説明

輝尽性蛍光体シート封止体、輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法

【課題】 防湿性封止フィルムを使用して輝尽性蛍光体シートを封止し封止体とする時、保存性に優れ、使用する地域の環境の影響を受け難く、画像性能の低下がない封止体、封止体の製造方法の提供。
【解決手段】 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体シートの前記輝尽性蛍光体層側と前記支持体側とを封止部材で覆い、減圧条件下で前記封止部材で封止した輝尽性蛍光体シート封止体において、前記輝尽性蛍光体シート封止体は内圧を調整する内圧調整手段を有し、前記内圧調整手段により使用時に前記輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とすることで、使用時の内圧を調整し得ることを特徴とする輝尽性蛍光体シート封止体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輝尽性蛍光体シートの表面と、裏面と、周縁部とを封止部材で封止した輝尽性蛍光体シート封止体(以下、封止体ともいう)及び輝尽性蛍光体シート封止体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、近年では、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。この方法としては、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後この蛍光体を例えば光又は熱エネルギーで励起することによりこの蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的には、例えば米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に開示された様に基材上に輝尽性蛍光体層を形成したプレートを使用するものである。この方法は、このプレートの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線をあてて、被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて潜像(蓄積像)を形成し、その後、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光(レーザー光が用いられる)で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号をハロゲン化銀写真感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生してもよいし、又、ハードコピーとして再生してもよい。
【0004】
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で、且つ情報量の豊富な放射線画像を得ることが出来るという利点を有している。
【0005】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が一般的に利用される。
【0006】
これらの輝尽性蛍光体を使用したプレートは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことが出来、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、1回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法ではプレートを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0007】
このプレートには、基材上に結着樹脂溶液の輝尽性蛍光体粒子分散液を塗布乾燥する方法によって形成された分散タイプの輝尽性蛍光体層を有するものと、基材上に気相堆積法によって形成された蒸着タイプの輝尽性蛍光体層を有するものとがあり、何れにしてもプレートの輝尽性蛍光体層には、放射線吸収率及び光変換率が高いこと、画像の粒状性がよく、高鮮鋭性であることが要求される。
【0008】
蒸着タイプの輝尽性蛍光体層は、分散タイプの輝尽性蛍光体層に比較すると、輝尽性蛍光体が100%であることから、輝尽性蛍光体が同じ場合、同じ層厚では感度が優れ、放射線吸収率が高いことで相対的に量子モトルが減少して粒状性も優れるプレートを与え、感度を同じ程度にすれば層厚を薄く出来て、輝尽性蛍光体層内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れたプレートが得られることが知られている。
【0009】
この輝尽性蛍光体を使用したプレートは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の照射によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線像の蓄積を行うことが出来、繰り返し使用することが可能である。つまり、従来の放射線写真方では、1回の撮影ごとに穂斜線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法は放射線画像変換パネルを繰り返し使用するため、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0010】
しかしながらプレートに用いられる輝尽性蛍光体は一般に吸湿性が大きく、通常の使用環境下においても劣化が激しく、吸湿すると蛍光体の感度や潜像の劣化が起きる。特に蒸着で形成した輝尽性蛍光体は結合材などで覆われていないため特に吸湿性が大きいことが知られている。このため、長期に繰り返して使用するためにプレートの吸湿対応が検討されてきた。例えば、支持体上の輝尽性蛍光体層の周囲を取り囲む封止枠を設け、封止枠上をガラスで接着する方法が知られている(特許文献1を参照。)。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、防湿性はほぼ完全である反面、ある程度の厚みを必要とするため、画像性能の劣化が生じてしまう欠点を有している。又、支持体上に輝尽性蛍光体層を有するプレートを2枚の防湿性の保護フィルム(封止フィルム)で挟み、プレートと防湿性の保護フィルム(封止フィルム)との間に形成される空間の気圧が、100Pa以上60000Pa以下に減圧調整し、封止する技術が知られている(特許文献2を参照。)。特許文献2に記載の技術は、プレートを薄くすることが出来、画像性能の劣化を防止し、機械的な共振などの封止材そのものが振動して生じる画質劣化を生じさせない利点もある。しかしながら、次の欠点を有している。
【0011】
1)100Pa以上60000Pa以下に減圧調整し、封止した場合、使用する地域の環境、例えば高地と低地では大気圧に差があるため、地域によっては輝尽性蛍光体層に封止フィルムが密着したり、封止フィルム体が膨らみ平面性が得られなくなる。
