軸シール機構及びこれを備える回転機械
【課題】シール体が傾いた姿勢になったとしても、シール体の傾いた姿勢が保持されることを防止する。
【解決手段】ステータに設けられた収容体9と、ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片20からなるシール体12と、シール体12の軸方向一端部20dを被覆すると共に、板面17cが収容体9の内壁面9eに押し付けられる板状体17とを備え、板状体17の板面17cと収容体9の内壁面9eとの少なくとも一方に、径方向内方側から外方側に向けて延びると共に軸方向に凹んだ凹部31と、径方向内方側において凹部31よりも他方側に突出する凸部とが形成され、凸部が他方に当接して前記一方と前記他方との間に流体高圧領域に連通するポケットXが形成された場合に、凹部31がポケットXと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする。
【解決手段】ステータに設けられた収容体9と、ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片20からなるシール体12と、シール体12の軸方向一端部20dを被覆すると共に、板面17cが収容体9の内壁面9eに押し付けられる板状体17とを備え、板状体17の板面17cと収容体9の内壁面9eとの少なくとも一方に、径方向内方側から外方側に向けて延びると共に軸方向に凹んだ凹部31と、径方向内方側において凹部31よりも他方側に突出する凸部とが形成され、凸部が他方に当接して前記一方と前記他方との間に流体高圧領域に連通するポケットXが形成された場合に、凹部31がポケットXと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとの隙間を封止して、この隙間を流体低圧領域と流体高圧領域とに分ける軸シール機構及びこれを備える回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、蒸気タービン等の回転機械のロータ回りには、高圧側から低圧側に流れる作動流体の漏れ量を少なくするために、軸シール機構が設けられている。この軸シール機構の一例として、例えば、以下の特許文献1に記載された軸シール機構がある。
【0003】
この軸シール機構は、ステータに設けられ、収容空間の開放部がロータの外周に向けて形成されたハウジングと、多数の薄板シール片からなるシール体とを備えている。
シール体は、多数の薄板シール片がそれぞれの厚さ方向をロータの周方向に向け、互いに微小間隙を空けて重ねられている。各薄板シール片は、その径方向内方端がその径方向外方端よりもロータの回転方向側に位置するよう傾斜配置され、径方向外方端側が相互に連結され、かつ、径方向内方端が自由端とされている。
このシール体は、その径方向外方側がハウジングに収容支持されており、その径方向内方側をハウジングの開放部からロータの外周に向けて延出させている。
【0004】
このように概略構成される軸シール機構においては、各薄板シール片の径方向内方側が、ロータが静止している際にはロータと接触しているものの、ロータが回転すると、ロータの回転によって生じる動圧効果により、ロータの外周から浮上してロータと非接触状態となる。このため、この軸シール機構では、各薄板シール片の磨耗が抑制され、シール寿命が長くなる。
【0005】
ところで、上記軸シール機構においては、シール体の流体低圧領域側の軸方向一端部を低圧側サイドシール板で覆うと共に、シール体の流体高圧領域側の軸方向他端部を高圧側サイドシール板で覆っている。そして、これら低圧側サイドシール板と高圧側サイドシール板との径方向寸法を調整することで、軸方向一端部の下流側空間及び軸方向他端部の上流側空間の大きさを規定し、上述した動圧効果による浮上力を補助するように微小間隙のガス圧力分布を設定している。
【0006】
上記軸シール機構においては、シール体等がハウジングに遊びをもった状態で収容されており、流体の差圧で収容空間をシール体が軸方向に変位して、シール体の一端部を覆う低圧側サイドシール板がハウジングに押し付けられる。つまり、上述したシール体の上流側空間及び下流側空間の大きさは、低圧側サイドシール板がハウジングに押し付けられた状態を前提にして設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3616016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記軸シール機構においては、ハウジングの収容空間に混入したダスト、あるいは、シール体側の部材やハウジングの製作誤差等によってシール体の径方向外方側が軸方向の変位を拘束されることがある。この場合において、流体の圧力が作用すると、シール体の径方向内方側が流体低圧領域側に傾いた姿勢となり、低圧側サイドシール板の端部とハウジングとが線状に密接して流体高圧領域に連通するポケットが形成され、このポケットに高圧流体が充満して、シール体が傾いた姿勢でハウジングに押圧保持されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、シール体が傾いた姿勢になったとしても、シール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る軸シール機構は、ロータの外周を囲うステータと前記ロータとの隙間を封止して前記隙間を前記ロータの軸方向一方側の流体低圧領域と軸方向他方側の流体高圧領域とに分ける軸シール機構であって、前記ステータに設けられ、周方向に延びる収容空間が形成されると共に前記収容空間の開放部が前記ロータの外周に向けて形成された収容体と、前記ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片からなり、径方向外方端側が前記収容体の収容空間に収容されて径方向内方端を前記開放部から前記ロータの外周に向けて延出させるシール体と、前記シール体の前記軸方向一端部を被覆すると共に、前記軸方向一方側に向いた板面が前記軸方向に対向する前記収容体の内壁面に前記流体の圧力で押し付けられる板状体とを備え、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも一方に、前記径方向内方側から外方側に向けて延びると共に前記軸方向に凹んだ凹部と、前記径方向内方側において前記凹部よりも他方側に突出する凸部とを有する凹凸部が形成され、前記凹凸部は、前記凸部が前記他方に当接して前記一方と前記他方との間に前記流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、前記凹部が前記ポケットと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする。
この構成によれば、板状体の板面と収容体の内壁面との間に流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、凹部がポケットと流体低圧領域とを連通させるので、シール体が流体低圧領域側に傾いて板面と内壁面との間にポケットが形成され、このポケットに流体高圧領域から流体が流入したとしても、流体が凹部を介して流体低圧領域に流れる。これにより、板面と内壁面との間に形成されたポケットに高圧流体が充満することがなく、シール体が傾いた姿勢のまま保持されることを防止することができる。
【0011】
また、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも片方に、前記径方向外方側に形成されると共に、前記凹部に対して前記軸方向に突出する突出部を備え、前記突出部は、前記板面が前記内壁面に押し付けられた場合に前記残り片方に密接して前記流体高圧領域と前記流体低圧領域との連通を遮断することを特徴とする。
この構成によれば、板面が内壁面に押し付けられた場合に流体高圧領域と流体低圧領域との連通を遮断するので、シール体の姿勢の傾きが解消された場合に、流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断する。これにより、シール体が傾いた姿勢においては、シール体が傾いた姿勢のまま保持されることを抑止することができる一方、シール体の姿勢の傾きが解消された場合に、流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断して、設計したシール性能を確保することができる。
【0012】
また、前記凹部は、前記径方向内方側から外方側に向けて延在する径方向延在溝を備えることを特徴とする。
この構成によれば、比較的に簡素に凹部と凸部とを形成することができる。
【0013】
また、前記凹部は、前記径方向延在溝よりも前記径方向外方側に形成され、前記周方向に延在して前記径方向延在溝に連通する周方向延在溝を備えることを特徴とする。
この構成によれば、凹部が周方向の広い範囲に亘って形成されるので、不特定箇所に形成されるポケットに対応して、ポケットと流体低圧領域とを容易に連通させることができる。
【0014】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との一方にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、凹凸部が板状体の板面と収容体の内壁面との一方にのみ形成されているので、凹凸部を形成する手間や労力を抑えることができる。
【0015】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、板状体の板面にのみ凹凸部を形成するので、収容体の内壁面に凹凸部を形成する場合に比べて、凹凸部を容易に形成することができる。また、既存の軸シール機構の板状体のみを交換するだけで本発明の構成を得ることができる。
【0016】
また、前記凹凸部は、前記収容体の内壁面にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、収容体の内壁面のみに凹凸部を形成するので、板状体に凹凸部を形成する場合に比べて、凹凸部を形成した後の剛性を比較的に容易に確保することができ、凹凸部の形状(例えば、凹部の範囲や広さ)の自由度を向上させることができる。
【0017】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との双方に形成され、双方の前記凸部が互いに当接することを特徴とする。
この構成によれば、凹凸部が板状体の板面と収容体の内壁面との双方に形成されているので、双方の凹部の深さを小さくすることができる一方、ポケットと流体低圧領域との連通空間を大きく確保することができる。
【0018】
