説明

軸筒および軸筒の成形方法

【課題】把持位置の異なるあらゆるユーザに対し、軸筒の良好な使用感を与える。
【解決手段】軸筒の成形方法は、一次成形によって軸筒本体10を形成する第1の工程と、二次成形によって軸筒本体10の外周面に、軸方向に延在するグリップ20を装着する第2の工程とを含む。第2の工程では、軸筒本体10の先端部を保持するように金型部材41を配置して、金型部材41で、軸筒本体10の軸方向先端部を覆うようなキャビティー44の一部を形成し、キャビティー44に成形材料を供給してグリップ20を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形によって形成される軸筒および軸筒の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の軸筒の成形方法として、軸方向一対の固定側と可動側の金型(一次金型)を用いて一次成形品を形成した後、軸方向一対の固定側と可動側の金型(二次金型)を用いて一次成形品の外周面に二次成形品を形成するようにした方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の方法では、一次金型を用いて先端部が円錐状の一次成形品を形成した後、一次成形品の円錐状の先端面を二次金型の保持ブロックによって保持し、保持ブロックでキャビティーの一部を構成して二次成形品を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4487391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の軸筒を筆記具に適用する場合、筆記具の使用感を高めるため、二次成形品である筆記具のグリップには、一般に、熱可塑性エラストマーなどの軟質の樹脂材が用いられる。しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、軸筒の先端部が一次成形品によって構成されるため、ユーザによってはグリップの位置が高すぎると感じ、十分に満足した使用感を得ることができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一次成形によって形成された軸筒本体と、二次成形によって軸筒本体の外周面に装着されるグリップとを備えた軸筒であって、グリップは、軸方向に延在し、その先端部は軸筒本体の軸方向先端部を覆っていることを特徴とする。
また、本発明は、一次成形によって軸筒本体を形成する第1の工程と、二次成形によって軸筒本体の外周面に、軸方向に延在するグリップを装着する第2の工程とを含む軸筒の成形方法であって、第2の工程では、軸筒本体の先端部を保持するように金型部材を配置して、金型部材で、軸筒本体の軸方向先端部を覆うようなキャビティーの一部を形成し、キャビティーに成形材料を供給してグリップを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、二次成形により、軸筒本体の軸方向先端部を覆って延在するようにグリップを設けたので、軸筒の把持位置全体がグリップで覆われ、ユーザは軸筒の良好な使用感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る軸筒が適用される筆記具の軸線に沿った断面図。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態に係るグリップが装着された前軸の外観形状を示す側面図、(b)は、その断面図。
【図3】(a),(b)はそれぞれ図2(a),(b)の変形例を示す図。
【図4】図2(b),図3(b)の要部拡大図。
【図5】本発明の実施の形態に係る軸筒の成形方法のうち、一次成形に用いられる一次金型の構成を示す図。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態に係る軸筒の成形方法のうち、二次成形に用いられる二次金型の構成を示す図、(b)は、図6(a)の要部拡大図。
【図7】(a),(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る軸筒の成形方法のうち、一次成形の方法を説明する図。
【図8】(a),(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る軸筒の成形方法のうち、二次成形の方法を説明する図。
