説明

軸受試験装置

【課題】軸受試験装置において、軸受の動特性を高精度に取得可能とする。
【解決手段】試験用回転軸31にティルティングパッド型軸受10が嵌め合わされて構成される試験用回転系と、この試験用回転系を弾性支持するばね34と、試験用回転系に荷重を負荷する油圧シリンダ35と、試験用回転軸31の変位を計測する変位計測センサ37と、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸31の変位とばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求める評価装置41とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンや発電機などの回転機械において、その回転軸を支持する軸受の動特性を評価するための軸受試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、回転軸とこの回転軸に装着される羽根車や歯車などからなる回転体が軸受により回転自在に支持された構造であり、このような回転機械では、作動時に振動が発生する。この振動は、回転体を支持する軸受の静的特性や動的特性に大きく影響を受けるものである。この回転機械における回転体の振動特性は、実際の回転機械の作動を模擬した試験により調べることができる。
【0003】
従来の軸受試験装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された軸受試験装置は、供試軸受が嵌め合わされて試験用回転系を形成する試験用回転軸、試験用回転系に荷重を負荷する荷重負荷手段、試験用回転系に負荷された荷重を計測する荷重計測手段、試験用回転系の変位を計測する変位計測手段を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−050863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受試験装置は、一般に、供試軸受における回転軸を支持するための油膜剛性が、周囲の支持(補助)軸受で回転軸を支持する剛性に対して十分に小さく、装置の剛性が油膜と比較して十分に大きいことを前提としている。近年、例えば、発電用蒸気タービンは、高効率、大容量化が求められており、それに伴い軸受性能への要求も厳しいものになってきている。特に、回転軸の大型化、大重量化により荷重条件が厳しい軸受は、油膜の剛性が非常に大きくなり、評価試験装置の剛性を上回ってくるようなケースが発生する。すると、計測結果に装置自体の構造変形等が大きく影響することになり、その結果、高精度な軸動特性を取得することが困難となる。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、軸受の動特性を高精度に取得可能な軸受試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の軸受試験装置は、試験用回転軸に供試軸受が嵌め合わされて構成される試験用回転系と、前記試験用回転系を弾性支持する弾性支持装置と、前記試験用回転系に荷重を負荷する荷重負荷装置と、前記試験用回転軸の変位を計測する軸変位計測装置と、前記試験用回転系への負荷荷重と前記試験用回転軸の変位と前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重とから前記供試軸受の動特性を求める評価装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
従って、評価装置は、試験用回転系への負荷荷重と、試験用回転軸の変位と、弾性支持装置の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とから供試軸受の動特性を求めることから、弾性支持装置の弾性支持特性を除去して試験用回転系における動剛性を求めることで、供試軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【0009】
本発明の軸受試験装置では、前記試験用回転系への負荷荷重F1、前記試験用回転軸の変位Δd1、前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重F3とするとき、前記評価装置は、前記供試軸受の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価することを特徴としている。
【0010】
従って、試験用回転系への負荷荷重F1から弾性支持装置の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3を減算して供試軸受の動剛性Z1を算出することで、供試軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【0011】
本発明の軸受試験装置では、前記試験用回転軸の慣性力を計測する慣性力計測装置を設け、前記評価装置は、前記試験用回転系への負荷荷重と前記試験用回転軸の変位と前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重と前記試験用回転軸の慣性力とから前記供試軸受の動特性を求めることを特徴としている。
