している理由の一つは、患者が病院および家庭の両方で回復に要する時間が著しく低減されることである。腹腔鏡検査は、傷の瘢痕また傷の治癒に関連する術後合併症が著しく低減する利点をも有している。
【0004】
広範囲な腹腔鏡手法が一般に使用されていて、これらには次のものが包含される:腹腔鏡胆のう切除術、腹腔鏡胃底ヒダ形成術(胃食道疾患のための抗反射外科手術)、傍食道ヘルニアの腹腔鏡処置、腹部のう胞の腹腔鏡処置(例えばのう胞切除で除いた肝のう胞)、腹腔鏡肝切除術、腹腔鏡虫垂切除術、腸閉塞の腹腔鏡処置(例えば、かん頓ヘルニア、結腸閉塞および塊状拡張小腸閉塞)、腹腔鏡結腸直腸外科手術(例えば、回腸仙骨切除、結腸半切除、S字結腸切除、直腸脱および直腸切断)、腹腔鏡癒着切離、緊急腹腔鏡検査(試験診断)、虫垂炎の判別診断、急性の腹部、回腸、腹部外傷および腫瘍学的疑い(例えば、がんが手術可能か否かを決定するため)。
【0005】
特に腹部悪性疾患と闘病するのに使用する場合に、関心が払われている、最小限侵襲腹腔鏡検査の一つの特徴は転移性増殖が認められている範囲である。悪性疾患の処置により悪性細胞の撹乱および放出が生じ、次にその他の部位に移動し、そこでこれらの細胞が付着し、増殖を開始すると転移を生じ、予想のとおりの不幸な結果となる。この危険性は例えば古典的な開放式開腹術中はより低くなり、その結果腫瘍全体が慎重に摘出、除去されて、細胞が腹部のその他の部分に移送されることがない。しかしながら、トロカールを使用する最小限侵襲腹腔鏡検査では、これが可能とならないことがあり、除去中の腫瘍の撹乱および隣接する組織との接触が避けられぬものとなる。「トロカール転移」は、往々にして最小限侵襲腹部外科手術処置、例えば腹腔鏡外科手術の結果であることが見い出されている。
【0006】
腹腔鏡介入後、往々にして認められる転移の一つの理由は、その直径が5〜20mmの範囲にあるトロカールチューブまたはスリーブの使用にあるものと考えられる。これらは悪性組織に対する損傷を生じるか、またはそうでなければ細胞に富んだ滲出液と接触し、次いでトロカールスリーブから腹腔内にしたたり落ち、これにより転移を開始する。腹部から切除した器官または断片の除去を行うために、トロカールスリーブを介して「レスキュー」(rescue)バッグが導入されている。原発性腫瘍の切除された腫瘍細胞または細胞系状構造による腹腔の汚染を防止しようとして、炎症を起こしている切除部分または悪性組織を除去する場合、特にそのようにされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者等は、外科手術後の転移、特に腹腔鏡手術によって生じるものと考えられるトロカール転移の発生が、タウルルタム(taurultam)、タウロリジンまたはこれらの混合物を含有する溶液で、手術中に冒されている領域および器具または腫瘍のいずれかが接触したいずれのその他の内部組織または器官に点滴注入するときに、低減されることを見い出した。
動物モデルで実施した研究では、タウルルタムまたはタウロリジンの点滴注入の後に腫瘍の増殖または蔓延の顕著な抑制が認められている。
従って、一つの特徴からみて、本発明者等は転移性増殖の予防または低減をするためのタウルルタムまたはタウロリジン溶液の使用を提供するものである。これは、外科手術後、特に最小限侵襲腹腔鏡外科手術中のトロカールの使用後の転移性増殖の発生を予防または低減するに当たっての特別な通用例ではあるが、一般的な適用性を有している。
【0008】
さらに他の特徴からみて、本発明者等は、転移の予防、特に転移性増殖の予防または低減のための医薬の製造におけるタウロリジンおよび(または)タウルルタムの使用を提供するものである。
好ましい溶液は、化合物の溶解度を基にして、タウロリジン0.5〜3重量%またはタウルルタム2〜3重量%を含有している。タウロリジン0.5〜1.0%または2.0%を含む溶液が好ましい。
【0009】
溶液は一般には滅菌、発熱性物質を含有しない水で調製され、例えば、溶液を等張化するための無機またはその他の塩、またはその他の成分を含有していてもよい。例えば、非経口的に許容し得るポリオールも存在していてもよく、これらのものはタウロリジンの全静脈内耐性を増大させることが認められている。適当なポリオールには、炭水化物例えばグルコースおよびフルクトースのようなヘキソース(またはこれらの混合物例えば転化糖)、例えばキシロースのようなペントースまたは例えばデキストランまたは加水分解でんぷんのような多糖類;グリセロールおよび例えばソルビトール、マンニトールまたはキシリトールのような糖アルコールが包含される。
