軸補強を用いたパイプ端部を分離または試験するための装置および方法
フランジをパイプ端部に固定する溶接部の完全性を試験するための装置および試験方法は、試験部材と補強部材とを有している。試験部材は、パイプ内に設けられた第一の封止手段と、フランジ表面に固定された第二の封止手段とを有し、溶接部を含む空間でパイプ内に封止空間を形成する。補強部材は、パイプの外壁に固定された円周クランプと、フランジに向かい合うように設けられた錨板とを有する。第一の封止手段とアンカー板との相対位置が変化しないように、第一の封止手段はアンカー板に連結される。アンカー板とクランプとの相対位置が変化しないように、アンカー板はクランプに連結される。溶接試験工程は、装置を設置する工程、封止空間を充填および加圧する工程、および封止空間内圧力を測定する工程を含む。補強部材は、第一の封止手段が分離するのを防ぎ、かつ溶接部に圧縮力がかからない状態での溶接部の試験を可能にする。また、本発明は、パイプ端部を分離するための補強装置および方法を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ端部を分離し、またはパイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性の試験を行う装置および方法に関する。特に、本発明は、軸補強手段を備えた、パイプ端部を分離および/または試験する装置および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学あるいは石油化学プラント等においては、液体原料をある場所あるいは保持容器から、別の場所あるいは保持容器へ運搬する必要が頻繁に生じる。このような液体原料の運搬には、導管やパイプ、貯蔵容器や反応槽などの、一般的に金属製の設備が用いられている。これらの運搬設備の接合は、必要な部品を溶接することによってなされている。例えば、隣接するパイプの端部同士を接合させる場合、それぞれの端部にフランジを形成し、各端部同士を溶接して互いにボルトで固定することで、パイプが隙間のないよう接合されている。このような溶接部では、運搬する液体材料が漏れることのないよう、パイプ内が完全に密閉されている必要がある。これは、危険性(可燃性)のある原料や有毒性の原料を扱う場合に特に求められる。
【0003】
安全性の観点から、運搬設備の各種部品(パイプ、容器、フランジなど)をつなぐ溶接部に対する完全性の試験を定期的に行うことが必要である。従来技術では、導管の溶接完全性試験を行うための様々な装置が開示されている。例えば、米国特許第6131441号および第5844127号(Berube 及び Carson)(開示内容全体を参照して本明細書中で援用される)が開示する溶接検査装置は、パイプのある特定箇所(例えば、溶接部を含む箇所)を分離し、分離した箇所を、溶接試験装置とパイプの内側表面とにより囲まれる環状空間内で高圧流体にさらす。環状空間内の流体の圧力を測定することにより、圧力の低下から溶接部での漏れを検知することができる。このような装置は、検査を行うためではなく、単にパイプの一部分を分離するだけの目的でも使用される。このような分離は、可燃性原料を収容していたパイプなどを溶接する際にしばしば必要となる。このような場合、可燃性原料のガスを溶接部から排除することが重要である。上記装置は、溶接部から一定の距離を置いてパイプの内壁に接するように固定することができ、残りのパイプ内に含まれる可燃性原料のガスが溶接部に接触するのを妨げる働きをする。ガスの蓄積およびそれに起因する圧力上昇を防ぐため、米国特許第6131441号および第5844127号に記載の装置は、ガスが溶接部を接触することなく通過できるよう、通気管を備えている。また、米国特許第6131441号および第5844127号に記載の装置は、如何なるパイプあるいは導管の長さ方向に沿って備えることが可能である。
【0004】
米国特許第5027079号(Dufort)は、特に、フランジを備えるパイプの溶接完全性試験に利用される試験装置を開示している。米国特許第5027079号では、この試験装置は、溶接部から一定の距離にあって放射状に膨らんだブラダーを有する封止端部を備えている。ブラダーに加圧すると、装置がパイプの内壁に摩擦的に嵌め込まれる。これにより、装置は適切な位置に固定され、溶接部がパイプのその他の部分から分離される。さらに、上記装置は、パイプのフランジに接して固定されるフランジ板を備えており、このフランジ板により、フランジと装置の封止端部との間に、試験を行う溶接部を含んだ密閉空間が形成される。この密閉空間を試験流体により加圧し、漏れの有無が検知される。
【0005】
上述の先行技術では、効果的に溶接部の試験が行える装置を提供できるものの、当該装置は、溶接部に対して主に半径方向に力が加わるよう設計されている。しかし、溶接部を極限条件下で試験を行うには、「最悪の状況」を再現するためのさらに別の圧力を溶接部に加える必要がある。特に、溶接部に軸方向への膨張力が加えることのできる試験を行う必要性がある。
【0006】
また、周知の分離および/または試験装置のうち少なくとも一部では、装置奥側での圧力上昇(ガスの蓄積などに起因する)により、装置がパイプから軸方向(パイプの軸方向)に向かって爆発的に外れる“噴出”が引き起こされることがある。したがって、装置が軸方向に外れないように、パイプの分離および/または試験装置を補強する必要がある。
【0007】
〔本発明の概要〕
一つの側面では、本発明は、パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する溶接試験装置であって、
使用時において、
試験部材と、
上記試験部材を固定するための補強部材とを有し、
上記試験部材は、
上記パイプ内に封止を形成する第一の封止手段と、
上記フランジを封止する第二の封止手段と、
上記第一の封止手段、上記第二の封止手段、および上記パイプの内壁により囲まれる空間を加圧する手段とを備え、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記フランジに向かい合って設けられる錨板と、
上記錨板と上記第一の封止手段とが分離しないように、上記錨板と上記第一の封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備える溶接試験装置を提供する。
【0008】
他の側面では、本発明は、パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する方法であって、
第一の封止手段を上記パイプ内に固定する工程と、
第二の封止手段を上記フランジに固定する工程と、
上記溶接部を含み、かつ上記第一の封止手段と第二の封止手段と上記パイプの内壁とにより囲まれる封止空間を、上記パイプ内に形成する工程と、
上記パイプの外壁に摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記フランジに向かい合う固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記固定手段と上記第一の封止手段との相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記第一の封止手段に連結する工程と、
上記封止空間を試験流体により充填および加圧する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
他の側面では、本発明は、パイプ端部を分離する装置であって、
上記パイプ内に封止を形成する封止手段を備える分離部材と、
上記分離部材を固定するための補強部材とを有し、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記パイプ端部の反対側に位置する錨板と、
上記封止手段が上記パイプ内で軸方向に移動しないように、上記錨板と上記封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備える装置を提供する。
【0010】
他の側面では、本発明は、パイプ端部を分離する方法であって、
上記端部を残りのパイプ内部から分離するために、上記パイプ内に封止手段を固定する工程と、
上記パイプの外壁摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記パイプ端部の反対側に固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記封止手段がパイプ内で軸方向に移動しないように、上記固定手段を上記封止手段に連結する工程とを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の特徴は添付図面を参照した次の説明により明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、パイプ使用時の、一実施形態に係る試験装置の部分断面図である。
【図2】図2は、図1の2−2線に沿った端面図である。
【図3A】図3Aは、一実施形態に係る、図1の3−3線に沿った端面図である。
【図3B】図3Bは、他の実施形態に係る、図1の3−3線に沿った端面図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係る、図1に示す試験装置の部分断面図である。
【図5】図5は、他の実施形態に係る発明の試験装置の部分断面図である。
【図6】図6は、図5に示す試験装置の通気管および第一の封止装置の断面図である。
【図7】図7は、図6に示す封止装置の変形例の断面図である。
【図8】図8は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係る分離装置の部分断面図である。
【図12】図12は、図11に示す装置の変形例の部分断面図である。
【図13】図13は、図1に示す装置の変形例の部分断面図である。
【図14A】図14Aは、図12に示す封止装置の概略断面図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに示す封止装置の変形例の概略断面図である。
【0013】
〔本発明の詳細な説明〕
本明細書中で、次の用語は以下に示す内容を意味する。
【0014】
「パイプ」:パイプまたはパイプ状の導管であって、長さに制限はなく、フランジを取り付けることのできるパイプまたはパイプ状の導管を意味するものと理解される。本発明は、フランジが溶接された金属製パイプを対象として用いられるが、PVCなどの他の材料からなるパイプについても同様に使用可能であることは明らかである。従って、「パイプ」とは、直線状または曲線状の導管および、容器口やT字型管などに設けられるポートといった、他の設備や装置をつなぐ管状連結部を備えるものを想定している。便宜上、本明細書の記載および添付の図面では、ある長さを持つ直線状のパイプが示されている。
【0015】
「環状」:この用語は、少なくとも一つの外径と少なくとも一つの内径とを有する物体を表現するのに用いられる。従って、「環状チューブ」は外径と内径とを有する中空管を意味する。「環状ディスク」は、外径と、内径を形成する中央部の開口とを有する物体を意味する。
【0016】
「軸方向」:この用語は、パイプまたは導管の長手方向の軸に沿った方向を意味するように用いられる。従って、「軸方向への力」または「軸方向への圧力」とは、導管の長手方向に平行な方向に加えられる力(膨張、圧縮のいずれも)を示している。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る発明の装置10は、パイプ14内に設置される第一の封止手段12と、フランジ18の外面に接するように設置される第二の封止手段16とを備える試験部材を有する。フランジ18は、本発明を用いた試験対象である溶接部17により接合されている。第一の封止手段12はパイプ14の内壁に接することによって封止を行う。第二の封止手段16はフランジ18の外面に接することによって封止を行う。また、上記装置は、試験部材を所望の位置に固定する補強部材20を有する。補強部材20は、円周クランプ22および錨板24を備えている。錨板は二つ以上のアンカーロッド26によってクランプ22に連結している。
