説明

軸状部材の加工方法

【課題】軸方向位置によって異なる楕円形状断面からなる軸状部材を安価に且つ容易に加工することができる加工方法を提供する。
【解決手段】楕円形状の長径以上の内径の内周歯51を有する歯具50と軸状部材60とを内周歯51の中心軸51a、51b、51c回りに相対回転させると共に、軸状部材60の中心軸60a、60b、60cと内周歯51の中心軸51a、51b、51cとのなす角度θを変更する揺動動作をしながら軸状部材60を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する軸状部材の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、楕円軸状部材を加工する装置として、例えば、特開平5−237703号公報(特許文献1)に開示された装置がある。当該装置は、工具を備えたY軸移動体をX軸移動体上に載置した構成とし、このX軸移動体及びY軸移動体の動作を主軸の回転(Z軸回りの回転)に同期することで、楕円軸状部材を加工することができる。
【0003】
また、楕円軸状部材の加工方法として、特開2002−321102号公報(特許文献2)に開示された方法がある。当該加工方法は、主軸と回転工具軸の軸線とが所定角度で交差するように主軸を固定し、主軸及び回転工具を回転させつつ、主軸をZ軸方向に移動させることで、楕円軸状部材を加工する方法である。
【特許文献1】特開平5−237703号公報
【特許文献2】特開2002−321102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の加工装置または加工方法によれば、何れも、軸直角断面形状が常に同一の楕円形状からなる軸状部材を加工する装置または方法である。従って、軸方向位置によって異なる楕円形状断面からなる軸状部材を、上記の加工装置または加工方法では加工することができない。
【0005】
そうすると、軸方向位置によって異なる楕円形状断面からなる軸状部材を加工するためには、マシニングセンタなどを用いて加工せざるを得ない。ここで、マシニングセンタによる加工では、加工工数が膨大となるため高コスト化を招来する。さらに、マシニングセンタなどによる加工では、加工ピッチによる段差が生じるため高精度に加工することができない。仮に、近年の自由曲面加工を行うことで、ある程度高精度に加工することができたとしても、加工時間が非常に長時間化し、さらに加工工数が増大し高価になる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、軸方向位置によって異なる楕円形状断面からなる軸状部材を安価に且つ容易に加工することができる加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する軸状部材の加工方法は、楕円形状の長径以上の内径の内周歯を有する歯具と軸状部材とを内周歯の中心軸回りに相対回転させると共に、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とのなす角度を変更する揺動動作をしながら軸状部材を加工することを特徴とする。
【0008】
ここで、歯具と軸状部材とを内周歯の中心軸回りに相対回転させているので、軸状部材のうち内周歯に接触する部分が加工される。従って、仮に、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とが常に同軸上に位置するとした場合には、軸状部材は内周歯の内周形状に倣った円柱状に加工されることになる。また、仮に、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とのなす角度が常に所定の角度(0度でない角度)に位置するとした場合には、軸状部材はなす角度に応じた楕円形状断面に加工される。
【0009】
しかし、本発明の加工方法では、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とのなす角度を変更する揺動動作をしながら加工する。従って、例えば、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とが同軸上に位置する場合や、両者のなす角度が第1の角度に位置する場合や、第2の角度に位置する場合などと、当該なす角度が常に変化している。例えば、当該なす角度が第1の角度から第2の角度までを揺動動作する。
【0010】
つまり、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸とが同軸上に位置する瞬間に加工される部位は、円形断面となる。また、当該なす角度が第1の角度に位置する瞬間に加工される部位は、第1の角度に応じた楕円形状断面となり、当該なす角度が第2の角度に位置する瞬間に加工される部位は、第2の角度に応じた楕円形状断面となる。
