説明

軽量難燃板

【課題】 軽量性および通気性を有する板状構造体からなる、優れた難燃性と断熱性を合わせ持つ難燃板を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂が実質的に一体となってなる密度0.05〜0.7g/cmの難燃板であって、前記難燃板の内部には、前記難燃板の面方向に長い扁平形状をなす多数の空隙が均一に分布しており、該空隙は前記難燃板内部の任意の位置で厚さ方向に沿って1cmあたり50〜700個分布しており、かつ前記難燃板の両方の主面に連通しており、前記空隙の少なくとも一部は内部に難燃剤を分散していることでなる難燃剤分散層を形成しており、前記難燃剤分散層が前記難燃板の少なくとも一方の主面を含むことを特徴とする難燃板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量性および、可曉性を有する丈夫で均一な板状構造体からなる、優れた難燃性と断熱性を合わせ持つ難燃板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
難燃性を持つ板材は、屋根材、天井材、壁材、床材、扉、階段、パーティションなど多くの用途に使用されている。難燃性を持つ板材としては不燃性、耐火性、断熱性などに優れるコンクリート板などの無機質板材が知られている。しかし、該無機質板材は一般に比重が高く、可撓性にも欠ける為、施工性が著しく悪い等の問題を抱えている。
一方で、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂からなる板材も使用されている。これらは比重が低く、可曉性にも優れているが、難燃性が低い。
そこで、合成樹脂に難燃剤を混合して成形後発泡させることで難燃性を向上させる方法が知られている。しかし、難燃剤の影響により、均一な発泡構造を得ることが困難であり、結果として板材の強度や難燃性にムラが生じやすいという問題があった。
また、金属板、発泡体形成層、合成樹脂発泡層、裏面材をこの順に配置した複合材料が知られている(特許文献1参照)。これは火災等の炎により、表面の金属板が加熱されると、内部の合成樹脂発泡体が減容し、更に加えられた熱により樹脂発泡層と金属板との間にある発泡体形成層が発泡し、断熱層を形成することで優れた防火性を発現するものである。しかしながら、このような構造とした場合、加熱による前記合成樹脂発泡体芯材の減容をコントロールすることが難しく、均一な発泡断熱層を形成できない場合があり、強度や難燃性にムラが生じやすい。また、樹脂発泡層自体が難燃性を有さず、加熱によって減容するため、板材の強度が著しく低下し、建材などに用いると倒壊しやすいなどの問題がある。
また、合成樹脂、天然繊維等を絡合して得られる不織布にシロキサンおよびシラノール塩多分子量溶液を含浸させ、これを300℃以上に加熱することで発泡ガラス化層を形成した発泡ガラス板がある(特許文献2参照。)。これは、加熱により繊維に付着しているシロキサンおよびシラノール塩多分子量溶液に重合反応を生じさせ、繊維形状の発泡ガラス層を形成させると共に、できたシート内に空隙を保持させることで優れた断熱性と引張弾性率を確保できるが、製造時における不織布の熱分解抑制が困難なばかりか、得られた板材はガラス繊維同士の溶融接合と交絡によって形状を保持しているため、外力によって形状が崩れやすく、また破損したガラス繊維が空気中に浮遊すると身体にも悪影響を及ぼす可能性も考えられる。
【特許文献1】特開2005−068958号公報
【特許文献2】特開2006−137916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、軽量で断熱性を有し、構造が均一で外部からの衝撃や荷重がかかることによる破壊や破損の生じにくく且つ可曉性を有する難燃板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載した本発明の難燃板は、熱可塑性樹脂が実質的に一体となってなる密度0.05〜0.7g/cmの難燃板である。前記難燃板の内部には前記難燃板の面方向に長い扁平形状をなす多数の空隙が均一に分布しており、該空隙は前記難燃板内部の任意の位置に厚さ方向に沿って1cmあたり50〜700個分布しており、且つ、前記難燃板の両方の主面に連通しており、前記空隙の少なくとも一部は内部に難燃剤を分散していることでなる難燃剤分散層を形成しており、該難燃剤分散層が前記難燃板の少なくとも一方の主面を含むことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載した本発明の難燃板は、請求項1に記載の難燃板であって、前記空隙の内壁を形成する前記熱可塑性樹脂が水酸基を有することを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載した本発明の難燃板は、請求項1、2のいずれかに記載の難燃板であって、前記熱可塑性樹脂の成分がエチレン−ビニルアルコール系共重合体を主体とすることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載した本発明の難燃板は、請求項1、2、3のいずれかに記載の難燃板であって、前記難燃剤が熱膨張型難燃剤であり、該熱膨張型難燃剤の熱膨張倍率は、10〜30倍であることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載した本発明の難燃板は、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の難燃板であって、難燃剤分散層の厚みが、3mm以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載した請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の難燃板であって、前記難燃剤分散層中の難燃剤の含有率が、10〜120質量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載した請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の難燃板であって、難燃板の厚みに対する、前記難燃剤分散層の厚みの割合が5〜100%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明は次の効果を奏する。難燃板を形成する熱可塑性樹脂は実質的に一体となっているので外力によって破壊や破損が生じにくい。また難燃板は熱可塑性樹脂からなり、金属や無機の板材に比べ、成形が容易で、可曉性に優れている。該難燃板は空隙を設けることで密度0.05〜0.7g/cmと軽量であるとともに、強度、通気性、吸音性および断熱性等のバランスに優れており、建材などの多くの用途に好適である。また該難燃板の内部には該難燃板の面方向に長い扁平形状の空隙が多数存在している。
該扁平形状は厚さ方向に沿って緻密な空隙層を設けるのに有利な構造であり、これによって薄くて断熱性が高く、難燃剤分散層にあっては難燃剤が厚さ方向に沿って緻密に分散することで高い難燃性を実現できる。すなわち、本発明の難燃板において難燃剤は、板内の空隙の間に挟まれるようにして保持されるため、該空隙が扁平形状であることにより、厚さ方向に難燃剤分散層を多数存在させる事が可能になるのである。例えば同じ容積の球状の空隙を設けた場合と比較して、各空隙の厚さ方向の寸法が小さくなるため、形成される難燃剤分散層の数が多くなるため、高い難燃性を確保できると共に、難燃板の強度も高くなるので好ましい。また例えば球状の空隙によって厚さ方向に沿って同じ数の難燃剤分散層を形成した場合と比較しても板の連通性が高く、通気性や、製造時の難燃剤導入時の生産性に有利である。また空隙が球状である場合に比べて、空隙の厚さ方向の広さに対する空隙の容積が大きくなり、更に空隙の数も少なくなるため、全ての空隙に十分な量の難燃剤を保持する事が容易になる。この結果、難燃性の高さや均一性、生産性などの観点で有利である。
