説明

軸流送風機及び空気調和機

【課題】ファン性能を向上させることができる軸流送風機及びこれを備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】軸流送風機10では、羽根車20のリング部22における吸込側領域には、湾曲部50が設けられている。湾曲部50は、主流MFの上流側に向く第1方向D1に向かいながら半径方向の外側D3に延びる第1湾曲部51と、第1湾曲部51よりも半径方向の外側D3に位置し、第1方向D1の逆方向である第2方向D2に向かいながら半径方向の外側D3に延びる第2湾曲部52とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流送風機及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機などの用途で軸流送風機が用いられている。軸流送風機は、回転軸の周りに放射状に設けられた複数の羽根を有する羽根車と、空気の流路を区画する仕切部としてのベルマウスと、を備えている。ベルマウスは、羽根車の外周を囲むように配置されている。このような軸流送風機では、羽根の外周付近において空気の渦(翼端渦)が発生することがある。この翼端渦は、大きな圧力損失の要因となり、ファン性能を十分に発揮できないという問題がある。
【0003】
そこで、複数の羽根の外周縁部に沿って複数の羽根と一体的に設けられた筒状のリング部を有する羽根車を用いることにより、翼端渦の発生を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−223625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなリング部を有する羽根車を用いる場合には、リング部とベルマウスとの隙間(チップクリアランス)において空気が逆流する現象が発生する。すなわち、この逆流は、リング部の内側の領域を通過する主流の向きとは反対方向に流れる。このような逆流が生じると、主流は逆流を巻き込みながら羽根車を通過するため、リング部における吸込側領域の先端部では大きな剥離が生じる。特に、半開放型の軸流送風機では、羽根車の外周部の吸込側がベルマウスに囲まれておらず開放されているので、この開放されている領域から羽根車に空気が流入しやすい。したがって、半開放型の軸流送風機では、主流が逆流を巻き込みやすく、その結果、リング部における吸込側領域の先端部において剥離が生じやすい。
【0006】
また、リング部を有していない羽根車に比べて、リング部を有する羽根車では求心的な流れ(回転軸寄りの流れ)が支配的となるため、吸込側領域の先端部において剥離した流れがリング部の内周面に再付着しにくい。このようにリング部の内周面に再付着していない領域においては、羽根が流体に対して負荷を与えられないので、ファン性能が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファン性能を向上させることができる軸流送風機及びこれを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軸流送風機は、羽根車(20)と、仕切部(30a)とを備えている。前記羽根車(20)は、回転軸(A)の周りに設けられた複数の羽根(21)と、前記複数の羽根(21)の外周縁部に沿って前記複数の羽根(21)と一体的に設けられたリング部(22)とを有する。空気の主流は、前記リング部(22)の内側を通過する。前記仕切部(30a)は、前記リング部(22)の外周を囲むように前記リング部(22)と所定の隙間をあけて配置されている。前記仕切部(30a)は、空気の流路を区画する。前記リング部(22)における吸込側領域には、湾曲部(50)が設けられている。前記湾曲部(50)は、第1湾曲部(51)と、第2湾曲部(52)とを有している。前記第1湾曲部(51)は、前記主流(MF)の上流側に向く第1方向(D1)に向かいながら半径方向の外側(D3)に延びている。前記第2湾曲部(52)は、前記第1湾曲部(51)よりも半径方向の外側(D3)に位置し、前記第1方向の逆方向である第2方向(D2)に向かいながら半径方向の外側(D3)に延びている。
【0009】