【0011】
従って、本発明の加工方法によれば、軸状部材の軸方向位置の断面形状が、軸方向位置によって異なる楕円形状に加工することができる。そして、本発明の加工方法は、歯具と軸状部材との相対回転を行うと共に揺動動作を行う加工方法であるため、旋削加工に類似した加工方法となる。つまり、マシニングセンタによる加工に比べて、非常に安価に且つ容易に加工することができる。さらに、マシニングセンタによる加工では加工ピッチによる段差が生じるため高精度に加工することが容易ではなかったが、本発明の加工方法によれば、マシニングセンタによる加工ピッチに相当するものは存在しない。つまり、加工ピッチによる段差が生じることもない。従って、非常に容易に高精度化を図ることができる。
【0012】
また、本発明の加工方法における揺動動作を次のように行ってもよい。例えば、揺動動作の揺動中心点と、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸との交差点とが、常に一致した状態で揺動動作を行うようにしてもよい。この場合、当該揺動動作の揺動中心点を含む軸直角断面は円形となり、その揺動中心点から離れるにつれて小径が小さな楕円形状断面となる。
【0013】
その他、揺動動作の揺動中心点と、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸との交差点が一致しない状態で揺動動作を行うようにしてもよい。すなわち、揺動動作の揺動中心点と、軸状部材の中心軸と内周歯の中心軸との交差点との離間距離を変更させながら揺動動作を行うようにしてもよい。これにより、軸方向位置によって非常に複雑な楕円形状断面の軸状部材を形成することができる。
【0014】
この場合、特に、なす角度が大きいほど離間距離が長くなるように揺動動作を行うようにしてもよい。こうすることで、例えば、軸状部材の一方端側のみに、軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する軸状部材を形成できる。例えば、軸状部材が別の形状から延びるように形成された部材の場合、軸状部材の根元側は楕円形状に形成せず、軸状部材の先端側のみに複雑な楕円形状に形成することができる。
【0015】
ここで、本発明の加工方法を適用する軸状部材としては、例えば、トリポード型等速ジョイントのトリポード軸部としてもよい。特にトリポード型等速ジョイントを含む自動車等の部品に対しては、低コスト化の要請が高い。そこで、トリポード軸部が軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する場合に、本発明の加工方法を適用することで、当該トリポード軸部を有するトリポード型等速ジョイントを安価に且つ高精度に形成することができ、さらには量産化することが可能となる。
【0016】
特に、適用対象としてのトリポード軸部は、そのトルク伝達領域における中間シャフト軸方向幅が、根元側から先端側に行くに従って小さく形成されているとよい。トリポード軸部をこのような形状とすることで、誘起スラスト力を低減することができる。以下のこの理由を説明する。ここで、ローラの内径は、少なくとも、トリポード軸部の根元部における中間シャフト軸方向幅以上である。そうすると、トリポード軸部の先端部においては、トルク伝達方向から見た場合に、トリポード軸部とローラとの間に隙間が形成される。従って、ローラは、トルク伝達方向から見た場合に、トリポード軸部の先端側では揺動することができる。さらに、ローラがトリポード軸部の根元側から先端側に行くに従って、トルク伝達方向から見た場合に、トリポード軸部に対するローラの揺動角度を大きくできる。これにより、誘起スラスト力を低減するように、トリポード軸部に対するローラの揺動角度を変えることができる。従って、トリポード軸部を上記形状とすることにより、誘起スラスト力を低減することができる。
【0017】
さらに、トリポード軸部を上記形状とすることにより、トリポード軸部の根元部の中間シャフト軸方向幅を大きくできる。例えば、トリポード軸部の根元部においては、ローラとトリポード軸部との間に隙間が生じないようにすることもできる。従って、トリポード軸部の根元部の断面係数を大きくすることができる。その結果、トリポード軸部の強度を高めることができるので、トリポード型等速ジョイントの外形を小型化することができる。
【0018】
つまり、このように非常に大きな効果を発揮することができるトリポード軸部に、本発明の加工方法を適用することで、トリポードを安価に且つ高精度に形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の軸状部材の加工方法によれば、軸方向位置によって異なる楕円形状断面からなる軸状部材を安価に且つ容易に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