該難燃板は、難燃剤を保持した面方向に長い扁平形状の多数の空隙が均一に分布した構造を形成していることから、力学強度や断熱性にムラがなく、更に空隙内に分散する難燃剤も均一になるので、難燃板の難燃性も面内で均一になり、結果として難燃性の低いところから燃焼するということが起こりにくいので難燃性が高い。本発明の難燃板の製造方法として難燃剤分散層を形成するために、空隙を有する熱可塑性樹脂の板を基板として、該基板に流動性の難燃剤または難燃剤の溶液、分散液などからなる処理液を含浸させる含浸法を用いることができるが、この場合には処理液の良好な浸透性が得られ、難燃剤分散層の厚さを容易に均一にできるという利点もある。
また該空隙が前記難燃板の厚さ方向に沿って1cmあたり50〜700個分布していることから、火災時等に火炎と対する側の主面の表面だけでなく、厚さ方向に沿って層状に微細な難燃剤分散層を形成することができるため、難燃効果が向上する。また該難燃板の両方の主面に連通していることで、適度な通気性を有し、且つ難燃板の製造において基板である熱可塑性樹脂の板に難燃剤を含浸させる方法によれば、連通した空隙によって難燃剤の含浸が速やかにできる為、生産性がよい。更に前記空隙の少なくとも一部は内部に難燃剤を分散していることでなる難燃剤分散層を形成しており、前記難燃剤分散層が前記難燃板の少なくとも一方の主面を含んでいることで、該難燃剤分散層が炎を防ぎ、且つ断熱効果をもたらす。
【0012】
請求項2に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記難燃板の空隙の内壁を形成する前記熱可塑性樹脂は水酸基を有した樹脂からなり、水になじみ易く、熱可塑性樹脂表面に水溶性の難燃剤を均一に保持できる。このため、該熱可塑性樹脂に全体的にムラのない難燃性を付与できるため、前記難燃板が、部分的に難燃性が異なるなどの影響がない。
【0013】
請求項3に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記熱可塑性樹脂の成分はエチレン−ビニルアルコール系共重合体を主体とする。該エチレン−ビニルアルコール系共重合体は疎水性のエチレン部と親水性のビニルアルコール部とからなる熱可塑性樹脂で、ビニルアルコールの水酸基がポリマー全体に均一に分布するため、樹脂表面部に均一に水溶液を保持することが可能である。また耐薬品性に優れており、酸、アルカリ薬品に対して高い耐久性を持つことから、幅広い用途における使用が可能である。更には吸水しても構成構成樹脂の膨潤による形態変化が起こり難いため難燃板の形状変形が起こりにくい。
【0014】
請求項4に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記難燃剤が熱膨張型難燃剤であって、該熱膨張型難燃剤の熱膨張倍率が膨張前の固形分の粒子径に対して10〜30倍である。加熱によって膨張した難燃剤が空隙を塞ぎ、酸素遮断の効果を生み、燃焼を抑制する。
【0015】
請求項5に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記難燃板の難燃剤分散層の厚みが3mm以上である場合、該難燃板は厚さ方向に沿って少なくとも15個の空隙内に難燃剤を分散しているので難燃効果が高い。
【0016】
請求項6に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記難燃剤分散層中の前記難燃剤の含有率が、10〜120質量%であり、この範囲にある場合、空隙に保持される難燃剤の量は適当であり、膨張した難燃剤が多数の空隙に保持され、難燃剤分散層を形成するのに適している。
【0017】
請求項6に記載の本発明は上記の効果に加えて次の効果を奏する。前記難燃板の厚みに対する、前記難燃剤分散層の厚みの割合が5〜100%であり、該難燃剤分散層がこの範囲にある場合、優れた難燃性と断熱性を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明における最良の形態を詳細に説明する。本発明の難燃板を形成する熱可塑性樹脂としては特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどの脂肪族ポリオレフィン樹脂、ポリスチレンなどの芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、熱可塑性エラストマー樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂などが挙げられる。
このうち熱可塑性ウレタン樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの水酸基を有する熱可塑性樹脂は水溶性の難燃剤を均一に分布できるという観点から好ましい。また脂肪族ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂やエチレン−ビニルアルコール系共重合体などは加熱によって発生する分解ガスの毒性が低いので好ましい。またエチレン−ビニルアルコール系共重合体などは比重が低いので軽量な難燃板を形成する上で好ましい。以上の観点から、特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体などが好ましい。更に該エチレン−ビニルアルコール系共重合体として、ポリビニルアルコールにエチレン単位が10〜60モル%共重合されたものが用いられる。特にエチレン単位が30〜50モル%共重合されたものが、樹脂の加工性を確保する上で好ましい。
空隙の内壁を形成する熱可塑性樹脂が水酸基を有していることで、樹脂と難燃剤の親和性が高くなる為、前記難燃板への衝撃等による難燃剤の脱落を抑制できる。しかし、水酸基が多すぎると難燃板の製造時や使用時の水分によって樹脂が膨潤して空隙が狭くなったり、連通構造が失われたりする場合があるので望ましくない。水酸基の割合は別の熱可塑性樹脂を併せて用いることで調節することもできるが、熱可塑性樹脂同士の充分な混練が重要となる。水酸基を有するモノマー単位と水酸基を有さないモノマー単位の共重合体のうち、共重合組成を調節し易いものを用いると混練の問題を回避しつつ比較的自由に水酸基の割合を調整できるので望ましい。たとえばエチレン−ビニルアルコール系共重合体などが好ましい。
また熱可塑性樹脂の水酸基を保護することでも水酸基の割合を調整できる。この場合好適な保護基としては特に制限はないが、製造時や使用時に分解しにくいものが望ましい。たとえばエステル系、エーテル系、アセタール系などの保護基を用いることができる。
複数の熱可塑性樹脂を用いてもよい。複数の熱可塑性樹脂を用いることで難燃板の機能性を高めることが可能である。たとえばポリエチレンテレフタレート樹脂のような比較的曲げ応力や引張強度、融点が高いなどの力学強度に優れた熱可塑性樹脂とエチレン−ビニルアルコール系共重合体のような親水性に優れた熱可塑性樹脂を併せて用いることで親水性と力学強度を両立する上で有利となる。空隙の内壁に水酸基を有することで水溶性の難燃剤の保持に有利となるが、一方で難燃板に用いる熱可塑性樹脂を、水酸基を有するもののみとすると難燃板が製造時や使用時の水分によって膨潤などによって変形や強度低下を起こし、一部の用途に不向きとなる場合がある。この場合、疎水性を有する熱可塑性樹脂を合わせて用いることで親水性を調節することで回避できる。また難燃板の骨格を疎水性の熱可塑性樹脂で構成し、表面に水酸基を有する熱可塑性樹脂で被覆することで、こういった問題が回避できる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂を実質的に一体として形成するための手段としては、熱可塑性樹脂の種々の成形方法を用いることができる。本発明で言う実質的に一体であるとは、熱可塑性樹脂が粘接着、溶融などによって高い強度で一体化している状態を言う。外力によって一体化構造が容易に剥離することなく、大きな外力による材料破壊によってのみ一体化状態が解消することが最も望ましい。
