説明

輝尽性蛍光体、その製造方法、放射線画像変換パネル及びその製造方法

【課題】 X線損傷による輝度低下が少なく、耐湿性に優れた輝尽性蛍光体、その製造方法、これを用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 輝尽性蛍光体を以下の工程で製造することを特徴とする輝尽性蛍光体の製造方法。
(A)輝尽性蛍光体を生成する工程
(B)該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線損傷による輝度低下が少なく、耐湿性に優れた輝尽性蛍光体、その製造方法、放射線画像変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像のような放射線像は病気診断用等に多く用いられている。このX線画像を得るために被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせてこの可視光を通常の写真を撮るときと同じように銀塩を使用したフィルムに照射して現像した、いわゆる放射線写真が利用されている。しかし近年銀塩を塗布したフィルムを使用しないで蛍光体層から直接画像を取り出す方法が工夫されるようになった。
【0003】
この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後にこの蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することにより、この蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。具体的には、例えば米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号公報等に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0004】
この方法は輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後に輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線等の電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を例えば光電変換し、電気信号を得て、この信号を感光フィルム等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0005】
上記の放射線画像記録再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線像を得ることができるという利点がある。
【0006】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用上では、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0007】
従来より放射線画像変換パネルに用いられてきた輝尽性蛍光体の例としては、
(1)特開昭55−12145号公報に記載されている(Ba1-X,M2+X)FX:yA(ただし、M2+はMg、Ca、Sr、Zn及びCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br及びIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb及びErのうちの少なくとも一つ、そしてxは0≦x≦0.6、yは0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい:特開昭56−74175号公報に記載されている、X′、BeX″、M3X″′3(ただし、X′、X″及びX″′はそれぞれCl、Br及びIのうち少なくとも一種であり、M3は三価金属である);
特開昭55−160078号公報に記載されているBeO、BgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al23、Y2O3、La23、In23、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb25、Ta25及びThO2等の金属酸化物;特開昭56−116777号公報に記載されているZr、Sc;特開昭57−23673号公報に記載されているB;特開昭57−23675号公報に記載されているAs、Si;
特開昭58−206678号公報に記載されているM・L(ただし、MはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である);特開昭59−27980号公報に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号公報に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸及びヘキサフルオロジルコニム酸の一価または二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号公報に記載されているNaX′(ただし、X′はCl、Br及びIのうちの少なくとも一種である);特開昭59−56480号公報に記載されているV、Cr、Mn、Fe、Co及びNi等の遷移金属;
特開昭59−75200号公報に記載されているM1X′、M′2X″、M3X″′、A(ただし、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′2はBe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり;M3はAl、Ga、In、及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;Aは金属酸化物であり;X′、X″及びX″′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);特開昭60−101173号公報に記載されているM1X′(ただし、M1はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭61−23679号公報に記載されているM2′X′2・M2′X″2(ただし、M2′はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′及びX″はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である);及び特願昭60−106752号明細書に記載されているLnX″3(ただし、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
