説明

軸受状態監視方法及び軸受状態監視装置

【課題】処理データ数を低減しつつ、波形の無次元化特徴量による軸受けの状態評価を可能とする
【解決手段】軸受状態監視装置1は、軸受3に取り付けられたAEセンサ10、無次元化特徴量算出部31、基準値を算出する基準値生成部32、及び判定部22を備える。無次元化特徴量算出部31は、回転軸2の1回転分に相当する時間長さを複数に分割したものに相当する区間について、AEセンサ10の測定波形の対数化尖度や歪度である無次元化特徴量を求める。判定部22は、無次元化特徴量が基準値を超えた区間の数である基準値越え区間数により、軸受3の状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受状態監視方法及び軸受状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械設備等における軸受の状態を監視して異常を診断する場合、例えば軸受に取り付けたセンサで測定した振動や音響(Acoustic Emission:AE)の振幅が、予め設定した閾値を越えているか否かで異常の有無を判断するのが一般的である。また、AEを測定する場合については、AEの振幅が予め設定した閾値を越えるイベントの一定期間内の発生数を監視指標にすることも知られている。
【0003】
振動を測定する場合、一般に100rpmを下回るような回転速度の低速回転設備に対しては、軸受に傷が存在しても発生する振動強度が微弱であり、信頼性のある状態監視は困難であるとされている(例えば、非特許文献1参照)。そのような低速回転設備においてもAEを測定する場合は十分な損傷感度が得られるが、振幅やイベント数と損傷との定量的関連付けが困難であり、基準値の設定には測定部位や運転条件(連続回転の回転数や間欠回転の周期)毎に現場での十分なデータ蓄積が必要とされており、いわゆるスポット測定による診断は困難である。
【0004】
測定部位や運転条件毎の基準値を不要とする診断方法として、波形の無次元化特徴量、すなわち尖度や歪度を用いる方法がある。例えば、正常時の軸受において測定される振動波形の振幅分布を求めると、ゼロを中心とした正規分布に従うことが知られている。一方、軸受に損傷がある場合、損傷起因の振動が発生し、その波形の振幅分布は正規分布から逸脱する。その結果、軸受に損傷がある場合、波形の無次元化特徴量は正規分布におけるそれらから変化する。
【0005】
しかし、特に前述のような低速回転設備では信号の周波数帯域(10〜数100kHz)と回転数(100Hz以下)とが大きく異なるため、例えば1回転での波形から無次元化特徴量を求めるには、膨大なデータ点数をサンプリングする必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】井上紀明著,「現場の疑問に応える実践振動法による設備診断」,日本プラントメンテナンス協会,1998年9月20日,p.91−92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、処理データ点数を低減しつつ、波形の無次元化特徴量による軸受の状態評価を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、回転軸を保持する軸受において前記回転軸の回転により発生する信号を時々刻々と取得し、前記回転軸の1回転又は間欠動作1周期に相当する時間長さを複数に分割したものに相当する区間について、前記信号の時間波形である測定波形の無次元化特徴量を順次求め、少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分に相当する連続する複数の前記区間のそれぞれについて、前記無次元化特徴量が基準値が越えているか否かを判断し、前記無次元化量が前記基準値を超えた前記区間の数である基準値越え区間数により前記軸受の状態を判定する、軸受状態監視方法を提供する。
【0009】
区分毎に測定波形の無次元化特徴量を求め、回転軸の1回転又は間欠動作1周期で無次元化特徴量が基準値が越える区間である基準値越え区間数により軸受の状態を判定する。そのため、無次元化特徴量の基準値の設定のために膨大なデータ点数をサンプリングする必要もなく、測定部位や運転条件(連続回転の回転数や間欠回転の周期)ごとに基準値を設定する必要もない。つまり、処理データ点数を低減しつつ、無次元化特徴量の使用によって測定部位や運転条件ごとの基準値を必要としない高精度での軸受の状態評価を実現できる。
【0010】
無次元化特徴量には、例えば対数化尖度、歪度、及び尖度がある。
【0011】
無次元化特徴量が対数化尖度の場合、少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記対数化尖度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、前記頻度分布のうち前記対数化尖度が前記最頻値よりも小さい範囲を正規分布で近似してその標準偏差を求め、前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、前記基準値越え区間数は前記対数化尖度が前記基準値を超える区間の数である。
【0012】
無次元化特徴量が歪度の場合、少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記歪度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、前記頻度分布のうち前記最頻値から一定範囲内を正規分布で近似してその標準偏差を求め、前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、前記基準値越え区間数は前記歪度の絶対値が前記基準値を超える区間の数である。