(1)本発明の加工方法を適用するトリポード軸部についての説明
まず、当該トリポード軸部を備えるトリポード型等速ジョイントの構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、トリポード型等速ジョイントは、例えば、車両の動力伝達シャフトの連結に用いるものである。具体的には、ディファレンシャルギヤに連結された軸部と中間シャフトとの連結部位などに用いる。そして、図1は、トリポード型等速ジョイントの中間シャフト軸方向断面図(以下、「トルク伝達方向視図」という)を示す。図2は、トリポード20を、トリポード軸部22の先端側から見た図である。すなわち、図2は、トリポード20を図1の上側から見た図である。
【0022】
このトリポード型等速ジョイントは、一方側のシャフト(図示せず)に連結されるアウタレース10と、他方側のシャフト(図示せず)(中間シャフト)に連結されるトリポード20と、アウタレース10とトリポード20との間に介在するローラ30とから構成される。
【0023】
アウタレース10は、カップ状(有底筒状)に形成されており、カップ底外側が一方側のシャフトに連結されている。そして、アウタレース10のカップ状部分の内周面には、アウタレース回転軸方向(図1の左右方向)に延びる案内溝11が周方向に等間隔に3本形成されている。なお、図1においては、1本の案内溝11のみを示す。
【0024】
トリポード20は、アウタレース10のカップ状部分の内側に配置されている。このトリポード20は、ボス部21と、3本のトリポード軸部22とを備える。ボス部21は、円筒状からなり、内周側には内周スプライン(図示せず)が形成されている。この内周スプラインは、中間シャフトの端部の外周スプラインに連結される。
【0025】
それぞれのトリポード軸部22は、ボス部21の外周側に、中間シャフト軸(トリポード20の軸心に一致した軸)の径方向外側に向かって延在するように、且つ、ボス部21の周方向に等間隔に形成されている。トリポード軸部22は、軸方向位置によって異なる楕円断面形状(円形断面形状を含む)の柱状からなる。
【0026】
詳細には、図2に示すように、トルク伝達領域において、トリポード軸部22のトルク伝達方向幅axは、トリポード軸部22の根元側から先端側に行くに従って、僅かに小さく形成されている。すなわち、トリポード軸部22の先端部のトルク伝達方向幅a2は、トリポード軸部22の根元部のトルク伝達方向幅a1より小さく形成されている。
【0027】
また、図1及び図2に示すように、トルク伝達領域において、トリポード軸部22の中間シャフト軸方向幅bxは、トリポード軸部22の根元側から先端側に行くに従って、小さく形成されている。すなわち、トリポード軸部22の先端部の中間シャフト軸方向幅b2は、トリポード軸部22の根元部の中間シャフト軸方向幅b1より小さく形成されている。そして、トリポード軸部22の先端部の中間シャフト軸方向幅b2は、当該先端部のトルク伝達方向幅a2よりも小さく形成されている。
【0028】
ここで、トルク伝達領域とは、図1に示す領域であって、トリポード軸部22の外周面のうちトルク伝達に寄与する部位が含まれるトリポード軸部22の軸方向領域である。トルク伝達に寄与する部位とは、トリポード軸部22とローラ30との間でトルク伝達が行われる際に、トリポード軸部22のうちローラ30のインナローラ31に接触し得る部位である。このトルク伝達に寄与する部位は、図1において、トリポード軸部22の手前端側及び奥端側である。
【0029】
ローラ30は、全体形状としてはリング状からなる。具体的には、ローラ30の内周面は円筒状であり、ローラ30の外周面は、軸方向中央付近が外周側に凸状に形成され、案内溝11に倣った形状からなる。そして、ローラ30は、トリポード軸部22の外周側に、トリポード軸回りに回転可能に、且つ、トリポード軸方向に摺動可能に、軸支されている。さらに、ローラ30は、案内溝11に転動可能に配置されている。
【0030】
ここで、上述したように、トリポード軸部22の中間シャフト軸方向幅bxは、根元側から先端側に行くに従って小さく形成されている。従って、ローラ30がトリポード軸部22の根元部に位置する場合には、トルク伝達方向視(図1)において、ローラ30はトリポード軸部22に対してほとんど揺動できない。これに対して、ローラ30がトリポード軸部22の先端部に位置する場合には、トルク伝達方向視(図1)において、ローラ30はトリポード軸部22に対して大きく揺動できる。そして、この揺動角度は、トリポード軸部22に対するローラ30の位置が根元側から先端側に行くに従って、大きくなる。
