説明

輪郭抽出装置と輪郭抽出方法及び輪郭抽出プログラム

【構成】 物体画像を撮像し、フィルタリングを施して2値化することにより、輪郭点を抽出する。輪郭点を頂点とするように、画像をドロネー分割し、物体内部の点を指定する。指定された点からドロネー三角形の辺へ向けて探索し、所定長以上の辺であれば辺を越えて探索を続行し、所定長未満の辺に触れると、辺を越えての探索を中止する。所定長未満の辺を連結し、物体の輪郭とする。
【効果】 幅のある曖昧な輪郭でも正確に輪郭を抽出でき、また地の汚れの影響を受けにくく、さらに物体内の疵などの小さな輪郭も抽出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、皮革や布地等のシート材、あるいは人体形状などの一般的な2次元あるいは3次元の物体から、輪郭を抽出することに関する。
【背景技術】
【0002】
出願人はシート材の裁断装置を開発している。特許文献1:WO2004/010807では、シート材に対して裁断すべきパーツを最適に配置することを検討した。特許文献2:WO2006/051764では、皮革などの不規則な形状のシート材に対して、裁断目的のパーツをどのように配置するかを検討した。特許文献3:JP2006/11996は他の出願人によるもので、ドロネー分割により画像を複数の三角形に分割し、知的挟みで画像を処理することにより、輪郭を抽出することを開示している。特許文献3では幅のある曖昧な輪郭について検討していない。
【0003】
発明者は皮革などの輪郭をどのように抽出するかを検討した。皮革は厚さがあり、輪郭には皮革の上面側の輪郭線と皮革の底面側の輪郭線との例えば2種類の輪郭線が含まれている。皮革を画像認識すると、多数の輪郭点により曖昧な輪郭が生じる。人間の目で見た場合に、輪郭点を連結して輪郭線を抽出することが容易でも、コンピュータのデータ処理上で、輪郭点を連結して輪郭線とすることは必ずしも容易ではない。例えば輪郭の1点からスタートし、探索方向から大きく外れない範囲で最も近い輪郭点を連結するとのアルゴリズムでは、輪郭が分岐している場合、探索方向に近い側の分岐のみを抽出することが考えられる。また輪郭点が帯状に拡がると、輪郭線を抽出できないことがある。
【0004】
輪郭の抽出は、例えば裁断ヘッドで皮革などのシート材の形状を求めるために用いる。しかし裁断ヘッドでは、裁断用のテーブルの汚れなどで偽の輪郭点が発生するので、輪郭抽出がテーブルの汚れなどの影響を受けないことが好ましい。この一方で、皮革の内部の疵を検出したいとの実際的な要求がある。そして皮革の疵にカラーテープなどでマーキングを施すことが一般に行われているので、マーキングを検出する必要がある。ここでマークの明度自体は周囲の皮革と大差がない場合があるので、明度以外の手法でマーキングを検出できることが好ましい。ここでは皮革の輪郭を抽出することを例としたが、編地その他の、厚みのあるシート材の輪郭を抽出する場合も同様である。またシート材の裁断に限らず、一般的な画像から輪郭を正確に抽出したいとの要求がある。
【特許文献1】WO2004/010807
【特許文献2】WO2006/051764
【特許文献3】JP2006/11996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、厚さのある物体などで曖昧な輪郭しか得られない場合でも、自動的に輪郭を抽出することにある。
この発明の他の課題は、物体以外の地の部分にノイズが多い場合でも、正確に物体の正確な輪郭を抽出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、カメラで撮像した物体の画像から、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力する装置において、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生するための空間分割手段と、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行するための、輪郭抽出手段と、