【0013】
無次元化特徴量が尖度の場合、少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記尖度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、前記頻度分布のうち前記最頻値から一定範囲内を正規分布で近似してその標準偏差を求め、前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、前記基準値越え区間数は前記尖度の絶対値が前記基準値を超える区間の数である。
【0014】
本発明の第2の態様は、回転軸を保持する軸受において前記回転軸の回転により発生する信号を時々刻々と検出するセンサ部と、前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期に相当する時間長さを複数に分割したものに相当する区間について、前記センサ部が検出する前記信号の時間波形である測定波形の無次元化特徴量を順次求める無次元化特徴量算出部と、少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分に相当する連続する複数の前記区間のそれぞれについて、前記無次元化特徴量が基準値が越えているか否かを判断し、前記無次元化量が前記基準値を超えた前記区間の数である基準値越え区間数により前記軸受の状態を判定する判定部とを備える軸受状態監視装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理データ点数を低減しつつ、無次元化特徴量の使用によって測定部位や運転条件ごとの基準値を必要としない高精度での軸受の状態評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる軸受状態診断装置を示す模式図。
【図2】AEの測定波形の対数化尖り度の時系列変化の一例を示すグラフ。
【図3】種々の測定条件における対数化尖度の基準値越え区間数を示すヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る軸受状態監視装置(以下、監視装置)1を示す。軸受3は回転機械設備(本実施形態ではベルトコンベア設備であるが設備や機械の種類は特に限定されない)の回転軸2を支持する。監視装置1は、軸受3における摩耗、損傷に起因する異常発生等を監視する。
【0019】
監視装置1は、軸受3にカプラントを介して固定された音響(AE)センサ10を備える。また、監視装置1は、フィルタ12、アンプ13、及び各種演算処理を行う信号処理部21を備える。また、監視装置1は、信号処理部21での処理結果に基づいて軸受3に異常が判定しているか否かを判定する判定部22と、判定部22の判定結果を表示するための例えばモニタ装置である表示部23とを備える。さらにまた、監視装置1は、信号処理部21及び判定部22と協働して各種データ、演算結果等を記憶する記憶部24を備える。信号処理部21は、サンプリング回路30、無次元化特徴量算出部31、及び基準値生成部32とを備える。
【0020】
以下、この監視装置1により実行される軸受状態監視方法を説明する。
【0021】
AEセンサ10は、軸受3において回転軸2の回転により発生するAE信号を検出する。AEセンサ10によるAE信号の検出に代えて、回転軸2の回転時に発生する振動を振動センサで検出してもよい。また、回転軸2の回転時に発生する超音波を超音波センサで検出してもよい。振動や超音波を検出する場合も、以下の処理を同様に適用できる。
【0022】
測定回路14は、プリアンプ11、フィルタ12、及びアンプ13を介してAEセンサ10の測定波形(AEの時間波形)を得る。
AEセンサ10の出力信号は、図示しないプリアンプ、フィルタ12、及びアンプ13を介して時々刻々と信号処理部21に入力される。AEセンサ10からの微弱な出力信号は、まずプリアンプ11で増幅される。フィルタ12はプリアンプ11の信号からノイズを除去して適切な周波数帯域のみを通過させる。フィルタ12を通過した信号はアンプ13により信号処理部21での処理に適した強度に増幅される。
【0023】
以下、信号処理部21における処理について説明する。回転軸2の1回転分(間欠動作の場合には1周期分、以下同じ)に相当する時間長さの区間をR(R,R,R…R…とし、区間Rを時間軸で複数個(N個)に等分割した区画をN,N,N…N…とする。図2ではそれぞれ回転軸2の1回転分に相当する時間長さの連続する区間R,R,R…R…のそれぞれが100等分の区間N,N,N…N…N100に分割されている。
【0024】
サンプリング回路30は、AEセンサ10からの信号の所定サンプリングレートでのサンプリング(RF波形の測定)を前記区画N毎に実行し、測定波形(AEの時間波形)は記憶部24に記憶される。記憶部24に記憶された個々の区間N毎の測定波形自他は、その区間Niについての無次元化特徴量算出部31での無次元化特徴量(本実施形態では後述する対数化尖度)の算出が終了すると順次消去される。つまり、無次元化特徴量を求めるのに膨大なデータ点数をサンプリングする必要がない。
【0025】
無次元化特徴量算出部31は、個々の区間Nの測定波形(AEの時間波形)について、対数化尖度γlnを算出する。具体的には、まず以下の式(1)に基づいて区間Nにおける尖度γを求める。この式(1)において、Nは区間N内のサンプリング点数、xは個々のサンプリングデータ(信号(AE)の振幅)、xaveは区間Nに含まれるサンプリングデータ(信号(AE)の振幅)の平均値(相加平均)、σは区間Nに含まれるサンプリングデータxの標準偏差である。
【0026】
【数1】