【0012】
従って、弾性支持装置の弾性支持特性と試験用回転軸の慣性力とを除去して試験用回転系における動剛性を求めることで、供試軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【0013】
本発明の軸受試験装置では、前記試験用回転系への負荷荷重F1、前記試験用回転軸の変位Δd1、前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重F3、前記試験用回転軸の慣性力F2とするとき、前記評価装置は、前記供試軸受の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F2−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価することを特徴としている。
【0014】
従って、試験用回転系への負荷荷重F1から、弾性支持装置の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3と、試験用回転軸の慣性力F2とを減算して供試軸受の動剛性Z1を算出することで、供試軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【0015】
本発明の軸受試験装置では、前記試験用回転系は、前記供試軸受の両側で前記試験用回転軸を回転自在に支持する一対の支持軸受を有し、前記弾性支持装置は、前記一対の支持軸受を弾性支持することを特徴としている。
【0016】
従って、簡単な構成で容易に弾性支持装置の弾性支持特性を除去して試験用回転系における動剛性を求めることができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0017】
本発明の軸受試験装置では、前記供試軸受は、軸受台に支持される軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内面に装着されて油膜を介して前記試験用回転軸を支持するティルティングパッドとを有するティルティングパッド型軸受であることを特徴としている。
【0018】
従って、試験用回転系の振動に応じてティルティングパッドが変形しても、供試軸受としてのティルティングパッド型軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の軸受試験装置によれば、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸の変位と弾性支持装置の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とから供試軸受の動特性を求める評価装置を設けるので、供試軸受の動特性を高精度に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る軸受試験装置を表す概略図である。
【図2】図2は、実施例1の軸受試験装置における試験方法を表すブロック図である。
【図3】図3は、ティルティングパッド型軸受の断面図である。
【図4】図4は、図3のIV-IV断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係る軸受試験装置を表す概略図である。
【図6】図6は、実施例2の軸受試験装置における試験方法を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る軸受試験装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る軸受試験装置を表す概略図、図2は、実施例1の軸受試験装置における試験方法を表すブロック図、図3は、ティルティングパッド型軸受の断面図、図4は、図3のIV-IV断面図である。
【0023】
実施例1の軸受試験装置は、ティルティングパッド型軸受に適用している。まず、このティルティングパッド型軸受について説明する。図3及び図4に示すように、ティルティングパッド型軸受10は、回転軸11を回転自在に支持している。この回転軸11は、例えば、蒸気タービンのロータである。
【0024】
このティルティングパッド型軸受10は、軸受台12と、この軸受台12に固定支持される軸受ハウジング13と、軸受ハウジング13の内面に装着されて油膜を介して回転軸11を支持するティルティングパッド14により構成されている。
【0025】
軸受台12は、断面が半円状の凹部12aを有している。一方、軸受ハウジング13は、半円リング形状をなす上下一対の軸受ハウジング13a,13bが図示しない位置決めピン及び結合ボルトにより結合されて構成されている。ティルティングパッド14は、ほぼ同形状をなす4個のティルティングパッド14a,14b,14c,14dより構成されている。そして、この軸受ハウジング13は、その内側に周方向に沿ってこのティルティングパッド14a,14b,14c,14dが配置されている。この場合、各ティルティングパッド14a,14b,14c,14dは、隣接するもの同士の間に所定の隙間が確保されている。
【0026】