(2)特開昭60−84381号公報に記載されているM22・aM22:xEu2+(ただし、M2はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X及びX′はCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦0.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;
また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい;特開昭60−166379号公報に記載されているM1X″(ただし、M1はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);特開昭60−221483号公報に記載されているKX″、MgX″′2、M3X″″3(ただし、M3はSc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X″′及びX″″はいずれもF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);特開昭60−228592号公報に記載されているB;特開昭60−228593号公報に記載されているSiO2、P25等の酸化物;特開昭61−120882号公報に記載されているLiX″、NaX″(ただし、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);特開昭61−120883号公報に記載されているSiO;特開昭61−120885号公報に記載されているSnX″2(ただし、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭61−235486号公報に記載されているCsX″、SnX″′2(ただし、X″及びX″′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);及び特開昭61−235487号公報に記載されているCsX″、Ln3+(ただし、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である);
(3)特開昭55−12144号公報に記載されているLnOX:xA(ただし、LnはLa、Y、Gd、及びLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つ;AはCe及びTbのうち少なくとも一つ;そして、xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体;
(4)特開昭58−69281号公報に記載されているM3OX:xCe(ただし、M3はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体;
(5)特願昭60−70484号明細書に記載されているM1X:xBi(ただし、M1はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;
(6)特開昭60−141783号公報に記載されているM25(PO43X:xEu2+(ただし、M2はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
(7)特開昭60−157099号公報に記載されているM22BO3X:xEu2+(ただし、M2はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;
(8)特開昭60−157100号公報に記載されているM22PO4X:xEu2+(ただし、M2はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
(9)特開昭60−217354号公報に記載されているM2HX:xEu2+(ただし、M2はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;
(10)特開昭61−21173号公報に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+(ただし、Ln及びLn′はそれぞれY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X及びX′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;
(11)特開昭61−21182号公報に記載されているLnX3・aM1X′:xCe3+(ただし、Ln及びLn′はそれぞれY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M1はLi、Na、K、Cs及びRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体;
(12)特開昭61−40390号公報に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+(ただし、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;
(13)特願昭60−78151号明細書に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+(ただし、X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体;及び
(14)特願昭60−78153号明細書に記載されているM22・aM1X′:xEu2+(ただし、M2はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M1はLi、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体;を挙げることができる。
【0008】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、及びヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線像の蓄積を行うことができ繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0010】
そこで、放射線画像変換パネルには得られる放射線像の画質を劣化させることなく長期間の使用に耐える性能を付与することが望ましい。
【0011】
しかし放射線画像変換パネルの製造に用いられる輝尽性蛍光体は一般に吸湿性が大であり、通常の気候条件の室内に放置すると空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに著しく劣化する。
【0012】