【図9】(a),(b),(c)はそれぞれ図4の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜図9を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る軸筒が適用される筆記具100の軸線L0に沿った断面図であり、一例としてノック式ボールペンを示している。なお、説明の便宜上、以下では、図示のように軸線L0に沿って前後方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
図1の筆記具100は、前後方向に延在する軸筒1と、軸筒1の内部に配置されたリフィル2と、軸筒1の後端部に設けられたノック部3とを有する。リフィル2は、筆記具用インキを収容したインキ収容管の前端部にボールペンチップを装着して構成され、ばね4によって後方に付勢されている。ノック部3は、不図示のクリップを一体に有し、ばね4の付勢力に抗してノック部3を押圧操作することで、リフィル2が軸筒1の内部を前後方向に移動し、リフィル2の先端を軸筒1の前端部から進退させることができる。
【0010】
軸筒1は、軸筒本体を構成する筒状の前軸10および後軸11と、前軸10の外周面に装着されるグリップ20とを有する。前軸10の後端部外周面および後軸11の前端部内周面には、それぞれねじ部10a,11aが設けられ、ねじ部10a,11aを介して前軸10の後端部に後軸11が螺合されている。このため、後軸11は前軸10に着脱可能であり、前軸10から後軸11を取り外すことで、軸筒内部のリフィル2を容易に交換することができる。
【0011】
図2(a)は、グリップ20が装着された前軸10の外観形状を示す側面図であり、図2(b)は、その縦断面図である。グリップ20は、二色成形によって前軸10の外周面に装着されている。すなわち、一次成形品である前軸10の外周面を被覆するように、二次成形品であるグリップ20が前軸10に一体に融着されている。以下では、前軸10およびグリップ20を、それぞれ一次成形品10および二次成形品20と呼ぶこともある。
【0012】
前軸10は、例えばポリプロピレンやポリカーボネート等の半硬質又は硬質の樹脂材によって構成されている。なお、後軸11も、前軸10と同一の樹脂材によって構成されている。後軸11を前軸10とは別の材料によって構成することもできる。グリップ20は、例えば熱可塑性エラストマー等のゴム弾性を有する材料や軟質の樹脂材によって構成されている。このため、グリップ20の弾性係数は、前軸10および後軸11の弾性係数よりも小さい。
【0013】
前軸10は、先端部12にかけて外径が徐々に小さくなっており、全体が先細形状となっている。グリップ20も前軸10と同様、全体が先細形状となっている。グリップ20は、前軸10の外周面全体を覆うように形成されている。すなわち、グリップ20の前端部は、後述するように前軸10の前端部よりも前方に突出している。また、グリップ20の後端部には、後軸11を前軸10にねじ込んだ際に後軸11の前端面が当接する当接面20aが形成されている。
【0014】
このため、図1に示すように後軸11を前軸10に螺合した状態において、前軸10は外部に露出しない。したがって、筆記具としての使用時に、ユーザの指が当たる位置(把持位置)全体をグリップ20で覆うことができ、把持位置の異なるあらゆるユーザに対し、軸筒1の良好な使用感を付与することができる。すなわち、軸筒先端の縮径部1aを把持するユーザも、縮径部1aの後方の大径部1bを把持するユーザも、グリップ20を保持することとなり、使用時に良好な感触を得られる。
【0015】
なお、図3(a),(b)に示すように、前軸10の外周面にリング状の突起部13を突設し、二色成形時に、この突起部13の前端面とグリップ20の後端面を接触させるとともに、後軸11をねじ込んだ際に、突起部の13後端面に後軸11の前端面を当接させるようにしてもよい。この場合も、把持位置全体をグリップ20で覆うことができ、把持位置の異なるあらゆるユーザに対し、軸筒1の良好な使用感を付与することができる。
【0016】
図4は、図2(b),図3(b)の要部拡大図であり、前軸10およびグリップ20の先端部の形状を示す。前軸10の内周面には、前後方向に離間して複数の段部14が形成され、段部14を境にして、前軸10の内径は後方にかけて徐々に拡大している。前軸10の先端部12の内周面は、軸線L0(図1)に平行に延在し、円筒面15が形成されている。前軸10の内径は、円筒面15で最小d1となっている。前軸10の前端面16は、軸線L0に対して垂直に形成されている。