また、本発明に係る回転機械は、上記のうちいずれか一に記載の軸シール機構を備えることを特徴とする。
この構成によれば、上記のうちいずれか一の軸シール機構を備えるので、シール体が傾いた姿勢になったとしても薄板シール片の浮上力の低下が抑制され、軸シール機構が高寿命となってメンテナンス性に優れた回転機械にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る軸シール機構によれば、シール体が傾いた姿勢になったとしても、シール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することができると共に薄板シール片の浮上力の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る回転機械によれば、シール体が傾いた姿勢になったとしてもシール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することができると共に薄板シール片の浮上力の低下を抑制することができるので、軸シール機構が高寿命となってメンテナンス性に優れた回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図である。
【図2】図1におけるS1−S1線断面図である。
【図3】図2におけるS2−S2線断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシールセグメント11を軸方向一方側から他方側に見た概略図である。
【図5】図3におけるS3−S3線断面図である。
【図6】図5におけるS4−S4線断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第一の作用説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第二の作用説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第三の作用説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図である。
【図11】本発明の実施形態に係るシールセグメント11における薄板シール片20の要部断面図であって、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る軸シール機構50の要部断面図であって、周方向に交差する断面を示している。
【図13】図12におけるS5−S5線断面図である。
【図14】図13におけるS6−S6線断面図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係る軸シール機構70の要部断面図であって、周方向に交差する断面を示している。
【図16】図15におけるS8−S8線断面図である。
【図17】図16におけるS9−S9線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
「ガスタービンの構成」
図1は本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図である。
ガスタービン1は、図1に示すように、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機(回転機械)2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するガスタービン(回転機械)4とを備えている。
【0023】
圧縮機2及びタービン4は、それぞれ、一体回転するように連結されたロータ2A,4Aと、ロータ2A,4Aを囲うステータ2B,4Bとを備えている。なお、以下の説明においては、特に言及しない限り、ロータ2A,4Aの軸方向を単に「軸方向」と、ロータ2A,4Aの周方向を単に「周方向」と、ロータ2A,4Aの径方向を単に「径方向」という。
【0024】
ロータ2A,4Aは、回転軸6c,6と、軸方向に間隔を空けて固定されている複数の環状動翼群7c,7と、を有している。各環状動翼群7c,7は、回転軸6c,6の外周に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の動翼を有して構成されている。
ステータ2B,4Bは、それぞれ、ケーシング2b,4bと、ケーシング2b,4b内において軸方向に間隔を空けて固定された複数の環状静翼群5c,5とを備えている。環状静翼群5c,5は、各ケーシング2b,4b内面に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の静翼とを有している。各静翼の先端には、ハブシュラウドが形成されており、このハブシュラウド(ステータ)が周方向に連結されて全体として円環状になって回転軸6c,6の外周を囲んでいる。
この環状静翼群5c,5は、それぞれ、複数の環状動翼群7c,7と、軸方向に交互に配置されている。
【0025】
圧縮機2及びタービン4には、高圧側から低圧側に作動流体(圧縮空気又は燃焼ガス)gが軸方向に漏出するのを防止するため、図1に示すように、各環状静翼群5c,5のハブシュラウドに軸シール機構10c,10が設けられている。また、ケーシング2b,4bが回転軸6c,6を支持する軸受け部(ステータ)2c,4cにおいても、作動流体gが高圧側から低圧側に漏出するのを防止するため、軸シール機構10c,10が設けられている。
【0026】
以下、タービン4の軸シール機構10の実施形態について説明する。なお、以下では、タービン4の軸シール機構10について説明するが、圧縮機2の軸シール機構10cも、基本的に同様の構成なので、この説明を省略する。
【0027】
「軸シール機構の第一実施形態」
図2は図1におけるS1−S1線断面図であり、図3は図2におけるS2−S2線断面図である。
図2に示すように、タービン4の軸シール機構10は、環状静翼群5のハブシュラウドと軸受け部4cの内周面とにそれぞれ支持された円環状のハウジング9内に、円弧状に延びるシールセグメント11が、周方向に複数(本実施形態では八つ)配置されることで構成されている。
【0028】
ハウジング9は、回転軸6の外周に沿って周方向全周に延びており(図2参照)、円環状の収容空間9aが形成されている。図3に示すように、ハウジング9の収容空間9aは、周方向に交差する断面輪郭がT字状になっており、径方向外方側において幅寸法(軸方向)が大きく形成された外方側空間9bと、径方向内方側において幅寸法が小さく形成された内方側空間9cとが連通している。そして、この内方側空間9cの開放部9dが径方向内方側の回転軸6の外周に向いている。
【0029】
シールセグメント11は、図3に示すように、多数の薄板シール片20からなるシール体12(図4参照)と、断面コ字状を成して多数の薄板シール片20を保持する保持リング13,14と、多数の薄板シール片20のハウジング9側に配置される背面スペーサ15と、シール体12を軸方向から挟むように設けられたサイドシール板16,17と、から構成されている。
【0030】
図4は、シールセグメント11を軸方向一方側から他方側に見た概略図である。
シール体12は、図4に示すように、薄板状の薄板シール片20が多数重ねられ(図2参照)、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されてなっている。
薄板シール片20は、図3に示すように、主に薄い鋼板によって形成された部材であり、回転軸6の周方向から見てT字状(逆T字状)に形成され、その幅方向を回転軸6の軸方向に向け、言い換えると、その厚さ方向を回転軸6の周方向に向けている。
【0031】
この薄板シール片20は、頭部21と、この頭部21よりも幅寸法及び厚さ寸法が小さく形成されている胴部23と、頭部21と胴部23の間に位置して、これらよりも幅寸法が小さく形成されている首部22と、を有している。この薄板シール片20は、回転軸6の径方向において、外側から内側に向かって、頭部21、首部22、胴部23の順に形成されている。
【0032】
多数の薄板シール片20は、それぞれの頭部21が互いに溶接されて、相互に連結されている。また、多数の薄板シール片20の胴部23は、弾性変形可能であり、それぞれの胴部23の径方向内方端、つまり当該薄板シール片20の径方向内方端20bが自由端になっている。そして、回転軸6の停止時においては、各薄板シール片20の内方端20b側が回転軸6に所定の予圧で接触する。
【0033】
多数の薄板シール片20は、図4に示すように、互いに周方向に微小間隙sを空けて配列されている。多数の薄板シール片20は、頭部21の厚さ寸法が首部22及び胴部23の厚さ寸法よりも大きいことにより、それぞれの厚さ方向で相互に隣接する二つの薄板シール片20の胴部23間に微小間隙sが形成される。
【0034】
このような多数の薄板シール片20からなるシール体12は、各薄板シール片20の胴部23の側端部20cが多数集合して小口状となった高圧側端部(他端部)12cが流体高圧領域(軸方向他方側)に向けられ、胴部23の側端部20dが多数集合して小口状となった低圧側端部12dが流体低圧領域(軸方向一方側)に向けられている。
【0035】
保持リング13,14は、いずれも、断面コ字状で、コ字の内側が溝部を成し、且つ回転軸6の周方向に延びる円弧状部材である。各保持リング13,14の溝部の幅(回転軸6の径方向における溝部の寸法)は、薄板シール片20の頭部21の、径方向における寸法よりも若干大きい。薄板シール片20の頭部21の流体高圧領域側(軸方向他方側)は、保持リング13の溝部内に入れられ、薄板シール片20の頭部21の流体低圧領域(軸方向一方側)は、保持リング14の溝部内に入れられている。各保持リング13,14の溝部の側壁と、薄板シール片20の頭部21との間には、背面スペーサ15が嵌め込まれている。これにより、多数の薄板シール片20の頭部21は、保持リング13,14により保持されている。
【0036】
サイドシール板16,17は、いずれも厚さ方向を軸方向に向け、回転軸6の軸方向から見た形状が円弧帯状になっている。また、サイドシール板17の径方向寸法は、サイドシール板16の径方向寸法よりも短くなっている。
【0037】
これらサイドシール板16,17は、径方向外方側のベース部16a,17aと、径方向内方側の薄板シール部16b,17bとを有している。
ベース部16a,17aは、その厚さ(軸方向寸法)が薄板シール部16b,17bの厚さよりも厚く、薄板シール部16b,17bを基準にして軸方向に突出している。
【0038】
サイドシール板16のベース部16aは、薄板シール片20の頭部21と胴部23との間の高圧側の凹みに入り込み、薄板シール片20の首部22と断面コ字状の保持リング13の「コ」の腕部先端との間で挟み込まれている。