この構成では、湾曲部(50)は、第1湾曲部(51)と、第2湾曲部(52)とを有している。したがって、リング部(22)と仕切部(30a)との間を通過する逆流(BF)の向きは、湾曲部(50)に沿って流れる間に所望の方向に矯正されるので、リング部(22)における吸込側領域での剥離が抑制される。具体的には、次の通りである。
【0010】
逆流(BF)は、リング部(22)と仕切部(30a)との間を通過するときには主流(MF)に対してほぼ逆方向、すなわち第1方向(D1)のベクトルを含む方向に向いているが、第1湾曲部(51)に沿って流れる間に半径方向の外側(D3)に向きが矯正され、さらにその後、第2湾曲部(52)に沿って流れる間に、第1方向(D1)の逆方向である第2方向(D2)のベクトルを含む方向に向きが矯正される。このように逆流(BF)の向きが湾曲部(50)において大きく矯正される過程、及び逆流(BF)が第2湾曲部(52)の先端部(52e)において裏面側の領域(正圧領域)に回り込む過程において、逆流(BF)の運動量は、従来よりも低減されることになる。その結果、リング部(22)における第2湾曲部(52)の先端部(52e)及びその近傍での剥離が抑制される。よって、ファン性能を向上させることができる。
【0011】
前記軸流送風機において、前記第2湾曲部(52)の先端部(52e)における接線(Dt)は、半径方向よりも回転軸(A)の方向寄りになるような方向に向いているのが好ましい。
【0012】
この構成では、逆流(BF)は、第2湾曲部(52)に沿って流れる間に第2方向(D2)のベクトルの割合がより多くなるように矯正される。このように逆流(BF)の向きが湾曲部(50)においてより大きく矯正されることにより、逆流(BF)の運動量の低減効果をより高めることができる。その結果、リング部(22)における第2湾曲部(52)の先端部及びその近傍での剥離がさらに抑制される。具体的には、例えば、前記湾曲部(50)の断面形状が半円弧状である形態が挙げられる。
【0013】
本発明の空気調和機は、前記軸流送風機を室外ユニットの送風装置として用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ファン性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る軸流送風機を備えた空気調和機の室外ユニットを示す断面図である。
【図2】前記軸流送風機の羽根車を示す背面図である。
【図3】前記軸流送風機の一部を拡大した断面図である。
【図4】(A)は、前記実施形態に係る軸流送風機における空気の流れを示す模式図であり、(B)は、半円弧状の湾曲部が設けられていない参考例の軸流送風機における空気の流れを示す模式図である。
【図5】前記実施形態に係る軸流送風機の特性と半円弧状の湾曲部が設けられていない軸流送風機の特性とを比較した結果を示すグラフであり、流量係数と静圧係数との関係を示している。
【図6】前記実施形態に係る軸流送風機の特性と半円弧状の湾曲部が設けられていない軸流送風機の特性とを比較した結果を示すグラフであり、流量係数と比騒音との関係を示している。
【図7】前記実施形態に係る軸流送風機の特性と半円弧状の湾曲部が設けられていない軸流送風機の特性とを比較した結果を示すグラフであり、流量係数と全圧効率との関係を示している。
【図8】前記リング部の変形例1を示す概略図である。
【図9】前記リング部の変形例2を示す概略図である。
【図10】前記リング部の変形例3を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、軸流送風機10を備えた空気調和機の室外ユニット40を示す断面図である。以下の説明において、主流MFの上流側に向き、回転軸Aに平行な方向を第1方向D1とし、第1方向D1の逆方向を第2方向D2とする。
【0017】
図1に示すように、室外ユニット40は、ケーシング41と、熱交換器42と、軸流送風機10とを備えている。ケーシング41には、空気吸込口43と空気吹出口44とが設けられている。熱交換器42は、上下方向に延びる形状を有しており、ケーシング41内において空気吸込口43側に配置されている。空気吹出口44にはグリル45が取り付けられている。
【0018】
軸流送風機10は、羽根車20と、ベルマウス30と、ファンモータ11とを備えている。軸流送風機10は、半開放型の軸流送風機である。すなわち、軸流送風機10では、ベルマウス30は、羽根車20の外周部における吹出側(図1における左側)の周りを囲んでおり、羽根車20の外周部における吸込側(図1における右側)は、ベルマウス30に囲まれておらず、開放されている。