【0017】
グリップ20の前端部には、周方向全周にわたり径方向内側に突出した突出部21が設けられている。突出部21の前端面22は軸線L0に対して垂直に形成され、後端面23は前軸10の前端面16に接触している。突出部21の内周面は、軸線L0に平行に延在し、直径d2の円筒面25が形成されている。円筒面25の直径d2は円筒面15の直径d1よりも大きく、前軸10の前端面16の一部のみがグリップ20の突出部21により覆われている。
【0018】
以上のように構成された前軸10およびグリップ20を成形するための金型の構成を説明する。図5は、一次成形に用いられる一次金型30の構成を示す図であり、図6(a)は、二次成形に用いられる二次金型40の構成を示す図である。なお、図5、図6(a)では、とくに前軸10およびグリップ20の前側部分の金型を示している。
【0019】
一次成形は、軸線L1を中心とした第1の成形領域で行われ、二次成形は、軸線L2を中心とした第2の成形領域で行われる。一次成形では、一次成形品として前軸10が形成され、二次成形では、二次成形品としてグリップ20が形成される。軸線L1と軸線L2とは互いに平行かつ離間しており、第1の成形領域の側方に第2成形領域が存在する。
【0020】
図5に示すように、一次金型30は、軸線L1に沿って配置された固定コアピン31および可動コアピン32と、固定コアピン31と可動コアピン32の周囲に配置されたブロック33とを有する。固定コアピン31と可動コアピン32とブロック33とで囲まれた空間に、前軸10の形状に対応したキャビティー34が形成されている。
【0021】
固定コアピン31は、円柱状の大径部31aと小径部31bとを有する固定金型であり、全体が軸方向に段付形状を呈する。小径部31bの直径はd1(図4)である。可動コアピン32は、固定コアピン31に接近および離間する可動金型であり、前軸10の内周面形状に対応した外周面形状を呈する。可動コアピン32の先端部には、固定金型31の小径部31bの一部が嵌合する凹部32aが形成され、凹部32aの底面に、凹部32aよりも小径の凹部32bが形成されている。
【0022】
図5では、小径部31bが凹部32aに嵌合しており、この状態で小径部31bの外周面が前軸10の円筒面15(図4)を形成し、大径部31aの端面31cが前軸10の前端面16(図4)を形成する。ブロック33は、例えば周方向に2分割された半割れ形状をなして径方向に移動可能であり、前軸10の外周面形状に対応した内周面形状を呈する。
【0023】
図6(a)に示すように、二次金型40は、軸線L2に沿って配置された固定コアピン41および可動コアピン42と、固定コアピン41と可動コアピン42の周囲に配置されたブロック43とを有する。可動コアピン42は、第1の成形領域の可動コアピン32に一次成形品10(前軸)が取り付けられたまま、可動コアピン32を第2の成形領域に移動したものである。すなわち、可動コアピン42は可動コアピン32と同一であり、可動コアピン32の先端部の凹部32aおよび凹部32bがそのまま可動コアピン42の先端部の凹部42aおよび凹部42bとなっている。可動コアピン42に取り付けられた一次成形品10と固定コアピン41とブロック43とで囲まれた空間に、グリップ20の形状に対応したキャビティー44が形成されている。
【0024】
固定コアピン41は、円柱状の大径部41aと小径部41bとを有する固定金型であり、全体が軸方向に段付形状を呈する。可動コアピン42は、一次成形品10と一体に固定コアピン41に接近および離間する可動金型である。固定コアピン41の小径部41bの直径は、可動コアピン42の凹部42bの直径と等しく、図では小径部41bの先端が凹部42bに嵌合している。ブロック43は、例えば周方向に2分割された半割れ形状をなし、前軸10の外周面形状に対応した内周面形状を呈する。
【0025】
図6(b)は、図6(a)の要部拡大図である。図6(b)に示すように固定コアピン41の小径部41bの直径d3は、一次成形品10の円筒面15の直径d1よりも小さく、小径部41bと円筒面15の間には、全周にわたり隙間45が空いている。大径部41aの直径d2は、一次成形品10の先端面(前軸の前端面16)の最外径d4よりも小さく、小径部41aの軸方向長さは、一次成形品10の先端面16から凹部42bの底面までの長さよりも短い。
【0026】
このため、小径部41bが凹部42bに嵌合した状態では、大径部41aの端面42cが一次成形品10の先端面16に当接し、先端面16の一部が固定コアピン41で覆われている。このとき、大径部41aの外周面が、グリップ20の円筒面22を形成する。