このようにして、サイドシール板16の軸方向他方側を向いた板面16cが、シール体12のうち高圧側端部12cの大部分を覆って、軸方向に見て高圧側端部12cの径方向内方側を僅かに露出させている。
【0039】
サイドシール板17のベース部17aは、薄板シール片20の頭部21と胴部23との間の低圧側の凹みに入り込み、薄板シール片20の首部22と断面コ字状の保持リング14の「コ」の腕部先端との間で挟み込まれている。
このようにして、サイドシール板17の軸方向一方側を向いた板面17cが、シール体12の低圧側端部12dのうち径方向外方側の略半分を覆っており、軸方向に見て低圧側端部12dの径方向内方側の略半分を露出させている。
【0040】
このシールセグメント11は、図3に示すように、ハウジング9の収容空間9aに遊びをもって収容されている。
より具体的には、薄板シール片20の頭部21を保持した保持リング13,14が収容空間9aの外方側空間9bに収容されており、サイドシール板16,17と、薄板シール片20の胴部23とが収容空間9aの内方側空間9cに収容されている。そして、収容空間9aの開放部9dから回転軸6に向けて胴部23の先端(内方端20b)が突出している。
【0041】
このシールセグメント11は、保持リング13,14がハウジング9の外方側空間9bの壁面に干渉して径方向の変位が制限されていると共に、サイドシール板16,17がハウジング9の内方側空間9cの壁面に干渉して軸方向の変位が所定の範囲に制限されている。なお、このシールセグメント11は、外方側空間9bに配設された弾性体(不図示)によって径方向内方側に付勢されている。
【0042】
上述したシールセグメント11は、ガスタービン1を稼働させると、燃焼ガスgの圧力によって流体低圧領域側に変位して、図3に示すように、サイドシール板17の板面17cが軸方向に対向するハウジング9(内方側空間9c)の内壁面9eに押付けられる。
この内壁面9eには、凹凸部30が形成されている。
【0043】
図5は、図3におけるS3−S3線断面図であり、図6は、図5におけるS4−S4線断面図である。
凹凸部30は、径方向内方側から外方側に向けて形成されると共に軸方向一方側に凹んだ凹部31と、径方向内方側において周方向に連続して形成されると共に凹部31に対して板面17c側(軸方向他方側)に突出する凸部32とを有する。
凹部31は、径方向内方側から外方側に向けて延在する複数の径溝(径方向延在溝)31aと、複数の径溝31aよりも径方向外方側に形成され、周方向に延在して各径溝31aに連通する周溝(周方向延在溝)31bとを有している。
【0044】
図5に示すように、径溝31aは、径方向寸法が溝幅寸法と同程度の寸法に形成されており、図3及び図6に示すように、サイドシール板17の内周端17dよりも径方向内方に位置する内端31a1から、内周端17dよりも径方向外方に位置する外端31a2に向けて延在している。この径溝31aは、図5に示すように、周方向に凸部32を介して等間隔に複数形成されている。
【0045】
周溝31bは、周方向に延在しており、径方向外方側を突出部33に画定されていると共に、径方向内方側を凸部32に画定されており、各径溝31aの外端31a2にそれぞれ連通している。
【0046】
突出部33は、凹部31の底面に対して軸方向に突出すると共に周方向に連続して形成されており、図3及び図6に示すように、板面17cのうちベース部17aに相当する位置に対向している。この突出部33は、軸方向において、軸方向に交差する端面が凸部32の端面と同一の位置に形成されている。
【0047】
凸部32は、図5に示すように、円弧帯状に形成されており、周方向において径溝31aと交互に形成されている。
このような凹凸部30及び突出部33は、周方向における端部が、隣接する他のシールセグメント11におけるハウジング9の凹凸部30と連続しており、凹部31が周方向に連通している。
【0048】
続いて上述した軸シール機構10の作用について、主に図7〜11を用いて説明する。
ガスタービン1が停止状態から起動されると、流体低圧領域と流体高圧領域との圧力差が大きくなっていき、これに比例してシールセグメント11が流体低圧領域に向けて燃焼ガスgに押圧される。
この際、流体低圧領域から流体高圧領域に流れる燃焼ガスgは、シール体12の薄板シール片20の微小間隙sを通過する他、図7に示すように、開放部9dを介して流体高圧領域からハウジング9の収容空間9aに流入し、サイドシール板16に沿って内方側空間9cを径方向外方側に流れて外方側空間9bに流入し、保持リング13、背面スペーサ15、保持リング14に沿って外方側空間9bを流れた後に、サイドシール板17の板面17cと内方側空間9cの内壁面9eに沿って径方向内方側に流れて流体低圧領域に流出する(符号g1で示す)。なお、内方側空間9cを径方向外方に流れてサイドシール板16のベース部16aに到達した燃焼ガスgの一部は、サイドシール板16と頭部21及び胴部23との隙間、首部22の隙間、サイドシール板17と頭部21及び胴部23との隙間を通過する(符号g2で示す)。
【0049】
図7に示すように、シールセグメント11がハウジング9の内壁面9eに密接する前に、例えば、ハウジング9の収容空間9aに混入したダストDにより、シールセグメント11の径方向外方側の軸方向の変位が拘束されると、図8に示すように、シールセグメント11の径方向内方側(径方向内方端20b)が燃焼ガスgによって押圧されて軸方向一方側に傾斜する。
傾斜したシールセグメント11は、その径方向内方側が燃焼ガスgによって押圧されることで、サイドシール板17の内周端17dがハウジング9の内壁面9e(凸部31)に線状に密接する。この場合、サイドシール板17の板面17cと内壁面9eとの間に径方向外方側から内方側に進むに従って先鋭状となったポケットXが形成される。
【0050】
ハウジング9の開放部9dから内方側空間9cに流入した燃焼ガスgは、外方側空間9bを経由してポケットXに流入した後に凹部31を介して流体低圧領域に流出する。具体的には、ポケットXから周溝31bに流入した後に、外端31a2から内端31a1まで径溝31aを流れて再び内方側空間9cに流出し、内壁面9eに沿って径方向内方側に流れて流体低圧領域に流出する。
【0051】
流体低圧領域と流体高圧領域との圧力差が所定値以上に大きくなると、燃焼ガスgがシール体12及びサイドシール板16を全体的に押圧することで、図9に示すように、板面17cと内壁面9eとが密接する。この状態においては、突出部33が板面17cに密接することで、収容空間9aを流れる燃焼ガスg1,g2を封止する。
そして、板面17cに内壁面9eが押付けられることで、シール体12の低圧側端部12dの下流側空間L(図10参照)が設定された大きさになる。
【0052】
一方、各微小間隙sに侵入した燃焼ガスgは、図10に示すように、微小間隙sを介して対向する上面20pと下面20qとに沿って、角部r1から角部r2の方向へ放射状に流れる。
つまり、サイドシール板17の径方向寸法が、サイドシール板16の径方向寸法よりも大きくされることで、図9に示すように、薄板シール片20の内方端20bにおいて高圧側に位置する角部r1で最もガス圧が高く、対角の角部r2に向かって徐々にガス圧が弱まるガス圧力分布40aが形成される。
【0053】
図10に示すように、ガス圧力分布40aは、薄板シール片20の外方端20aに向かって低圧の領域が広がる。そのため、図10に示すように、各薄板シール片20の上面20p及び下面20qに加わるガス圧力分布40b,40cは、薄板シール片20の内方端20bに近いほど大きくなると共に外方端20aに向かうほど小さくなる三角分布形状となる。
【0054】
図11に示すように、上面20p及び下面20qのそれぞれにおけるガス圧力分布40b,40cは略等しい形状となるが、回転軸6の外周の接線方向に傾くようにして各薄板シール片20が配置されているので、これら上面20p及び下面20qにおける各ガス圧力分布40b,40cの相対位置がずれる。よって、薄板シール片20の外方端20aから内方端20bに向かう任意の点Pにおける上面20p及び下面20qのガス圧に差が生じ、下面20qに加わるガス圧が上面20pに加わるガス圧よりも高くなる。これによって、薄板シール片20の内方端20bに対して回転軸6より浮かせる方向に浮上力FLが発生する。
以上のようにして、薄板シール片20に浮上力FLが作用し、動圧効果による浮上力を補助する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の軸シール機構10によれば、サイドシール板17の板面17cとハウジング9の内壁面9eとの間に流体高圧領域に連通するポケットXが形成された場合に、内壁面9eに形成された凹部31がポケットXと流体低圧領域とを連通させるので、ハウジング9の収容空間9aとの間に混入したダストDによってシールセグメント11が流体低圧領域側に傾いてポケットXが形成されたとしても、高圧の燃焼ガスgがポケットXを介して流体低圧領域に流れる。これにより、板面17cと内壁面9eとの間に形成されたポケットXに高圧の燃焼ガスgが充満することがなく、シールセグメント11が傾いた姿勢のまま保持されることを防止することができる。そして、シール体12の上流側空間H及び下流側空間Lを設計した大きさに復帰させることができ、薄板シール片20の浮上力が低下することを抑制することができる。
【0056】
また、板面17cと内壁面9eとが押付けられた場合に流体高圧領域と流体低圧領域との連通を突出部33によって遮断するので、シール体12の傾きが解消された場合に流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断する。これにより、シールセグメント11が傾いた姿勢においては、シールセグメント11が傾いた姿勢のまま保持されることを抑止することができる一方、姿勢の傾きが解消された場合に、設計したシール性能を確保することができる。
【0057】
また、凹凸部30が内壁面9eにのみ形成されるので、後述するように、内壁面9e及び板面17cの双方に凹凸部を形成する場合に比べて、労力及び手間を軽減することができる。
また、サイドシール板17よりも厚い(軸方向寸法)ハウジング9の内壁面9eのみに凹凸部30を形成するので、凹凸部30を板面17cに形成する場合に比べて、凹凸部を形成した後の剛性を比較的に容易に確保することができる。また、凹凸部30の形状(凹部31の広さや深さ)の自由度を向上させることができる。
【0058】
また、薄板シール片20の浮上力の低下が抑制されて長寿命となる軸シール機構10を備えるので、ガスタービンのメンテナンス性を向上させることができる。
【0059】
