載荷試験装置
【課題】載荷版の剛性が低い場合でも載荷版の沈下量を均等する。
【解決手段】載荷試験装置10では、複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重を作用させることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が沈下される。ここで、制御装置38は、各油圧ポンプ32が接続された油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する。さらに、基礎コンクリート14の沈下量が小さい箇所に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を大きくする。このため、基礎コンクリート14の剛性が低い場合でも、基礎コンクリート14の沈下量を均等にできる。
【解決手段】載荷試験装置10では、複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重を作用させることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が沈下される。ここで、制御装置38は、各油圧ポンプ32が接続された油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する。さらに、基礎コンクリート14の沈下量が小さい箇所に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を大きくする。このため、基礎コンクリート14の剛性が低い場合でも、基礎コンクリート14の沈下量を均等にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験地盤の上に載置される載荷版に荷重を作用させる載荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の載荷試験方法では、試験杭が構築された地盤の上に直接基礎試験盤が載置されると共に、直接基礎試験盤の上面中央に油圧ジャッキが配置されている。これにより、油圧ジャッキが、直接基礎試験盤に荷重を作用させて、直接基礎試験盤を沈下させることで、地盤の支持力を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57380公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、試験杭が構築されない地盤の上に直接基礎試験盤を載置すると共に、直接基礎試験盤の上面中央に油圧ジャッキを配置したとする。
【0005】
この場合には、油圧ジャッキが1つであるため、直接基礎試験盤に作用させる荷重を大きくできない。さらに、例えば、地盤の剛性が均一でない場合、直接基礎試験盤の剛性が均一でない場合、及び、直接基礎試験盤への油圧ジャッキの配置精度が低い場合には、直接基礎試験盤に荷重を作用させた際に、直接基礎試験盤が傾動(回転)されて、直接基礎試験盤の沈下量が均等にならない可能性がある。
【0006】
これを解決するために、試験杭が構築されない地盤の上に直接基礎試験盤を載置すると共に、直接基礎試験盤の上面に多数の油圧ジャッキを均等に配置したとする。
【0007】
しかしながら、この場合において、多数の油圧ジャッキが作用させる荷重を1個の油圧ポンプによって制御すると、全ての油圧ジャッキが作用させる荷重が等しくなる。
【0008】
一般に、地盤が均一であっても、直接基礎試験盤の中央部の地盤の沈下剛性が低く、直接基礎試験盤の周縁部の沈下剛性が中央に比し大きくなる。そのため、同一荷重を作用させると、直接基礎試験盤の中央側の沈下量が直接基礎試験盤の周縁側の沈下量に比し大きくなって、直接基礎試験盤の沈下量が均等にならない可能性がある。
【0009】
特に、直接基礎試験盤が薄くされて直接基礎試験盤の剛性が低い場合、直接基礎試験盤に作用させる荷重の合計が大きい場合、及び、直接基礎試験盤の沈下量が大きくなった際に、直接基礎試験盤の沈下量が大きく不均等になる可能性がある。
【0010】
また、直接基礎試験盤の不同沈下量が大きくなると、直接基礎試験盤の沈下量を均等に戻すのは、困難である。
【0011】
本発明は、上記事実を考慮し、載荷版の剛性が低い場合でも載荷版の沈下量を均等にできる載荷試験装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の載荷試験装置は、試験地盤の上に載置される載荷版と、前記載荷版に荷重を作用させて前記載荷版を沈下させる複数の載荷手段と、前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を前記載荷手段毎に分けて制御する荷重制御手段と、を備えている。
【0013】
請求項1に記載の載荷試験装置では、試験地盤の上に載荷版が載置されており、複数の載荷手段が載荷版に荷重を作用させて載荷版を沈下させる。
【0014】
ここで、載荷手段が載荷版に作用させる荷重を荷重制御手段が載荷手段毎に分けて制御する。これにより、載荷版の剛性が低い場合でも、載荷版の沈下量を均等にできる。また、積極的に載荷版を傾斜沈下させることもできる。
【0015】
なお、荷重制御手段が分けて制御する各載荷手段の数は、互いに同一の数であっても互いに異なる数であってもよい。
【0016】
請求項2に記載の載荷試験装置は、請求項1に記載の載荷試験装置において、前記載荷版の複数箇所の沈下量を計測する計測手段を備え、前記荷重制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき前記載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を大きくする。
【0017】
請求項2に記載の載荷試験装置では、計測手段が載荷版の複数箇所の沈下量を計測する。さらに、荷重制御手段が、計測手段の計測結果に基づき、載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された載荷手段が載荷版に作用させる荷重を大きくする。このため、載荷版の沈下量を適切に均等にできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の載荷試験装置では、載荷版の剛性が低い場合でも載荷版の沈下量を均等にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置の主要部を示す上側から見た平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置における油圧ジャッキを示す縦断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置における直接基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第1例を示す側面図である。