【0020】
内部に空隙を形成する手段としては、特に制限はないが、発泡剤を用いて樹脂を発泡させる方法、複数種の樹脂を混合して一方を除去する方法、レーザー加工を用いる方法、線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法などが挙げられる。複数種の樹脂を混合して一方を除去する方法としては、例えば溶解によって一方の樹脂を除去する方法、光反応性樹脂を混合後、光分解して除去する方法などが挙げられる。線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法としては、例えば繊維状の熱可塑性樹脂をバインダーや加熱などの手段で一体化する方法が挙げられる。また複数の一体化手段を組み合わせて用いることもできる。
このうち均一で板の両面に連通した空隙を形成するのに有利なのは、2種類の樹脂を混合して一方を除去する方法、レーザー加工を用いる方法、線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法である。更にこのうち、原料の無駄が少なく生産上有利なのは、レーザー加工を用いる方法、線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法である。更にこのうち、比較的簡素な生産設備で製造できることから線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法が有利である。またより微細で多数の空隙を形成する上では、線状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法が有利である。このうち特に細い繊維状の熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法が有利である。また得られたフィルム状またはシート状の熱可塑性樹脂を複数重ねて再度一体化することで嵩高い板を形成することもできる。
【0021】
繊維状の熱可塑性樹脂を内部まで均一な一体化構造を形成する上では、加熱によって熱可塑性樹脂を一体化することが好ましく、特に高い熱量を一気に与えることで空隙サイズを一定にする上で有利である。高い熱量を一気に与える方法としては熱湯などの媒体に浸す方法、蒸気による方法などが挙げられるが、内部へ高い熱を高い速度で伝達するためには加圧した蒸気による方法が好ましい。前記の複数のフィルム状またはシート状の熱可塑性樹脂を重ねて一体化することで嵩高い板を方法によれば、最初に薄い板を形成することで、内部への熱伝達の均一性を確保する上では更に有利となる。
【0022】
繊維状の熱可塑性樹脂を用いる場合、通常知られている種々の合成繊維を好適に用いることができる。すなわち通常の合成繊維が持つ柔軟性、弾性、通気性などが難燃板の耐衝撃性、軽量性、空隙形状、可曉性などに好適である。用いることのできる合成繊維の種類に特に制限はないが、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール系、もしくはこれらの複数を組み合わせてもよく、表面及び又は内部に別の樹脂を用いた複合繊維も好適に用いられる。
【0023】
疎水性の熱可塑性樹脂を骨格として水酸基を有する熱可塑性樹脂をその表面に被覆した構造とすることで難燃板の力学強度と空隙内部の親水性を両立することができるが、合成繊維を用いる場合、たとえばポリエステルやポリオレフィンなどの疎水性の樹脂を芯とし、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの水酸基を有する樹脂を鞘とする芯鞘構造型の複合繊維が知られており、こういった構造を形成するのに有利である。
また内部に空隙を設けた中空型の樹脂も知られており、難燃板を軽量化する上で有効である。
【0024】
熱可塑性樹脂に合成繊維を用いる場合、合成繊維の太さは空隙の数を制御する上での重要な要素となる。通常用いることのできる合成繊維の太さは0.5〜8dtexであり、更に望ましくは1〜7dtexであり、更に望ましくは1.5〜6dtexである。比較的細い極細繊維を用いることでより緻密な空隙を形成できる。
また熱可塑性樹脂に合成繊維を用いる場合、合成繊維の長さは空隙の形状や力学物性を制御する上で重要である。繊維長を長くすると空隙を面方向に長い扁平形状にする上で有利となり、空隙の扁平性は高くなる。また力学物性は向上する。繊維長は通常10〜100mmであり、更に好ましくは20〜80mm、更に好ましくは30〜60mmである。
【0025】
本発明の難燃板の密度は、0.05〜0.7g/cmである。0.05g/cm未満の場合、熱可塑性樹脂の空隙率を高めなければ実現困難なため、多くの用途で求められる強度が実現困難なばかりか、壁材などで求められる遮蔽性が低くなるので望ましくない。更に難燃板が親水性の熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂同士の相互作用が働かなくなるため、吸水による寸法変化を制御できない。また0.7g/cm以上では寸法変化の制御は十分に可能であるが、難燃板の重さが重くなるため望ましくない。用途に応じて求められる強度と軽量性のバランスから好適な密度は異なるが、多くの用途で0.1〜0.6g/cmであることが望ましく、0.3〜0.5g/cmであることが更に望ましい。床材、壁材などの高い強度が求められる用途では0.4〜0.7g/cmであることが望ましく、0.5〜0.6g/cmであることが最も望ましい。また天井材やドアなどの稼動を求められる建材、家具や雑貨用途などでは0.05〜0.5g/cmであることが望ましく、0.2〜0.4g/cmであることが更に望ましい。
【0026】
本発明の難燃板の空隙は面方向に長い扁平形状をなす。面方向とは少なくとも一方の主面のなす方向と平行な方向を指す。本発明の難燃板は通常2つの主面が平行であり、この場合、面方向はこれら主面と平行な方向である。また2つの主面が平行でない場合は、難燃剤分散層が含む主面を指す。また2つの主面が平行でなく、かつ、難燃剤分散層が両方の主面を含む場合は任意の一方の主面と平行な方向を面方向とするが、火災時等に主として火炎と対すると想定できる方の主面を面方向とすることが望ましい。火災時等にいずれの主面が主として火炎と対すると想定できない場合、両主面は略平行であることが望ましい。両主面が略平行とは、2つの主面のなす角度が30度以内であることを指し、望ましくは15度以内であることを指し、更に望ましくは5度以内であることを指す。なお、主面は微細な凹凸が形成されていたり、全体に湾曲しているなどしたりして、必ずしも完全な平面でない場合もあるが、主面のなす方向は面全体としてなしている通常1つの方向を意味しており主面上の一部のなす角度によって決まるものではなく、詳しくは前記凹凸等の傾きの平均によって決めることができる。また本発明の難燃板の厚さ方向は面方向と垂直な方向である。本発明の難燃板の内部に分布する空隙は面方向に平行な方向に長ければ面内の種々の方向にランダムに長くてもよい。この場合、主面から観察した場合に光の反射や透過の方向依存性がないので見た目の面内均一性に優れる。またこの空隙は、小さいものが難燃板の内部に均一に分散しているため難燃板全体としての強度が確保される。また面方向のうち更に1つの方向、例えば難燃板の主面が矩形である場合の該矩形の一辺と平行な方向に長い場合、空隙の持つ方向性を主面から観察できるようにすることもでき、意匠性に優れる。また空隙の扁平形状を延伸によって得る場合は一方に延伸するだけでよいので装置が簡略化できる。更に押出成形などの連続製造方法による場合は一方向への空隙の延伸を容易に実現できることから、生産性の高い連続生産方法に向いている。面内での空隙の方向性は任意の位置で互いにそろっていることが好ましい。空隙が不均一な場合、通気性が低下し、更に難燃剤を均一に保持できなくなるため、目的とする難燃板が得られない。