【0027】
次に、前軸10およびグリップ20の成形方法を説明する。
(1)一次成形
まず、図5に示すように、第1の成形領域において、一次金型30の固定コアピン31を可動コアピン32の凹部32aに嵌合し、固定コアピン31と可動コアピン32とブロック33との間にキャビティー34を形成する。次に、キャビティー34に一次成形用の樹脂を供給し、一次成形品10(前軸)を形成する。次いで、図7(a)に示すように、ブロック33を固定コアピン31の外周面から離間させた後、図7(b)に示すように、可動コアピン32を軸線L1に沿って矢印Aに示すように一次成形品10と一体に後退させる。
【0028】
(2)二次成形
その後、二次成形を行う場合、一次成形品10と一体の可動コアピン32を第1の成形領域から第2の成形領域に移動させる。移動後の可動コアピン32は二次金型40を構成し、可動コアピン42として表される。次いで、可動コアピン42を軸線L2に沿って固定コアピン41に向けて前進させ、図6(a)に示すように、固定コアピン41を可動コアピン42の凹部42bに嵌合し、固定コアピン41の端面41cに一次成形品10の前端面16を当接させる。このとき、固定コアピン41の外周面と一次成形品10の先端部12の内周面とは接触することなく、両者の間には周方向に隙間45が空いている。以上により、固定コアピン41と一次成形品10とブロック43との間にキャビティー44を形成する。
【0029】
次に、キャビティー44に二次成形用の樹脂を供給し、一次成形品10の外周面に二次成形品20(グリップ)を溶着し、二色成形を行う。このとき、キャビティー44内の樹脂は、固定コアピン41と一次成形品10との当接面41c,16でシールされる。次いで、図8(a)に示すように、ブロック34を固定コアピン31の外周面から離間させた後、図8(b)に示すように、可動コアピン42を軸線L2に沿って矢印Bに示すように成形品10,20と一体に後退させる。最後に、可動コアピン42から成形品10,20を取り外し、前軸10およびグリップ20の成形を終了する。
【0030】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)前軸10の先端部12から軸方向にかけて、前軸10の外周面に二色成形によってグリップ20を装着するようにした(図2、図3)。これにより、軸筒1の把持位置全体がグリップ20で覆われるため、筆記具としての使用時に、把持位置の異なるあらゆるユーザに対し、軸筒1の良好な使用感を与えることができる。
【0031】
(2)グリップ20の先端部(前端面22)を前軸10の先端部(前端面16)よりも前方に突出させるようにしたことで(図4)、誤って軸筒1を落下させた場合に、前軸先端部の損傷を防ぐことができる。
(3)前軸10の先端部12およびグリップ20の先端部(突出部21)にそれぞれ円筒面15,25を形成し、円筒面25の内径d2を円筒面15の内径d1よりも大きくした(図4)。これにより、軸筒1の使用時に、ユーザの手油等によってグリップ20が膨潤した場合でも、グリップ20の内径d2がd1よりも小さくならず、リフィル2を軸筒1の先端部から進退させる際のグリップ20とリフィル2との干渉を防ぐことができる。
【0032】
(4)二次成形時に、前軸10の前端面16と固定コアピン41の端面41cを当接させ、この当接面をシール面としてグリップ成形用のキャビティー44を形成するようにしたので(図6(b))、成形によって発生するばりが、径方向に延在することとなる(いわゆる横ばり)。このため、ばりの影響を受けることなく、グリップ先端部(突出部21)の内径をd2に設定することができ、リフィル2との干渉を確実に防ぐことができる。これに対し、例えば二次成形時に固定コアピン41の円筒面でシールする場合、成形によって軸方向にばりが延在し(いわゆる縦ばり)、ばりの分だけ成形品の内径が小さくなるおそれがあり、この場合にはリフィル2と干渉するおそれがある。
(5)固定コアピン41を小径部41bおよび大径部41aを有する段付き形状とし、大径部41aの端面41cを一次成形品10の前端面16に当接させて、大径部41aの外周面でキャビティー44の一部を形成するようにしたので、前軸10よりもグリップ20を軸方向に容易に突設させることができる。
【0033】