具体的には、例えば輝尽性蛍光体を高湿度のもとに置くと、吸収した水分の増大にともなって前記蛍光体の放射線感度が低下する。また一般には輝尽性蛍光体に記録された放射線像の潜像は、放射線照射後の時間の経過にともなって退行するため、再生される放射線像信号の強度は放射線照射から励起光による走査までの時間が長いほど小さくなるという性質を有するが、輝尽性蛍光体が吸湿すると前記潜像退行の速さが速くなる。
【0013】
そのため、吸湿した輝尽性蛍光体を有する放射線画像変換パネルを用いると、放射線像の読み取り時再生信号の再現性が低下する。
【0014】
また、輝尽性蛍光体の粒子は、一般的にはその輝尽性は、粒子径に依存することが知られており、特開昭55−163500号には、平均粒子径1〜30μmのものが好ましいとされている。また、前記蛍光体粒子サイズと感度、粒状性、鮮鋭性等の特性値の関係が特公平3−79680号に開示されている。
【0015】
これらの輝尽性蛍光体の粒子のサイズ及び形状を制御する試みが液相法で特開平7−233369号に開示され、ここでは、従来法として希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造法は、原料化合物のアルカリ土類金属弗化物、弗化物以外のアルカリ土類金属ハロゲン化物、希土類元素のハロゲン化物、弗化アンモニウム等を一緒に乾式混合するか、または水系媒体中に懸濁させて混合した後、焼成し粉砕するのに対し、水溶液中で希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を沈殿させる方法が開示されている。
【0016】
上記の水溶液中で希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を沈殿させる液相法により粉砕による性能の劣化なしに、小粒径のそろった蛍光体粒子が得られるようになった。
【0017】
しかし感度が高く、小粒径化することによって水分による劣化やX線損傷が従来以上に問題となってきた。
【0018】
従来、輝尽性蛍光体粒子の吸湿による前記の劣化現象を防止するために、チタネート系カップリング剤による方法(例えば、特許文献1参照。)、シリコーンオイルによる方法(例えば、特許文献2参照。)、シランカップリング剤による方法(例えば、特許文献3参照。)等が提案されているが、輝尽発光量に優れ、X線損傷も少なく、粒状性が良好な輝尽性蛍光体の製造方法、輝尽性蛍光体及び放射線画像変換パネルは未だ得られていない。
【特許文献1】特公平2−278196号公報
【特許文献2】特公平5−52919号公報
【特許文献3】特公昭62−209398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、X線損傷による輝度低下が少なく、耐湿性に優れた輝尽性蛍光体、その製造方法、これを用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0021】
(請求項1)
輝尽性蛍光体を以下の工程で製造することを特徴とする輝尽性蛍光体の製造方法。
(A)輝尽性蛍光体を生成する工程
(B)該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程
(請求項2)
前記触媒が錫を含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【0022】
(請求項3)
前記触媒の添加量が輝尽性蛍光体に対して、0.01〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【0023】
(請求項4)
前記シランカップリング剤がメルカプト基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【0024】
(請求項5)
輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体であり、かつ、請求項1〜4のいずれか1項に記載の輝尽性蛍光体の製造方法により得られたことを特徴とする輝尽性蛍光体。
【0025】
一般式(1)
(Ba1-x1)FX:yM2,zLn
(式中、M1は、Mg、Ca、Sr、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属原子、M2はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子、XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である。x、y及びzは、それぞれ0≦x≦0.6、0≦y≦0.05、0≦z≦0.2の数値を表す。)
(請求項6)
支持体上に請求項5に記載の輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0026】
(請求項7)
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体を生成する工程、該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程、及び支持体上に被覆された該輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を作製する工程を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、X線損傷による輝度低下が少なく、耐湿性に優れた輝尽性蛍光体、その製造方法、これを用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者は鋭意研究の結果、輝尽性蛍光体を以下の工程で製造することにより、X線損傷による輝度低下が少なく、耐湿性に優れた輝尽性蛍光体が得られることを見出した。本発明は該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆することが特徴である。
(A)輝尽性蛍光体を生成する工程
(B)該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程
以下本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明者らは輝尽性蛍光体の吸湿による感度劣化現象について調査するなかで、性能劣化は吸湿による蛍光体の潮解と蛍光体の変質によって発生することを発見した。この現象は、特にX原子を含有する輝尽性蛍光体で発生しやすい。
【0030】
従って、潮解と変質のどちらか一方のみを防止しても根本的な解決にはならない。そこで、潮解と変質の両方を防止すべく鋭意検討することにより上記本発明の構成で前記課題を解決することを見出した。
【0031】
上記の潮解とは、蛍光体粒子が空気中の水蒸気を取って自分で水溶液を作る現象をいい、変質とは潮解はしないが空気中の水蒸気により蛍光体自体の蛍光特性が変化することをいう。変質の機構については明確ではないが、蛍光体粒子内部の構造変化等が考えられる。