【0027】
前記扁平形状は厚さ方向に沿って緻密な空隙層を設けるのに有利な構造であり、これによって薄くて断熱性が高く、難燃剤分散層にあっては難燃剤が厚さ方向に沿って緻密に分散することで高い難燃性を実現できる。
【0028】
空隙の扁平形状は、難燃板内部の代表的な数点の断面を顕微鏡などで観察することでも確認できる。また、個々の空隙の形状を充分比較することが困難な場合は全体の平均として面方向に長いことをもって面方向に長いと考えてよい。このような比較を行なう場合は、厚さ方向に平行な断面の、断面内の空隙率の比較によっても観察できる。更に任意の点を含む厚さ方向に沿った空隙の1cmあたりの個数と、同じ点を含む面方向に沿った1方向に沿った空隙の1cmあたりの個数を比較することでも観察できる。面方向に沿った少なくとも1方向において、厚さ方向よりも長ければよい。特に厚さ方向に対して2倍以上長いことが望ましく、5倍以上長いことが更に望ましい。
【0029】
前記空隙の個数は次のようにして計測することができる。例えば厚さ方向に沿った空隙の数を計測する場合、難燃板の該厚さ方向に平行な任意の方向の断面において板の厚さ方向に平行に任意の仮想線分を引き、この線分上にある空隙の切断面を数える(図1参照)。厚さ方向全域に渡って数えてもよいが、例えば両方の主面付近、中心付近の3点など、代表的な3点以上を0.1cm以上に亘って数えて、1cmあたりの空隙の個数を算出してもよい。
【0030】
本発明の難燃板は厚さ方向に沿って1cmあたり50〜700個の空隙が分布していることから、炎の側の表面だけでなく、厚さ方向に沿って層状に微細な難燃剤分散層を形成することができため、難燃効果が向上する。これは難燃板が1cm以上の厚さを有することを意味するわけではなく、特に制限はない。多くの用途にあっては0.1cm以上であることが望ましい。これ以下では充分な数の厚さ方向への難燃剤分布層を形成できず、また難燃板の力学強度も充分ではない場合がある。特に0.3cm以上であることが望ましく、1cm以上であることが望ましく、3cm以上であることが更に望ましい。また多くの用途では軽量性の観点から20cm以下であることが望ましく、15cm以下であることが更に望ましく、10cm以下であることで軽量性を求められる用途では特に望ましい。
【0031】
本発明の難燃板は厚さ方向に沿って1cmあたり100〜500個の空隙が分布していることが更に好ましく、200〜400個の空隙が分布していることが更に好ましい。1cmあたりの空隙が50個以下だと厚さ方向に沿った層が少ないため断熱性や難燃剤分散層の難燃性が低下する。また700個以上では個々の空隙が狭くなるため難燃剤粒子の分散が困難となる場合がある。また、樹脂部の割合が極度に少なくなり、難燃剤の重量を支えきれずに、形状が変化するなどの力学強度が低下する場合もある。
【0032】
難燃板内部の空隙は厚さ方向に沿って直線状の列をなしている必要はなく、前記のとおり厚さ方向に沿って計測した場合に50〜700個分布していればよい。空隙同士は規則的に配列していてもランダムに分布していてもよい。更に各空隙の大きさや形はそれぞれ同じである必要はなく、ランダムであってもよい。
【0033】
本発明の難燃板は空隙が内部に均一に分布しているが、均一とは任意の方向における単位長さあたりの空隙数が位置によってほぼ等しいことを表す。代表的な任意の位置5点以上を0.1cm以上に渡って計測し、1cmあたりの空隙数の最小値と最大値との比が60%以上である必要があり、70%以上であることが望ましく、80%以上であることが更に望ましい。例えば長方形の表面を有する難燃板においては、各辺に平行な3方向(縦、横、高さ)に沿って均一性を確認できることが望ましい。
【0034】
難燃板は両方の主面に連通している。これは各空隙が閉塞しておらず、少なくとも1つの0.01mm以上の隙間を持って隣接する少なくとも1つの空隙と繋がっており、かつ両方の主面に繋がっていることを示す。是により、適度な通気性を有し、且つ難燃板の製造において。基板である熱可塑性樹脂の板に難燃剤を含浸させる方法によれば、連通した空隙によって難燃剤の含浸が速やかにできる為、生産性がよい。隙間の広さによって通気性や通液性が変化する。連通しているかどうかは通気性試験によって確認できる。この通気試験については、フラジール形法による通気度で0.1cm/cm/秒以上であることが好ましい。
【0035】
難燃板を構成する樹脂は可曉性を有している為、加えられた応力に対して湾曲・変形することによりその応力を吸収し、強い衝撃を加えられてもガラスのように簡単に破損、破断することがない。その為、本発明で使用している熱膨張型難燃剤が、該難燃板内部で膨張しても、空隙の内壁を形成する樹脂を破壊する事無く、形状を保つことが可能である。
【0036】
本発明の難燃板は空隙の少なくとも一部が内部に難燃剤を分散していることでなる難燃板の少なくとも一方の主面を含む難燃剤分散層を有している。難燃剤分散層は前記含んでいる主面と平行であることが望ましい。主面が難燃剤分散層を含んでいることで、火炎による基板の熱可塑性樹脂の燃焼を防ぐことができる。つまり、炎に対して有効であるのは、難燃剤分散層であり、難燃性の高さという観点からはさらに難燃剤分散層はより内部まで入り込んでいる事が好ましく、全ての主面に分散し、尚且つ内部に入り込んでいることが最も好ましい。しかし、ある程度まで難燃剤分散層があれば、非加熱面に該難燃剤分散層がなくとも、燃焼することはなく、且つ前記難燃板は多数の空隙を備える為、熱伝導性が低く、非加熱面の温度が上昇するのを抑制することができる。すなわち本発明の難燃板は、高い断熱性を有している。更に詳細にいうと、難燃剤分散層は難燃板の厚みに対して5〜100%であることが望ましい。5%未満だと難燃板の厚さによっては高い難燃性を得られない場合がある。難燃剤分散層は難燃板の厚みに対して70〜100%である場合は難燃性が高いが、難燃板の密度が高くなる場合がある。そのような観点から80〜90%程度が望ましいが、100%である場合は難燃剤分散層の厚さの均一性を図るのが容易であることから製造上有利である。また難燃剤分散層は難燃板の厚みに対して5〜80%である場合は難燃剤が分散されていない部分が断熱層として有効に働く。また難燃剤分散層が両主面を含むように設けることで両面の難燃性が得られるので望ましい。
【0037】
難燃剤分散層の厚さは3mm以上であることが難燃性の観点から望ましく、5mm以上であることが更に望ましく、1cm以上であることが更に望ましい。これは一層につきであり、両面に難燃剤分散層を設ける場合はそれぞれこの厚さ以上であることが望ましい。また難燃剤分散層を1cm以下にすることで軽量性を図れるので望ましい。
【0038】
各空隙における難燃剤の含有率は難燃剤分散層を形成する基板の重さに対して10〜120%の範囲であることが難燃性の観点から望ましい。150%を超えると難燃剤の担持が困難となるばかりか難燃板全体が重くなる。特に望ましい難燃剤の含有率は20〜100%であり、更に望ましくは30〜50%である。難燃剤の含有率は難燃剤分散層の密度とそれ以外の部分(基板)の密度が分れば、
(難燃剤分散層の密度/基板の密度)−1
として、難燃剤の含有率を求めることができる。