【図6】建築物の地震時を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第2例を示す側面図である。
【図8】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第1別例に係る載荷試験装置における杭基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図9】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第2別例に係る載荷試験装置におけるパイルド・ラフト基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図10】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第3別例に係る載荷試験装置における地盤改良基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図11】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第4別例に係る載荷試験装置における地盤改良併用パイルド・ラフト基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図12】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第3例を示す側面図であり、(A)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の初期状態を示し、(B)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の中期状態を示している。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第4例を示す側面図であり、(A)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の初期状態を示し、(B)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の中期状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置10(鉛直載荷試験装置)が側面図にて示されており、図2には、載荷試験装置10の主要部が上側から見た平面図にて示されている。
【0021】
図1及び図2に示す如く、本実施の形態に係る載荷試験装置10は、試験地盤としての地盤12の建築物支持性能(建築物支持剛性)を予め試験するものである。
【0022】
図4の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の上面は、平面状にされており、地盤12には、例えば、上側から、粘性土層12A、シルト質細砂層12B及び細砂層12Cが形成されている。
【0023】
地盤12上には、載荷版としての正方形板状の基礎コンクリート14(フーチング、構造体、試験体)が載置されており、地盤12の基礎形式は、直接基礎16にされて、基礎コンクリート14の下側の地盤12の剛性が略均一にされている。
【0024】
基礎コンクリート14上には、載荷手段としての油圧ジャッキ20(圧力変換器)が複数(本実施の形態では9個)配置されており、複数の油圧ジャッキ20は、基礎コンクリート14の上側において、横方向(一方向)及び縦方向(他方向)に等間隔で配置されて、均等に配置されている。
【0025】
図3に示す如く、油圧ジャッキ20には、円柱形容器状のケース22が設けられており、ケース22には、ジャッキ本体24が設けられている。ジャッキ本体24の下端には、円板状の圧力板24Aが設けられており、圧力板24Aは、ケース22内に嵌合されて、ケース22内を上下方向へ移動可能にされている。ケース22内の圧力板24Aより下側部分は、加圧室22Aにされており、ケース22内の圧力板24Aより上側部分は、減圧室22Bにされている。
【0026】
圧力板24Aには、円軸状の連結軸24Bの下端が連結されており、連結軸24Bは、圧力板24Aから上方へ延出されて、ケース22の上壁に対し移動可能に貫通かつ嵌合されている。連結軸24Bの上端には、円板状の作用板24Cが連結されており、作用板24Cは、ケース22の上側に配置されている。
【0027】
図1に示す如く、複数の油圧ジャッキ20の上には、反力部材としての略長尺矩形柱状の上台座26(反力桁)が複数水平に架け渡されており、上台座26は、反力杭(図示省略)等を介して地盤12に固定されて、移動不能にされている。これにより、全ての油圧ジャッキ20の直上に、上台座26が配置されており、各油圧ジャッキ20(ジャッキ本体24)の作用板24Cの上面全体は、上台座26に当接されている。また、上台座26は、基礎コンクリート14に比し、剛性が極めて高くされている。
【0028】
図1〜図3に示す如く、各油圧ジャッキ20(ケース22内)の加圧室22A及び減圧室22Bは、それぞれ加圧管28及び減圧管30を介して、荷重制御手段を構成する油圧ポンプ32に接続されている。これにより、油圧ジャッキ20の数と油圧ポンプ32の数とが同一にされている。
【0029】
油圧ポンプ32は、加圧管28を介して、油圧ジャッキ20の加圧室22Aの油圧を増加又は減少可能にされており、油圧ポンプ32は、減圧管30を介して、油圧ジャッキ20の減圧室22Bの油圧を増加又は減少可能にされている。このため、油圧ポンプ32は、接続された油圧ジャッキ20を制御可能にされており、油圧ジャッキ20は、油圧ポンプ32によって、ケース22内(加圧室22A及び減圧室22B)の油圧を制御される。
【0030】
ここで、油圧ジャッキ20において、ケース22内の油圧によってジャッキ本体24の圧力板24Aが上側へ押圧されてジャッキ本体24の作用板24Cが上台座26を上側へ押圧することで、油圧ジャッキ20が上台座26から反力を受けて、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重(ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重及び作用板24Cの上台座26に対する上側への押圧荷重に等しい)を作用させる。これにより、油圧ジャッキ20からの荷重が基礎コンクリート14及び地盤12に鉛直下方へ作用されることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が鉛直下方へ沈下される(変位される)。
【0031】
また、ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重が増加される際には、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重が増加される。一方、ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重が減少される際には、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重が減少される。
