説明

軸受製造設備

【課題】大量の不良品の発生を極力少なくできる軸受製造設備を提供する。
【解決手段】プレス機100で製造されたシェル形外輪と、パーツフィーダ140,150から供給される保持器と、針状ころとを組立機130に供給してシェル形軸受を組立て、プレス機100によるシェル形外輪の製造速度と、組立機130によるシェル形軸受の組立速度とを同期化機102により同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒状の軌道面を有するシェル形針状ころ軸受の軸受製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、特開2003-4051号公報(特許文献1)に記載されているシェル形針状ころ軸受の部分断面図である。図4において、シェル形針状ころ軸受は、プレス加工した外輪を有する針状ころ軸受であって、プレス加工した外輪はシェルとも称され、またその内周面がころの転動する軌道面となることから軌道輪とも称される。
【0003】
図4に示したシェル形針状ころ軸受は、軌道輪1と、軌道面すなわち軌道輪1の内周面2に転動自在に組み込まれた複数の針状ころ3と、針状ころ3を円周方向に等間隔に保持する保持器4とを主要な構成要件としている。軌道輪1は、鋼板製のブランクをトランスファプレス装置により、横方向に移送されながら、例えば深絞り工程やしごき工程などの十数工程を経てプレス加工により製作される。
【0004】
図5は、従来のシェル形針状ころ軸受の製造設備を示す配置図である。図4に示した軌道輪1は、図5に示したプレス機190によりバッチ処理により製造される。その後、パーツフィーダ180に収納され、外輪洗浄器110に送られて洗浄され、付着している油などが除去される。その後、軌道輪1は組立機130に供給される。
【0005】
一方、パーツフィーダ140には、図4に示した保持器4が収納されており、パーツフィーダ150には、針状ころ3が収納されている。パーツフィーダ140,150から保持器4と、必要数の針状ころ3とが図示しない搬送機構を介して洗浄器160に供給されて洗浄され、組立機130に供給される。
【0006】
組立機130に供給された針状ころ3は保持器4に取付けられる。軌道輪1は、組立機130に供給されると、保持器4に取付けられた針状ころ3が、軌道輪1に挿入される。
【0007】
このようにして組立てられたシェル形針状ころ軸受は、良品であるか否かが判定される。良品と判定されたシェル形針状ころ軸受は、ストッカ170に収納され、出荷される。
【特許文献1】特開2003-4051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、図5に示したプレス機190と組立機130の生産速度が異なっており、プレス機190によるまとめ生産であるために、組立機130で、軌道輪1の不良が判定されたときに、軌道輪1の不良品が大量に発生してしまい、廃棄処理したり、良品のみを選したり、それに伴う再生産を行わなければならないという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、大量の不良品の発生を極力少なくできる軸受製造設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、シェル形軸受の軸受製造設備であって、円筒状の軌道面を有するシェル形外輪を製造するプレス機と、シェル形軸受を組立てる組立機と、プレス機によるシェル形外輪の製造と、組立機によるシェル形軸受の組立とを同期させるための同期化手段とを備える。
【0011】
プレス機によるシェル形外輪の製造と、組立機によるシェル形軸受の組立とを同期させ、異常が生じたときに直ちに同期加工を停止することにより、シェル形外輪の不良品が大量に発生するのを阻止できる。
【0012】
好ましくは、さらに、プレス機で製造されたシェル形外輪を搬送する搬送手段と、予め形成された針状ころを収納して所定数づつ供給するころ供給手段と、予め形成された保持器を収納して供給する保持器供給手段とを備える。
【0013】
針状ころと、保持器とを組立機に搬送してシェル外輪に組み込むことにより、シェル形軸受を組立てることができる。
【0014】
好ましくは、プレス機は、シェル形外輪を形成するカートリッジ金型を含む。
【0015】
カートリッジ金型を使用することにより、プレス機に装着するときの位置調整などをプレス機内で段取りすることなく、外段取りすることが可能になる。
【0016】
好ましくは、組立機は、搬送手段によって搬送されたシェル形外輪と、ころ供給手段から供給された針状ころと、保持器供給手段から供給された保持器とを組合わせてシェル形軸受を組立てる。
【0017】
好ましくは、さらに、プレス機で製造されたシェル形外輪が良品であるか否かを判別するための検査手段を備える。
【0018】
検査手段を備えることにより、シェル形外輪の不良品が発生したことを容易に知ることができる。
【0019】
好ましくは、同期化手段は、検査手段によって不良品が判別されたことに応じて、プレス機と組立機の同期加工を停止させる。