また難燃板、基板の重量と、難燃板、難燃剤分散層の厚さが分れば、
(難燃板重量−基板重量)/(基板重量×(難燃剤分散層厚さ/難燃板厚さ))
として、難燃剤の含有率を求めることができる。
【0039】
本発明の難燃板は、内部に所定の空隙を有する一体化した熱可塑性樹脂からなる基板の、該内部の空隙表面に難燃剤を保持させることで効率的に製造できる。基板の空隙率は、熱可塑性樹脂の比重、得られる難燃板に必要な難燃剤の重さとともに難燃板の密度に大きく関わるが、強度、遮蔽性などの観点から通常90%以下であることが好ましい。また空隙率の下限は、必要な難燃剤の量や熱可塑性樹脂の種類、軽量性などから決定される。難燃剤分散層に高濃度で難燃剤を分散するには高濃度の難燃剤溶液を含浸することが望ましいが、高濃度の難燃剤溶液は粘度が高くて含浸が困難な場合がある。この場合、加圧して含浸させることができる。本発明の難燃板の製造に用いる基板も内部の空隙が連通したものを用いるので、比較的液体の含浸は容易であるので、加圧する場合も低い圧力でよい。すなわち通常1kg/m以下である。圧力が高すぎると空隙を破損したり、難燃剤を均一に含浸したりする事が困難となり製造上も不利である。基板に難燃剤を付着させて難燃板を製造する場合、難燃剤分散層の厚さ、基板と難燃板の重さから難燃剤分散層中の難燃剤の含有率を計算できる。
【0040】
本発明で用いる難燃剤は特に制限はなく、ハロゲン系、リン系、無機系などの通常知られている難燃剤が好適に用いられる。このうち、無機系が環境の観点から望ましく、更には無機系のなかでも高い難燃性を示す熱膨張型難燃剤が望ましい。
熱膨張型難燃剤は、火災等で生じる熱によって膨張するので空隙中で気泡を形成して機密性を高めると共に連通した空隙を閉じることで通気性を低下させ、延焼を防ぐ。特にシリカ系やホウ素系、膨張黒鉛が望ましいが、加工しやすさを考慮すると中性であるホウ素系難燃剤が更に望ましい。前記熱膨張型難燃剤は、熱により膨張するが、望ましい熱膨張倍率は、膨張前の難燃剤の径に比べて10〜30倍である。ここでいう熱膨張倍率は、約700℃に保った炉内に熱膨張型難燃剤を投入して、10秒保持した後、炉外に取り出し、常温まで自然冷却し、膨張後の難燃剤の径を顕微鏡により測定したものである。この難燃剤は、炎もしくは熱を当てた時、該熱膨張型難燃剤の熱膨張倍率が10〜30倍になり、難燃剤が保持されている空隙をドーム状に膨張した難燃剤が埋めるような状態になる。該熱膨張型難燃剤の熱膨張倍率が10倍未満である場合、前記空隙部に保持された難燃剤はドーム状に膨張するも空隙部を埋める面積が小さく、隙間から炎が侵入する可能性がある。また、逆に30倍より大きい場合、外壁となる樹脂の可曉性をもってしても膨張体を保持することが不可能であり、外壁の圧力によりドーム状の膨張体が破壊されてしまい、難燃剤の脱落が多くなる。前記難燃板に使用する難燃剤の種類は熱膨張型難燃剤であって好ましくは、ホウ素系の水溶液難燃剤である。該ホウ素系難燃剤は、20℃で最も高い溶解度を示すホウ酸塩ナトリウム(硼砂)と組み合わせた高濃度ホウ素化合物である。且つ中性であるため加工の簡易化が可能である。該難燃剤は、加熱されると激しく膨張して、強固なドーム状の膨張体を形成することができる。
【0041】
本発明の難燃板を形成する基板の形成方法は、発泡剤を用いて樹脂を発泡させる方法、複数種の樹脂を混合して一方を除去する方法、レーザー加工を用いる方法、線状やフィルム状に形成した熱可塑性樹脂を互いに一体化する方法などが挙げられるが、簡易的に均一構造を形成するには、後者が好ましい。更に緻密な空隙を持たせるには織物よりも不織布のウェブを積層するのがより好ましい
【0042】
前記難燃板の両方の主面が連通していることから、適度な通気性が得られ、例えば断熱材などで問題となる結露を防ぎやすい。この通気性については、フラジール形法による通気度で0.1cm/cm/秒以上であることが好ましく、さらに好ましくは1〜250cm/cm/秒である。通気度が0.1cm/cm/秒未満の場合は、空気が該難燃板を通過するために外部から圧力を加える必要が生じ、自然な空気の出入が行なえないため好ましくない。一方、通気度が250cm/cm/秒を超えると、通気性が高くなるが、該難燃板内の空隙が大きくなりすぎ、難燃剤の保持力が低下する為、難燃剤が剥落する可能性がある。また、該難燃板の両方の主面が連通している事から、該難燃板の内部まで難燃剤を含有させることができ、高度な難燃性を発現することが可能となる。
【0043】
また、前記難燃剤分散層中の前記難燃剤の含有率は、10〜120質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。含有率が10質量%未満である場合、炎の着火を抑制できずに難燃板は燃焼してしまう場合がある。また、逆に120質量%より大きい場合、該難燃板の密度が大きくなってしまい、目的とする軽量性が得ることが困難な場合がある。
【0044】
そして本発明の難燃板において、充分な難燃性を発現させるためには目的とする難燃板の厚みに対する、前記難燃剤分散層の厚みの割合が5〜100%であることが好ましく、20〜50%であることがさらに好ましい。該難燃剤分散層の厚みの割合が5%未満である場合、炎を当てた主面の着火を抑制するものの、長時間維持させることは、困難である場合がある。
【0045】
次に、本発明の難燃板の製造法について説明する。
初めに、発泡剤を用いて熱可塑性樹脂を発泡させ、難燃板を作成する方法を示す。発泡プラスチックの製法としては、ビーズ発泡法と押出し発泡法が主に知られているが、本発明においてはビーズ発泡法がより好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体等を挙げることができる。そして、ここに上げた樹脂のうち少なくとも1種の樹脂ペレットを分散溶液とともに圧力釜に入れプロパンやブタン等の飽和炭化水素系の発泡剤を圧入し、攪拌することにより発泡剤を樹脂に浸透あるいはコートするのである。そして本発明の難燃板を作成するためには、まず、このようにして得た発泡ビーズを加熱し予備発泡を行なう事で体積を5〜200倍程度に膨張させ、次にこれらを成形型内に投入し、発泡・成形を行なう事で、ビーズ同士が発泡状態を維持したままお互いに点で密着した、通気性を有する基板を得る事ができるのである。このときベースとなる樹脂の重合度を変える事で、粘りと固まり方の速さが制御可能となり、基板内の発泡密度や発泡形状をコントロール可能である。そしてこの基板に含浸法、グラビア法、スプレー法、もしくはコート法などの方法を用いて熱膨張型難燃剤を担持させることにより優れた難燃板とするのである。
【0046】
次にレーザーを用いて基板を成形する方法としては、光硬化樹脂の所望の位置に光を照射して硬化させた後に未硬化部分を除去する方法と、所望の位置を光で分解して分解部分を除去する方法が挙げられる。種々の微細な形状を形成できる。この方法により、表面が滑らかで、寸法精度の良好な目的とした基板が作成できる。そして発泡剤を使用した基板作製の場合と同様にして熱膨張型難燃剤を担持させることにより優れた難燃板とするのである。
【0047】