【0018】
本発明で用いられる円周クランプ22の例が、同時係属中の国際出願WO2006/069446(開示内容全体を参照して本明細書中で援用される)に開示されている。図2に示すように、クランプ22は一般的にクラムシェル構造を持ち、二つ以上のセクション28a・28bから構成される(例えば、径の大きいパイプの場合、クランプの総重量が大きくなるため、さらに多くのセクションに分ける必要が生じることもある)。上記セクションは、締め付けフランジ30a・30bを備え、締め付けフランジ30a・30bは、それぞれボルト32を通すための開口を有している。セクション同士はナット34で留められ固定されており、ボルト32とナット34の数は限定されない。セクション28a・28bはそれぞれ、襟部34a・34bを備えており、襟部34a・34bは、通常はパイプ14の外側表面の周囲に嵌め込まれる。上記記載から明らかなように、襟部34a・34bを設置した後、ボルト32とナット33とを締め付けフランジ30a・30bの開口に挿入する。ナット33を締めつけることにより、襟部34a・34bがパイプ14の外側表面に押し付けられ、固い締結が可能となる。クランプ22とパイプ14間を目的とする度合で締めるために必要な回転力は、本明細書に関する当業者には明らかである。また、それぞれの上記セクションが向かい合うフランジを持った構成を示しているが、国際出願WO2006/069446に記載されているように、一対のフランジおよび付随するボルト32とナット33をヒンジに置き換えてもよいことは明らかである。
【0019】
本明細書中で使用される「円周クランプ」は、パイプの周囲を全て囲んでいるものに限定されない。例えば、図に示す通り、ボルト32を長くすることにより、様々な径のパイプに使用することができるクランプであってもよい。従って、「円周クランプ」とは、パイプの周囲の少なくとも一部に擦られるようにして嵌め込まれるクランプを意味している。
【0020】
また、便宜上、本明細書では、一つのクランプがパイプ14の外側表面に備えられているが、さらに補強をする必要がある場合、複数のクランプが用いられてもよいことは明らかである。さらに、クランプを締め付ける手段としてボルト32とナット33が用いられているが、上述の国際出願に記載されている通り、磁気や水圧などを用いた手段を使用してもよい。上記記載から明らかなように、クランプは、試験対象であるパイプ14の外壁に擦られるようにして嵌め込まれ、試験装置が移動(特に軸方向へ移動)するのを防ぐように補強することを目的とする。
【0021】
クランプセクション28a・28bは襟部34a・34bに略垂直な方向に延びるフランジ36a・36bをそれぞれ含む。これらのクランプセクション同士がパイプ14の周囲に適切な位置で連結されたとき、フランジ36a・36bが組み合わさって支持フランジ37が形成される。支持フランジ37は、通常、襟部から略垂直な方向に延び、かつパイプ14の長軸に直交する。支持フランジ37は、アンカーロッド26を通す後述の二つ以上の開口38を有している。
【0022】
また、クランプセクション28a・28bは、襟部34a・34bおよびフランジ36a・36bそれぞれの相対位置を保持し、かつフランジ36a・36bを支持するために、多数の支柱40が備えていることが好ましい。このような支柱の必要性やその数は、クランプ製造に用いる鋼鉄の規格やクランプの径など、様々な要素に依存することは明らかである。
【0023】
上述したように、補強部材は、円周クランプの反対側に錨板24を有している。図3Aおよび図3Bに示すように、錨板はディスク状(図3A)でもよいし、矩形板状(図3B)でもよい。錨板24は、アンカーロッド26を通す二つ以上の第一の開口42を有する。錨板に形成される開口42の数は、必要とされるアンカーロッドの数に依ることは明らかである。したがって、径の大きなパイプでは、二つ以上のロッドが必要となることがある。さらに、アンカーロッドが二つ使用される場合は錨板が矩形板状(図3B)であってよいが、アンカーロッドが三つ以上使用される場合には錨板はディスク状(図3A)である必要がある。また、ディスク状の錨板が矩形板状の錨板よりも重量が大きいことは明らかである。
【0024】
錨板24には、試験部材の通気管(後述)を通すための通気口44がほぼ中心に形成されている。さらに、錨板24には、試験部に備わるタイロッド(後述)を通すための支持開口46が一つ以上形成されていてもよい。
【0025】
図1に示すように、クランプ22と錨板24は、アンカーロッド26の両端がそれぞれの開口を通るように配置されている。さらに、図1に示すように、アンカーロッドを取り付けられるように、クランプ22の支持フランジ37と錨板24とはフランジ18の直径よりも大きいことが好ましい。
【0026】
図1に示すように、試験部材は第一の封止手段12を有する。第一の封止手段12は、パイプ14の内部に収まる封止板48を有し、封止板48の直径はパイプ14の内径よりも小さい。封止板には円周周囲に間隔をおいて複数のボルト50が備えられている。ボルト50は、溶接またはナット(図示せず)によって恒久的に封止板48に固定されていてもよい。ボルト50の板48への固定は当業者に既知の如何なる方法によってなされてもよいことは明らかである。また、第一の封止手段12は、環状リング52および環状軸受板54を有する。Oリングなどの弾性封止体56・58が、封止板48と環状リング52の間、および環状リングと軸受板54の間にそれぞれ備えられている。図に示されるように、ボルト50は、軸受板54に形成された開口(図示せず)を通り、ナット60によって固定される。
【0027】
図から明らかなように、第一の封止手段12の各部品が目的の位置に設置されているとき、ナット60を締めると、封止板と軸受板54とが互いに接近する。この動きにより、弾性封止体56・58が変形する。この変形はパイプの半径方向外側に向かって起こり、封止体がパイプ14の内壁に押し付けられる。このようにして、二つの封止体は第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間に位置づけられる。パイプ14の内壁に隣接する環状リング52の外縁は、封止体の半径方向外側に向かう変形を起こりやすくために、内側に向かって傾斜していることが好ましい。しかし、他の様々な方法によってもこのような方向の変形を起こすができる。例えば、封止体が半径方向内側へ変形するのを防ぐためにリングに突起を備え、変形が必ず外側へ向かって起こるようにしてもよい。また、本明細書ではボルト50およびナット60を備える実施形態が記載されているが、封止板と軸受板を接近させるのにあらゆる軸受方法を用いることができる。例えば、ナットやボルトを用いた機械的方法ではなく、水圧を用いた手段による方法でもよい。この場合、ボルトは水圧シリンダーに置き換えられる。当業者にとって他の各種加圧方法も使用可能であることは明らかである。
【0028】
さらに、本発明の封止板48は、封止板48上に設けられる中央開口64から延びる通気管62を備える。通気管62は、封止板48に溶接あるいはボルトで固定されているか、他の手段によって封止板48に連結されていてもよい。通気管62は、試験部の両側同士をつなぐ通路となり、パイプ内に存在する煙やガスを排出する働きをする。通気管は一つのみ設置されていることが好ましいが、必要に応じて複数設置されていてもよい。
【0029】
一実施形態として、封止板48には、通気管62と同方向に延びる一つ以上のタイロッド63が備えられていてもよい。タイロッドは通常、通気管62と同様に様々な方法により封止板48に締め付けられて固定されている。一実施形態では、封止板に溶接されていてもよい。
【0030】
試験部材は、第一の封止手段12の反対側に、第二の封止手段16を有している。第二の封止手段16は略ディスク形状の閉止フランジ66を有し、閉止フランジ66は、通常フランジに形成されているボルト孔により、フランジ18の外面に固定されている。便宜上、閉止フランジをフランジ18に固定するボルトおよびナットは図示されていないが、ボルトおよびナットは当業者には明らかである。また、図示されていないが、閉止フランジ66とフランジ18を封止する封止体も周知である。通常このような封止体は、閉止フランジ66とフランジ18の対向する面同士の間に設けられるガスケット等を備えている。
【0031】
通気管62とタイロッド63は、閉止フランジ66に形成された開口を通って延びている。このような開口は、Oリングなどの弾性封止部材やパッキング押さえなどを用いた手段で封止される。図1に示す実施形態では、軸封板と共に、Oリングが通気管62およびタイロッド63の円周を囲むように設置されている。ここでは、通気管62に関していえば、Oリングは部材68として、軸封板は部材70として示される。開口の封止には、閉止フランジ66の外面に連結し外側に向かって(フランジ18から離れる方向へ)延びる二つ以上のボルト71が用いられる。続いて、通気管62およびボルト71を通す開口を持つ軸封板70が設置される。その後、ボルト71に対してナット72が取り付けられ、十分に締めることで必要な封止がなされる。上述のように、タイロッド63を有する場合は、タイロッド63それぞれに対しても同様の封止手段が用いられる。他の実施形態として、通気管62(あるいはタイロッド63)の外壁にネジ山を設けることによりボルト71を省略してもよい。この場合、軸封板70は、通気管62の外壁に設けられたネジ山に嵌め込むことのできるナットによって閉止フランジに固定されていてもよい。通気管62およびタイロッド63を通す閉止フランジの開口が他の様々な方法によっても封止可能であることは当業者に明らかである。さらに、図1には個別の軸封板70が示されているが、さらに他の実施形態として、通気管62およびタイロッド63を通す開口が形成された単一の軸封板を用いてもよい。また、軸封板70あるいは単一軸封板は、ディスク状や矩形状など、如何なる形状を有していてもよい。
【0032】
閉止フランジ66は、さらに、少なくとも一つの注入口74と少なくとも一つの排出口76を有する。注入口74と通気口76はそれぞれ、閉止フランジ66を通る通路を有している。これらの通路を介して、加圧流体が第一の封止手段12、閉止フランジ、およびパイプ14の内壁により囲まれる試験空間78へと注入および排出される。注入口74は、加圧流体の供給源(図示せず)に連結している。排出口76は、注入操作が開始されると、試験空間78内の空気を排出する働きをする。空気の排出が完了すると、排出口76は閉じられ、後述するように、試験空間78への加圧が可能となる。注入口および排出口の形態は、閉止フランジ66の大きさによって様々である。
【0033】
図1に示すように、通気管62とタイロッド63の外端部にはネジ山が形成されており、ナット80が嵌め込まれる。ナット80は、後述するように、通気管62およびタイロッド63を錨板に固定する役割を持つ。
【0034】
また、後述するように、アンカーロッド26の両端では、ナット82が嵌め込まれるように、外壁にネジ山が形成されていてもよい。
【0035】
本発明に係る方法について、図1の装置を参照して説明する。一実施形態において、この方法の最初の段階で、封止部材が設置される。この工程において、最初に第一の封止手段12が、試験対象の溶接部を含むパイプ14へ挿入される。この溶接部は、フランジ18と連結している。このとき第一の封止手段12は、溶接部が第一の封止手段12とフランジ18の間に位置するように、溶接部よりも奥側に挿入される。第一の封止手段12の挿入前に、封止板48、リング52、軸受板54、封止体56・58、およびナット60が締められていない状態で組み立てられ、それらがともにパイプ14へと挿入されてもよい。目的の位置に設置後、ナット60を締め、パイプ14の内壁との間を封止する。また、上述の部材を別々にパイプ14に挿入し、パイプ内で連結してもよい。