また、軸受ハウジング13は、その内面に4個の球面ピボット21が周方向にほぼ均等間隔で装着され、一方、ティルティングパッド14(14a,14b,14c,14d)は、その背面にそれぞれ調整ライナ22が装着されている。そして、軸受ハウジング13の各球面ピボット21とティルティングパッド14(14a,14b,14c,14d)の調整ライナ22とが対向して配置されている。この球面ピボット21は、表面が球面状に形成され、各ティルティングパッド14a,14b,14c,14dは、この球面ピボット21に沿って回転軸11の周方向及び軸方向に揺動可能となっている。
【0027】
軸受ハウジング13及びティルティングパッド14は、回転軸10の軸方向における両側が全周にわたってリング形状をなす一対のサイドプレート23により支持されている。
サイドプレート23は、周方向に所定間隔で複数配置されたボルト24により軸受ハウジング13に結合されている。なお、サイドプレート23は、内周面と回転軸11の外周面との間に所定の隙間が確保されている。
【0028】
軸受ハウジング13は、その外周面に各球面ピボット21に対応してアウタライナ25が設けられている。このアウタライナ25は、図示しない結合ボルトにより軸受ハウジング13の外周面に結合されており、外周面が軸受ハウジング13の外周面よりわずかに外方へ突出している。そのため、軸受ハウジング13が軸受台12の凹部12aに入り込んだとき、アウタライナ25が軸受台12に接触し、軸受ハウジング13は、アウタライナ25を介して軸受台12に固定支持されることとなる。
【0029】
複数の給油ノズル26は、各ティルティングパッド14a,14b,14c,14dを挟むように配置されている。給油ノズル26は、同形状をなし、主ケーシング26aが軸受ハウジング13に固定され、2つの腕部26bが回転軸11の軸方向に延設され、内部に潤滑油供給孔(図示略)が形成されている。そのため、各給油ノズル26は、腕部26bの先端から潤滑油を吐出し、回転軸11の回転力によりティルティングパッド14の内周面と回転軸11の外周面との間に入りこみ、ここに油膜を形成することができる。
【0030】
従って、ティルティングパッド型軸受10は、ティルティングパッド14(14a,14b,14c,14d)が油膜を介して回転する回転軸11を支持することができ、このとき、回転軸11の振動に応じてティルティングパッド14(14a,14b,14c,14d)が揺動することで、回転軸11を適正に支持することができる。
【0031】
ところで、回転軸11は、この回転軸11に作用する各種の応力により振動が発生する。この振動は、回転軸11を支持するティルティングパッド型軸受10の静的特性や動的特性に大きく影響を受けるものであることから、回転軸11の振動特性を模擬した試験により調べることが必要となる。
【0032】
実施例1において、図1に示すように、軸受試験装置30は、ティルティングパッド型軸受10の動特性を求めて評価するものである。この軸受試験装置30において、試験用回転軸31は、ティルティングパッド型軸受10により回転自在に支持されると共に、このティルティングパッド型軸受10の両側で、一対の支持軸受32により回転自在に支持されている。なお、各軸受10,32は、図示しない潤滑油供給装置により潤滑油が供給されており、潤滑油、つまり、軸受油膜部10a,32aにより試験用回転軸31を支持している。この場合、試験用回転軸31は、軸方向に並んで配置された支持軸受32、ティルティングパッド型軸受10、支持軸受32により回転自在に支持されることとなり、各軸受10,32の間隔は同間隔となっている。
【0033】
ここで、試験用回転軸31にティルティングパッド型軸受(供試軸受)10が嵌め合わされることで、試験用回転系が構成される。つまり、本発明の試験用回転系は、試験用回転軸31と一対の支持軸受32により構成される。
【0034】
各支持軸受32は、軸受台33に対してそれぞればね(弾性支持装置)34により弾性支持されている。即ち、軸受台33は、各ばね34により各支持軸受32を介して試験用回転軸31を弾性支持することで、各ばね34が試験用回転系を弾性支持することとなる。
【0035】
ティルティングパッド型軸受10と各支持軸受32との間には、試験用回転系に荷重を負荷する油圧シリンダ(荷重負荷装置)35が設けられている。即ち、中央のティルティングパッド型軸受10は、軸受台33に載置され、油圧シリンダ35の一端部が連結され、この油圧シリンダ35が載置台33の貫通孔33a内に挿通されている。一方、両側にある2つの支持軸受32は、それぞれ連結ロッド39が連結され、各連結ロッド39同士が連結アーム40により回動自在に連結されている。そして、油圧シリンダ35は、他端部がこの連結アーム40における長さ方向の中間部に回動自在に連結されている。ここで、連結アーム40は、油圧シリンダ35との連結部を支点として、その端部、つまり、各連結ロッド39との連結部側が天秤のように上下移動するリンク機構を形成している。
【0036】
従って、油圧シリンダ35は、油圧が供給されることで、ティルティングパッド型軸受10に対して試験用回転軸31の径方向に向けて荷重を負荷することができ、その結果、ティルティングパッド型軸受10と各支持軸受32との各支持位置で、試験用回転軸31の径方向に対して逆方向で動荷重を作用させることができる。
【0037】
この場合、試験用回転軸31は、荷重負荷装置の一部として、軸中心からずれた位置に重り36が装着されており、試験用回転軸31の回転時に各軸受10,32に動荷重を作用させることができる。