【0032】
図1に示す如く、複数の油圧ジャッキ20の側方には、基準部材としての略長尺柱状の基準梁34(不動梁)が複数水平に架け渡されており、基準梁34は、固定杭(図示省略)等を介して地盤12に固定されて、移動不能にされている。これにより、全ての油圧ジャッキ20の側方近傍に、基準梁34が配置されている。
【0033】
複数の基準梁34には、各油圧ジャッキ20に対応して、計測手段としての計測計36が複数設けられており、計測計36は、対応する油圧ジャッキ20の側方近傍に配置されている。計測計36は、基準梁34と基礎コンクリート14の上面との鉛直方向距離を計測可能にされており、計測計36は、対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量(変位量)を検出可能にされている。
【0034】
全ての油圧ポンプ32及び全ての計測計36は、荷重制御手段を構成する制御装置38(変位制御CPU)に電気的に接続されている。
【0035】
制御装置38は、計測計36が検出した対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量(基準梁34と基礎コンクリート14の上面との鉛直方向距離)に基づき、当該油圧ジャッキ20に接続された油圧ポンプ32を制御して、当該油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重(ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重)を制御可能にされている。
【0036】
また、制御装置38は、計測計36が検出した油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に拘らず、複数の油圧ポンプ32を制御可能にされている。
【0037】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0038】
以上の構成の載荷試験装置10では、油圧ポンプ32によって油圧ジャッキ20のケース22内の油圧が制御可能にされており、油圧ジャッキ20において、ケース22内の油圧によってジャッキ本体24の圧力板24Aが上側へ押圧されてジャッキ本体24の作用板24Cが上台座26を上側へ押圧することで、油圧ジャッキ20が上台座26から反力を受けて、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重を作用させる。このため、油圧ジャッキ20からの荷重が基礎コンクリート14及び地盤12に鉛直下方へ作用されることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が鉛直下方へ沈下される。
【0039】
ここで、各油圧ジャッキ20に油圧ポンプ32が接続されており、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を油圧ポンプ32が制御する。このため、単数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御できる。
【0040】
さらに、制御装置38は、計測計36が検出した対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に基づき、当該油圧ジャッキ20に接続された油圧ポンプ32を制御して、当該油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を制御する。具体的には、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が小さい箇所に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を大きくする。
【0041】
これにより、基礎コンクリート14が厚くされて基礎コンクリート14の剛性が高い場合のみならず、基礎コンクリート14が薄くされて基礎コンクリート14の剛性が低い場合でも、さらに、基礎コンクリート14下側の地盤12の剛性や基礎コンクリート14の剛性が均一でない場合でも、また、油圧ジャッキ20が上台座26から受ける反力が複数の油圧ジャッキ20間で異なってバランスが良くない場合等でも、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を適切に均等(一定)にできる。
【0042】
さらに、図5に示す如く、制御装置38の制御によって、基礎コンクリート14の周縁側の油圧ジャッキ20が作用させる荷重が、基礎コンクリート14の中央の油圧ジャッキ20が作用させる荷重に比し、大きくされる。このため、本実施の形態の如く、基礎コンクリート14下側の地盤12の剛性が略均一にされると共に、基礎コンクリート14上に複数(本実施の形態では9個)の油圧ジャッキ20が均等に配置された場合でも、基礎コンクリート14の沈下量を均等にできる。
【0043】
また、図6に示す如く、基礎コンクリート14上に建築物40(例えばビル)が設けられた場合には、地震時に、基礎コンクリート14の下側の地盤12内で地すべりが発生しつつ、建築物40及び基礎コンクリート14が傾動される。このため、基礎コンクリート14に一端側から他端側(図6では左側から右側)へ向かうに従い大きくなる荷重、すなわち偏心荷重が作用される。
【0044】
ここで、制御装置38は、計測計36が検出した油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に拘らず、複数の油圧ポンプ32を制御することができる。このため、図7に示す如く、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を基礎コンクリート14の一端側から他端側へ向かうに従い大きくすることができる。これにより、上記の地震時等を想定して、基礎コンクリート14に偏心荷重を作用させた際の載荷試験を行うことができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、油圧ポンプ32を単数の油圧ジャッキ20に接続して単数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する構成としたが、油圧ポンプ32を単数又は複数の油圧ジャッキ20に接続して単数又は複数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する構成であればよい。
【0046】
また、本実施の形態において、基礎コンクリート14上に補強部材としての正方形板状の鉄板を載置してもよい。この場合、例えば鉄板が基礎コンクリート14と平面視で同一の形状及び大きさにされて、鉄板によって基礎コンクリート14が補強される。