【0036】
第一の封止手段12がパイプ内壁との封止を形成する適切な位置に固定された後、第二の封止手段16が設置される。この工程において、まず第二の封止手段の閉止フランジ66がフランジ18の外面へ固定される。上述したように、フランジ18と閉止フランジ66との間には、両者間を封止するために、ガスケットや他の封止手段が用いられる。また、上述したように、閉止フランジ66には複数のボルト孔が形成されており、ボルト孔は、通常フランジ18に設けられるボルト孔に相当する。したがって、閉止フランジ66を実装するときは、フランジボルトや通気管62、タイロッド63がそれぞれの開口を通るように配置する。閉止フランジ66を適切な位置に設置した後、ナットを取り付けて締めることによって、閉止フランジ66をフランジ18の外面に固定する。次に、一つ以上の封止体68および軸封板70を、通気管62、および設置されている場合はタイロッド63に、それぞれ設置する。その後、必要なナット72を取り付けて締めることで、通気管62およびタイロッド63を通すために閉止フランジに形成された開口を封止する。これにより、封止部材の設置は完了し、溶接部17に対する圧力試験を開始することができる。しかしながら、本発明では、圧力試験前に補強部20も設置する。
【0037】
補強部材20の設置においては、まず円周クランプ22がパイプ14の外壁に設けられる。上述したように、クランプ22は通常二つのセクションに分けられパイプ14の周囲に設置される。また、クランプ22はパイプ上で第一の試験手段よりもさらに奥側に位置することが好ましい。クランプ22が適切な位置に設置された後、ナット33を締め、パイプ14の外側表面と摩擦するようぴったりと嵌める。本出願と同時係属中の国際出願WO2006/069446に記載されるように、このタイプの円周クランプは、軸方向の力に対して高い支持力を発揮する。
【0038】
クランプ22がパイプ14の外側表面に固定された後、クランプの支持フランジ37に形成された開口にアンカーロッド26を挿入する。次に、通気管62、タイロッド63、およびアンカーロッド26がそれぞれ錨板24に形成された開口を通るように、錨板24を設置する。錨板を設置した後、通気管62およびタイロッド63上にナット80を固定する。ナット80を締める必要はない。その後、アンカーロッド26に取り付けられたナット82の位置を調整して、錨板24を固定する。
【0039】
この段階で、加圧流体が閉止フランジ66に設けられた注入口74を介して試験空間78へと注入される。上述のように、注入工程では、排出口76が試験空間78内の空気を排出する働きをする。空気排出が完了すると、排出口は閉じられ、試験空間内の圧力が目的とする圧力になるまで注入工程が継続する。注入完了後、圧力の測定を行う。このとき、圧力低下が溶接部17の不完全性を意味している。
【0040】
当業者には明らかなように、上記記載から本発明の様々な特徴が明らかである。まず、試験空間78に対する圧力試験は、溶接部17に圧縮力を加えることなく行われる。これにより、正確な試験が可能である。さらに、第一の試験手段12は、錨板24および円周パイプクランプ22を有する補強部材に接続されていることにより、軸方向に移動することがない。これにより、試験装置がパイプ14から “噴出”する危険性のない状態で試験を行うことができる。
【0041】
さらなる特徴として、第一の封止手段12の封止体56・58が試験空間78内で加圧流体にさらされている点が挙げられる。これにより、試験空間78内の流体圧力がこれらの封止体に半径方向外側に向かう方向で加わり、第一の封止手段12とパイプ14の内壁と間の封止力がさらに強固となる。
【0042】
本発明装置の他の実施形態を図4に示す。図4中で、図1の装置と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図4に示す実施形態では、第一の封止手段の変形例が示されている。ここでは、リング52および弾性封止部材56・58の代わりに、環状の可膨張ブラダー90が設けられる。図に示すように、ブラダー90は、パイプ14の内壁に当接しており、ボルト50および軸受板54によって支持されている。明らかなように、本実施形態では、ナット60を締めて封止がなされることにより、ブラダー90が設置される。さらに、加圧流体(空気、水、作動流体など)がブラダー注入口92を介してブラダーに注入される。このとき、空気の代わりに、水、作動流体、または他の同様の媒体が使用される場合は、注入工程で空気の排出を行う排出口94もブラダーに設けられている。
【0043】
図5に、特に径の小さいパイプの試験に適する、本発明のさらに他の実施形態を示す。図5中で、図1中と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図5に示す実施形態において、補強部材20は上述とほぼ同様の構造を持ち、アンカーロッド26で連結されている円周クランプ22と錨板24とを含んでいる。しかしながら、パイプ14の直径が小さいため、上述のタイロッドが不要となり、錨板はナット80によって通気管62に固定されている。
【0044】
図5に示す第一の封止手段は、図1に示すものと以下の点でも異なっている。具体的には、図5の第一の封止手段では、パイプ14の直径が小さいため、軸受板54の代わりに略環状の軸受ディスク100が設置されている。ディスク100の略中央には、通気管62を通す開口が形成されている。通気管62は、少なくともディスク100に近接する箇所の外側表面にネジ山が形成されており、ナット102が嵌め込まれるようになっている。ナット102を締めることにより、ディスク100が封止板48に向かって押され、弾性封止部材104が変形する。封止形成を促すため、図6に示すように、ディスク100の弾性部材に接する外縁は傾斜を有していてもよい。これにより、弾性部材が半径方向外側に向かって移動しパイプ14の内壁に接する。封止部材104は、Oリングなどからなってもよい。
【0045】
図7が示すように、他の実施形態として、図5に示す装置は二重に封止がなされていてもよい。図7では、封止板48と軸受ディスク100との間に環状体106が設けられている。環状体は、弾性封止部材104(Oリングなど)により、封止板48および軸受ディスク100から隔離されている。ナット102が通気管62上で奥側に進むと、軸受ディスクにより封止部は圧縮され、封止部材104が半径方向外側に向かって試験対象のパイプの内壁に接するように変形する。この二重封止を形成する方法は、単一のナット(102)が使用される以外は、図1の装置と同様であることは明らかである。
【0046】
図8は、図5に示す装置のさらに他の実施形態を示す。図8中で、図5と同一の部材には図5中と同一の部材番号を付す。この実施形態では、弾性封止部材が楔形部材108からなる。この場合、軸受ディスク110の弾性部材に隣接する外縁が傾斜している。図に示されるように、軸受ディスク110の傾斜は、弾性部材の楔形状とは反対方向に向いている。従って、当業者には明らかなように、ナット102が奥側へ進むと、軸受ディスク110により弾性部材108が外側に向かって押され、パイプ14の内壁との間を封止する。
【0047】
図9は、図5に示す装置の他の変形例を示す。図9中で、図5と同一の部材には図5中と同一の部材番号を付す。この実施形態では、図5の軸受ディスク100の代わりに、通気管62の同軸上に延びるスリーブ112が設置されている。スリーブ112は、奥側の端部に、弾性封止部材104を押圧する軸受ディスク部114を有する。スリーブの手前側端部(外側に延びた端部)は錨板24の開口を通っている。図9から分かるように、ナット80を締めると、スリーブは奥側へと進み、軸受ディスク部114が弾性部材104を押圧する。その結果、弾性部材104は変形し、半径方向外側へ拡がるので、パイプ14の内壁との間を封止する。上述のように、軸受ディスク部114の封止部材に接する外縁は、弾性部材の半径方向の拡張を確実にするために傾斜を有していてもよい。図9の実施形態では、パイプ内壁間の二重封止のために、図7に示すような環状体106およびさらなる弾性部材が設置されていてもよいことは明らかである。
【0048】
図10は、本発明のさらなる実施形態として、図9に示す実施形態の変形例を示す。図10では、封止部材は通気管62の同軸上に設置されたスリーブ112を有するが、軸受ディスク部が省略され、その代わりにスリーブ112が広径部116を有している。図から分かるように、広径部116は試験空間78の容量の大部分を占めるため、試験に必要な加圧流体の量を減らすことができる。広径部116の奥側端部は、弾性封止部材104に当接し、上述のように弾性部材104とパイプ14の内壁と間の封止を促すため、傾斜を有していてもよい。図9に示す実施形態と同様に、通気管62に備えられたナット80を締めることにより、スリーブ112が弾性部材104に向かって押し込められる。図10の実施形態では単一の弾性部材が使用されているが、上述の二重封止が行われてもよいことは明らかである。
【0049】
以上では、主に、フランジ18とパイプ14の端部を連結する溶接部17の試験装置の使用について述べた。しかしながら、本装置は、フランジ18をパイプ14に安全に溶接するための装置としても利用することもできる。この実施形態を図11に示す。図11中で、上述の図面と同様の部材には上述図面中と同様の部材番号を付す。図に示されるように、アンカーロッド26によって連結したクランプ22と錨板24とを含む補強部材20は、基本的には上述のものと同様である。しかしながら、アンカーロッド26に嵌め込まれるナット82は、錨板24上の支持フランジ37の反対側に設けられる。このような配置により、アンカーロッド26に圧縮負荷が加わり、錨板が円周クランプ22の支持フランジ37に向かって押し込まれる。この配置は、上述した溶接部試験方法に関する実施形態とは反対の配置であり、その目的を以下に示す。
【0050】
図11には、第一の封止手段12のみが備えられた実施形態が示されている。後述するように、第二の封止手段を備える必要はない。具体的には、図11に示される装置は、フランジ18とパイプ14端部との溶接のため、パイプ14の端部をそれより奥側の部分から分離することを目的としている。このために、第一の封止手段12をパイプに挿入し、上述の方法でパイプ内壁に密着させる。つまり、第一の封止手段12は、パイプ端部より奥側に位置するように挿入される。その後、ナット60を締め、パイプ14の内壁との間を封止する。パイプ内に設置された第一の封止手段12は、パイプ14内のあらゆるガス等を遮断する働きをする。通気管62は、以下に示す溶接工程が妨げられることのないようにこれらのガスを排出する。
【0051】
第一の封止手段12が設置された後、上述と同様の方法で補強部材が設置されてもよい。具体的には、円周クランプ22がパイプ14の外側表面に設置される。クランプ22は、第一の封止手段12からある程度奥側に位置することが好ましい。クランプ22がパイプ14に固定された後、アンカーロッド26および錨板24が上述のように設置される。具体的には、アンカーロッドはクランプ22の支持フランジ27に形成された開口を通るよう設置され、錨板上の開口をアンカーロッド26、通気管62、および設置する場合はタイロッド63が通るように錨板が配置される。その後、第一の封止手段12と錨板24との間、および錨板24とクランプ22との間の相対的な移動を防ぐためにナット80・82を締める。補強部材は、第一の封止手段奥側でガスが蓄積し、通気管62により圧力上昇を防ぐことができなくなったときに、第一の封止手段12が押し出されるのを防ぐことを目的としている。錨板に取り付けられた通気管62および/またはタイロッド63は、共に第一の封止手段が外側へ向かって移動するのを防ぐ。これは、クランプ22に固定された錨板24を備えることによって可能となる。