そして、繊維状の熱可塑性樹脂からなる基板を用いて作製する方法がある。本発明の目的を達成するためには場合においては、この方法を用いる事がより好ましい方法である。この場合、基板の内部まで均一な一体化構造を形成する上では、加熱によって熱可塑性樹脂を一体化することが好ましく、特に高い熱量を一気に与えることで空隙サイズを一定にすることができるので好ましい。これは例えば、湿熱接着性の熱可塑性樹脂を熱水や高圧蒸気流にあてる事で、実現できる。湿熱接着性の熱可塑性樹脂に熱水や高圧蒸気流をあてる方法は融点よりも低い温度で加工できるので、熱可塑性樹脂の分解も起こりにくく、製造装置も比較的簡単なものになるので好ましい。得られる基盤の空隙の均質性において、高圧蒸気流にあてる方法がより好ましい。用いることのできる湿熱接着性の熱可塑性樹脂としてはエチレン−ビニルアルコール系共重合体が挙げられる。これら湿熱接着性の熱可塑性樹脂は接着に必要な部分のみに存在すればよい。繊維の紡糸性を高める上で、湿熱接着性の熱可塑性樹脂と別の熱可塑性樹脂とからなる複合繊維を用いることが好ましい。用いるエチレン−ビニルアルコール系共重合体のビニルアルコール部分は95モル%以上のケン化度を有するものが好ましい。エチレン単位が多いことにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。重合度は必要に応じて選択できるが、通常は400〜1500程度である。また、エチレン単位の含有量が10モル%未満の場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の水で容易に膨潤・ゲル化してしまい、水に一度濡れると膨潤圧や外力により樹脂同士の接着点が外れやすくなるため吸水時に少なくとも一方向への膨張を抑えることができず、全ての方向への膨張が生じてしまう場合がある。また、60モル%を超えると吸水性が低下するとともに、湿熱による樹脂接着が発現しにくくなるため、充分な接着を確保しにくくなる上、特に上記難燃板の厚さ中央部の接着を発現させる事が困難となる。
【0048】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体を高圧蒸気流で接着して基板とする方法の具体例を以下に挙げる。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも含む熱可塑性樹脂を繊維形状にして、該繊維集合体を一方向に配向させたウェブを作製し、該ウェブをベルトコンベアにより次工程へ送る。次いで高圧蒸気流(高圧スチーム)に晒すことで、樹脂同士が接着し、本発明の難燃板が得られる。ここで使用するベルトコンベアは、基本的には加工に用いる前記ウェブをその形態を乱すことなく運搬できるものであれば特に限定はないが、エンドレスコンベアが好適に用いられる。もちろん一般的な単独のベルトコンベアであってもよいし、必要に応じてもう一台のベルトコンベアを用意し、両コンベアの間にウェブを挟むようにして運搬する方法でもよい。この方法によってウェブを処理する際に、処理に用いる水、高圧蒸気あるいはコンベアの振動などの外力により運搬してきたウェブの形態が変形するのを抑えることができる。また、処理後の不織布の密度や厚さをこのベルトの間隔を調整することにより制御することも可能になる。
【0049】
前記ウェブに蒸気を供給するための蒸気噴射装置は、一方のコンベア内に装着され、コンベアネットを通してウェブに蒸気を供給する。反対側のコンベアには、サクションボックスを装着してもよい。この場合には、ウェブを通過した過剰の蒸気を吸引排出することができる。さらには、ウェブの表と裏を一度に蒸気処理してしまうために、蒸気噴射装置を設置してあったコンベアの下流側にサクションボックスを装着し、反対側のコンベア内に蒸気噴射装置を設置してもよい。下流部の蒸気噴射装置とサクションボックスがない場合、不織布の表と裏を蒸気処理したければ、一度処理した不織布の表裏を反転させて再度処理装置内を通過させることで代用できる。
【0050】
次に、前記ウェブはコンベアにより運搬され、ノズルから高速で噴出される高圧蒸気流の中を通過する際、高圧蒸気を吹き付けることにより樹脂同士の3次元的接着が行なわれる。
この高圧蒸気は、気流であるため被処理体である繊維形状の樹脂を(水流絡合処理や、ニードルパンチ処理の様に)大きく移動させることなく、ウェブ内部へ進入する。このウェブ中への蒸気流の進入作用および湿熱作用によって、蒸気流がウェブ内に存在する各樹脂の表面を湿熱状態で効率的に覆い、均一な熱接着が可能になると考えられる。また、この処理は高速気流下で極めて短時間に行なわれるため、樹脂表面への熱伝導は速いが、樹脂内部への熱伝導はさほど速くなく、そのため高圧蒸気の圧力や熱により、処理されるウェブ自体の厚さが損われるような変形も起こりにくい。その結果、ウェブを潰すことなく、表面および厚さ方向における接着の程度が概ね均一になるように湿熱接着される。
【0051】
このとき、ウェブを挟んでノズルと反対側のエンドレスベルトの裏側をステンレス板等にし、蒸気が通過できない構造とすれば、被処理体であるウェブを通過した蒸気がここで反射するので、蒸気の保温効果によってより強固に接着される。逆に軽度の接着が必要な場合には、サクションボックスを配置し、余分な水蒸気を室外へ排出してもよい。
【0052】
水蒸気を噴射するためのノズルは、所定のオリフィスが幅方向に連続的に並んだプレートやダイスを用い、これを供給されるウェブの幅方向に沿ってオリフィスが並ぶように配置すればよい。この時、オリフィス列は1列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。もちろん、一列のオリフィス列を有するノズルダイを複数台並列に設置しても構わない。
例えば、プレートにオリフィスを開けたタイプのノズルを使用する場合、プレートの厚さは、0.5〜1.0mm程度のものが主に用いられる。この場合には、オリフィスの径やピッチに関しては、目的とする繊維固定ができる条件であれば特に制限はないが、通常、直径0.05〜2.0mmのものを使用するケースが多く、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.2〜0.5mmである。一方、オリフィスのピッチについては、通常0.5〜3.0mmで使用するケースが多いが、好ましくは1.0〜2.5mm、より好ましくは1.0〜1.5mmである。
【0053】
また、樹脂接着に使用する高圧蒸気についても、目的とする繊維固定が実現できれば特に限定はなく、使用する樹脂の材質や形態により設定すればよいが、圧力0.1MPa〜2.0MPaの蒸気を用いることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5MPaであり、さらに好ましくは0.3〜1.0MPaである。例えば、高圧蒸気の圧力が高すぎたり、強すぎる場合には、ウェブが動いてしまい、地合の乱れを生じたり、樹脂が溶融しすぎて部分的に繊維形状を保持できなくなるという問題を生ずる可能性がある。
また、圧力が弱すぎる場合は、樹脂の融着に必要な熱量を被処理物に与えることができなくなったり、水蒸気がウェブを貫通できず、厚さ方向に樹脂融着斑を生ずる等の問題が発生したり、ノズルから蒸気を均一に噴出するよう制御することが困難になる等の不具合が発生しやすくなる。
【0054】
このようにして前記ウェブを部分的に湿熱接着した後、樹脂に水分が残留する場合があるので、必要に応じてウェブを乾燥しなければならない。乾燥に関しては、乾燥用加熱体に接触した樹脂表面が、乾燥後にフィルム化せずに繊維形態を維持していることが必要であり、これが達成できるのであれば特に方法は問わない。従って、従来から不織布の乾燥に使用されるシリンダー乾燥機やテンターのような大掛かりな乾燥設備を使用しても構わないが、残留している水分は微量であるケースが多く、比較的軽度な乾燥手段により乾燥可能なレベルである際には、遠赤外線照射、マイクロ波照射、あるいは電子線照射等の非接触法や熱風を吹きつける方法等が好ましい。これらの工程を経て、可曉性をもち丈夫な基板が作製できる。
【0055】
こうして作製した基板に難燃加工を施すわけであるが、本発明において用いる事のできる方法としては、含浸法、グラビア法、スプレー法、もしくはコート法などが挙げられる。
このうち、本発明においては含浸法、すなわち、既に説明したようにして作製した基板を難燃剤の溶液に含浸した後、所定の圧力でニップして難燃剤溶液を絞った後、基板製作時と同様に乾燥して難燃板とする方法である。この時、付与する難燃剤の量は、含浸する難燃剤溶液の濃度および絞り時のニップ圧力、クリアランスを調整することにより行なうことが好ましい。