【0047】
さらに、本実施の形態において、基礎コンクリート14と油圧ジャッキ20との間に載置部材としての略長尺矩形柱状の下台座18(作用桁、図8の(A)及び(B)参照)を配置した構成としてもよい。この場合、下台座18は、基礎コンクリート14に比し、剛性が極めて高くされている。
【0048】
また、本実施の形態では、地盤12の基礎形式を直接基礎16にしている。
【0049】
しかしながら、図8の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を杭基礎60にしてもよい。
【0050】
杭基礎60では、地盤12に試験地盤を構成する長尺円軸状の杭62が鉛直下方へ打ち込まれており、杭62は、地盤12の粘性土層12A及びシルト質細砂層12Bを通過して細砂層12Cまで到達している。杭62の上端は、地盤12の上面から突出しており、杭62の上には、載荷版としての下台座18が載置されている。これにより、下台座18の上側から複数の油圧ジャッキ20が下台座18及び杭62に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0051】
また、図9の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式をパイルド・ラフト基礎70にしてもよい。
【0052】
パイルド・ラフト基礎70では、地盤12に試験地盤を構成する長尺円軸状の杭72(パイル)が鉛直下方へ打ち込まれており、杭72は、地盤12の粘性土層12A及びシルト質細砂層12Bを通過して細砂層12Cまで到達している。杭72の上端面は、地盤12の上面と面一にされており、地盤12及び杭72の上には、基礎コンクリート14(ラフト)が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12及び杭72に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0053】
さらに、図10の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を地盤改良基礎80にしてもよい。
【0054】
地盤改良基礎80では、地盤12に試験地盤を構成する例えば平面視矩形枠状の地盤改良部82が設けられており、地盤改良部82では、複数の軸状の地盤改良杭が鉛直下方へ打ち込まれている。地盤改良部82では、複数の地盤改良杭が水平方向へ連続して配置されており、地盤改良杭は、地盤12の粘性土層12Aのみに打ち込まれてシルト質細砂層12Bには到達していない。地盤改良部82(地盤改良杭)の上端面は、地盤12の上面と面一にされており、地盤12及び地盤改良部82の上には、基礎コンクリート14が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12及び地盤改良部82に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0055】
また、図11の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を地盤改良併用パイルド・ラフト基礎90にしてもよい。
【0056】
地盤改良併用パイルド・ラフト基礎90では、パイルド・ラフト基礎70と同様に地盤12に杭72(パイル)が打ち込まれると共に、地盤改良基礎80と同様に地盤12に地盤改良部82が設けられている。地盤12、杭72及び地盤改良部82の上には、基礎コンクリート14(ラフト)が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12、杭72及び地盤改良部82に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0057】
ここで、地盤12の基礎形式が図9の(A)及び(B)に示すパイルド・ラフト基礎70である場合には、基礎コンクリート14の周部下側が基礎コンクリート14の中央下側に比し地盤12(杭72を含む)の剛性を小さくされている。
【0058】
このため、仮に、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を常に同一にすると、基礎コンクリート14の周部側の沈下量が基礎コンクリート14の中央側の沈下量に比し大きくなる(図12(B)の1点鎖線参照)。
【0059】
一方、図12(A)に示す如く、初期は、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を同一にしても、その後は、図12(B)に示す如く、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が大きい箇所(基礎コンクリート14の周部側)に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を小さくすることで、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を均等にできる(図12(B)の2点鎖線参照)。
【0060】
また、地盤12の基礎形式が図10の(A)及び(B)に示す地盤改良基礎80である場合には、基礎コンクリート14の中央下側が基礎コンクリート14の周部下側に比し地盤12(地盤改良部82を含む)の剛性を小さくされている。
【0061】
このため、仮に、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を常に同一にすると、基礎コンクリート14の中央側の沈下量が基礎コンクリート14の周部側の沈下量に比し大きくなる(図13(B)の1点鎖線参照)。
【0062】
一方、図13(A)に示す如く、初期は、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を同一にしても、その後は、図13(B)に示す如く、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が大きい箇所(基礎コンクリート14の中央側)に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を小さくすることで、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を均等にできる(図13(B)の2点鎖線参照)。
【符号の説明】
【0063】
10 載荷試験装置
12 地盤(試験地盤)
14 基礎コンクリート(載荷版)
18 下台座(載荷版)
20 油圧ジャッキ(載荷手段)
32 油圧ポンプ(荷重制御手段)
36 計測計(計測手段)
38 制御装置(荷重制御手段)
62 杭(試験地盤)
72 杭(試験地盤)
82 地盤改良部(試験地盤)