【0052】
第一の封止手段12および補強部材20を設置した後、フランジ18が溶接によってパイプ14に取り付けられる。溶接トーチ120が概略的に図11に示されている。
【0053】
一実施形態として、図11に示す装置では、通気管62およびタイロッド63上で錨板24の対面に、第二のナット81が設けられることが好ましい。すなわち、第二のナット81は、上記のナット80とは反対側に設けられる。対向するナット同士が装置の軸方向両側へ働く力を吸収することは明らかである。
【0054】
図12は、図11に示す装置の変形例を示す。図12において、補強部材は、円周クランプ22、アンカーロッド26、およびそれに取り付けられるナット82を備え、錨板24は上述の装置と同様である。なお、クランプはパイプ14の外壁とより広い面積で接している。広面積での接触は、装置の移動に対してより大きな摩擦抵抗をもたらし、締め付け力が増加することは明らかである。クランプ22やその関連部材の大きさは特に限定されない。また、図12には、前出の図面において部材37に相当する支持フランジの変形例が示される。図12において、支持フランジは、ボルト127およびその付属ナットによりクランプ22へ固定される環状板125を有している。使用時において、環状板125は前出の図面で示される支持板37と同様に作用する。
【0055】
第一の封止手段12は、上述のように備えられる。しかしながら、図12において、第一の封止手段12は、流体を通す注入口132および排出口134に接続している環状リング130を有している。注入口132および排出口134は、環状リング130から延設しており、環状リング130は、その外壁がパイプ13の内壁に向いている(リング130がパイプ14内で適切な位置に設置されているとき)。第一の封止手段の構成は、本件出願人の先行米国特許第6131441号および第5844127号に開示された分離/試験装置と基本的に同様である。使用時において、第一の封止手段12は上述のように設置される。すなわち、各種部材はパイプ14の内側または外側で組み立てられ、ナット60を締めることにより、弾性封止部材56・58がパイプ14の内壁に当接する。上述のとおり、これによって第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間に二重封止がなされる。この時点で注入口132から加圧流体を注入し、弾性部材56・58、環状リング130の外壁、およびパイプ14の内壁により囲まれる空間を充填する。排出口134は空間内の空気を排出する働きをする。空気排出の完了後は排出口134を閉じ、空間内を充填して加圧された状態にする。このとき、第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間には、加圧された空間による第三の封止が形成される。この三段階の封止により、ガス等が第一の封止手段12を通過するのを効果的に防ぐことができる。
【0056】
さらに、第一の封止手段が補強部材に固定されていることにより、第一の封止手段の軸方向への移動を防ぐことができる。
【0057】
図12は、第一の封止手段が錨板を付勢する構成の変形例を示す。上述の実施形態では、補強部材の錨板は通気管および/またはタイロッドに固定されていたが、図12に示す実施形態では、錨板に一つ以上の伸展アームが備わっている。図12には、2本の補強アーム140・142が示されており、各アームは、錨板24に取り付けられるか一体化し、かつ錨板24に略直交する方向に延びている。アーム140・142は、パイプ14の内部に向かって延びている。アーム140・142は、第一の封止手段12の封止板48を付勢する軸受板144まで延びている。使用時、アーム140・142は上述の通気管および/またはタイロッドと同様に機能する。
【0058】
他の実施形態として、アーム140および/または142は単一チューブ状でもよい。この場合、軸受板144が好ましくは環状板であることは明らかである。また、アーム140および/または142の他の様々な様態については当業者に明らかである。
【0059】
図13は、図1の装置の変形例である他の実施形態を示す。図13中で、図1の装置と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図13に示す実施形態においては、図1中で部材66として示される閉止フランジの代わりに、その変形である部材66aが設けられている。この場合、図から分かるように、閉止フランジ66aはパイプ14の内部に挿入されている。閉止フランジ66aの内面(すなわち、フランジ18に対向しない面)は環状リング52に隣接するよう構成され、図1中の軸受板54と同様に、弾性封止体56・58を圧縮・変形させる。封止体56・58は、基本的には図1に示した装置中と同様に機能する。
【0060】
タイロッド63および通気ロッド62に取り付けられるナット81によてスリーブ148に圧縮負荷をかけ、その負荷が伝達されることによって、閉止フランジ66は封止体56・58に向かって移動する。図13に示すように、スリーブ148は、タイロッド63および通気ロッド62のそれぞれ同軸上に備えられ、スライド可能に構成されている。それぞれのスリーブの、一方の端部が軸封板70に接し、他方の端部がナット81に接している。スリーブ148とナット81との間にはワッシャー150等が備えられることが好ましい。当業者には明らかなように、ナット81を締めると、スリーブ148が軸方向に封止板70に向かって移動する。これにより、封止板70が閉止フランジ66aを押圧し、弾性封止体56・58が変形する。
【0061】
また、図13から分かるように、排出口74aおよび注入口76aは、図1中のものと同様であるが、ここでは閉止フランジ66aを通る単一孔を含んでもよい。
【0062】
図13に示す装置の操作は図1に示すものと同様であるが、最初に封止体56・58とパイプ内壁との間の周囲の封止のためにナット81が締められている(上述の方法による)点が唯一異なっている。
【0063】
図12に関して上述したように、本発明の一実施形態では、三段階封止を用いることができる。三段階封止では、弾性部材または封止体(Oリング等)による二段階の封止とともに、これらの封止体間に位置する加圧空間を利用する。図14Aにこのような封止構成を概略的に示す。図に示されるように、二つの封止体56・56がナット60を締めることにより変形し、軸受板54が環状リング130を押圧する。その後、パイプ14、環状リング130、および封止体56・58により囲まれる空間152が、引き込み口132・134を介して加圧される。
【0064】
図14Aに示す構成の変形例として、図14Bは、同様の三段階の封止手段を有し、さらに弾性部材154が環状リング130の凹部156に備えられた構成を示す。凹部156は、環状リング130の封止板48に対向する面に形成されている。ナット60を締めることによって環状リング130が移動すると、弾性部材154が封止板48に向かって押圧され、弾性部材154と封止板48との間が封止される。環状リング130はさらに一つ以上の引き込み口158を備え、引き込み口158は、環状リング130、封止板48、および封止体56・154に囲まれる環状空間160と空間152とをつなぐ通路として機能する。使用時は、封止体56・58・154によって封止をした後に、上述のように空間152が加圧される。この工程で、通路158により、環状空間160からなる第四の加圧空間が形成される。このようにして、図14Bに示す実施形態では四段階の封止が実現される。一形態として、本発明は、図14Bに示すようにそれ自体がパイプ内部封止部材を形成するような封止装置を実現する。このような封止部材は、上述の補強装置の有無に関わらず利用可能である。
【0065】
本発明は、上述の具体的な実施形態に限定されず、本発明の精神と次に記載する請求項の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。引用された先行技術は全体を参照することにより本明細書中で援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ端部を分離し、またはパイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性の試験を行う装置および方法に関する。特に、本発明は、軸補強手段を備えた、パイプ端部を分離および/または試験する装置および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学あるいは石油化学プラント等においては、液体原料をある場所あるいは保持容器から、別の場所あるいは保持容器へ運搬する必要が頻繁に生じる。このような液体原料の運搬には、導管やパイプ、貯蔵容器や反応槽などの、一般的に金属製の設備が用いられている。これらの運搬設備の接合は、必要な部品を溶接することによってなされている。例えば、隣接するパイプの端部同士を接合させる場合、それぞれの端部にフランジを形成し、各端部同士を溶接して互いにボルトで固定することで、パイプが隙間のないよう接合されている。このような溶接部では、運搬する液体材料が漏れることのないよう、パイプ内が完全に密閉されている必要がある。これは、危険性(可燃性)のある原料や有毒性の原料を扱う場合に特に求められる。
【0003】
安全性の観点から、運搬設備の各種部品(パイプ、容器、フランジなど)をつなぐ溶接部に対する完全性の試験を定期的に行うことが必要である。従来技術では、導管の溶接完全性試験を行うための様々な装置が開示されている。例えば、米国特許第6131441号および第5844127号(Berube 及び Carson)(開示内容全体を参照して本明細書中で援用される)が開示する溶接検査装置は、パイプのある特定箇所(例えば、溶接部を含む箇所)を分離し、分離した箇所を、溶接試験装置とパイプの内側表面とにより囲まれる環状空間内で高圧流体にさらす。環状空間内の流体の圧力を測定することにより、圧力の低下から溶接部での漏れを検知することができる。このような装置は、検査を行うためではなく、単にパイプの一部分を分離するだけの目的でも使用される。このような分離は、可燃性原料を収容していたパイプなどを溶接する際にしばしば必要となる。このような場合、可燃性原料のガスを溶接部から排除することが重要である。上記装置は、溶接部から一定の距離を置いてパイプの内壁に接するように固定することができ、残りのパイプ内に含まれる可燃性原料のガスが溶接部に接触するのを妨げる働きをする。ガスの蓄積およびそれに起因する圧力上昇を防ぐため、米国特許第6131441号および第5844127号に記載の装置は、ガスが溶接部を接触することなく通過できるよう、通気管を備えている。また、米国特許第6131441号および第5844127号に記載の装置は、如何なるパイプあるいは導管の長さ方向に沿って備えることが可能である。
【0004】
米国特許第5027079号(Dufort)は、特に、フランジを備えるパイプの溶接完全性試験に利用される試験装置を開示している。米国特許第5027079号では、この試験装置は、溶接部から一定の距離にあって放射状に膨らんだブラダーを有する封止端部を備えている。ブラダーに加圧すると、装置がパイプの内壁に摩擦的に嵌め込まれる。これにより、装置は適切な位置に固定され、溶接部がパイプのその他の部分から分離される。さらに、上記装置は、パイプのフランジに接して固定されるフランジ板を備えており、このフランジ板により、フランジと装置の封止端部との間に、試験を行う溶接部を含んだ密閉空間が形成される。この密閉空間を試験流体により加圧し、漏れの有無が検知される。
【0005】