【0012】
2)密着状態では蛍光体層で反射した輝尽励起光が封止フィルム内で平面方向に伝播し別箇所の蛍光体を励起させてしまい鮮鋭性を低下させてしまう恐れがある。
【0013】
3)封止フィルム体が膨らみ平面性が得られなくなった場合、鮮鋭性を低下させてしまう恐れがある。
【0014】
4)ある程度のテンションがかかっていないとフィルム面が波打ち、画像性能が低下する。
【0015】
これらの状況から、防湿性封止フィルムを使用して輝尽性蛍光体シートを封止し封止体とする時、保存性に優れ、使用する地域の環境の影響を受け難く、画像性能の低下がない封止体、封止体の製造方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004−77243号公報
【特許文献2】特開2002−286896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、防湿性封止フィルムを使用して輝尽性蛍光体シートを封止し封止体とする時、保存性に優れ、使用する地域の環境の影響を受け難く、画像性能の低下がない封止体、封止体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0018】
(請求項1)
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体シートの前記輝尽性蛍光体層側と前記支持体側とを封止部材で覆い、減圧条件下で前記封止部材で封止した輝尽性蛍光体シート封止体において、
前記輝尽性蛍光体シート封止体は内圧を調整する内圧調整手段を有し、
前記内圧調整手段により使用時に前記輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とすることで、使用時の内圧を調整し得ることを特徴とする輝尽性蛍光体シート封止体。
【0019】
(請求項2)
前記輝尽性蛍光体シート封止体の使用時の内圧は、使用環境の大気圧の−25〜−50kPaであることを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【0020】
(請求項3)
前記内圧調整手段が吸気弁であり、使用前は閉手段により弁の動作を止められており、使用時に該閉手段を解除することで、輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とし、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧が所定の内圧に達した時点で、該吸気弁が閉じ、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧を調整し得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【0021】
(請求項4)
前記輝尽性蛍光体シート封止体は、内部に吸湿材が配設されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【0022】
(請求項5)
前記封止部材は水蒸気透過率が0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下の少なくとも1層からなるフィルム材料であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【0023】
(請求項6)
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体シートの前記輝尽性蛍光体層側と前記支持体側とを封止部材で覆い、封止した輝尽性蛍光体シート封止体を、輝尽性蛍光体シート供給工程と、封止部材供給工程と、封止工程とを有する製造装置を用いて製造する輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法において、
前記封止部材供給工程で供給される封止部材には内圧調整手段が配設されており、
前記封止工程で、前記内圧調整手段により使用時に前記輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能な内圧に減圧封止することを特徴とする輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【0024】
(請求項7)
前記封止工程で減圧封止された輝尽性蛍光体シート封止体の内圧は、使用時に内圧調整手段により吸気することで、該内圧が使用環境の大気圧の−25〜−50KPaとなし得ることを特徴とする請求項6に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【0025】
(請求項8)
前記内圧調整手段が吸気弁であり、使用前は閉手段により弁の動作を止められてれており、使用時に該閉手段を解除することで、輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とし、該輝尽性蛍光体シート封止体への内圧が所定の内圧に達した時点で、該吸気弁が閉じ、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧を調整し得ることを特徴とする請求項6又は7に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【0026】
(請求項9)
前記輝尽性蛍光体シート封止体は、内部に吸湿材を有していることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【0027】
(請求項10)
前記封止部材は水蒸気透過率が0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下の少なくとも1層からなるフィルム材料であることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
防湿性封止フィルムを使用して輝尽性蛍光体シートを封止し封止体とする時、保存性に優れ、使用する地域の環境の影響を受け難く、画像性能の低下がない封止体、封止体の製造方法を提供することが出来、安定した画像記録が可能となり、信頼性を高くすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係わる実施の形態を図1〜図4を参照して説明するが、勿論、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
図1は輝尽性蛍光体シートを封止フィルムで封止した封止体の概略図である。図1の(a)は輝尽性蛍光体シートを封止フィルムで封止した封止体の概略斜視図である。図1の(b)は図1の(a)のA−A′に沿った拡大概略部分断面図であり、輝尽性蛍光体層が塗布法で作製された輝尽性蛍光体シートを使用した場合である。図1の(c)は図1の(a)のA−A′に沿った拡大概略部分断面図であり、気相堆積法で作製したプレートを使用した場合である。尚、本図は内圧調整手段は省略してある。