また、周溝31bが周方向に延在して凹部31が周方向の広い範囲に亘って形成されるので、不特定箇所に形成されるポケットXに対応して、ポケットXと流体低圧領域とを連通させることができる。
【0060】
なお、上述した構成においては、シールセグメント11を周方向に八つ配置させて軸シール機構10を構成したが、単数又は八つ以外の複数のシールセグメントで軸シール機構を構成してもよい。
【0061】
また、上述した構成においては、周方向における端部が、隣接する他のシールセグメント11におけるハウジング9の凹凸部30と連続しており、凹部31が周方向に連通する構成としたが、互いに周方向に隣接するシールセグメント11の凹部31を隔絶させてもよい。
【0062】
「軸シール機構の第二実施形態」
次に、本発明の第二実施形態に係る軸シール機構50について図を用いて説明する。
図12は、軸シール機構50の周方向に交差する要部断面図(図13におけるS7-S7線断面図)であり、図13は、図12におけるS5−S5線断面図であり、図14は、図13におけるS6−S6線断面図である。なお、図12〜図14において、図1〜図11と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
軸シール機構50は、軸シール機構10がハウジング9の内壁面9eにのみ凹凸部30を形成したのに対して、図12に示すように、サイドシール板17の板面17cにのみ凹凸部60を形成している。
【0064】
図13に示すように、凹凸部60は、凹部61と凸部62とを有している。
凹部61は、凹部31とほぼ同様の構成となっており、内周端17dから径方向外方側に向けて放射状に延在する複数の径溝61aと、複数の径溝61aよりも径方向外方側に形成されて径溝61aに連通する周溝61bとを有している。
凸部62は、凸部32とほぼ同様の構成となっており、周方向に隣接する二つの径溝61aの間に複数形成されている。
【0065】
この凹凸部60が形成された板面17cには、径方向外方側において周方向に延在すると共に、周溝31bの底面から内壁面9eに向けて突出して周溝31bの径方向外周側を画定する突出部63が形成されている。
突出部63は、軸方向において、軸方向に交差する端面が凸部62の端面と同一の位置に形成されている。
【0066】
この構成によれば、シールセグメント11が流体低圧側に傾斜した姿勢になってサイドシール板17の内周端17dが内壁面9eに当接した場合に、ポケットXと流体低圧領域とを凹部61(径溝61a)が連通させる。また、図13に示すように、板面17cが内壁面9eに押付けられると突出部63が内壁面9eに密接して、燃焼ガスg1,g2(図7,8参照)を封止する。
これらにより、上述した効果を同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、サイドシール板17の板面17cにのみ凹凸部60を形成するので、ハウジング9の内壁面9eに比べて凹凸部を容易に形成することができる。また、既存の軸シール機構のサイドシール板17のみを交換するだけで本発明の構成を得ることができる。
【0068】
「軸シール機構の第三実施形態」
次に、本発明の第三実施形態に係る軸シール機構70について図を用いて説明する。
図15は、軸シール機構70の周方向に交差する要部断面図(図16におけるS10-S10線断面図)であり、図16は、図15におけるS8−S8線断面図であり、図17は、図16におけるS9−S9線断面図である。なお、図15〜図17において、図1〜図14と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
軸シール機構70は、突出部33を備える点と、サイドシール板17Aを備える点で、軸シール機構10,50と異なる。
【0070】
サイドシール板17Aは、第二実施形態のサイドシール板17と同様に凹凸部60が形成されているが、突出部63が形成されていない点で第二実施形態のサイドシール板17と異なる。すなわち、第二実施形態のサイドシール板17の凹部61(周溝61b)が突出部63まで形成されていたのに対して、サイドシール板17Aの凹部61はサイドシール板17Aの外終端まで形成されている。
【0071】
突出部33は、図15及び図16に示すように、サイドシール板17Aの凸部62の高さ(凹部31の底面からの高さ)と、略等しい高さだけ内壁面9eから板面17cに向けて軸方向に突出している。
【0072】
この構成によれば、シールセグメント11が流体低圧側に傾斜した姿勢になってサイドシール板17Aの内周端17dが内壁面9eに当接した場合に、ポケットXと流体低圧領域とを凹部61が連通させる。また、図15及び図17に示すように、板面17cが内壁面9eに押付けられると突出部33が凹部61の底面に密接して、燃焼ガスg1,g2(図7,8参照)を封止する。
これらにより、上述した効果を同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、サイドシール板17Aの板面17cに凹凸部60を形成する一方、突出部33を内壁面9eに形成するので、例えば、保持リング14やハウジング9の大きさや形状等によって凹凸部及び突出部の形成位置に制約が存在したとしても、この制約に柔軟に対応することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0074】
なお、上述した構成においては、サイドシール板17Aに凸凹部60を、収容体9に突出部33を形成したが、収容体9に凸凹部30を形成する一方、突出部33を省略し、かつ、サイドシール板17に突出部63を形成してもよい。
【0075】
なお、上述した実施形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、ハウジング9をステータ(ハブシュラウド,軸受け部2c,4c)と別体としたが一体に形成してもよい。
【0076】
また、上述した各実施形態においては、凹凸部30と凹凸部60との一方を用いたが、凹凸部30,60の双方を用いて凸部32,62を当接させる構成としてもよい。このような構成にすることで、双方の凹部31,61の深さを小さく形成しつつ、ポケットXと低圧側空間との連通空間を大きく構成することができる。
同様に、突出部33,63の双方を用いて、突出部33,63を相互に密接させることにより流体高圧領域と流体低圧領域との連通を遮断する構成にしてもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態において、凹凸部30及び凹凸部60の形状や構成は一例であって、上述した形状や構成に限定されない。例えば、径溝31aは、必ずしも径方向寸法と溝幅寸法とを同程度の寸法に形成する必要はないし、必ずしも等間隔に形成されている必要はない。同様に、径溝31aを複数形成せずに、一つだけ形成してもよい。
【0078】
また、上述した各実施形態においては、凹凸部30,70にそれぞれ周溝31bを設ける構成としたが、周溝31bを省略してもよいし、複数形成してもよい。この場合には、径溝31aを径方向外方側まで延長してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…ガスタービン(回転機械)
2…圧縮機(回転機械)
2A…ロータ
2B…ステータ
4…タービン(回転機械)
4A…ロータ
4B…ステータ
9…ハウジング(収容体)
9a…収容空間
9d…開放部
9e…内壁面
10,10c,50,70…軸シール機構
12…シール体
12c…高圧側端部(一端部)
12d…低圧側端部(他端部)
17,17A…サイドシール板(板状体)
20…薄板シール片
20a…外方端(径方向外方端)
20b…内方端(径方向内方端)
30,60…凹凸部
31,61…凹部
31a,61a…径溝(径方向延在溝)
31b,61b…周溝(周方向延在溝)
32,62…凸部
33,63…突出部
X…ポケット
g(g1,g2)…燃焼ガス(流体)
s…微小間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとの隙間を封止して、この隙間を流体低圧領域と流体高圧領域とに分ける軸シール機構及びこれを備える回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、蒸気タービン等の回転機械のロータ回りには、高圧側から低圧側に流れる作動流体の漏れ量を少なくするために、軸シール機構が設けられている。この軸シール機構の一例として、例えば、以下の特許文献1に記載された軸シール機構がある。
【0003】
この軸シール機構は、ステータに設けられ、収容空間の開放部がロータの外周に向けて形成されたハウジングと、多数の薄板シール片からなるシール体とを備えている。
シール体は、多数の薄板シール片がそれぞれの厚さ方向をロータの周方向に向け、互いに微小間隙を空けて重ねられている。各薄板シール片は、その径方向内方端がその径方向外方端よりもロータの回転方向側に位置するよう傾斜配置され、径方向外方端側が相互に連結され、かつ、径方向内方端が自由端とされている。
このシール体は、その径方向外方側がハウジングに収容支持されており、その径方向内方側をハウジングの開放部からロータの外周に向けて延出させている。
【0004】
このように概略構成される軸シール機構においては、各薄板シール片の径方向内方側が、ロータが静止している際にはロータと接触しているものの、ロータが回転すると、ロータの回転によって生じる動圧効果により、ロータの外周から浮上してロータと非接触状態となる。このため、この軸シール機構では、各薄板シール片の磨耗が抑制され、シール寿命が長くなる。
【0005】
ところで、上記軸シール機構においては、シール体の流体低圧領域側の軸方向一端部を低圧側サイドシール板で覆うと共に、シール体の流体高圧領域側の軸方向他端部を高圧側サイドシール板で覆っている。そして、これら低圧側サイドシール板と高圧側サイドシール板との径方向寸法を調整することで、軸方向一端部の下流側空間及び軸方向他端部の上流側空間の大きさを規定し、上述した動圧効果による浮上力を補助するように微小間隙のガス圧力分布を設定している。
【0006】