輪郭抽出手段で記憶した辺を連結して物体の輪郭とするための手段、とを設けたことを特徴とする。
【0007】
またこの発明は、カメラで撮像した物体の画像から、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力する方法において、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生させ、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行し、
前記記憶した辺を連結して物体の輪郭とすることを特徴とする。
なおこの明細書において、輪郭抽出装置に関する記載はそのまま輪郭抽出方法や輪郭抽出プログラムにも当てはまり、輪郭抽出方法に関する記載は輪郭抽出装置や輪郭抽出プログラムにも当てはまる。
【0008】
この発明の輪郭抽出プログラムは、コンピュータにより記憶及び実行可能で、カメラで撮像した物体の画像から、該コンピュータにより、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力するためのプログラムにおいて、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生するための空間分割命令と、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行するための、輪郭抽出命令と、
輪郭抽出命令で記憶した辺を連結して物体の輪郭とするための命令、とを設けたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記多角形は輪郭点を頂点とする三角形である。
より好ましくは、物体の画像での明度変化に対する輪郭点と、色度変化に対する輪郭点の、少なくとも2種類の輪郭点を抽出し、かつ抽出した2種類の輪郭点を頂点とする三角形を発生させる。
【0010】
特に好ましくは、物体はシート材で、シート材を裁断ヘッドで裁断するための裁断テーブルと、抽出した物体の輪郭から物体の裁断データを発生させるための裁断データ発生手段と、発生させた裁断データに基づいて前記裁断ヘッドを駆動するための駆動手段、とをさらに設ける。
【発明の効果】
【0011】
この発明では、物体の内部から開始して、輪郭点に基づいて生成した多角形の辺へ向けて探索する。輪郭の周囲では輪郭点が密に分布するので多角形のサイズは小さく、所定長未満の長さの辺に衝突すると、その辺を越えての探索を中止し、辺を記憶する。所定長以上の長さの辺に到達すると、その辺を越えて探索を続行する。このため輪郭に分布する多数の小さな多角形の辺まで探索すると探索が中止され、抽出した辺を連結すると物体の輪郭が得られる。
【0012】
この発明では、曖昧な輪郭に対して、輪郭点を連結して直接に輪郭線を発生させるのではなく、輪郭点を多角形に変換し、多角形の辺のサイズが輪郭で小さくなることから、輪郭を抽出する。このため曖昧な輪郭に対しても、自動的にかつ正確に輪郭を抽出できる。物体の内部から探索を開始すると、物体の境界で探索が終了し、物体の外部の地の部分は探索しないので、ノイズがあっても影響を受けない。また物体内の疵や境界などの輪郭に対しても、同様に輪郭点が抽出され、それに基づいて微細な多角形が多量に発生するので、輪郭を抽出できる。
【0013】
多角形はボロノイ多角形などのように、輪郭点を内部に含む多角形、特に輪郭点を1個ずつ含む多角形で、例えば多角形の中心部に輪郭点を含む多角形でも良い。しかしこのような多角形では辺の数が不定になり、探索済みの辺と未探索の辺との管理が難しい。これに対して、輪郭点を頂点とする三角形、例えばドロネー三角形の場合、1つの三角形の辺の数は3個で一定であるため、探索の制御が簡単である。なお輪郭点は多角形の辺上に存在しても良い。
【0014】
物体のエッジでは一般に明度の変化が生じやすいので、明度画像から輪郭点を発生させることができる。これに対して物体に貼り付けたカラーテープなどのマーキングでは、明度よりも、周囲との間で色相や彩度が不連続に変化する。そこで色相や彩度の変化、特に色相の変化を色度の変化として検出すると、物体内部のマーキングを輪郭として抽出できる。
【0015】