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験地盤の上に載置される載荷版に荷重を作用させる載荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の載荷試験方法では、試験杭が構築された地盤の上に直接基礎試験盤が載置されると共に、直接基礎試験盤の上面中央に油圧ジャッキが配置されている。これにより、油圧ジャッキが、直接基礎試験盤に荷重を作用させて、直接基礎試験盤を沈下させることで、地盤の支持力を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57380公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、試験杭が構築されない地盤の上に直接基礎試験盤を載置すると共に、直接基礎試験盤の上面中央に油圧ジャッキを配置したとする。
【0005】
この場合には、油圧ジャッキが1つであるため、直接基礎試験盤に作用させる荷重を大きくできない。さらに、例えば、地盤の剛性が均一でない場合、直接基礎試験盤の剛性が均一でない場合、及び、直接基礎試験盤への油圧ジャッキの配置精度が低い場合には、直接基礎試験盤に荷重を作用させた際に、直接基礎試験盤が傾動(回転)されて、直接基礎試験盤の沈下量が均等にならない可能性がある。
【0006】
これを解決するために、試験杭が構築されない地盤の上に直接基礎試験盤を載置すると共に、直接基礎試験盤の上面に多数の油圧ジャッキを均等に配置したとする。
【0007】
しかしながら、この場合において、多数の油圧ジャッキが作用させる荷重を1個の油圧ポンプによって制御すると、全ての油圧ジャッキが作用させる荷重が等しくなる。
【0008】
一般に、地盤が均一であっても、直接基礎試験盤の中央部の地盤の沈下剛性が低く、直接基礎試験盤の周縁部の沈下剛性が中央に比し大きくなる。そのため、同一荷重を作用させると、直接基礎試験盤の中央側の沈下量が直接基礎試験盤の周縁側の沈下量に比し大きくなって、直接基礎試験盤の沈下量が均等にならない可能性がある。
【0009】
特に、直接基礎試験盤が薄くされて直接基礎試験盤の剛性が低い場合、直接基礎試験盤に作用させる荷重の合計が大きい場合、及び、直接基礎試験盤の沈下量が大きくなった際に、直接基礎試験盤の沈下量が大きく不均等になる可能性がある。
【0010】
また、直接基礎試験盤の不同沈下量が大きくなると、直接基礎試験盤の沈下量を均等に戻すのは、困難である。
【0011】
本発明は、上記事実を考慮し、載荷版の剛性が低い場合でも載荷版の沈下量を均等にできる載荷試験装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の載荷試験装置は、試験地盤の上に載置される載荷版と、前記載荷版に荷重を作用させて前記載荷版を沈下させる複数の載荷手段と、前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を前記載荷手段毎に分けて制御する荷重制御手段と、を備えている。
【0013】
請求項1に記載の載荷試験装置では、試験地盤の上に載荷版が載置されており、複数の載荷手段が載荷版に荷重を作用させて載荷版を沈下させる。
【0014】
ここで、載荷手段が載荷版に作用させる荷重を荷重制御手段が載荷手段毎に分けて制御する。これにより、載荷版の剛性が低い場合でも、載荷版の沈下量を均等にできる。また、積極的に載荷版を傾斜沈下させることもできる。
【0015】
なお、荷重制御手段が分けて制御する各載荷手段の数は、互いに同一の数であっても互いに異なる数であってもよい。
【0016】
請求項2に記載の載荷試験装置は、請求項1に記載の載荷試験装置において、前記載荷版の複数箇所の沈下量を計測する計測手段を備え、前記荷重制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき前記載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を大きくする。
【0017】
請求項2に記載の載荷試験装置では、計測手段が載荷版の複数箇所の沈下量を計測する。さらに、荷重制御手段が、計測手段の計測結果に基づき、載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された載荷手段が載荷版に作用させる荷重を大きくする。このため、載荷版の沈下量を適切に均等にできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の載荷試験装置では、載荷版の剛性が低い場合でも載荷版の沈下量を均等にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置の主要部を示す上側から見た平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置における油圧ジャッキを示す縦断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置における直接基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第1例を示す側面図である。
【図6】建築物の地震時を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第2例を示す側面図である。
【図8】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第1別例に係る載荷試験装置における杭基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図9】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第2別例に係る載荷試験装置におけるパイルド・ラフト基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図10】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第3別例に係る載荷試験装置における地盤改良基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図11】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の第4別例に係る載荷試験装置における地盤改良併用パイルド・ラフト基礎を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、縦断面図である。