【0019】
ファンモータ11は、グリル45に取り付けられている。ファンモータ11は、回転軸Aを中心に回転するシャフト12を有している。
【0020】
図1及び図2に示すように、羽根車20は、シャフト12に固定されたハブ23と、ハブ23の外周面から半径方向の外側に放射状に延びる複数の羽根21と、複数の羽根21の外周縁部21aに沿って複数の羽根21と一体的に設けられたリング部22とを有している。
【0021】
ベルマウス30は、ケーシング41の前板41aに取り付けられている。ベルマウス30は、グリル45、ファンモータ11及び羽根車20と一体化(モジュール化)された後、前板41aに取り付けられる。
【0022】
ベルマウス30は、前板41aと平行に延びる平板部30bと、円形の空気吹出口44を区画する仕切部30aとを有している。仕切部30aは、リング部22の外周を囲むようにリング部22と所定の隙間をあけて配置されている。仕切部30aにおける背面側の部位(第1方向D1に延びる形状の部位)は、内周面の内径がほぼ一定の筒形状を有しており、仕切部30aにおける前面側の部位は、第2方向D2に向かうにつれて内周面の内径が大きくなるフレア形状を有している。
【0023】
リング部22は、吹出側(前面側)に位置して各羽根21の外周縁部21aにつながっている接続部53と、吸込側(背面側)に位置する湾曲部50とを有している。接続部53は、筒形状を有しており、ベルマウス30の仕切部30aの内周面に対して半径方向に対向している。
【0024】
湾曲部50は、主流MFを複数の羽根21に案内する機能と、後述する逆流BFを案内する機能とを有している。湾曲部50の周囲は、ベルマウス30には囲まれていない。湾曲部50は、各羽根21の外周縁部21aから離隔している。
【0025】
図3の断面図に示すように、湾曲部50における背面側の表面(第1方向D1に向いた表面)は、第1方向D1に凸の凸曲面であり、湾曲部50における前面側の表面(第2方向D2に向いた表面)は、第1方向D1に凹む凹曲面である。湾曲部50の断面形状は、半円弧状である。半円弧状とは、前記凸曲面及び前記凹曲面の断面形状が半円又は半円に近い形状であることをいう。
【0026】
湾曲部50は、最も第1方向D1に位置する頂部50cを有している。この頂部50cは、図2に二点鎖線で示すように、湾曲部50において回転軸Aを中心とする円上に位置している。
【0027】
湾曲部50は、第1湾曲部51と、第2湾曲部52とを有している。第1湾曲部51は、頂部50cよりも半径方向の内側の部位であり、第2湾曲部52は、頂部50cよりも半径方向の外側の部位である。
【0028】
第1湾曲部51は、第1方向D1に向かいながら半径方向の外側D3に延びている。すなわち、第1湾曲部51は、第1方向D1に向かうにつれて径が大きくなるフレア形状を有している。第1湾曲部51は、背面側に位置する吸込面(内周面)51s1と、前面側に位置する逆流案内面(外周面)51s2とを有している。第2湾曲部52は、第1湾曲部51の半径方向外側の端部(頂部50c)から連続している。
【0029】
第2湾曲部52は、第1湾曲部51よりも半径方向外側に位置している。第2湾曲部52は、第2方向D2に向かいながら半径方向外側D3に延びている。第2湾曲部52の第2方向D2の端部である先端部52eは、頂部50cよりも第2方向D2に位置している。
【0030】
第2湾曲部52は、背面側に位置する吸込面(外周面)52s1と、前面側に位置する逆流案内面(内周面)52s2とを有している。第1湾曲部51の吸込面51s1と、第2湾曲部52の吸込面52s1とは、湾曲部50の前記凸曲面(吸込凸曲面)を構成している。第1湾曲部51の逆流案内面51s2と、第2湾曲部52の逆流案内面52s2とは、湾曲部50の前記凹曲面(逆流案内凹曲面)を構成している。この逆流案内凹曲面とベルマウス30との間の空間は、負圧領域Nであり、前記吸込凸曲面側の空間は、正圧領域Pである。
【0031】