【0056】
このようにして得られた難燃板は、その軽量性が大きな特長であり、粉塵が発生しないので乗り物材料に好ましく、自動車材料や航空機等の乗り物内装材に適している。特に乗り物分野では原油の高騰から、いかに軽量化して、燃料消費量を少なくするかが大きな要素となっている。この他にも軽量性を生かしたこの難燃板の必要とされる用途は多々あり、各種用途への展開が可能である。例えば木材に同じ難燃剤を適用しても、軽量性が得られない。また、現状では、ガラスウールが乗り物材料のいたる所に使用されているが、粉塵問題や、廃棄問題を考えるとその使用は好ましくない。
【0057】
また、危険区域に義務付けられている一般住宅、ホテル、集合住宅、公共施設等の開口部に用いられる耐火戸や耐火間仕切り材などで主流であった金属や木質ドアがあるが、これらは重いため、現在では、ガラスウールやロックウールを用い、その両表面に鉄板を貼った物が使用されている。これらは着火の無い不燃材料であるが、熱遮断性が乏しく、厚みを大きくしなければ、非加熱面の温度が高くなってしまう。また、該ガラスウールやロックウールはそれ自体が一体化した自立性を持たないため、接着剤の適用などの予備加工が必要となる。本件の発明はこれらの材料にとって変わり、余計な接着剤などを使用する事無く、一体化した軽量難燃板になる可能性を持っている。
【0058】
また、木材やプラスチック板でできた床材などは、丈夫であり、十分な強さを持っているが、材料の性質上、衝撃吸収性が無く、とくに老人が躓いて衝撃を吸収できずに、怪我をするケースがある。しかし、本件の難燃板は、多くの空隙を含む繊維ゆえに、衝撃を緩和する性質を持っているので、丈夫であり、十分な強さを持っている。このように建材分野において性質を生かした多くの用途が期待できる。
【0059】
もしくは電気分野において、ショートなどによる火災の危険性があるコンセント付近の部位に断熱性と難燃性、非通電性を兼ね備えるこの材料が提案できる。伝熱を防ぐことで、近くの材料に発火するのを防ぐ。また、本発明の難燃板は、熱可塑性樹脂を使用したものであり、ある程度の成形性を持つため、電線の内側の被覆膜なども考えられる。
【実施例1】
【0060】
本発明を以下の実施例及び比較例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
基板を形成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレートを芯とし、エチレン含有量が44モル%、ケン化度98.4モル%のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を鞘とする芯鎖繊維である、クラレ社製の「ソフィスタ」、3.3dtex、51mm長、捲縮数21個/in、捲縮率13.5%を用いた。これをカード機に投入し、解繊することで、繊維ウェブを作製する。
該繊維ウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。なお、該ベルトコンベアの金網の上部には同じ金網が装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、ベルトコンベアに備えられた蒸気噴射装置へ繊維ウェブを導入し、該装置から0.4MPaの高圧蒸気を繊維ウェブに対し垂直に噴出して蒸気処理を施し、可曉性のある丈夫な基板を得た。該蒸気噴射装置には、一方のコンベア内に、コンベアネットを介して高圧蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置し、もう一方のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向下流側には、ノズルとサクション装置の配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一つ設置したものを用いた。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、該ノズルがコンベア幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられたものを使用した。加工速度は3m/分であり、ノズルとサクション側のコンベアベルトとの距離は10mmとした。上記の条件からベルトの流れ方向に150cm、幅方向に100cm、密度0.15g/cm、目付1500g/m、厚み10mmの基板が得られた。次に、水100質量部に対して、ホウ酸10質量部、ホウ砂12.5質量部を加えた水溶液からなるホウ素系難燃剤(トラストライフ社製、「ファイヤレスB」)を準備した。
この水溶液を前記基板に含浸加工した。さらに詳しく言うと、バット内に目的とする難燃剤分散層の厚さに相当する深さで難燃剤水溶液を張り、前記基板に同高さで液が十分しみ込むまで放置したのち水平を保った状態で取り出した。難燃剤付着量は含浸する時の難燃剤の濃度を調製することで制御した。その後、熱風乾燥機に投入し、120℃で2時間乾燥し、完全に乾いたことを確認し、試料とした。得られた難燃板は密度0.20g/cm、厚み10mmであり、軽量、可曉性および、通気性を有する丈夫で均一な難燃板であった。該難燃板の難燃剤含有率は56%であった。該難燃板の燃焼試験を行なったところ、優れた難燃性と断熱性を合わせ持っていた。前記難燃板を任意の位置で厚さ方向に沿って切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行なったところ、切断面1cmあたりに360個程度の空隙が均一に存在した。空隙の形は扁平形状をしており、また、該空隙部に緻密に難燃剤が内部まで付着していた。次に、前記難燃板の上部の主面から色水を流し、難燃板に吸収された色水が裏面(下部の主面)へ到達することを確認した。その後、色水を流した主面に対して、厚さ方向に平行な断面を観察したところ、断面に沿って色水が連通していた。それにより難燃板内の空隙が両方の主面に連通していることが確認でき、その構造により、難燃剤水溶液の含浸が簡易であった。前記難燃板の加工後の膨潤率を+とし、収縮率を−とした。該難燃板は加工後の膨潤や収縮が殆ど無かった。前記難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。測定の方法については、以下に示す。
【実施例2】
【0061】
熱膨張性のホウ素化合物水溶液を、実施例1で用いた難燃剤をこれと同重量の水で希釈する事で1/2の濃度に調製しすることで最終的な難燃剤含有率を14%としたこと以外は実施例1と同様な方法により、実施例2の難燃板を得た。この難燃板の燃焼試験を行なったところ、実施例1の難燃板には劣るものの、良好な難燃性と断熱性を示した。
【実施例3】
【0062】
熱膨張性のホウ素化合物水溶液を、水100質量部に対して、ホウ酸20質量部、ホウ砂25質量部と実施例1の倍の濃度に変更し、更に10mm厚の基板全体に難燃剤水溶液を含浸することで難燃剤含有率を105%としたこと以外は実施例1と同様な方法により、実施例3の難燃板を得た。この難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。
【実施例4】
【0063】
投入する繊維ウェブの目付を6000g/mとしたこと以外は、実施例1と同様な方法により、実施例4の難燃板を得た。この難燃板の難燃剤含有率は53%であった。この難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。
【実施例5】
【0064】