【0027】
次に、無次元化特徴量算出部31は、区画Nについて尖度γを対数化して対数化尖度γlnを求める(尖度γの自然対数が区画Nの対数化尖度γln)。後に詳述するように、無次元化特徴量算出部31で算出される区画Nの対数化尖度γlnは記憶部24に記憶されるが、対数化尖度γlnを算出済みの区間Niの測定波形は前述のように順次消去される。
【0028】
図2は対数化尖度γlnの時系列データの一例を示す。この例は、回転軸2が回転数10rpmで10回転した場合(区間R,R,R…R10)であり、個々の区間Rを100個(N=100)の区間N,N,N…N100に等分しており、個々の区間N毎の対数化尖度γlnが時系列データとして示されている。
【0029】
基準値生成部32は、対数化尖度γlnと比較するための基準値γlnrefを算出する。後述するように、判定部22は、対数化尖度γlnと基準値γlnrefの比較から軸受3の状態を判定する。以下の説明では、基準値生成部32は1個の区間R(1回転毎)に含まれる対数化尖度γlnから基準値γlnrefを算出し、判定部22は当該1個の区間Rに含まれる個々の区間Nの対数化尖度γlnと基準値γlnrefの比較から軸受3の状態判定を実行するものとする。しかし、複数個の区間R(例えば図2の区間R〜R10のような10回転分)について基準値生成部32が基準値γlnrefを算出し、判定部22が当該複数個の区間Rに含まれる対数化尖度γlnと基準値γlnrefの比較から軸受3の状態判定を実行してもよい。また、基準値生成部32が基準値γlnrefを算出し、判定部22が軸受3の状態判定を実行する区間Rは、図2の区間R〜R10のように重複することなく連続している必要はない。つまり、時間的に隣接する2の区間Rが時間的に重複していてもよく、その逆に隣接する2の区間Rに時間的な間隔があってもよい。
【0030】
まず、基準値生成部32は、無次元化特徴量算出部31で得られた対数化尖度γlnの時系列データから、区間Rについての対数化尖度γlnの頻度分布(その区間Rにおいて個々の対数化尖度γlnの値が現れる頻度の分布)を算出する。また、基準値生成部32は個々の区間Rについて対数化尖度γlnの最頻値γlnmfを算出する。
【0031】
本発明者は、対数化尖度γlnの頻度分布の最頻値γlnmfより低頻度値側は、正規分布により近似可能であることを見出した。そこで、基準値生成部32は、区間Rについての対数化尖度γlnの頻度分布の最頻値γlnmfより低頻度値側を正規分布で近似し、正規分布で近似した場合の標準偏差σγlnapを算出する。
【0032】
基準値生成部32は、区画Rについて、最頻値γlnmfと正規分布で近似した場合の標準偏差σγlnapから以下の式により基準値γlnrefを算出する。
【0033】
【数2】

【0034】
軸受3に損傷等がない正常時には対数化尖度γlnは正規分布を示すので、軸受3が正常な状態でないことを判定するための基準値は正規分布の最頻値に正規分布の標準偏差のn倍を加算したものとして設定できる。次に、現実のサンプリングデータのばらつきを考慮すると、余裕度として最頻値の尖度に余裕度Sを乗じておくことが好ましい。これらから以下の式(3)が得られる。
【0035】
【数3】