【0010】
ポリオールの濃度は3〜40重量%の範囲で有用である。グルコースの場合、濃度は10〜30重量%の範囲、好ましくは20%である。
溶液はポリビニルピロリドン(PVP)を含有していてもよい。このものは例えば4〜7重量%の濃度で溶液中に混入することができる。5%PVPを含む溶液が好ましい。これは活性物質の可溶化を援助し、かつまた溶液のコロイド浸透圧に寄与する。PVPの分子量は30,000を超えてはならず、10,000未満、例えば7000〜9000が好ましい。BASFから販売されているKollidone 17が比較的急速に再吸収され、腎排泄される。
【0011】
これらの状況下での転移性増殖予防におけるタウロリジンまたタウルルタムの正確な作用機序はなお明らかではない。理論的な考究に束縛されることを望むものではないが、本発明者等は、タウロリジンまたはタウルルタムは接着分子(受容体)例えばI−P−セレクチンおよびフィブロネクチンのタンパク質構造表面を改変し得るものと考えている。例えばこれらのもの、またインテグリン、ヒドロネクチンおよびラミニンをも包含する分子の過剰発現が転移性発症の主要原因と考えられている。その理由は、これらのものが悪性細胞にその他の細胞表面および内皮特に血管内皮に移行し、付着する能力を付与すると考えられているからである。次いで、悪性細胞は占座したものとなり、細胞を増殖およびさらに発育させるものとなる(転移)。一旦発育すると、この細胞は血液またはリンパ液チャンネルを通って全器官に到達し得る(転移の形成)。
【0012】
タウロリジンまたはタウルルタムは、悪性細胞の表面構造を付着分子の過剰発現を低減させるような方式で変更するものと考えられる。結果として、悪性細胞がその他の細胞表面および内皮例えば内皮に付着することが低減されるか、または付着する前に細胞自体が死滅するものと考えられる。活性剤は悪性細胞に対して何らかの直接の細胞毒性効果を有しているものとは考えられない。タウロリジンまたはタウルルタムは腹腔液中で高いサイトカインレベル例えばIL−1βを防止し、次いで腫瘍細胞増殖および付着を防止するものとも考えられる。それで、タウロリジンまたはタウルルタムは本質的には予防的に使用されているものである。
【0013】
タウロリジンまたはタウルルタム溶液は、点滴注入により、エアロゾール(タウロリジンまたはタウルルタムの噴霧溶液)として、そして(または)静脈内注入により簡単に使用し得る。外科手術処置と関連して使用する場合、この溶液は外科手術処置を実施する前、その間、またはその後に投与することができる。外科手術により冒された領域を洗浄するための点滴注入として使用するときは、この溶液は手術中にまたは外科手術による切開傷を縫合する前に投与することができる。最小限侵襲外科手術では、溶液はトロカールチューブまたはスリーブ中を通すことができる。
【0014】
一般に、腹腔鏡検査の準備に当たり、腹壁を持ち上げる。これは通気法(気腹法)または機械的に行うことができる。腸管係蹄に損傷を与えることなく腹壁を上げるのに特殊な器具が必要である。ガスを腹腔に導入し得る一方に開口部を有するベレス針を気腹法の準備のために一般に使用する。通気法に通常使用されるガスにはN2O、CO2およびヘリウムが包含され、腹腔に1L/分までの速度で導入することができる。患者の体の大きさおよび組織緊張度を基にして、3〜5LのCO2ガスを必要とする。局所麻酔下での診断用腹腔鏡検査にはN2Oが好ましい。その理由は、CO2とは異なって、このガスは腹膜を刺激しないからである。理論に束縛されることを望むものではないが、この刺激がCO2使用時に認められるさらに頻度の高い転移発現の理由の一つに当たるものと考えられる。
【0015】
腹壁を機械的に持ち上げるのに金属のサスペンションバーが通常使用される。一旦腹部に挿入されると、特殊なフックがサスペンションバーに取り付けられ、次にチェインおよびサスペンションスケールを用いて腹部を持ち上げる。
外科手術処置の術式に従って、例えば最小限侵襲腹部外科手術では、2%、1%または0.5%タウロリジン溶液100〜1000ml、好ましくは100〜250mlを体温で点滴注入し、そして手術処置の終了後で、かつ気腹法(腹腔を拡大し、そして腹腔鏡検査を開始する)に用いたガスの排出およびトロカールの最終除去の前に、腹腔内に留置することができる。
【0016】