図3に示すように、第2湾曲部52の先端部52eにおける接線Dtは、半径方向Drよりも回転軸Aの方向Da寄りになるような方向に向いている。すなわち、接線Dtと回転軸Aの方向Daとのなす角度θ1は、接線Dtと半径方向Drとのなす角度θ2よりも小さい。なお、先端部52eにおける接線Dtとは、逆流案内面52s2の第2方向D2の端部(逆流案内面52s2の縁部)における接線をいう。角度θ1は0°であってもよい。
【0032】
先端部52eは、ベルマウス30の仕切部30aにおける背面側の端部30cよりも第1方向D1に位置している。頂部50cは、仕切部30aの端部30cよりも半径方向Drの外側D3に位置している。このように頂部50cが半径方向Drの外側D3よりに配置されていることによって、負圧領域Nの空間を大きくすることができるので、先端部52e近傍における負圧領域Nと正圧領域Pとの圧力差(圧力勾配)を小さくすることができる。これにより、第2湾曲部52の先端部52e及びその近傍の吸込面52s1における剥離を抑制できる。
【0033】
仕切部30aの端部30cと第2湾曲部52の先端部52eとの距離は、仕切部30aの端部30cと接続部53との距離よりも大きい。このように湾曲面50に案内された逆流BFの出口となる端部30cと先端部52eとの間の距離が大きいことにより、先端部52e近傍における負圧領域Nと正圧領域Pとの圧力差(圧力勾配)を小さくすることができる。これにより、第2湾曲部52の先端部52e及びその近傍の吸込面52s1における剥離を抑制できる。
【0034】
また、図4(B)に示す参考例の軸流送風機と比較すると、本実施形態の軸流送風機10では、湾曲部50の前記逆流案内凹曲面の長さ(逆流BFが案内される長さ)が大きいので、先端部52e近傍における負圧領域Nと正圧領域Pとの圧力差(圧力勾配)を小さくすることができる。また、前記逆流案内凹曲面の長さが大きいことにより、この逆流案内凹曲面に沿って案内される間に逆流BFの運動量がより低減される。これにより、第2湾曲部52の先端部52e及びその近傍の吸込面52s1における剥離を抑制できる。
【0035】
さらに、湾曲部50が半円弧状であるので、半径方向に近い斜め方向から羽根車20に流入する吸込み気流(主流MF及び逆流BF)は、半円弧状の前記吸込凸曲面に沿って流れやすくなる。これにより、第2湾曲部52の先端部52e及びその近傍において一旦剥離した気流が前記吸込凸曲面に再付着しやすくなる。
【0036】
以上のような軸流送風機10では、ファンモータ11により羽根車20が回転すると、空気吸込口43からケーシング41内に外部の空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、熱交換器42において冷媒と熱交換した後、図1において二点鎖線の矢印の方向に進み、空気吹出口44を通じてケーシング41の外部に吹き出される。一方、前述したように、軸流送風機10では、空気が逆流する現象が発生する。以下、主流MFと逆流BFについてより詳細に説明する。
【0037】
図4(A)は、本実施形態に係る軸流送風機10における空気の流れを示す模式図であり、図4(B)は、半円弧状の湾曲部が設けられていない参考例の軸流送風機における空気の流れを示す模式図である。
【0038】
図4(B)に示す参考例の軸流送風機は、リング部22の構成が本実施形態に係る軸流送風機10と異なっている以外は、本実施形態に係る軸流送風機10と同様の構成を備えている。参考例の軸流送風機では、リング部22における第1方向D1の領域(吸込側の領域)は、フレア形状を有しており、第1方向D1に向かいながら半径方向外側に延びている。ただし、この参考例の軸流送風機のリング部22には、本実施形態のように第2湾曲部52は設けられていない。
【0039】
図4(A)に示す軸流送風機10及び図4(B)に示す参考例の軸流送風機では、リング部22とベルマウス30の仕切部30aとの隙間(チップクリアランス)において空気が逆流する現象が発生する。この逆流BFは、リング部22の内側を通過する主流MFの向きとは反対方向に流れる。
【0040】
図4(B)に示す参考例の軸流送風機では、上記のような逆流BFが生じると、主流MFが逆流BFを巻き込みながら羽根車20を通過するため、リング部22の内周面において大きな剥離S2が生じる。また、この軸流送風機は、半開放型であるので、主流MFが逆流BFを巻き込みやすく、リング部22における第1方向D1の先端部及びその近傍において剥離S2が生じやすい。しかも、リング部22を有する羽根車20では回転軸A寄りの流れが支配的となるため、リング部22の内周面において一旦剥離した気流は、リング部22の内周面に再付着しにくい。