【0031】
図1の(a)の封止体に付いて説明する。図中、1は封止体を示す。101aは輝尽性蛍光体シートの表面側(輝尽性蛍光体層側)の封止部材の封止フィルムを示し、101bは輝尽性蛍光体シートの裏面側(支持体側)の封止フィルムを示し、輝尽性蛍光体シートの周囲の封止フィルムを溶着して輝尽性蛍光体シートを封止している。尚、内圧調整手段(不図示)は輝尽性蛍光体シートの裏面側(支持体側)の封止フィルムに取付けられている。内圧調整手段に付いては、図2、図3で説明する。
【0032】
図1の(b)に示す断面図について説明する。尚、本図は支持体に熱可塑性樹脂を主とする材料を用いた場合を示している。102aは輝尽性蛍光体シートを示す。輝尽性蛍光体シート102aは、支持体102a1上に中間層102a2と、輝尽性蛍光体層102a3と、保護層102a4とを順に有している。この場合、封止体1は保護層102a4側を被覆する封止部材の封止フィルム101aと、支持体102a1の裏面側を被覆する封止部材の封止フィルム101bとで輝尽性蛍光体シート102aを挟持し、輝尽性蛍光体シート102aの周囲の封止フィルム101a(101b)を熱溶着することで封止体1aが形成されている。
【0033】
支持体102a1の厚さは100〜5000μm、中間層102a2の厚さは1〜30μm、輝尽性蛍光体層102a3の厚さは100〜1000μm、保護層102a4dの厚さは1〜200μmが一般的に好ましいとされている範囲である。
【0034】
輝尽性蛍光体層は、輝尽性蛍光体(最初の光や放射線の照射後に光などで輝尽励起させることで、最初の照射エネルギー量に応じて輝尽発光する蛍光体)とバインダーを好ましい比率で混合し、塗布するために有機溶剤で調液(その他分散材、可塑剤などの添加剤も混合することが好ましい)し、樹脂シートなどの支持体に塗布し、輝尽性蛍光体層を形成する塗布法で形成した。
【0035】
図1の(c)に示す断面図について説明する。尚、本図は支持体にアルミニウムを主とする金属板材料、又は、カーボンを主とする材料を用いた場合を示している。102bは輝尽性蛍光体シートを示す。輝尽性蛍光体シート102bは、支持体102b1上に、輝尽性蛍光体層102b2と、保護層102b3とを順に有している。この場合、封止体1は保護層102b3側を被覆する封止部材の封止フィルム101aと、支持体102b1の裏面側を被覆する封止部材の封止フィルム101bとで輝尽性蛍光体シート102bを挟持し、輝尽性蛍光体シート102bの周囲の封止フィルム101a(101b)を熱溶着することで封止体1bが形成されている。
【0036】
支持体102b1の厚さは50〜1000μm、輝尽性蛍光体層102b2の厚さは100〜1000μm、保護層102b3の厚さは1〜200μmが一般的に好ましいとされている範囲である。又、支持体102b1の上に中間層を設ける場合は1〜10μmが好ましい。輝尽性蛍光体層は、気相堆積法(蒸着、スパッタリングなど)により、輝尽性蛍光体を支持体上に形成した。
【0037】
本発明は、本図に示す様に塗布法又は気相堆積法等で支持体上に輝尽性蛍光体層を形成させた輝尽性蛍光体シートを封止部材の封止フィルムで封止した封止体の、使用時の内圧を内圧調整手段(図2、図3を参照)で調整可能とした封止体に関するものである。
【0038】
図2は内圧調整手段を有した封止体の概略断面図である。
【0039】
図中、2は封止体を示す。封止体2は、輝尽性蛍光体シート201と、内圧調整手段202とを有している。203は輝尽性蛍光体シート201の表面側(輝尽性蛍光体層側)の封止部材の封止フィルムを示し、204は輝尽性蛍光体シート201の裏面側(支持体側)の封止フィルムを示し、輝尽性蛍光体シートの周囲の封止フィルム203(204)を溶着して輝尽性蛍光体シートを封止している。206は支持体201aの裏面側に設けられたフィルム状の吸湿材を示す。吸湿材の配する位置は使用する吸湿材の種類により、支持体201aの裏面側でもよいし、空隙部205でもよい。本図は吸湿材がフィルム状であるため支持体201aの裏面側に設け場合を示している。207は内圧調整手段202の閉手段を示す。閉手段207としては特に限定はなく、例えば通気性のない厚手フィルム接着テープ(例えば一般に市販されているビニルテープ、ナイロンテープ等)、第1吸気口202c(図3を参照)に嵌め込むキャップ等が挙げられる。輝尽性蛍光体シート201は、支持体201a上に中間層201bと、輝尽性蛍光体層201cと、保護層201dとを順に有している。尚、中間層201bは必要に応じない場合もある。
【0040】
内圧調整手段202を配設する位置は特に限定はなく、例えば輝尽性蛍光体シート201の上面を覆う封止部材の封止フィルム203の輝尽性蛍光体シート201の周囲の空隙部205に該当する位置、輝尽性蛍光体シート201の裏面を覆う封止部材の封止フィルム204の輝尽性蛍光体シート201の周囲の空隙部(支持体201aを除いた空隙部)に該当する位置が挙げられる。本図は輝尽性蛍光体シート201の裏面を覆う封止部材の封止フィルム204の輝尽性蛍光体シート201の周囲の空隙部(支持体201aを除いた空隙部)に内圧調整手段202を配設した場合を示している。
【0041】
図1、図2に示される封止体の製造時の内圧は、内圧調整手段により使用時に封止体へ給気可能とすることで、使用時の内圧を調整し得る様になっている。封止体の使用時の内圧は、封止フィルムの平面性、安定した画像性能、封止フィルムと輝尽性蛍光体層との密着に伴う画像性能の低下、保存性等を考慮し、使用環境の大気圧の−25〜−50KPaであることが好ましい。使用時の封止体の内圧を使用環境の大気圧の−25〜−50KPaにすることは、輝尽性蛍光体層が気相堆積法によって形成された蒸着タイプの場合に特に好ましい。
【0042】
図3は図2のSで示される部分の拡大概略図である。図3の(a)は使用前の状態を示す図2のSで示される部分の拡大概略図である。図3の(b)は閉手段により内圧調整手段の閉状態を解除した状態を示す図2のSで示される部分の拡大概略図である。図3の(c)は閉手段により内圧調整手段の閉状態を解除した後、所定の内圧に達した状態を示す図2のSで示される部分の拡大概略図である。
【0043】
図中、202は内圧調整手段の吸気弁を示す。吸気弁202は両端に第1吸気口202cと、第2吸気口202dとを有する円筒状の本体202aと、本体202aの下部の周囲に取付けられた取付部202bとを有し、取付部202bを介して封止フィルム204に固定されている。封止フィルム204への固定方法は特に限定はなく、例えば接着剤、熱溶着等が挙げられる。第1吸気口202cは封止フィルム204の外側(封止体の外側)に、第2吸気口202dは封止フィルム204の内側(封止体の内側)になるように封止体に取付けられている。202eは本体202aの内部に収納されているコイルバネを示し、202fは第1吸気口202cを密閉する密閉部材を示す。密閉部材202fはコイルバネ202eと第1吸気口202cとの間に配設されいる。