術後合併症、特にトロカール転移の予防のために、2%タウロリン(Taurolin)、0.5%タウロリン−リンゲルまたは2〜3%タウルルタム溶液を使用することができる。通常、腹部を洗浄−吸引チューブを用いて該溶液で洗浄する。5Lまたは10Lの洗浄バッグに所望の洗浄液(等張化生理食塩水またはリンゲル液)を入れ、約2mの高さにつるす。次に、洗浄液1〜2Lを洗浄−吸引チューブを通して導入する。短時間の接触時間(腸管係蹄が洗浄液で完全に覆われることを確実なものとするのに十分な時間)後に、溶液を吸引除去する。重篤な炎症の場合、洗浄液が不透明になり、そのために視覚およびカメラを使用する腹部の可視度が貧弱となる。このような場合には、腹部の中の液が透明および
半透明となるまで、この洗浄操作を繰り返す必要がある。
【0017】
洗浄操作が完了し、溶液が透明になったときに、洗浄バッグに2%タウロリン(37℃に予め熱しておく)250mlを入れ、腹腔中に流入するようにする。最後に、腹部を縫合する前にドレーンを挿入する。例えば重症の腹膜炎のような重篤な症例では、腹腔内にタウロリン2%溶液1000mlまでを点滴注入(そして場合によっては留置)することも可能である。2%タウロリン溶液の代わりに、タウロリン−リンゲル0.5%溶液または2〜3%タウルルタム溶液1〜1.5Lを使用することができる。
【0018】
悪性腫瘍の患者には、点滴注入として例えば4×250ml/日の投与量で中心静脈カテーテルを通して静脈内にタウロリン2%を追加して投与するのが特に有利である。必要に応じて、外科手術後点滴注入を2〜3日間続行してもよい。
あるいはまた、加圧洗浄装置を使用して2%タウロリン溶液を点滴注入し、そして吸引除去してもよい。別の変法は、加圧カフを洗浄バッグに取り付け、これにより吸引を吸引除去装置を用いて実施することである。また、点滴注入の代替として注入ポンプを使用することも可能である。
【0019】
本発明の好ましい態様では、タウロリジンまたはタウルルタム溶液をヘパリンと同時に使用する。ヘパリン単独の使用は転移性増殖に顕著な作用を及ぼさないことが見い出されているが、組み合わせて、または別個に投与されるタウロリジンと共にヘパリンを使用すると顕著な相乗効果を生じることが見い出された。ヘパリンの所望の投与量は血液凝固試験の結果に左右される。従って、この投与量は患者によって変わるが、それでも当業者は容易に定めることができる。ヘパリンの平均投与量は230〜625I.U.ヘパリン−Na/kg体重の範囲にあるものと予想できる。一般に5000I.U.ヘパリン−Naを外科手術前2時間までに投与することができる。
【0020】
腹腔鏡外科手術に使用するためには、標準ヘパリンナトリウムまたは標準ヘパリンカルシウムを適用直前にタウロリジン溶液に加えることができる。あるいはまた、低分子量ヘパリンを使用することもできる。典型的には等張化生理食塩水またはリンゲル液中0.5〜1.0%タウロリン200〜500mlをトロカールチューブを介して1000〜5000I.U.ヘパリンと組み合わせて投与することができる。
【0021】
タウロリジン−ヘパリン溶液は通常マイクロポンプを用いて加圧下例えば約10〜12mmHgで適用することができる。このようにして投与すると溶液はエアロゾールとして腹腔に入り、外科手術中すべての露出された腹間(内部および外側)表面に溶液をさらに広範囲にわたって適用するものとなる。エアロゾールとして溶液を適用することにより、二酸化炭素による気腹中の効率が増大される結果となる。
【0022】
本発明の代替の態様において、タウロリジンまたはタウルルタム溶液はヒアルロン酸と同時に使用することができ、例えば、好ましくは2.5×106Daの分子量を有する医薬品等級の0.1%ヒアルロン酸ナトリウム塩溶液を使用することができる。
【0023】
試験手順
腹腔鏡手術によって生じる腹腔内腫瘍増殖およびトロカール転移を防止するために、インビトロでの結腸がん細胞(DHD/L12/TRb)およびラットモデルでの該細胞の増殖に対するタウロリジンおよびヘパリンの効果を検討した。細胞をヘパリン、タウロリジンまたはこれら両物質と共にインキュベーションした後、細胞の増殖動態のインビトロ測定を行った。腫瘍細胞の腹腔内適用に次いで、30分間気腹を発現させる第二の実験をラット(n=60)について続いて行った。ラットを無作為に次の4群にわけた。
I 腫瘍細胞
II 腫瘍細胞+ヘパリン
III 腫瘍細胞+タウロリジン
IV 腫瘍細胞+タウロリジン+ヘパリン
【0024】
結果