【0036】
正規分布の特徴からn=3に設定すれば、ほぼ十分な正規分布の範囲を包含する。また、余裕度Sは例えばS=2に設定できる。n=3とS=2を式(3)に適用すれば、式(2)が得られる。なお、係数nは2〜5程度の範囲に設定でき、余裕度Sは1〜5程度の範囲に設定できる。
【0037】
判定部22は、1個の区間Rに含まれる個々の区間Nについて無次元化特徴量算出部31で算出された個々の区間Nの対数化尖度γlnを基準値生成部32で算出された基準値γlnrefと比較し、対数化尖度γlnが基準値γlnrefを上回る区間Nの数、つまりγln>γlnrefが成立する区画Nの数(基準値越え区画数NU)を計数する。そして、判定部22は、この基準値越え区画数NUと予め定められて記憶部24に記憶された閾値NUthとの比較により、摩耗、損傷に起因する軸受3の異常発生の発生有無等を判定する。
【0038】
監視対象の軸受3について1個の区間R(回転軸2の1回転)に対する基準値越え区画数NUの正常時と異常発生時のデータを実験的に求めることで、閾値NUthを設定できる。例えば、図3は、異なる回転数(10rpm,20rpm,80rpm,100rpm)について基準値越え区間数NUを実験的に測定した例を示す。この図3においてNo.1〜12は軸受3が正常である場合であり、No.13〜16は軸受3に異常が発生している場合である。正常時(No.1〜12)は基準値越え区間数NUが10以下であるが、異常時(No.13〜16)は基準値越え区間数NUが19以上であり、明瞭な差異がある。図3の例の場合、例えば軸受3に異常発生に注意を要するか否かの判断の閾値NUthを10に設定し、軸受3に現に異常発生が発生しているか否かの判断の閾値NUthを19に設定することが考えられる。
【0039】
本実施形態では、回転軸2の1回転である区間RのN等分割に相当する時間長さを有する各区分N毎に無次元化特徴量として対数化尖度γlnを求め、1個の区間R内で対数化尖度γlnが基準値γlnrefを越える基準値越え区間数NUを使用して軸受3の状態を判定する。そのため、無次元化特徴量の基準値の設定のために膨大なデータ点数をサンプリングする必要がなく、測定部位や運転条件(連続回転の回転数や間欠回転の周期)ごとに基準値を設定する必要もない。つまり、処理データ点数を低減しつつ、無次元化特徴量である対数化尖度γlnの使用によって測定部位や運転条件ごとの基準値を必要としない高精度での軸受の状態評価を実現できる。
【0040】
無次元化特徴量として対数化尖度γlnに代えて、歪度βを使用してもよい。以下、この場合について説明する。
【0041】
無次元化特徴量算出部31は、個々の区画Nのそれぞれについて、以下の式(4)に基づいて歪度βを算出する。この式(4)において、Nは区間N内のサンプリング点数、xは個々のサンプリングデータ(信号(AE)の振幅)、xaveは区間Nに含まれるサンプリングデータ(信号(AE)の振幅)の平均値(相加平均)σは区間Nに含まれるサンプリングデータxの標準偏差である。
【0042】
【数4】

【0043】
基準値生成部32は、無次元化特徴量算出部31で得られた歪度βの時系列データから、個々の区間Nについて歪度βの頻度分布と歪度βの最頻値βmfを算出する。また、基準値生成部32は、最頻値βmfの一定範囲内(例えば頻度が1%以上の範囲)について歪度βの頻度分布を正規分布で近似し、正規分布で近似した場合の標準偏差σβapを算出する。さらに、前述のように軸受3が正常な状態でないことを判定するための基準値は正規分布の最頻値に正規分布の標準偏差のn倍を加算したものとして設定できるので、基準値生成部32は、区画Rについて、最頻値βmfと正規分布で近似した場合の標準偏差σβapから以下の式(5)により基準値βrefを算出する。
【0044】
【数5】