この発明では、皮革などのシート材の輪郭を正確に抽出できる。特に形状が不規則で、厚みがあるため輪郭が拡がってぼやけやすい皮革でも、正確に輪郭を抽出できる。また明度変化と色度変化の2種類の輪郭点を用いると、皮革に貼り付けたカラーテープなどの輪郭も正確に抽出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0017】
図1〜図11に、裁断装置2を例に輪郭抽出装置と抽出方法の実施例を示す。図1において、4は裁断テーブルで、6は裁断ヘッドであり、カラーカメラ8により皮革15のカラー画像を撮像すると共に、刃物10を昇降させて皮革15を裁断する。裁断ヘッド6はX軸ドライブ12とY軸ドライブ14とにより、裁断テーブル4上をXYの双方向に移動する。そしてカラーカメラ8は、裁断ヘッド6により皮革15上を走査して、皮革15の画像を複数枚に分割して撮像する。
【0018】
輪郭抽出装置18は、裁断装置2に内蔵され、あるいは裁断装置2とは別体に設けられている。20はバスで、21はカラーモニタ、22はマニュアル入力で、キーボードやスタイラス、マウス、トラックボール、ジョイスティックなどである。ディスクドライブ23はCD−ROMなどのディスクとの間で入出力を行い、ネットワークインターフェース24はLANやインターネットとの間のインターフェースとなる。輪郭抽出装置18を制御するための輪郭抽出プログラムは、例えばCD−ROMなどの記憶媒体に記憶させ、ディスクドライブ23からプログラムメモリ32に記憶して、あるいは搬送波としてネットワークインターフェース24から、入力する。26は入出力で、裁断テーブル4との間でデータを交換し、裁断テーブル4側へ供給するデータは裁断ヘッド6のX方向やY方向への運動、刃物10の制御、カメラ8の撮像制御などのデータである。これに対して裁断テーブル4側からは、カメラ8で撮像した皮革15のカラー画像あるいはモノクロ画像が、入出力26へ供給される。
【0019】
28はプロセッサで、30は汎用のメモリ、32はプログラムメモリで、裁断装置2の制御プログラムを記憶する。プロセッサ28やメモリ30などにより、輪郭抽出装置18は図2のように機能する。カメラ画像校正部34はカメラ8の画像に対して歪みを補正する。カメラ画像などのラスター画像は画像メモリ36に記憶し、フィルタ38は1枚分のカメラ画像に対し、あるいは複数枚のカメラ画像を合成した皮革全体の画像に対して、フィルタリングを施し、輪郭点を抽出する。ファイルメモリ40は抽出された輪郭点を記憶し、データの内容は輪郭点の座標である。併合処理部42は例えばフィルタ38で個々のカメラ画像毎に抽出した輪郭点を併合し、皮革1枚分の輪郭点のデータとする。
【0020】
多角形分割部44は、輪郭点を用いて物体の画像を多角形に分割する。多角形分割の手法は例えばドロネー分割とし、多角形の種類は輪郭点を3頂点とする三角形である。輪郭抽出部46は、多角形により分割された画像を用いて、皮革15などの物体の輪郭を抽出し、連結部47は抽出した多角形の辺を連結し、物体の閉じた輪郭を発生させる。仮に辺の抽出が不完全な場合、最近接した辺を互いに連結することにより、閉じた輪郭を抽出する。
【0021】
ファイルメモリ48は輪郭をベクトルデータで記憶し、例えば輪郭抽出部46で抽出した物体の輪郭となる辺のベクトルを記憶し、これを連結部47で連結した物体全体の輪郭をベクトルデータの列として記憶する。パターン記憶部50は、皮革15から裁断により取り出すべきパターンを記憶し、パターンマッチング部52は物体の輪郭と取り出すべきパターンとを比較して、最適な裁断パターンを発生させる。ヘッドデータ発生部54は、パターンマッチング部52で発生させた裁断パターンに従って、裁断ヘッドの制御データを発生させる。
【0022】
図3に、フィルタ38の例を示す。60はラプラシアンフィルタで、周囲の画素とデータが異なる画素を抽出し、61,62は微分フィルタで、画像が変化する向きを抽出するのに適している。またカメラ画像のノイズが著しい場合、フィルタ60〜62で処理する前に、メディアンフィルタなどで処理して、ノイズを除去しても良い。用いるフィルタの種類自体は任意で、カメラ画像にフィルタリングを施し、2値化して輪郭点を抽出する。