上述の先行技術では、効果的に溶接部の試験が行える装置を提供できるものの、当該装置は、溶接部に対して主に半径方向に力が加わるよう設計されている。しかし、溶接部を極限条件下で試験を行うには、「最悪の状況」を再現するためのさらに別の圧力を溶接部に加える必要がある。特に、溶接部に軸方向への膨張力が加えることのできる試験を行う必要性がある。
【0006】
また、周知の分離および/または試験装置のうち少なくとも一部では、装置奥側での圧力上昇(ガスの蓄積などに起因する)により、装置がパイプから軸方向(パイプの軸方向)に向かって爆発的に外れる“噴出”が引き起こされることがある。したがって、装置が軸方向に外れないように、パイプの分離および/または試験装置を補強する必要がある。
【0007】
〔本発明の概要〕
一つの側面では、本発明は、パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する溶接試験装置であって、
使用時において、
試験部材と、
上記試験部材を固定するための補強部材とを有し、
上記試験部材は、
上記パイプ内に封止を形成する第一の封止手段と、
上記フランジを封止する第二の封止手段と、
上記第一の封止手段、上記第二の封止手段、および上記パイプの内壁により囲まれる空間を加圧する手段とを備え、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記フランジに向かい合って設けられる錨板と、
上記錨板と上記第一の封止手段とが分離しないように、上記錨板と上記第一の封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備える溶接試験装置を提供する。
【0008】
他の側面では、本発明は、パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する方法であって、
第一の封止手段を上記パイプ内に固定する工程と、
第二の封止手段を上記フランジに固定する工程と、
上記溶接部を含み、かつ上記第一の封止手段と第二の封止手段と上記パイプの内壁とにより囲まれる封止空間を、上記パイプ内に形成する工程と、
上記パイプの外壁に摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記フランジに向かい合う固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記固定手段と上記第一の封止手段との相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記第一の封止手段に連結する工程と、
上記封止空間を試験流体により充填および加圧する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
他の側面では、本発明は、パイプ端部を分離する装置であって、
上記パイプ内に封止を形成する封止手段を備える分離部材と、
上記分離部材を固定するための補強部材とを有し、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記パイプ端部の反対側に位置する錨板と、
上記封止手段が上記パイプ内で軸方向に移動しないように、上記錨板と上記封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備える装置を提供する。
【0010】
他の側面では、本発明は、パイプ端部を分離する方法であって、
上記端部を残りのパイプ内部から分離するために、上記パイプ内に封止手段を固定する工程と、
上記パイプの外壁摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記パイプ端部の反対側に固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記封止手段がパイプ内で軸方向に移動しないように、上記固定手段を上記封止手段に連結する工程とを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の特徴は添付図面を参照した次の説明により明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、パイプ使用時の、一実施形態に係る試験装置の部分断面図である。
【図2】図2は、図1の2−2線に沿った端面図である。
【図3A】図3Aは、一実施形態に係る、図1の3−3線に沿った端面図である。
【図3B】図3Bは、他の実施形態に係る、図1の3−3線に沿った端面図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係る、図1に示す試験装置の部分断面図である。
【図5】図5は、他の実施形態に係る発明の試験装置の部分断面図である。
【図6】図6は、図5に示す試験装置の通気管および第一の封止装置の断面図である。
【図7】図7は、図6に示す封止装置の変形例の断面図である。
【図8】図8は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態に係る、図5に示す試験装置の部分断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係る分離装置の部分断面図である。
【図12】図12は、図11に示す装置の変形例の部分断面図である。
【図13】図13は、図1に示す装置の変形例の部分断面図である。
【図14A】図14Aは、図12に示す封止装置の概略断面図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに示す封止装置の変形例の概略断面図である。
【0013】
〔本発明の詳細な説明〕
本明細書中で、次の用語は以下に示す内容を意味する。
【0014】
「パイプ」:パイプまたはパイプ状の導管であって、長さに制限はなく、フランジを取り付けることのできるパイプまたはパイプ状の導管を意味するものと理解される。本発明は、フランジが溶接された金属製パイプを対象として用いられるが、PVCなどの他の材料からなるパイプについても同様に使用可能であることは明らかである。従って、「パイプ」とは、直線状または曲線状の導管および、容器口やT字型管などに設けられるポートといった、他の設備や装置をつなぐ管状連結部を備えるものを想定している。便宜上、本明細書の記載および添付の図面では、ある長さを持つ直線状のパイプが示されている。
【0015】
「環状」:この用語は、少なくとも一つの外径と少なくとも一つの内径とを有する物体を表現するのに用いられる。従って、「環状チューブ」は外径と内径とを有する中空管を意味する。「環状ディスク」は、外径と、内径を形成する中央部の開口とを有する物体を意味する。
【0016】
「軸方向」:この用語は、パイプまたは導管の長手方向の軸に沿った方向を意味するように用いられる。従って、「軸方向への力」または「軸方向への圧力」とは、導管の長手方向に平行な方向に加えられる力(膨張、圧縮のいずれも)を示している。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る発明の装置10は、パイプ14内に設置される第一の封止手段12と、フランジ18の外面に接するように設置される第二の封止手段16とを備える試験部材を有する。フランジ18は、本発明を用いた試験対象である溶接部17により接合されている。第一の封止手段12はパイプ14の内壁に接することによって封止を行う。第二の封止手段16はフランジ18の外面に接することによって封止を行う。また、上記装置は、試験部材を所望の位置に固定する補強部材20を有する。補強部材20は、円周クランプ22および錨板24を備えている。錨板は二つ以上のアンカーロッド26によってクランプ22に連結している。
【0018】
本発明で用いられる円周クランプ22の例が、同時係属中の国際出願WO2006/069446(開示内容全体を参照して本明細書中で援用される)に開示されている。図2に示すように、クランプ22は一般的にクラムシェル構造を持ち、二つ以上のセクション28a・28bから構成される(例えば、径の大きいパイプの場合、クランプの総重量が大きくなるため、さらに多くのセクションに分ける必要が生じることもある)。上記セクションは、締め付けフランジ30a・30bを備え、締め付けフランジ30a・30bは、それぞれボルト32を通すための開口を有している。セクション同士はナット34で留められ固定されており、ボルト32とナット34の数は限定されない。セクション28a・28bはそれぞれ、襟部34a・34bを備えており、襟部34a・34bは、通常はパイプ14の外側表面の周囲に嵌め込まれる。上記記載から明らかなように、襟部34a・34bを設置した後、ボルト32とナット33とを締め付けフランジ30a・30bの開口に挿入する。ナット33を締めつけることにより、襟部34a・34bがパイプ14の外側表面に押し付けられ、固い締結が可能となる。クランプ22とパイプ14間を目的とする度合で締めるために必要な回転力は、本明細書に関する当業者には明らかである。また、それぞれの上記セクションが向かい合うフランジを持った構成を示しているが、国際出願WO2006/069446に記載されているように、一対のフランジおよび付随するボルト32とナット33をヒンジに置き換えてもよいことは明らかである。
【0019】
本明細書中で使用される「円周クランプ」は、パイプの周囲を全て囲んでいるものに限定されない。例えば、図に示す通り、ボルト32を長くすることにより、様々な径のパイプに使用することができるクランプであってもよい。従って、「円周クランプ」とは、パイプの周囲の少なくとも一部に擦られるようにして嵌め込まれるクランプを意味している。
【0020】
また、便宜上、本明細書では、一つのクランプがパイプ14の外側表面に備えられているが、さらに補強をする必要がある場合、複数のクランプが用いられてもよいことは明らかである。さらに、クランプを締め付ける手段としてボルト32とナット33が用いられているが、上述の国際出願に記載されている通り、磁気や水圧などを用いた手段を使用してもよい。上記記載から明らかなように、クランプは、試験対象であるパイプ14の外壁に擦られるようにして嵌め込まれ、試験装置が移動(特に軸方向へ移動)するのを防ぐように補強することを目的とする。
【0021】
クランプセクション28a・28bは襟部34a・34bに略垂直な方向に延びるフランジ36a・36bをそれぞれ含む。これらのクランプセクション同士がパイプ14の周囲に適切な位置で連結されたとき、フランジ36a・36bが組み合わさって支持フランジ37が形成される。支持フランジ37は、通常、襟部から略垂直な方向に延び、かつパイプ14の長軸に直交する。支持フランジ37は、アンカーロッド26を通す後述の二つ以上の開口38を有している。
【0022】
また、クランプセクション28a・28bは、襟部34a・34bおよびフランジ36a・36bそれぞれの相対位置を保持し、かつフランジ36a・36bを支持するために、多数の支柱40が備えていることが好ましい。このような支柱の必要性やその数は、クランプ製造に用いる鋼鉄の規格やクランプの径など、様々な要素に依存することは明らかである。
【0023】
上述したように、補強部材は、円周クランプの反対側に錨板24を有している。図3Aおよび図3Bに示すように、錨板はディスク状(図3A)でもよいし、矩形板状(図3B)でもよい。錨板24は、アンカーロッド26を通す二つ以上の第一の開口42を有する。錨板に形成される開口42の数は、必要とされるアンカーロッドの数に依ることは明らかである。したがって、径の大きなパイプでは、二つ以上のロッドが必要となることがある。さらに、アンカーロッドが二つ使用される場合は錨板が矩形板状(図3B)であってよいが、アンカーロッドが三つ以上使用される場合には錨板はディスク状(図3A)である必要がある。また、ディスク状の錨板が矩形板状の錨板よりも重量が大きいことは明らかである。
【0024】