上記軸シール機構においては、シール体等がハウジングに遊びをもった状態で収容されており、流体の差圧で収容空間をシール体が軸方向に変位して、シール体の一端部を覆う低圧側サイドシール板がハウジングに押し付けられる。つまり、上述したシール体の上流側空間及び下流側空間の大きさは、低圧側サイドシール板がハウジングに押し付けられた状態を前提にして設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3616016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記軸シール機構においては、ハウジングの収容空間に混入したダスト、あるいは、シール体側の部材やハウジングの製作誤差等によってシール体の径方向外方側が軸方向の変位を拘束されることがある。この場合において、流体の圧力が作用すると、シール体の径方向内方側が流体低圧領域側に傾いた姿勢となり、低圧側サイドシール板の端部とハウジングとが線状に密接して流体高圧領域に連通するポケットが形成され、このポケットに高圧流体が充満して、シール体が傾いた姿勢でハウジングに押圧保持されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、シール体が傾いた姿勢になったとしても、シール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る軸シール機構は、ロータの外周を囲うステータと前記ロータとの隙間を封止して前記隙間を前記ロータの軸方向一方側の流体低圧領域と軸方向他方側の流体高圧領域とに分ける軸シール機構であって、前記ステータに設けられ、周方向に延びる収容空間が形成されると共に前記収容空間の開放部が前記ロータの外周に向けて形成された収容体と、前記ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片からなり、径方向外方端側が前記収容体の収容空間に収容されて径方向内方端を前記開放部から前記ロータの外周に向けて延出させるシール体と、前記シール体の前記軸方向一端部を被覆すると共に、前記軸方向一方側に向いた板面が前記軸方向に対向する前記収容体の内壁面に前記流体の圧力で押し付けられる板状体とを備え、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも一方に、前記径方向内方側から外方側に向けて延びると共に前記軸方向に凹んだ凹部と、前記径方向内方側において前記凹部よりも他方側に突出する凸部とを有する凹凸部が形成され、前記凹凸部は、前記凸部が前記他方に当接して前記一方と前記他方との間に前記流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、前記凹部が前記ポケットと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする。
この構成によれば、板状体の板面と収容体の内壁面との間に流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、凹部がポケットと流体低圧領域とを連通させるので、シール体が流体低圧領域側に傾いて板面と内壁面との間にポケットが形成され、このポケットに流体高圧領域から流体が流入したとしても、流体が凹部を介して流体低圧領域に流れる。これにより、板面と内壁面との間に形成されたポケットに高圧流体が充満することがなく、シール体が傾いた姿勢のまま保持されることを防止することができる。
【0011】
また、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも片方に、前記径方向外方側に形成されると共に、前記凹部に対して前記軸方向に突出する突出部を備え、前記突出部は、前記板面が前記内壁面に押し付けられた場合に前記残り片方に密接して前記流体高圧領域と前記流体低圧領域との連通を遮断することを特徴とする。
この構成によれば、板面が内壁面に押し付けられた場合に流体高圧領域と流体低圧領域との連通を遮断するので、シール体の姿勢の傾きが解消された場合に、流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断する。これにより、シール体が傾いた姿勢においては、シール体が傾いた姿勢のまま保持されることを抑止することができる一方、シール体の姿勢の傾きが解消された場合に、流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断して、設計したシール性能を確保することができる。
【0012】
また、前記凹部は、前記径方向内方側から外方側に向けて延在する径方向延在溝を備えることを特徴とする。
この構成によれば、比較的に簡素に凹部と凸部とを形成することができる。
【0013】
また、前記凹部は、前記径方向延在溝よりも前記径方向外方側に形成され、前記周方向に延在して前記径方向延在溝に連通する周方向延在溝を備えることを特徴とする。
この構成によれば、凹部が周方向の広い範囲に亘って形成されるので、不特定箇所に形成されるポケットに対応して、ポケットと流体低圧領域とを容易に連通させることができる。
【0014】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との一方にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、凹凸部が板状体の板面と収容体の内壁面との一方にのみ形成されているので、凹凸部を形成する手間や労力を抑えることができる。
【0015】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、板状体の板面にのみ凹凸部を形成するので、収容体の内壁面に凹凸部を形成する場合に比べて、凹凸部を容易に形成することができる。また、既存の軸シール機構の板状体のみを交換するだけで本発明の構成を得ることができる。
【0016】
また、前記凹凸部は、前記収容体の内壁面にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、収容体の内壁面のみに凹凸部を形成するので、板状体に凹凸部を形成する場合に比べて、凹凸部を形成した後の剛性を比較的に容易に確保することができ、凹凸部の形状(例えば、凹部の範囲や広さ)の自由度を向上させることができる。
【0017】
また、前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との双方に形成され、双方の前記凸部が互いに当接することを特徴とする。
この構成によれば、凹凸部が板状体の板面と収容体の内壁面との双方に形成されているので、双方の凹部の深さを小さくすることができる一方、ポケットと流体低圧領域との連通空間を大きく確保することができる。
【0018】
また、本発明に係る回転機械は、上記のうちいずれか一に記載の軸シール機構を備えることを特徴とする。
この構成によれば、上記のうちいずれか一の軸シール機構を備えるので、シール体が傾いた姿勢になったとしても薄板シール片の浮上力の低下が抑制され、軸シール機構が高寿命となってメンテナンス性に優れた回転機械にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る軸シール機構によれば、シール体が傾いた姿勢になったとしても、シール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することができると共に薄板シール片の浮上力の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る回転機械によれば、シール体が傾いた姿勢になったとしてもシール体の傾いた姿勢が保持されることを防止することができると共に薄板シール片の浮上力の低下を抑制することができるので、軸シール機構が高寿命となってメンテナンス性に優れた回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図である。
【図2】図1におけるS1−S1線断面図である。
【図3】図2におけるS2−S2線断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシールセグメント11を軸方向一方側から他方側に見た概略図である。
【図5】図3におけるS3−S3線断面図である。
【図6】図5におけるS4−S4線断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第一の作用説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第二の作用説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の第三の作用説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図である。
【図11】本発明の実施形態に係るシールセグメント11における薄板シール片20の要部断面図であって、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る軸シール機構50の要部断面図であって、周方向に交差する断面を示している。
【図13】図12におけるS5−S5線断面図である。
【図14】図13におけるS6−S6線断面図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係る軸シール機構70の要部断面図であって、周方向に交差する断面を示している。
【図16】図15におけるS8−S8線断面図である。
【図17】図16におけるS9−S9線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
「ガスタービンの構成」
図1は本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図である。
ガスタービン1は、図1に示すように、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機(回転機械)2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するガスタービン(回転機械)4とを備えている。
【0023】
圧縮機2及びタービン4は、それぞれ、一体回転するように連結されたロータ2A,4Aと、ロータ2A,4Aを囲うステータ2B,4Bとを備えている。なお、以下の説明においては、特に言及しない限り、ロータ2A,4Aの軸方向を単に「軸方向」と、ロータ2A,4Aの周方向を単に「周方向」と、ロータ2A,4Aの径方向を単に「径方向」という。
【0024】
ロータ2A,4Aは、回転軸6c,6と、軸方向に間隔を空けて固定されている複数の環状動翼群7c,7と、を有している。各環状動翼群7c,7は、回転軸6c,6の外周に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の動翼を有して構成されている。