【0041】
一方、図4(A)に示す本実施形態に係る軸流送風機10では、リング部22は、第1湾曲部51に加え、さらに第2湾曲部52を有している。この軸流送風機10では、逆流BFは、リング部22の接続部53とベルマウス30の仕切部30aとの間を通過するときには主流(MF)に対してほぼ逆方向、すなわち第1方向D1のベクトルを含む方向に向いているが、第1湾曲部51に沿って流れる間に半径方向の外側D3に向きが矯正される。その後、さらに、逆流BFは、第2湾曲部52に沿って流れる間に、第1方向D1の逆方向である第2方向D2のベクトルを含む方向に向きが矯正される。向きが矯正された逆流BFは、第2湾曲部52の先端部52eにおいて、主流MFの流れに引き込まれるようにして再び向きを第1方向D1のベクトルを含む方向に向きを変え、主流MFに巻き込まれてリング部22の内側を流れる。
【0042】
このように逆流BFの向きが湾曲部50において大きく矯正される過程、及び逆流BFが第2湾曲部52の先端部52eにおいて裏面側の領域(正圧領域)に回り込む過程において、逆流BFの運動量は、参考例よりも低減されることになる。その結果、リング部22における第2湾曲部52の先端部(52e)及びその近傍での剥離が抑制される。よって、ファン性能を向上させることができる。
【0043】
図5〜図7は、本実施形態に係る図4(A)に示す軸流送風機10の特性と、図4(B)に示す参考例の軸流送風機の特性とを比較した結果を示すグラフである。図5のグラフでは、横軸が流量係数を示し、縦軸が静圧係数を示している。図6のグラフでは、横軸が流量係数を示し、縦軸が比騒音を示している。図7のグラフでは、横軸が流量係数を示し、縦軸が全圧効率を示している。
【0044】
図5からわかるように、本実施形態の軸流送風機10では、参考例の軸流送風機に比べて、全体的に静圧係数が高いことがわかる。また、図6からわかるように、本実施形態の軸流送風機10では、参考例の軸流送風機に比べて、全体的に比騒音が低減されていることがわかる。さらに、図7からわかるように、本実施形態の軸流送風機10では、参考例の軸流送風機に比べて、全体的に全圧効率が高いことがわかる。
【0045】
なお、上記グラフのデータに関する用語の定義は次の通りである。
【0046】
流量係数Φ=(Q/60)/(A・Ut)
静圧係数ψ=Ps/{(γ/2g)・Ut
全圧係数ηt={Q(Ps+Pt)}/6120・L
比騒音KSA[dB]=SPL−10log10{(Q・Ps)/60}2.5
軸動力L[kW]=(T・N)/974
Q:風量(m/min)
A:環状流路面積(m)
Ut:羽根先端周速度(m/s)
γ:空気の比重量(kgf/m)
Ps:静圧(mmAq)
Pt:全圧(mmAq)
SPL:騒音レベル(dB)
T:トルク(kgf・m)
N:ファン回転数(rpm)
g:重力加速度
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、湾曲部50は、第1湾曲部51と、第2湾曲部52とを有している。したがって、リング部22と仕切部30aとの間を通過する逆流BFの向きは、湾曲部50に沿って流れる間に所望の方向に矯正されるので、リング部22における吸込側領域での剥離が抑制される。
【0048】
また、本実施形態では、第2湾曲部52の先端部52eにおける接線Dtは、半径方向Drよりも回転軸Aの方向Daに傾いている。したがって、逆流BFは、第2湾曲部52に沿って流れる間に第2方向D2のベクトルの割合がより多くなるように矯正される。このように逆流BFの向きが湾曲部50においてより大きく矯正されることにより、逆流BFの運動量の低減効果をより高めることができる。その結果、リング部22における第2湾曲部52の先端部52e及びその近傍での剥離がさらに抑制される。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、湾曲部50の断面形状が半円弧状である場合を例示したが、これに限定されない。湾曲部50は、例えば図8〜図10に示すような変形例1〜3のような形態であってもよい。
【0051】