プレス機と組立機の同期加工を停止させることにより、シェル形外輪の不良品が大量に製造されてしまうのを阻止できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、プレス機で製造されたシェル形外輪を組立機に供給してシェル形軸受を組立て、プレス機によるシェル形外輪の製造と、組立機によるシェル形軸受の組立とを同期化手段により同期させることにより、異常が見つかると同期加工を直ちに停止させることができるので、大量の不良品の発生を極力少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、軌道輪を各工程で製作するためのプレス機の概念図であり、図2は図1の線II−II方向から見たカートリッジ金型40,50を示す図である。
【0022】
プレス機は、図4に示した軌道輪1をプレス加工するものであり、ボルスタ30とラム60とを含み、ボルスタ30とラム60との間には、カートリッジ金型40,50が配置される。カートリッジ金型40は、ダイセット下型41と、ダイセット上型42とを含み、カートリッジ金型50はダイセット下型51と、ダイセット上型52とを含む。カートリッジ金型40,50には、軌道輪1をプレス加工するための金型が装着される。
【0023】
ダイセット下型41,51の上面には、例えばパンチなどの加工治具43,44,53,54が取付けられており、ダイセット上型42,52の下面には、ダイスやノックアウトピースなどの加工治具45,46,55,56が取付けられている。加工治具43,44,53,54は、例えば凹部を有する第1の加工治具を構成しており、加工治具45,46,55,56は、例えば凸部を有する第2の加工治具を構成している。第1の加工治具と第2の加工治具とを相対的に押付けることにより、絞り,しごきなどの加工が行われる。
【0024】
ダイセット下型41,51には、図2に示すようにそれぞれの4隅に案内ポスト47,57が配置されている。ダイセット上型42,52は、ラム60に取付けられ、ダイセット下型41,51はボルスタ30に取付けられる。これにより、ラム60がラム駆動機構70により上下に駆動されると、ダイセット上型42,52は案内ポスト47,57に沿って、ダイセット下型41,51に対して上下運動する。
【0025】
ボルスタ30には、ダイセット下型41,51を取付けるときに位置決めするためのガイド31,32が設けられている。ガイド31,32は、それぞれダイセット下型41,51の例えば2つの角部分を位置決めする。なお、2つの角部分に限定することなく、4つの角部分を位置決めするようにしてもよい。また、ボルスタ30には、位置決めしたダイセット下型41,51をそれぞれ4箇所でボルスタ30に固定するためのクランプ機構33,34が設けられている。
【0026】
クランプ機構33,34は、例えばダイセット下型41,51のそれぞれに4箇所の孔を形成しておき、ボルスタ30からピストンをそれぞれの孔に突出させ、ピストンの先端をねじ止めすることにより、ダイセット下型41,51をそれぞれボルスタ30に固定できる。クランプ機構33,34は、その他の構造のものを用いてもよい。
【0027】
加工治具43,44,53,54と、加工治具45,46,55,56との間には、各工程で加工された軌道輪1を隣接する加工治具に移送するための図示しない移送機構が設けられている。
【0028】
さらに、金型をカートリッジ金型40,50としたので、カートリッジ金型40,50の加工治具43〜46,53〜56の位置調整などをプレス機内で段取りすることなく、外段取りすることが可能になる。このため、カートリッジ金型40,50を外段取りした状態で、プレス機に装着する前に、事前に製品の精度を確認した上で、ダイセット下型41,51をボルスタ30に取り付け、ダイセット上型42,52をラム60に取付けてプレス機に装着することができる。これにより、熟練技能者の最終精度調整を不要にし、グローバルな地域での生産が可能になる。
【0029】
図3はこの発明の一実施形態の軸受製造設備の配置図である。図3において、プレス機100は、図2に示したボルスタ30と、カートリッジ金型40,50と、ラム60と、ラム駆動機構70とを含み、図4に示した軌道輪1を順次形成する。形成された軌道輪1は、搬送手段として動作する搬送機構101を介して外輪洗浄機110に送られて洗浄され、付着している油などが除去される。
【0030】
その後、搬送機構101により検査手段として動作する画像検査機120に送られて画像処理などにより外観検査が行われる。外観検査で良品と判定された軌道輪1は搬送機構101により組立機130に供給される。プレス機100と組立機130とを同期して動作させるために同期化手段として動作する同期化機102が設けられている。プレス機100は、例えば1個の軌道輪1を加工する都度、組立機30が1個のシェル形針状ころ軸受を組立てるように、組立機130と同期して駆動される。
【0031】