【0044】
コイルバネ202eは封止体の内圧と外気圧との差で伸縮する性質を有している。よって、封止体の内圧を使用時に必要とする内圧に調整するには、必要とする内圧に応じたコイルバネ202eを選定する必要がある。本発明では、封止体の使用時の内圧は、使用環境の大気圧の−25〜−50KPaに調整し得る封止体とするために、必要とする大気圧との各差圧(−25〜−50KPa)に応じたコイルバネ202eを選定する必要がある。
【0045】
図3の(a)に示される状態に付き説明する。吸気弁202の第1吸気口202cに閉手段207の通気性のない厚手フィルム接着テープが貼着され密封されているため、封止体の内部と外部とは遮断されている。このため、封止体の内部と外部との圧力差が生じないため、コイルバネ202eは伸び、密閉部材を第1吸気口側に押し付ける(図中の矢印方向)状態なり封止体の内圧を製造時の減圧状態に保持することが可能となっている。
【0046】
図3の(b)に示される状態に付き説明する。吸気弁202の第1吸気口202cに貼着されていた閉手段の厚手フィルム接着テープを除去することで、吸気弁202の閉状態が解除され、第1吸気口202cから封止体の内部へ外気が流れ込める状態となる。この時、例えば封止体の内圧が30KPaで外気の大気圧が101.3KPaの場合、差圧は71.3KPaとなる。例えば、内圧調整手段202に使用しているコイルバネ202eが差圧30KPaを使用した場合は、差圧が30KPaになるまでコイルバネが縮み、密閉部材202fにより密閉されていた第1吸気口202cが解放され、第1吸気口202cから外気が第2吸気口202dを介して封止体内部に流れ込む(図中の矢印方向)様になっている。
【0047】
図3の(c)に示される状態に付き説明する。図3の(b)で示される状態から封止体の内圧と、外気の大気圧との差が30KPaになった時点で、コイルバネ202eが伸び(図中の矢印方向)、密閉部材202fにより第1吸気口202cが密閉される様になっており、封止体の内圧の調整が可能となっている。使用するコイルバネ202eの種類により封止体の内圧は使用環境の大気圧の−25〜−50KPaに調整が可能となっている。次に本発明の輝尽性蛍光体シート封止体の作製方法に付き図4で説明する。
【0048】
図4は図2で示される封止体を作製するまでを示す概略フロー図である。
【0049】
S1は、輝尽性蛍光体シート201の表を覆う封止フィルム203と、裏面を覆う封止フィルム204とが準備される。裏面を覆う封止フィルム204には輝尽性蛍光体シート201を封止した時、輝尽性蛍光体シート201の周囲に出来る封止フィルム204の空隙部(輝尽性蛍光体シート201の支持体を除く)に相当する位置に内圧調整手段202が取付けられている。使用する封止フィルムの大きさは、輝尽性蛍光体シート201の大きさに対して10〜30%大きいことが好ましい。本図は、供給される封止フィルムがシート状の場合を示しているが、袋状であってもかまわない。
【0050】
S2は、封止フィルム204の上に輝尽性蛍光体層を上側にして輝尽性蛍光体シート201を載置した状態を示す。この時、吸気弁202上に輝尽性蛍光体シート201が載らないようにする必要がある。又、必要に応じて吸湿材を輝尽性蛍光体シート201の周囲又は裏面側に配設することが可能である。本図はフィルム状の吸湿材(不図示)を輝尽性蛍光体シート201の裏面側に置いた場合を示している。
【0051】
S3は、封止フィルム204の上の輝尽性蛍光体シート201の輝尽性蛍光体層側を覆う封止フィルム203を封止フィルム204に合わせ輝尽性蛍光体層上に置き、輝尽性蛍光体シート201を挟持した状態を示す。
【0052】
S4は、減圧条件下で輝尽性蛍光体シート201の周囲の封止フィルム203を弾性部材で押接しながらヒートシーラを用い封止フィルム204と熱溶着で封止をした状態を示す。208a〜208dは封止部を示す。封止は、吸気弁202により使用時に輝尽性蛍光体シート封止体の内圧を使用環境の大気圧の−25〜−50KPaに調整可能にするように減圧した条件下で行われる。封止は4辺を同時に行ってもよいし、一辺ごとに行ってもよい。使用するヒートシーラの機種に合わせて適宜選択することが可能である。尚、S1〜S4の工程は減圧チャンバー式真空包装機を使用し行うことが好ましい。
【0053】
S5は、封止部208a〜208dに沿って化粧断裁を行うことで、図1の(a)に示す最終形態の封止体が得られる。尚、化粧断裁は封止体を減圧チャンバー式真空包装機から取り出し、冷却後に別工程で行うことが好ましい。本図に示した方法で得られた封止体はアルミ箔を使用した防湿袋に入れ、封止した状態で使用するまで保管され、使用に際しては、防湿袋を開封し封止体を取り出し、吸気弁により所定の内圧に調整した後、所定の大きさのトレーに貼着して輝尽性蛍光体パネルとしカセッテに収納されて撮影装置に装填され用いられている。
【0054】
図1〜図4に示す様に、封止体の使用時の内圧を、使用環境の大気圧の−25〜−50KPaに内圧調整手段により調整可能にするように減圧封止し、使用時に封止体に配設された内圧調整手段により所定の内圧にして使用することにより次の効果が得られる。
【0055】
1)使用する地域の環境、例えば高地と低地では大気圧に差があるため、地域によっては輝尽性蛍光体層に封止フィルムが密着したり、封止フィルム体が膨らみ平面性が得られなくなることを防止することが可能となり、使用地域差による品質の差がなくなり安定した画像性能を得ることが可能となった。
【0056】
2)未使用時(保管時)に、輝尽性蛍光体層に封止フィルムが密着しなくなり、封止フィルムをわずかながら透過してきた水蒸気による輝尽性蛍光体層の輝度の低下、鮮鋭性の低下を防止することが可能となり、品質の性能を維持することが可能となった。特に輝尽性蛍光体層が気相堆積法によって形成された蒸着タイプの場合に効果的である。
【0057】
3)使用時に、輝尽性蛍光体シートの内圧を必要とする内圧に調整可能であるため、封止フィルムが弛むことなく、且つ輝尽性蛍光体層に密着することを防止出来るため、封止フィルムが輝尽性蛍光体層に密着した時に、輝尽励起光の封止フィルム内で平面方向に伝播することで別箇所の輝尽性蛍光体層を励起させることによる鮮鋭性の低下を防止することが可能となり、使用時に本来の輝尽性蛍光体シートの性能を引き出すことが可能となった。
【0058】
4)輝尽性蛍光体シートの製造時の煩雑な輝尽性蛍光体シートの内圧調整が不要となるため、生産効率の向上が可能となった。
【0059】
次に本発明に係わる封止体を構成している輝尽性蛍光体シート、封止フィルム、吸湿材に付き説明する。輝尽性蛍光体層側を被覆する封止フィルムは、励起光を吸収するように着色された励起光吸収層を有し、更にヘイズ率が0.2〜6%であることが好ましい。更に、封止フィルムの励起光波長領域における光透過率が励起光吸収層を有しない同等の封止フィルムの光透過率の98〜50%であることが好ましい。
【0060】