(6)二次成形時における、固定コアピン41の小径部41bの直径d3を一次成形品10の先端部12の円筒面15の直径d1よりも小さくした(図6(b))。これにより一次成形品10の円筒面15と接触させることなく、固定コアピン41を可動コアピン42の凹部42bに嵌合することができ、一次成形品10の損傷を防ぐことができる。
(7)固定コアピン41の小径部41bの先端を可動コアピン42の凹部42bに嵌合するようにしたので(図6(b)、固定コアピン41と可動コアピン42の軸芯を一致させることができ、精度よく軸筒1を形成することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、グリップ20の前端部に内径側に突出した突出部21を設け、前軸10の前端面16の一部をグリップ20で覆うようにしたが、軸筒1の先端部の形状はこれに限らない。軸筒1の先端部の形状の変形例として、図9(a)に示すように、グリップ20の前端面22と前軸10の前端面16とを一致させてもよい。または、図9(b)に示すように、グリップ20の円筒面25と前軸10の円筒面15とを一致させてもよい。
【0035】
あるいは、図9(c)に示すように、グリップ20が、図9(b)に示された円筒面25の代わりに、軸方向前方に向かうにつれ内径が大きくなる逆テーパ形状の面、例えば切頭円錐面25’を含む構成としてもよい。図9(c)の構成では、切頭円錐面25’の最も小さい内径である、前端面16と隣接する位置の内径d1’が、円筒面15の内径d1と同じであり(d1’=d1)、切頭円錐面25’の最も大きい内径を有するグリップ20の軸方向先端の位置の内径d2’が、内径d1よりも大きい(d2’>d1)構成となっている。なお、切頭円錐面25’の最も小さい内径d1’は、d1よりも大きくてもよい(d1’>d1)。この構成によれば、軸筒1の使用時に、ユーザの手油等によってグリップ20が膨潤した場合でも、グリップ20の前端面16と隣接する部分の内径d1’は、グリップ20が前軸10と融着しているので変形しない。一方で、前端面16と離れた場所では、前述のように内径が徐々に前方に向かうにつれて大きくなっているので、切頭円錐面25’の内径がd1よりも内径が小さくならない。したがって、図9(c)の変形例に係る軸筒1は、リフィル2を軸筒1の先端部から進退させる際のグリップ20とリフィル2との干渉を防ぐことができる構成となっている。
【0036】
上述したように図9(a)〜(c)を参照して軸筒1の先端部の形状の変形例を示したが、グリップ20の先端部が前軸10の先端部を覆ってグリップ20が軸方向に延在するのであれば、換言すると、使用時にユーザが軸筒1を把持するための把持位置全体にグリップ20が設けられるのであれば、軸筒1の形状はいかなるものでもよい。
【0037】
上記実施の形態では、一次成形によって前軸10を形成したが、前軸10と後軸11とに分割せずに、一体の軸筒本体として成形してもよく、軸筒本体の構成は上述したものに限らない。上記実施の形態では、固定コアピン41の先端部(小径部41b)を可動コアピン42の凹部42bに嵌合して、一次成形品10を保持するようにしたが、固定コアピン41の一部で前軸10の軸方向先端部を覆うようなキャビティー44を形成するのであれば、他の保持形態を採用してもよい。例えば、可動コアピン42の凹部41aに固定コアピン41の先端部を嵌合させてもよい。あるいは、固定コアピン41を可動コアピン42に嵌合させることなく、単に一次成形品10の前端面16を固定コアピン41の端面に押し当てて、一次成形品10を保持するようにしてもよい。
【0038】
上記実施の形態では、互いに同軸の小径部41b(第1の円筒面)および大径部41a(第2の円筒面)と、小径部41bと大径部41aを接続する端面41c(接続面)とを有する固定コアピン41を用いて、二次成形を行うようにした。具体的には、小径部41bを前軸10の円筒面15の内部に挿入するとともに、固定コアピン41の端面41cを前軸10の前端面16に当接させ、大径部41aでキャビティー44の一部を形成するようにしたが、固定コアピン41の形状は、例えば図9に示すようなグリップ20と前軸10の先端部の形状に応じて適宜変更されるものであり、二次成形用の金型部材の構成は上述したものに限らない。例えば、固定コアピン41でグリップ20の前端面22を形成するようにしてもよく、さらにグリップ20の外周面を形成するようにしてもよい。
【0039】