一方、保持器供給手段として動作するパーツフィーダ140には、図4に示した保持器4が収納されており、ころ供給手段として作動するパーツフィーダ150には、針状ころ3が収納されている。パーツフィーダ140,150から保持器4と、必要数の針状ころ3とが搬送機構103を介して洗浄器160に供給されて洗浄され、組立機130に供給される。
【0032】
組立機130に供給された針状ころ3は保持器4に取付けられる。軌道輪1は、組立機130に供給されると、保持器4に取付けられた針状ころ3が、軌道輪1に挿入される。軌道輪1の内側段差部が縁曲げされて他方のフランジ1bが形成されて図4に示した軌道輪1となる。
【0033】
このようにして組立てられたシェル形針状ころ軸受は、組立機130で良品であるか否かが判定される。良品と判定されたシェル形針状ころ軸受は、ストッカ170に収納され、次工程で焼入れ処理が行われる。
【0034】
もし、画像検査機120により、軌道輪1の外観検査で不良と判定されたとき、あるいは組立機130において不良品と判定されると、同期化機102に不良判定信号が与えられる。応じて、同期化機102は、直ちにプレス機100と組立機130の同期加工を停止させる。
【0035】
上述のごとく、この発明の一実施形態によれば、プレス機100の設備を小型で安価にでき、プレス機100と、組立機130とを同期させて同期加工することが可能になる。
【0036】
従来は、プレス加工をバッチ生産していたため、組立工程で傷やその他の不具合が発見された場合は、多くの工数を使って不良品を選別し、選別した不良品を廃棄するしかなかった。これに対して、上述の例ではプレス機100と組立機130とを同期加工させることができるので、組立機130で不具合が検出されたとき、直ちにプレス機100を停止できるため、不良品の発生量をきわめて少なくできる。
【0037】
また、センシング機構を各工程のそれぞれに対応して設ければよいので、さらにプレス機100を小型化しかつ安価にできる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による軸受製造設備は、シェル形針状ころ軸受の軌道輪1を製造するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】軌道輪を各工程で製作するためのプレス機の概念図である。
【図2】図1の線II−II方向から見たカートリッジ金型を示す図である。
【図3】この発明の一実施形態の軸受製造設備の配置図である。
【図4】従来のシェル形針状ころ軸受の部分断面図である。
【図5】従来のシェル形針状ころ軸受の製造設備を示す配置図である。
【符号の説明】
【0041】
1 軌道輪、2 内周面、3 針状ころ、4 保持器、30 ボルスタ、31,32 ガイド、33,34 クランプ機構、40,50 カートリッジ金型、41,51 ダイセット下型、42,52 ダイセット上型、43〜46,53〜56 加工治具、47,57 案内ポスト、60 ラム、70 ラム駆動機構、100 プレス機、101,103 搬送機構、102 同期化機、110 外輪洗浄機、120 画像検査機、130 組立機、140,150 パーツフィーダ、160 洗浄機、170 ストッカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル形軸受の軸受製造設備であって、
円筒状の軌道面を有するシェル形外輪を製造するプレス機と、
前記シェル形軸受を組立てる組立機と、
前記プレス機による前記シェル形外輪の製造と、前記組立機による前記シェル形軸受の組立とを同期させるための同期化手段とを備える、軸受製造設備。
【請求項2】
さらに、前記プレス機で製造されたシェル形外輪を搬送する搬送手段と、
予め形成された針状ころを収納して所定数づつ供給するころ供給手段と、
予め形成された保持器を収納して供給する保持器供給手段とを備える、請求項1に記載の軸受製造設備。
【請求項3】
前記プレス機は、前記シェル形外輪を形成するカートリッジ金型を含む、請求項1または2に記載の軸受製造設備。
【請求項4】
前記組立機は、前記搬送手段によって搬送されたシェル形外輪と、前記ころ供給手段から供給された針状ころと、前記保持器供給手段から供給された保持器とを組合わせて前記シェル形軸受を組立てる、請求項2に記載の軸受製造設備。
【請求項5】
さらに、前記プレス機で製造されたシェル形外輪が良品であるか否かを判別するための検査手段を備える、請求項1から4のいずれかに記載の軸受製造設備。
【請求項6】
前記同期化手段は、前記検査手段によって不良品が判別されたことに応じて、前記プレス機と前記組立機の同期加工を停止させる、請求項5に記載の軸受製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296277(P2008−296277A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148350(P2007−148350)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】