【図12】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第3例を示す側面図であり、(A)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の初期状態を示し、(B)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の中期状態を示している。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置において基礎コンクリートに作用させる荷重バランスの第4例を示す側面図であり、(A)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の初期状態を示し、(B)は、基礎コンクリートに荷重バランスを作用させる際の中期状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係る載荷試験装置10(鉛直載荷試験装置)が側面図にて示されており、図2には、載荷試験装置10の主要部が上側から見た平面図にて示されている。
【0021】
図1及び図2に示す如く、本実施の形態に係る載荷試験装置10は、試験地盤としての地盤12の建築物支持性能(建築物支持剛性)を予め試験するものである。
【0022】
図4の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の上面は、平面状にされており、地盤12には、例えば、上側から、粘性土層12A、シルト質細砂層12B及び細砂層12Cが形成されている。
【0023】
地盤12上には、載荷版としての正方形板状の基礎コンクリート14(フーチング、構造体、試験体)が載置されており、地盤12の基礎形式は、直接基礎16にされて、基礎コンクリート14の下側の地盤12の剛性が略均一にされている。
【0024】
基礎コンクリート14上には、載荷手段としての油圧ジャッキ20(圧力変換器)が複数(本実施の形態では9個)配置されており、複数の油圧ジャッキ20は、基礎コンクリート14の上側において、横方向(一方向)及び縦方向(他方向)に等間隔で配置されて、均等に配置されている。
【0025】
図3に示す如く、油圧ジャッキ20には、円柱形容器状のケース22が設けられており、ケース22には、ジャッキ本体24が設けられている。ジャッキ本体24の下端には、円板状の圧力板24Aが設けられており、圧力板24Aは、ケース22内に嵌合されて、ケース22内を上下方向へ移動可能にされている。ケース22内の圧力板24Aより下側部分は、加圧室22Aにされており、ケース22内の圧力板24Aより上側部分は、減圧室22Bにされている。
【0026】
圧力板24Aには、円軸状の連結軸24Bの下端が連結されており、連結軸24Bは、圧力板24Aから上方へ延出されて、ケース22の上壁に対し移動可能に貫通かつ嵌合されている。連結軸24Bの上端には、円板状の作用板24Cが連結されており、作用板24Cは、ケース22の上側に配置されている。
【0027】
図1に示す如く、複数の油圧ジャッキ20の上には、反力部材としての略長尺矩形柱状の上台座26(反力桁)が複数水平に架け渡されており、上台座26は、反力杭(図示省略)等を介して地盤12に固定されて、移動不能にされている。これにより、全ての油圧ジャッキ20の直上に、上台座26が配置されており、各油圧ジャッキ20(ジャッキ本体24)の作用板24Cの上面全体は、上台座26に当接されている。また、上台座26は、基礎コンクリート14に比し、剛性が極めて高くされている。
【0028】
図1〜図3に示す如く、各油圧ジャッキ20(ケース22内)の加圧室22A及び減圧室22Bは、それぞれ加圧管28及び減圧管30を介して、荷重制御手段を構成する油圧ポンプ32に接続されている。これにより、油圧ジャッキ20の数と油圧ポンプ32の数とが同一にされている。
【0029】
油圧ポンプ32は、加圧管28を介して、油圧ジャッキ20の加圧室22Aの油圧を増加又は減少可能にされており、油圧ポンプ32は、減圧管30を介して、油圧ジャッキ20の減圧室22Bの油圧を増加又は減少可能にされている。このため、油圧ポンプ32は、接続された油圧ジャッキ20を制御可能にされており、油圧ジャッキ20は、油圧ポンプ32によって、ケース22内(加圧室22A及び減圧室22B)の油圧を制御される。
【0030】
ここで、油圧ジャッキ20において、ケース22内の油圧によってジャッキ本体24の圧力板24Aが上側へ押圧されてジャッキ本体24の作用板24Cが上台座26を上側へ押圧することで、油圧ジャッキ20が上台座26から反力を受けて、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重(ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重及び作用板24Cの上台座26に対する上側への押圧荷重に等しい)を作用させる。これにより、油圧ジャッキ20からの荷重が基礎コンクリート14及び地盤12に鉛直下方へ作用されることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が鉛直下方へ沈下される(変位される)。
【0031】
また、ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重が増加される際には、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重が増加される。一方、ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重が減少される際には、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重が減少される。
【0032】
図1に示す如く、複数の油圧ジャッキ20の側方には、基準部材としての略長尺柱状の基準梁34(不動梁)が複数水平に架け渡されており、基準梁34は、固定杭(図示省略)等を介して地盤12に固定されて、移動不能にされている。これにより、全ての油圧ジャッキ20の側方近傍に、基準梁34が配置されている。
【0033】
複数の基準梁34には、各油圧ジャッキ20に対応して、計測手段としての計測計36が複数設けられており、計測計36は、対応する油圧ジャッキ20の側方近傍に配置されている。計測計36は、基準梁34と基礎コンクリート14の上面との鉛直方向距離を計測可能にされており、計測計36は、対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量(変位量)を検出可能にされている。
【0034】
全ての油圧ポンプ32及び全ての計測計36は、荷重制御手段を構成する制御装置38(変位制御CPU)に電気的に接続されている。
【0035】
制御装置38は、計測計36が検出した対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量(基準梁34と基礎コンクリート14の上面との鉛直方向距離)に基づき、当該油圧ジャッキ20に接続された油圧ポンプ32を制御して、当該油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重(ケース22内の油圧による圧力板24Aの上側への押圧荷重)を制御可能にされている。