【0038】
また、ティルティングパッド型軸受10は、試験用回転軸31の変位、つまり、ティルティングパッド14(図3参照)と試験用回転軸31との距離を計測する変位計測センサ(軸変位計測装置)37が設けられている。具体的に、この変位計測センサ37は、ティルティングパッド14に設けられており、ティルティングパッド14の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測する。
【0039】
そして、図1及び図2に示すように、評価装置41は、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸31の変位とばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求める。
【0040】
具体的に説明すると、評価装置41は、変位計測センサ37がティルティングパッド14の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測することで、ティルティングパッド型軸受10の軸受油膜部10aの振幅(相対変位)Δd1を取得する。また、評価装置41は、油圧シリンダ35がティルティングパッド型軸受10に対して負荷した荷重、つまり、加振力F1を取得する。この場合、評価装置41は、油圧シリンダ35に供給する油圧から加振力F1を推定してもよいし、また、図示しない計測器(ロードセルなど)を用いて加振力F1を計測してもよい。
【0041】
また、評価装置41は、各支持軸受32に作用するばね34の変位Δd3を取得する。この場合、評価装置41は、図示しない計測器によりばね34の変位Δd3を直接計測してもよいし、また、軸受台33に対する各支持軸受32の変位Δd3を計測してもよい。そして、評価装置41は、ばね34の変位Δd3と、事前に取得した各支持軸受32に作用するばね34のばね特性Z3とに基づいて、下記数式によりばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3を算出する。
F3=Z3×Δd3
【0042】
このように評価装置41は、加振力F1と負荷荷重F3が求められたら、下記数式によりティルティングパッド型軸受10に実際に作用する負荷荷重F11を算出する。
F11=F1−F3
そして、評価装置41は、負荷荷重F11とティルティングパッド型軸受10(ティルティングパッド14)の相対変位Δd1に基づいて下記数式によりティルティングパッド型軸受10の動剛性Z1を、ティルティングパッド型軸受10の動特性として算出して評価する。
Z1=(F11)/Δd1
【0043】
即ち、ティルティングパッド型軸受10の動特性、つまり、軸受油膜部10aの動剛性Z1を取得することで、ティルティングパッド型軸受10が特定の回転機械に対して適用可能かどうかを評価する。
【0044】
このように実施例1の軸受試験装置にあっては、試験用回転軸31にティルティングパッド型軸受10が嵌め合わされて構成される試験用回転系と、この試験用回転系を弾性支持するばね34と、試験用回転系に荷重を負荷する油圧シリンダ35と、試験用回転軸31の変位を計測する変位計測センサ37と、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸31の変位とばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求める評価装置41とを設けている。
【0045】
従って、評価装置41は、試験用回転系への負荷荷重と、試験用回転軸31の変位と、ばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求めることから、ばね34の弾性支持特性を除去して試験用回転系における動剛性を求めることで、ティルティングパッド型軸受10の動特性を高精度に取得することができる。
【0046】
また、実施例1の軸受試験装置では、試験用回転系への負荷荷重F1、試験用回転軸31の変位Δd1、ばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3とするとき、評価装置41は、ティルティングパッド型軸受10の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価している。
【0047】
従って、試験用回転系への負荷荷重F1からばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3を減算して供試軸受の動剛性Z1を算出することで、ティルティングパッド型軸受10の動特性を高精度に取得することができる。
【0048】
また、実施例1の軸受試験装置では、試験用回転系として、ティルティングパッド型軸受10の両側で試験用回転軸31を回転自在に支持する一対の支持軸受32を設け、ばね34が支持軸受32を弾性支持している。従って、簡単な構成で、容易にばね34の弾性支持特性を除去して試験用回転系における動剛性を求めることができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0049】