【0032】
本発明は、潮解と変質の両方の防止に効果があるが、もちろん潮解特性を有しない蛍光体粒子においても有効である。本発明の効果は蛍光体の変質や潮解を防止するところにある。
【0033】
蛍光体の吸湿特性は毛管凝集をはじめとする多種の原因で発生すると考えられるが、一旦水蒸気が水滴として蛍光体粒子間に発生すると潮解により性能劣化が起こる。
【0034】
本発明においては、例えば、次のいずれかの構成でこの潮解を抑制することができる。
(1)輝尽性蛍光体を、触媒の存在下で金属酸化物とシランカップリング剤で被覆する。
(2)第1の金属酸化物の存在下で輝尽性蛍光体の前駆体を焼成後、触媒の存在下でシランカップリング剤で被覆する、または、第1の金属酸化物の存在下で輝尽性蛍光体の前駆体を焼成後、触媒の存在下でシランカップリング剤と第2の金属酸化物とで被覆する。ここで、輝尽性蛍光体の前駆体とは、輝尽性発光性や瞬時発光性をほとんど示さない物質をいう。例えば、一般式(1)で表される化合物が600℃以上の高温を経ていない状態をいう。また、固相法における輝尽性蛍光体の前駆体は、輝尽性蛍光体材料そのもの、または輝尽性蛍光体材料を混合したもの、またはこれらの物質が600℃以上の高温を得ていない状態をいう。
【0035】
以下、これらの方法について説明する。
【0036】
(1)について
本発明における金属酸化物による被覆処理はこのような潮解の発生を防止する効果があると推測される。特に疎水化処理された金属酸化物でその効果が大きい。ただし、金属酸化物で蛍光体を被覆処理した後に触媒の存在下でシランカップリング剤で処理することにより金属酸化物に同様の効果を与えることができる。
【0037】
蛍光体の変質防止については触媒の存在下でシランカップリング剤が有効であるが、蛍光体粒子とシランカップリング剤による珪素含有被膜を直接蛍光体粒子に形成することは困難であった。
【0038】
本発明においては、第2の金属酸化物の被覆処理と触媒の存在下でシランカップリング剤による表面処理を行うため、シランカップリング剤による珪素含有被膜が蛍光体粒子上に分散する金属酸化物の周囲を埋めるように連続相を形成するためにシランカップリング剤が有効に機能すると考えられる。
【0039】
第2の金属酸化物による被覆と触媒の存在下でシランカップリング剤による表面処理は同時に行うか、または金属酸化物の被覆後触媒の存在下でシランカップリング剤による表面処理の順序で行うのが効果がある。
【0040】
本発明に使用する第2の金属酸化物はシリカ、アルミナ、酸化チタンの1種または2種以上からなり粒径は2〜50nmのものが好ましい。粒径が2nm以下のものは工業的に入手が困難であり、50nmを超えると蛍光体粒子の表面を良好に被覆することが難しい。
【0041】
(金属酸化物)
このような金属酸化物としては、火炎加水分解法やアーク法によるシリカ、アルミナ、二酸化チタンのような乾式法金属酸化物のほか、ケイ酸ナトリウムのような塩の酸による分解で得られる湿式法金属酸化物、オルガノゲルの加水分解によるもの等各種の製造方法によって得られるものが用いられる。
【0042】
金属酸化物の疎水化処理方法としては、例えばジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤による処理やシリコーンオイルでの処理がある。また既に疎水化処理済みの金属酸化物も工業的に入手が可能である。
【0043】
平均粒径が数〜数十μmの蛍光体粒子に対して適当量の金属酸化物を混合するには通常のどのような方法も使用可能であるが、ターブラシェーカーミキサー(シンマルエンタープライゼス社製)のような混合装置を使用し、金属酸化物全量に対して蛍光体粒子を徐々に添加していく方式で混合する方法や0.5〜10.0質量%の金属酸化物分散液中で蛍光体粒子を撹拌した後に濾過し乾燥する方法等が粒子の均一被覆の点で好ましい。
【0044】
(シランカップリング剤)
本発明で使用されるシランカップリング剤は下記一般式(2)で表される。
【0045】
【化1】

【0046】
式中、Rは脂肪族または芳香族の炭化水素基を表し、不飽和基(例えばビニル基)を介在していてもよいし、ROR′−、RCOOR′−RNHR′−(Rはアルキル基、アリール基、R′はアルキレン基、アリーレン基)その他の置換基で置換されていてもよい。
【0047】
また、X1、X2、X3は脂肪族または芳香族の炭化水素、アシル基、アミド基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子を表し、X1、X2、X3は同じであっても互いに異なっていてもよい。但し少なくとも1つは炭化水素以外の基である。なお、X1、X2、X3は加水分解を受ける基であることが望ましい。
【0048】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩及びアミノシラン配合物等が挙げられる。なかでも特にビニル系、メルカプト系、グリシドキシ系、メタクリロキシ系が好ましく、特にメルカプト系がより好ましい。
【0049】
特に好ましいシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらメルカプト系シランカップリング剤と同様の効果を与えるものとして、1−メルカプトメチル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、1−(3−メルカプトプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0050】
本発明者らの検討によると、輝尽性蛍光体を有する放射線画像変換パネルにX線曝射を繰り返すと輝度低下が生じるが、この原因の一つが輝尽性蛍光体のハロゲン、特にヨウ素の析出による黄色化であることが判明した。還元性を有するシランカップリング剤は輝尽性蛍光体の変色を防ぐ効果があり、上記の特に好ましいシランカップリング剤及びシロキサンは防湿効果の他に、蛍光体の着色による感度低下を防止する効果もプラスされる。特にメルカプト基を含有する化合物の変色防止効果が顕著となるのは、蛍光体が構造中にヨウ素を含む場合であり、遊離したヨウ素による蛍光体の黄化を有効に防止する。
【0051】
(触媒)
シランカップリング剤は、水により加水分解されてシラノールとなり、部分的に縮合してオリゴマー状態になる。続いて無機質(蛍光体、金属酸化物)の表面に水素結合的に吸着する。その後乾燥処理することで脱水縮合し無機質と強固な化学結合をする。本発明で使用する触媒は、この反応を促進するものでシラノール縮合触媒が用いられる。
【0052】