ステータ2B,4Bは、それぞれ、ケーシング2b,4bと、ケーシング2b,4b内において軸方向に間隔を空けて固定された複数の環状静翼群5c,5とを備えている。環状静翼群5c,5は、各ケーシング2b,4b内面に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の静翼とを有している。各静翼の先端には、ハブシュラウドが形成されており、このハブシュラウド(ステータ)が周方向に連結されて全体として円環状になって回転軸6c,6の外周を囲んでいる。
この環状静翼群5c,5は、それぞれ、複数の環状動翼群7c,7と、軸方向に交互に配置されている。
【0025】
圧縮機2及びタービン4には、高圧側から低圧側に作動流体(圧縮空気又は燃焼ガス)gが軸方向に漏出するのを防止するため、図1に示すように、各環状静翼群5c,5のハブシュラウドに軸シール機構10c,10が設けられている。また、ケーシング2b,4bが回転軸6c,6を支持する軸受け部(ステータ)2c,4cにおいても、作動流体gが高圧側から低圧側に漏出するのを防止するため、軸シール機構10c,10が設けられている。
【0026】
以下、タービン4の軸シール機構10の実施形態について説明する。なお、以下では、タービン4の軸シール機構10について説明するが、圧縮機2の軸シール機構10cも、基本的に同様の構成なので、この説明を省略する。
【0027】
「軸シール機構の第一実施形態」
図2は図1におけるS1−S1線断面図であり、図3は図2におけるS2−S2線断面図である。
図2に示すように、タービン4の軸シール機構10は、環状静翼群5のハブシュラウドと軸受け部4cの内周面とにそれぞれ支持された円環状のハウジング9内に、円弧状に延びるシールセグメント11が、周方向に複数(本実施形態では八つ)配置されることで構成されている。
【0028】
ハウジング9は、回転軸6の外周に沿って周方向全周に延びており(図2参照)、円環状の収容空間9aが形成されている。図3に示すように、ハウジング9の収容空間9aは、周方向に交差する断面輪郭がT字状になっており、径方向外方側において幅寸法(軸方向)が大きく形成された外方側空間9bと、径方向内方側において幅寸法が小さく形成された内方側空間9cとが連通している。そして、この内方側空間9cの開放部9dが径方向内方側の回転軸6の外周に向いている。
【0029】
シールセグメント11は、図3に示すように、多数の薄板シール片20からなるシール体12(図4参照)と、断面コ字状を成して多数の薄板シール片20を保持する保持リング13,14と、多数の薄板シール片20のハウジング9側に配置される背面スペーサ15と、シール体12を軸方向から挟むように設けられたサイドシール板16,17と、から構成されている。
【0030】
図4は、シールセグメント11を軸方向一方側から他方側に見た概略図である。
シール体12は、図4に示すように、薄板状の薄板シール片20が多数重ねられ(図2参照)、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されてなっている。
薄板シール片20は、図3に示すように、主に薄い鋼板によって形成された部材であり、回転軸6の周方向から見てT字状(逆T字状)に形成され、その幅方向を回転軸6の軸方向に向け、言い換えると、その厚さ方向を回転軸6の周方向に向けている。
【0031】
この薄板シール片20は、頭部21と、この頭部21よりも幅寸法及び厚さ寸法が小さく形成されている胴部23と、頭部21と胴部23の間に位置して、これらよりも幅寸法が小さく形成されている首部22と、を有している。この薄板シール片20は、回転軸6の径方向において、外側から内側に向かって、頭部21、首部22、胴部23の順に形成されている。
【0032】
多数の薄板シール片20は、それぞれの頭部21が互いに溶接されて、相互に連結されている。また、多数の薄板シール片20の胴部23は、弾性変形可能であり、それぞれの胴部23の径方向内方端、つまり当該薄板シール片20の径方向内方端20bが自由端になっている。そして、回転軸6の停止時においては、各薄板シール片20の内方端20b側が回転軸6に所定の予圧で接触する。
【0033】
多数の薄板シール片20は、図4に示すように、互いに周方向に微小間隙sを空けて配列されている。多数の薄板シール片20は、頭部21の厚さ寸法が首部22及び胴部23の厚さ寸法よりも大きいことにより、それぞれの厚さ方向で相互に隣接する二つの薄板シール片20の胴部23間に微小間隙sが形成される。
【0034】
このような多数の薄板シール片20からなるシール体12は、各薄板シール片20の胴部23の側端部20cが多数集合して小口状となった高圧側端部(他端部)12cが流体高圧領域(軸方向他方側)に向けられ、胴部23の側端部20dが多数集合して小口状となった低圧側端部12dが流体低圧領域(軸方向一方側)に向けられている。
【0035】
保持リング13,14は、いずれも、断面コ字状で、コ字の内側が溝部を成し、且つ回転軸6の周方向に延びる円弧状部材である。各保持リング13,14の溝部の幅(回転軸6の径方向における溝部の寸法)は、薄板シール片20の頭部21の、径方向における寸法よりも若干大きい。薄板シール片20の頭部21の流体高圧領域側(軸方向他方側)は、保持リング13の溝部内に入れられ、薄板シール片20の頭部21の流体低圧領域(軸方向一方側)は、保持リング14の溝部内に入れられている。各保持リング13,14の溝部の側壁と、薄板シール片20の頭部21との間には、背面スペーサ15が嵌め込まれている。これにより、多数の薄板シール片20の頭部21は、保持リング13,14により保持されている。
【0036】
サイドシール板16,17は、いずれも厚さ方向を軸方向に向け、回転軸6の軸方向から見た形状が円弧帯状になっている。また、サイドシール板17の径方向寸法は、サイドシール板16の径方向寸法よりも短くなっている。
【0037】
これらサイドシール板16,17は、径方向外方側のベース部16a,17aと、径方向内方側の薄板シール部16b,17bとを有している。
ベース部16a,17aは、その厚さ(軸方向寸法)が薄板シール部16b,17bの厚さよりも厚く、薄板シール部16b,17bを基準にして軸方向に突出している。
【0038】
サイドシール板16のベース部16aは、薄板シール片20の頭部21と胴部23との間の高圧側の凹みに入り込み、薄板シール片20の首部22と断面コ字状の保持リング13の「コ」の腕部先端との間で挟み込まれている。
このようにして、サイドシール板16の軸方向他方側を向いた板面16cが、シール体12のうち高圧側端部12cの大部分を覆って、軸方向に見て高圧側端部12cの径方向内方側を僅かに露出させている。
【0039】
サイドシール板17のベース部17aは、薄板シール片20の頭部21と胴部23との間の低圧側の凹みに入り込み、薄板シール片20の首部22と断面コ字状の保持リング14の「コ」の腕部先端との間で挟み込まれている。
このようにして、サイドシール板17の軸方向一方側を向いた板面17cが、シール体12の低圧側端部12dのうち径方向外方側の略半分を覆っており、軸方向に見て低圧側端部12dの径方向内方側の略半分を露出させている。
【0040】
このシールセグメント11は、図3に示すように、ハウジング9の収容空間9aに遊びをもって収容されている。
より具体的には、薄板シール片20の頭部21を保持した保持リング13,14が収容空間9aの外方側空間9bに収容されており、サイドシール板16,17と、薄板シール片20の胴部23とが収容空間9aの内方側空間9cに収容されている。そして、収容空間9aの開放部9dから回転軸6に向けて胴部23の先端(内方端20b)が突出している。
【0041】
このシールセグメント11は、保持リング13,14がハウジング9の外方側空間9bの壁面に干渉して径方向の変位が制限されていると共に、サイドシール板16,17がハウジング9の内方側空間9cの壁面に干渉して軸方向の変位が所定の範囲に制限されている。なお、このシールセグメント11は、外方側空間9bに配設された弾性体(不図示)によって径方向内方側に付勢されている。
【0042】
上述したシールセグメント11は、ガスタービン1を稼働させると、燃焼ガスgの圧力によって流体低圧領域側に変位して、図3に示すように、サイドシール板17の板面17cが軸方向に対向するハウジング9(内方側空間9c)の内壁面9eに押付けられる。
この内壁面9eには、凹凸部30が形成されている。
【0043】
図5は、図3におけるS3−S3線断面図であり、図6は、図5におけるS4−S4線断面図である。
凹凸部30は、径方向内方側から外方側に向けて形成されると共に軸方向一方側に凹んだ凹部31と、径方向内方側において周方向に連続して形成されると共に凹部31に対して板面17c側(軸方向他方側)に突出する凸部32とを有する。
凹部31は、径方向内方側から外方側に向けて延在する複数の径溝(径方向延在溝)31aと、複数の径溝31aよりも径方向外方側に形成され、周方向に延在して各径溝31aに連通する周溝(周方向延在溝)31bとを有している。
【0044】
図5に示すように、径溝31aは、径方向寸法が溝幅寸法と同程度の寸法に形成されており、図3及び図6に示すように、サイドシール板17の内周端17dよりも径方向内方に位置する内端31a1から、内周端17dよりも径方向外方に位置する外端31a2に向けて延在している。この径溝31aは、図5に示すように、周方向に凸部32を介して等間隔に複数形成されている。
【0045】
周溝31bは、周方向に延在しており、径方向外方側を突出部33に画定されていると共に、径方向内方側を凸部32に画定されており、各径溝31aの外端31a2にそれぞれ連通している。
【0046】
突出部33は、凹部31の底面に対して軸方向に突出すると共に周方向に連続して形成されており、図3及び図6に示すように、板面17cのうちベース部17aに相当する位置に対向している。この突出部33は、軸方向において、軸方向に交差する端面が凸部32の端面と同一の位置に形成されている。
【0047】
凸部32は、図5に示すように、円弧帯状に形成されており、周方向において径溝31aと交互に形成されている。
このような凹凸部30及び突出部33は、周方向における端部が、隣接する他のシールセグメント11におけるハウジング9の凹凸部30と連続しており、凹部31が周方向に連通している。
【0048】
続いて上述した軸シール機構10の作用について、主に図7〜11を用いて説明する。
ガスタービン1が停止状態から起動されると、流体低圧領域と流体高圧領域との圧力差が大きくなっていき、これに比例してシールセグメント11が流体低圧領域に向けて燃焼ガスgに押圧される。