【0036】
また、制御装置38は、計測計36が検出した油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に拘らず、複数の油圧ポンプ32を制御可能にされている。
【0037】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0038】
以上の構成の載荷試験装置10では、油圧ポンプ32によって油圧ジャッキ20のケース22内の油圧が制御可能にされており、油圧ジャッキ20において、ケース22内の油圧によってジャッキ本体24の圧力板24Aが上側へ押圧されてジャッキ本体24の作用板24Cが上台座26を上側へ押圧することで、油圧ジャッキ20が上台座26から反力を受けて、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方への荷重を作用させる。このため、油圧ジャッキ20からの荷重が基礎コンクリート14及び地盤12に鉛直下方へ作用されることで、地盤12が圧縮変形されつつ基礎コンクリート14が鉛直下方へ沈下される。
【0039】
ここで、各油圧ジャッキ20に油圧ポンプ32が接続されており、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を油圧ポンプ32が制御する。このため、単数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御できる。
【0040】
さらに、制御装置38は、計測計36が検出した対応する油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に基づき、当該油圧ジャッキ20に接続された油圧ポンプ32を制御して、当該油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を制御する。具体的には、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が小さい箇所に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を大きくする。
【0041】
これにより、基礎コンクリート14が厚くされて基礎コンクリート14の剛性が高い場合のみならず、基礎コンクリート14が薄くされて基礎コンクリート14の剛性が低い場合でも、さらに、基礎コンクリート14下側の地盤12の剛性や基礎コンクリート14の剛性が均一でない場合でも、また、油圧ジャッキ20が上台座26から受ける反力が複数の油圧ジャッキ20間で異なってバランスが良くない場合等でも、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を適切に均等(一定)にできる。
【0042】
さらに、図5に示す如く、制御装置38の制御によって、基礎コンクリート14の周縁側の油圧ジャッキ20が作用させる荷重が、基礎コンクリート14の中央の油圧ジャッキ20が作用させる荷重に比し、大きくされる。このため、本実施の形態の如く、基礎コンクリート14下側の地盤12の剛性が略均一にされると共に、基礎コンクリート14上に複数(本実施の形態では9個)の油圧ジャッキ20が均等に配置された場合でも、基礎コンクリート14の沈下量を均等にできる。
【0043】
また、図6に示す如く、基礎コンクリート14上に建築物40(例えばビル)が設けられた場合には、地震時に、基礎コンクリート14の下側の地盤12内で地すべりが発生しつつ、建築物40及び基礎コンクリート14が傾動される。このため、基礎コンクリート14に一端側から他端側(図6では左側から右側)へ向かうに従い大きくなる荷重、すなわち偏心荷重が作用される。
【0044】
ここで、制御装置38は、計測計36が検出した油圧ジャッキ20による基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量に拘らず、複数の油圧ポンプ32を制御することができる。このため、図7に示す如く、油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる荷重を基礎コンクリート14の一端側から他端側へ向かうに従い大きくすることができる。これにより、上記の地震時等を想定して、基礎コンクリート14に偏心荷重を作用させた際の載荷試験を行うことができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、油圧ポンプ32を単数の油圧ジャッキ20に接続して単数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する構成としたが、油圧ポンプ32を単数又は複数の油圧ジャッキ20に接続して単数又は複数の油圧ジャッキ20毎に基礎コンクリート14に作用させる荷重を制御する構成であればよい。
【0046】
また、本実施の形態において、基礎コンクリート14上に補強部材としての正方形板状の鉄板を載置してもよい。この場合、例えば鉄板が基礎コンクリート14と平面視で同一の形状及び大きさにされて、鉄板によって基礎コンクリート14が補強される。
【0047】
さらに、本実施の形態において、基礎コンクリート14と油圧ジャッキ20との間に載置部材としての略長尺矩形柱状の下台座18(作用桁、図8の(A)及び(B)参照)を配置した構成としてもよい。この場合、下台座18は、基礎コンクリート14に比し、剛性が極めて高くされている。
【0048】
また、本実施の形態では、地盤12の基礎形式を直接基礎16にしている。
【0049】
しかしながら、図8の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を杭基礎60にしてもよい。
【0050】
杭基礎60では、地盤12に試験地盤を構成する長尺円軸状の杭62が鉛直下方へ打ち込まれており、杭62は、地盤12の粘性土層12A及びシルト質細砂層12Bを通過して細砂層12Cまで到達している。杭62の上端は、地盤12の上面から突出しており、杭62の上には、載荷版としての下台座18が載置されている。これにより、下台座18の上側から複数の油圧ジャッキ20が下台座18及び杭62に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0051】
また、図9の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式をパイルド・ラフト基礎70にしてもよい。
【0052】