封止フィルムの水蒸気透過率は、保存時の輝尽性蛍光体の性能維持を考慮し、0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下が好ましい。本発明において0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下とは、水蒸気透過率が限りなく0g/m2(24h、40℃、90%RH)に近いことを意味し、封止フィルムの厚さとコストから適宜、水蒸気透過率の値を選定することが可能である。水蒸気透過率として0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下を得るには、無機物蒸着膜を有する積層材料を使用することが好ましい。無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、AI23等を用いることが可能である。
【0061】
輝尽性蛍光体シートを封止するために輝尽性蛍光体層側に使用する封止フィルムとしては、輝尽性蛍光体シートの輝尽性蛍光体層を湿度から保護するため、及び輝尽性蛍光体層から被写体の画像を取り出すために、特開平6−95302号に記載されている如き、無機物蒸着層を少なくとも一層含んだ透明な積層材料が防湿性の面からより好ましく用いられる。又、支持体側に使用する封止フィルムと接触するシーラント層は熱溶融性の樹脂フィルムを積層する必要がある。
【0062】
これら無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、AI23等が用いられる。
【0063】
無機物蒸着層を設ける基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムとしてはエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されているフィルム材料を使用することが出来る。
【0064】
無機物蒸着フィルムシートを介して積層する熱可塑性樹脂フィルムとしては一般の包装材料として使用されている高分子フィルム(例えば機能性包装材料の新展開株式会社東レリサーチセンター記載の高分子フィルム)である低密度ポリエチレン(LDPE)、HDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、OPP、ONy、PET、セロハン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)等が使用が可能である。
【0065】
又、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて張り合わせて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組合せて作ることも当然可能である。
【0066】
最内層の熱可塑性樹脂フィルムとしては、LDPE、LLDPE及びメタロセン触媒を使用して製造したLDPE、LLDPE、又、これらフィルムとHDPEフィルムの混合使用したフィルムを使用することが好ましい。
【0067】
支持体面側に使用するの封止フィルムは防湿性を高めることから、上述の無機物蒸層に代えてアルミニウム箔を使用した他は同じである不透明な積層フィルムを用いることが好ましい。
【0068】
上記積層フィルムの製造方法としては、無機物を蒸着したフィルム及びアルミニウム箔をラミネートしたフィルムを介して他のフィルムを積層させる方法としては一般的に知られている各種の方法が用いられ、例えばウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出しラミネート法、熱ラミネート法を利用して作ることが可能である。
【0069】
封止フィルムに使用される色剤としては、プレートの励起光の波長領域で励起光を吸収する特性を有するものが用いられる。好ましくは、封止フィルムの励起光波長領域における光透過率が励起光吸収層を有しない同等の封止フィルムの光透過率の98%〜50%となるように励起光吸収層を設けることが望ましい。光透過率が98%を越えると本発明の効果は小さく、50%未満ではプレートの輝度が急激に低下してくる。
【0070】
尚、50%以上の透過率で輝度の低下があまりないのは、プレートに記録されている放射線画像の情報が、プレート表面側に偏在していることと関連があると推測される。いかなる着色剤を用いるかはプレートに用いる輝尽性蛍光体の種類によって決まるが、プレート用の輝尽性蛍光体としては、通常、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が用いられる。このため、着色剤としては通常、青色〜緑色の有機系若しくは無機系の着色剤が用いられる。
【0071】
青色〜緑色の有機系着色剤の例としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト社製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学(株)製)、スミアクリルブルーF−GSL(住友化学(株)製)、D&CブルーNo1(ナショナル・アニリン社製)、スピリットブルー(保土谷化学(株)製)、オイルブルーNo603(オリエント(株)製)、キトンブルーA(チバ・ガイギー社製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土谷化学(株)製)、レイクブルーA、F、H(協和産業(株)製)、ローダリンブルー6GX(協和産業(株)製)、ブリモシアニン6GX(稲畑産業(株)製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学(株)製)、シアニンブルーBNRS(東洋インキ(株)製)、ライオノルブルーSL(東洋インキ(株)製)が挙げられる。青色〜緑色の無機系着色剤の例としては、群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−CoO−NiO系顔料が挙げられるがこれに限られたものではない。
【0072】
輝尽性蛍光体シートに使用する支持体としては、熱可塑性樹脂フィルム、金属シート材料、カーボンを主とする材料、紙等の単体及びこれらの複合品が挙げられる。熱可塑性樹脂プラスチックフィルムとしては、例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、若しくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許第784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニルアルコールでサイジングした紙等の加工紙等が挙げられる。複合品としては、アルミニウム板の表面にポリイミド層を設けた支持体、カーボンを主とする混連樹脂板の表面にポリイミド層を設けた支持体、アルミニウム板の表面に無機蒸着層を設けた支持体、カーボンを主とする混連樹脂板の表面にポリイミド層を設け、更に無機蒸着層を設けた支持体等が挙げられる。無機蒸着層としては、例えばBN、Si34等の無機窒化物、SiC、TiC、WC等の無機炭化物、MgO、CaO、B23等の無機酸化物、BaF2等の無機フッ化物等が挙げられ、これらの無機化合物から選ばれた少なくとも一種の無機化合物を真空蒸着、スパッタリング等の気相堆積法により得ることが可能である。これらの中でも、加工し易さ、取り扱い性からプラスチックフィルムが好ましい可撓性の支持体として挙げられる。