この際、流体低圧領域から流体高圧領域に流れる燃焼ガスgは、シール体12の薄板シール片20の微小間隙sを通過する他、図7に示すように、開放部9dを介して流体高圧領域からハウジング9の収容空間9aに流入し、サイドシール板16に沿って内方側空間9cを径方向外方側に流れて外方側空間9bに流入し、保持リング13、背面スペーサ15、保持リング14に沿って外方側空間9bを流れた後に、サイドシール板17の板面17cと内方側空間9cの内壁面9eに沿って径方向内方側に流れて流体低圧領域に流出する(符号g1で示す)。なお、内方側空間9cを径方向外方に流れてサイドシール板16のベース部16aに到達した燃焼ガスgの一部は、サイドシール板16と頭部21及び胴部23との隙間、首部22の隙間、サイドシール板17と頭部21及び胴部23との隙間を通過する(符号g2で示す)。
【0049】
図7に示すように、シールセグメント11がハウジング9の内壁面9eに密接する前に、例えば、ハウジング9の収容空間9aに混入したダストDにより、シールセグメント11の径方向外方側の軸方向の変位が拘束されると、図8に示すように、シールセグメント11の径方向内方側(径方向内方端20b)が燃焼ガスgによって押圧されて軸方向一方側に傾斜する。
傾斜したシールセグメント11は、その径方向内方側が燃焼ガスgによって押圧されることで、サイドシール板17の内周端17dがハウジング9の内壁面9e(凸部31)に線状に密接する。この場合、サイドシール板17の板面17cと内壁面9eとの間に径方向外方側から内方側に進むに従って先鋭状となったポケットXが形成される。
【0050】
ハウジング9の開放部9dから内方側空間9cに流入した燃焼ガスgは、外方側空間9bを経由してポケットXに流入した後に凹部31を介して流体低圧領域に流出する。具体的には、ポケットXから周溝31bに流入した後に、外端31a2から内端31a1まで径溝31aを流れて再び内方側空間9cに流出し、内壁面9eに沿って径方向内方側に流れて流体低圧領域に流出する。
【0051】
流体低圧領域と流体高圧領域との圧力差が所定値以上に大きくなると、燃焼ガスgがシール体12及びサイドシール板16を全体的に押圧することで、図9に示すように、板面17cと内壁面9eとが密接する。この状態においては、突出部33が板面17cに密接することで、収容空間9aを流れる燃焼ガスg1,g2を封止する。
そして、板面17cに内壁面9eが押付けられることで、シール体12の低圧側端部12dの下流側空間L(図10参照)が設定された大きさになる。
【0052】
一方、各微小間隙sに侵入した燃焼ガスgは、図10に示すように、微小間隙sを介して対向する上面20pと下面20qとに沿って、角部r1から角部r2の方向へ放射状に流れる。
つまり、サイドシール板17の径方向寸法が、サイドシール板16の径方向寸法よりも大きくされることで、図9に示すように、薄板シール片20の内方端20bにおいて高圧側に位置する角部r1で最もガス圧が高く、対角の角部r2に向かって徐々にガス圧が弱まるガス圧力分布40aが形成される。
【0053】
図10に示すように、ガス圧力分布40aは、薄板シール片20の外方端20aに向かって低圧の領域が広がる。そのため、図10に示すように、各薄板シール片20の上面20p及び下面20qに加わるガス圧力分布40b,40cは、薄板シール片20の内方端20bに近いほど大きくなると共に外方端20aに向かうほど小さくなる三角分布形状となる。
【0054】
図11に示すように、上面20p及び下面20qのそれぞれにおけるガス圧力分布40b,40cは略等しい形状となるが、回転軸6の外周の接線方向に傾くようにして各薄板シール片20が配置されているので、これら上面20p及び下面20qにおける各ガス圧力分布40b,40cの相対位置がずれる。よって、薄板シール片20の外方端20aから内方端20bに向かう任意の点Pにおける上面20p及び下面20qのガス圧に差が生じ、下面20qに加わるガス圧が上面20pに加わるガス圧よりも高くなる。これによって、薄板シール片20の内方端20bに対して回転軸6より浮かせる方向に浮上力FLが発生する。
以上のようにして、薄板シール片20に浮上力FLが作用し、動圧効果による浮上力を補助する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の軸シール機構10によれば、サイドシール板17の板面17cとハウジング9の内壁面9eとの間に流体高圧領域に連通するポケットXが形成された場合に、内壁面9eに形成された凹部31がポケットXと流体低圧領域とを連通させるので、ハウジング9の収容空間9aとの間に混入したダストDによってシールセグメント11が流体低圧領域側に傾いてポケットXが形成されたとしても、高圧の燃焼ガスgがポケットXを介して流体低圧領域に流れる。これにより、板面17cと内壁面9eとの間に形成されたポケットXに高圧の燃焼ガスgが充満することがなく、シールセグメント11が傾いた姿勢のまま保持されることを防止することができる。そして、シール体12の上流側空間H及び下流側空間Lを設計した大きさに復帰させることができ、薄板シール片20の浮上力が低下することを抑制することができる。
【0056】
また、板面17cと内壁面9eとが押付けられた場合に流体高圧領域と流体低圧領域との連通を突出部33によって遮断するので、シール体12の傾きが解消された場合に流体低圧領域と流体高圧領域との連通を遮断する。これにより、シールセグメント11が傾いた姿勢においては、シールセグメント11が傾いた姿勢のまま保持されることを抑止することができる一方、姿勢の傾きが解消された場合に、設計したシール性能を確保することができる。
【0057】
また、凹凸部30が内壁面9eにのみ形成されるので、後述するように、内壁面9e及び板面17cの双方に凹凸部を形成する場合に比べて、労力及び手間を軽減することができる。
また、サイドシール板17よりも厚い(軸方向寸法)ハウジング9の内壁面9eのみに凹凸部30を形成するので、凹凸部30を板面17cに形成する場合に比べて、凹凸部を形成した後の剛性を比較的に容易に確保することができる。また、凹凸部30の形状(凹部31の広さや深さ)の自由度を向上させることができる。
【0058】
また、薄板シール片20の浮上力の低下が抑制されて長寿命となる軸シール機構10を備えるので、ガスタービンのメンテナンス性を向上させることができる。
【0059】
また、周溝31bが周方向に延在して凹部31が周方向の広い範囲に亘って形成されるので、不特定箇所に形成されるポケットXに対応して、ポケットXと流体低圧領域とを連通させることができる。
【0060】
なお、上述した構成においては、シールセグメント11を周方向に八つ配置させて軸シール機構10を構成したが、単数又は八つ以外の複数のシールセグメントで軸シール機構を構成してもよい。
【0061】
また、上述した構成においては、周方向における端部が、隣接する他のシールセグメント11におけるハウジング9の凹凸部30と連続しており、凹部31が周方向に連通する構成としたが、互いに周方向に隣接するシールセグメント11の凹部31を隔絶させてもよい。
【0062】
「軸シール機構の第二実施形態」
次に、本発明の第二実施形態に係る軸シール機構50について図を用いて説明する。
図12は、軸シール機構50の周方向に交差する要部断面図(図13におけるS7-S7線断面図)であり、図13は、図12におけるS5−S5線断面図であり、図14は、図13におけるS6−S6線断面図である。なお、図12〜図14において、図1〜図11と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
軸シール機構50は、軸シール機構10がハウジング9の内壁面9eにのみ凹凸部30を形成したのに対して、図12に示すように、サイドシール板17の板面17cにのみ凹凸部60を形成している。
【0064】
図13に示すように、凹凸部60は、凹部61と凸部62とを有している。
凹部61は、凹部31とほぼ同様の構成となっており、内周端17dから径方向外方側に向けて放射状に延在する複数の径溝61aと、複数の径溝61aよりも径方向外方側に形成されて径溝61aに連通する周溝61bとを有している。
凸部62は、凸部32とほぼ同様の構成となっており、周方向に隣接する二つの径溝61aの間に複数形成されている。
【0065】
この凹凸部60が形成された板面17cには、径方向外方側において周方向に延在すると共に、周溝31bの底面から内壁面9eに向けて突出して周溝31bの径方向外周側を画定する突出部63が形成されている。
突出部63は、軸方向において、軸方向に交差する端面が凸部62の端面と同一の位置に形成されている。
【0066】
この構成によれば、シールセグメント11が流体低圧側に傾斜した姿勢になってサイドシール板17の内周端17dが内壁面9eに当接した場合に、ポケットXと流体低圧領域とを凹部61(径溝61a)が連通させる。また、図13に示すように、板面17cが内壁面9eに押付けられると突出部63が内壁面9eに密接して、燃焼ガスg1,g2(図7,8参照)を封止する。
これらにより、上述した効果を同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、サイドシール板17の板面17cにのみ凹凸部60を形成するので、ハウジング9の内壁面9eに比べて凹凸部を容易に形成することができる。また、既存の軸シール機構のサイドシール板17のみを交換するだけで本発明の構成を得ることができる。
【0068】
「軸シール機構の第三実施形態」
次に、本発明の第三実施形態に係る軸シール機構70について図を用いて説明する。
図15は、軸シール機構70の周方向に交差する要部断面図(図16におけるS10-S10線断面図)であり、図16は、図15におけるS8−S8線断面図であり、図17は、図16におけるS9−S9線断面図である。なお、図15〜図17において、図1〜図14と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
軸シール機構70は、突出部33を備える点と、サイドシール板17Aを備える点で、軸シール機構10,50と異なる。
【0070】
サイドシール板17Aは、第二実施形態のサイドシール板17と同様に凹凸部60が形成されているが、突出部63が形成されていない点で第二実施形態のサイドシール板17と異なる。すなわち、第二実施形態のサイドシール板17の凹部61(周溝61b)が突出部63まで形成されていたのに対して、サイドシール板17Aの凹部61はサイドシール板17Aの外終端まで形成されている。
【0071】
突出部33は、図15及び図16に示すように、サイドシール板17Aの凸部62の高さ(凹部31の底面からの高さ)と、略等しい高さだけ内壁面9eから板面17cに向けて軸方向に突出している。
【0072】
この構成によれば、シールセグメント11が流体低圧側に傾斜した姿勢になってサイドシール板17Aの内周端17dが内壁面9eに当接した場合に、ポケットXと流体低圧領域とを凹部61が連通させる。また、図15及び図17に示すように、板面17cが内壁面9eに押付けられると突出部33が凹部61の底面に密接して、燃焼ガスg1,g2(図7,8参照)を封止する。