錨板24には、試験部材の通気管(後述)を通すための通気口44がほぼ中心に形成されている。さらに、錨板24には、試験部に備わるタイロッド(後述)を通すための支持開口46が一つ以上形成されていてもよい。
【0025】
図1に示すように、クランプ22と錨板24は、アンカーロッド26の両端がそれぞれの開口を通るように配置されている。さらに、図1に示すように、アンカーロッドを取り付けられるように、クランプ22の支持フランジ37と錨板24とはフランジ18の直径よりも大きいことが好ましい。
【0026】
図1に示すように、試験部材は第一の封止手段12を有する。第一の封止手段12は、パイプ14の内部に収まる封止板48を有し、封止板48の直径はパイプ14の内径よりも小さい。封止板には円周周囲に間隔をおいて複数のボルト50が備えられている。ボルト50は、溶接またはナット(図示せず)によって恒久的に封止板48に固定されていてもよい。ボルト50の板48への固定は当業者に既知の如何なる方法によってなされてもよいことは明らかである。また、第一の封止手段12は、環状リング52および環状軸受板54を有する。Oリングなどの弾性封止体56・58が、封止板48と環状リング52の間、および環状リングと軸受板54の間にそれぞれ備えられている。図に示されるように、ボルト50は、軸受板54に形成された開口(図示せず)を通り、ナット60によって固定される。
【0027】
図から明らかなように、第一の封止手段12の各部品が目的の位置に設置されているとき、ナット60を締めると、封止板と軸受板54とが互いに接近する。この動きにより、弾性封止体56・58が変形する。この変形はパイプの半径方向外側に向かって起こり、封止体がパイプ14の内壁に押し付けられる。このようにして、二つの封止体は第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間に位置づけられる。パイプ14の内壁に隣接する環状リング52の外縁は、封止体の半径方向外側に向かう変形を起こりやすくために、内側に向かって傾斜していることが好ましい。しかし、他の様々な方法によってもこのような方向の変形を起こすができる。例えば、封止体が半径方向内側へ変形するのを防ぐためにリングに突起を備え、変形が必ず外側へ向かって起こるようにしてもよい。また、本明細書ではボルト50およびナット60を備える実施形態が記載されているが、封止板と軸受板を接近させるのにあらゆる軸受方法を用いることができる。例えば、ナットやボルトを用いた機械的方法ではなく、水圧を用いた手段による方法でもよい。この場合、ボルトは水圧シリンダーに置き換えられる。当業者にとって他の各種加圧方法も使用可能であることは明らかである。
【0028】
さらに、本発明の封止板48は、封止板48上に設けられる中央開口64から延びる通気管62を備える。通気管62は、封止板48に溶接あるいはボルトで固定されているか、他の手段によって封止板48に連結されていてもよい。通気管62は、試験部の両側同士をつなぐ通路となり、パイプ内に存在する煙やガスを排出する働きをする。通気管は一つのみ設置されていることが好ましいが、必要に応じて複数設置されていてもよい。
【0029】
一実施形態として、封止板48には、通気管62と同方向に延びる一つ以上のタイロッド63が備えられていてもよい。タイロッドは通常、通気管62と同様に様々な方法により封止板48に締め付けられて固定されている。一実施形態では、封止板に溶接されていてもよい。
【0030】
試験部材は、第一の封止手段12の反対側に、第二の封止手段16を有している。第二の封止手段16は略ディスク形状の閉止フランジ66を有し、閉止フランジ66は、通常フランジに形成されているボルト孔により、フランジ18の外面に固定されている。便宜上、閉止フランジをフランジ18に固定するボルトおよびナットは図示されていないが、ボルトおよびナットは当業者には明らかである。また、図示されていないが、閉止フランジ66とフランジ18を封止する封止体も周知である。通常このような封止体は、閉止フランジ66とフランジ18の対向する面同士の間に設けられるガスケット等を備えている。
【0031】
通気管62とタイロッド63は、閉止フランジ66に形成された開口を通って延びている。このような開口は、Oリングなどの弾性封止部材やパッキング押さえなどを用いた手段で封止される。図1に示す実施形態では、軸封板と共に、Oリングが通気管62およびタイロッド63の円周を囲むように設置されている。ここでは、通気管62に関していえば、Oリングは部材68として、軸封板は部材70として示される。開口の封止には、閉止フランジ66の外面に連結し外側に向かって(フランジ18から離れる方向へ)延びる二つ以上のボルト71が用いられる。続いて、通気管62およびボルト71を通す開口を持つ軸封板70が設置される。その後、ボルト71に対してナット72が取り付けられ、十分に締めることで必要な封止がなされる。上述のように、タイロッド63を有する場合は、タイロッド63それぞれに対しても同様の封止手段が用いられる。他の実施形態として、通気管62(あるいはタイロッド63)の外壁にネジ山を設けることによりボルト71を省略してもよい。この場合、軸封板70は、通気管62の外壁に設けられたネジ山に嵌め込むことのできるナットによって閉止フランジに固定されていてもよい。通気管62およびタイロッド63を通す閉止フランジの開口が他の様々な方法によっても封止可能であることは当業者に明らかである。さらに、図1には個別の軸封板70が示されているが、さらに他の実施形態として、通気管62およびタイロッド63を通す開口が形成された単一の軸封板を用いてもよい。また、軸封板70あるいは単一軸封板は、ディスク状や矩形状など、如何なる形状を有していてもよい。
【0032】
閉止フランジ66は、さらに、少なくとも一つの注入口74と少なくとも一つの排出口76を有する。注入口74と通気口76はそれぞれ、閉止フランジ66を通る通路を有している。これらの通路を介して、加圧流体が第一の封止手段12、閉止フランジ、およびパイプ14の内壁により囲まれる試験空間78へと注入および排出される。注入口74は、加圧流体の供給源(図示せず)に連結している。排出口76は、注入操作が開始されると、試験空間78内の空気を排出する働きをする。空気の排出が完了すると、排出口76は閉じられ、後述するように、試験空間78への加圧が可能となる。注入口および排出口の形態は、閉止フランジ66の大きさによって様々である。
【0033】
図1に示すように、通気管62とタイロッド63の外端部にはネジ山が形成されており、ナット80が嵌め込まれる。ナット80は、後述するように、通気管62およびタイロッド63を錨板に固定する役割を持つ。
【0034】
また、後述するように、アンカーロッド26の両端では、ナット82が嵌め込まれるように、外壁にネジ山が形成されていてもよい。
【0035】
本発明に係る方法について、図1の装置を参照して説明する。一実施形態において、この方法の最初の段階で、封止部材が設置される。この工程において、最初に第一の封止手段12が、試験対象の溶接部を含むパイプ14へ挿入される。この溶接部は、フランジ18と連結している。このとき第一の封止手段12は、溶接部が第一の封止手段12とフランジ18の間に位置するように、溶接部よりも奥側に挿入される。第一の封止手段12の挿入前に、封止板48、リング52、軸受板54、封止体56・58、およびナット60が締められていない状態で組み立てられ、それらがともにパイプ14へと挿入されてもよい。目的の位置に設置後、ナット60を締め、パイプ14の内壁との間を封止する。また、上述の部材を別々にパイプ14に挿入し、パイプ内で連結してもよい。
【0036】
第一の封止手段12がパイプ内壁との封止を形成する適切な位置に固定された後、第二の封止手段16が設置される。この工程において、まず第二の封止手段の閉止フランジ66がフランジ18の外面へ固定される。上述したように、フランジ18と閉止フランジ66との間には、両者間を封止するために、ガスケットや他の封止手段が用いられる。また、上述したように、閉止フランジ66には複数のボルト孔が形成されており、ボルト孔は、通常フランジ18に設けられるボルト孔に相当する。したがって、閉止フランジ66を実装するときは、フランジボルトや通気管62、タイロッド63がそれぞれの開口を通るように配置する。閉止フランジ66を適切な位置に設置した後、ナットを取り付けて締めることによって、閉止フランジ66をフランジ18の外面に固定する。次に、一つ以上の封止体68および軸封板70を、通気管62、および設置されている場合はタイロッド63に、それぞれ設置する。その後、必要なナット72を取り付けて締めることで、通気管62およびタイロッド63を通すために閉止フランジに形成された開口を封止する。これにより、封止部材の設置は完了し、溶接部17に対する圧力試験を開始することができる。しかしながら、本発明では、圧力試験前に補強部20も設置する。
【0037】
補強部材20の設置においては、まず円周クランプ22がパイプ14の外壁に設けられる。上述したように、クランプ22は通常二つのセクションに分けられパイプ14の周囲に設置される。また、クランプ22はパイプ上で第一の試験手段よりもさらに奥側に位置することが好ましい。クランプ22が適切な位置に設置された後、ナット33を締め、パイプ14の外側表面と摩擦するようぴったりと嵌める。本出願と同時係属中の国際出願WO2006/069446に記載されるように、このタイプの円周クランプは、軸方向の力に対して高い支持力を発揮する。
【0038】
クランプ22がパイプ14の外側表面に固定された後、クランプの支持フランジ37に形成された開口にアンカーロッド26を挿入する。次に、通気管62、タイロッド63、およびアンカーロッド26がそれぞれ錨板24に形成された開口を通るように、錨板24を設置する。錨板を設置した後、通気管62およびタイロッド63上にナット80を固定する。ナット80を締める必要はない。その後、アンカーロッド26に取り付けられたナット82の位置を調整して、錨板24を固定する。
【0039】
この段階で、加圧流体が閉止フランジ66に設けられた注入口74を介して試験空間78へと注入される。上述のように、注入工程では、排出口76が試験空間78内の空気を排出する働きをする。空気排出が完了すると、排出口は閉じられ、試験空間内の圧力が目的とする圧力になるまで注入工程が継続する。注入完了後、圧力の測定を行う。このとき、圧力低下が溶接部17の不完全性を意味している。
【0040】
当業者には明らかなように、上記記載から本発明の様々な特徴が明らかである。まず、試験空間78に対する圧力試験は、溶接部17に圧縮力を加えることなく行われる。これにより、正確な試験が可能である。さらに、第一の試験手段12は、錨板24および円周パイプクランプ22を有する補強部材に接続されていることにより、軸方向に移動することがない。これにより、試験装置がパイプ14から “噴出”する危険性のない状態で試験を行うことができる。
【0041】
さらなる特徴として、第一の封止手段12の封止体56・58が試験空間78内で加圧流体にさらされている点が挙げられる。これにより、試験空間78内の流体圧力がこれらの封止体に半径方向外側に向かう方向で加わり、第一の封止手段12とパイプ14の内壁と間の封止力がさらに強固となる。
【0042】
本発明装置の他の実施形態を図4に示す。図4中で、図1の装置と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図4に示す実施形態では、第一の封止手段の変形例が示されている。ここでは、リング52および弾性封止部材56・58の代わりに、環状の可膨張ブラダー90が設けられる。図に示すように、ブラダー90は、パイプ14の内壁に当接しており、ボルト50および軸受板54によって支持されている。明らかなように、本実施形態では、ナット60を締めて封止がなされることにより、ブラダー90が設置される。さらに、加圧流体(空気、水、作動流体など)がブラダー注入口92を介してブラダーに注入される。このとき、空気の代わりに、水、作動流体、または他の同様の媒体が使用される場合は、注入工程で空気の排出を行う排出口94もブラダーに設けられている。