【0073】
又、これら可撓性の支持体の厚さは、用いる可撓性の支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、更に好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、マット面としてもよい。
【0074】
輝尽性蛍光体層としては、バインダーと輝尽性蛍光体粒子とから構成されている。輝尽性蛍光体層を形成している「輝尽性蛍光体」とは、最初の光又は高エネルギー放射線が照射された後に、光的、熱的、機械的、科学的又は電気的等の刺激(輝尽励起)により、最初の光又は高エネルギー放射線の照射量に対応した輝尽発光を示す輝尽性蛍光体をいう。実用的な面からは、光刺激(輝尽励起)により輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましく、波長が500nm以上、1μm以下の輝尽励起光によって輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。
【0075】
支持体上に輝尽性蛍光体層を形成する方法は、塗布方法、気相堆積法が挙げられ必要に応じて選択することが可能となっている。塗布方法により輝尽性蛍光体層を形成する場合に用いられる輝尽性蛍光体の一例としては、特開2002−277596号に記載されている化合物が挙げられる。気相堆積法により輝尽性蛍光体層を形成する場合に用いられる輝尽性蛍光体の一例としては、例えば特開昭59−75200号、同61−72087号、同61−73786号、61−73787号、特開2004−22651等に記載されているような化合物が挙げられる。
【0076】
塗布方法としては通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いることが出来る。
【0077】
気相堆積法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法等がある。蒸着法は基材を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。又、蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着を行うことも可能である。又蒸着法においては、輝尽性蛍光体原料を複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着し、基材上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。更に蒸着法においては、蒸着時に必要に応じて基材を冷却或いは加熱してもよい。又、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0078】
スパッタ法は前記蒸着法と同様に基材をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さ堆積させる。このスパッタ工程では蒸着法と同様に複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、それぞれを用いて同時或いは順次、前記ターゲットをスパッタリングして輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。又、スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時或いは順次スパッタリングして、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて基材を冷却或いは加熱してもよい。又、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0079】
CVD法は目的とする輝尽性蛍光体或いは輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、支持体上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、何れも輝尽性蛍光体層を支持体の法線方向に対して特定の傾きを持って独立した細長い柱状結晶に気相成長させることが可能である。本発明においては、気相堆積法として蒸着法が好ましく用いられる。
【0080】
本発明に係る輝尽性蛍光体層は、保護層を有していてもよい。保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、予め別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。或いは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手順を取ってもよい。
【0081】
保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。又、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23などの無機物質を積層して形成してもよい。これらの保護層の層厚は一般的には0.1〜2000μm程度が好ましい。又、透光性がよく、シート状に形成出来るものを用いることが出来る。例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラスや、PET、OPP、ポリ塩化ビニル等の有機高分子が挙げられる。
【0082】
本発明に係わる吸湿材としては特に限定はなく、例えば、特開平1−199389号に記載されている如き、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドの如き吸湿性ポリマーから作られた吸湿フィルム、特開平4−181588号に記載されている如き、A型シリカゲル、B型シリカゲル、特開2003−340233に記載されている如き、シリカゲル、アルミナゲル、シリカ・アルミナゲル(SiO2とAl23を含むゲルであって、SiO2とAl23の組成比率の和が50%以上であるもの)、活性炭等の多孔質吸湿材又は吸湿材混合物及びこれらの多孔質吸湿材又は吸湿材混合物に結着剤としてポリテトラフルオロエチレンや吸湿性ポリマーを使用したシート状、或いはペレット状の吸湿材、不織布、紙等が挙げられる。
【0083】
以下に、本発明の効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1