すなわち、一次成形によって前軸10を形成する第1の工程と、二次成形によって前軸10の外周面に、軸方向に延在するグリップ20を装着する第2の工程とを含み、第2の工程で、前軸10の先端部を保持するように金型部材41を配置して、金型部材41で、前軸10の軸方向先端部を覆うようなキャビティー44の一部を形成し、キャビティー44に成形材料を供給してグリップ20を形成するのであれば、軸筒1の成形方法は上述したものに限らない。ここで、前軸10の軸方向先端部を覆うとは、前軸10の外周面を少なくとも先端まで覆うことを意味する。
【0040】
以上では、ノック式ボールペンに軸筒を適用する場合について説明したが、本発明の軸筒は、シャープペン等、他の筆記具の軸筒にも同様に適用することができ、あるいは化粧品等、筆記具以外の軸筒にも同様に適用することができる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の軸筒に限定されない。
【0041】
なお、軸筒内のリフィル2を熱変色インクを収容したボールペン等にすれば、未筆記時において前軸先端で筆跡を変色させることが可能である。更に前軸先端までグリップを覆われていることから、軸の持ち替えをすることなくかつ前軸と筆跡面との傾斜角度を調整せずに容易に変色することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 軸筒
10 前軸(一次成形品)
16 前端面
12 先端部
20 グリップ(二次成形品)
21 突出部
22 前端面
25 円筒面
30 一次金型
31 固定コアピン
32 可動コアピン
40 二次金型
41 固定コアピン
41a 大径部
41b 小径部
41c 端面
42 可動コアピン
44 キャビティー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次成形によって形成された軸筒本体と、
二次成形によって前記軸筒本体の外周面に装着されるグリップと、を備えた軸筒であって、
前記グリップは、軸方向に延在し、その先端部は前記軸筒本体の軸方向先端部を覆っていることを特徴とする軸筒。
【請求項2】
請求項1に記載の軸筒において、
前記グリップの先端部は、前記軸筒本体の先端部よりも軸方向に突出していることを特徴とする軸筒。
【請求項3】
請求項2に記載の軸筒において、
前記グリップは、前記軸筒本体の軸方向先端面に沿って内径側に突出する突出部を有し、該突出部の内径は、前記軸筒本体の先端部の内径と同一もしくは前記軸筒本体の先端部の内径よりも大きいことを特徴とする軸筒。
【請求項4】
請求項2に記載の軸筒において、
前記グリップは、前記軸筒本体の軸方向先端面に沿って内径側に突出する突出部を有し、該突出部の内表面が、軸筒先端方向に向かうにつれて内径が大きくなる逆テーパ形状を有しており、
前記突出部の前記内表面の内径が最も小さい部分の内径が、前記軸筒本体の先端部の内径と同一もしくは前記軸筒本体の先端部の内径よりも大きいことを特徴とする軸筒。
【請求項5】
一次成形によって軸筒本体を形成する第1の工程と、
二次成形によって前記軸筒本体の外周面に、軸方向に延在するグリップを装着する第2の工程と、を含む軸筒の成形方法であって、
前記第2の工程では、前記軸筒本体の先端部を保持するように金型部材を配置して、該金型部材で、前記軸筒本体の軸方向先端部を覆うようなキャビティーの一部を形成し、該キャビティーに成形材料を供給して前記グリップを形成することを特徴とする軸筒の成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の軸筒の成形方法であって、
前記第2の工程では、前記軸筒本体の先端面に前記金型部材の端面を当接させ、前記キャビティーを形成することを特徴とする軸筒の成形方法。
【請求項7】
請求項6に記載の軸筒の成形方法であって、
前記金型部材は、第1の円筒面と、該第1の円筒面と同軸であり、かつ、第1の円筒面よりも大径の第2の円筒面と、前記第1の円筒面と前記第2の円筒面を接続する接続端面とを有し、
前記第2の工程では、前記金型部材の前記第1の円筒面を前記軸筒本体の内部に挿入するとともに前記接続端面を前記軸筒本体の先端面に当接させ、前記第2の円筒面で前記キャビティーの一部を形成することを特徴とする軸筒の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52678(P2013−52678A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175844(P2012−175844)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】