【0031】
一方、トリポード軸部22のトルク伝達方向幅axは、根元側から先端側に行くに従って、僅かに小さく形成されている。この場合、ローラ30がトリポード軸部22の根元部に位置する場合には、中間シャフト軸方向視(図1の左側から見た状態)において、ローラ30はトリポード軸部22に対してほとんど揺動しない。これに対して、ローラ30がトリポード軸部22の先端部に位置する場合には、中間シャフト軸方向視において、ローラ30はトリポード軸部22に対して僅かに揺動できる。そして、この揺動角度は、トリポード軸部22に対するローラ30の位置が根元側から先端側に行くに従って、大きくなる。さらに、トリポード軸部22の先端部の中間シャフト軸方向幅b2は、当該先端部のトルク伝達方向幅a2よりも小さく形成されている。従って、ローラ30がトリポード軸部22の先端部に位置する場合には、中間シャフト軸方向視におけるローラ30の揺動可能角度は、トルク伝達方向視(図1)におけるローラ30の揺動可能角度より小さくなる。
【0032】
トリポード型等速ジョイントを以上のように構成することで、誘起スラスト力を低減することができる。さらに、トリポード軸部22の根元部の中間シャフト軸方向幅を大きくできる。例えば、トリポード軸部22の根元部においては、ローラ30とトリポード軸部22との間に隙間が生じないようにすることもできる。従って、トリポード軸部22の根元部の断面係数を大きくすることができる。その結果、トリポード軸部22の強度を高めることができるので、トリポード型等速ジョイントの外形を小型化することができる。
【0033】
(2)軸状部材の加工方法についての説明
次に、上述したトリポード軸部22を本発明の加工方法の加工対象である軸状部材とした場合における加工方法について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、当該加工に用いる歯具50を示す図である。図4は、当該加工方法を説明する図である。
【0034】
図3に示すように、歯具50は、円筒状からならなる。この歯具50の内周面には、トリポード軸部22の楕円形状の長径、すなわち、トリポード軸部22の根元部のトルク伝達方向幅a1以上の内径の内周歯51を有する。ただし、本実施形態においては、内周歯51の内径は、トリポード軸部22の根元部のトルク伝達方向幅a1と同じか、若しくは僅かに大きい。
【0035】
ここで、加工前のトリポード軸部22、すなわち円柱軸状部材60を歯具50により加工する際には、歯具50を内周歯51の中心軸回りに回転させ、歯具50を内周歯51の中心軸に直交する所定方向に平行移動させながら、円柱軸状部材60の中心軸と内周歯51の中心軸とのなす角度θを変更する揺動動作をしながら行う。すなわち、上述したトリポード型等速ジョイントを構成するローラ30を当該加工方法の歯具50に置換するようにそれぞれを動作させる。さらに換言すると、トリポード軸部22とローラ30とが実際に動作するように、円柱軸状部材60と歯具50とを動作させながら加工する。なお、ここでのなす角度θとは、円柱軸状部材60の中心軸と内周歯51の中心軸とのなす角度のうち90度より小さい角度である。
【0036】
より詳細に、当該加工方法について、図4(a)〜図4(c)を参照して説明する。図4(a)に示すように、まず、円柱軸状部材60を歯具50の内周歯51に貫通させる。このとき、円柱軸状部材60の中心軸60aと内周歯51の中心軸51aとが同軸上に位置するようにする。すなわち、円柱軸状部材60の中心軸60aと内周歯51の中心軸51aとのなす角度θが0度である。さらに、トリポード軸部22の根元部に相当する部分が歯具50の図4(a)の左端に位置するようになるまで、円柱軸状部材60を歯具50に挿入する。そして、歯具50を内周歯51の中心軸51a回りへの回転を開始する。
【0037】
続いて、歯具50を回転させた状態を維持しつつ、揺動中心点70を中心に円柱軸状部材60を揺動すると同時に、歯具50を図4(a)の上下方向に平行移動させる。具体的には、図4(b)に示すように、揺動中心点70を中心に円柱軸状部材60を図4(a)の右回りに揺動させた場合には、歯具50を図4(a)の下側へ平行移動させる。そして、図4(b)に示すように、円柱軸状部材60の中心軸60bと内周歯51の中心軸51bとのなす角度θが所定の第1角度θ1となる状態まで揺動する。このとき、図4(b)の状態における揺動中心点70と、円柱軸状部材60の中心軸60bと内周歯51の中心軸51bとの交差点80bとの離間距離Lbは、図4(a)の状態における揺動中心点70と、中心軸60aと中心軸51aとの交差点に相当する点80aとの離間距離Laよりも長くなるようにしている。
【0038】