【0023】
図4,図5に、輪郭の抽出アルゴリズムを示す。裁断ヘッド6に皮革15をセットし、皮革上の疵にカラーテープ16を貼り付ける。そして裁断ヘッド6をXY方向に運動させて、皮革15の画像を例えば数十枚に分割して撮像する。カメラ画像校正部34で、撮像した画像に対する歪みを補正し、明度と色相の各々に対して輪郭点を抽出する。輪郭点の抽出では、例えば図3のフィルタによりカメラ画像を処理し、処理後の画像を二値化し、所定値以上の値のものを輪郭点とする。明度と色相の各々に対して輪郭点が得られ、明度の輪郭点と色相の輪郭点を共に輪郭点として抽出する。なお色相の輪郭点に代えて、明度と彩度の組み合わせデータでの輪郭点や、色度座標での輪郭点などを用いてもよい。そして撮像した各画像に対して以上の処理を繰り返す。
【0024】
輪郭点を皮革1枚分集め、輪郭点を頂点とする三角形により物体の画像を分割する。ここでの画像は実際には輪郭点のみから成るデータである。三角形の生成では、近傍にある頂点を遠方の頂点よりも優先して結合することにより、三角形の辺を構成する。また小さな内角を持つ三角形を避けるように、どの頂点を連結するかを決定する。言い換えると三角形の3つの内角の中で最も小さな内角に着目し、この内角が小さなものを避け、例えば所定値以下の内角を持つ三角形を避けるようにする。
【0025】
以上のアルゴリズムを単純化すると次のように言える。1つの頂点に着目し、周囲の所定の角度範囲の中で近接した頂点と連結する。この処理を着目した頂点の周囲360°分繰り返すと、頂点は周囲の複数個の頂点と連結される。以上の処理を各頂点に対して繰り返すと、画像は三角形により分割される。そして三角形の頂点は輪郭点である。
【0026】
次に皮革内の1点を指定する。この点はマニュアル入力で指定しても良く、あるいは地色、即ち裁断テーブル4の色、とは異なる色で、大きな三角形の内部の点をコンピュータ抽出しても良い。指定された1点から三角形の辺を越えて伝搬するように探索する。そして所定長以上の長さの辺に接触すると、その辺を越えて三角形の残る2辺を探索する。以上のようにして、物体の内部に対応する領域を拡大していく。
【0027】
図4の結合子Aから図5に移り、三角形の短い辺に衝突すると、その辺を越える探索を打ち切る。もちろん他の辺に対しては探索を続行する。探索を続行するか打ち切るかのいき値は実施例では一定であるが、可変としても良い。そして探索する辺が無くなるまで探索を続行する。以上の過程で、短い辺に衝突し探索を打ち切った場合、該当する辺を記憶する。辺のデータはベクトルデータなので、辺の始点と終点の座標を記憶する。記憶した辺を連結すると、皮革の輪郭が得られる。万一輪郭が閉じていない場合、輪郭の抽出条件を変更し、例えば探索を打ち切る辺の長さを増加させて再度探索を行うか、輪郭が閉じていない部分で最も近接した辺と辺とを互いに連結するかにより、閉じた輪郭とする。
【0028】
図6にドロネー三角形での探索の例を示す。図の三角形の頂点は輪郭点で、人の目で見た場合、L1,L2の2つの輪郭線と、孤立した輪郭点P1,P2が存在するように見える。しかしながら自動的にこのような認識を行うことは困難である。図6で左上側から探索を開始するものとする。図の二重線は探索を中止する短い辺を示し、短い辺に衝突すると辺を越えての探索を打ち切る。そして探索を打ち切った短い辺を連結すると、輪郭線が得られる。輪郭を確実に抽出するには、
・ 近接した輪郭点を互いに接続し、
・ 小さな内角を持つ三角形を避ける、
ことが重要である。そして上記の条件を充たしながら、三角形により空間を分割するアルゴリズムとして、ドロネー分割が知られている。
【0029】
図7はボロノイ多角形による空間分割を示す。例えば輪郭点P1に対して、周囲の輪郭点と結ぶ辺に対する垂直二等分線を発生させ、垂直二等分線を互いに接続して多角形とする。図7では六角形を表示してあるが、ボロノイ多角形の辺の数は不定である。ボロノイ多角形は輪郭点の集合から成る画像に対し、どの輪郭点に最も近いかにより画像を分割したものと言うことができる。そして輪郭点が密に集合している領域では、ボロノイ多角形のサイズは小さくなり、粗な領域では輪郭点のサイズは大きくなる。このことはドロネー三角形の場合も同様である。また辺の探索を効率的に行うには、ボロノイ多角形でも、ドロネー三角形でも、各辺の両端を記憶すると共に、探索済みかどうかを示すビットを付加すると良い。