図8に示す変形例1の湾曲部50では、断面形状が半円弧状ではなく、第2湾曲部52の延出長さ(第2方向D2に延出する長さ)が図3に示す第2湾曲部52よりも小さい。そして、第2湾曲部52の先端部52eにおける接線Dtは、半径方向Drよりも回転軸Aの方向Da寄りになるような方向に向いている。すなわち、接線Dtと回転軸Aの方向Daとのなす角度θ1は、接線Dtと半径方向Drとのなす角度θ2よりも大きい。このような変形例1の場合であっても、第2湾曲部52による剥離抑制効果が得られるので、参考例に比べてリング部22における剥離を抑制できる。
【0052】
図9に示す変形例2の湾曲部50では、断面形状が半円弧状ではなく、第2湾曲部52の延出長さ(第2方向D2に延出する長さ)が図3に示す第2湾曲部52よりもさらに大きい。そして、第2湾曲部52の先端部52eにおける接線Dtは、回転軸Aの方向Daよりも半径方向Drの内側に傾いている。すなわち、接線Dtと半径方向Drとのなす角度θ2は、鈍角である。このような変形例2の場合、第2湾曲部52による剥離抑制効果が得られるので、参考例に比べてリング部22における剥離を抑制できる。
【0053】
図10に示す変形例3の湾曲部50では、第1湾曲部51と第2湾曲部52との間に半径方向に延びる平坦部54が設けられている。この変形例3では、平坦部54が設けられているので、仕切部30aの端部30cと第2湾曲部52の先端部52eとの距離を、図3に示す形態に比べてさらに大きくすることができる。これにより、先端部52e近傍における負圧領域Nと正圧領域Pとの圧力差(圧力勾配)を小さくすることができる。
【0054】
また、変形例3の湾曲部50では、平坦部54が設けられているので、湾曲部50の前記逆流案内凹曲面の長さ(逆流BFが案内される長さ)を、図3に示す形態に比べてさらに大きくすることができる。これにより、逆流案内凹曲面に沿って案内される間に逆流BFの運動量がより低減される。
【0055】
前記実施形態では、軸流送風機10が半開放型である場合を例示したが、これに限定されない。
【0056】
前記実施形態では、本発明の軸流送風機を空気調和機に適用した例について説明したが、本発明は、冷蔵機、冷凍機、ヒートポンプ給湯器などのような空気調和機以外の冷凍装置や、換気装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 軸流送風機
20 羽根車
21 羽根
22 リング部
23 ハブ
30 ベルマウス
30a 仕切部
50 湾曲部
50c 頂部
51 第1湾曲部
51s1 吸込面(内周面)
51s2 逆流案内面
52 第2湾曲部
52s1 吸込面(外周面)
51s2 逆流案内面
52e
52s 第2湾曲部の内周面
53 接続部
54 平坦部
D1 第1方向
D2 第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(A)の周りに設けられた複数の羽根(21)と、前記複数の羽根(21)の外周縁部に沿って前記複数の羽根(21)と一体的に設けられたリング部(22)とを有し、前記リング部(22)の内側を空気の主流が通過する羽根車(20)と、
前記リング部(22)の外周を囲むように前記リング部(22)と所定の隙間をあけて配置され、空気の流路を区画する仕切部(30a)と、を備え、
前記リング部(22)における吸込側領域には、湾曲部(50)が設けられており、
前記湾曲部(50)は、
前記主流(MF)の上流側に向く第1方向(D1)に向かいながら半径方向の外側(D3)に延びる第1湾曲部(51)と、
前記第1湾曲部(51)よりも半径方向の外側(D3)に位置し、前記第1方向の逆方向である第2方向(D2)に向かいながら半径方向の外側(D3)に延びる第2湾曲部(52)と、を有している軸流送風機。
【請求項2】
前記第2湾曲部(52)の先端部(52e)における接線(Dt)は、半径方向よりも回転軸(A)の方向寄りになるような方向に向いている、請求項1に記載の軸流送風機。
【請求項3】
前記湾曲部(50)の断面形状は半円弧状である、請求項1又は2に記載の軸流送風機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸流送風機を室外ユニットの送風装置として用いたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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