シラノール縮合触媒には錫系触媒、チタン系触媒等がある。錫系触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ビス(アセトキシジブチル錫)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチル錫)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチル錫ビスマレイン酸モノブチルエステル、オクタン酸第一錫、テトラブチル錫、モノブチル錫トリクロライド、ジブチル錫ジクロライド、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、テトラオクチル錫、ジオクチル錫ジクロライド、ジオクチル錫オキサイド、テトラメチル錫等が挙げられる。チタン系触媒としては、イソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトナート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は市販されている。
【0053】
本発明においては、錫系触媒が好ましい。
【0054】
金属酸化物で被覆した蛍光体粒子に上記シランカップリング剤を付着するにあたっては、公知の方法を使用することができる。例えばヘンシルミキサーを用い、蛍光体粒子を攪拌混合しながら触媒及びシランカップリング剤を滴下または噴霧する乾式法、スラリー状の蛍光体に触媒及びシランカップリング剤を滴下しながら攪拌し、滴下終了後に蛍光体を沈澱させ濾過してから蛍光体を乾燥させ残留溶媒を除去するスラリー法、蛍光体を溶媒に分散させ、ここに触媒及びシランカップリング剤を添加して攪拌した後、溶媒を蒸発して付着層を形成する方法、または触媒及びシランカップリング剤を輝尽性蛍光体用塗布分散液に添加しておく方法等である。またシランカップリング剤の乾燥は蛍光体との反応を確実なものにするため60〜130℃で10〜200分程度行うことが望ましい。
【0055】
なお、本発明の効果が顕著に出現するのは、金属酸化物での被覆と触媒の存在下でシランカップリング剤での表面処理を同時に行った場合である。
【0056】
このような処理方法の一例としては、金属酸化物、触媒及びシランカップリング剤の分散液中で焼成直後の蛍光体粒子を液中解砕し、蛍光体の解砕と同時に金属酸化物での被覆と触媒及びシランカップリング剤での表面処理を行った後、濾過乾燥する方法や金属酸化物及び触媒とシランカップリング剤を輝尽性蛍光体層用塗布分散液に添加しておく方法等が挙げられるが、これらに限られたものではない。
【0057】
本発明においては、金属酸化物の量が蛍光体に対して10質量%を越えると感度の低下が発生し0.05質量%より少ないと本発明の効果は半減する。
【0058】
またシランカップリング剤量も蛍光体量に対して5質量%より多いと感度が低下し塗膜も硬質化し膜面にひび割れ等が発生する。また0.1質量%以下だと本発明の効果は半減する。
【0059】
(2)について
はじめに触媒及びシランカップリング剤を用いる例を説明する。本発明に従って焼成前の前駆体粒子を第1の金属酸化物での被覆後に焼成処理した後、触媒及びシランカップリング剤で表面処理すると耐湿性の大きい蛍光体粒子が得られ、分散、調液、塗布工程を経て支持体上に蛍光体層として塗布されても粒子の耐湿性向上の効果は保持される。蛍光体粒子と金属酸化物は電気的な力で結合していると考えられるが、分散、調液、塗布工程でこの電気力以上の力が作用すると、金属酸化物の蛍光体粒子からの剥離が発生すると考えられるが、つまり、(2)の方法で触媒及びシランカップリング剤を用いれば、この剥離を抑制でき、塗布後も耐湿性、X線損傷防止効果が得られる。
【0060】
特に、焼成効率を損なわない範囲で第1の金属酸化物量を決定し、焼成後に不足分の第2の金属酸化物量で蛍光体粒子を被覆した後に触媒及びシランカップリング剤での処理を行うことで焼成効率の低下による発光特性の低下を抑制できるという効果を得ることができる。
【0061】
なぜ、金属酸化物が、分散、調液、塗布工程で蛍光体粒子から剥離しなくなるのかは不明であるが、焼成において蛍光体粒子と金属酸化物の間に何らかの結合が生じるためと推測される。
【0062】
本発明における第1の金属酸化物量としては、蛍光体粒子の焼結防止の点でアルミナが好ましく、焼成効率の点で蛍光体前駆体量に対して0.01〜2.0質量%が好ましい。
【0063】
また第1の金属酸化物としてアルミナを使用した場合は第2の金属酸化物としては特にシリカを使用すると、蛍光体の耐湿性がより向上する。なぜ、シリカでより耐湿性が向上するかは明確ではないが、アルミナと帯電特性が異なるため蛍光体表面に固定化されたアルミナ粒子と強い電気的な力が働くためと推測される。
【0064】
本発明に使用される金属酸化物の粒径は2〜50nmのものが好ましい。粒径が2nm未満のものは工業的に入手が困難であり、50nmを越えると蛍光体粒子の表面を良好に被覆することが難しくなる。
【0065】
本発明においては、金属酸化物の総量が蛍光体に対して10質量%以下であると感度の低下を低減でき、0.01質量%より多ければ本発明の効果をより向上できる。
【0066】
またシランカップリング剤量も蛍光体量に対して5質量%以下であると感度の低下を低減でき、塗膜も硬質化しにくく膜面にひび割れ等が発生することを低減できる。また0.1質量%より多いと本発明の効果をより向上できる。
【0067】
本実施の形態(2)で用いられる金属酸化物としては、上記実施の形態(1)で用いられる金属酸化物と同様である。また、第1の金属酸化物と第2の金属酸化物は、同じ物質であってもよいし、異なる物質であってもよい。
【0068】
(パネル作製、蛍光体層、塗布工程、支持体、保護層)
本発明の放射線画像変換パネルにおいて用いられる支持体としては各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シートあるいは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。
【0069】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には3〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。
【0070】
これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0071】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0072】
本発明において輝尽性蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;及び、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等のような合成高分子物質等により代表される結合剤を挙げることができる。
【0073】