【0030】
図8に、実施例の輪郭抽出プログラム80を示す。カメラで撮像した後、歪みを補正済みの画像に対し、フィルタリング命令81で、ラプラシアンフィルタや微分フィルタなどのフィルタにより、フィルタリングを施し、輪郭点を抽出する。抽出した輪郭点を、併合命令82で皮革などの1枚分併合する。次ぎに空間分割命令83で、輪郭点の画像を、ドロネー分割などにより、輪郭点に基づいて複数の多角形に分割する。ドロネー分割の内容は、既に述べたとおりのものである。そして輪郭抽出命令84で、皮革などの内部に対応する点から探索を開始し、多角形の辺に接触した際に、辺の長さが所定長未満であると、その辺を越えた探索を中止し、辺を記憶する。また所定長以上の長さの辺に接触すると、その辺を越えて探索を続行する。探索を終了すると、記憶した辺を連結命令85で連結し、皮革等の輪郭とする。
【0031】
図9〜図11に、皮革に対する輪郭の抽出結果を示す。図9は皮革全体の2値化画像で、画像の内部に4枚のカラーテープが貼ってある。図10は皮革の一部に対する輪郭点の画像を示し、S1は皮革の領域、S2は地の領域、S3は汚れの領域で、皮革は厚さがあるため、2本の平行な輪郭線L1,L2があるように見える。ここから例えば輪郭線L1のみを自動的に抽出することは、コンピュータにとっては必ずしも容易なことではない。
【0032】
図11は皮革全体に対するドロネー分割を示す。マニュアルで、あるいは地とは異なる色で大きな三角形の内部にスタート点を選び、ここからドロネー三角形の辺へ向けて探索を実行する。辺に衝突するとその長さを調べ、所定長以上であれば辺を越えて探索を続行し、所定長未満の辺に衝突すると辺を越えず、検出した辺を記憶する。以上の処理を行うと、皮革の輪郭には小さなドロネー三角形が大量に存在するので、輪郭を抽出できる。またカラーテープと皮革との境界にも微細なドロネー三角形が大量に存在するので、カラーテープを抽出できる。以上のようにして図9の皮革の輪郭を抽出できる。
【0033】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 方向が不規則で、かつ物体の厚さなどのために曖昧な輪郭でも、輪郭を正確かつ自動的に抽出できる。
(2) 地の部分に大きなノイズが存在しても、影響を受けない。
(3) 物体上のカラーテープなどのマーキングも容易に抽出できる。
(4) 物体全体に対する巨大なラスター画像を必要とせず、輪郭点のデータのみで処理できる。
【0034】
実施例では皮革の輪郭抽出を示したが、これ以外に他のシート材や、一般的な3D物体の画像に対しても、輪郭を抽出できる。

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例の裁断装置のハードウェア構成を示すブロック図
【図2】図1の裁断装置を、輪郭抽出に関する機能ブロックで示す図
【図3】輪郭抽出用のフィルタの例を示す図
【図4】実施例での輪郭抽出アルゴリズムを示す図
【図5】図4以降の輪郭抽出アルゴリズムを示す図
【図6】ドロネー分割(Delaunay division)を模式的に示す図
【図7】ボロノイ図(Voronoi diagram)を模式的に示す図
【図8】実施例の輪郭抽出プログラムのブロック図
【図9】皮革の2値画像を示す図
【図10】輪郭点の画像を示す図
【図11】図9に対応するドロネー分割を示す図
【符号の説明】
【0036】
2 裁断装置
4 裁断テーブル
6 裁断ヘッド
8 カラーカメラ
10 刃物
12 X軸ドライブ
14 Y軸ドライブ
15 皮革
16 カラーテープ
18 輪郭抽出装置
20 バス
21 カラーモニタ
22 マニュアル入力
23 ディスクドライブ
24 ネットワークインターフェース
26 入出力
28 プロセッサ
30 メモリ
32 プログラムメモリ
34 カメラ画像校正部
36 画像メモリ
38 フィルタ
40 ファイルメモリ