【0043】
図5に、特に径の小さいパイプの試験に適する、本発明のさらに他の実施形態を示す。図5中で、図1中と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図5に示す実施形態において、補強部材20は上述とほぼ同様の構造を持ち、アンカーロッド26で連結されている円周クランプ22と錨板24とを含んでいる。しかしながら、パイプ14の直径が小さいため、上述のタイロッドが不要となり、錨板はナット80によって通気管62に固定されている。
【0044】
図5に示す第一の封止手段は、図1に示すものと以下の点でも異なっている。具体的には、図5の第一の封止手段では、パイプ14の直径が小さいため、軸受板54の代わりに略環状の軸受ディスク100が設置されている。ディスク100の略中央には、通気管62を通す開口が形成されている。通気管62は、少なくともディスク100に近接する箇所の外側表面にネジ山が形成されており、ナット102が嵌め込まれるようになっている。ナット102を締めることにより、ディスク100が封止板48に向かって押され、弾性封止部材104が変形する。封止形成を促すため、図6に示すように、ディスク100の弾性部材に接する外縁は傾斜を有していてもよい。これにより、弾性部材が半径方向外側に向かって移動しパイプ14の内壁に接する。封止部材104は、Oリングなどからなってもよい。
【0045】
図7が示すように、他の実施形態として、図5に示す装置は二重に封止がなされていてもよい。図7では、封止板48と軸受ディスク100との間に環状体106が設けられている。環状体は、弾性封止部材104(Oリングなど)により、封止板48および軸受ディスク100から隔離されている。ナット102が通気管62上で奥側に進むと、軸受ディスクにより封止部は圧縮され、封止部材104が半径方向外側に向かって試験対象のパイプの内壁に接するように変形する。この二重封止を形成する方法は、単一のナット(102)が使用される以外は、図1の装置と同様であることは明らかである。
【0046】
図8は、図5に示す装置のさらに他の実施形態を示す。図8中で、図5と同一の部材には図5中と同一の部材番号を付す。この実施形態では、弾性封止部材が楔形部材108からなる。この場合、軸受ディスク110の弾性部材に隣接する外縁が傾斜している。図に示されるように、軸受ディスク110の傾斜は、弾性部材の楔形状とは反対方向に向いている。従って、当業者には明らかなように、ナット102が奥側へ進むと、軸受ディスク110により弾性部材108が外側に向かって押され、パイプ14の内壁との間を封止する。
【0047】
図9は、図5に示す装置の他の変形例を示す。図9中で、図5と同一の部材には図5中と同一の部材番号を付す。この実施形態では、図5の軸受ディスク100の代わりに、通気管62の同軸上に延びるスリーブ112が設置されている。スリーブ112は、奥側の端部に、弾性封止部材104を押圧する軸受ディスク部114を有する。スリーブの手前側端部(外側に延びた端部)は錨板24の開口を通っている。図9から分かるように、ナット80を締めると、スリーブは奥側へと進み、軸受ディスク部114が弾性部材104を押圧する。その結果、弾性部材104は変形し、半径方向外側へ拡がるので、パイプ14の内壁との間を封止する。上述のように、軸受ディスク部114の封止部材に接する外縁は、弾性部材の半径方向の拡張を確実にするために傾斜を有していてもよい。図9の実施形態では、パイプ内壁間の二重封止のために、図7に示すような環状体106およびさらなる弾性部材が設置されていてもよいことは明らかである。
【0048】
図10は、本発明のさらなる実施形態として、図9に示す実施形態の変形例を示す。図10では、封止部材は通気管62の同軸上に設置されたスリーブ112を有するが、軸受ディスク部が省略され、その代わりにスリーブ112が広径部116を有している。図から分かるように、広径部116は試験空間78の容量の大部分を占めるため、試験に必要な加圧流体の量を減らすことができる。広径部116の奥側端部は、弾性封止部材104に当接し、上述のように弾性部材104とパイプ14の内壁と間の封止を促すため、傾斜を有していてもよい。図9に示す実施形態と同様に、通気管62に備えられたナット80を締めることにより、スリーブ112が弾性部材104に向かって押し込められる。図10の実施形態では単一の弾性部材が使用されているが、上述の二重封止が行われてもよいことは明らかである。
【0049】
以上では、主に、フランジ18とパイプ14の端部を連結する溶接部17の試験装置の使用について述べた。しかしながら、本装置は、フランジ18をパイプ14に安全に溶接するための装置としても利用することもできる。この実施形態を図11に示す。図11中で、上述の図面と同様の部材には上述図面中と同様の部材番号を付す。図に示されるように、アンカーロッド26によって連結したクランプ22と錨板24とを含む補強部材20は、基本的には上述のものと同様である。しかしながら、アンカーロッド26に嵌め込まれるナット82は、錨板24上の支持フランジ37の反対側に設けられる。このような配置により、アンカーロッド26に圧縮負荷が加わり、錨板が円周クランプ22の支持フランジ37に向かって押し込まれる。この配置は、上述した溶接部試験方法に関する実施形態とは反対の配置であり、その目的を以下に示す。
【0050】
図11には、第一の封止手段12のみが備えられた実施形態が示されている。後述するように、第二の封止手段を備える必要はない。具体的には、図11に示される装置は、フランジ18とパイプ14端部との溶接のため、パイプ14の端部をそれより奥側の部分から分離することを目的としている。このために、第一の封止手段12をパイプに挿入し、上述の方法でパイプ内壁に密着させる。つまり、第一の封止手段12は、パイプ端部より奥側に位置するように挿入される。その後、ナット60を締め、パイプ14の内壁との間を封止する。パイプ内に設置された第一の封止手段12は、パイプ14内のあらゆるガス等を遮断する働きをする。通気管62は、以下に示す溶接工程が妨げられることのないようにこれらのガスを排出する。
【0051】
第一の封止手段12が設置された後、上述と同様の方法で補強部材が設置されてもよい。具体的には、円周クランプ22がパイプ14の外側表面に設置される。クランプ22は、第一の封止手段12からある程度奥側に位置することが好ましい。クランプ22がパイプ14に固定された後、アンカーロッド26および錨板24が上述のように設置される。具体的には、アンカーロッドはクランプ22の支持フランジ27に形成された開口を通るよう設置され、錨板上の開口をアンカーロッド26、通気管62、および設置する場合はタイロッド63が通るように錨板が配置される。その後、第一の封止手段12と錨板24との間、および錨板24とクランプ22との間の相対的な移動を防ぐためにナット80・82を締める。補強部材は、第一の封止手段奥側でガスが蓄積し、通気管62により圧力上昇を防ぐことができなくなったときに、第一の封止手段12が押し出されるのを防ぐことを目的としている。錨板に取り付けられた通気管62および/またはタイロッド63は、共に第一の封止手段が外側へ向かって移動するのを防ぐ。これは、クランプ22に固定された錨板24を備えることによって可能となる。
【0052】
第一の封止手段12および補強部材20を設置した後、フランジ18が溶接によってパイプ14に取り付けられる。溶接トーチ120が概略的に図11に示されている。
【0053】
一実施形態として、図11に示す装置では、通気管62およびタイロッド63上で錨板24の対面に、第二のナット81が設けられることが好ましい。すなわち、第二のナット81は、上記のナット80とは反対側に設けられる。対向するナット同士が装置の軸方向両側へ働く力を吸収することは明らかである。
【0054】
図12は、図11に示す装置の変形例を示す。図12において、補強部材は、円周クランプ22、アンカーロッド26、およびそれに取り付けられるナット82を備え、錨板24は上述の装置と同様である。なお、クランプはパイプ14の外壁とより広い面積で接している。広面積での接触は、装置の移動に対してより大きな摩擦抵抗をもたらし、締め付け力が増加することは明らかである。クランプ22やその関連部材の大きさは特に限定されない。また、図12には、前出の図面において部材37に相当する支持フランジの変形例が示される。図12において、支持フランジは、ボルト127およびその付属ナットによりクランプ22へ固定される環状板125を有している。使用時において、環状板125は前出の図面で示される支持板37と同様に作用する。
【0055】
第一の封止手段12は、上述のように備えられる。しかしながら、図12において、第一の封止手段12は、流体を通す注入口132および排出口134に接続している環状リング130を有している。注入口132および排出口134は、環状リング130から延設しており、環状リング130は、その外壁がパイプ13の内壁に向いている(リング130がパイプ14内で適切な位置に設置されているとき)。第一の封止手段の構成は、本件出願人の先行米国特許第6131441号および第5844127号に開示された分離/試験装置と基本的に同様である。使用時において、第一の封止手段12は上述のように設置される。すなわち、各種部材はパイプ14の内側または外側で組み立てられ、ナット60を締めることにより、弾性封止部材56・58がパイプ14の内壁に当接する。上述のとおり、これによって第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間に二重封止がなされる。この時点で注入口132から加圧流体を注入し、弾性部材56・58、環状リング130の外壁、およびパイプ14の内壁により囲まれる空間を充填する。排出口134は空間内の空気を排出する働きをする。空気排出の完了後は排出口134を閉じ、空間内を充填して加圧された状態にする。このとき、第一の封止手段12とパイプ14の内壁との間には、加圧された空間による第三の封止が形成される。この三段階の封止により、ガス等が第一の封止手段12を通過するのを効果的に防ぐことができる。
【0056】
さらに、第一の封止手段が補強部材に固定されていることにより、第一の封止手段の軸方向への移動を防ぐことができる。
【0057】
図12は、第一の封止手段が錨板を付勢する構成の変形例を示す。上述の実施形態では、補強部材の錨板は通気管および/またはタイロッドに固定されていたが、図12に示す実施形態では、錨板に一つ以上の伸展アームが備わっている。図12には、2本の補強アーム140・142が示されており、各アームは、錨板24に取り付けられるか一体化し、かつ錨板24に略直交する方向に延びている。アーム140・142は、パイプ14の内部に向かって延びている。アーム140・142は、第一の封止手段12の封止板48を付勢する軸受板144まで延びている。使用時、アーム140・142は上述の通気管および/またはタイロッドと同様に機能する。
【0058】
他の実施形態として、アーム140および/または142は単一チューブ状でもよい。この場合、軸受板144が好ましくは環状板であることは明らかである。また、アーム140および/または142の他の様々な様態については当業者に明らかである。
【0059】
図13は、図1の装置の変形例である他の実施形態を示す。図13中で、図1の装置と同一の部材には図1中と同一の部材番号を付す。図13に示す実施形態においては、図1中で部材66として示される閉止フランジの代わりに、その変形である部材66aが設けられている。この場合、図から分かるように、閉止フランジ66aはパイプ14の内部に挿入されている。閉止フランジ66aの内面(すなわち、フランジ18に対向しない面)は環状リング52に隣接するよう構成され、図1中の軸受板54と同様に、弾性封止体56・58を圧縮・変形させる。封止体56・58は、基本的には図1に示した装置中と同様に機能する。