このような結合剤の中で特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、ニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物及びポリウレタンとポリビニルブチラールとの混合物である。なお、これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。輝尽性蛍光体層は、例えば、次のような方法により下塗層上に形成することができる。
【0074】
まず、輝尽性蛍光体、黄変防止のための亜燐酸エステル等の化合物及び結合剤を適当な溶剤に添加し、これらを充分に混合して結合剤溶液中に蛍光体粒子及び該化合物の粒子が均一に分散した塗布液を調製する。
【0075】
本発明に用いられる結着剤としては、例えばゼラチンのような蛋白質、デキストランのようなポリサッカライドまたはアラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニルデン・塩化ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール等のような通常層構成に用いられる造膜性の結着剤が使用される。一般に結着剤は輝尽性蛍光体1質量部に対して0.01〜1質量部の範囲で使用される。しかしながら得られる放射線画像変換パネルの感度と鮮鋭性の点では結着剤は少ない方が好ましく、塗布の容易さとの兼合いから0.03〜0.2質量部の範囲がより好ましい。
【0076】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比(ただし、結合剤全部がエポキシ基含有化合物である場合には該化合物と蛍光体との比率に等しい)は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、蛍光体の種類、エポキシ基含有化合物の添加量等によって異なるが、一般には結合剤塗布液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エノタール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;トルエン;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0077】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製に用いられる溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル、トリオール、キシロール等の芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0078】
なお、塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤等の種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤等を挙げることができる。そして可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニル等の燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル等のグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステル等のポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステル等を挙げることができる。
【0079】
なお、輝尽性蛍光体層用塗布液中に、輝尽性蛍光体層蛍光体粒子の分散性を向上させる目的で、ステアリン酸、フタル酸、カプロン酸、親油性界面活性剤等の分散剤を混合してもよい。また必要に応じて結着剤に対する可塑剤を添加してもよい。前記可塑剤の例としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル、コハク酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル等のグリコール酸エステル等が挙げられる。
【0080】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機等の分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液をドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等の塗布液を用いて支持体上に塗布し、乾燥することにより輝尽性蛍光体層が形成される。
【0081】
本発明の放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結着剤と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0082】
支持体上に蛍光体層が塗設された蛍光体シートを所定の大きさに断裁する。断裁にあたっては一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0083】
所定の大きさに断裁された蛍光体シートは一般に防湿性保護フィルムで封止される。封止方法としては、例を挙げると蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間で挟み周縁部をインパルスシーラで加熱融着する方法や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0084】
上記インパルスシーラで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0086】
実施例1
(放射線画像変換パネルの作製)
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(1.75mol/l)2500mlとEuBr3水溶液(0.067mol/l)125mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を攪拌しながら83℃で保温した。弗化アンモニウム水溶液(8mol/l)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後も保温と攪拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行った。次に沈澱物をろ別後、メタノールにより洗浄した後真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0087】