また、実施例1の軸受試験装置では、供試軸受としてティルティングパッド型軸受10を適用している。従って、試験用回転系の振動に応じてティルティングパッド14が変形しても、ティルティングパッド型軸受10の動特性を高精度に取得することができる。
【実施例2】
【0050】
図5は、本発明の実施例2に係る軸受試験装置を表す概略図、図6は、実施例2の軸受試験装置における試験方法を表すブロック図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
実施例2において、図5に示すように、軸受試験装置30は、ティルティングパッド型軸受10の動特性を求めて評価するものである。この軸受試験装置30において、試験用回転軸31は、ティルティングパッド型軸受10により回転自在に支持されると共に、このティルティングパッド型軸受10の両側で、一対の支持軸受32により回転自在に支持されており、各軸受10,32は、潤滑油、つまり、軸受油膜部10a,32aにより試験用回転軸31を支持している。
【0052】
また、ティルティングパッド型軸受10は、試験用回転軸31の変位、つまり、ティルティングパッド14(図3参照)と試験用回転軸31との距離を計測する変位計測センサ(軸変位計測装置)37が設けられている。具体的に、この変位計測センサ37は、ティルティングパッド14に設けられており、ティルティングパッド14の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測する。また、ティルティングパッド型軸受10は、試験用回転軸31の絶対振動(絶対変位)、つまり、軸受台33(または、軸受ハウジング13など、図3参照)と試験用回転軸31との距離を計測する変位計測センサ38が設けられている。具体的に、この変位計測センサ38は、軸受台33に設けられており、軸受台33の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測する。
【0053】
そして、図5及び図6に示すように、評価装置41は、試験用回転軸31の変位に基づいてこの試験用回転軸31の慣性力を計測(慣性力計測装置)する。評価装置41は、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸31の変位とばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重と試験用回転軸31の慣性力とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求める。
【0054】
具体的に説明すると、評価装置41は、変位計測センサ37がティルティングパッド14の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測することで、ティルティングパッド型軸受10の軸受油膜部10aの振幅(相対変位)Δd1を取得する。評価装置41は、油圧シリンダ35がティルティングパッド型軸受10に対して負荷した荷重、つまり、加振力F1を取得する。評価装置41は、変位計測センサ38が軸受台33の内面と試験用回転軸31の外面との距離を計測することで、軸受油膜部10aの振動(絶対変位)d2を取得する。そして、評価装置41は、軸受油膜部10aの振動(絶対変位)d2と、試験用回転軸31の質量(重量)mと、試験用回転軸31の角速度ωとに基づいて、下記数式により試験用回転軸31の慣性力(ロータ慣性力)F2を算出する。
F2=mω×d2
【0055】
また、評価装置41は、各支持軸受32に作用するばね34の変位Δd3を取得する。そして、評価装置41は、ばね34の変位Δd3と、事前に取得した各支持軸受32に作用するばね34のばね特性Z3とに基づいて、下記数式によりばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3を算出する。
F3=Z3×Δd3
【0056】
このように評価装置41は、加振力F1と慣性力F2と負荷荷重F3が求められたら、下記数式によりティルティングパッド型軸受10に実際に作用する負荷荷重F11を算出する。
F11=F1−F2−F3
【0057】
そして、評価装置41は、負荷荷重F11とティルティングパッド型軸受10(ティルティングパッド14)の相対変位Δd1に基づいて下記数式によりティルティングパッド型軸受10の動剛性Z1を、ティルティングパッド型軸受10の動特性として算出して評価する。
Z1=(F11)/Δd1
【0058】
即ち、ティルティングパッド型軸受10の動特性、つまり、軸受油膜部10aの動剛性Z1を取得することで、ティルティングパッド型軸受10が特定の回転機械に対して適用可能かどうかを評価する。
【0059】
このように実施例2の軸受試験装置にあっては、試験用回転軸31にティルティングパッド型軸受10が嵌め合わされて構成される試験用回転系と、この試験用回転系を弾性支持するばね34と、試験用回転系に荷重を負荷する油圧シリンダ35と、試験用回転軸31の変位を計測する変位計測センサ37と、試験用回転系への負荷荷重と試験用回転軸31の変位とばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重と試験用回転軸31の慣性力からティルティングパッド型軸受10の動特性を求める評価装置41とを設けている。
【0060】