パイルド・ラフト基礎70では、地盤12に試験地盤を構成する長尺円軸状の杭72(パイル)が鉛直下方へ打ち込まれており、杭72は、地盤12の粘性土層12A及びシルト質細砂層12Bを通過して細砂層12Cまで到達している。杭72の上端面は、地盤12の上面と面一にされており、地盤12及び杭72の上には、基礎コンクリート14(ラフト)が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12及び杭72に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0053】
さらに、図10の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を地盤改良基礎80にしてもよい。
【0054】
地盤改良基礎80では、地盤12に試験地盤を構成する例えば平面視矩形枠状の地盤改良部82が設けられており、地盤改良部82では、複数の軸状の地盤改良杭が鉛直下方へ打ち込まれている。地盤改良部82では、複数の地盤改良杭が水平方向へ連続して配置されており、地盤改良杭は、地盤12の粘性土層12Aのみに打ち込まれてシルト質細砂層12Bには到達していない。地盤改良部82(地盤改良杭)の上端面は、地盤12の上面と面一にされており、地盤12及び地盤改良部82の上には、基礎コンクリート14が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12及び地盤改良部82に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0055】
また、図11の(A)及び(B)に示す如く、地盤12の基礎形式を地盤改良併用パイルド・ラフト基礎90にしてもよい。
【0056】
地盤改良併用パイルド・ラフト基礎90では、パイルド・ラフト基礎70と同様に地盤12に杭72(パイル)が打ち込まれると共に、地盤改良基礎80と同様に地盤12に地盤改良部82が設けられている。地盤12、杭72及び地盤改良部82の上には、基礎コンクリート14(ラフト)が載置されている。これにより、基礎コンクリート14の上側から複数の油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14、地盤12、杭72及び地盤改良部82に鉛直下方への荷重を作用させる。
【0057】
ここで、地盤12の基礎形式が図9の(A)及び(B)に示すパイルド・ラフト基礎70である場合には、基礎コンクリート14の周部下側が基礎コンクリート14の中央下側に比し地盤12(杭72を含む)の剛性を小さくされている。
【0058】
このため、仮に、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を常に同一にすると、基礎コンクリート14の周部側の沈下量が基礎コンクリート14の中央側の沈下量に比し大きくなる(図12(B)の1点鎖線参照)。
【0059】
一方、図12(A)に示す如く、初期は、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を同一にしても、その後は、図12(B)に示す如く、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が大きい箇所(基礎コンクリート14の周部側)に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を小さくすることで、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を均等にできる(図12(B)の2点鎖線参照)。
【0060】
また、地盤12の基礎形式が図10の(A)及び(B)に示す地盤改良基礎80である場合には、基礎コンクリート14の中央下側が基礎コンクリート14の周部下側に比し地盤12(地盤改良部82を含む)の剛性を小さくされている。
【0061】
このため、仮に、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を常に同一にすると、基礎コンクリート14の中央側の沈下量が基礎コンクリート14の周部側の沈下量に比し大きくなる(図13(B)の1点鎖線参照)。
【0062】
一方、図13(A)に示す如く、初期は、全ての油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に鉛直下方へ作用させる荷重を同一にしても、その後は、図13(B)に示す如く、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量が大きい箇所(基礎コンクリート14の中央側)に配置された油圧ジャッキ20が基礎コンクリート14に作用させる鉛直下方への荷重を小さくすることで、基礎コンクリート14の鉛直下方への沈下量を均等にできる(図13(B)の2点鎖線参照)。
【符号の説明】
【0063】
10 載荷試験装置
12 地盤(試験地盤)
14 基礎コンクリート(載荷版)
18 下台座(載荷版)
20 油圧ジャッキ(載荷手段)
32 油圧ポンプ(荷重制御手段)
36 計測計(計測手段)
38 制御装置(荷重制御手段)
62 杭(試験地盤)
72 杭(試験地盤)
82 地盤改良部(試験地盤)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験地盤の上に載置される載荷版と、
前記載荷版に荷重を作用させて前記載荷版を沈下させる複数の載荷手段と、
前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を前記載荷手段毎に分けて制御する荷重制御手段と、
を備えた載荷試験装置。
【請求項2】
前記載荷版の複数箇所の沈下量を計測する計測手段を備え、
前記荷重制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき前記載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を大きくする
請求項1記載の載荷試験装置。
【請求項1】
試験地盤の上に載置される載荷版と、
前記載荷版に荷重を作用させて前記載荷版を沈下させる複数の載荷手段と、
前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を前記載荷手段毎に分けて制御する荷重制御手段と、
を備えた載荷試験装置。
【請求項2】
前記載荷版の複数箇所の沈下量を計測する計測手段を備え、
前記荷重制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき前記載荷版の沈下量が小さい箇所に配置された前記載荷手段が前記載荷版に作用させる荷重を大きくする
請求項1記載の載荷試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−38783(P2011−38783A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183476(P2009−183476)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]