これらにより、上述した効果を同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、サイドシール板17Aの板面17cに凹凸部60を形成する一方、突出部33を内壁面9eに形成するので、例えば、保持リング14やハウジング9の大きさや形状等によって凹凸部及び突出部の形成位置に制約が存在したとしても、この制約に柔軟に対応することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0074】
なお、上述した構成においては、サイドシール板17Aに凸凹部60を、収容体9に突出部33を形成したが、収容体9に凸凹部30を形成する一方、突出部33を省略し、かつ、サイドシール板17に突出部63を形成してもよい。
【0075】
なお、上述した実施形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、ハウジング9をステータ(ハブシュラウド,軸受け部2c,4c)と別体としたが一体に形成してもよい。
【0076】
また、上述した各実施形態においては、凹凸部30と凹凸部60との一方を用いたが、凹凸部30,60の双方を用いて凸部32,62を当接させる構成としてもよい。このような構成にすることで、双方の凹部31,61の深さを小さく形成しつつ、ポケットXと低圧側空間との連通空間を大きく構成することができる。
同様に、突出部33,63の双方を用いて、突出部33,63を相互に密接させることにより流体高圧領域と流体低圧領域との連通を遮断する構成にしてもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態において、凹凸部30及び凹凸部60の形状や構成は一例であって、上述した形状や構成に限定されない。例えば、径溝31aは、必ずしも径方向寸法と溝幅寸法とを同程度の寸法に形成する必要はないし、必ずしも等間隔に形成されている必要はない。同様に、径溝31aを複数形成せずに、一つだけ形成してもよい。
【0078】
また、上述した各実施形態においては、凹凸部30,70にそれぞれ周溝31bを設ける構成としたが、周溝31bを省略してもよいし、複数形成してもよい。この場合には、径溝31aを径方向外方側まで延長してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…ガスタービン(回転機械)
2…圧縮機(回転機械)
2A…ロータ
2B…ステータ
4…タービン(回転機械)
4A…ロータ
4B…ステータ
9…ハウジング(収容体)
9a…収容空間
9d…開放部
9e…内壁面
10,10c,50,70…軸シール機構
12…シール体
12c…高圧側端部(一端部)
12d…低圧側端部(他端部)
17,17A…サイドシール板(板状体)
20…薄板シール片
20a…外方端(径方向外方端)
20b…内方端(径方向内方端)
30,60…凹凸部
31,61…凹部
31a,61a…径溝(径方向延在溝)
31b,61b…周溝(周方向延在溝)
32,62…凸部
33,63…突出部
X…ポケット
g(g1,g2)…燃焼ガス(流体)
s…微小間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの外周を囲うステータと前記ロータとの隙間を封止して前記隙間を前記ロータの軸方向一方側の流体低圧領域と軸方向他方側の流体高圧領域とに分ける軸シール機構であって、
前記ステータに設けられ、周方向に延びる収容空間が形成されると共に前記収容空間の開放部が前記ロータの外周に向けて形成された収容体と、
前記ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片からなり、径方向外方端側が前記収容体の収容空間に収容されて径方向内方端を前記開放部から前記ロータの外周に向けて延出させるシール体と、
前記シール体の前記軸方向一端部を被覆すると共に、前記軸方向一方側に向いた板面が前記軸方向に対向する前記収容体の内壁面に前記流体の圧力で押し付けられる板状体とを備え、
前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも一方に、前記径方向内方側から外方側に向けて延びると共に前記軸方向に凹んだ凹部と、前記径方向内方側において前記凹部よりも他方側に突出する凸部とを有する凹凸部が形成され、
前記凹凸部は、前記凸部が前記他方に当接して前記一方と前記他方との間に前記流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、前記凹部が前記ポケットと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする軸シール機構。
【請求項2】
前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも片方に、前記径方向外方側に形成されると共に、前記凹部に対して前記軸方向に突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記板面が前記内壁面に押し付けられた場合に前記残り片方に密接して前記流体高圧領域と前記流体低圧領域との連通を遮断することを特徴とする請求項1に記載の軸シール機構。
【請求項3】
前記凹部は、前記径方向内方側から外方側に向けて延在する径方向延在溝を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール機構。
【請求項4】
前記凹部は、前記径方向延在溝よりも前記径方向外方側に形成され、前記周方向に延在して前記径方向延在溝に連通する周方向延在溝を備えることを特徴とする請求項3に記載の軸シール機構。
【請求項5】
前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との一方にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項6】
前記凹凸部は、前記板状体の板面にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項7】
前記凹凸部は、前記収容体の内壁面にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項8】
前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との双方に形成され、双方の前記凸部が互いに当接することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の軸シール機構を備えることを特徴とする回転機械。
【請求項1】
ロータの外周を囲うステータと前記ロータとの隙間を封止して前記隙間を前記ロータの軸方向一方側の流体低圧領域と軸方向他方側の流体高圧領域とに分ける軸シール機構であって、
前記ステータに設けられ、周方向に延びる収容空間が形成されると共に前記収容空間の開放部が前記ロータの外周に向けて形成された収容体と、
前記ロータの周方向に互いに微小間隙を空けて重ねられた複数の薄板シール片からなり、径方向外方端側が前記収容体の収容空間に収容されて径方向内方端を前記開放部から前記ロータの外周に向けて延出させるシール体と、
前記シール体の前記軸方向一端部を被覆すると共に、前記軸方向一方側に向いた板面が前記軸方向に対向する前記収容体の内壁面に前記流体の圧力で押し付けられる板状体とを備え、
前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも一方に、前記径方向内方側から外方側に向けて延びると共に前記軸方向に凹んだ凹部と、前記径方向内方側において前記凹部よりも他方側に突出する凸部とを有する凹凸部が形成され、
前記凹凸部は、前記凸部が前記他方に当接して前記一方と前記他方との間に前記流体高圧領域に連通するポケットが形成された場合に、前記凹部が前記ポケットと前記流体低圧領域とを連通させることを特徴とする軸シール機構。
【請求項2】
前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との少なくとも片方に、前記径方向外方側に形成されると共に、前記凹部に対して前記軸方向に突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記板面が前記内壁面に押し付けられた場合に前記残り片方に密接して前記流体高圧領域と前記流体低圧領域との連通を遮断することを特徴とする請求項1に記載の軸シール機構。
【請求項3】
前記凹部は、前記径方向内方側から外方側に向けて延在する径方向延在溝を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール機構。
【請求項4】
前記凹部は、前記径方向延在溝よりも前記径方向外方側に形成され、前記周方向に延在して前記径方向延在溝に連通する周方向延在溝を備えることを特徴とする請求項3に記載の軸シール機構。
【請求項5】
前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との一方にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項6】
前記凹凸部は、前記板状体の板面にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項7】
前記凹凸部は、前記収容体の内壁面にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項8】
前記凹凸部は、前記板状体の板面と前記収容体の内壁面との双方に形成され、双方の前記凸部が互いに当接することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の軸シール機構。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の軸シール機構を備えることを特徴とする回転機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−92905(P2012−92905A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241001(P2010−241001)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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