《輝尽性蛍光体シートの作製》
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ45cm×45cmのアルミニウム板の表面にポリイミド層を設けた基材を準備した。
【0085】
(輝尽性蛍光体シートの作製)
蒸着源として輝尽性蛍光体(CsBr:0.001Eu)を使用し、気相堆積装置を用い、Arガスを導入し0.133Paに真空度を調整した後、基材と原料容器の距離を60cmとし、基材を回転速度10rpmで回転させ、基材の温度を約150℃に保持しながら原料容器中の温度を750℃に保ち蒸着を開始し、輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで原料の蒸発を終了させ、蒸着室を大気圧に戻し、基材上に輝尽性蛍光体層が形成されたプレートを作製した。
【0086】
〈封止フィルムの準備〉
封止フィルムとして、輝尽性蛍光体シートの大きさに対して20%大きいPET12μm/アルミナ蒸着PET12μm/CPP30μmの多層構成のフィルムを2枚準備した。輝尽性蛍光体シートの支持体側になる封止フィルムには図3に示す内圧調整手段の吸気弁(調整内圧:大気圧の−30KPa)を取付けた。尚、吸気弁の第1吸気口は閉手段としてナイロンテープを使用し封止した。
【0087】
〈吸湿材の準備〉
基材の大きさに切断したフィルムシート状の吸湿材を準備した。尚、吸湿材は佐々木化学薬品(株)製 ドライキープシートを使用した。
【0088】
〈封止体の作製〉
気圧が1000hPaの実験室内で減圧チャンバー式真空包装機を使用し、準備した輝尽性蛍光体層側用封止フィルムと、支持体側用封止フィルムと、吸湿材と、輝尽性蛍光体シートとを図4に示したフローに従って、封止体の内圧を表1に示す様に変えて封止体を作製し、試料No.101、102とした。又、比較試料として、吸湿材を使用せず、支持体側用封止フィルムに吸気弁を取付けないで使用し、封止体の内圧を表1に示す様に変えて封止体を作製し、試料No.103〜106とした。尚、封止フィルムの封止はヒートシーラにより、同時に四方を熱溶着で接着した。
【0089】
評価
作製した各試料No.101〜106に付き、温度30℃、湿度80%RH、気圧を1000hPa、800hPaに調整した実験室で吸気弁の第1吸気口を閉じている閉手段のナイロンテープを除去した後、鮮鋭性(鮮鋭度ともいう)を以下に示す方法で試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
【0090】
鮮鋭性の試験方法
鮮鋭性(鮮鋭度ともいう)の評価方法については、輝尽性蛍光体シートに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルHe−Neレーザー光(633nm)で走査して励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換してハードディスクに記録し、記録をコンピューターで分析してハードディスクに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。変調伝達関数(MTF)は45cm×45cmの正方形の輝尽性蛍光体シートの面内で各10点ずつ測定を、各試料に付き行い、輝尽性蛍光体シートの面内のMTF値の分布を調査し、経時開始からの10点の鮮鋭性の劣化を平均値を各々の試料について記録した。
【0091】
鮮鋭性は、封止フィルムによる封止前の鮮鋭性を100として、相対評価した結果を表1に示す。数字が100に近いほど、鮮鋭性の劣化が少ないことを表し、又、数字が1に近いほど、輝度の劣化が少ないことを表す。尚、放射線画像変換パネルとして実用するためには、封止フィルムによる封止に伴う鮮鋭性の低下は3%以内であることが好ましい。
【0092】
鮮鋭性の評価ランク
○:鮮鋭性の低下が3%未満
△:鮮鋭性の低下が3%以上、6%未満
×:鮮鋭性の低下が6%以上
【0093】
【表1】

【0094】
試料No.103、104は封止フィルムが輝尽性蛍光体層に密着してしまい、密着することに伴う鮮鋭性の低下が生じてしまった。試料No.105は封止体を製造した実験室の気圧と、封止体を使用した実験室の気圧が同じであるため使用時の封止体の内圧は変化がなく問題なく使用できたが、同じ条件で作製した試料No.106は使用時の実験室の気圧が低くなったためシワが発生し、平面性が得られなくなり鮮鋭性の低下、画像性能の低下が生じてしまった。即ち、使用時に適した内圧にして作製した比較試料No.105、106では使用時の環境に対応が取れない場合が発生してしまうことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0095】
実施例2
実施例1で作製した試料No.101〜106を、実施例1と同じ条件の温度30℃、湿度80%RH、実験室の気圧1000hPaで2年間使用し続けた時の鮮鋭性(鮮鋭度ともいう)、輝度を以下に示す試験方法で試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0096】
鮮鋭性の試験方法、及び評価ランク
実施例1塗同じ方法で行った。
【0097】
輝度の試験方法
輝度の測定は、作製した各輝尽性蛍光体シート(各試料No.101〜106)について、管電圧80kVpのX線を輝尽性蛍光体シートの支持体側から照射した後、輝尽性蛍光体シートを半導体レーザー光(690nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し、予め封止フィルムによる封止前に測定した輝尽性蛍光体シートの輝度を1とした、相対値で表示した。
【0098】
輝度の評価ランク
○:輝度の低下が5%未満
△:輝度の低下が5%以上、8%未満
×:輝度の低下が8%以上
【0099】
【表2】

【0100】
試料No.103、104は封止フィルムが輝尽性蛍光体層と密着しているため、封止フィルムをわずかながら透過してきた水蒸気により、更に輝尽性蛍光体層の輝度、鮮鋭性の低下が発生した。試料No.105、106は使用期間中での輝度、鮮鋭性の変化は確認されなかったが、実施例1の即日の結果から使用時の環境に対応が取れない場合が発生してしまう使用環境が限定されることが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0101】
実施例3
《輝尽性蛍光体プレートの作製》
(基材の準備)
実施例1と同じ基材を準備した。
【0102】
(輝尽性蛍光体シートの作製)
実施例1と同じ輝尽性蛍光体シートを作製した。
【0103】
〈封止フィルムの準備〉
封止フィルムとして、輝尽性蛍光体シートの大きさに対して20%大きいPET12μm/アルミナ蒸着PET12μm/CPP30μmの多層構成のフィルムを2枚準備した。輝尽性蛍光体シートの支持体側になる封止フィルムには、表3に示す様に調整内圧機能が異なる図3に示す内圧調整手段の吸気弁を取付けNo.3−1〜3−5とした。尚、吸気弁の第1吸気口は閉手段としてナイロンテープを使用し封止した。