42 併合処理部
44 多角形分割部
46 輪郭抽出部
47 連結部
48 ファイルメモリ
50 パターン記憶部
52 パターンマッチング部
54 ヘッドデータ発生部
60 ラプラシアンフィルタ
61,62 微分フィルタ
80 輪郭抽出プログラム
81 フィルタリング命令
82 併合命令
83 空間分割命令
84 輪郭抽出命令
85 連結命令

L1,L2 輪郭線
P1〜P6 頂点
S1 皮革
S2 地
S3 汚れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで撮像した物体の画像から、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力する装置において、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生するための空間分割手段と、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行するための、輪郭抽出手段と、
輪郭抽出手段で記憶した辺を連結して物体の輪郭とするための手段、とを設けたことを特徴とする、輪郭抽出装置。
【請求項2】
前記多角形は輪郭点を頂点とする三角形であることを特徴とする、請求項1の輪郭抽出装置。
【請求項3】
物体の画像での明度変化に対する輪郭点と、色度変化に対する輪郭点の、少なくとも2種類の輪郭点を抽出し、かつ抽出した2種類の輪郭点を頂点とする三角形を発生させることを特徴とする、請求項2の輪郭抽出装置。
【請求項4】
物体はシート材で、シート材を裁断ヘッドで裁断するための裁断テーブルと、抽出した物体の輪郭から物体の裁断データを発生させるための裁断データ発生手段と、発生させた裁断データに基づいて前記裁断ヘッドを駆動するための駆動手段、とをさらに設けたことを特徴とする、請求項2の輪郭抽出装置。
【請求項5】
カメラで撮像した物体の画像から、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力する方法において、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生させ、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行し、
前記記憶した辺を連結して物体の輪郭とすることを特徴とする、輪郭抽出方法。
【請求項6】
前記多角形は輪郭点を頂点とする三角形であることを特徴とする、請求項5の輪郭抽出方法。
【請求項7】
物体はシート材で、抽出した物体の輪郭から物体の裁断データを発生させ、発生させた裁断データに基づいて裁断ヘッドでシート材を裁断することを特徴とする、請求項6の輪郭抽出方法。
【請求項8】
コンピュータにより記憶及び実行可能で、カメラで撮像した物体の画像から、該コンピュータにより、フィルタリングにより輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点を連結して物体の輪郭として出力するためのプログラムにおいて、
輪郭点の密度が高い領域ではサイズが小さく、密度が低い領域ではサイズが大きな複数の多角形を、前記輪郭点に基づいて発生させることにより、該複数の多角形の画像を発生するための空間分割命令と、
前記多角形の画像を、物体の内部の点から始めて、前記多角形の辺へ向けて探索し、所定長未満の長さの辺に接触すると、該辺を越えた探索を中止すると共に該辺を記憶し、所定長以上の長さの辺に接触すると、該所定長以上の長さの辺を越えて探索を続行するための、輪郭抽出命令と、
輪郭抽出命令で記憶した辺を連結して物体の輪郭とするための命令、とを設けたことを特徴とする、輪郭抽出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−151602(P2009−151602A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329587(P2007−329587)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】