インビトロで腫瘍増殖がヘパリンによって影響を受けない場合、タウロリジンおよび(または)タウロリジン/ヘパリンで顕著な増殖抑制が認められた。しかし、インビボでは、比較対照群(596±278mg)に比較して腹腔内腫瘍重量はヘパリンの点滴により(298±155mg)、またタウロリジンにより(149±247mg)共に減少した。両物質の併用により、さらに平均腫瘍重量の低減(21.5±36mg)が生じた。トロカール転移の発現はタウロリジン単独、またはタウロリジンとヘパリンとの組み合わせを用いて顕著に抑制することができた。
以下の限定を企図しない実施例を用いて、本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0025】
実施例1−腹腔鏡手術
典型的な腹部手術(限定するものと解すべきではない)において、体温の0.5%タウロリジンリンゲル溶液を最小圧下に吸引洗浄チューブを経て手術中に洗浄する。
外科手術の侵襲の範囲に従って、2%タウロリジン100〜250mlを37℃で点滴し、外科手術の処置が終わると腹腔内に留置したままにする。
【0026】
実施例2−腹腔鏡手術
典型的な腹部手術を実施例1に従って実施することができる。但し、2%タウロリジン溶液を2500I.U.ヘパリンと組み合わせた0.5%タウロリジンリンゲル溶液500mlで置き換える。この溶液を腹腔内にドレーンを介して点滴し、次に2時間クランプして留置しておく。
【0027】
実施例3−開腹術(部分的膵切除術)
典型的な膵頭がんの処置において、手術部位を約500〜1000mlの温(37℃)0.5%タウロリン−リンゲル溶液で慎重に洗浄する。10分間の接触時間後に溶液を吸引除去する。
20分毎に、手術部位を大型目盛付き曲りシリンジを用いて2%タウロリン溶液100〜200mlで湿潤する。
10〜15分間の接触時間後に溶液を吸引除去する。腹腔壁を最終的に縫合する前に、250mlタウロリン2%溶液(*)(血液凝固結果に従ってヘパリンを添加)を点滴注入する。
* あるいはまた、2〜3%タウルルタムを使用してもよい。
【0028】
実施例4−開腹術(根治乳房切除術)
典型的な乳がん処置(根治乳房切除術)において、手術部位を手術中に20分毎に200mlタウロリン2%溶液を用いて洗浄する。可能ならば、外科手術用ドレープをあげて10分間の接触時間を得るようにし、これによって洗浄溶液が極めて速く流れ去らないようにする。
次に、手術傷を縫合し、ドレーンをつける。
さらに、中心静脈カテーテルを介して250mlの2%タウロリン溶液を手術中に点滴注入により投与する(投与量:4×250ml/24時間)。
【0029】
実施例5−腹腔鏡手術
典型的な腹部手法において、タウロリジン溶液をエアロゾールの形態で投与する。これはガス(例えばCO2)供給装置と手術を行うべき腹腔との間に置いたマイクロポンプの
使用により行われる。チューブを使用してエアロゾールをトロカールチューブまたはスリーブ中に送り込む。タウロリジン溶液は腹部手術中例えば100〜200ml/時の速度でスプレー剤として連続投与してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡外科手術中トロカールの使用後の転移性増殖を予防または低減するためのタウロリジン、タウルルタムまたはこれらの混合物を包含する医薬溶液であって、
前記医薬溶液が
(i)第1の部分が、トロカールチューブまたはスリーブを通して、当該外科手術の前、その間、あるいはその後に投与され、そして、
(ii)第2の部分が、静脈内注入により、当該外科手術の前、その間、あるいはその後に投与される、
ことを特徴とする、医薬溶液。
【請求項2】
医薬溶液がタウロリジン0.5〜3重量%またはタウルルタム2〜3重量%を含有している請求項1記載の医薬溶液。
【請求項3】
前記医薬溶液の第1の部分が前記トロカールチューブまたはスリーブからエアロゾールの形態で出るようにマイクロポンプを使用して投与される請求項1または2記載の医薬溶液。

【公開番号】特開2010−215615(P2010−215615A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29152(P2010−29152)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【分割の表示】特願2000−504921(P2000−504921)の分割
【原出願日】平成10年7月31日(1998.7.31)
【出願人】(500039717)エド・ガイストリヒ・ゼーネ・アクチエンゲゼルシャフト・フューア・ヒェーミシェ・インドゥストリー (2)
【Fターム(参考)】