従って、評価装置41は、試験用回転系への負荷荷重と、試験用回転軸31の変位と、ばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重と、試験用回転軸31の慣性力とからティルティングパッド型軸受10の動特性を求めることから、ばね34の弾性支持特性と試験用回転軸31の慣性力を除去して試験用回転系における動剛性を求めることで、ティルティングパッド型軸受10の動特性を高精度に取得することができる。
【0061】
また、実施例2の軸受試験装置では、試験用回転系への負荷荷重F1、試験用回転軸31の変位Δd1、ばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3、試験用回転軸31の慣性力F2とするとき、評価装置41は、ティルティングパッド型軸受10の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F2−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価している。
【0062】
従って、試験用回転系への負荷荷重F1から、ばね34の弾性支持特性に応じて試験用回転系に入力する負荷荷重F3と、試験用回転軸31の慣性力F2とを減算してティルティングパッド型軸受10の動剛性Z1を算出することで、ティルティングパッド型軸受10の動特性を高精度に取得することができる。
【0063】
なお、上述した各実施例では、本発明の供試軸受をティルティングパッド型軸受として説明したが、この形式の軸受に限るものではない。例えば、スリーブなどを用いたすべり軸受や玉やころを用いた転がり軸受に適用してもよいものである。
【符号の説明】
【0064】
10 ティルティングパッド型軸受(供試軸受)
11 回転軸
12 軸受台
13 軸受ハウジング
14,14a,14b,14c,14d ティルティングパッド
30 軸受試験装置
31 試験用回転軸(試験用回転系)
32 支持軸受(試験用回転系)
33 軸受台
34 ばね(弾性支持装置)
35 油圧シリンダ(荷重負荷装置)
36 重り
37 変位計測センサ(軸変位計測装置)
38 変位計測センサ
41 評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験用回転軸に供試軸受が嵌め合わされて構成される試験用回転系と、
前記試験用回転系を弾性支持する弾性支持装置と、
前記試験用回転系に荷重を負荷する荷重負荷装置と、
前記試験用回転軸の変位を計測する軸変位計測装置と
前記試験用回転系への負荷荷重と前記試験用回転軸の変位と前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重とから前記供試軸受の動特性を求める評価装置と、
を備えることを特徴とする軸受試験装置。
【請求項2】
前記試験用回転系への負荷荷重F1、前記試験用回転軸の変位Δd1、前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重F3とするとき、前記評価装置は、前記供試軸受の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価することを特徴とする請求項1に記載の軸受試験装置。
【請求項3】
前記試験用回転軸の慣性力を計測する慣性力計測装置を設け、前記評価装置は、前記試験用回転系への負荷荷重と前記試験用回転軸の変位と前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重と前記試験用回転軸の慣性力とから前記供試軸受の動特性を求めることを特徴とする請求項1に記載の軸受試験装置。
【請求項4】
前記試験用回転系への負荷荷重F1、前記試験用回転軸の変位Δd1、前記弾性支持装置の弾性支持特性に応じて前記試験用回転系に入力する負荷荷重F3、前記試験用回転軸の慣性力F2とするとき、前記評価装置は、前記供試軸受の動剛性Z1を、
Z1=(F1−F2−F3)/Δd1
により算出して動特性を評価することを特徴とする請求項3に記載の軸受試験装置。
【請求項5】
前記試験用回転系は、前記供試軸受の両側で前記試験用回転軸を回転自在に支持する一対の支持軸受を有し、前記弾性支持装置は、前記一対の支持軸受を弾性支持することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の軸受試験装置。
【請求項6】
前記供試軸受は、軸受台に支持される軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内面に装着されて油膜を介して前記試験用回転軸を支持するティルティングパッドとを有するティルティングパッド型軸受であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の軸受試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−255688(P2012−255688A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128138(P2011−128138)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】