また、図4(c)に示すように、揺動中心点70を中心に円柱軸状部材60を図4(a)の左回りに揺動させた場合には、歯具50を図4(a)の上側へ平行移動させる。そして、図4(c)に示すように、円柱軸状部材60の中心軸60cと内周歯51の中心軸51cとのなす角度θが所定の第2角度θ2となる状態を示している。なお、図4(b)(c)において、第1角度θ1は正の角度であり、第2角度θ2は負の角度である。そして、このとき、図4(c)の状態における揺動中心点70と、円柱軸状部材60の中心軸60cと内周歯51の中心軸51cとの交差点80cとの離間距離Lcは、図4(a)の状態における揺動中心点70と、中心軸60aと中心軸51aとの交差点に相当する点80aとの離間距離Laよりも長くなるようにしている。
【0039】
ここで、揺動中心点70は、図4(a)に示すように円柱軸状部材60の中心軸60aと内周歯51の中心軸51aとが同軸上に位置する場合における内周歯51の中心軸51aと、円柱軸状部材60を揺動させる場合の円柱軸状部材60の中心軸60a、60b、60cとが交差する点である。すなわち、揺動中心点70は、常に内周歯51の中心軸51a上に位置する。
【0040】
以上説明したように、円柱軸状部材60及び歯具50を動作させながら加工することにより、上述したトリポード軸部22を形成することができる。すなわち、先端側が楕円形状断面となるトリポード軸部22を形成することができる。さらに、非常に容易に、高精度に、且つ、安価に加工することができる。
【0041】
なお、上記実施形態においては、トリポード軸部22を加工する方法として説明したが、加工対象の軸状部材はトリポード軸部22に限られるものではなく、軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する軸状部材であれば適用できる。また、上記実施形態においては、円柱軸状部材60を揺動動作し、且つ、歯具50を回転するようにしたが、両者が相対的に揺動動作及び回転するようにすればよい。また、歯具50を図4の上下方向に平行移動するようにしたが、これは揺動中心点70と交差点80a〜80cとの離間距離を変化させるためのものである。そして、これを達成するために、歯具50を平行移動させるのではなく、円柱軸状部材60を平行移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】トリポード型等速ジョイントの中間シャフト軸方向断面図を示す。
【図2】トリポード20を、トリポード軸部22の先端側から見た図である。
【図3】円柱軸状部材60の加工に用いる歯具50を示す図である。
【図4】円柱軸状部材60の加工方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
10:アウタレース、 11:案内溝、
20:トリポード、 21:ボス部、 22:トリポード軸部、 30:ローラ、
50:歯具、 51:内周歯、 51a、51b、51c:内周歯51の中心軸、
60:円柱軸状部材、 60a、60b、60c:円柱軸状部材60の中心軸、
70:揺動中心点、
80a、80b、80c:円柱軸状部材60の中心軸と内周歯51の中心軸との交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向位置によって異なる楕円形状断面を有する軸状部材の加工方法であって、
前記楕円形状の長径以上の内径の内周歯を有する歯具と前記軸状部材とを前記内周歯の中心軸回りに相対回転させると共に、前記軸状部材の中心軸と前記内周歯の中心軸とのなす角度を変更する揺動動作をしながら前記軸状部材を加工することを特徴とする軸状部材の加工方法。
【請求項2】
前記揺動動作の揺動中心点と、前記軸状部材の中心軸と前記内周歯の中心軸との交差点との離間距離を変更させながら前記揺動動作を行う請求項1に記載の軸状部材の加工方法。
【請求項3】
前記なす角度が大きいほど前記離間距離が長くなるように前記揺動動作を行う請求項2に記載の軸状部材の加工方法。
【請求項4】
前記軸状部材は、トリポード型等速ジョイントのトリポード軸部である請求項1〜3の何れか一項に記載の軸状部材の加工方法。
【請求項5】
前記トリポード軸部は、そのトルク伝達領域における中間シャフト軸方向幅が、根元側から先端側に行くに従って小さく形成されている請求項4に記載の軸状部材の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−100290(P2008−100290A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282541(P2006−282541)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)