次に、得られたユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を表1に記載の金属酸化物(蛍光体の0.5質量%)、触媒(蛍光体に対する添加量は表1参照)及びシランカップリング剤(蛍光体の2.0質量%)を添加したエタノール分散液中に浸してスラリー状とした後、乳鉢解砕し80℃で3時間乾燥した。乾燥後、分級して、平均粒径7μmの粒子を得た。なお、この時使用した金属酸化物、触媒及びシランカップリング剤は以下の通りである。
【0088】
〈金属酸化物〉
A1:シリカ粒子(日本アエロジル社製、粒径12nm)
〈触媒〉
B1:ジブチル錫ジアセテート
B2:ジブチル錫ジラウレート
B3:イソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)
〈シランカップリング剤〉
C1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
C2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
次に、蛍光体層形成材料として、上記で得たユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体427g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて下塗付きポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、230μmの厚さの蛍光体層を形成した。上記塗布サンプルを10cm×10cmの正方形に断裁し、保護フィルムとしてPET(30μm)とCPP(40μm)を貼り合わせたフィルムを用い、CPP面を内側にして蛍光体プレートを包み込み、減圧下で蛍光体プレートより外側の4辺を熱融着させることにより放射線画像変換パネルを作製した。
【0089】
(放射線画像変換パネルの評価)
放射線画像変換パネルについて、撥水性、耐湿性及びX線損傷を下記のように評価した。その結果を表1に示す。
【0090】
〈撥水性〉
撥水性はメタノールウエッタビリティー法よる疎水化度(MW値)で表す。一般に20以上が疎水性、5以下が親水性といわれる。
【0091】
〈耐湿性〉
上記作製した放射線画像変換パネルをそれぞれ2部ずつ用意し、一部はそのままで基準試料とし、残りの一部は40℃、90%RHの雰囲気下で15日間処理を行い、これを強制劣化処理試料とした。それぞれ基準試料及び強制劣化試料を用いた放射線画像変換パネルの輝度を評価し、強制劣化による輝度劣化率を測定しこれを耐湿性の指標とした。
【0092】
輝度の測定は、レジウス170(コニカ(株)製)を用い、各々の放射線画像変換パネル(試料)に管電圧80kVp、200mRのX線を照射した後、各試料をHe−Neレーザー光(633nm)4.0J/m2で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を光学フィルター(B−410)を通して受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して輝尽発光量を測定し、これを輝度と定義し、基準試料を用いた放射線画像変換パネルに対する強制劣化処理試料を用いた放射線画像変換パネルの輝度劣化率を算出し、下記の基準によりランク付けを行った。
【0093】
5:輝度劣化率が2%未満
4:輝度劣化率が2〜5%未満
3:輝度劣化率が5〜10%未満
2:輝度劣化率が10〜15%未満
1:輝度劣化率が15%以上
上記ランクにおいて、4以上であれば実用上許容範囲にある。
【0094】
〈X線損傷〉
上記耐湿性の測定方法と同じ方法で測定した輝度を初期輝度とし、さらに放射線画像変換パネル(試料)に管電圧80kVp、200mRのX線を照射、He−Neレーザー光(633nm)4.0J/m2で走査して励起し読み取る、照射・走査を500回行った後の輝度を測定した。初期輝度に対する輝度劣化率を算出し、下記の基準によりランク付けを行った。
【0095】
5:輝度劣化率が2%未満
4:輝度劣化率が2〜5%未満
3:輝度劣化率が5〜10%未満
2:輝度劣化率が10〜15%未満
1:輝度劣化率が15%以上
上記ランクにおいて、3以上であれば実用上許容範囲にある。
【0096】
【表1】

【0097】
表1より明らかなように、本発明の試料は、比較例に対して撥水性、耐湿性及びX線損傷に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝尽性蛍光体を以下の工程で製造することを特徴とする輝尽性蛍光体の製造方法。
(A)輝尽性蛍光体を生成する工程
(B)該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程
【請求項2】
前記触媒が錫を含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の添加量が輝尽性蛍光体に対して、0.01〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤がメルカプト基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の輝尽性蛍光体の製造方法。
【請求項5】
輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体であり、かつ、請求項1〜4のいずれか1項に記載の輝尽性蛍光体の製造方法により得られたことを特徴とする輝尽性蛍光体。
一般式(1)
(Ba1-x1)FX:yM2,zLn
(式中、M1は、Mg、Ca、Sr、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属原子、M2はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子、XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である。x、y及びzは、それぞれ0≦x≦0.6、0≦y≦0.05、0≦z≦0.2の数値を表す。)
【請求項6】
支持体上に請求項5に記載の輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体を生成する工程、該輝尽性蛍光体を触媒の存在下で金属酸化物及びシランカップリング剤で被覆する工程、及び支持体上に被覆された該輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を作製する工程を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【公開番号】特開2006−8838(P2006−8838A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187578(P2004−187578)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】