【0045】
特にn=3とすると、基準値βrefは以下の式(6)で算出される。
【0046】
【数6】

【0047】
判定部22は、区画Rに含まれる個々の区画Nの歪度βの絶対値を基準値βrefと比較し、歪度βの絶対値が基準値βrefを上回る区画N(|β|>βrefが成立する区画N)の数を基準値越え区画数NUとして計数する。
【0048】
対数化尖度γlnに代えて歪度βを使用する場合も、処理データ点数を低減しつつ、測定部位や運転条件ごとの基準値を必要としない高精度での軸受3の状態評価を実現できる。
【0049】
対数化尖度γlnや歪度βに代えて、尖度γを無次元化特徴として使用してもよい。この場合、無次元化特徴量算出部31は1個の区間Rに含まれる区画Nのそれぞれについて式(1)に基づいて尖度γを算出する。また、基準値生成部32は、区画Rについて、尖度γの最頻値γmfと尖度γを正規分布で近似した場合の標準偏差σγapから以下の式(7)に基づいて基準値γrefを算出する。
【0050】
【数7】

【0051】
特にn=3とすると、基準値βrefは以下の式(8)で算出される。
【0052】
【数8】

【0053】
また、判定部22は、区画Rに含まれる個々の区画Nの尖度γ(常に正である。)の値を基準値γrefと比較し、歪度γが基準値γrefを上回る区画N(γ>γrefが成立する区画N)の数を基準値越え区画数NUとして計数する。
【符号の説明】
【0054】
1 軸受状態監視装置
2 回転軸
3 軸受
10 音響(AE)センサ
11 プリアンプ
12 フィルタ
13 アンプ
14 測定回路
21 信号処理部
22 判定部
23 表示部
24 記憶部
31 無次元化特徴量算出部
32 基準値生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を保持する軸受において前記回転軸の回転により発生する信号を時々刻々と取得し、
前記回転軸の1回転又は間欠動作1周期に相当する時間長さを複数に分割したものに相当する区間について、前記信号の時間波形である測定波形の無次元化特徴量を順次求め、
少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分に相当する連続する複数の前記区間のそれぞれについて、前記無次元化特徴量が基準値が越えているか否かを判断し、
前記無次元化量が前記基準値を超えた前記区間の数である基準値越え区間数により前記軸受の状態を判定する、軸受状態監視方法。
【請求項2】
前記無次元化特徴量は対数化尖度である、請求項1に記載の軸受状態監視方法。
【請求項3】
少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記対数化尖度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、
前記頻度分布のうち前記対数化尖度が前記最頻値よりも小さい範囲を正規分布で近似してその標準偏差を求め、
前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、
前記基準値越え区間数は前記対数化尖度が前記基準値を超える区間の数である、請求項2に記載の軸受状態監視方法。
【請求項4】
前記無次元化特徴量は歪度である、請求項1に記載の軸受状態監視方法。
【請求項5】
少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記歪度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、
前記頻度分布のうち前記最頻値から一定範囲内を正規分布で近似してその標準偏差を求め、
前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、
前記基準値越え区間数は前記歪度の絶対値が前記基準値を超える区間の数である、請求項3に記載の軸受状態監視方法。
【請求項6】
前記無次元化特徴量は尖度である、請求項1に記載の軸受状態状態監視方法。
【請求項7】
少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分について前記尖度の時系列変化からその頻度分布と最頻値を求め、
前記頻度分布のうち前記最頻値から一定範囲内を正規分布で近似してその標準偏差を求め、
前記最頻値と前記標準偏差から前記基準値を決定し、
前記基準値越え区間数は前記尖度の絶対値が前記基準値を超える区間の数である、請求項6に記載の軸受状態監視方法。
【請求項8】
前記回転軸の回転により発生する信号は、AE、振動、又は超音波のいずれかである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の軸受状態監視方法。
【請求項9】
回転軸を保持する軸受において前記回転軸の回転により発生する信号を時々刻々と検出するセンサ部と、
前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期に相当する時間長さを複数に分割したものに相当する区間について、前記センサ部が検出する前記信号の時間波形である測定波形の無次元化特徴量を順次求める無次元化特徴量算出部と、
少なくとも前記回転軸の1回転分又は間欠動作1周期分に相当する連続する複数の前記区間のそれぞれについて、前記無次元化特徴量が基準値が越えているか否かを判断し、前記無次元化量が前記基準値を超えた前記区間の数である基準値越え区間数により前記軸受の状態を判定する判定部と
を備える軸受状態監視装置。
【請求項10】
前記センサ部は、前記回転軸の回転により前記軸受に発生するAE、振動、又は超音波のいずれかを検出する請求項9に記載の軸受状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252762(P2011−252762A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125973(P2010−125973)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(390000011)JFEアドバンテック株式会社 (32)
【Fターム(参考)】