投入する繊維ウェブの目付を3000g/mとしたこと以外は、実施例1と同様な方法により、実施例5の難燃板を得た。この難燃板の難燃剤含有率は55%であったこの難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。
【実施例6】
【0065】
投入する繊維ウェブの目付を1000g/mとしたこと以外は、実施例1と同様な方法により、実施例6の難燃板を得た。この難燃板の難燃剤含有率は49%であったこの難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。
【実施例7】
【0066】
難燃剤として熱膨張型のケイ素系難燃剤を用いた事以外は実施例1と同じ方法で難燃加工することにより実施例7の難燃板を得た。ケイ素系難燃剤は、PH12の強アルカリ性であるが、基板を構成する熱可塑性樹脂が耐薬品性に優れたエチレン−ビニルアルコール系共重合体であるため、安定した難燃板の構造を維持することができる。この難燃板の難燃剤含有率は55%であったこの難燃板の燃焼試験を行なったところ、高度な難燃性と断熱性を示した。
【実施例8】
【0067】
実施例1で得られた難燃板の一方の主面に金属フィルムを貼って、実施例8の複合材料を作製した。今回、金属フィルムにはアルミフィルムを使用した。アルミフィルムと難燃板との接着は、アルミフィルムの上から、スチーム圧をかけて接着させる方法で行なった。アルミフィルムを貼ったことにより、炎の着火抑制、熱反射などの効果で難燃性と非加熱面の断熱性が著しく向上した。得られた試料は建築基準法に伴った防火材料の認定試験であるコーンカロリメータ(ISO5660)で試験評価したところ、不燃であった。
比較例1
繊維ウェブの目付を4000g/mとし、基板の厚さが5mmとなる様にしたこと以外は実施例1と同じ方法で比較例1の板を得た。この時、難燃板の難燃剤含有率は、42%であった。できた板の密度は0.8g/cm3であった。そして、この板の空隙数は48であった。この難燃板は、空隙が少ないため、難燃剤を含浸に時間がかかった。また、難燃板を加熱した時、難燃剤の膨張により、樹脂の一部が飛散した。これは、密度が高い木材などに難燃剤を含浸した時と同じ現象であり、目的とする難燃性を得られなかった。
比較例2
繊維ウェブの目付を112g/mとし、基板の厚さを5mmとしたこと以外は実施例1と同じ方法で比較例2の板を得た。この時板への難燃剤付着率は38質量%であり、できた板の密度は0.03g/cm3であり、さらにこの板の空隙数は1168であった。この板は、通気性や、難燃剤水溶液の浸透には十分であるが、板としては柔らかすぎで且つ自立性がなく、はじめに目的とする難燃板とは異なるものであった。更にこのサンプルを燃焼試験しようとしたが、バーナーの火が着火してしまい燃焼してしまった。
比較例3
厚さ10mmのポリウレタン発泡板に実施例1の熱膨張型のホウ素系難燃剤を含浸し、実施例1と同じ手順で試験体を作製した。該ポリウレタン発泡板も前記難燃板と同様に空隙が連通している為、適度な通気性を持ち、且つ内部まで、難燃剤を含浸することが可能である。この時の難燃剤付着率は31質量%であり得られた該ポリウレタン発泡板の燃焼試験を行なったところ、加熱されて膨張した難燃剤が試料から飛び出してしまい。その後、ポリウレタン発泡板はメルトドロップした。結果としてポリウレタンは膨張体を保持できなかった。ポリウレタン発泡板の空隙形状を観察すると球状であり、難燃剤が膨張した時に脱落が起こる要因になっていると推測される。
【0068】
これらの各種難燃板の難燃性能や特性については次の方法で評価した。
(密度)
JIS L1913に準じて測定した。
(空隙の形状)
得られた難燃板の一表面を3×3に9つのエリアに等分し、各エリアの中心付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。また、側面についても同様に9等分し、観察した。(図2参照)
(空隙の均一性と空隙数)
表面の前記各エリアをたて方向(流れ方向)、横方向(幅方向)にそってそれぞれ空隙数を走査型電子顕微鏡(SEM)により、観察した。各方向の単位長さ当たりの各空隙数を比較して均一性を確認した。また単位長さ当たりの厚さ方向の実際数を平均して求めた。
次に側面の前記各エリアを厚さ方向に沿って観察し、同様に均一性を確認した。各方向の実際数の最小値、最大値がすべて80%以上の時に◎、60%のときに○、それ以外を×とした。
(難燃板の厚み)
難燃板の厚みは、JIS L1913に準じて厚みを測定した。
(難燃性能)
難燃性をJIS A1322に準じて測定、評価した。難燃性の効果は防炎1〜3級で表示し、難燃性がこの基準に達していないものは、基準外とした。ただし、実施例8のアルミフィルムと難燃板の複合材料に関しては、ISO5660建築基準法に準じて測定し、「不燃」、「準不燃」、「難燃」として、評価した。
(断熱性能)
加熱時の断熱性を次のように測定した。1300℃のガスバーナを本発明の難燃板の主面に当て、該主面の反対側である非加熱面の2分間の上昇温度を熱伝対で測定した。非加熱面の温度が140℃以下である時、高度な断熱性を持つと判断した。
評価した結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】難燃板の厚さ方向の空隙数を観察する方法例を示す模式図
【図2】難燃板の空隙を観察する方法例を示す模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂が実質的に一体となってなる密度0.05〜0.7g/cmの難燃板であって、前記難燃板の内部には前記難燃板の面方向に長い扁平形状をなす多数の空隙が均一に分布しており、該空隙は前記難燃板内部の任意の位置に厚さ方向に沿って1cmあたり50〜700個分布しており、かつ前記難燃板の両方の主面に連通しており、前記空隙の少なくとも一部は内部に難燃剤を分散していることでなる難燃剤分散層を形成しており、該難燃剤分散層が前記難燃板の少なくとも一方の主面を含むことを特徴とする難燃板。
【請求項2】
前記難燃板の空隙の内壁を形成する前記熱可塑性樹脂が水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の難燃板。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の成分がエチレン−ビニルアルコール系共重合体を主体とすることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の難燃板。
【請求項4】
前記難燃剤が熱膨張型難燃剤であって、該熱膨張型難燃剤の熱膨張倍率が10〜30倍であることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の難燃板。
【請求項5】
前記難燃剤分散層の厚みが3mm以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれかに記載の難燃板
【請求項6】
前記難燃剤分散層中の前記難燃剤の含有率が、10〜120質量%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の難燃板。
【請求項7】
前記難燃板の厚みに対する、前記難燃剤分散層の厚みの割合が5〜100%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の難燃板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−19087(P2009−19087A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181678(P2007−181678)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)
【Fターム(参考)】