【0104】
【表3】

【0105】
〈吸湿材の準備〉
基材の大きさに切断したフィルムシート状の吸湿材を準備した。尚、吸湿材は佐々木化学薬品(株)製 ドライキープシートを使用した。
【0106】
〈封止体の作製〉
減圧チャンバー式真空包装機を使用し、準備した輝尽性蛍光体層側用封止フィルムと、支持体側用封止フィルムと、吸湿材と、輝尽性蛍光体シートとを図4に示したフローに従って、封止体の内圧を表1に示す様に変えて封止体を作製し、試料No.301〜305とした。
【0107】
評価
作製した各試料No.301〜305につき、温度30℃、湿度80%RH、気圧を1000hPaに調整した実験室で吸気弁の第1吸気口を閉じている閉手段のナイロンテープを除去した後、2年間使用し続けた時の鮮鋭性(鮮鋭度ともいう)を実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクで、輝度を実施例2と同じ方法で試験し、実施例2と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0108】
【表4】

【0109】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】輝尽性蛍光体シートを封止フィルムで封止した封止体の概略図である。
【図2】内圧調整手段を有した封止体の概略断面図である。
【図3】図2のSで示される部分の拡大概略図である。
【図4】図2で示される封止体を作製するまでを示す概略フロー図である。
【符号の説明】
【0111】
1、1a、1b、2 封止体
101a、101b、102a1、203、204 封止フィルム
102a、102b、201 輝尽性蛍光体シート
102a1、102b1、201a 支持体
102a2、201b 中間層
102a3、102b3、201c 輝尽性蛍光体層
102a4、102b3、201d 保護層
202 内圧調整手段
202a 本体
202b 取付部
202c 第1吸気口
202d 第2吸気口
202e コイルバネ
202f 密閉部材
205 空隙部
206 吸湿材
207 閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体シートの前記輝尽性蛍光体層側と前記支持体側とを封止部材で覆い、減圧条件下で前記封止部材で封止した輝尽性蛍光体シート封止体において、
前記輝尽性蛍光体シート封止体は内圧を調整する内圧調整手段を有し、
前記内圧調整手段により使用時に前記輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とすることで、使用時の内圧を調整し得ることを特徴とする輝尽性蛍光体シート封止体。
【請求項2】
前記輝尽性蛍光体シート封止体の使用時の内圧は、使用環境の大気圧の−25〜−50kPaであることを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【請求項3】
前記内圧調整手段が吸気弁であり、使用前は閉手段により弁の動作を止められており、使用時に該閉手段を解除することで、輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とし、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧が所定の内圧に達した時点で、該吸気弁が閉じ、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧を調整し得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【請求項4】
前記輝尽性蛍光体シート封止体は、内部に吸湿材が配設されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【請求項5】
前記封止部材は水蒸気透過率が0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下の少なくとも1層からなるフィルム材料であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体。
【請求項6】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体シートの前記輝尽性蛍光体層側と前記支持体側とを封止部材で覆い、封止した輝尽性蛍光体シート封止体を、輝尽性蛍光体シート供給工程と、封止部材供給工程と、封止工程とを有する製造装置を用いて製造する輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法において、
前記封止部材供給工程で供給される封止部材には内圧調整手段が配設されており、
前記封止工程で、前記内圧調整手段により使用時に前記輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能な内圧に減圧封止することを特徴とする輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【請求項7】
前記封止工程で減圧封止された輝尽性蛍光体シート封止体の内圧は、使用時に内圧調整手段により吸気することで、該内圧が使用環境の大気圧の−25〜−50KPaとなし得ることを特徴とする請求項6に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【請求項8】
前記内圧調整手段が吸気弁であり、使用前は閉手段により弁の動作を止められてれており、使用時に該閉手段を解除することで、輝尽性蛍光体シート封止体へ給気可能とし、該輝尽性蛍光体シート封止体への内圧が所定の内圧に達した時点で、該吸気弁が閉じ、該輝尽性蛍光体シート封止体の内圧を調整し得ることを特徴とする請求項6又は7に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【請求項9】
前記輝尽性蛍光体シート封止体は、内部に吸湿材を有していることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。
【請求項10】
前記封止部材は水蒸気透過率が0.5g/m2(24h、40℃、90%RH)以下の少なくとも1層からなるフィルム材料であることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の輝尽性蛍光体シート封止体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−40733(P2007−40733A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222696(P2005−222696)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】