【0060】
タイロッド63および通気ロッド62に取り付けられるナット81によてスリーブ148に圧縮負荷をかけ、その負荷が伝達されることによって、閉止フランジ66は封止体56・58に向かって移動する。図13に示すように、スリーブ148は、タイロッド63および通気ロッド62のそれぞれ同軸上に備えられ、スライド可能に構成されている。それぞれのスリーブの、一方の端部が軸封板70に接し、他方の端部がナット81に接している。スリーブ148とナット81との間にはワッシャー150等が備えられることが好ましい。当業者には明らかなように、ナット81を締めると、スリーブ148が軸方向に封止板70に向かって移動する。これにより、封止板70が閉止フランジ66aを押圧し、弾性封止体56・58が変形する。
【0061】
また、図13から分かるように、排出口74aおよび注入口76aは、図1中のものと同様であるが、ここでは閉止フランジ66aを通る単一孔を含んでもよい。
【0062】
図13に示す装置の操作は図1に示すものと同様であるが、最初に封止体56・58とパイプ内壁との間の周囲の封止のためにナット81が締められている(上述の方法による)点が唯一異なっている。
【0063】
図12に関して上述したように、本発明の一実施形態では、三段階封止を用いることができる。三段階封止では、弾性部材または封止体(Oリング等)による二段階の封止とともに、これらの封止体間に位置する加圧空間を利用する。図14Aにこのような封止構成を概略的に示す。図に示されるように、二つの封止体56・56がナット60を締めることにより変形し、軸受板54が環状リング130を押圧する。その後、パイプ14、環状リング130、および封止体56・58により囲まれる空間152が、引き込み口132・134を介して加圧される。
【0064】
図14Aに示す構成の変形例として、図14Bは、同様の三段階の封止手段を有し、さらに弾性部材154が環状リング130の凹部156に備えられた構成を示す。凹部156は、環状リング130の封止板48に対向する面に形成されている。ナット60を締めることによって環状リング130が移動すると、弾性部材154が封止板48に向かって押圧され、弾性部材154と封止板48との間が封止される。環状リング130はさらに一つ以上の引き込み口158を備え、引き込み口158は、環状リング130、封止板48、および封止体56・154に囲まれる環状空間160と空間152とをつなぐ通路として機能する。使用時は、封止体56・58・154によって封止をした後に、上述のように空間152が加圧される。この工程で、通路158により、環状空間160からなる第四の加圧空間が形成される。このようにして、図14Bに示す実施形態では四段階の封止が実現される。一形態として、本発明は、図14Bに示すようにそれ自体がパイプ内部封止部材を形成するような封止装置を実現する。このような封止部材は、上述の補強装置の有無に関わらず利用可能である。
【0065】
本発明は、上述の具体的な実施形態に限定されず、本発明の精神と次に記載する請求項の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。引用された先行技術は全体を参照することにより本明細書中で援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する溶接試験装置であって、
使用時において、
試験部材と、
上記試験部材を固定するための補強部材とを有し、
上記試験部材は、
上記パイプ内に封止を形成する第一の封止手段と、
上記フランジを封止する第二の封止手段と、
上記第一の封止手段、上記第二の封止手段、および上記パイプの内壁により囲まれる空間を加圧する手段とを備え、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記フランジに向かい合って設けられる錨板と、
上記錨板と上記第一の封止手段とが分離しないように、上記錨板と上記第一の封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備えることを特徴とする溶接試験装置。
【請求項2】
上記試験部材は、当該試験部材の内部を通って延びる通気口を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶接試験装置。
【請求項3】
パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する方法であって、
第一の封止手段を上記パイプ内に固定する工程と、
第二の封止手段を上記フランジに固定する工程と、
上記溶接部を含み、かつ上記第一の封止手段と第二の封止手段と上記パイプの内壁とにより囲まれる封止空間を、上記パイプ内に形成する工程と、
上記パイプの外壁に摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記フランジに向かい合う固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記固定手段と上記第一の封止手段との相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記第一の封止手段に連結する工程と、
上記封止空間を試験流体により充填および加圧する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
パイプ端部を分離する装置であって、
上記パイプ内に封止を形成する封止手段を備える分離部材と、
上記分離部材を固定するための補強部材とを有し、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記パイプ端部の反対側に位置する錨板と、
上記封止手段が上記パイプ内で軸方向に移動しないように、上記錨板と上記封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
パイプ端部を分離する方法であって、
上記端部を残りのパイプ内部から分離するために、上記パイプ内に封止手段を固定する工程と、
上記パイプの外壁摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記パイプ端部の反対側に固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記封止手段がパイプ内で軸方向に移動しないように、上記固定手段を上記封止手段に連結する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する溶接試験装置であって、
使用時において、
試験部材と、
上記試験部材を固定するための補強部材とを有し、
上記試験部材は、
上記パイプ内に封止を形成する第一の封止手段と、
上記フランジを封止する第二の封止手段と、
上記第一の封止手段、上記第二の封止手段、および上記パイプの内壁により囲まれる空間を加圧する手段とを備え、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記フランジに向かい合って設けられる錨板と、
上記錨板と上記第一の封止手段とが分離しないように、上記錨板と上記第一の封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備えることを特徴とする溶接試験装置。
【請求項2】
上記試験部材は、当該試験部材の内部を通って延びる通気口を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶接試験装置。
【請求項3】
パイプ端部にフランジを連結する溶接部の完全性を試験する方法であって、
第一の封止手段を上記パイプ内に固定する工程と、
第二の封止手段を上記フランジに固定する工程と、
上記溶接部を含み、かつ上記第一の封止手段と第二の封止手段と上記パイプの内壁とにより囲まれる封止空間を、上記パイプ内に形成する工程と、
上記パイプの外壁に摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記フランジに向かい合う固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記固定手段と上記第一の封止手段との相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記第一の封止手段に連結する工程と、
上記封止空間を試験流体により充填および加圧する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
パイプ端部を分離する装置であって、
上記パイプ内に封止を形成する封止手段を備える分離部材と、
上記分離部材を固定するための補強部材とを有し、
上記補強部材は、
上記パイプの外壁に固定されたクランプと、
上記クランプと間隔をあけて上記パイプ端部の反対側に位置する錨板と、
上記封止手段が上記パイプ内で軸方向に移動しないように、上記錨板と上記封止手段とを連結する第一の固定手段と、
上記錨板と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記錨板と上記クランプとを連結する第二の固定手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
パイプ端部を分離する方法であって、
上記端部を残りのパイプ内部から分離するために、上記パイプ内に封止手段を固定する工程と、
上記パイプの外壁摩擦的に取り付けられるクランプを設置する工程と、
上記パイプ端部の反対側に固定手段を設置する工程と、
上記固定手段と上記クランプとの相対位置が変化しないように、上記固定手段を上記クランプに連結する工程と、
上記封止手段がパイプ内で軸方向に移動しないように、上記固定手段を上記封止手段に連結する工程とを含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【公表番号】特表2010−500534(P2010−500534A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523117(P2009−523117)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001379
【国際公開番号】WO2008/017152
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508365300)カー−バー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】CAR−BER INVESTMENTS INC.
【住所又は居所原語表記】911 Michigan Avenue,Point Edward,ON N7V 1H2,Canada
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001379
【国際公開番号】WO2008/017152
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508365300)カー−バー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】CAR−BER INVESTMENTS INC.
【住所又は居所原語表記】911 Michigan Avenue,Point Edward,ON N7V 1H2,Canada
【Fターム(参考)】
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